(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】筐体の補強構造及び補強部材
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H05K5/02 L
H05K5/02 M
(21)【出願番号】P 2020128340
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224855(JP,A)
【文献】特開2008-159904(JP,A)
【文献】特開2011-155211(JP,A)
【文献】特開2007-274794(JP,A)
【文献】特開2020-036456(JP,A)
【文献】特開2006-278398(JP,A)
【文献】特開2016-103521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体を補強する補強部材と、を備える筐体の補強構造であって、
前記筐体は、1枚の
長尺状の金属板を折り曲げ
ることによって4つの角が曲げ加工により形成された
、両側の筒端部が開口している角筒部を有し、
前記角筒部は、
底面パネルと、
前記筒端部を折り曲げることで、互いに非接合の状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面及び第2面
とを含み、
前記底面パネルは、前記長尺状の金属板の一方端部と他方端部とが突合わされた突合わせ部分を有し、
前記補強部材は、前記第1面及び前記第2面に固定されている、
筐体の補強構造。
【請求項2】
前記補強部材は、
前記第1面のうち前記第2面から視認可能な側と当接し、前記第1面に固定される第1固定面と、
前記第2面のうち前記第1面から視認可能な側と当接し、前記第2面に固定される第2固定面と、
前記第1固定面と前記第2固定面とを接続する接続面と、
を有し、
前記第1固定面、前記第2固定面及び前記接続面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成され、
前記接続面は、前記第1固定面及び前記第2固定面のうち前記角筒部の外側からそれぞれ屈曲し、前記開口の内側に向かって延びている、
請求項1に記載の筐体の補強構造。
【請求項3】
前記第1面
と前記第2面
とが当接又は近接している部分には、コーキング剤が充填されている、
請求項1又は請求項2に記載の筐体の補強構造。
【請求項4】
前記角筒部は、前記角筒部を構成する4個の壁面のうち隣り合う第1壁面及び第2壁面のそれぞれの前記筒端部において屈曲し、前記開口の内側に向かってそれぞれ延びる第1つば及び第2つばを含み、
前記第1面及び前記第2面は、前記第1つば及び前記第2つばのそれぞれの前記開口の内側から屈曲し、前記角筒部の外側に向かって延びる面であ
り、
前記4個の壁面のいずれかは前記底面パネルを含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の筐体の補強構造。
【請求項5】
前記補強部材は、
前記第1面のうち前記第2面から視認可能な側と当接し、前記第1面に固定される第1固定面と、
前記第2面のうち前記第1面から視認可能な側と当接し、前記第2面に固定される第2固定面と、
前記第1固定面と前記第2固定面とを接続する接続面と、
前記第2固定面の前記角筒部の内側から屈曲し、前記開口の外側に向かって延びる第3固定面とを有し、
前記第1固定面、前記第2固定面
、前記第3固定面及び前記接続面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成され、
前記接続面は、前記第1固定面及び前記第2固定面のうち前記角筒部の外側からそれぞれ屈曲し、前記開口の内側に向かって延びており、
前記角筒部は、前記角筒部を構成する4個の壁面のうち隣り合う第1壁面及び第2壁面のそれぞれの前記筒端部において屈曲し、前記開口の内側に向かってそれぞれ延びる第1つば及び第2つばを含み、
前記第1面及び前記第2面は、前記第1つば及び前記第2つばのそれぞれの前記開口の内側から屈曲し、前記角筒部の外側に向かって延びる面であり
、
前記第3固定面は、前記第2つばに固定されて
おり、
前記4個の壁面のいずれかは前記底面パネルを含む、
請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の筐体の補強構造。
【請求項6】
筐体を補強する補強部材であって、
前記筐体は、1枚の金属板を折り曲げた状態で両側の筒端部が開口している角筒部を有し、
前記角筒部は、前記筒端部を折り曲げることで、互いに非接合の状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面及び第2面を含み、
前記補強部材は、
前記第1面のうち前記第2面から視認可能な側と当接し、前記第1面に固定される第1固定面と、
前記第2面のうち前記第1面から視認可能な側と当接し、前記第2面に固定される第2固定面と、
前記第1固定面の長辺および前記第2固定面の長辺に沿って設けられ、前記第1固定面と前記第2固定面とを接続する
L字状の接続面と、
前記第2固定面の前記角筒部の内側から屈曲し、前記開口の外側に向かって延びる矩形状の第3固定面とを有し、
前記第1固定面、前記第2固定面
、前記第3固定面及び前記接続面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成され、
前記接続面は、前記第1固定面及び前記第2固定面のうち前記角筒部の外側からそれぞれ屈曲し、前記開口の内側に向かって延びて
おり、
前記角筒部は、前記角筒部を構成する4個の壁面のうち隣り合う第1壁面及び第2壁面のそれぞれの前記筒端部において屈曲し、前記開口の内側に向かってそれぞれ延びる第1つば及び第2つばを含み、
前記第1面及び前記第2面は、前記第1つば及び前記第2つばのそれぞれの前記開口の内側から屈曲し、前記角筒部の外側に向かって延びる面であり、
