IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特許7559443加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法
<>
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図1
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図2
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図3
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図4
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図5
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図6
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図7
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図8
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図9
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図10
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図11
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図12
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図13
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図14
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図15
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図16
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図17
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図18
  • 特許-加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20240925BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20240925BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240925BHJP
【FI】
B32B3/30
G09F13/04 J
B60K35/23
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020149934
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044351
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森戸 秀
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214173(JP,A)
【文献】特開2020-067565(JP,A)
【文献】特開2018-163341(JP,A)
【文献】特開2015-193246(JP,A)
【文献】特開2018-089972(JP,A)
【文献】特開2017-159650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B60K35/00-37/06
G09F13/00-13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面および第2面を有する基材部と、
前記基材部の前記第1面側に設けられ、前記基材部の第1領域上のみに位置する絵柄部と、を備え、
前記基材部の前記第1面は前記第1領域以外となる第2領域内のみに、凹凸面を有し、
前記基材部の前記第1面は凹部を有し、前記凹凸面は前記凹部内に設けられている、加飾シート。
【請求項2】
前記絵柄部は、意匠層と、前記意匠層の前記基材部とは反対側に設けられた遮光層と、を有する、請求項に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記凹部の深さは、前記絵柄部の厚みよりも小さい、請求項1又は2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記遮光層は、互いに積層された第1遮光層及び第2遮光層を含み、
前記第1遮光層及び前記第2遮光層は異なる色を有する、請求項に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記第1遮光層及び前記第2遮光層は異なる厚みを有する、請求項に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記絵柄部は、前記基材部とは反対側の面として凹凸面を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項7】
互いに対向する第1面および第2面を有する基材部と、
前記基材部の前記第1面側に設けられ、前記基材部の第1領域上のみに位置する絵柄部と、を備え、
前記基材部の前記第1面は、前記第1領域以外となる第2領域内のみに、凹凸面を有し、
前記絵柄部は、前記基材部とは反対側の面として凹凸面を有する、加飾シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載された加飾シートと、
前記加飾シートを重ねられた表示装置と、を備える、加飾シート付き表示装置。
【請求項9】
請求項1または7に記載の加飾シートを製造する方法であって、
前記基材部を構成する基材フィルムと前記基材フィルムに積層され、前記絵柄部を構成する絵柄膜とを有する積層体の前記絵柄膜の側にブラストマスクを設ける工程と、
前記ブラストマスク越しに前記積層体をブラスト加工し、前記絵柄膜をパターニングして前記絵柄部を形成する工程と、を備える、加飾シートの製造方法。
【請求項10】
前記ブラスト加工する工程において、前記基材フィルムの前記ブラストマスクに覆われていない領域内に凹部を形成する、請求項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項11】
前記ブラストマスクの厚みは、前記絵柄膜の厚みよりも厚い、請求項9又は10に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項12】
前記絵柄膜は、意匠膜と、前記意匠膜の前記基材フィルムとは反対側に設けられた遮光膜と、を有する、請求項9~11のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項13】
前記ブラストマスクは、前記遮光膜と異なる色を有する、請求項12に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項14】
ブラスト加工終了後における前記ブラストマスクは、前記遮光膜と異なる厚みを有する、請求項12又は13に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項15】
前記ブラストマスクを設ける工程において、スクリーン印刷によって前記ブラストマスクを前記積層体上に設ける、請求項9~14のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項16】
前記絵柄膜は、絵柄を形成された意匠膜を含み、
前記ブラストマスクを設ける工程において、スクリーン印刷によって前記意匠膜に隣接するようにして前記ブラストマスクを前記積層体上に設ける、請求項9~11のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項17】
前記ブラストマスクを設ける工程は、前記積層体上にレジスト層を設ける工程と、前記レジスト層をパターニングして前記ブラストマスクを形成する工程と、を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項18】
前記ブラストマスクを前記絵柄部の一部として用いる、請求項9~17のいずれか一項に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項19】
請求項9~18のいずれか一項に記載された製造方法により加飾シートを製造する工程と、
