(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】画像読取装置、重送検知方法および重送検知プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20240925BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B65H7/12
H04N1/00 567J
(21)【出願番号】P 2020129540
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】福光 康則
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063843(JP,A)
【文献】特開2009-292574(JP,A)
【文献】特開2019-123580(JP,A)
【文献】特開2013-082539(JP,A)
【文献】特開2019-083429(JP,A)
【文献】実開昭57-111162(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00-7/20
B65H 43/00-43/08
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、
前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、
前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する制御部と、を備える画像読取装置であって、
前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、
前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記画像読取装置の電源が投入された場合に、前記搬送路に前記媒体が無い状態で前記受信部が受信する信号がキャリブレーション用のしきい値を上回るか否かを判定する判定処理を実行し、
前記判定処理により前記信号がキャリブレーション用のしきい値を上回らないと判定した場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも高い第3駆動電圧に設定し、
前記判定処理により前記信号がキャリブレーション用のしきい値を上回ると判定した場合に、前記姿勢に応じた前記駆動電圧の設定を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記受信部が受信する信号に基づいて前記搬送路における前記媒体の有無を検知し、前記搬送路に媒体が無い場合において、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第2駆動電圧に設定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、
前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、
前記受信部が受信する信号と所定のしきい値とを比較し、前記信号が前記しきい値を下回る場合に前記媒体の重送有りと検知する制御部と、を備える画像読取装置であって、
前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、
前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記しきい値を第1しきい値に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記しきい値を前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値に設定する、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
前記媒体の先端を含む前記媒体の所定範囲が前記搬送路における前記発信部および前記受信部の位置を通過するまでの期間は、前記制御部は、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記しきい値を前記第1しきい値よりも大きく且つ前記第2しきい値よりも小さい第3しきい値とする、ことを特徴とする
請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記受信部が受信する信号に基づいて前記搬送路における前記媒体の有無を検知し、前記搬送路に媒体が無い場合において、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記しきい値を前記第1しきい値に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記しきい値を前記第2しきい値に設定する、ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、
前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、
前記受信部が受信する信号を増幅する増幅回路と、
増幅後の前記信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する制御部と、を備える画像読取装置であって、
前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、
前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を第1増幅率に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を前記第1増幅率よりも低い第2増幅率に設定する、ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記受信部が受信する信号に基づいて前記搬送路における前記媒体の有無を検知し、前記搬送路に媒体が無い場合に
おいて、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を前記第1増幅率に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を前記第2増幅率に設定する、ことを特徴とする
請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
媒体が搬送される搬送路を挟む位置に配置される、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部を使用し、前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する重送検知方法であって、
前記搬送路を有する装置は、前記装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、