前記第3固定面は、前記第2つばに固定されている、
補強部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筐体の補強構造及び補強部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電装置等の発電装置により、家庭においてエネルギーを創る取り組みが広く行われている。また、発電装置の発電時間以外にも電力を使えるように、電力を貯める蓄電システムが発電装置と併せて設置されることがある。蓄電システムは、例えば家屋の裏手や、出窓の下、屋内の階段下等に設置される。蓄電システムは、例えば特許文献1、2に開示されているように、蓄電装置と、当該蓄電装置を収容する筐体とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-37749号公報
【文献】特開2016-219284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電システムについて、製造コストの低減が強く求められている。ここで、蓄電装置を収容する筐体は、一般には、複数の金属板をコーナー部分において角継手として溶接することで製造される。角継手として溶接を行うためには、金属板の厚みを所定以上厚くする必要がある。このため、従前において、筐体の製造に用いる金属板の量を所定以上少なくすることができず、筐体の製造コストをより低減することができなかった。
【0005】
また、蓄電システムを屋外に設置する場合、蓄電装置を収容する筐体に水が浸入することを防止する必要がある。このため、筐体の製造コストを低減する場合であっても、筐体の防水性は確保しなければならない。
【0006】
かかる課題に鑑み、本開示は、筐体の防水性を維持しつつ、筐体の製造コストをより低減することができる筐体の補強構造及び補強部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る筐体の補強構造は、筐体と、補強部材と、を備える筐体の補強構造であって、前記筐体は、1枚の金属板を折り曲げた状態で筒端部が開口している角筒部を有し、前記角筒部は、前記筒端部を折り曲げることで、互いに非接合の状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面と第2面とを含み、前記補強部材は、前記第1面及び前記第2面に固定されている、筐体の補強構造である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の筐体の補強構造によれば、筐体の防水性を維持しつつ、筐体の製造コストをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電システムを前方から見下ろした斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る蓄電システムを後方から見下ろした斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る正面パネルを外した状態の筐体を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る筐体の製造方法を説明する図面である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る補強部材の製造方法を説明する図面である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る補強部材の製造方法を説明する図面である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係る補強部材の製造方法を説明する図面である。
【
図13】
図13は、側面パネルへ本実施形態に係る取手部材を取り付ける様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0011】
(1)本開示に係る筐体の補強構造は、筐体と、補強部材と、を備える筐体の補強構造であって、前記筐体は、1枚の金属板を折り曲げた状態で筒端部が開口している角筒部を有し、前記角筒部は、前記筒端部を折り曲げることで、互いに非接合の状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面及び第2面を含み、前記補強部材は、前記第1面及び前記第2面に固定されている、筐体の補強構造である。
【0012】
このような筐体は、筒端部に折り曲げ部分を有することで強度を高めることができる一方、互いに非接合な状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面と第2面は、折り曲げ部分の角度が水平に戻る方向の弾性力を有するため、経年変化により第1面と第2面とが開き、筐体の封止状態が悪化するおそれがある。例えば、第1面と第2面とを角継手として溶接することで第1面と第2面との開きを防止することも考えられるが、溶接をするには第1面と第2面とにある程度の厚みが必要となる。そこで、本開示では、第1面と第2面とは互いに非接合な状態で(すなわち、角継手として溶接されず)、補強部材により補強する。すなわち、第1面と第2面とが開くことを補強部材により抑制することができるため、溶接に掛かる加工コストや、筐体の重量化に掛かるコストを削減しつつ、第1面と第2面との間における防水性を維持することができる。
【0013】
(2)好ましくは、前記補強部材は、前記第1面のうち前記第2面と鋭角をなす側と当接し、前記第1面に固定される第1固定面と、前記第2面のうち前記第1面と鋭角をなす側と当接し、前記第2面に固定される第2固定面と、前記第1固定面と前記第2固定面とを接続する接続面と、を有し、前記第1固定面、前記第2固定面及び前記接続面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成され、前記接続面は、前記第1固定面及び前記第2固定面のうち前記角筒部の外側からそれぞれ屈曲し、前記開口の内側に向かって延びている。