前記加飾シートを表示装置に積層する工程と、を備える、加飾シート付き表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート、加飾シート付き表示装置、加飾シートの製造方法、及び、加飾シート付き表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、表示装置に重ねて用いられる加飾シート(スクリーン)が公知となっている。この加飾シートは、絵柄を表示する絵柄部と、絵柄部に設けられた開口部からなる透過部と、を有している。透過部は、加飾シートの背面に配置された表示装置からの画像光を通過させ、表示装置によって形成された画像の観察を可能にする。絵柄部は、表示装置の表示が停止している際に絵柄を表示する。すなわち、加飾シートによれば、表示装置による所望の表示を可能としながら、表示を行っていない表示装置を隠蔽し、絵柄を表示することで表示装置の設置領域に意匠性を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-331132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置の表示面は、意匠を表示する加飾シートの背面に位置している。表示装置の表示面から射出した画像光のうち加飾シートの透過部を通過した画像光が、観察者によって観察される画像を形成する。このため、加飾シート及び表示装置を含む加飾シート付き表示装置では、画像を観察することができる角度範囲、すなわち視野角が狭くなる傾向にある。
【0005】
視野角を広げるには、加飾シートの観察者側に光拡散シートを配置することも考えられる。しかしながら、加飾シートの観察者側に光拡散シートを配置した場合、絵柄部によって表示される絵柄の鮮明性が低下する。絵柄の鮮明性低下は、表示装置を配置した領域での意匠性向上といった加飾シートの設置意義を害する致命的な不具合と言える。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、加飾シート付き表示装置における絵柄の鮮明性を維持しながら画像の視野角を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による加飾シートは、
互いに対向する第1面および第2面を有する基材部と、
前記基材部の前記第1面側に設けられ、前記基材部の第1領域上のみに位置する絵柄部と、を備え、
前記基材部の前記第1面は、少なくとも前記第1領域以外となる第2領域内に、凹凸面を有する。
【0008】
本発明による加飾シートにおいて、前記基材部の前記第1面は、前記第2領域内のみに、前記凹凸面を有してもよい。
【0009】
本発明による加飾シートにおいて、前記絵柄部は、絵柄を表示する意匠層と、前記意匠層の前記基材部とは反対側に設けられた遮光層と、を有してもよい。
【0010】
本発明による加飾シートにおいて、前記基材部の前記第1面は凹部を有し、前記凹凸面は前記凹部内に設けられてもよい。
【0011】
本発明による加飾シートにおいて、前記凹部の深さは、前記絵柄部の厚みよりも小さくてもよい。
【0012】
本発明による加飾シートにおいて、前記遮光層は、互いに積層された第1遮光層及び第2遮光層を含み、
前記第1遮光層及び前記第2遮光層は異なる色を有してもよい。
【0013】
本発明による加飾シートにおいて、前記第1遮光層及び前記第2遮光層は異なる厚みを有してもよい。
【0014】
本発明による加飾シートにおいて、前記絵柄部は、前記基材部とは反対側の面として凹凸面を有してもよい。
【0015】
本発明による加飾シート付き表示装置は、
上述した本発明による加飾シートのいずれかと、
前記加飾シートを重ねられた表示装置と、を備える。
【0016】
本発明による加飾シートの製造方法は、
基材フィルムと前記基材フィルムに積層された絵柄膜とを有する積層体の前記絵柄膜の側にブラストマスクを設ける工程と、
前記ブラストマスク越しに前記積層体をブラスト加工し、前記絵柄膜をパターニングして絵柄部を形成する工程と、を備える。
【0017】
本発明の加飾シートの製造方法の前記ブラスト加工する工程において、前記基材フィルムの前記ブラストマスクに覆われていない領域内に凹部を形成してもよい。
【0018】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記ブラストマスクの厚みは、前記絵柄膜の厚みよりも厚くてもよい。
【0019】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記ブラストマスクの厚みは、前記絵柄膜の厚みの二倍よりも薄くてもよい。
【0020】
本発明の加飾シートにおいて、前記絵柄膜は、絵柄を表示する意匠膜と、前記意匠膜の前記基材とは反対側に設けられた遮光膜と、を有してもよい。
【0021】
本発明の加飾シートにおいて、前記ブラストマスクは、前記遮光膜と異なる色を有してもよい。
【0022】
本発明の加飾シートにおいて、ブラスト加工終了後における前記ブラストマスクは、前記遮光膜と異なる厚みを有してもよい。
【0023】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記ブラストマスクを設ける工程において、スクリーン印刷によって前記ブラストマスクを前記積層体上に設けてもよい。
【0024】
本発明の加飾シートの製造方法において、前記絵柄膜は、絵柄を形成された意匠膜を含み、
前記ブラストマスクを設ける工程において、スクリーン印刷によって前記意匠膜に隣接するようにして前記ブラストマスクを前記積層体上に設けてもよい。
【0025】
本発明の加飾シートにおいて、前記ブラストマスクを設ける工程は、前記積層体上にレジスト層を設ける工程と、前記レジスト層をパターニングして前記ブラストマスクを形成する工程と、を含んでもよい。
【0026】
本発明の加飾シートにおいて、前記ブラスト加工を行う工程の後に、前記ブラストマスクを除去する工程を更に備えてもよい。
【0027】
本発明の加飾シートにおいて、前記ブラストマスクを前記絵柄部の一部として用いてもよい。
【0028】
本発明による加飾シート付き表示装置の製造方法は、
上述した加飾シートの製造方法と、
前記加飾シートを表示装置に積層する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、絵柄の鮮明性を維持しながら画像の視野角を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、一実施の形態を説明するための図であって、加飾シート付き表示装置の一例を概略的に示す分解斜視図である。
図2図2は、図1の加飾シート付き表示装置の横断面図である。
図3図3は、図1の加飾シート付き表示装置を示す平面図であって、表示装置を表示状態とした状態を示している。
図4図4は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる遮光シートを示す平面図である。
図5図5は、図1の加飾シート付き表示装置に含まれる加飾シートの一例を示す部分拡大平面図である。
図6図6は、加飾シートの横断面図である。
図7図7は、図6の加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図8図8は、図6の加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図9図9は、図6の加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図10図10は、図6の加飾シートの製造方法の一例を説明する示ための図である。
図11図11は、図6の加飾シートの製造方法の一例を説明するための図である。
図12図12は、図2に対応する図であって、加飾シート付き表示装置の他の例を示す横断面図である。
図13図13は、図6に対応する図であって、加飾シートの他の例を示す横断面図である。
図14図14は、図6に対応する図であって、加飾シートの更に他の例を示す横断面図である。
図15図15は、図9に対応する図であって、加飾シートの製造方法の他の例を説明するための図である。
図16図16は、図11に対応する図であって、加飾シートの製造方法の他の例を説明するための図である。
図17図17は、図5に対応する図であって、加飾シートの更に他の例を示す部分拡大平面図である。
図18図18は、図5に対応する図であって、加飾シートの更に他の例を示す部分拡大平面図である。
図19図19は、加飾シート付き表示装置に含まれる表示装置の画素配列を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について、図示された具体例を参照して説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0032】