前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定工程を有する、ことを特徴とする重送検知方法。
【請求項10】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、を備える装置に、
前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する処理を実行させる重送検知プログラムであって、
前記装置は、前記装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、
前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定機能を、前記装置に実行させる、ことを特徴とする重送検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、重送検知方法および重送検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナー等の画像読取装置において、読取部で読み取られるシート状の媒体の重送検知のために、超音波センサーを搭載したものがある。
媒体を一枚の状態で搬送することを単送と呼び、複数枚重なった状態の媒体を搬送することを重送と呼ぶ。
【0003】
超音波センサーは、媒体が搬送される搬送路において搬送路を挟む一方と他方の位置に設けられる、超音波を発する発信部と超音波を受信する受信部とを備える。受信部が受信する超音波の強度は、重送が発生していない状態では大きく、重送が発生した状態では小さくなる為、受信部が受信する超音波の強度としきい値とを比較することにより、重送の有無を検知することができる。このような重送検知のためのしきい値を調整する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
媒体の厚み等の特徴は媒体によって様々であるため、超音波センサーの受信部が受信する超音波の強度は、単送か重送かだけではなく、搬送される媒体の種別によっても異なる。そのため、様々な媒体が搬送される各々の状況で正しく重送の有無を検知することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
画像読取装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する制御部と、を備え、前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する。
【0007】
画像読取装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、前記受信部が受信する信号と所定のしきい値とを比較し、前記信号が前記しきい値を下回る場合に前記媒体の重送有りと検知する制御部と、を備え、前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記しきい値を第1しきい値に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記しきい値を前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値に設定する。
【0008】
画像読取装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、前記搬送部が搬送する前記媒体を読み取る読取部と、前記受信部が受信する信号を増幅する増幅回路と、増幅後の前記信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する制御部と、を備え、前記画像読取装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能であり、前記制御部は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を第1増幅率に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記増幅回路による増幅率を前記第1増幅率よりも低い第2増幅率に設定する。
【0009】
重送検知方法は、媒体が搬送される搬送路を挟む位置に配置される、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部を使用し、前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する。前記搬送路を有する装置は、前記装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能である。前記方法は、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定工程を有する。
【0010】
重送検知プログラムは、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部による前記媒体の搬送路を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および前記超音波を受信する受信部と、を備える装置に、前記受信部が受信する信号に基づいて前記媒体の重送の有無を検知する処理を実行させる。前記装置は、前記装置が載置される載置面に対して前記搬送路が傾斜する第1姿勢と、前記載置面に対する前記搬送路の角度が前記第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能である。前記プログラムは、前記姿勢が前記第1姿勢である場合に、前記駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が前記第2姿勢である場合に、前記駆動電圧を前記第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定機能を、前記装置に実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】傾斜姿勢や水平姿勢を含む複数の姿勢をとり得る画像読取装置の外観を示す図。
【
図4】第1実施形態にかかるステップS130の詳細を示すフローチャート。
【
図5】第1実施形態にかかるステップS150の詳細を示すフローチャート。
【
図6】媒体の種別や重送単送の別に応じた駆動電圧と出力信号の強度との関係性を示す図。
【
図7】第2実施形態にかかるステップS130の詳細を示すフローチャート。
【
図8】第2実施形態にかかるステップS150の詳細を示すフローチャート。
【
図9】媒体の種別や重送単送の別に応じた駆動電圧と出力信号の強度との関係性を複数のしきい値とともに示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0013】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる画像読取装置10の構成をブロック図により簡易的に示している。画像読取装置10は、原稿としての媒体を読み取り可能な装置であり、スキャナー、ファクシミリ、複合機等である。画像読取装置10は、プロセッサーに相当する制御部20を備える。制御部20は、CPU21、ROM22、RAM23を有するICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0014】
