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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ルーバー部材
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/10 20200101AFI20240925BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B62J17/10
B62J23/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020149718
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044201
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】澤田 富智美
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028604(JP,A)
【文献】特開2016-182916(JP,A)
【文献】特開2004-291700(JP,A)
【文献】特開2012-245795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、
前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、
前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、
前記第1のアーム部から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え、
前記第2のアーム部が前記排風口を横切るように延在し
車両上面視にて、前記第1のアーム部の幅が前記第2のアーム部の幅よりも広く形成されていることを特徴とするルーバー部材。
【請求項2】
鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、
前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、
前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、
前記一側枠側の前記第1のアーム部の一端から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え
車両上面視にて、前記第1のアーム部の幅が前記第2のアーム部の幅よりも広く形成されていることを特徴とするルーバー部材。
【請求項3】
鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、
前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、
前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、
前記第1のアーム部から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え、
前記第1のアーム部の延在方向が水平であり、前記第2のアーム部の延在方向が前記他側枠の延在方向に垂直であることを特徴とするルーバー部材。
【請求項4】
鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、
前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、
前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、
前記第1のアーム部から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え、
前記第1のアーム部及び前記第2のアーム部の少なくとも一方の断面がV字形状に形成されていることを特徴とするルーバー部材。
【請求項5】
鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、
前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、
前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、
前記第1のアーム部から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え、
前記一側枠よりも前記他側枠が長く形成されていることを特徴とするルーバー部材。
【請求項6】
前記鞍乗型車両の車体フレームに前記サイドカウルが固定され、