なお、本明細書において、「層」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「層」という用語は、シート或いはフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0033】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0034】
図1は、本発明による一実施の形態の加飾シート付き表示装置1を概略的に示す分解斜視図である。図1に示されるように、加飾シート付き表示装置1は、表示面11を有する表示装置10と、表示面11に対面して配置された加飾シート20と、を有している。なお、図示された例では、加飾シート付き表示装置1は、平板状に示されているが、加飾シート付き表示装置1の各構成要素が湾曲することで、加飾シート付き表示装置1が湾曲形状を有するようにしてもよい。例えば、加飾シート20のみが湾曲するようにしてもよいし、加飾シート20と表示装置10の少なくとも表示面11とが湾曲するようにしてもよい。
【0035】
この加飾シート付き表示装置1は、図1に示された非表示状態と、図3に示された表示状態と、をとることができる。図1に示された非表示状態では、加飾シート20の絵柄部24に形成された絵柄を表示することができる。図3に示された表示状態では、表示装置10によって形成される画像を表示することができる。そして、本実施の形態に係る加飾シート付き表示装置1及び加飾シート20では、加飾シートに表示される絵柄の鮮明さを十分確保しながら、表示装置10によって表示される画像の視野角の広角化を実現するための工夫がなされている。
【0036】
まず、加飾シート付き表示装置1の構成について、図示された具体例を参照して説明する。
【0037】
表示装置10として画像を表示するための種々の装置を用いることができる。表示装置10は、典型的には、表示面11から画像光を射出することで画像を表示する装置とすることができる。
【0038】
図2に示された一例において、表示装置10は、面光源装置12及び遮光シート14を有している。面光源装置12は、面状に光を発光する装置である。面光源装置12は、光を発光する発光面13を有している。面光源装置12として、特に限定されることなく、種々の型式、例えばエッジライト型や直下型の装置を用いることができる。
【0039】
遮光シート14は、面光源装置12の発光面13上に配置されている。遮光シート14は、表示装置10の表示面11を形成する。遮光シート14の平面図である図4に示すように、遮光シート14は、表示したい画像のパターンと同一パターンの開口領域14aと、開口領域14aに隣接する遮光領域14bと、に平面分割されている。遮光領域14bは、可視光吸収性を有し、面光源装置12で発光された光を遮蔽する。遮光領域14bは、黒色顔料等を含んだ樹脂材料を用いて作製され得る。より具体的には、後述する絵柄部24の遮光層32と同様の材料を用いて作製され得る。開口領域14aは、面光源装置12で発光された光を透過させる透明または開口した領域である。すなわち、遮光シート14は、所望のパターンで光を透過させる遮光マスクとして機能する。図5に示された遮光シート14の一例において、開口領域14aはアルファベットの「D」の形状を有している。
【0040】
なお、本明細書で用いる「透明」とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、70%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。
【0041】
以上の構成からなる図示された表示装置10は、面光源装置12が光を発光した場合に、静止画としてアルファベットの「D」を表示することができる。また、遮光シート14を変更することによって、すなわち別の遮光シート14を用いることによって、発光面13の外輪郭の内部に種々の画像を表示することができる。この点から、図示された表示装置10の表示面11は、発光面13に対面する領域と言える。
【0042】
ただし、表示装置10は、図2に示された例に限られない。例えば、面光源装置12の発光面13が、表示した画像のパターンと同一パターンを有するようにして、遮光シート14を省略するようにしてもよい。また、表示装置10として、例えば動画を表示する装置を用いるようにしてもよい。具体的には、後に言及するようにドットマトリックス方式の表示装置10を用いることができる。ドットマトリックス方式の表示装置10では、ドットを形成する画素の発光状態を個別に制御することで所望の画像を形成することができる。
【0043】
次に、加飾シート20について説明する。図1及び図2に示すように加飾シート20は、表示装置10の表示面11に対面して配置され、表示面11が外部から直接観察されないよう、少なくとも表示面11の全体を覆っている。加飾シート20は、表示装置10の表示面11の全体を覆うことができるよう、表示面11の寸法以上の寸法を有している。図示された加飾シート20は、表示面11と、表示面11の周囲に位置する周囲領域11aと、を含む表示装置10の前面の全領域を覆う寸法を有している。すなわち、加飾シート20は、表示装置10の全体を隠蔽している。図1に示す例では、加飾シート20は、全体として表示装置10の表示面11と同一の方向に広がる平板状の部材である。加飾シート20の厚さは、例えば20μm以上550μm以下とすることができる。
【0044】
図示された例において、加飾シート20は平面視において矩形形状を有している。図1に示すように、加飾シート20は、長辺として互いに平行に延びる第1端辺20a及び第2端辺20bと、短辺として互いに平行に延びる第3端辺20c及び第4端辺20dと、を含んでいる。図1に示すように、第1端辺20a及び第2端辺20bは、第1方向DS1に直線状に延び、第3端辺20c及び第4端辺20dは、第1方向DS1に垂直な第2方向DS2に直線状に延びている。
【0045】
なお、図面間での方向関係を明確化するため、いくつかの図面には、第1方向DS1及び第2方向DS2、さらに第1方向DS1及び第2方向DS2の両方に直交する法線方向ND等を、図面間で共通する方向として示している。また、図の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図2に示すように、円の中にXを設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図4に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。
【0046】
加飾シート20は、絵柄を表示して、加飾シート付き表示装置1に意匠性を付与する。図2に示すように、加飾シート20は、基材部21と、絵柄部24と、絵柄部24の開口部として設けられた透過部26と、を有している。絵柄部24は、絵柄を表示する意匠層31と、遮光層32を更に含んでいる。図示された例において、透過部26は、表示装置10からの画像光を透過させる。すなわち、表示装置10によって形成される画像は、透過部26を介して観察され得る。図示された加飾シート20は、絵柄部24及び透過部26と法線方向NDに対面する位置に、基材部21を有している。以下、加飾シート20の各構成要素について説明する。
【0047】
まず、絵柄部24を支持する基材部21について説明する。図2及び図6に示すように、基材部21は、互いに対向する第1面21a及び第2面21bを有している。基材部21は透明なフィルム状の部材であり、第1面21a及び第2面21bは一対の主面を形成している。図2に示された例において、基材部21は、加飾シート付き表示装置1の最も表示装置10から離間する側に位置している。つまり、絵柄部24は、基材部21によって表示装置10の側に支持されている。基材部21として、樹脂製のフィルムを用いることができる。基材部21は、可視光を透過し、絵柄部24を適切に支持し得るものであればいかなる材料でもよいが、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等を挙げることができる。基材部21は、可視光透過性や、絵柄部24及び透過部26の適切な支持性等を考慮すると、10μm以上500μm以下の厚さを有していることが好ましい。
【0048】
次に、絵柄部24及び透過部26について順に説明する。図2及び図6に示すように、絵柄部24は、基材部21の表示装置10側に設けられている。絵柄部24は基材部21の第1面21aに接触するようにして設けられている。すなわち、絵柄部24は、基材部21の第1面21a上に直接配置されている。図示された絵柄部24は、加飾シート20の法線方向NDに基材部21上に順に積層された意匠層31及び遮光層32を有している。このうち、遮光層32が、加飾シート20の法線方向NDに沿って表示装置10に近接し、意匠層31が、法線方向NDに沿って表示装置10から離間する。図示された例において、意匠層31は、絵柄部24における最も観察者側の層を形成している。
【0049】