制御部20では、CPU21が、ROM22や、その他のメモリー等に保存されたプログラム24に従った演算処理を、RAM23をワークエリアとして用いて実行することにより、画像読取装置10を制御する。プログラム24の少なくとも一部は、重送検知プログラムに該当する。画像読取装置10は、重送検知方法を実行する。プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0015】
画像読取装置10は、媒体を搬送する搬送部30と、搬送される媒体を読み取る読取部40とを備える。読取部40は、例えば、複数の光電変換素子を1次元状に並べてなるラインセンサーである。搬送部30は、一または複数のモーター31や、モーター31の動力によって回転する一または複数のローラー32や、ローラー32によって搬送される媒体を通過させる搬送路を備える。搬送路については、
図2の符号33を参照のこと。ローラー32は、搬送路の一部を構成するとも言える。制御部20からの制御信号に応じてモーター31が駆動されるとローラー32が回転し、搬送部30は、媒体を搬送路の上流から下流へ搬送する。以下では、搬送路の上流、下流を、単に、上流、下流と言う。このような搬送部30を有する画像読取装置10を、媒体を搬送する搬送装置の一種と捉えることもできる。
【0016】
制御部20が搬送部30を制御して媒体を搬送路に沿って搬送させると、長手方向が搬送路と交差するように配設されているラインセンサーとしての読取部40が、搬送中の媒体の明暗または色に対応した読取信号を制御部20に出力する。制御部20は、読取部40による媒体の読取信号に基づいて画像データを生成し、画像データや画像データをフォーマット変換した出力データを、図示しない外部のコンピューター等に出力する。
【0017】
搬送路を挟む位置には、互いに対向するスピーカー51とマイクロフォン52とが配置されている。マイクロフォンをマイクと略す。スピーカー51およびマイク52は、搬送路における読取部40よりも上流の位置に配置されている。スピーカー51は駆動信号が入力されるとマイク52に向けて超音波を出力する。スピーカー51は、超音波を発する発信部に該当する。マイク52は、受信した超音波の音量に対応する信号を出力する。マイク52は、超音波を受信する受信部に該当する。
【0018】
マイク52の出力端子は、増幅回路60の入力端子に接続され、増幅回路60の出力端子は、A/D変換器70の入力端子に接続されている。A/D変換器70の出力端子は、制御部20の入力端子の一つに接続されている。A/D変換器70を制御部20の一部と解すれば、増幅回路60の出力端子は、制御部20へ接続されている。増幅回路60は、マイク52が受信して出力する信号を入力し、増幅した上で出力する。増幅回路60は、所定の増幅率を有する一つ以上のアンプや、バンドパスフィルターや、ピークホールド回路等を有する。
【0019】
増幅回路60による増幅後の信号は、A/D変換器70によりアナログデジタル変換された上で、制御部20に入力する。制御部20は、搬送部30が搬送する媒体が搬送路におけるスピーカー51とマイク52との間を通過する期間のマイク52の出力信号、正確には、当該信号に増幅回路60やA/D変換器70による処理を施した後の信号を、重送検知用の所定のしきい値と比較する。そして、制御部20は、A/D変換器70を通じて入力した信号が重送検知用のしきい値を超えていれば、適切な搬送、つまり単送と検知し、一方、当該信号が重送検知用のしきい値以下であれば、重送と検知する。このように、制御部20は、受信部が受信する信号に基づいて媒体の重送の有無を検知する。
【0020】
駆動回路71は、スピーカー51へ駆動信号を出力する。駆動回路71は、スピーカー51が超音波を出力するように超音波の周波数の交流信号を出力する発振回路である。電圧調整回路72は制御部20によって制御されて、駆動回路71へ駆動電圧を供給する。駆動回路71が出力する駆動信号の大きさは、電圧調整回路72による駆動電圧にほぼ比例する。スピーカー51が発する超音波の音量も、この駆動電圧にほぼ比例する。マイク52の出力もスピーカー51が発する超音波の音量に比例する。従って、制御部20は、電圧調整回路72が供給する駆動電圧を調整することにより、マイク52の出力を調整することができる。電圧調整回路72は、異なる複数の駆動電圧のいずれかを、制御部20の指示に応じて設定して出力することが可能である。以下では、電圧調整回路72が供給する駆動電圧を、単に、駆動電圧と記載する。
【0021】
画像読取装置10は、画像読取装置10が載置される載置面に対して搬送路が傾斜する「第1姿勢」と、載置面に対する搬送路の角度が第1姿勢であるときよりも小さい「第2姿勢」とのいずれにも姿勢を切り替え可能である。載置面は、ユーザーによって画像読取装置10が置かれる面であり、一般的には水平面である。ただし、載置面が実際に水平であるか否かは、問わない。以下では、解り易さを優先して、第1姿勢を「傾斜姿勢」と称し、第2姿勢を「水平姿勢」と称する。言うまでもなく、水平姿勢は、搬送路が水平である状態に限定する意味ではなく、第1姿勢と比較して水平に近い角度といった程度の意味である。水平姿勢を、略水平姿勢と称してもよい。
【0022】
図2は、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2を含む複数の姿勢をとり得る画像読取装置10の外観を、画像読取装置10の横からの視点により簡単に示している。画像読取装置10は、本体1、本体1の支持部2、及び、姿勢切替部3を備える。
図2では省略しているが、本体1は
図1に示す構成を含んでいる。支持部2は、載置面4に載置された状態で、本体1を支持する。姿勢切替部3は、本体1を、傾きが互いに異なる複数の姿勢のいずれかに切り替え可能である。
【0023】
図2では、図内上段に、姿勢が水平姿勢P2であるときの画像読取装置10を示している。
図2に示す3つの姿勢の中で、水平姿勢P2のときが、搬送路33の角度は最も水平に近い。
図2では、本体1内の搬送路33を二点鎖線で示している。
図2内中段に、姿勢が傾斜姿勢P1であるときの画像読取装置10を示している。傾斜姿勢P1であるとき、搬送路33は、水平姿勢P2であるときよりも傾斜が急である。
図2内下段に、姿勢が収納姿勢P0であるときの画像読取装置10を示している。収納姿勢P0であるとき、搬送路33は、傾斜姿勢P1であるときよりも垂直に近い角度となっている。収納姿勢P0は、画像読取装置10を使用しないときの姿勢である。
【0024】
搬送路33の上流は、給紙口34となっており、給紙口34の上流には給紙トレイ35が延伸している。つまり、給紙トレイ35に置かれた媒体が、搬送部30によって給紙口34から本体1内部に取り込まれて、搬送路33に沿って搬送される。給紙トレイ35は、その長さを伸縮可能であったり、収納姿勢P0のために本体1に対して折り曲げ可能であったりする。傾斜姿勢P1や水平姿勢P2においては、給紙トレイ35も搬送路33の一部とみなしてよい。