前記一側枠が前記車体フレームに近い内側枠であり、前記他側枠が前記車体フレームにから遠い外側枠であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のルーバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両として、車両内部に籠った熱気を走行風によって車両外部に吹き飛ばす構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両には、車両前方のフロントカウルに走行風の導風口が形成され、車両側方のサイドカウルに走行風の排風口が形成されている。鞍乗型車両の走行時に、フロントカウルの導風口から車両内部に走行風が取り込まれて、走行風によって車両内部の熱気が後方に押し流される。そして、サイドカウルの排風口から車両外部に走行風と共に熱気が排出されて車両内部が効果的に冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-105152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サイドカウルは様々な方向からの外力を受けて撓み易く、特にサイドカウルの排風口付近の剛性が低くなっている。サイドカウルの排風口には安全性や外観を考慮してルーバー部材が取り付けられるが、一般的なルーバー部材ではサイドカウルの剛性を十分に高めることができない。このため、乗員の快適性を確保するために、サイドカウルの撓みを抑える構造が望まれている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でサイドカウルを効果的に補強することができるルーバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のルーバー部材は、鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されるルーバー部材であって、前記排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含む枠体と、前記一側枠から前記他側枠に向かって前記排風口を横切る第1のアーム部と、前記第1のアーム部から分岐して前記他側枠まで延在する第2のアーム部と、を備え、前記第2のアーム部が前記排風口を横切るように延在し、車両上面視にて、前記第1のアーム部の幅が前記第2のアーム部の幅よりも広く形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のルーバー部材によれば、第1のアーム部を介して一側枠と他側枠が連結され、第2のアーム部を介して第1のアーム部と他側枠が連結されて、第1、第2のアーム部によってルーバー部材が補強される。第1のアーム部が排風口を横切るため、排風口を通過する走行風が第1のアーム部によって整流される。サイドカウルにルーバー部材が設置されることで、排風口からの排風を阻害することなく、サイドカウルの剛性が高められて、サイドカウルの撓みを効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2】本実施例の車両外側から見たルーバー部材の斜視図である。
図3】本実施例の車両内側から見たルーバー部材の斜視図である。
図4】本実施例の車両外側から見たルーバー部材の側面図である。
図5】本実施例の車両内側から見たルーバー部材の側面図である。
図6図5のルーバー部材をA-A線に沿って切断した断面図である。
図7】本実施例のサイドカウルの内側を通る走行風の流れを示す図である。
図8】変形例のルーバー部材の断面図である。
図9】他の変形例のルーバー部材の側面図である。
図10】本実施例のサイドカウルの後端付近の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のルーバー部材は、鞍乗型車両の排風口を覆うようにサイドカウルに設置されている。ルーバー部材の枠体は排風口の一側縁に沿った一側枠及び他側縁に沿った他側枠を含み、一側枠から他側枠に向かって第1のアーム部が排風口を横切り、第1のアーム部から分岐した第2のアーム部が他側枠まで延在している。第1のアーム部を介して一側枠と他側枠が連結され、第2のアーム部を介して第1のアーム部と他側枠が連結されて、第1、第2のアーム部によってルーバー部材が補強される。第1のアーム部が排風口を横切るため、排風口を通過する走行風が第1のアーム部によって整流される。サイドカウルにルーバー部材が設置されることで、排風口からの排風を阻害することなく、サイドカウルの剛性が高められて、サイドカウルの撓みが効果的に抑えられる。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は、本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン16や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ(不図示)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム11と、ヘッドパイプから左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム11によってエンジン16の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン16の前部が支持されている。