意匠層31は、加飾シート20が表示する意匠を形成する。意匠層31は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成することができる。意匠層31は、背景を表示する意匠表現を行うこともできる。例えば、加飾シート付き表示装置1が設けられる周辺環境と調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄や幾何学模様を、意匠層31が表示するようにしてもよい。意匠層31は、例えば印刷や転写によって形成され得る。意匠層31の厚さを、例えば1μm以上20μm以下とすることができる。
【0050】
遮光層32は、表示装置10に対面する側から意匠層31を覆うように設けられている。図示された例において、遮光層32は、表示装置10と意匠層31との間に位置している。遮光層32は、表示装置10からの可視光が意匠層31に入射しないよう、可視光遮光性を有している。したがって、遮光層32の可視光透過率は、意匠層31の可視光透過率よりも低くなっていることが好ましい。遮光層32は、例えば光吸収粒子をバインダー樹脂中に含み得る。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。十分な厚さの遮光層32が意匠層31を覆うことで、意匠層31によって形成される意匠を濃く明瞭に表示することができる。具体的な例として、遮光層32の厚さを、1μm以上20μm以下とすることができる。
【0051】
なお、絵柄部24は、意匠層31及び遮光層32に加えて、意匠層31及び遮光層32の間に下地層を更に有するようにしてもよい。下地層は種々の色の層として構成される。下地層を設けることで、意匠層31の背面の色を遮光層32に制約されることなく選択することができる。遮光層32の存在が意匠層31の意匠表現に影響を及ぼすことを防止する観点から、下地層は白色であることが好ましい。白色の意匠層31によれば、反射率(とりわけ散乱反射率)も高くなり、意匠を明瞭に表示することができる。
【0052】
次に、透過部26について説明する。透過部26は、加飾シート20のうちの表示装置10からの画像光が透過する部位となる。したがって、透過部26は、高い可視光透過性を有する部位となっている。透過部26は、絵柄部24に設けられた開口部として構成されている。言い換えると、透過部26は、絵柄部24の非形成部として構成されている。図2に示された例において、透過部26は、表示装置10側へ向けて開口している。
【0053】
図5に示すように、平面視における加飾シート20は、絵柄部24と透過部26に区分けされている。とりわけ図示された例では、絵柄部24内に複数の透過部26が分散配置されている。図示された加飾シート20において、複数の透過部26は、第1方向DS1及び第2方向DS2に配列されている。複数の透過部26は、規則的に配置されている。より具体的には、複数の透過部26は、格子配列にて配置されている。すなわち、図示された例において、複数の透過部26は、第1方向DS1に一定のピッチで配置され、第2方向DS2にも一定のピッチで配置されている。図示された透過部26は、平面視において円形状を有している。
【0054】
ただし、図示された例に限られず、透過部26および絵柄部24の配置を種々変更することができる。透過部26は、平面視において、円形状以外の形状、例えば、楕円形状、三角形形状、四角形形状、五角形形状等を有していてもよい。また、複数の透過部26の配列は、図示された格子配列に限定されることなく、ハニカム配列や、不規則な配列としてもよい。さらに、複数の透過部26が一方向に配列され、各透過部26が一方向と非平行な他方向に線状に延びるようにしてもよい。すなわち、複数の透過部26がストライプ状に配列されていてもよい。
【0055】
平面視における加飾シート20の面積に対する透過部26の面積の割合(以下、「開口率」という。)は、観察者が表示装置10からの画像光を実用に耐える程度に観察することを可能とするために、5%以上とするのが好ましく、10%以上とするのがより好ましく、20%以上とするのが更に好ましい。一方、表示装置10の表示面11に画像を表示していない状態では、加飾シート20は絵柄部24の意匠を表示する。加飾シート20の開口率は、加飾シート20の意匠を観察者が実用に耐える程度に明確に観察できるようにするために、30%以下とするのが好ましく、20%以下とするのがより好ましく、15%以下とするのが更に好ましい。
【0056】
ところで、本実施の形態において、基材部21は、図6に示すように、絵柄部24が設けられている側の面となる第1面21aに、凹凸面21S、言い換えると粗面を有している。図示された例において、基材部21の第1面21aのみが凹凸面21Sを有している。基材部の第2面21bは平滑面として形成されている。したがって、第1面21aに含まれる凹凸面21Sの粗さは、第2面21bの粗さよりも粗くなっている。なお、本明細書において、粗さとは、JIS B 0601-2001に準拠して測定される算術平均粗さによって評価した粗さのことを指し示す。
【0057】
基材部21は、絵柄部24が設けられている第1領域22と、第1領域22とは異なる第2領域23と、を有している。図示された例において、第1領域22上のみに絵柄部24が設けられており、第2領域23上には絵柄部24が設けられていない。すなわち、第2領域23上には透過部26が形成されている。図示された基材部21は、第1領域22及び第2領域23からなっている。言い換えると、図示された基材部21は、第1領域22及び第2領域23のいずれかに平面分割されている。図6に示すように、基材部21の第1面21aは、少なくとも第2領域23に、凹凸面21Sを含んでいる。図示された例において、基材部21の第1面21aは、第2領域内23のみに、凹凸面21Sを含んでいる。とりわけ、凹凸面21Sは、分散配置された複数の第2領域内23にそれぞれ設けられている。各第2領域23の全域に亘って凹凸面21Sが形成されていてもよいし、各第2領域23の周縁部を除く部分に凹凸面21Sが形成されていてもよい。図示された例において、第2領域23内において基材部21の第1面21aに設けられた凹凸面21Sの粗さは、第1領域22内となる基材部21の第1面21aに粗さよりも粗くなっている。
【0058】
詳しくは後述するように、凹凸面21Sは、透過部26を通過する光を拡散させて表示装置10によって表示される画像の視野角を拡大させることを目的としている。したがって、基材部21の第1面21aに形成された凹凸面21Sの凸部のピッチは、可視光の波長(380nm以上780nm以下)より長くなっており、例えば1μm以上となっている。また、画像の視野角を広げる観点から、JIS B 0601-2001に準拠して測定された凹凸面21Sの算術平均粗さは、0.7μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることがより好ましく、2μm以上5μm以下であることが更に好ましい。
【0059】
また、図6に示すように、基材部21の第1面21aには凹部21cが形成されている。基材部21の第1面21aは、少なくとも第2領域23に、凹部21cが形成されている。図示された例において、基材部21の第1面21aは、第2領域23内のみに、凹部21cが形成されている。とりわけ、凹部21cは、分散配置された複数の第2領域23内にそれぞれ設けられている。各第2領域23の全域に亘って凹部21cが形成されていてもよいし、各第2領域23の周縁部を除く部分に凹部21cが形成されていてもよい。
【0060】
また、図示された例において、凹部21c内に凹凸面21Sが形成されている。とりわけ、凹部21c内のみに凹凸面21Sが形成されている。各凹部21cの全域に亘って凹凸面21Sが形成されていてもよいし、各凹部21cの周縁部を除く部分に凹凸面21Sが形成されていてもよい。或いは、凹凸面21Sが形成された領域内に凹部21cが形成されていてもよい。とりわけ、凹凸面21Sが形成された領域内のみに凹部21cが形成されていてもよい。各凹凸面21Sが形成された領域の全域に亘って凹部21cが形成されていてもよいし、各凹凸面21Sが形成された領域の周縁部を除く部分に凹部21cが形成されていてもよい。図6に示すように、凹部21cの深さ(凹部21cの法線方向NDに沿った長さ)T1は、後述するように絵柄の鮮明性を維持する上で、絵柄部24の厚みT2よりも小さくすることが好ましい。
【0061】
なお、凹凸面21S及び凹部21c等のいくつかの構成の図示は、一部の図において省略されている。
【0062】
加えて、図示された加飾シート20は、基材部21および絵柄部24に加えて、法線方向NDに沿って最も表示装置10に近接する側にカバー層27を有している。絵柄部24は、法線方向NDにおける一方の側から基材部21によって覆われ、法線方向NDにおける他方の側からカバー層27によって覆われている。すなわち、絵柄部24は、基材部21とカバー層27との間に位置している。また、カバー層27は、基材部21上における絵柄部24の非形成部にも広がっている。すなわち、カバー層27が、透過部26を形成している。このカバー層27は、絵柄部24を保護し、かつ、透過部26に埃等の異物が混入することを効果的に防止することができる。
【0063】