【0025】
搬送路33の下流には、排紙トレイ36が設けられている。搬送部30は、読取部40により読み取られた媒体をさらに下流へ搬送することにより、読取後の媒体を排紙トレイ36へ排出する。排紙トレイ36も、その長さを伸縮可能であったり、収納姿勢P0のために本体1に対して折り曲げ可能であったりする。
【0026】
支持部2は、搬送路33に対して交差する向きの回転軸5を有し、回転軸5を中心として本体1を傾動可能に支持している。ユーザーは、姿勢切替部3を操作することにより、本体1を傾動させて、本体1を収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれかにする。例えば、姿勢切替部3は、ユーザーが操作可能なレバーであり、支持部2に対する本体1の角度を保持するロック機構と連動する。ユーザーは、姿勢切替部3を操作して、ロック機構によるロックを一時的に解除しつつ、支持部2に対する本体1の角度を変更し、再びロック機構によるロックを有効化することにより、本体1を収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれかにする。このような具体例に限らず、画像読取装置10は、第1姿勢および第2姿勢を含む複数の姿勢のいずれにも姿勢を切り替え可能な構造を有していればよい。
【0027】
図2から解るように、収納姿勢P0は、画像読取装置10の設置に必要な設置面積が最も小さく、不使用時の保管に適した姿勢である。一方、水平姿勢P2は、設置面積が最も大きい。従って、傾斜姿勢P1が、画像読取装置10の使用時の標準的な姿勢と言える。水平姿勢P2は、薄紙といった、傾斜が急な給紙トレイ35では給紙の精度が低下し易い媒体の読み取りに適した姿勢である。傾斜姿勢P1は、定型紙や厚紙といった、傾斜が急な給紙トレイ35で円滑に給紙できる媒体の読み取りに適した姿勢である。
従って、傾斜姿勢P1や水平姿勢P2といった各姿勢は、そのときユーザーが搬送の対象としている媒体の種別を反映していると言える。
【0028】
2.第1実施形態:
図1~6を参照して、本件にかかる第1実施形態を説明する。
図3は、制御部20がプログラム24に従って実行する重送検知設定処理をフローチャートにより示している。制御部20は、画像読取装置10の電源が投入されたことを検知した場合、又は、画像読取装置10の姿勢が変化中であることを検知した場合に、当該フローチャートを開始する。
【0029】
画像読取装置10は、姿勢を検知するポジションセンサー25を有する。制御部20は、ポジションセンサー25が出力する信号に応じて、現在の姿勢が収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれであるか、或いは収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれでもないことを検知する。収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれでもないとは、姿勢が変化中であることを意味する。ポジションセンサー25としては、光センサーや磁気センサーといった非接触式センサーや、接触式センサー等を用いることができる。
【0030】
ステップS100では、制御部20は、カバーが閉じており、かつ姿勢が収納姿勢P0、傾斜姿勢P1、水平姿勢P2のいずれかに確定している場合に、“Yes”と判定してステップS110へ進む。カバーが閉じていないか、あるいは、姿勢が確定していない場合は、ステップS100において“No”と判定して、当該フローチャートを終了する。なお、電源が投入されたことを契機として当該フローチャートを開始した状況では、画像読取装置10の姿勢は傾斜姿勢P1又は水平姿勢P2のいずれかであるとする。ステップS100の“No”の判定により当該フローチャートを終了した場合は、制御部20は、ステップS100の判定を繰り返し行えばよい。
【0031】
カバーとは、本体1の筐体の一部であり、ユーザーが手動で開閉することができる。カバーを開くことで搬送路33の一部が外部に露出するため、ユーザーは、例えば、搬送路33に詰まった媒体を取り出すことができる。制御部20は、不図示のカバー開閉検知用のセンサーからの信号に従って、カバーの開閉状況を判断することができる。
【0032】
ステップS110では、制御部20は、給紙トレイ35を除く搬送路33に媒体が存在するか否かを判定し、媒体が存在する場合には、“Yes”の判定からステップS160へ進む。一方、搬送路33に媒体が存在しない場合には、“No”の判定からステップS120へ進む。制御部20は、搬送路33における媒体の有無を検知する不図示のセンサーからの信号に従って、搬送路33における媒体の有無を判断すればよい。
制御部20は、ステップS160において、媒体詰まりが発生した旨のジャムエラーをユーザーへ通知した上で当該フローチャートを終了する。ユーザーへのエラーの通知方法は、不図示のディスプレイへの表示や音声出力により行えばよい。
【0033】
ステップS120では、制御部20は、初期化フラグ=1であるか否かを判定し、初期化フラグ=0であれば“No”の判定からステップS130へ進み、初期化フラグ=1であれば“Yes”の判定からステップS150へ進む。初期化フラグとは、電源投入に応じて実行すべき処理をしたか否かを表すフラグであり、電源投入時には強制的に“0”に設定されている。
【0034】
制御部20は、ステップS130では「電源投入に応じた重送検知設定処理」を実行し、ステップS150では「姿勢変化に応じた重送検知設定処理」を実行する。ステップS130,S150については、
図4,5を参照して説明する。ステップS130,S150が設定工程に該当し、この設定工程をプロセッサーに実行させるプログラム24の機能が、設定機能に該当する。
ステップS130を実行した後、ステップS140では、制御部20は、初期化フラグを“0”から“1”へ変更し、その上で当該フローチャートを終了する。また、制御部20は、ステップS150を実行して当該フローチャートを終了する。
【0035】
図4は、ステップS130の詳細をフローチャートにより示している。
ステップS131では、制御部20は、キャリブレーション受信レベルを取得する。ここで言うキャリブレーションとは、気温、湿度、気圧といった画像読取装置10が置かれた環境に起因して異なるマイク52の受信レベルを、重送検知に必要な程度に適正化する処理である。制御部20は、搬送路33に媒体が無い状態で、例えば、駆動電圧を標準的な値である11Vに設定し、マイク52の受信レベルを取得する。制御部20が取得するマイク52の受信レベルとは、マイク52からの出力信号であり、
図1の説明によれば、A/D変換器70を通じて制御部20へ入力される信号である。このようにステップS131において、搬送路33に媒体が無い状態で制御部20が取得するマイク52の受信レベルが、キャリブレーション受信レベルである。
【0036】
