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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】建築物及び建築物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E04B1/348 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020150151
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044501
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 秀仁
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194474(JP,A)
【文献】特表2016-532030(JP,A)
【文献】特開2018-009360(JP,A)
【文献】特開平08-189086(JP,A)
【文献】特開平08-151687(JP,A)
【文献】米国特許第04194339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部、天井部及び壁部で形成されて一つの住戸を成すとともに、それぞれ前記床部を構成する分割床部、前記天井部を構成する分割天井部及び前記壁部を構成する一対の分割壁部からなる角筒状部分を備えた、複数の分割ユニットが、前記角筒状部分の軸線方向に連結されて構成されている室が、互いに前記軸線方向を平行として複数個組み合わされて構成されていることを特徴とする建築物
【請求項2】
前記床部と前記天井部との間に、前記床部と平行な区画壁が設けられて、前記室が複層に構成されている、請求項1に記載の建築物
【請求項3】
それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.8m以下且つ2.2mより大きく、前記軸線方向の長さが2.2m以下であり、高さが2.8mより大きく且つ12m以下である、請求項1又は2に記載の建築物
【請求項4】
それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.2m以下であり、前記軸線方向の長さが2.8m以下且つ2.2mより大きく、高さが2.8mより大きく且つ12m以下である、請求項1又は2に記載の建築物
【請求項5】
前記室が、一対の前記壁部の間に隔壁を備え、一対の前記壁部の間に前記隔壁により分割された複数の住戸を備えている、請求項1に記載の建築物
【請求項6】
それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.8mより大きく且つ12m以下であり、前記軸線方向の長さが2.2m以下であり、高さが2.8m以下且つ2.2mより大きい、請求項1又は5に記載の建築物
【請求項7】
床部、天井部及び壁部で形成されて一つの住戸を成すが複数個組み合わされて構成されている建築物の構築方法であって、
前記床部を構成する分割床部、前記天井部を構成する分割天井部及び前記壁部を構成する一対の分割壁部からなる角筒状部分を備えた分割ユニットを、工場で製作する製作工程と、
前記工場で製作した前記分割ユニットを、建築現場に搬送する搬送工程と、
前記建築現場に搬送した複数の前記分割ユニットを、前記角筒状部分の軸線方向に連結して前記室を構築する連結工程と、
前記室を、互いに前記軸線方向を平行として複数個組み合わせて連結する工程と、を有することを特徴とする、建築物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物及び建築物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば戸建て住宅、病院、ホテル、宿泊施設、老人介護施設、共同住宅、仮設住宅、寄宿舎などの、居室等の室を有する建築物は、建築現場において各種の建築資材を用いて構築されるのが一般的である。
【0003】