カバー層27は、基材部21との間で所定の屈折率差を有することが好ましい。カバー層27は、凹凸面21Sに隣接して設けられている。凹凸面21Sは、後述するように光拡散面として機能し、画像光を拡散させる。したがって、カバー層27と基材部21との間の屈折率差は、0.1以上0.6以下となっていることが好ましい。例えば、加飾シート20の基材部21として1.53から1.57の屈折率を有するアクリル樹脂が使用される場合、カバー層27の好ましい材料として、1.33から1.77の屈折率を有するポリメタクリル酸メチル樹脂、フッソ樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを用いることができる。これらの樹脂に中空シリカを混入させ、低屈折にしてもよい。
【0064】
次に、以上のような構成からなる加飾シート20の製造方法の一例について説明する。
【0065】
まず、基材部21をなすようになる基材フィルム21A(図7参照)を用意する。このような基材フィルム21Aとして、上述した基材部21に用いられる透明な樹脂材料からなるフィルム材を用いることができる。図7に示すように、この基材フィルム21A上に、意匠層31をなすようになる意匠膜31Aを形成する。意匠膜31Aは、一例としてグラビア印刷により、予め設定されたパターン及び大きさ分布の網点を、基材フィルム21A上に設けることによって得られる。このようにして意匠膜31Aが基材フィルム21A上に形成される。次に、遮光層32をなすようになる遮光膜32Aを設ける。遮光膜32Aは、例えば、遮光層32をなすようになる材料を含んだ樹脂組成物をコーティングすることで、意匠膜31A上に形成することができる。このようにして遮光膜32Aが意匠膜31A上に形成される。以上の手順により、図8に示すように、基材フィルム21A上に意匠膜31A及び遮光膜32Aをこの順番で積層してなる積層体35が得られる。なお、意匠膜31Aの厚みは、上述した意匠層31の厚みと同様に1μm以上20μm以下とすることができる。また、遮光膜32Aの厚みは、上述した遮光層32の厚みと同様に1μm以上20μm以下とすることができる。
【0066】
次に、積層体35の遮光膜32A上にレジスト層36Aを形成する(図8参照)。レジスト層36Aは、例えばドライフィルムレジストを積層することで形成され得る。ドライフィルムレジストの材料として、例えば、三菱製紙株式会社製のMS7050を選択することができる。このようにして積層体35上にレジスト層36Aが形成される。なお、レジスト層36Aの厚みすなわち、加飾シート20の法線方向NDに沿ったレジスト層36Aの長さは、例えば50μm以上100μm以下とすることができる。
【0067】
ここで、レジスト層36Aの厚み(レジスト層36Aの法線方向NDに沿った長さ)は、意匠膜31Aの厚み(意匠膜31Aの法線方向NDに沿った長さ)と遮光膜32Aの厚み(遮光膜32Aの法線方向NDに沿った長さ)とを合わせた厚みよりも大きくすることができる。また、レジスト層36Aの厚みは、意匠膜31Aの厚みと遮光膜32Aの厚みとを合わせた厚みよりも大きく、意匠膜31Aの厚みと遮光膜32Aの厚みの二倍の値よりも小さくすることができる。
【0068】
次に、パターンマスクをレジスト層36A上に設置した状態でパターンマスク上部からレジスト層36Aを露光する。レジスト層36Aに、例えば、露光して硬化した第1レジスト領域と、パターンマスクにより露光せず硬化しなかった第2レジスト領域とが、生じる。第1レジスト領域は、作製されるべき加飾シートの基材部の第1領域22上となる領域に位置し、第2レジスト領域は、作製されるべき加飾シートの基材部の第2領域23上となる領域に位置するようになる。そして、レジスト層36Aを現像液により現像することで、第2レジスト領域内においてレジスト層36Aが現像液中に溶解する。以上の手順により、図9に示すように、レジスト層36Aからレジストパターン36が積層体35上に得られる。作製されたレジストパターン36において、作製されるべき加飾シート20の基材部21の第1領域22上となる領域に、レジスト層36Aの残留した部分が位置し、作製されるべき加飾シート20の基材部21の第2領域23上となる領域に、レジスト層36Aの溶解した部分が位置するようになる。
【0069】
次に、図10に示すように、レジストパターン36越しに積層体35にブラスト加工を施す。この工程ではレジストパターン36をブラストマスク37として用いる。レジストパターン36からなるブラストマスク37が設けられている側から、積層体35に向けてブラスト加工装置Mからブラスト材を噴射する。図10並びに後に参照する図11及び図16では、ブラスト材の動作を太矢印にて模式的に示している。ブラスト材がブラストマスク37の開口部から積層体35に吹き付けられる。ブラスト材は、積層体35のブラストマスク37側に位置する絵柄膜24Aに衝突し、絵柄膜24Aを侵食する。すなわち、絵柄膜24Aのうちのブラストマスク37で覆われていない部分、図示された例では、絵柄膜24Aのうちのブラストマスク37の開口部に露出した部分が、除去される。このようにして、ブラスト加工によって、絵柄膜24Aをなす遮光膜32Aおよび意匠膜31Aが順に侵食される。結果として、ブラスト加工によって、ブラストマスク37のパターンと同様のパターンを有するように絵柄膜24Aがパターニングされる。パターニングされた絵柄膜24Aによって、絵柄部24が形成される。図示された例では、パターニングされた絵柄膜24Aの遮光膜32Aによって、絵柄部24の遮光層32が形成され、パターニングされた絵柄膜24Aの意匠膜31Aによって、絵柄部24の意匠層31が形成される。
【0070】
以上により、図10に示すように、ブラストマスク37の開口部に基材フィルム21Aの第1面21aが露出する。図10の積層体に対して更にブラスト加工を継続する。これにより、図11に示すように、基材フィルム21Aの第1面21aが侵食され、基材フィルム21Aの第1面21aに凹部21cが形成されるようになる。凹部21cの深さはT1ブラスト加工の時間によって調節することができる。このようにしてブラスト加工が終了する。基材フィルム21Aから基材部21が形成される。基材部21のうちのブラストマスク37によって覆われた部分が第1領域22をなし、この第1領域22上に絵柄部24が設けられている。また、基材部21のうちのブラストマスク37の開口部内に露出した部分が第2領域23をなすようになり、この第2領域23に透過部26が形成されるようになる。そして、基材フィルム21Aに形成された凹部21cは、基材部21の第1面21aのうちの第2領域23内に位置するようになる。
【0071】
さらに、図10及び図11に示すように、基材部21の第2領域23内となる第1面21aは、ブラスト加工による被加工面となり、したがって凹凸面21Sとなっている。同様に、ブラストマスク37の積層体35とは反対側の面も、ブラスト材が吹き付けられる被加工面となる。したがって、ブラストマスク37の積層体35とは反対側の面も凹凸面21Sとなる。これらの凹凸面21Sの粗さは、例えば、ブラスト材の種類や大きさ、ブラスト材の噴射速度等によって調節することができる。なお、ブラスト材として、例えば、砂、ガラス等を用いることができる。
【0072】
ところで、ブラスト加工による絵柄膜24Aの侵食にともない、ブラストマスク37の侵食も進む。通常、一般的に用いられる材料を使用するとともに一般的なブラスト加工条件を採用した場合、樹脂や色材等を含んでなる絵柄膜のブラスト加工による侵食速度は、樹脂を含んでなるブラストマスク37のブラスト加工時における侵食速度と同程度か幾らか速くなる。すなわち、絵柄膜24Aの厚み分だけブラスト加工の侵食が進んだ際に、絵柄膜24Aの厚みと同程度または幾らか薄い厚み分だけブラストマスク37の侵食も進み得る。
【0073】
したがって、透過部26を形成する領域における絵柄膜24Aの除去が完了する前に、ブラストマスク37の浸食がその厚み分進んでしまう可能性もある。このように、ブラスト加工の終了前に、積層体35上のブラストマスク37が除去されてしまうと、絵柄部24の除去を意図していない部分がブラスト加工で除去されることになる。このような不具合の発生を防止することを目的として、上述した例では、図9に示すように、ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚みT3Aを絵柄膜24Aの厚みT2Aよりも厚くしている。このような例によれば、ブラスト加工時における絵柄膜24Aの除去速度が、ブラスト加工時におけるブラストマスク37の除去速度と同程度であったとしても、絵柄膜24Aに所定の領域が除去されるまで、ブラストマスク37が除去されずに積層体35上に残留することになる。結果として、絵柄部24の厚みT2が絵柄膜24Aの厚みT2Aと等しくなる。
【0074】
また、図示された例では、ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚みT3Aが絵柄膜24Aの厚みT2Aの二倍よりも薄くなっている。この例によれば、ブラストマスク37が残っていることを確認しながらブラスト加工を行うことで、基材部21の第2領域23内における第1面21aに形成される凹部21cの深さT1(図6参照)が深くなり過ぎず、例えば、凹部21cの深さT1を絵柄部24の厚みT2未満とすることができる。