制御部20は、ステップS131において、キャリブレーション受信レベルを複数回取得し、複数回取得したキャリブレーション受信レベルの平均値を、次のステップS132においてキャリブレーション受信レベルとして取り扱ってもよい。なお、制御部20は、ステップS131でキャリブレーション受信レベルを取得するために、一時的に増幅回路60からの出力のレベルを低下させる。具体的には、増幅回路60が複数のアンプを繋いだ多段増幅回路とされている場合、ステップS131では、制御部20は、増幅回路60の最終段から出力される信号ではなく、増幅回路60における増幅途中の信号を取得する。或いは、増幅回路60の前段に抵抗分圧回路等による減衰回路が設けられている場合、制御部20は、通常は機能を無効化している減衰回路をステップS131においては有効化し、マイク52の出力を減衰回路により減衰した上で増幅回路60へ入力させるとしてもよい。つまり、ステップS131では、マイク52からの出力信号に対する増幅回路60による増幅効果を実質的に減じた上で、マイク52からの出力信号としてのデジタル値をA/D変換器70を通じて取得する。
【0037】
ステップS132では、制御部20は、キャリブレーション受信レベルが、キャリブレーション用の所定のしきい値THCを上回るか否かを判定する判定処理を実行する。制御部20は、キャリブレーション受信レベルがしきい値THCを上回る場合、“Yes”の判定からステップS133へ進み、一方、キャリブレーション受信レベルがしきい値THCを上回らない場合、“No”の判定からステップS136へ進む。ステップS132における“Yes”の判定は、画像読取装置10が置かれた現在の環境において、マイク52の出力信号が重送検知を行うために十分な強度であることを意味する。
【0038】
ステップS133では、制御部20は、駆動電圧を「第2駆動電圧」に設定する。一例として、第2駆動電圧は、9Vであるとする。
ステップS134では、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2であるか否かを判定し、水平姿勢P2であれば、“Yes”と判定してステップS130を終える。
【0039】
前述したように、ステップS130においては、画像読取装置10の姿勢は、傾斜姿勢P1または水平姿勢P2のいずれかである。従って、ステップS134において、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2でなければ、傾斜姿勢P1に該当し、制御部20は“No”の判定からステップS135へ進む。
【0040】
ステップS135では、制御部20は、駆動電圧を第2駆動電圧よりも高い「第1駆動電圧」に設定してステップS130を終える。一例として、第1駆動電圧は、13Vである。
このようなステップS133,S134,S135によれば、制御部20は結果的に、画像読取装置10の姿勢が第1姿勢であれば駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が第2姿勢であれば駆動電圧を第2駆動電圧に設定する、と言える。
なお、制御部20は、ステップS132の“Yes”の判定後、ステップS134の判定を実行し、ステップS134で“Yes”と判定してからステップS133を実行してもよい。
【0041】
一方、ステップS136では、制御部20は、駆動電圧を第1駆動電圧よりも高い「第3駆動電圧」に設定してステップS130を終える。一例として、第3駆動電圧は、21Vである。つまり、ステップS136においては、画像読取装置10が置かれた現在の環境下では、マイク52の出力信号の強度が重送検知を行うために十分な強度に達しないため、駆動電圧を第3駆動電圧に設定することで、この強度を強制的に引き上げる。制御部20は、駆動電圧を第3駆動電圧に設定した後は、再びの電源投入に応じてステップS130を実行してステップS132で“Yes”と判定するまでは、駆動電圧の設定を維持する。
【0042】
図5は、ステップS150の詳細をフローチャートにより示している。これまでの説明から解るように、ステップS150は、画像読取装置10の電源が投入されてステップS130が実行された後の状態で、ユーザーが画像読取装置10の姿勢の変化を開始させ、その姿勢を確定させた場合に実行される。
【0043】
ステップS151では、制御部20は、画像読取装置10の現在の姿勢を検知し、かつ、現在の駆動電圧の設定を取得する。制御部20は、ステップS151で得た情報に基づいて、ステップS152以下の判定を行う。
ステップS152では、制御部20は、駆動電圧の設定が21V、つまり第3駆動電圧であるか否かを判定し、21Vの設定であれば“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0044】
ステップS152で“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS153において、姿勢が収納姿勢P0であるか否かを判定し、収納姿勢P0であれば“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0045】
ステップS153で“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS154において、姿勢が傾斜姿勢P1であり且つ駆動電圧の設定が13Vつまり第1駆動電圧であるか、否か、を判定する。制御部20は、傾斜姿勢P1であり、且つ、駆動電圧が13Vに設定されていれば、ステップS154で“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0046】
ステップS154で“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS155において、姿勢が水平姿勢P2であり且つ駆動電圧の設定が9Vつまり第2駆動電圧であるか、否か、を判定する。制御部20は、水平姿勢P2であり、且つ、駆動電圧が9Vに設定されていれば、ステップS155で“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0047】
ステップS155で“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS156において、姿勢が水平姿勢P2であるか否かを判定する。制御部20は、水平姿勢P2であれば、ステップS156で“Yes”と判定してステップS157へ進む。一方、水平姿勢P2でなければ、つまり傾斜姿勢P1であれば、ステップS156で“No”と判定してステップS158へ進む。
【0048】
ステップS156で“Yes”と判定したということは、姿勢が水平姿勢P2であり駆動電圧の設定が13Vであるから、制御部20は、ステップS157において、駆動電圧の設定を13Vから9Vへ変更した上で、ステップS150を終える。
一方、ステップS156で“No”と判定したということは、姿勢が傾斜姿勢P1であり駆動電圧の設定が9Vであるから、制御部20は、ステップS158において、駆動電圧の設定を9Vから13Vへ変更した上で、ステップS150を終える。