例えば特許文献1には、床部、天井部及び壁部が、複数枚の木質の板材を繊維方向が互いに直交するように積層して接着した構成のCLT(Cross Laminated Timber)などの、木質の積層板材で形成された木質住宅を、CLTで形成された床面にCLTを用いて壁部を構築した後、壁部の上にCLTで形成された天井部を載せて住戸を構成し、以降、同様な工程で複数の住戸を左右及び複数層に構築することで、共同住宅に構成するようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-9360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の室ないし建築物は、CLTなどの建築資材を用いて建築現場において構築される構成であるので、その構築に時間がかかることに加え、構築後に、内装工事、キッチン、浴室、トイレ等の水回り装備の設置工事、窓の取り付け工事等の後工事を行う必要があり、建築現場での作業が多くなって工期が長くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、建築現場における作業を少なくして工期を短縮可能な、建築物及び建築物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様としての建築物は、床部、天井部及び壁部で形成されて一つの住戸を成すとともに、それぞれ前記床部を構成する分割床部、前記天井部を構成する分割天井部及び前記壁部を構成する一対の分割壁部からなる角筒状部分を備えた、複数の分割ユニットが、前記角筒状部分の軸線方向に連結されて構成されている室が、互いに前記軸線方向を平行として複数個組み合わされて構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の建築物は、前記床部と前記天井部との間に、前記床部と平行な区画壁が設けられて、前記室が複層に構成されている構成とすることができる。
【0009】
本発明の建築物は、上記構成において、それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.8m以下且つ2.2mより大きく、前記軸線方向の長さが2.2m以下であり、高さが2.8mより大きく且つ12m以下であるのが好ましい。
【0010】
本発明の建築物は、上記構成において、それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.2m以下であり、前記軸線方向の長さが2.8m以下且つ2.2mより大きく、高さが2.8mより大きく且つ12m以下であるのが好ましい。
【0011】
本発明の建築物は、前記室が、一対の前記壁部の間に隔壁を備え、一対の前記壁部の間に前記隔壁により分割された複数の住戸を備えている構成とすることができる。
【0012】
本発明の建築物は、上記構成において、それぞれの前記分割ユニットは、間口幅が2.8mより大きく且つ12m以下であり、前記軸線方向の長さが2.2m以下であり、高さが2.8m以下且つ2.2mより大きいのが好ましい。
【0014】
本発明の第態様としての建築物の構築方法は、床部、天井部及び壁部で形成されて一つの住戸を成すが複数個組み合わされて構成されている建築物の構築方法であって、前記床部を構成する分割床部、前記天井部を構成する分割天井部及び前記壁部を構成する一対の分割壁部からなる角筒状部分を備えた分割ユニットを、工場で製作する製作工程と、前記工場で製作した前記分割ユニットを、建築現場に搬送する搬送工程と、前記建築現場に搬送した複数の前記分割ユニットを、前記角筒状部分の軸線方向に連結して前記室を構築する連結工程と、前記室を、互いに前記軸線方向を平行として複数個組み合わせて連結する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建築現場における作業を少なくして工期を短縮可能な、建築物及び建築物の構築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としての木質住宅の斜視図である。
図2図1に示す木質住宅を複数個用いて構築された共同住宅の斜視図である。
図3図1に示す木質住宅の平面視での断面図である。
図4図3におけるA-A線に沿う断面図である。
図5図1に示す木質住宅の分解斜視図である。
図6図5に示す分割ユニットを、トラックで搬送する様子を示す説明図である。
図7】本発明の他の実施形態としての木質住宅の分解斜視図である。
図8図7に示す木質住宅の、1階部分と2階部分の間取りの一例を示す図である。
図9図7に示す木質住宅の、1階部分と2階部分の間取りの他の例を示す図である。
図10図7に示す分割ユニットを、トラックで搬送する様子を示す説明図である。
図11】本発明の、さらに他の実施形態としての木質住宅の平面視での断面図である。
図12図11に示す木質住宅の変形例の平面視での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る、室としての木質住宅、建築物としての共同住宅及び室の構築方法としての木質住宅の構築方法について、図面を参照しつつ例示説明する。各図面においては、共通する部材、部位に同一の符号を付している。
【0018】
