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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ラインボーリング装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/06 20060101AFI20240925BHJP
   B24B 33/02 20060101ALI20240925BHJP
   B23B 41/12 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B24B5/06
B24B33/02
B23B41/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020138689
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034811
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-166910(JP,A)
【文献】特開2003-305605(JP,A)
【文献】特開2017-205825(JP,A)
【文献】特開平1-121112(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0114401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/06
B24B 33/02
B23B 29/02
B23B 35/00 - 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
母機と、
一方側に自在継手が設けられた第1の固定部を有し、他方側に第1の研削部を有し、前記第1の固定部が加工機本体に固定される第1の加工工具と、
一方側に自在継手が設けられた第2の固定部を有し、他方側に第2の研削部を有し、前記第2の固定部側が前記加工機本体に固定される第2の加工工具と、
前記第1の加工工具と、前記第2の加工工具と、により加工される加工対象物を治具ベース上で固定する治具と、
前記母機に設けられ、前記治具ベースを回転させることで、前記治具の向きを変更させるターンテーブルと、を備え、
前記治具は、
前記加工対象物の一方の端部が前記治具ベースに対して位置決めされた箇所の近傍で、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された前部サポートと、
前記加工対象物の他方の端部が前記治具ベースに対して位置決めされた箇所の近傍で、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された後部サポートと、
前記前部サポートと前記後部サポートの間に配置されているとともに、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された中間サポートと、
前記治具ベースに固定されるとともに、前記加工対象物の上方を固定するワーククランパと、を有し、
前記ワーククランパに前記加工対象物が固定された状態で、かつ、前記加工機本体に対して前記第1の固定部が固定されている前記第1の加工工具の前記第1の研削部が、前記前部サポートと前記中間サポートの両方にサポートされた状態で、前記加工対象物の加工を行い、
前記ターンテーブルを回転動作させることで、前記治具の向きを変更し、
その後、前記加工機本体に対して前記第2の固定部が固定されている前記第2の加工工具の前記第2の研削部が、前記後部サポートと前記中間サポートの両方にサポートされた状態で、前記加工対象物の加工を行う、
ラインボーリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインボーリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に用いられるエンジンにおいて、シリンダーとクランケースとを一体化させたシリンダブロックが用いられている。このシリンダブロックでは、クランクシャフト用軸受け部について、ラインボーリング加工が行われる。エンジンの他部位の加工と比較しても、同軸度等の加工精度の高精度化が要求される加工である。
【0003】
従来、このような分野の技術として、特開2012-135824号公報がある。この公報では、1つの加工工具でシリンダブロックの中ぐり加工することによるクランクシャフト用軸受け部の加工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-135824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでラインボーリング装置では、加工工具が母機に固定されており、加工対象物が治具に固定された状態で加工を行う。このようなラインボーリング装置では、母機の熱変異による加工工具の位置ずれや、治具に固定された加工対象物の向きを変更するためのターンテーブルの停止精度の低さにより、加工対象物の加工精度が低下するおそれがある。