【0014】
このような構成によれば、第1面及び第2面にそれぞれ固定される第1固定面及び第2固定面が、第1面及び第2面の折り曲げ部分の反対側となる角筒部の外側から屈曲している接続面により接続しているため、第1面及び第2面が開こうとする力を、第1固定面および第2固定面が接続面から開こうとする力により打ち消すことができる。このため、第1面と第2面との開きをより確実に防止することができる。
【0015】
(3)好ましくは、前記第1面と前記第2面とが当接又は近接している部分には、コーキング剤が充填されている。このように構成することで、第1面と第2面とが当接又は近接している部分の隙間がコーキング剤により埋められるため、筐体の防水性をより高くすることができる。さらに、補強部材により第1面と第2面とが開くことを抑制することで、コーキング剤が破れることを防止することができるため、当該当接又は近接している部分における防水性をより高い状態で維持することができる。
【0016】
(4)好ましくは、前記角筒部は、前記角筒部を構成する4個の壁面のうち隣り合う第1壁面及び第2壁面のそれぞれの前記筒端部において屈曲し、前記開口の内側に向かってそれぞれ延びる第1つば及び第2つばを含み、前記第1面及び前記第2面は、前記第1つば及び前記第2つばのそれぞれの前記開口の内側から屈曲し、前記角筒部の外側に向かって延びる面である。第1つば及び第2つばを設けることで、第1壁面及び第2壁面のたわみを抑制することができ、筐体の形状を一定に維持することができる。これにより、筐体の経年による変形をより抑制し、筐体の防水性をより高くすることができる。
【0017】
(5)好ましくは、前記補強部材は、前記第2固定面の前記角筒部の内側から屈曲し、前記開口の外側に向かって延びる第3固定面をさらに有し、前記第3固定面は、前記第2つばに固定されている。
【0018】
このように構成することで、第1固定面、第2固定面及び第3固定面は、それぞれ所定の角度をなす第1面、第2面及び第2つばに固定される。これにより、補強部材をより強固に筐体に固定することができる。
【0019】
(6)本開示に係る補強部材は、筐体を補強する補強部材であって、前記筐体は、1枚の金属板を折り曲げた状態で筒端部が開口している角筒部を有し、前記角筒部は、前記筒端部を折り曲げることで、互いに非接合の状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面及び第2面を含み、前記補強部材は、前記第1面のうち前記第2面と鋭角をなす側と当接し、前記第1面に固定される第1固定面と、前記第2面のうち前記第1面と鋭角をなす側と当接し、前記第2面に固定される第2固定面と、前記第1固定面と前記第2固定面とを接続する接続面と、を有し、前記第1固定面、前記第2固定面及び前記接続面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成され、前記接続面は、前記第1固定面及び前記第2固定面のうち前記角筒部の外側からそれぞれ屈曲し、前記開口の内側に向かって延びている、補強部材である。
【0020】
このような筐体は、筒端部に折り曲げ部分を有することで強度を高めることができる一方、互いに非接合な状態で所定の角度をなして当接又は近接している第1面と第2面は、折り曲げ部分の角度が水平に戻る方向の弾性力を有するため、経年変化により第1面と第2面とが開き、筐体の封止状態が悪化するおそれがある。例えば、第1面と第2面とを角継手として溶接することで第1面と第2面との開きを防止することも考えられるが、溶接をするには第1面と第2面とにある程度の厚みが必要となる。そこで、本開示では、第1面と第2面とは互いに非接合な状態で(すなわち、角継手として溶接されず)、補強部材により補強する。これにより、第1面と第2面とが開くことを防止することができるため、溶接に掛かるコストや、筐体の重量化に掛かるコストを削減しつつ、筐体の防水性を維持することができる。
【0021】
さらに、本開示に係る補強部材では、第1面及び第2面にそれぞれ固定される第1固定面及び第2固定面が、第1面及び第2面の折り曲げ部分の反対側となる角筒部の外側から屈曲している接続面により接続しているため、第1面及び第2面が開こうとする力を、第1固定面および第2固定面が接続面から開こうとする力により打ち消すことができる。このため、第1面と第2面との開きをより確実に防止することができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の筐体の補強構造及び補強部材の具体例について、図面を参照して説明する。
【0023】
《蓄電システムの全体構成》
図1は、本実施形態に係る蓄電システム1を前方から見下ろした斜視図である。
図2は、本実施形態に係る蓄電システム1を後方から見下ろした斜視図である。蓄電システム1は、筐体2と、放熱部3と、複数の補強部材6(
図3)と、筐体2に収容されている蓄電装置(図示省略)及び電力変換装置(図示省略)と、を備える。筐体2は、
図1に示すように、壁WL1と所定の間隔(例えば、50mm)を空けている状態で、壁WL1に隣接する位置に設置される。本実施形態において、壁WL1は、例えば建物(住宅等)の外壁である。すなわち、本実施形態において、筐体2は屋外に設置される。
【0024】
筐体2は、略直方体状を有し、図示省略する蓄電装置、電力変換装置及びこれらの装置に関する配線設備を収容している。筐体2は、両側の筒端部が開口している角筒部20と、当該両側の筒端部をそれぞれ塞ぐ2枚のパネルと、を有する略直方体形状の箱である。角筒部20には、4個の壁面が含まれ、当該4個の壁面は、1枚の金属板を折り曲げることで形成されている。
【0025】