図1に示す本発明の一実施形態である室としての木質住宅1は、一つの住戸を成す住宅ユニットとして構成されている。木質住宅1は、3個の分割ユニット1A、1B、1Cが連結されて1つの住宅ユニットに構成されており、直方体状の外形を有している。図2に示すように、木質住宅1は、複数個が組み合わされることで、複数の住戸を有する建築物としての共同住宅100を構築することができる。
【0019】
以下、木質住宅1の構成をより具体的に説明する。
【0020】
図1図3及び図4に示すように、木質住宅1は、床部10、天井部11及び一対の壁部12、13を備えている。床部10、天井部11及び一対の壁部12、13は、それぞれ木質の積層板材で形成されている。本実施の形態では、木質の積層板材は、複数枚の木質の板材を繊維方向が互いに直交するように積層して接着した構成のCLT(Cross Laminated Timber)であるが、他の構造の木質の積層板材であってもよい。
【0021】
床部10と天井部11は、それぞれ平らで矩形の板状であり、互いに平行に配置されている。一対の壁部12、13は、それぞれ平らで矩形の板状であり、床部10と天井部11の縁部分に、床部10及び天井部11に対して垂直、且つ、互いに平行な姿勢で固定されている。すなわち、床部10、天井部11及び一対の壁部12、13は角筒状に組み合わされて連結されている。
【0022】
一対の壁部12、13を床部10及び天井部11に固定する構成としては、例えば、プレート等の金物とねじ等の締結手段とを用いた構成、太径の木ダボを用いた構成、木ダボと金物とを用いた構成など、種々の構成を採用することができる。
【0023】
床部10、天井部11及び一対の壁部12、13は、この木質住宅1が構成する住戸を他の住戸と区画するものであり、住人が通過可能な通路や窓などの開口は設けられていない。なお、床部10、天井部11及び一対の壁部12、13は、上下水道用の配管、ガスの配管、電気配線等を通すための孔、換気用の開口を備えていてもよい。
【0024】
木質住宅1の両端には、それぞれ端壁14、15が設けられている。端壁14、15は、それぞれ平らで矩形の板状であり、床部10、天井部11及び一対の壁部12、13の端縁部分に、これらに対して垂直、且つ、互いに平行な姿勢で固定されている。木質住宅1は、これらの端壁14、15により、内部空間の両端が外部から隔離されている。
【0025】
一方の端壁14は、窓20が設けられた構成とすることができる。端壁14に設けられる窓20の種類や大きさ、個数等は、種々変更可能である。他方の端壁15は、住戸への出入り口となる玄関ドア21が設けられた構成とすることができる。他方の端壁15は、給湯器や電気メーター等の機器を収納可能な収納スペース22を備えた構成とすることもできる。
【0026】
木質住宅1の住戸の間取りは、適宜設定することができる。例えば、本実施形態では、木質住宅1の住戸の間取りは、窓20が設けられた端壁14の側に居室23が設けられ、居室23と玄関ドア21との間に設けられた廊下24と一方の壁部12との間に、居室23の側から玄関ドア21の側に向けて、キッチン25、浴室26、トイレ27が設けられ、廊下24と他方の壁部13との間に、棚28と複数の収納スペース29が設けられたものとなっている。上記間取りを構成するために住戸の内部に設けられる壁部材は、何れも木質の積層板材(CLT)で形成されたものとすることができる。木質住宅1の住戸の間取りは、上記に限らず、適宜変更乃至設定することができる。
【0027】
木質住宅1は、床部10と天井部11との間に、床部10と平行な区画壁16が設けられた複層の構成としてもよい。本実施形態では、木質住宅1は、居室23を除いた部分における床部10と天井部11との間に区画壁16が設けられ、区画壁16の上側にロフト30が設けられた構成となっている。ロフト30を設けた場合には、ロフト30と居室23との間の昇降を容易にするために、居室23の壁に梯子31を設けるようにしてもよい。
【0028】
木質住宅1は、区画壁16を備えた複層の構成に限らず、区画壁16が設けられない単層の構成であってもよい。
【0029】
図1図5に示すように、本実施形態の木質住宅1は、端壁14、15の幅を間口幅W、床部10の下面から天井部11の上面までの高さを高さH、一方の端壁14の外側面から他方の端壁15の外側面までの長さを長さLとしたときに、長さLの方向に複数の分割ユニットが連結されることで1つの住宅ユニットに構成されている。上記の通り、本実施形態では、木質住宅1は、3個の分割ユニット1A、1B、1Cが長さLの方向に連結されて1つの住宅ユニットに構成されている。分割ユニット1Aは木質住宅1の端壁14を含む一端側を構成し、分割ユニット1Cは木質住宅1の端壁15を含む他端側を構成し、分割ユニット1Bは木質住宅1の両端の間の中間部分を構成している。
【0030】