エンジン16が車体フレーム10に支持されることで、車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム11の前側部分はエンジン16の上方に位置するタンクレール12になっており、タンクレール12によって燃料タンク17が支持されている。メインフレーム11の後側部分はエンジン16の後方に位置するボディフレーム13になっており、ボディフレーム13の上下方向の略中間位置にスイングアーム18が揺動可能に支持されている。ボディフレーム13の上部からは、シートレール(不図示)とバックステー(不図示)が後方に向かって延びている。シートレール上には、燃料タンク17の後方においてライダーシート21及びピリオンシート22が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプには、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪25が回転可能に支持されており、前輪25の上部はフロントフェンダ26に覆われている。スイングアーム18はボディフレーム13から後方に向かって延びている。スイングアーム18の後端には後輪28が回転可能に支持され、後輪28の上方はリヤフェンダ29に覆われている。後輪28にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン16が連結されており、変速機構を介してエンジン16からの動力が後輪28に伝達されている。
【0014】
鞍乗型車両1の車体フレーム10には、車体外装として各種カバーが装着されている。例えば、車両前部の前面側はフロントカウル31によって覆われており、車両前部の側面側は一対のサイドカウル32によって覆われている。一対のサイドカウル32の後方にはサイドカバー33が設けられ、各サイドカウル32と各サイドカバー33の間の排風口を覆うようにルーバー部材40が設置されている。フロントカウル31の下面側から車両内部に走行風が取り込まれ、走行風によって車両内部の熱気が後方に押し流されて、走行風が熱気と共にルーバー部材40に整流されながら排風口から車両外部に排出される。
【0015】
このとき、サイドカウル32の外面には車両外部から走行風が吹き付けられて、走行風によってサイドカウル32の外面が内向き押し込まれる。また、サイドカウル32の内面には車両内部から走行風が吹き付けられて、走行風によってサイドカウル32の内面が外向き押し出される。このように、サイドカウル32が様々な方向から走行風を受けて撓み易くなり、特にサイドカウル32の排風口付近が振動し易い。そこで、本実施例のルーバー部材40の羽板をV字状のアーム部で形成することで、排風の影響を抑えつつルーバー部材40に連なるサイドカウル32の撓みが抑えられる。
【0016】
以下、図2から図6を参照して、鞍乗型車両のルーバー部材について説明する。図2は、本実施例の車両外側から見たルーバー部材の斜視図である。図3は、本実施例の車両内側から見たルーバー部材の斜視図である。図4は、本実施例の車両外側から見たルーバー部材の側面図である。図5は、本実施例の車両内側から見たルーバー部材の側面図である。図6は、図5のルーバー部材をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、ルーバー部材40は、排風口の周縁に沿った枠体41と、枠体41の内側にV字状に設置された複数の第1、第2のアーム部45、46とを有している。枠体41は、排風口の内側縁に沿った内側枠(一側枠)42、排風口の外側縁に沿った外側枠(他側枠)43、排風口の上側縁に沿った上側枠44によって略三角形状に形成されている。内側枠42は車幅方向で車体フレーム10(図1参照)に近づけられ、外側枠43は車幅方向で車体フレーム10から遠ざかるように、ルーバー部材40がサイドカウル32(図1参照)に取り付けられている。
【0018】
内側枠42よりも外側枠43が長く形成されており、内側枠42よりも外側枠43の幅が狭く形成されている。また、内側枠42よりも外側枠43が車体フレーム10から離れ、内側枠42よりも外側枠43が細長く形成されているため、内側枠42よりも外側枠43の強度が弱くなっている。内側枠42は外側枠43よりも排風方向の下流(車両後方)に位置しており、内側枠42には車両後方に向かって車幅方向外側に膨らむように傾斜した斜面47が形成されている。内側枠42の斜面47によって車両内部の走行風が車両外部に導かれて、ルーバー部材40の排風性能が向上される。
【0019】
内側枠42には第1のアーム部45の一端と第2のアーム部46の一端が集約されて連結され、外側枠43には第1のアーム部45の他端と第2のアーム部46の他端が個別に連結されている。第1のアーム部45は内側枠42から外側枠43に向かって排風口を横切るように延在し、第2のアーム部46は第1のアーム部45の一端から分岐して外側枠43に向かって排風口を横切るように延在している。すなわち、第1のアーム部45の一端と第2のアーム部46の一端が内側枠42の同じ位置に支持され、第1のアーム部45の他端と第2のアーム部46の他端が外側枠43の異なる位置に支持されている。
【0020】