上記の2枚のパネルのうち、壁WL1側に面するパネルを「背面パネル21」と称し、背面パネル21の反対側のパネルを「正面パネル22」と称する。また角筒部20を構成する4個の壁面のうち、鉛直方向上側に向く壁面を「天面パネル23」と称し、鉛直方向下側に向く壁面を「底面パネル24」と称し、背面パネル21及び天面パネル23に直交し、
図1中の紙面手前側に位置する壁面を「側面パネル25」と称し、側面パネル25の反対側の壁面を「側面パネル26」と称する。
【0026】
すなわち、天面パネル23は、側面パネル25、26とそれぞれ隣り合っている。また、底面パネル24は、側面パネル25、26とそれぞれ隣り合っている。背面パネル21及び正面パネル22は、それぞれ角筒部20とは別体の金属板により構成されており、角筒部20にネジにより固定されている。角筒部20に、背面パネル21及び正面パネル22が固定されている状態で、筐体2は内部空間を形成する。また、角筒部20の筒端部は、背面パネル21側及び正面パネル22側の両側において開口している。
【0027】
筐体2は、転倒防止のため及び収容される各種装置に強い振動が加えられることを防止するために、複数の固定具4により壁WL1に固定されている。固定具4は、例えば、L字金具である。複数の固定具4は、側面パネル25、26に、それぞれ複数のネジ52により固定されている。側面パネル25、26には、それぞれ複数のネジ52が挿入されるネジ穴が形成されている。また、複数の固定具4は、壁WL1に、それぞれ図示省略するネジにより固定されている。
【0028】
放熱部3は、筐体2の内部の熱(例えば、電力変換装置の熱)を筐体2の外部へ放熱する。放熱部3は、カバー30と、図示省略するヒートシンクとを有する。ヒートシンクは、背面パネル21に取付けられている。カバー30は、ヒートシンクが砂塵等で汚染されるのを防止するための部材であり、ヒートシンクを背面、天面、底面及び両側面側から覆っている。カバー30は、例えば表面が防錆塗装された金属(例えば、鉄)により形成されている。カバー30は、ネジ53、54により、側面パネル25、26に固定されている。
【0029】
図3は、正面パネル22を外した状態の筐体2を示す斜視図である。
図3において、筐体2に収容されている蓄電装置、電力変換装置及びこれらの装置に関する配線設備は、図示省略している。天面パネル23、底面パネル24、側面パネル25、26の正面側の端部には、複数のつば27と、複数のガイド面28と、複数の補強面29とが、それぞれ形成されている。一部のつば27の正面側には、複数のネジ受け(図示省略)が形成されている。
図1に示すように、正面パネル22を角筒部20に装着し、複数のネジ51を正面パネル22を介して複数のネジ受けへそれぞれ締結することで、正面パネル22が角筒部20に固定される。
【0030】
以下の説明では、複数のつば27、ガイド面28及び補強面29のうち、底面パネル24と側面パネル26とにそれぞれ接続する2個のつば27、ガイド面28及び補強面29について、代表的に説明する。他のパネル23、25と接続するつば27、ガイド面28及び補強面29は当該2個のつば27、ガイド面28及び補強面29と同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0031】
ここで、底面パネル24側に設けられているつば27、ガイド面28及び補強面29をそれぞれ第1つば271、第1ガイド面281及び第1補強面291と適宜称する。また、側面パネル26側に設けられているつば27、ガイド面28及び補強面29をそれぞれ第2つば272、第2ガイド面282及び第2補強面292と適宜称する。
【0032】
本実施形態に係る筐体2の補強構造7は、筐体2と、複数の補強部材6とにより構成されている。複数の補強部材6は、複数のガイド面28のうち互いに非接合の状態で所定の角度(例えば90度)をなして当接又は近接している2個のガイド面28にそれぞれ設けられている。
【0033】
《筐体の製造方法》
図4から
図9は、筐体2の製造方法の各工程を説明する図面である。はじめに、
図4に示すように所定の平面形状を有する1枚の金属板200を準備する。金属板200は、例えば打ち抜き加工により成形されたものである。金属板200は、長尺形状を有し、金属板200の延びる方向を、「長尺方向」と称する。また、金属板200は、長尺方向に並ぶ5個の領域F1~F5を有する。
【0034】
領域F1は、長尺方向の一方端部201側に位置し、領域F5は、長尺方向の他方端部202側に位置する。領域F1、F5は、後に底面パネル24となる領域である。領域F2は、後に側面パネル26となる領域であり、領域F1の長尺方向他方側に隣接する。領域F3は、後に天面パネル23となる領域であり、領域F2の長尺方向他方側に隣接する。領域F3の長尺方向の長さは、領域F1及び領域F5の長尺方向の長さの和と等しい。領域F4は、後に側面パネル25となる領域であり、領域F3の長尺方向他方側に隣接し、領域F5の長尺方向一方側に隣接する。領域F4の長尺方向の長さは、領域F2の長尺方向の長さと等しい。
【0035】
領域F1~F5の厚みは、それぞれ等しい。また、領域F1~F5の長尺方向及び厚み方向と直交する方向(以下、「幅方向」と称する。)の長さは、それぞれ等しい。互いに隣接する領域F1~F5間の幅方向の両端には、それぞれ切れ込みC1が形成されている。また、
図4において、後の工程における曲げ線L21~L24を仮想的な直線として示す。
【0036】
図5は、金属板200を曲げ加工により組み立てている様子を示す(第1曲げ加工工程)。金属板200は、領域F1、F2間の曲げ線L21において直角に折り曲げられる。また、金属板200は、領域F2、F3間の曲げ線L22、領域F3、F4間の曲げ線L23、領域F4、F5間の曲げ線L24のそれぞれにおいて直角に折り曲げられる。これにより、領域F2と領域F4は、互いに平行に位置し、領域F3と領域F1、F5は、互いに平行に位置する。金属板200を曲げ加工した後、一方端部201と他方端部202とが突合され、当該突合せ部分にはコーキング剤が充填される。