【0006】
また、前述した従来の加工方法では、1つの加工工具で加工を実施しているため、加工対象物や加工工具のタワミ変形の影響によって、加工精度が悪化してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、加工対象物の加工精度の低下を抑制したラインボーリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるラインボーリング装置は、母機と、一方側に自在継手が設けられた第1の固定部を有し、他方側に第1の研削部を有し、前記第1の固定部が加工機本体に固定される第1の加工工具と、一方側に自在継手が設けられた第2の固定部を有し、他方側に第2の研削部を有し、前記第2の固定部側が前記加工機本体に固定される第2の加工工具と、前記第1の加工工具と、前記第2の加工工具と、により加工される加工対象物を治具ベース上で固定する治具と、前記母機に設けられ、前記治具ベースを回転させることで、前記治具の向きを変更させるターンテーブルと、を備え、前記治具は、前記加工対象物の一方の端部が前記治具ベースに対して位置決めされた箇所の近傍で、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された前部サポートと、前記加工対象物の他方の端部が前記治具ベースに対して位置決めされた箇所の近傍で、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された後部サポートと、前記前部サポートと前記後部サポートの間に配置されているとともに、前記治具ベース上に配置され、前記治具ベースと固定された中間サポートと、前記治具ベースに固定されるとともに、前記加工対象物の上方を固定するワーククランパと、を有し、前記ワーククランパに前記加工対象物が固定された状態で、かつ、前記加工機本体に対して前記第1の固定部が固定されている前記第1の加工工具の前記第1の研削部が、前記前部サポートと前記中間サポートの両方にサポートされた状態で、前記加工対象物の加工を行い、前記ターンテーブルを回転動作させることで、前記治具の向きを変更し、その後、前記加工機本体に対して前記第2の固定部が固定されている前記第2の加工工具の前記第2の研削部が、前記後部サポートと前記中間サポートの両方にサポートされた状態で、前記加工対象物の加工を行う。
これにより、母機の位置ずれや動作精度に起因した、加工対象物への精度の影響を低減させることができる。
【発明の効果】
【0009】
これにより、加工対象物の加工精度の低下を抑制したラインボーリング装置を提供することができる。更に高精度な加工精度を維持しつつ、設備・治具・工具の大幅な小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ラインボーリング装置の構成の一例を示した図である。
図2】各サポートの同軸度ずれについて示した図である。
図3】第1の加工工具と第2の加工工具の構成の一例を示した図である。
図4】第1の加工工具の内部構成の一例を示す部分拡大図である。
図5】ラインボーリング装置を用いて加工対象物の加工を行う際の動作フローの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、ラインボーリング装置1は、母機(図示せず)と、治具11と、第1の加工工具12と、第2の加工工具13と、を備える。なお図1において、第1の加工工具12及び第2の加工工具13は、治具11から外された状態であるとともに、後述する加工機本体に対しても固定されていない状態である。
【0012】
母機には、ターンテーブル(図示せず)を介して治具11が載置されている。なお以下では、ターンテーブルを回転させる前の治具11の状態を第1の状態とし、ターンテーブルを回転させることによって、治具11が水平方向に回転した後の状態を第2の状態とする。言い換えると、治具11では、治具11の中心を通る上下方向の軸を回転中心軸として、第1の状態からターンテーブルが180°回転することにより、第2の状態となるものとして説明する。
【0013】
ここで、ラインボーリング装置1の加工機本体には、第1の加工工具12や、第2の加工工具13が固定される。また加工機本体では、第1の加工工具12と、第2の加工工具13の持ち換えを行うことができる。なお、加工機本体の動作は、NC(Numerical Control)により制御されている。
【0014】
後に詳述するように、ターンテーブルの動作により治具11の向きが変更された状態で、治具11に設けられた中間サポート24と、前部サポート22又は後部サポート23に、第1の加工工具12や第2の加工工具13が挿入される。これにより、治具11に固定されている加工対象物の加工を、第1の加工工具12や第2の加工工具13を用いて行う。
【0015】