【0075】
以上のようにしてブラスト加工が終了した後、ブラストマスク37を除去する工程が実施される。例えば、レジスト剥離液を用いることで、積層体35上に残留したブラストマスク37を積層体35から除去することができる。
【0076】
次に、カバー層27を形成するようになる樹脂組成物を、作製された絵柄部24の側から積層体35上に塗布する。樹脂組成物を塗布膜上で硬化させることで、カバー層27が形成される。
【0077】
以上の工程によって、図2および図6に示された加飾シート20が製造される。得られた加飾シート20を、表示装置10に積層することで、加飾シート付き表示装置1が得られる。
【0078】
次に、本実施の形態の加飾シート付き表示装置1の作用について説明する。
【0079】
表示装置10が非表示状態にあり表示面11から画像光が発光されていない状態では、図1に示されているように、表示装置10の表示面11に重ねて配置された加飾シート20が視認される。そして、加飾シート20において遮光層32よりも観察者側に位置する意匠層31が観察される。意匠層31は、絵柄を表示することで優れた意匠性を付与することができる。すなわち、画像の非表示状態において、通常、黒く観察される表示装置10を隠蔽することがで、周囲環境との意匠の調和や統一性を確保しながら表示装置10を設置することができる。また昨今では表示装置10の適用範囲が急速に広がっており、加飾シート20を用いることによって、意匠性が重要視される自動車や家具、住宅建材の表面部材等へ、表示装置10を適用することも可能となる。
【0080】
一方、表示面11が表示状態にある場合、表示面11から画像光が射出する。表示面11から射出した画像光は、加飾シート20の絵柄部24又は透過部26に向かう。透過部26に入射する画像光は、その後に基材部21を透過して加飾シート20から観察者側へ出射する。透過部26を通過した画像光は、図3に示すように、表示面11上に観察される画像を形成する。
【0081】
なお、絵柄部24へ向かった画像光は、絵柄部24の最も表示装置10の側に位置する遮光層32で吸収される。すなわち、表示装置10からの画像光は、絵柄部24を透過することはない。したがって、画像光が意匠層31を背面側から照明することもない。これにより、表示装置10によって表示される画像が、加飾シート20の絵柄部24に形成された意匠と混色してしまうことを効果的に防止することができる。また、表示装置10によって画像を表示している際に、絵柄部24の意匠が目立ってしまうことも効果的に防止することができる。これにより、表示装置10が表示状態にある場合、表示装置10によって表示される画像を明瞭に観察することができる。
【0082】
ところで、表示装置10の表示面11は、意匠を表示する加飾シート20の背面に位置している。表示装置10の表示面11から射出した画像光のうち加飾シート20の透過部26を通過した画像光が、観察者によって観察される画像を形成する。とりわけ、透過部26は一定の厚み(法線方向NDに沿って一定の長さ)を有している。このため、加飾シート20及び表示装置10を含む加飾シート付き表示装置1では、画像を観察することができる角度範囲、すなわち視野角が狭くなりやすいといった問題が生じていた。
【0083】
一般的に表示画像の視野角を広げるには、画像光を拡散させることが行われる。典型的には、加飾シートの観察者側に光拡散シートを配置することが考えられる。しかしながら、加飾シート20の観察者側に光拡散シートを配置した場合、絵柄部24の観察を可能にする光も拡散され、表示される絵柄の鮮明性が低下する問題があった。とりわけ、絵柄部24の観察を可能にする絵柄部24での反射光は、反射前後の二回光拡散シートを透過することになり、表示装置10からの画像光と比較して、より拡散されることになる。絵柄部24によって表示される絵柄の鮮明性低下は、表示装置10を配置する領域での意匠性向上といった加飾シート20の設置意義を害する致命的な不具合と言える。
【0084】
この点について、本実施の形態において、例えば図6に示すように、基材部21の第1面21aは、少なくとも第1領域22以外となる第2領域23内に、凹凸面21Sを有している。基材部21の第2領域23上には、画像光が進行する透過部26が設けられている。したがって、透過部26を通過する画像光が、この凹凸面21Sにおいて拡散されて拡散することで、画像を観察可能な視野角を拡大することができる。すなわち、加飾シート20の観察者側に光拡散シートを配置することなく表示装置10の表示面11から射出した画像光の視野角を拡大することができる。同時に、絵柄部24から観察者へ向かう光が、光拡散シートで拡散されることを効果的に回避することができる。したがって、表示装置10によって表示される画像の視野角を広げるための凹凸面21Sによって、絵柄部24によって表示される絵柄を崩してしまうことを効果的に回避して、絵柄の鮮明性を維持することができる。
【0085】
とりわけ図示された例では、加飾シート20が凹凸面21Sを第2領域23のみに有している。この例によれば、凹凸面21Sでの拡散によって絵柄が崩れてしまうことをより安定して回避することができる。つまり、絵柄の鮮明性を安定して維持しながら、画像の視野角を有効に拡大することができる。
【0086】
また、凹凸面21Sは、基材部21の絵柄部24が重ねられている側となる第1面21aに設けられている。したがって、図6に示すように、基材部21の絵柄部24とは反対側となる第2面21bを平坦な面として形成することができる。そして、この加飾シート20によれば平坦な第2面21bを他の部材や装置等、例えば表示装置10に接合する際、種々の材料から選択された接合層を用いることができる。言い換えると、何らかの支持を期待して第2面21bに形状が付与されている訳ではないので、第2面21bを接合層で覆うことができる。接合層を用いて加飾シート20を他の部材や装置等と接合した場合、加飾シート20と他の部材や装置との間に空気層が存在することを回避することができる。これにより、加飾シート20と空気層との界面や空気層と他の部材や装置等との界面での反射を効果的に防止することができる。したがって、これらの界面での反射に起因した迷光の発生や、ニュートンリング等の不具合を効果的に防止することができる。
【0087】
更に、表示装置10によって表示される画像光を、加飾シート20の基材部21に設けられた凹凸面21Sで拡散することによって、表示装置10の表示面の実際の位置よりも凹凸面21S側に接近した位置に画像が形成されているかのようにして当該画像が観察されることになる。すなわち、絵柄部24によって表示される絵柄と、表示装置10によって表示される画像が、加飾シート20の法線方向NDにおいて、より近い位置に視認されるようになる。とりわけ、凹凸面21Sが、絵柄部側となる基材部の第1面21aに形成されていることから、絵柄と画像が法線方向NDにおいて非常に近い位置に視認されるようになる。これに対し、絵柄と画像が法線方向NDにおいて大きく異なる位置に観察される場合には、観察者が画像の表示開始時に違和感を覚えることがある。したがって、本実施の形態による加飾シート20を用いることで、この違和感を効果的に緩和することができる。
【0088】
また、図6に示すように、基材部21の第1面21aは凹部21cを有し、凹凸面21Sは前記凹部21c内に形成されている。この加飾シート20では、加飾シート20の法線方向NDにおいて、凹凸面21Sが絵柄部24の意匠層31よりも幾らか観察者側に位置するようになる。この例では、透過部26を通過した後の画像光を凹凸面21Sによって拡散することができる。したがって、透過部26の断面形状(透過部26の面積や絵柄部24の厚み等)に制約されることなく、画像を観察し得る視野角を高い自由度で調節することができる。またこの例によれば、観察者によって観察される画像の位置と、表示装置10の表示面11の位置から絵柄部24の絵柄が観察される位置と、法線方向NDにおいてより接近させることが可能となる。とりわけこの例によれば、法線方向NDに沿って凹凸面21Sが意匠層31と同一位置に配置されている場合よりも、観察される絵柄の位置と画像の位置とを法線方向NDにおいて揃えることが可能となることもある。したがって、観察者は、表示装置10によって表示される画像を、とりわけ画像の表示開始時に、違和感無く自然に観察することができる。
【0089】
さらに、図6に示すように、凹部21cの深さT1は絵柄部24の厚みT2よりも小さくなっている。この加飾シート20では、絵柄部24の意匠層31で反射された光が凹部21c内に位置する凹凸面21Sを経由して観察者の眼に向かうことを効果的に回避することができる。或いは、外光が、凹凸面21Sを通過して拡散された後に意匠層31で反射されることを効果的に回避することができる。すなわち、観察者の眼に向かうようになる絵柄部24の意匠層31での反射光が凹凸面21Sで拡散されることを効果的に回避することができる。これにより、表示装置10によって表示される画像の視野角を有効に広げながら、絵柄部24によって表示される絵柄の鮮明さをより安定して維持することができる。