【0037】
図6は、第1曲げ加工工程の後の領域F1、領域F2を拡大して示す斜視図である。以下、領域F1と領域F2とのコーナー部分を代表的に説明し、他のコーナー部分(例えば、領域F2と領域F3のコーナー部分)は、領域F1と領域F2とのコーナー部分と同様の構成を有するため、説明を省略する。領域F1と領域F2との曲げ線L21が延びる方向を「第1方向」と称する。第1方向の一方側は、後に正面側となる方向であり、第1方向の他方側は、後に背面側となる方向である。
【0038】
図6において、後の工程における曲げ線L31~L33、L41~L43を仮想的な直線として示す。曲げ線L31は、領域F1の第1方向一方側に位置し、第1方向及び領域F2と直交する方向に延びている。曲げ線L31の一端は、曲げ線L21の一端と接続している。曲げ線L32は、曲げ線L31の第1方向一方側に位置し、曲げ線L31と平行な方向に延びている。曲げ線L33は、曲げ線L32の第1方向一方側に位置し、曲げ線L31、L32と平行な方向に延びている。
【0039】
曲げ線L41は、領域F2の第1方向一方側に位置し、第1方向及び領域F1と直交する方向に延びている。曲げ線L41の一端は、曲げ線L21の一端及び曲げ線L31の一端と接続している。すなわち、曲げ線L21、L31、L41の一端は、共通する一点上に位置している。曲げ線L42は、曲げ線L41の第1方向一方側に位置し、曲げ線L41と平行な方向に延びている。曲げ線L43は、曲げ線L42の第1方向一方側に位置し、曲げ線L41、L42と平行な方向に延びている。
【0040】
曲げ線L31、L32の第1方向の距離は、曲げ線L41、L42の第1方向の距離と等しい。また、曲げ線L32、L33の第1方向の距離は、曲げ線L42、L43の第1方向の距離と等しい。また、曲げ線L33から領域F1の端E1までの距離は、曲げ線L43から領域F2の端E2までの距離と等しい。
【0041】
曲げ線L42、L43の間には、金属板200を厚み方向に貫通する穴h1が形成されている。また、曲げ線L41、L42の間と、曲げ線L32、L33の間には、それぞれ金属板200を厚み方向に貫通する穴h2、h3が形成されている。
【0042】
ここで、金属板200のうち曲げ線L31、L41よりも第1方向一方側に位置する領域が、金属板200の端部であり、筐体2の完成後に「角筒部20の筒端部」となる領域である。
【0043】
領域F1と領域F2との間に形成されている切れ込みC1は、第1切れ込み端部C11と、第2切れ込み端部C12とを有する。第1切れ込み端部C11は、曲げ線L21の第1方向一方側の端から領域F1の第1方向一方側の端E1まで延びる金属板200の端部の一部領域である。第2切れ込み端部C12は、曲げ線L21の第1方向一方側の端から領域F2の第1方向一方側の端E2まで延びる金属板200の端部の一部領域である。
【0044】
図7は、金属板200を曲げ線L31、L41において曲げ加工している様子を示す(第2曲げ加工工程)。具体的には、領域F1の端E1が領域F2側(金属板200により形成される角筒部20の開口の内側)に位置するように、曲げ線L31において金属板200を直角に折り曲げている。また、領域F2の端E2が領域F1側(金属板200により形成される角筒部20の開口の内側)に位置するように、曲げ線L41において金属板200を略直角に折り曲げている。先に曲げ線L31において金属板200を折り曲げ、その後に曲げ線L41において金属板200を折り曲げると、
図7に示すように、第1切れ込み端部C11と端E1とが隣接する部分と、第2切れ込み端部C12と端E2とが隣接する部分とが、第1方向に重なり合う。
【0045】
図8は、金属板200を曲げ線L32、L33、L42、L43において曲げ加工している様子を示す(第3曲げ加工工程)。具体的には、第2曲げ加工工程の後、領域F2の端E2が第1方向一方側(角筒部20の外側)を向くように、曲げ線L42において金属板200を直角に折り曲げる。その後、領域F2の端E2が曲げ線L41側(角筒部20の開口の外側)を向くように、曲げ線L43において金属板200を直角に折り曲げる。次に、領域F1の端E1が第1方向一方側(角筒部20の外側)を向くように、曲げ線L32において金属板200を直角に折り曲げる。その後、領域F1の端E1が曲げ線L31側(角筒部20の開口の外側)を向くように、曲げ線L33において金属板200を直角に折り曲げる。
【0046】
曲げ線L32、L33、L42、L43において金属板200をそれぞれ直角に折り曲げた状態において、第1切れ込み端部C11のうち曲げ線L31と曲げ線L32の間に位置する端面と、第2切れ込み端部C12のうち曲げ線L41と曲げ線L42の間に位置する端面とは、突合されている。また、同状態において、第1切れ込み端部C11のうち曲げ線L32と曲げ線L33の間に位置する端面と、第2切れ込み端部C12のうち曲げ線L42と曲げ線L43の間に位置する端面とは、所定の角度(例えば、90度)をなして当接又は近接している。一方で、同状態において、第1切れ込み端部C11のうち曲げ線L33と端E1の間に位置する端面と、第2切れ込み端部C12のうち曲げ線L43と端E2の間に位置する端面とは、突合されておらず、互いに離れて位置している。
【0047】
曲げ線L32、L33、L42、L43において金属板200を折り曲げた後、第1切れ込み端部C11と、第2切れ込み端部C12は、互いに非接合の状態(すなわち、溶接により接合されていない状態)となっている。第1切れ込み端部C11と第2切れ込み端部C12とが当接又は近接している部分には、コーキング剤が充填される。コーキング剤は、例えばシリコーン樹脂を含む。これにより、当該当接又は近接している部分の隙間が埋められる。以上により、第3曲げ加工工程が終了する。
【0048】