第1のアーム部45は、主に整流板として機能しており、排風口から車両外部に向かう走行風を整流する。第2のアーム部46は、主に補強板として機能しており、第1のアーム部45から分岐して第1のアーム部45を下側から補強している。第1、第2のアーム部45、46の断面はV字形状に形成されており、重量の増加を抑えつつ第1、第2のアーム部45、46のそれぞれの強度が高められている。なお、第1、第2のアーム部45、46の断面V字の凸面は車両外部に向けられ、第1、第2のアーム部45、46の断面V字の凹面は車両内部に向けられている。
【0021】
図4及び図5に示すように、第1のアーム部45の延在方向D1が水平であり、車両の走行方向に沿って第1のアーム部45が延在している。第1のアーム部45によって排風口から車両外部に向かう走行風が良好に整流される。第1のアーム部45が水平方向に延在しているため、ルーバー部材40に対して水平方向から加わる外力に対する強度が高められている。なお、第1のアーム部45の延在方向D1が水平とは、第1のアーム部45の延在方向D1が完全な水平である必要はなく、ルーバー部材40を車両に取り付けたときに実質的に水平と見做せる程度に水平であればよい。
【0022】
第2のアーム部46の延在方向D2は外側枠43の延在方向D3に垂直であり、内側枠42と外側枠43の対向方向に第2のアーム部46が延在している。第2のアーム部46と外側枠43が垂直に交差し、第2のアーム部46が内側枠42と外側枠43を略最短距離で接続するため、第2のアーム部46によってルーバー部材40が強く補強されている。なお、第2のアーム部46の延在方向D2が外側枠43の延在方向D3に垂直とは、第2のアーム部46の延在方向D2が外側枠43の延在方向D3に完全に垂直である必要はなく、実質的に垂直と見做せる程度に垂直であればよい。
【0023】
ルーバー部材40の外側枠43はサイドカウル32(図1参照)の後縁に取り付けられている。車両走行時には、フロントカウル31とフロントフェンダ26の間から車両内部に走行風が入り込み、サイドカウル32の排風口に向かって押し流される。このとき、サイドカウル32は、内側の走行風と外側を流れる走行風との気圧差によって車両外側に引っ張られる様に外力Fを受けている(特に図10参照)。そして、ルーバー部材40には、外側枠43に垂直な方向からサイドカウル32によって引っ張られる外力Fが作用する。第2のアーム部46がサイドカウル32から受ける外力Fと同様に外側枠43に垂直な方向に延在するため、サイドカウル32から外側枠43が受ける外力Fに対して第2のアーム部46が抵抗する。また、第1のアーム部45が水平に延在するため、サイドカウル32の外力Fの水平成分に対して第1のアーム部45が抵抗する。第1、第2のアーム部45、46によってサイドカウル32の外力Fに対するルーバー部材40の耐性が高められている。一方、サイドカウル32が車両内側に向う外力を受けた場合、同様にルーバー部材40にも車両内側に向う外力が掛るが、この外力に対しても第1、第2のアーム部45、46によってルーバー部材40の耐性が高められている。
【0024】
なお、第1、第2のアーム部45、46は走行風によって押し流される熱気に暖められるが、第1、第2のアーム部45、46の熱膨張は略三角形状の枠体41に抑えられてルーバー部材40の全体的な剛性が高められる。また、第1、第2のアーム部45、46の一端が内側枠42に集約されているため、第1、第2のアーム部45、46のいずれか一方の熱膨張がいずれか他方の強度に大きく影響を及ぼすことがない。熱膨張によってルーバー部材40に引っ張り力が作用してもルーバー部材40の形状が確保されている。
【0025】
図6に示すように、車両上面視にて、第1のアーム部45の幅W1が第2のアーム部46の幅W2よりも広く形成されている。水平方向に延びる第1のアーム部45の幅W1が広く形成されているため、第1のアーム部45による整流効果が向上され、また第2のアーム部46による気流の変化が低く抑えられて空気抵抗が低減される。第1のアーム部45は高い剛性を備えるために上板48と下板49によって断面V字に形成されているが、下板49の幅W3は上板48の幅W1よりも狭くなっている。この様に、上板48及び下板40の幅W1、W3の一方を狭く形成することで、V字の内側に流れ込む走行風が留まらずに流出し易くなり、排風抵抗が減少される。さらには外側枠43側から内側枠42側に向かって下板49の幅W3が狭くなって、第1のアーム部45の断面形状が断面V字形状から断面平板形状に近づけられている。これにより、排風方向の下流の内側枠42付近での排風抵抗が減少される。なお、第2のアーム部46も第1のアーム部45と同様な断面V字に形成されることで、さらなる剛性向上と排風抵抗の減少効果を有する。
【0026】
このように、内側枠42と外側枠43の間に第1、第2のアーム部45、46がV字状に設置されて、この第1、第2のアーム部45、46によってルーバー部材40が内側から補強されている。内側枠42に対する第1、第2のアーム部45、46の連結箇所が集約されることで、シンプルな外観を保ちつつ排風への影響が抑えられる。上記したように、内側枠42よりも外側枠43の強度が弱くなっているが、外側枠43に対する第1、第2のアーム部45、46の連結箇所が分散されることで外側枠43の強度が高められている。