なおここでは、加工対象物とはクランクシャフトであり、5個のクランクジャーナルを有するものとして説明する。また、加工対象物であるクランクシャフトは、治具11上において、後述するY方向に延在するように配置されるものとして説明する。
【0016】
治具11は、治具ベース21と、治具ベース21上において前方側に配置される前部サポート22と、治具ベース21上において後方側に配置される後部サポート23と、前部サポート22と後部サポート23との間に配置される中間サポート24と、加工対象物を吊り下げ固定するワーククランパ25と、を備える。なお、治具11にはノックピン(図示せず)が設けられており、このノックピンとワーククランパ25により加工対象物が位置決めされる。
【0017】
治具ベース21は、XY方向に延在しているベースである。なお、X方向とY方向は互いに直交するとともに、XY方向に直交している上下方向をZ方向とする。また、治具11が第1の状態及び第2の状態において、前後方向をY方向とする。
【0018】
前部サポート22は、加工対象物の前方側が、治具ベース21に対して位置決めされて固定されている箇所の近傍に配置されている。より具体的には、前部サポート22は、治具11が第1の状態において、治具11の前側に配置され、治具ベース21上に固定されている。前部サポート22は円筒状であり、前後方向に貫通する孔部22aが形成されている。
【0019】
後部サポート23は、加工対象物の後方側が、治具ベース21に対して位置決めされ固定されている箇所の近傍に配置されている。より具体的には、後部サポート23は、治具11が第1の状態において、治具11の後側に配置され、治具ベース21上に固定されている。後部サポート23は円筒状であり、前後方向に貫通する孔部23aが形成されている。
【0020】
中間サポート24は、治具ベース21上に固定されているとともに、前部サポート22と、後部サポート23との間に配置されている。中間サポート24は円筒状であり、治具11が第1の状態において、前後方向に貫通する孔部24aが形成されている。
【0021】
ここで図2に示すように、前部サポート22、後部サポート23、中間サポート24は、治具ベース21及び治具11に対して、高精度に位置決めされて配置されている。より具体的には、中間サポート24の孔部24aは、前部サポート22の孔部22a及び後部サポート23の孔部23aに対して、同軸度のずれが約5μm以内であるように配置されている。
【0022】
典型的には、前部サポート22の孔部22aと、後部サポート23の孔部23aと、中間サポート24の孔部24aは、一直線上に配置されている。
【0023】
さらにここでは、前部サポート22から中間サポート24までの距離は、後部サポート23から中間サポート24までの距離に比べて、長いものとして説明する。
【0024】
ワーククランパ25は、治具ベース21に固定されている。ワーククランパ25は、加工対象物の上方を固定した状態でクランプする。これにより、ワーククランパ25は、加工対象物を、前部サポート22や、後部サポート23、中間サポート24によってサポートされた状態で配置される第1の加工工具12又は第2の加工工具13によって加工可能であるように配置して固定する。
【0025】
図3に示すように、第1の加工工具12は、一端部側に設けられた自在継手を有する第1の固定部31と、他端部側に第1の固定部31から延在する第1の研削部32と、を有する。なお典型的には、自在継手は、第1の固定部31に内蔵されている。
【0026】
第1の固定部31は、治具11が第1の状態であるときに、加工機本体に連結されて固定される。
【0027】
第1の研削部32は、第1の固定部31から延びる円柱状の延在部32aと、延在部32aの側面に形成された加工部32bと、を有する。第1の研削部32は、治具11が第1の状態であるときに、延在部32aが治具11に向けて延在している。言い換えると、第1の研削部32の延在部32aは、第1の固定部31から、Y方向における後方側に向けて延びるように配置されている。
【0028】
ここで、第1の固定部31に設けられている自在継手では、第1の研削部32を、第1の固定部31に対してXY方向に自在に動作可能である状態で保持している。言い換えると、第1の研削部32は、第1の固定部31の自在継手により、円柱状である延在部32aの径方向に自在に動作可能である。
【0029】
さらに第1の固定部31に設けられている自在継手では、第1の研削部32を、第1の固定部31に対してZ方向を回転軸中心とした軸周り方向に回転可能である状態で保持している。言い換えると、第1の研削部32は、第1の固定部31に設けられている自在継手により、ターンテーブルの回転に合わせて生じる治具11の向きのずれに合わせて、角度を調整可能である。
【0030】
すなわち、第1の固定部31に設けられている自在継手により、第1の研削部32は、延在部32aの径方向にフローティングされた状態であるとともに、第1の固定部31に対する角度方向にフローティングされた状態である。
【0031】