3個の分割ユニット1A、1B、1Cの長さLA、LB、LCは、それぞれ同一であり、木質住宅1の長さLの1/3の長さである。すなわち、3個の分割ユニット1A、1B、1Cは、互いに、幅、長さ及び高さが同一となっている。
【0031】
分割ユニット1Aは、床部10を構成する分割床部10A、天井部11を構成する分割天井部11A及び一対の壁部12、13を構成する一対の分割壁部12A、13Aからなる角筒状部分2Aを備えている。角筒状部分2Aの軸線方向の一端に端壁14が設けられ、端壁14には窓20が予め取り付けられている。分割ユニット1Aは、内側に居室23を構成しており、居室23の内装、電気的な配線等が予め施されている。
【0032】
分割ユニット1Bは、床部10を構成する分割床部10B、天井部11を構成する分割天井部11B及び一対の壁部12、13を構成する一対の分割壁部12B、13Bからなる角筒状部分2Bを備えている。角筒状部分2Bの内側には、区画壁16を構成する分割区画壁16Bが設けられている。また、分割ユニット1Bの内側には、キッチン25及び浴室26が組み付けられるとともに棚28及び収納スペース29が設けられ、また、電気配線や各種の配管等が予め施されている。
【0033】
分割ユニット1Cは、床部10を構成する分割床部10C、天井部11を構成する分割天井部11C及び一対の壁部12、13を構成する一対の分割壁部12C、13Cからなる角筒状部分2Cを備えている。角筒状部分2Cの軸線方向の一端には端壁15が設けられ、端壁15には玄関ドア21が予め取り付けられている。角筒状部分2Cの内側には、区画壁16を構成する分割区画壁16Cが設けられている。また、分割ユニット1Cの内側にはトイレ27が組み付けられるとともに複数の収納スペース29が設けられ、また、電気配線や各種の配管等が予め施されている。
【0034】
木質住宅1は、上記構成の3個の分割ユニット1A、1B、1Cが、それぞれの角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向に連結されて構成されている。分割ユニット1A、1B、1Cを互いに連結する構成としては、例えば、プレート等の金物とねじ等の締結手段を用いた構成、太径の木ダボを用いた構成、木ダボと金物とを用いた構成など、種々の構成を採用することができる。
【0035】
なお、角筒状部分2Aの軸線方向は、角筒状部分2Aを構成する分割床部10A、分割天井部11A及び一対の分割壁部12A、13Aの何れにも平行な直線に沿う方向である。同様に、角筒状部分2Bの軸線方向は、角筒状部分2Bを構成する分割床部10B、分割天井部11B及び一対の分割壁部12B、13Bの何れにも平行な直線に沿う方向であり、角筒状部分2Cの軸線方向は、角筒状部分2Bを構成する分割床部10C、分割天井部11C及び一対の分割壁部12C、13Cの何れにも平行な直線に沿う方向である。また、これら角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向は、木質住宅1の長さLの方向と同一方向である。
【0036】
上記構成を有する木質住宅1は、本発明の一実施形態に係る室の構築方法としての木質住宅の構築方法により構築することができる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る木質住宅の構築方法は、上記構成を有する分割ユニット1A、1B、1Cを、木質住宅1乃至共同住宅100を構築する建築現場とは異なる場所にある工場で製作する製作工程と、製作工程において工場で製作した分割ユニット1A、1B、1Cを、それぞれ個別に建築現場に搬送する搬送工程と、建築現場に搬送した複数の分割ユニット1A、1B、1Cを、角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向に連結する連結工程と、を有している。
【0038】
上記の製作工程においては、例えば分割ユニット1Aは、それぞれ木質の積層板材(CLT)により形成された分割床部10A、分割天井部11A及び一対の分割壁部12A、13Aを連結して角筒状部分2Aを形成した後、さらに角筒状部分2Aの端部に端壁14を連結して製作される。また、製作工程においては、分割ユニット1Aの内部に、内装工事、窓20の設置工事、電気的な配線工事等を行って、分割ユニット1Aの内部に仕上げを施すことができる。同様に、上記の製作工程において、分割ユニット1Bは、それぞれ木質の積層板材(CLT)により形成された分割床部10B、分割天井部11B及び一対の分割壁部12B、13Bを連結して角筒状部分2Bを有する形態に製作される。また、製作工程のおいては、分割ユニット1Bの内部に、内装工事、キッチン25、浴室26、棚28、収納スペース29の設置工事、電気的な配線工事、上下水道の配管工事等を行って、分割ユニット1Bの内部に仕上げを施すことができる。同様に、上記の製作工程において、分割ユニット1Cは、それぞれ木質の積層板材(CLT)により形成された分割床部10C、分割天井部11C及び一対の分割壁部12C、13Cを連結して角筒状部分2Cを形成した後、さらに角筒状部分2Cの端部に端壁15を連結して製作される。また、製作工程においては、分割ユニット1Cの内部に、内装工事、玄関ドア21、トイレ27、収納スペース29の設置工事、電気的な配線工事、上下水道の配管工事等を行って、分割ユニット1Cの内部に仕上げを施すことができる。