【0049】
このようなステップS154,S155,S156,S157,S158によれば、制御部20は結果的に、画像読取装置10の姿勢が第1姿勢であれば駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が第2姿勢であれば駆動電圧を第2駆動電圧に設定する、と言える。なお、ステップS152,S153,S154,S155の各判定の実行順は、
図5に示した通りでなくてもよい。
【0050】
図6は、媒体の種別や重送単送の別に応じた駆動電圧と出力信号の強度との関係性を、グラフにより示している。ただし
図6は、ステップS132で“Yes”と判定される環境を前提としたグラフである。
図6に関して、横軸は駆動電圧を示し、縦軸はマイク52からの出力信号の強度、つまりマイク52の受信レベルを示している。出力信号の強度は、制御部20がA/D変換器70から入力するデジタル値であり、所定の階調範囲内の数値である。
【0051】
図6において、一点鎖線で示すグラフは、「25g紙」を単送した状況下の駆動電圧と出力信号の強度との関係性を表している。また、
図6において、実線で示すグラフは、「256g紙」を単送した状況下の駆動電圧と出力信号の強度との関係性を表している。
図6において、破線で示すグラフは、「20g紙」を2枚重ねて重送した状況下の駆動電圧と出力信号の強度との関係性を表している。
図6において、二点鎖線で示すグラフは、「25g紙」を2枚重ねて重送した状況下の駆動電圧と出力信号の強度との関係性を表している。
【0052】
ここで言う20g、25g、256gとは、紙の坪量である。坪量は1平方メートルあたりの重量であり、坪量が多いほど紙厚が大きいと解してよい。従って、256g紙は、相対的に厚紙の種類に属し、姿勢が傾斜姿勢P1である画像読取装置10にセットされて搬送される。一方、20g紙や25g紙は、相対的に薄紙の種類に属し、姿勢が水平姿勢P2である画像読取装置10にセットされて搬送される。厚紙を第1媒体と呼んだり、薄紙を第2媒体と呼んだりしてもよい。
【0053】
図6のいずれのグラフからも、駆動電圧の上昇に応じて出力信号の強度が上がっていることが解る。同じ単送でも25g紙の単送時の出力信号の強度は、256g紙の単送時の出力信号の強度を大きく上回る。256g紙の単送時の出力信号の強度は、25g紙の単送時の出力信号の強度よりも、むしろ、20g紙の重送時の出力信号の強度に近い。なお、256g紙の重送に関しては、出力信号の強度は、ほぼ0に近い値に張り付くため、
図6に表していない。
【0054】
図6において、出力信号の強度“300”は、重送検知用のしきい値THの具体例である。
図6によれば、駆動電圧=11Vであるときに、256g紙の単送時の出力信号の強度と、20g紙の重送時の出力信号の強度とを、しきい値THを境に分けることができる。しかし、駆動電圧=11Vであるときの256g紙の単送時の出力信号の強度としきい値THとの差分、および、駆動電圧=11Vであるときの20g紙の重送時の出力信号の強度としきい値THとの差分は、いずれも十分とはいえない。そのため、マイク52の受信レベルのばらつきや測定誤差等を考慮すると、媒体の種別が不明な状況で、しきい値THを用いて重送検知を実行した場合、正しい重送検知結果を得られるとは限らない。
【0055】
このような課題に対し、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が傾斜姿勢P1であれば、搬送される媒体は、厚紙といった比較的坪量の多い種別と言えるため、駆動電圧を13Vに設定する。また、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2であれば、搬送される媒体は、薄紙といった比較的坪量の少ない種別と言えるため、駆動電圧を9Vに設定する。
図6によれば、駆動電圧=13Vとすることにより、256g紙の単送時の出力信号の強度はしきい値THを大幅に上回るため、傾斜姿勢P1において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。また、
図6によれば、駆動電圧=9Vとすることにより、20g紙の重送時の出力信号の強度はしきい値THを大幅に下回るため、水平姿勢P2において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。
【0056】
3.第2実施形態:
第2実施形態は、第1実施形態と共通する事項については説明を省略する。第1実施形態は、画像読取装置10の姿勢に応じて駆動電圧を切り替えるものであるが、第2実施形態では、画像読取装置10の姿勢に応じて、重送検知用のしきい値を切り替える。
【0057】
図7は、第2実施形態にかかるステップS130の詳細をフローチャートにより示している。
図7を
図4と比較すると、ステップS133の替わりにステップS133Aを実行し、ステップS134の判定に応じてステップS135AまたはステップS135Bを実行する点で、
図4と異なる。
【0058】
ステップS132の“Yes”の判定を経て、ステップS133Aでは、制御部20は、駆動電圧を、例えば上述した標準的な値である11Vに設定する。ステップS133Aの後、制御部20は、ステップS134の判定を行い、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2であれば、“Yes”と判定してステップS135Aへ進み、前記姿勢が傾斜姿勢P1であれば、“No”と判定してステップS135Bへ進む。
【0059】
ステップS135Bでは、制御部20は、重送検知用のしきい値THを「第1しきい値」に設定してステップS130を終える。一例として、第1しきい値は“250”である。一方、ステップS135Aでは、制御部20は、しきい値THを第1しきい値よりも大きい「第2しきい値」に設定してステップS130を終える。一例として、第2しきい値は“350”である。
【0060】
図8は、第2実施形態にかかるステップS150の詳細をフローチャートにより示している。
図8を
図5と比較すると、ステップS151,S154,S155,S157,S158の替わりにステップS151A,S154A,S155A,S157A,S158Aを実行する点で、
図5と異なる。
【0061】
ステップS151Aでは、制御部20は、画像読取装置10の現在の姿勢を検知し、かつ、現在のしきい値THの設定を取得する。制御部20は、ステップS151Aで得た情報に基づいて、ステップS152以下の判定を行う。ステップS153で“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS154Aにおいて、姿勢が傾斜姿勢P1であり且つしきい値THの設定が“250”つまり第1しきい値であるか、否か、を判定する。制御部20は、傾斜姿勢P1であり、且つ、しきい値THが“250”に設定されていれば、ステップS154Aで“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0062】