例えば図4に示すように、第1の固定部31と第1の研削部32との間は、ベアリングを介して接続することができるが、このベアリング隙を利用して径方向のフローティングを実現することができる。また例えば、ベアリング押さえカバーに隙を確保することによって、角度方向のフローティングを実現することができる。自在継手であれば他の機構であってもよい。
【0032】
第1の研削部32の延在部32aは、前部サポート22の孔部22aから挿入されるとともに、その先端部が中間サポート24の孔部24aに挿入されてサポートされた状態となる。例えば、この状態で加工部32bが加工対象物に当接することで、加工対象物を加工することができる。
【0033】
第2の加工工具13は、一端部側に設けられた自在継手を有する第2の固定部41と、他端部側に第2の固定部41から延在する第2の研削部42と、を有する。
【0034】
第2の固定部41は、治具11が第2の状態であるときに、加工機本体に連結されて固定される。
【0035】
第2の研削部42は、第2の固定部41から延びる円柱状の延在部42aと、延在部42aの側面に形成された加工部42bと、を有する。第2の研削部42は、治具11が第2の状態であるときに、延在部42aが治具11に向けて延在している。言い換えると、第2の研削部42の延在部42aは、第2の固定部41から、Y方向における後方側に向けて延びるように配置されている。
【0036】
ここで、第2の固定部41に設けられている自在継手では、第2の研削部42を、第2の固定部41に対してXY方向に自在に動作可能である状態で保持している。言い換えると、第2の研削部42は、第2の固定部41の自在継手により、円柱状である延在部42aの径方向に自在に動作可能である。
【0037】
さらに第2の固定部41に設けられている自在継手では、第2の研削部42を、第2の固定部41に対してZ方向を回転軸中心とした軸周り方向に回転可能である状態で保持している。言い換えると、第2の研削部42は、第2の固定部41に設けられている自在継手により、ターンテーブルの回転に合わせて生じる治具11の向きのずれに合わせて、角度を調整可能である。
【0038】
すなわち、第2の固定部41に設けられている自在継手により、第2の研削部42は、延在部42aの径方向にフローティングされた状態であるとともに、第2の固定部41に対する角度方向にフローティングされた状態である。
【0039】
例えば、第2の固定部41と第2の研削部42との間は、ベアリングを介して接続することができるが、このベアリング隙を利用して径方向のフローティングを実現することができる。また例えば、ベアリング押さえカバーに隙を確保することによって、角度方向のフローティングを実現することができる。自在継手であれば他の機構であってもよい。すなわち、第2の加工工具13の内部構成は、図4に示した第1の加工工具12の内部構成と同様の構成にすることができる。
【0040】
第2の研削部42の延在部42aは、後部サポート23の孔部23aから挿入されるとともに、その先端部が中間サポート24の孔部24aに挿入されてサポートされた状態となる。例えば、この状態で加工部42bが加工対象物に当接することで、加工対象物を加工することができる。
【0041】
なお、第2の加工工具13の第2の研削部42の延在部42aの長さは、第1の加工工具12の第1の研削部32の延在部32aの長さに比べて短く形成されている。
【0042】
次に、図5を参照して、ラインボーリング装置1を用いて加工対象物を加工する際のフローについて説明する。
【0043】
治具11上に加工対象物を搬入する(S1)。このとき加工対象物は、治具11に設けられたノックピンと、ワーククランパ25とにより、位置決めされた状態で固定される。
【0044】
なお加工対象物は、Y方向において前部サポート22と後部サポート23との間に収まるように配置される。また、中間サポート24は、加工対象物の中に位置した状態となる。その結果、前部サポート22と後部サポート23と中間サポート24は、加工対象物の加工部位の延在方向と同軸上に配置された状態となる。さらにここで、ラインボーリング装置1の加工機本体の主軸の方向は、加工対象物の加工部位の延在方向と平行である。
【0045】
ラインボーリング装置1の加工機本体に、第1の加工工具12を結合させる(S2)。ここで、第1の加工工具12の第1の固定部31が、加工機本体に固定される。
【0046】
第1の加工工具12の延在部32aを、前部サポート22の孔部22aに挿入する。さらに、延在部32aの先端を中間サポート24の孔部24aに挿入する(S3)。このように第1の加工工具12を配置した状態で、延在部32aに設けられた加工部32bが加工対象物に当接する。これにより例えば、第1の加工工具12は、加工対象物に1番、2番、3番ジャーナルの加工を行う。すなわち、第1の加工工具12では、加工対象物における前面側加工を行う。
【0047】
この加工が行われるとき、第1の加工工具12の第1の固定部31は、自在継手を介して加工機本体に固定されている。そのため第1の加工工具12では、第1の加工工具12を固定している加工部本体と治具11との位置関係に関わらず、延在部32aが、前部サポート22と中間サポート24を結ぶ軸に沿って配置された状態となる。したがって、第1の加工工具12の配置精度については、前部サポート22と中間サポート24の同軸度が転写される。