【0027】
また、内側枠42がサイドカバー33(図1参照)の前縁に取り付けられ、外側枠43及び上側枠44がサイドカウル32(図1参照)の後縁に取り付けられて、ルーバー部材40を介してサイドカバー33とサイドカウル32が一体化される。また、ルーバー部材40が第1、第2のアーム部45、46によって補強されているため、ルーバー部材40によってサイドカウル32の剛性が高められて、サイドカウル32の撓みや振動等が効果的に抑えられる。なお、サイドカウル32、サイドカバー33、ルーバー部材40同士の取り付けには、ネジ止め、掛け止め、クリップ止めのいずれの取り付け方法が用いられてもよい。
【0028】
図7を参照して、サイドカウルの内側を通る走行風の流れについて説明する。図7は、本実施例のサイドカウルの内側を通る走行風の流れを示す図である。
【0029】
車両走行時には、フロントカウル31とフロントフェンダ26の間から車両内部に走行風が入り込む。走行風によって車両内部のラジエータ19付近の熱気がサイドカウル32の排風口に向かって押し流される。このとき、サイドカウル32には車両内部だけでなく車両外部からも走行風が吹き付けられている。サイドカウル32において車幅方向外側に膨らんだ箇所がルーバー部材40を介してサイドカバー33に取り付けられている。これにより、サイドカウル32の最も撓み易い箇所の剛性が高められて、サイドカウル32の撓みが効果的に抑えられている。
【0030】
ルーバー部材40の枠体41の内側には第1、第2のアーム部45、46がV字状に設置され、第1、第2のアーム部45、46によって枠体41が内側から支持されている。サイドカウル32からルーバー部材40に外力が作用しても、サイドカウル32からの外力が第1、第2のアーム部45、46によって受け止められる。第1、第2のアーム部45、46の断面がV字形状に形成されているため、第1、第2のアーム部45、46によってルーバー部材40が強く補強される。ルーバー部材40の強度の向上によって、ルーバー部材40が取り付けられたサイドカウル32の剛性が高められている。
【0031】
車両内部の走行風はサイドカウル32の排風口に設置されたルーバー部材40から排風される。このとき、ルーバー部材40に第1、第2のアーム部45、46が設けられることで排風抵抗が増加する。しかしながら、内側枠42にて第1、第2のアーム部45、46の一端が集約されて、排風方向の下流における排風抵抗の増加が抑えられて、ルーバー部材40の排風性能を大きく阻害することがない。さらに、内側枠42付近では第1のアーム部45の断面形状が平板形状に近づけられるため、第1のアーム部45によって排風時の整流効果が高められている。
【0032】
以上、本実施例によれば、第1、第2のアーム部45、46を介して内側枠42と外側枠43が連結されて、第1、第2のアーム部45、46によってルーバー部材40が補強される。第1のアーム部45が排風口を横切るため、排風口を通過する走行風が第1のアーム部45によって整流される。サイドカウル32にルーバー部材40が設置されることで、排風口からの排風を阻害することなく、サイドカウル32の剛性が高められて、サイドカウル32の撓みを効果的に抑えることができる。
【0033】
なお、本実施例では、第1、第2のアーム部の断面がV字形状に形成されたが、第1、第2のアーム部の断面は特に限定されない。ただし、第1、第2のアーム部の少なくとも一方の断面がV字形状に形成されていることが好ましい。例えば、図8の変形例に示すように、第1のアーム部51の断面が平板形状に形成され、第2のアーム部52の断面がV字形状に形成されてもよい。これにより、第1のアーム部51によって走行風の整流効果を高め、第2のアーム部52によってルーバー部材50の強度を高めることができる。
【0034】
また、本実施例では、第2のアーム部が第1のアーム部の一端から分岐して外側枠まで延在しているが、第2のアーム部が第1のアーム部から分岐して外側枠まで延在すればよい。例えば、図9の変形例に示すように、第2のアーム部57は第1のアーム部56の中間位置から分岐して外側枠58まで延在してもよい。このような構成でも、第1、第2のアーム部56、57によってルーバー部材55の強度を高めることができる。
【0035】
また、本実施例では、枠体、第1、第2のアーム部が一体的に形成されたが、枠体、第1、第2のアーム部が別部材によって形成されてもよい。枠体、第1、第2のアーム部が別部材であっても、本実施例のルーバー部材と同様な効果を得ることができる。
【0036】
また、本実施例では、枠体の一側枠が車体フレームに近い内側枠であり、枠体の他側枠が車体フレームから遠い外側枠であるが、枠体の一側枠は排風口の一側縁に沿っていればよく、枠体の他側枠は排風口の他側縁に沿っていればよい。したがって、枠体の一側枠が車両後方の後枠で、枠体の他側枠が車両前方の前枠であり、車体フレームから後枠までの距離と車体フレームから前枠までの距離が一致していてもよい。
【0037】
また、本実施例では、側面視にてルーバー部材の枠体が略三角形状に形成されたが、ルーバー部材の枠体の形状は特に限定されない。
【0038】