ステップS154Aで“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS155Aにおいて、姿勢が水平姿勢P2であり且つしきい値THの設定が“350”つまり第2しきい値であるか、否か、を判定する。制御部20は、水平姿勢P2であり、且つ、しきい値THが“350”に設定されていれば、ステップS155Aで“Yes”と判定してステップS150を終える。
【0063】
ステップS155Aで“No”と判定した場合、制御部20は、ステップS156の判定を行い、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2であれば、“Yes”と判定してステップS157Aへ進み、前記姿勢が傾斜姿勢P1であれば、“No”と判定してステップS158Aへ進む。
【0064】
ステップS156で“Yes”と判定したということは、姿勢が水平姿勢P2でありしきい値THの設定が“250”であるから、制御部20は、ステップS157Aにおいて、しきい値THの設定を“250”から“350”へ変更した上で、ステップS150を終える。一方、ステップS156で“No”と判定したということは、姿勢が傾斜姿勢P1でありしきい値THの設定が“350”であるから、制御部20は、ステップS158Aにおいて、しきい値THの設定を“350”から“250”へ変更した上で、ステップS150を終える。
【0065】
このような、
図7のステップS134,S135A,S135Bや、
図8のステップS154A,S155A,S156,S157A,S158Aによれば、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が第1姿勢であればしきい値THを第1しきい値に設定し、前記姿勢が第2姿勢であればしきい値THを第2しきい値に設定する、と言える。
【0066】
図9は、
図6と全く同様の各グラフを示し、併せて、しきい値THとして設定され得る複数のしきい値を示している。説明したように第2実施形態では、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が傾斜姿勢P1であれば、しきい値THを“250”に設定し、水平姿勢P2であれば、しきい値THを“350”に設定する。
図9によれば、しきい値TH=250とすれば、駆動電圧=11Vであるときの256g紙の単送時の出力信号の強度はしきい値THを大幅に上回るため、傾斜姿勢P1において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。また、
図9によれば、しきい値TH=350とすれば、駆動電圧=11Vであるときの20g紙の重送時の出力信号の強度はしきい値THを大幅に下回るため、水平姿勢P2において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。
【0067】
4.第3実施形態:
第3実施形態は、第1実施形態または第2実施形態と共通する事項については説明を省略する。これまでは、増幅回路60による増幅率は、ステップS131のために一時的に増幅機能を低減する場面を除いて、一定であることを前提としていた。これに対して、第3実施形態では、制御部20は、増幅回路60による増幅率を調整可能である。増幅回路60は、例えば、夫々に所定の増幅率を有するアンプを複数備える。そして、制御部20が、例えば、増幅回路60内の一部のアンプの使用・不使用をスイッチで切り替える等することにより、マイク52の出力信号に対する増幅回路60による増幅率を調整する。ここでは、増幅回路60による、所定の増幅率を「第1増幅率」と呼んだとき、増幅回路60による、第1増幅率よりも低い所定の増幅率を「第2増幅率」と呼ぶ。
【0068】
第3実施形態では、制御部20は、画像読取装置10の姿勢が傾斜姿勢P1であれば、増幅回路60による増幅率を第1増幅率に設定し、前記姿勢が水平姿勢P2であれば、増幅回路60による増幅率を第2増幅率に設定する。
このような第3実施形態については、第2実施形態の
図7,8を流用して簡単に説明する。第3実施形態において、制御部20は、ステップS135Aでは、重送検知用のしきい値THは、例えば“300”に維持しつつ、増幅回路60による増幅率を第2増幅率に設定してステップS130を終えればよい。また、ステップS135Bでは、しきい値THは“300”に維持しつつ、増幅回路60による増幅率を第1増幅率に設定してステップS130を終える。
【0069】
また、第3実施形態において、制御部20は、ステップS154A,S155A,S156,S157A,S158Aの流れでは、しきい値THは“300”に維持しつつ、増幅回路60による増幅率を、傾斜姿勢P1であれば第1増幅率とし、水平姿勢P2であれば第2増幅率となるように制御すればよい。このような第3実施形態によれば、厚紙等が搬送される傾斜姿勢P1であれば、しきい値THと比較するマイク52の出力信号の強度を大きく上げることで、傾斜姿勢P1において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。また、薄紙等が搬送される水平姿勢P2であれば、しきい値THと比較するマイク52の出力信号の強度を傾斜姿勢P1のときよりは大きく上げないことで、水平姿勢P2において、媒体の重送の有無を正確に検知することが可能となる。
【0070】
5.まとめ及び変形例:
このように画像読取装置10は、媒体を搬送する搬送部30と、搬送部30による媒体の搬送路33を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および超音波を受信する受信部と、搬送部33が搬送する媒体を読み取る読取部40と、受信部が受信する信号に基づいて媒体の重送の有無を検知する制御部20と、を備える。そして、画像読取装置10は、画像読取装置10が載置される載置面4に対して搬送路33が傾斜する第1姿勢と、載置面4に対する搬送路33の角度が第1姿勢であるときよりも小さい第2姿勢とのいずれにも姿勢を切り替え可能である。
第1実施形態によれば、制御部20は、前記姿勢が第1姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が第2姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する。
【0071】
制御部20は、受信部が受信する信号と所定のしきい値THとを比較し、前記信号がしきい値THを下回る場合に媒体の重送有りと検知する。
そして、第2実施形態によれば、制御部20は、前記姿勢が第1姿勢である場合に、しきい値THを第1しきい値に設定し、前記姿勢が第2姿勢である場合に、しきい値THを第1しきい値よりも大きい第2しきい値に設定する。
【0072】
増幅回路60は、受信部が受信する信号を増幅し、制御部20は、増幅後の前記信号に基づいて媒体の重送の有無を検知する。
そして、第3実施形態によれば、制御部20は、前記姿勢が第1姿勢である場合に、増幅回路60による増幅率を第1増幅率に設定し、前記姿勢が第2姿勢である場合に、増幅回路60による増幅率を第1増幅率よりも低い第2増幅率に設定する。
【0073】