【0090】
その一方で、凹部21cの深さは少なくとも0.7μm以上であることが好ましい。表示装置10が加飾シート20の背面に配置された加飾シート付き表示装置1では、上述したように、法線方向NDに沿って凹凸面21Sが意匠層31と同一位置に配置されている場合よりも、観察される絵柄の位置と画像の位置とを法線方向NDにおいて揃えることが可能となることもある。とりわけ、凹部21cの深さT1を少なくとも1μm以上とすることが、観察される絵柄の位置と画像の位置とを法線方向NDにおいて揃えることにおいて有利である。この例によれば、観察者は、表示装置10によって表示される画像を、とりわけ画像の表示開始時に、違和感無く自然に観察することができる。
【0091】
以上に説明してきた一実施の形態において、加飾シート20は、互いに対向する第1面21aおよび第2面21bを有する基材部21と、基材部21の第1面21a側に設けられ基材部21の第1領域22上のみに位置する絵柄部24と、を有している。基材部21の第1面21aは、少なくとも第1領域22以外となる第2領域23内に、凹凸面21Sを有している。このような一実施の形態の加飾シート20によれば、第2領域内23に位置する基材部21の凹凸面21Sによって、表示装置10からの画像光を拡散させ、視野角を広げることができる。一方、絵柄部24が重ねられていない加飾シート20の第2領域23のみに凹凸面21Sを設けることで、或いは、上述の具体例のように絵柄部24を基準として基材部21とは反対側が観察者側となるように加飾シート20を用いることで、絵柄部24によって表示される絵柄を凹凸面21Sが崩してしまうことを効果的に防止することができる。これにより、絵柄の鮮明性を維持しながら、画像の視野角を凹凸面21Sによって広げることができる。
【0092】
上述した一実施の形態の具体例において、絵柄部24は、絵柄を表示する意匠層31と、意匠層31の基材とは反対側に設けられた遮光層32と、を有している。この加飾シート20は、基材部21を基準として絵柄部24とは反対側が観察者側となるように、配置され得る。このとき、絵柄部24の意匠層31を基材部21によって効果的に保護することができる。また、表示装置10からの画像光は、隣り合う二つの絵柄部24の間を通過した後に拡散されるようになる。したがって、透過部26の断面形状(透過部26の面積や絵柄部24の厚み等)に制約されることなく、画像を観察し得る視野角を大きく拡大させることができる。さらに、観察者によって観察される画像の位置を、法線方向NDにおいて、表示装置10の表示面11の位置から絵柄部24の絵柄が観察される位置に接近させることができる。したがって、観察者は、表示装置10によって表示される画像を、とりわけ画像の表示開始時に、違和感無く自然に観察することができる。
【0093】
また、上述してきた一実施の形態において、加飾シート20の製造方法は、基材フィルム21Aと基材フィルム21Aに積層された絵柄膜24Aとを有する積層体35の絵柄膜24Aの側にブラストマスク37を設ける工程と、ブラストマスク37越しに積層体35をブラスト加工し、絵柄膜24Aをパターニングして絵柄部24を形成する工程と、を有している。このような一実施の形態の製造方法によれば、絵柄膜24Aが重ねられた基材部21の第1面21aのうち、絵柄部24の非形成部となる第2領域23を粗面化して凹凸面21Sを形成することができる。すなわち、基材部21の第1面21aのうちの第2領域23に凹凸面21Sからなる拡散面を有する加飾シート20を容易に製造することができる。この加飾シート20は、上述した優れた作用効果を奏することができる。とりわけ一実施の形態の具体例として、ブラスト加工する工程において、基材部21の第1面21aのうちの第2領域23内のみに容易かつ安定して凹部21cを形成することができる。
【0094】
上述した一実施の形態の具体例において、ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚みT3Aは絵柄膜24Aの厚みT2Aよりも厚くなっていた。通常、樹脂および色材等からなる絵柄膜24Aのブラスト加工による除去は、ブラストマスク37のブラスト加工時における除去よりも進み易いか同程度となる。したがって、ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚みT3Aを絵柄膜24Aの厚みT2Aよりも厚くしておくことで、絵柄部24を形成すべき基材部21の第1領域22上となる領域でのブラスト膜37Aが完全に除去されてしまう前に、透過部26を形成すべき第2領域23となる領域において基材フィルム21Aの面が露出するようになる。したがって、予定した厚みT2を有する絵柄部24を基材部21の第1面21aのうちの第1領域22上に形成することができる。また、基材フィルム21Aからなる基材部21の第1面21aのうちの第2領域23内のみに凹部21cを安定して形成することも可能となる。
【0095】
また、上述した一実施の形態の具体例において、ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚みT3Aは絵柄膜24Aの厚みT2Aの二倍よりも薄くなっている。この例によれば、ブラストマスク37が残っていることを確認しながらブラスト加工を行うことで、基材部21の第2領域23内における第1面21aに形成される凹部21cの深さT1が深くなり過ぎることを防止することができる。より具体的には、凹部21cの深さT1を絵柄部24の厚みT2未満とすることができる。
【0096】
さらに、上述した一実施の形態の具体例において、絵柄膜24Aは、意匠膜31Aと、意匠膜31Aの基材フィルム21Aとは反対側に設けられた遮光膜32Aと、を有している。この例によれば、得られた加飾シート20において、絵柄部24が、絵柄を表示する意匠層31と、意匠層31の基材とは反対側に設けられた遮光層32と、を有するようにすることができる。
【0097】
さらに、上述した一実施の形態の具体例において、ブラストマスク37を設ける工程は、積層体35上にレジスト層36Aを設ける工程と、レジスト層36Aをパターニングしてブラストマスク37を形成する工程と、を含んでいる。この例では、フォトリソグラフィー技術を用いたパターニングによって、レジスト層36Aからブラストマスク37を形成することができる。すなわち、レジスト層36Aをパターニングすることで、高精度なブラストマスク37を容易に形成することができる。
【0098】
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0099】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0100】
上述した具体例において、加飾シート20の絵柄部24は、基材部21と、基材部21上に順に積層された意匠層31及び遮光層32と、を有するようにしたが、この例に限られない。図12に示す通り、加飾シート20が、基材部21と、基材部21上に積層された遮光層32と、遮光層32の基材部21とは反対側に積層された意匠層31と、を有するようにしてもよい。この例では、絵柄部24を基準として基材部21とは反対側が観察者側となるように、加飾シート20を配置することができる。また図12に示された例においても、観察者によって観察される画像の位置を、法線方向NDに沿って、実際の表示装置10の表示面11の位置から絵柄部24の絵柄が観察される位置に近づけることができる。したがって、画像を観察した際、とりわけ画像の表示開始時に、観察者が覚える違和感を効果的に緩和することができる。
【0101】
なお、図12に示された例においても、加飾シート20は、基材部21上に絵柄部24が形成されている側から積層された透明なカバー層27を更に有している。カバー層27は、観察者側から絵柄部24を覆っている。カバー層27により、絵柄部24、とりわけ絵柄部24の意匠層31を保護することができる。ただし、加飾シート20が絵柄や画像を表示するといった機能を果たす上で、カバー層27は必須の層ではない。図2図6を参照して説明した上述の具体例や、図12を参照して説明した例において、カバー層27を省略することもできる。
【0102】
また、上述した具体例において、加飾シート20の絵柄部24は、1層の意匠層31と1層の遮光層32とを積層していたが、この例に限られない。図13に示す例のように、遮光層32は、互いに積層された第1遮光層33と第2遮光層34を含んでもよい。
【0103】
図13に示された例において、第1遮光層33及び第2遮光層34は異なる色を有するようにしてもよい。第1遮光層33及び第2遮光層34が異なる色を有することで、第1遮光層33の吸収スペクトル及び第2遮光層34の吸収スペクトルを異ならせることができる。したがって、画像光のスペクトル分布に対応して、遮光層32の吸収スペクトルを高い自由度で調節することができる。これにより、絵柄部24に入射した画像光を遮光層32で安定して吸収することができ、画像と絵柄との混色を効果的に抑制して所望の色で画像を表示することができる。
【0104】