また、本実施例では、枠体の内側枠よりも外側枠が長く形成されたが、内側枠が外側枠よりも長く形成されてもよい。この場合、第1、第2のアーム部の一端が集約されて外側枠側に連結し、第1、第2のアーム部の他端が個別に内側枠側に連結してもよい。
【0039】
また、本実施例では、第1のアーム部の延在方向が水平であり、第2のアーム部の延在方向が外側枠の延在方向に垂直であるが、第1、第2のアーム部の延在方向は特に限定されない。第1、第2のアーム部がルーバー部材を補強するように延在していればよい。
【0040】
また、本実施例では、車両上面視にて、第1のアーム部の幅が第2のアーム部の幅よりも広く形成されているが、第1のアーム部の幅が第2のアーム部の幅よりも狭く形成されていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、走行風による車両外側への外力を受けたときのサイドカウルの撓みがルーバー部材によって抑えられているが、乗員の脚部によるなど、車両内側に向う外力を受けたときのサイドカウルの撓みがルーバー部材によって抑えられてもよい。すなわち、本実施例のルーバー部材は、ニーグリップ時にサイドカウルに力が掛かる車種にも有効である。
【0042】
また、本実施例の鞍乗型車両のルーバー部材は、ツアラータイプの自動二輪車に限らず、他のタイプの自動二輪車に採用されてもよい。また、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0043】
以上の通り、本実施例のルーバー部材(40)は、鞍乗型車両(1)の排風口を覆うようにサイドカウル(32)に設置されるルーバー部材であって、排風口の一側縁に沿った一側枠(内側枠42)及び他側縁に沿った他側枠(外側枠43)を含む枠体(41)と、一側枠から他側枠に向かって排風口を横切る第1のアーム部(45)と、第1のアーム部から分岐して他側枠まで延在する第2のアーム部(46)と、を備えている。この構成によれば、第1のアーム部を介して一側枠と他側枠が連結され、第2のアーム部を介して第1のアーム部と他側枠が連結されて、第1、第2のアーム部によってルーバー部材が補強される。第1のアーム部が排風口を横切るため、排風口を通過する走行風が第1のアーム部によって整流される。サイドカウルにルーバー部材が設置されることで、排風口からの排風を阻害することなく、サイドカウルの剛性が高められて、サイドカウルの撓みを効果的に抑えることができる。
【0044】
本実施例のルーバー部材において、第2のアーム部が、一側枠側の第1のアーム部の一端から分岐して他側枠まで延在する。この構成によれば、第1のアーム部と第2のアーム部が一側枠側に集約されることで、シンプルな外観を保ちつつ、第1、第2のアーム部によってルーバー部材がより強く補強される。
【0045】
本実施例のルーバー部材において、第1のアーム部の延在方向が水平であり、第2のアーム部の延在方向が他側枠の延在方向に垂直である。この構成によれば、第1のアーム部によってルーバー部材が補強されると共に走行風が良好に整流され、第2のアーム部によってルーバー部材が強く補強される。
【0046】
本実施例のルーバー部材において、車両上面視にて、第1のアーム部の幅が第2のアーム部の幅よりも広く形成されている。この構成によれば、第1のアーム部による整流効果を向上させることができる。
【0047】
本実施例のルーバー部材において、第1のアーム部及び第2のアーム部の少なくとも一方の断面がV字形状に形成されている。この構成によれば、重量を増加させることなく、ルーバー部材を強く補強してサイドカウルの剛性を高めることができる。
【0048】
本実施例のルーバー部材において、鞍乗型車両の車体フレームにサイドカウルが固定され、一側枠が車体フレームに近い内側枠であり、他側枠が車体フレームにから遠い外側枠である。この構成によれば、車体フレームに近い内側枠よりも車体フレームから遠い外側枠が撓み易い。内側枠に対する第1、第2のアーム部の連結箇所が集約されることでアーム部による排風への影響が抑えられる。外側枠に対する第1、第2のアーム部の連結箇所が分散されることで他側枠の撓みが抑えられる。
【0049】
本実施例のルーバー部材において、一側枠よりも他側枠が長く形成されている。この構成によれば、一側枠よりも他側枠が長く形成されているため、一側枠よりも他側枠が撓み易い。一側枠に対する第1、第2のアーム部の連結箇所が集約されることでアーム部による排風への影響が抑えられる。他側枠に対する第1、第2のアーム部の連結箇所が分散されることで他側枠の撓みが抑えられる。
【0050】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0051】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0052】
1 :鞍乗型車両
32 :サイドカウル
41 :枠体
42 :内側枠(一側枠)
43 :外側枠(他側枠)
44 :上側枠
40、50、55:ルーバー部材
45、51、56:第1のアーム部
46、52、57:第2のアーム部
図1
図2
図3
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図10