第3曲げ加工工程により、領域F1のうち曲げ線L31よりも第1方向他方側の領域が、底面パネル24となる。また、領域F1のうち曲げ線L31と曲げ線L32の間の領域が第1つば271となる。また、領域F1のうち曲げ線L32と曲げ線L33の間の領域が第1ガイド面281となる。また、領域F1のうち曲げ線L33と端E1の間の領域が第1補強面291となる。
【0049】
同様に、第3曲げ加工工程により、領域F2のうち曲げ線L41よりも第1方向他方側の領域が、側面パネル26となる。また、領域F2のうち曲げ線L41と曲げ線L42の間の領域が第2つば272となる。また、領域F2のうち曲げ線L42と曲げ線L43の間の領域が第2ガイド面282となる。また、領域F2のうち曲げ線L43と端E2の間の領域が第2補強面292となる。また、金属板200は、角筒部20となる。
【0050】
換言すれば、第1つば271は、底面パネル24(本開示の第1壁面)の正面側の筒端部から屈曲し、角筒部20の開口の内側に向かって垂直に延びる領域である。第1つば271は、背面パネル21と平行な平面上に位置している。第1ガイド面281(本開示の第1面)は、第1つば271のうち角筒部20の開口の内側から屈曲し、正面側(角筒部20の外側)に向かって垂直に延びる領域である。第1ガイド面281は、底面パネル24と平行な平面上に位置している。第1補強面291は、第1ガイド面281の正面側から屈曲し、角筒部20の開口の外側に向かって垂直に延びる領域である。第1補強面291は、背面パネル21と平行な平面上に位置している。
【0051】
また、第2つば272は、側面パネル26(本開示の第2壁面)の正面側の筒端部から屈曲し、角筒部20の開口の内側に向かって垂直に延びる領域である。第2つば272は、背面パネル21と平行な平面上に位置している。第2ガイド面282(本開示の第2面)は、第2つば272のうち角筒部20の開口の内側から屈曲し、正面側(角筒部20の外側)に向かって垂直に延びる領域である。第2ガイド面282は、側面パネル26と平行な平面上に位置している。第2補強面292は、第2ガイド面282の正面側から屈曲し、角筒部20の開口の外側に向かって垂直に延びる領域である。第2補強面292は、背面パネル21と平行な平面上に位置している。
【0052】
第1つば271と第2つば272は、角筒部20の正面側のそれぞれの筒端部を折り曲げることにより形成されている。第1つば271と第2つば272は、互いに非接合の状態で、同じ平面上において突合されている。また、第1ガイド面281と第2ガイド面282は、第1つば271と第2つば272における角筒部20の開口の内側をそれぞれ折り曲げることにより形成されている。第1ガイド面281と第2ガイド面282は、互いに非接合の状態で、所定の角度をなして当接又は近接している。第1つば271と第2つば272とが突合されている部分(以下、「突合せ部分」と称する。)と、第1ガイド面281と第2ガイド面282とが所定の角度をなして当接又は近接している部分(以下、「当接部分」と称する。)とには、それぞれコーキング剤が充填されている。コーキング剤により突合せ部分及び当接部分のそれぞれの隙間を埋めることで、筐体2の外部から内部への水の侵入を防ぐことができる。
【0053】
なお、第3曲げ加工工程は、第2曲げ加工工程よりも先に実行してもよい。すなわち、金属板200を曲げ線L32、L33、L42、L43においてそれぞれ垂直に曲げた後に、曲げ線L31、L33においてそれぞれ垂直に曲げるようにしてもよい。また、第2曲げ加工工程及び第3曲げ加工工程の全部又は一部を並行して実行してもよい。
【0054】
第3曲げ加工工程の後、複数の補強部材6が角筒部20に固定される(固定工程)。
図8には、角筒部20に固定される前の補強部材6を示す。
図9には、角筒部20に固定された後の補強部材6を示す。以下、補強部材6の各方向については、
図9に示すように角筒部20に固定されている状態における方向を基準にして説明する。
【0055】
図8を参照する。補強部材6は、一枚の金属板(例えば、鉄鋼板)により構成されている部材であり、接続面61と、第1固定面62と、第2固定面63と、第3固定面64とを有する。第1固定面62は、第1ガイド面281のうち第2ガイド面282と鋭角をなす側の面と当接している状態で、第1ガイド面281にネジ55(
図9)により固定される面である。第2固定面63は、第2ガイド面282のうち第1ガイド面281と鋭角をなす側の面と当接している状態で、第2ガイド面282にネジ56(
図9)により固定される面である。第3固定面64は、第2つば272のうち角筒部20の内側の面と当接している状態で、第2つば272にネジ57(
図9)により固定される面である。第3固定面64は、第2固定面63の第1方向の他方側(角筒部20の内側)に位置する辺から屈曲し、角筒部20の開口の外側に向かって垂直に延びている。
【0056】
接続面61は、第1固定面62と第2固定面63とを接続する面である。接続面61は、第1固定面62及び第2固定面63のそれぞれの第1方向一方側(すなわち、第1固定面62及び第2固定面63のうち角筒部20の外側)から屈曲し、第1固定面62及び第2固定面63のそれぞれの法線が交わる方向(すなわち、角筒部20の開口の内側)に向かって垂直に延びている。接続面61の角C6において、第1固定面62と第2固定面63とは非接触の状態で垂直に向かい合っている。すなわち、第1固定面62と第2固定面63とは互いに当接しておらず、第1固定面62と第2固定面63との間には隙間が形成されている。
【0057】
補強部材6は、接続面61の角C6を、角筒部20の第1切れ込み端部C11及び第2切れ込み端部C12の当接部分に位置させている状態で、角筒部20にネジ55、56、57により固定される。第1固定面62、第2固定面63及び第3固定面64には、穴62a、63a、64a(
図12)がそれぞれ形成されている。接続面61の角C6を当該当接部分に位置させている状態において、穴62aは穴h3と連通し、穴63aは穴h2と連通し、穴64aは穴h1と連通する。そして、