【0039】
上記搬送工程においては、製作工程において製作された分割ユニット1A、1B、1Cを、それぞれ個別に、例えばトラックを用いて建築現場に搬送することができる。トラックによる搬送の際には、必要に応じて、分割ユニット1A、1B、1Cの内外装、設置した設備等を養生しておくのが好ましい。
【0040】
上記連結工程においては、搬送工程において建築現場に搬送された複数の分割ユニット1A、1B、1Cを、角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向に連結する。当該連結には、上記の通り、例えば、プレート等の金物とねじ等の締結手段を用いた構成、太径の木ダボを用いた構成、木ダボと金物とを用いた構成など、種々の構成を採用することができる。連結工程において、複数の分割ユニット1A、1B、1Cを連結することで、建築現場において上記構成の木質住宅1を構築することができる。
【0041】
また、上記連結工程において構築した木質住宅1を、互いに角筒状部分2A、2B、2Cを平行として、上下及び左右に複数個組み合わせて連結することで、複数の住戸を備えた共同住宅100を構築することができる。この場合、既に構築された木質住宅1の上乃至側方において、複数の分割ユニット1A、1B、1Cを順に連結することで、他の木質住宅1の上乃至側方において木質住宅1を構築するようにしてもよい。また、互いの木質住宅1の間に、配線、配管等を配置するための隙間を設けるようにしてもよい。
【0042】
このように、本実施形態の木質住宅1、共同住宅100及び木質住宅の構築方法では、複数の分割ユニット1A、1B、1Cを角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向に連結して木質住宅1を構築するようにしているので、建築現場において木質住宅1を構築する前に、予め工場において製作した分割ユニット1A、1B、1Cを、建築現場において連結するだけの簡単な作業で、木質住宅1を容易に構築することができる。また、このような木質住宅1を、互いに軸線方向を平行として複数個組み合わせることで、建築現場において、共同住宅100を容易に構築することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の木質住宅1、共同住宅100及び木質住宅の構築方法では、複数の分割ユニット1A、1B、1Cを角筒状部分2A、2B、2Cの軸線方向に連結して木質住宅1を構築するようにしているので、建築現場において木質住宅1を構築する前に、予め工場において、分割ユニット1A、1B、1Cに、内装工事、キッチン25、浴室26、トイレ27、棚28、収納スペース29の設置工事、電気的な配線工事、上下水道の配管工事等を行って仕上げを施すことができる。したがって、建築現場において、複数の分割ユニット1A、1B、1Cを連結した後に、後工程として行う仕上げ作業を少なくすることができる。
【0044】
以上の通り、本実施形態の木質住宅1、共同住宅100及び木質住宅の構築方法によれば、木質住宅1乃至共同住宅100を構築する際の、建築現場における作業を少なくして、当該構築に係る工期を短縮することができる。また、当該工期を短縮することで、木質住宅1乃至共同住宅100の構築に係るコストを低減することができる。
【0045】
また、本実施形態の木質住宅1、共同住宅100及び木質住宅の構築方法では、工場において、分割ユニット1A、1B、1Cの構築及び仕上げの工事を行うことができるので、当該構築及び工事を、建築現場で行う場合よりも、精度よく且つ容易に行うことができる。
【0046】
さらに、本実施形態の木質住宅1、共同住宅100及び木質住宅の構築方法では、工場で製作した複数の分割ユニット1A、1B、1Cを、建築現場において連結することで木質住宅1を構築するようにしているので、工場で製作した分割ユニット1A、1B、1Cを、互い連結することなく、個別にトラックを用いて建築現場にまで搬送することができる。これにより、木質住宅1をそのまま搬送する場合に比べて、トラックに搭載する積荷の大きさを小さくして、搬送作業を容易にすることができる。
【0047】