さらに、図13に示された例において、第1遮光層33及び第2遮光層34が異なる厚みT3,T4を有するようにしてもよい。第1遮光層33及び第2遮光層34が異なる厚みT3,T4を有することで、遮光層32の吸収スペクトルをより高い自由度で調節することができる。
【0105】
さらに図13及び図14に示すように、絵柄部24の基材部21に対面する面と対向する面、すなわち絵柄部24の基材部21とは反対側となる面を、凹凸面21Kとしてもよい。この例によれば、法線方向NDにおける基材部21とは反対側から絵柄部24に向かう画像光が絵柄部24の面で反射、とりわけ正反射することを効果的に抑制することができる。これにより、ゴーストとも呼ばれる二重像の発生を効果的に抑制することができる。とりわけ絵柄部24の表示装置10側を向く凹凸面21Kが遮光層32によって形成されている場合、絵柄部24に向かう画像光をより高い吸収率で吸収することができる。これにより、迷光の発生を効果的に抑制することができる。結果としてこの例によれば、広い視野角で観察される画像をより鮮明に表示することも可能となる。このような作用効果を期待する上で、絵柄部24の凹凸面21KにおけるJIS B 0601-2001に準拠して測定された凹凸面21Kの算術平均粗さは、0.7μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることがより好ましく、2μm以上5μm以下であることが更に好ましい。
【0106】
なお、図14に示された加飾シート20において、絵柄部24は、基材部21上に順に積層された1層の意匠層31及び1層の遮光層32を有している。そして、遮光層32の意匠層31とは反対側の面が凹凸面21Kとなっている。
【0107】
更に他の変形例として、上述した加飾シート20の製造方法は一例に過ぎない。例えば、上述した具体例において、加飾シート20の製造方法が、ブラストマスク37を除去する工程を有するようにした。しかしながら、加飾シート20の製造時に作製したブラストマスク37を積層体35から除去することなく、絵柄部24の一部として用いることができる。例えば、積層体35上に残留したブラストマスク37を遮光層32として用いることができる。
【0108】
一例として、積層体35の遮光膜32Aから第1遮光層33を作製し、積層体35上に残留したブラストマスク37から第2遮光層34を作製することで、既に言及した図13に示された加飾シート20を作製することができる。
【0109】
この例において、ブラストマスク37が絵柄膜24Aの遮光膜32Aと異なる色を有するようにしてもよい。この場合、第1遮光層33及び第2遮光層34は異なる色を有するようになる。また、図13に示すように、ブラスト加工終了後におけるブラストマスク37が、絵柄膜24Aの遮光膜32Aとの厚みT4と異なる厚みT3を有するようにしてもよい。この場合、第1遮光層33と第2遮光層34は異なる厚みを有するようになる。
【0110】
他の例として、積層体35の絵柄膜24Aから遮光膜32Aを省き、残留したブラストマスク37のみによって遮光層32を形成するようにしてもよい。この例では、図14に示された加飾シート20を作成することができる。この例によれば、絵柄膜24Aから遮光膜32Aを省くことで製造コストを低減することが可能となる。
【0111】
加飾シート20の製造方法の他の例について、図15及び図16を参照しながら更に説明する。まず、上述したブラストマスク37の作製方法を変更することが可能である。この例においても、上述した具体例と同様にして基材フィルム21A及び絵柄膜24Aを有した積層体35を準備する。この積層体35の絵柄膜24Aは、上述した具体例と同様に、基材フィルム21A上に順に積層された意匠膜31A及び遮光膜32Aを有するようにしてもよい。ただし、図15及び図16に示された例においては、基材フィルム21A上に設けられた絵柄膜24Aは意匠膜31Aのみを含んでいる。次に、絵柄膜24Aの基材フィルム21Aと対向する面上に、ブラストマスク37を形成する。ここで説明する例では、スクリーン印刷によってブラストマスク37を積層体35上に形成する。すなわち、図15に示すように、スクリーン印刷によって、積層体35の絵柄膜24Aの意匠膜31A上に意匠膜31Aに隣接して印刷層38を形成する。この印刷層38は、作製すべきブラストマスク37のパターンと同様のパターン、さらにはブラスト加工を経て形成すべき絵柄部24のパターンに対応したパターンを有している。次に、積層体35上の印刷層38を乾燥または硬化させることによって、印刷層38からブラストマスク37が得られる。ブラストマスク37を作製した後の工程は、図16に示されたブラスト加工工程を含み、上述した加飾シート20の製造方法と同様とすることができる。この例のように、ブラストマスク37の作製にスクリーン印刷を用いることで、ブラストマスク37を容易且つ安価に形成することができる。なお、図15及び図16に示された製造方法によれば、図14に示された加飾シート20を作製することができる。
【0112】
また、上述した具体例において、加飾シート20の透過部26および絵柄部24の平面上の配置例として、透過部26が円形状に形成され、その周囲に絵柄部24が配置される加飾シート20を図5に示したが、既に言及したように、この例に限られない。例えば図17に示された例のように、加飾シート20は、平面視において絵柄部24を円形状に形成し、その周囲に透過部26を配置することもできる。また、透過部26は、平面視において、円形状以外の形状を有することもできる。例えば図18に示した例にように、複数の透過部26が一方向に配列され、各透過部26が一方向と非平行な他方向に線状に延びるようにしてもよい。とりわけ図18に示された例では、複数の透過部26が一方向に配列され、各透過部26が一方向と直交する他方向に直線状に延びている。すなわち、複数の透過部26がストライプ状に配列されていてもよい。
【0113】
また、上述した具体例において、表示装置10が面光源装置12及び遮光シート14を有する例を示したが、既に言及したように、この例に限られない。例えば、面光源装置12の発光面13が、表示した画像のパターンと同一パターンを有するようにして、遮光シート14を省略するようにしてもよい。また、表示装置10として、ドットマトリックス方式の表示装置10、例えば液晶表示装置、有機EL表示装置等を加飾シート20とともに用いることができる。ドットマトリックス方式の表示装置10によれば、各画素の発光状態を制御することで、所望の動画や静止画を表示することができる。
【0114】
一具体例として、図19は、ドットマトリックス方式の表示装置10における画素配列の一例を示している。この例において、表示装置10は、互いに異なる色を発光する第1画素51、第2画素52及び第3画素53を含んでいる。複数の第1画素51は、複数の第2画素52及び複数の第3画素53は、それぞれ、規則的に配列されている。
【0115】
ところで、加飾シート20上には、表示装置10の画素配列の規則性と透過部26の配列の規則性とが干渉することに起因して、モアレが発生することが想定される。モアレが発生すると、加飾シート20上に表示装置10によって表示される画像とともに縞模様が観察される。このような外観上の不具合は、加飾シート20の用途に照らして致命的な不具合になりかねない。一般的にモアレによる縞模様を目立たなくさせるには、干渉を生じさせる二つの要素の規則性を弱めることが有効とされている。この点については本実施の形態による加飾シート20によれば、透過部26に対面する第2領域23において、基材部21の第1面21aが凹凸面21Sを有している。この凹凸面21Sでの拡散により、モアレを効果的に抑制することができる。したがって、本実施の形態による加飾シート20は、ドットマトリックス方式の表示装置10に対して好適である。
【0116】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
DS1 第1方向
DS2 第2方向
ND 法線方向
T1 凹部の深さ
T2 絵柄部の厚み
T2A 絵柄膜の厚み
T3 ブラスト加工後におけるブラストマスク37の厚み
T3A ブラスト加工前におけるブラストマスク37の厚み
T4 第1遮光層の厚み
1 加飾シート付き表示装置
10 表示装置
11 表示面
11a 周囲領域
12 面光源装置
13 発光面
14 遮光シート
14a 開口領域
14b 遮光領域
20 加飾シート
20a 第1端辺
20b 第2端辺
20c 第3端辺
20d 第4端辺
21 基材部
21a 第1面
21b 第2面
21c 凹部
21A 基材フィルム
21S 凹凸面
21K 凹凸面
22 第1領域
23 第2領域
24 絵柄部
24A 絵柄膜
26 透過部
27 カバー層
31 意匠層
31A 意匠膜
32 遮光層
32A 遮光膜
33 第1遮光層
34 第2遮光層
35 積層体
36 レジストパターン
36A レジスト層
37 ブラストマスク
38 印刷層
51 第1画素
52 第2画素
53 第3画素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19