図9に示すように、穴62a及び穴h3にネジ55が挿入され、穴63a及び穴h2にネジ56が挿入され、穴64a及び穴h1にネジ57が挿入され、各ネジ55、56、57が締結されることで、第1固定面62が第1ガイド面281に固定され、第2固定面63が第2ガイド面282に固定され、第3固定面64が第2つば272に固定される。
【0058】
《補強構造の作用効果》
上記のとおり、角筒部20は1枚の金属板200を折り曲げることで形成されている。例えば、側面パネル26は、底面パネル24を構成する金属板200を直角に曲げることで構成されている。このため、互いに垂直に接続する2個のパネルの間は、継ぎ目なく連続している。これにより、筐体2の防水性をより高くすることができる。
【0059】
また、本実施形態の筐体2は、角筒部20の筒端部を折り曲げることで、第1つば271、第2つば272、第1ガイド面281及び第2ガイド面282を形成している。このように、角筒部20の筒端部に折り曲げ部分を形成することで、角筒部20のたわみを抑制し、角筒部20を構成する金属板200の厚みが薄い場合であっても、筐体2の強度を高めることができる。一方で、折り曲げ部分を形成すると、第1つば271、第2つば272、第1ガイド面281及び第2ガイド面282のそれぞれの折り目には、折り曲げ部分の角度を水平に戻そうとする方向の弾性力がはたらき、経年変化により突合せ部分及び当接部分がそれぞれ開くことで、筐体2の封止状態(より隙間なく筐体2の内部空間が形成されている状態)が破られるおそれがある。
【0060】
例えば、第1ガイド面281と第2ガイド面282とを角継手として溶接することで突合せ部分及び当接部分の開きを防止することも考えられるが、溶接をするには第1ガイド面281と第2ガイド面282とにある程度の厚みが必要となる。そこで、本実施形態では、第1ガイド面281と第2ガイド面282とは互いに非接合な状態で(すなわち、角継手として溶接されず)、補強部材6を第1ガイド面281及び第2ガイド面282にネジ止めすることで、突合せ部分及び当接部分が開くことを抑制する。
【0061】
このような補強構造7によれば、突合せ部分及び当接部分に溶接を行う必要がないため、溶接に掛かるコストを低減することができる。さらに、溶接が不要であることから角筒部20を構成する金属板200の厚みをより薄くすることが可能となり、筐体2の重量化に掛かるコスト(例えば、材料コストや輸送コスト)を削減することができる。以上により、補強構造7によれば、筐体2の製造コストを低減しつつ、突合せ部分及び当接部分における防水性を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1ガイド面281及び第2ガイド面282にそれぞれ固定されている第1固定面62及び第2固定面63が、第1ガイド面281及び第2ガイド面282の折り曲げ部分(曲げ線L32、L42)とは反対側(すなわち、角筒部20の外側)から角筒部20の開口の内側に向かって屈曲している接続面61により接続している。このため、第1ガイド面281及び第2ガイド面282が開こうとする力を、第1固定面62及び第2固定面63が接続面61から開こうとする力により打ち消すことができる。このため、第1ガイド面281と第2ガイド面282との開きをより確実に防止することができる。
【0063】
さらに、第1固定面62及び第2固定面63からそれぞれ垂直に接続面61が屈曲することで、第1固定面62及び第2固定面63のたわみを抑制することができ、補強部材6の強度をより高くすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、複数のガイド面28の第1方向一方側からそれぞれ垂直に延びる複数の補強面29が設けられていることで、ガイド面28のたわみを抑制することができる。これにより、ガイド面28を構成する金属板200の厚みが薄い場合であっても、ガイド面28が変形することを防止することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る補強部材6は、第1ガイド面281、第2ガイド面282及び第2つば272の3個の面に対して、それぞれ第1固定面62、第2固定面63及び第3固定面64を固定する。しかも、これら3個の面(第1ガイド面281、第2ガイド面282及び第2つば272)は、それぞれ垂直な関係を有する面であるため、より強固に補強部材6を固定することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、接続面61の角C6において、第1固定面62と第2固定面63とは非接触の状態で垂直に向かい合っているため、第1固定面62と第2固定面63との間には隙間が形成されている。第1ガイド面281と第2ガイド面282との当接部分においてコーキング剤の盛り上がりが形成されている場合であっても、当該コーキング剤の盛り上がりは当該隙間内に収容されることで、コーキング剤と補強部材6との干渉を防止することができる。
【0067】
また、上記の実施形態では、第3曲げ加工工程においてコーキング剤を充填し、その後に固定工程において補強部材6を角筒部20へ固定している。しかしながら、第3曲げ加工工程において金属板200を曲げ加工した後、コーキング剤を充填する前に補強部材6を角筒部20へ固定し、その後にコーキング剤を突合せ部分及び当接部分へ充填するように構成してもよい。この場合、第1固定面62と第2固定面63との間には隙間が形成されているため、当該隙間を介して、当接部分へコーキング剤を充填することができる。
【0068】
《補強部材の製造方法》
次に、補強部材6の製造方法について、
図10から
図12までを適宜参照して説明する。
図10から
図12は、補強部材6の製造方法を説明する図面である。はじめに、所定の平面形状に形成した1枚の金属板60を準備する。金属板60は、例えば厚み1mm以上2mm以下の鉄鋼板である。