これら各実施形態によれば、画像読取装置10の姿勢が第1姿勢である場合には、重送検知に関する、駆動電圧、しきい値TH、増幅率のいずれかの設定を、第1姿勢の状態で搬送されることが予想される厚紙等に適した設定とし、前記姿勢が第2姿勢である場合には、駆動電圧、しきい値TH、増幅率のいずれかの設定を、第2姿勢の状態で搬送されることが予想される薄紙等に適した設定とする。この結果、様々な種別の媒体が搬送される各々の状況で的確に重送の有無を検知することができる。
【0074】
本実施形態は、画像読取装置10以外にも、重送検知方法や、重送検知プログラムといった様々なカテゴリーの発明を開示する。
例えば、媒体が搬送される搬送路33を挟む位置に配置される、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および超音波を受信する受信部を使用し、受信部が受信する信号に基づいて媒体の重送の有無を検知する重送検知方法は、搬送路33を有する装置の姿勢が第1姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が第2姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定工程を有する。
【0075】
また、媒体を搬送する搬送部30と、搬送部30による媒体の搬送路33を挟む位置に配置され、駆動電圧に応じて超音波を発する発信部および超音波を受信する受信部と、を備える装置に、受信部が受信する信号に基づいて媒体の重送の有無を検知する処理を実行させる重送検知プログラムは、前記装置の姿勢が第1姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧に設定し、前記姿勢が第2姿勢である場合に、駆動電圧を第1駆動電圧よりも低い第2駆動電圧に設定する設定機能を、前記装置に実行させる。
言うまでもなく、第2実施形態や第3実施形態に対応する方法やプログラムも、夫々に発明として捉えることができる。
【0076】
本実施形態によれば、制御部20は、画像読取装置10の電源が投入された場合に、搬送路33に媒体が無い状態で受信部が受信する信号(キャリブレーション受信レベル)がキャリブレーション用のしきい値THCを上回るか否かを判定する判定処理を実行する。
第1実施形態では、制御部20は、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回らないと判定した場合に、駆動電圧を第1駆動電圧よりも高い第3駆動電圧に設定し、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回ると判定した場合に、前記姿勢に応じた駆動電圧の設定を行う。
前記構成によれば、キャリブレーション受信レベルがしきい値THCを上回らない場合に、駆動電圧を第3駆動電圧に設定するキャリブレーションを行うため、画像読取装置10が置かれた環境の違いによらず、適切に重送検知を行うことが可能となる。
【0077】
なお、第2実施形態では、制御部20は、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回らないと判定した場合に、駆動電圧を第3駆動電圧に設定し、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回ると判定した場合に、前記姿勢に応じたしきい値THの設定を行う。
第3実施形態では、制御部20は、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回らないと判定した場合に、駆動電圧を第3駆動電圧に設定し、前記判定処理により前記信号がしきい値THCを上回ると判定した場合に、前記姿勢に応じた増幅率の設定を行う。
【0078】
ここで、第2実施形態の変形例を説明する。
画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2である場合、媒体として薄紙が搬送されることが想定される。薄紙は、給紙トレイ35から搬送が開始されてからしばらくの期間は、下流を向く先端を含む先端範囲がばたつく等して安定せず、この期間のマイク52の受信レベルは低下しやすい。このような状況を考慮して、媒体の先端を含む媒体の所定範囲が搬送路33における発信部および受信部の位置を通過するまでの期間(特定期間)は、制御部20は、前記姿勢が第2姿勢である場合に、しきい値THを、第1しきい値よりも大きく且つ第2しきい値よりも小さい「第3しきい値」としてもよい。
【0079】
つまり、制御部20は、ステップS130やステップS150において、画像読取装置10の姿勢が水平姿勢P2であるために、しきい値TH=350と設定した後、媒体の搬送期間における特定期間に限り、しきい値THの設定を第3しきい値に変更して重送検知を行う。
図9を参考にすると、第3しきい値は、例えば“300”とする。制御部20は、例えば、給紙トレイ35から搬送が開始されてから媒体の先端を含む媒体の所定範囲が搬送路33における発信部および受信部の位置を通過するまでの期間、として予め定められた数秒間を、特定期間として認識すればよい。あるいは、制御部20は、給紙トレイ35から搬送が開始されてから媒体の先端が搬送路33における発信部および受信部の位置よりも下流に在る所定のローラーに到達するまでの期間を、特定期間と認識してもよい。このような第2実施形態の変形例によれば、水平姿勢P2のときに搬送される媒体の前記所定範囲を対象とする重送検知の精度を、より向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の一つとして、制御部20は、受信部が受信する信号に基づいて搬送路33における媒体の有無を検知し、搬送路33に媒体が無い場合に、前記姿勢に応じた設定を行う、としてもよい。つまり、制御部20は、超音波センサーであるスピーカー51およびマイク52を、ステップS110の判定を行うためのセンサーとしても使用し、マイク52の出力信号の強度に基づいて、搬送路33に媒体が有るか否かを判定してもよい。また、
図3に示すように、ステップS110の判定を経てステップS130を行うことにより、確実に搬送路33に媒体が無い状態でキャリブレーションを行うことができる。
【0081】
本実施形態は、原稿としての媒体を読み取る画像読取装置10に限らず、媒体搬送のために姿勢を第1姿勢や第2姿勢に切り替え可能な搬送装置全般に適用可能である。本実施形態を適用可能な装置は、収納姿勢P0ができない装置であってもよい。
これまでに記載した駆動電圧やしきい値等の具体的な数値は一例に過ぎず、本実施形態は、これら具体的数値に限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
1…本体、2…支持部、3…姿勢切替部、4…載置面、10…画像読取装置、20…制御部、21…CPU、22…ROM、23…RAM、24…プログラム、25…ポジションセンサー、30…搬送部、40…読取部(ラインセンサー)、51…スピーカー、52…マイク、60…増幅回路、70…A/D変換器、71…駆動回路、72…電圧調整回路、P1…傾斜姿勢、P2…水平姿勢