【0048】
このようにして、ワーククランパ25に加工対象物が固定された状態で、かつ、一方側である第1の固定部31が加工機本体に固定された第1の加工工具12の他方側である第1の研削部32が、前部サポート22と中間サポート24の両方に当接してサポートされた状態で、第1の研削部32が加工対象物の加工を行うことができる。
【0049】
第1の加工工具12による加工対象物の1番、2番、3番ジャーナルの加工が終了したら、第1の加工工具12を中間サポート24の孔部24a及び前部サポート22の孔部22aから抜き取る(S4)。
【0050】
加工機本体では、第1の加工工具12を取り外し、第2の加工工具13を取り付ける(S5)。このとき、第2の加工工具13の第2の固定部41が、加工機本体に固定される。
【0051】
また、ラインボーリング装置1では、治具11を載置しているターンテーブルを180°回転させる(S6)。これにより、第2の加工工具13は、後部サポート23の孔部23aに挿入可能であるように、後部サポート23に対向した状態となる。
【0052】
第2の加工工具13の延在部42aを、後部サポート23の孔部23aに挿入する。さらに、延在部32aの先端を中間サポート24の孔部24aに挿入する(S7)。このように第2の加工工具13を配置した状態で、延在部42aに設けられた加工部42bが加工対象物に当接する。これにより例えば、第2の加工工具13は、加工対象物に4番、5番ジャーナルの加工を行う。すなわち、第2の加工工具13では、加工対象物における後面側加工を行う。
【0053】
この加工が行われるとき、第2の加工工具13の第2の固定部41は、自在継手を介して加工機本体に固定されている。そのため第2の加工工具13では、第2の加工工具13を固定している加工部本体と治具11との位置関係に関わらず、延在部42aが、後部サポート23と中間サポート24を結ぶ軸に沿って配置された状態となる。したがって、第2の加工工具13の配置精度については、後部サポート23と中間サポート24の同軸度が転写される。
【0054】
このようにして、ワーククランパ25に加工対象物が固定された状態で、かつ、一方側である第2の固定部41が加工機本体に固定された第2の加工工具13の他方側である第2の研削部42が、後部サポート23と中間サポート24の両方に当接してサポートされた状態で、第2の研削部42が加工対象物の加工を行うことができる。
【0055】
したがって、第1の加工工具12では、第1の固定部31に設けられた自在継手を利用し、第2の加工工具13では、第2の固定部41に設けられた自在継手を介して、加工機本体に固定される。これにより、治具11が載置されている母機の主軸熱変異や、ターンテーブルの停止位置精度等の母機側の精度悪化の影響と、治具11とを分離することができる。
【0056】
さらに治具11では、前部サポート22、後部サポート23、中間サポート24の位置精度を利用し、同軸度を治具11内で保証することができる。
【0057】
そのため、前部サポート22、後部サポート23、中間サポート24に対して、第1の加工工具12や第2の加工工具13を挿入し、これらの工具をサポートさせた状態で行うならい加工において、各サポートの高精度な同軸度を転写させた状態で、加工対象物への高精度加工を実現することができる。
【0058】
この方法によれば、前部サポート22、後部サポート23、中間サポート24の全ての固定サポートを利用するため、これらのサポートの位置精度を出しやすく、かつ、精度の維持も容易である。
【0059】
また、第1の加工工具12が、加工対象物の前面側の第1、第2、第3のジャーナルを加工した後に、治具11の向きを変更して、第2の加工工具13が、加工対象物の後面側の第4、第5のジャーナルを加工する。そのため、加工を実行する際に、各加工工具において、サポート間の距離を短くすることができ、加工の際の歪みの発生を低減させることができる。以上により、高精度な加工精度を維持しつつ、設備・治具・工具の大幅な小型化することができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。すなわち上記の記載は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされており、当業者であれば、実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ラインボーリング装置
11 治具
12 第1の加工工具
13 第2の加工工具
21 治具ベース
22 前部サポート
22a 孔部
23 後部サポート
23a 孔部
24 中間サポート
24a 孔部
25 ワーククランパ
31 第1の固定部
32 第1の研削部
32a 延在部
32b 加工部
41 第2の固定部
42 第2の研削部
42a 延在部
42b 加工部
図1
図2
図3
図4
図5