図10は、本実施形態に係る平面形状の金属板60を示す平面図である。金属板60は、例えば打ち抜き加工により成形される。
【0069】
金属板60には、後に接続面61、第1固定面62、第2固定面63及び第3固定面64となる領域が形成されている。また、後の工程における曲げ線L11、L12、L13を仮想的な直線として示す。曲げ線L11は、接続面61と第2固定面63との間に位置する。曲げ線L12は、第2固定面63と第3固定面64との間に位置する。曲げ線L13は、接続面61と第1固定面62との間に位置する。曲げ線L12は、曲げ線L11に対して平行となる方向に延びている。曲げ線L13は、曲げ線L11に対して垂直となる方向に延びている。曲げ線L11と曲げ線L13は、後に接続面61の角C6となる部分において接続している。
【0070】
次に、
図11に示すように、曲げ線L11において金属板60を直角に折り曲げる。そして、第1固定面62が第2固定面63と同じ側に位置するように、曲げ線L13において金属板60を直角に折り曲げる。最後に、
図12に示すように、第3固定面64が接続面61と反対側に位置するように、曲げ線L12において金属板60を直角に折り曲げる。以上のように、1枚の金属板60を折り曲げることで補強部材6が製造される。
【0071】
このように構成することで、補強部材6の製造に際して、溶接を行う必要がない。このため、溶接に掛かるコストを削減することができる。また、1枚の金属板60は、折り曲げ前は平面形状を有するため、立体的な形状を有する部材と比べ、容易に多数の金属板60を生産することができる。また、補強部材6は、1枚の金属板60を折り曲げることで製造されるため、各面の間(例えば、第1固定面62と接続面61の間)は継ぎ目なく連続している。このため、補強部材6の強度をより高くすることができる。
【0072】
なお、上記の説明では曲げ線L11、L13、L12の順に金属板60を折り曲げることで補強部材6を製造するが、曲げ線L11、L12、L13の曲げ順は、この順に限られない。また、曲げ線L11、L12、L13において金属板60を同時に折り曲げてもよい。
【0073】
《筐体への取手の取り付け》
筐体2には、上記のとおり蓄電装置等の電気機器が収容されている。また、筐体2自体も金属により構成されているため、筐体2と、筐体2に収容されている電気機器とを合わせた総重量は、例えば50kg以上となる。しかも、筐体2には、
図1及び
図2に示すように持ち手がないため、筐体2を運搬しにくいという課題があった。そこで、本実施形態に係る筐体2は、運搬の際に一対の取手部材8を取り付ける。取手部材8は、側面パネル25、26にそれぞれ取り付けられる。以下、側面パネル25への取手部材8の取り付けを代表的に説明するが、側面パネル26へも、側面パネル25と同様に、取手部材8が取り付けられる。
【0074】
図13は、側面パネル25へ取手部材8を取り付ける様子を示す模式図である。取手部材8は、金属製の部材であり、接続部81と、取手部82とを有する。接続部81は、側面パネル25に沿って固定される部分である。取手部82は、接続部81に連結されているU字状の取手である。
【0075】
接続部81には、複数(本実施形態では2個)の穴81aが形成されている。複数の穴81aは、接続部81を側面パネル25に固定する際、側面パネル25に設けられているネジ52(
図1)を挿入するためのネジ穴と連通する。そして、穴81a及び当該ネジ穴へネジ58を挿入することで、接続部81が側面パネル25に固定される。筐体2の運搬の際には、一対の取手部材8を側面パネル25、26に固定することで、筐体2を一人でも容易に運ぶことができる。
【0076】
また、側面パネル25のネジ穴は、筐体2の運搬の際には接続部81を固定するためのネジ58を挿入するネジ穴として機能し、筐体2の壁WL1への固定の際には、固定具4を固定するためのネジ52を挿入するネジ穴として機能する。このように、接続部81及び固定具4をそれぞれ固定するためのネジ穴を共通して側面パネル25に設けることで、側面パネル25に設けるネジ穴の個数を削減することができ、側面パネル25の製造コストを削減することができる。また、ネジ穴の個数を少なくすることで、筐体2の防水性を向上することができる。
【0077】
《その他》
上記の実施形態では、屋外に筐体2を設置する。しかしながら、筐体2は屋内に設置されてもよい。上記の実施形態では、筐体2から取り外し可能な正面パネル22が設けられているが、正面パネル22ではなく側面パネル25、26のいずれか一方が筐体2から取り外し可能に設けられていてもよい。
【0078】
《補記》
なお、上述の実施形態については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 蓄電システム
2 筐体
20 角筒部
200 金属板
201 一方端部
202 他方端部
21 背面パネル
22 正面パネル
23 天面パネル
24 底面パネル(第1壁面)
25 側面パネル
26 側面パネル(第2壁面)
27 つば
271 第1つば
272 第2つば
28 ガイド面
281 第1ガイド面(第1面)
282 第2ガイド面(第2面)
29 補強面
291 第1補強面
292 第2補強面
3 放熱部
30 カバー
4 固定具
51、52、53、54、55、56、57、58 ネジ
6 補強部材
60 金属板
61 接続面
62 第1固定面
63 第2固定面
64 第3固定面
62a、63a、64a 穴
7 補強構造
8 取手部材
81 接続部
81a 穴
82 取手部
WL1 壁
F1、F2、F3、F4、F5 領域
C1 切れ込み
C11 第1切れ込み端部
C12 第2切れ込み端部
C6 角
E1 (領域F1の)端
E2 (領域F2の)端
L11、L12、L13 曲げ線
L21、L22、L23、L24 曲げ線
L31、L32、L33 曲げ線
L41、L42、L43 曲げ線
h1、h2、h3 穴