工場から建築現場までの分割ユニット1A、1B、1Cの搬送を容易に行い得るようにするために、分割ユニット1A、1B、1Cは、日本国の道路において、道路交通法上における制限外積載許可を得ずにトラックによる搬送が可能な限界サイズ(幅2.2m、高さ2.8m、長さ約12m)以下の外形サイズであるのが好ましい。
【0048】
例えば、それぞれの分割ユニット1A、1B、1Cは、間口幅Wが2.8m以下且つ2.2mより大きく、軸線方向の長さLが2.2m以下であり、高さHが2.8mより大きく且つ12m以下となる外形サイズとすることができる。本実施の形態の木質住宅1では、これを構成する3つの分割ユニット1A、1B、1Cは、それぞれ間口幅Wが2.8m、長さLが2.2m、高さHが約4.0m、となっている。
【0049】
ここで、木質住宅が複数の分割ユニットに分割できない一体型の構成である場合には、間口幅が2.2m以下、高さが2.8m以下、長さが12m以下であれば限界サイズ以下の外形サイズとなり、制限外積載許可なしでトラックにより搬送することができるが、間口幅が2.2mを超えた場合、又は、高さが2.8mを超えた場合には、外形サイズが限界サイズを超えてしまい、制限外積載許可なしでのトラックによる搬送ができなくなる。そのため、一体型の構成の木質住宅では、間口幅が2.2m以下に制限されるとともに、高さが2.8m以下に制限され、ロフトやメゾネットなどの複層の構成とすることができず、これらの点で住戸の内部空間ないし床面積が制限されることになる。
【0050】
これに対し、本実施形態の木質住宅1は、間口幅Wが2.8m、ロフト30が設けられることで高さHが約4.0m、長さLが6.6mと限界サイズを超えた外形サイズとなっており、限界サイズ内の一体型の構成の木質住宅よりも内部空間ないし床面積が大きくなっているが、木質住宅1を構成する3つの分割ユニット1A、1B、1Cは、それぞれ間口幅Wが2.8m、高さHが約4.0m、長さLA、LB,LCが2.2mとなっているので、床部10と天井部11が前後方向を向き、一対の壁部12、13が上下方向を向く横倒しの姿勢とすることで、トラック40の荷台41に限界サイズの範囲内で搭載することができる。図6に示すように、例えば、分割ユニット1Aをトラック40の荷台41に搭載する際には、分割ユニット1Aを、分割床部10Aと分割天井部11Aとをトラック40の前後方向に向け、一対の分割壁部12A、13Aを上下方向に向けた横倒しの姿勢とすることで、トラック40の荷台41に限界サイズの範囲内で搭載することができる。
【0051】
このように、本実施の形態の木質住宅1では、これを構成する3つの分割ユニット1A、1B、1Cを、それぞれ間口幅Wが2.8m以下且つ2.2mより大きく、軸線方向の長さLが2.2m以下であり、高さHが2.8mより大きく且つ12m以下となる外形サイズとすることで、制限外積載許可なしでトラック40により工場から建築現場にまで搬送することができる。したがって、トラック40による分割ユニット1A、1B、1Cの搬送をさらに容易に行い得るようにすることができる。
【0052】
また、3つの分割ユニット1A、1B、1Cを、それぞれ間口幅Wが2.8m以下且つ2.2mより大きく、軸線方向の長さLA、LB,LCが2.2m以下であり、高さHが2.8mより大きく且つ12m以下となる外形サイズとすることで、3つの分割ユニット1A、1B、1Cを制限外積載許可なしでトラック40により工場から建築現場にまで搬送可能な構成としつつ、木質住宅1を、その住戸がロフト30を備えた複層の構成として、内部空間ないし床面積を拡大することができる。
【0053】
図7は、本発明の他の実施形態である室としての木質住宅3の分解斜視図であり、図8は、図7に示す木質住宅3の、1階部分と2階部分の間取りの一例を示す図であり、図9は、図7に示す木質住宅3の、1階部分と2階部分の間取りの他の例を示す図であり、図10は、図7に示す分割ユニット3Aを、トラック40で搬送する様子を示す説明図である。なお、図7図10においては、前述した部材には同一の符号を付してある。
【0054】
本発明の室は、図1に示す木質住宅1のように3つの分割ユニット1A、1B、1Cが連結された構成に限らず、図7に示す木質住宅3のように、2つの分割ユニット3A、3Bが連結された構成とすることもできる。
【0055】
他の実施形態の木質住宅3は、図8に示すように、住戸の間取りがメゾネットに構成されている。すなわち、分割ユニット3A、3Bの分割床部10A、10Bと分割天井部11A、11Bとの間には、それぞれ分割床部10A、10Bと平行な区画壁16(分割区画壁16A、16B)が設けられており、この区画壁16により木質住宅3の内部空間が上下2層に区画されるとともに区画壁16が2階部分の床を構成している。
【0056】
メゾネットに構成された木質住宅3は、例えば、図8(a)に示すように、1階部分に玄関ドア21、居室23及びトイレ27を備え、図8(b)に示すように、2階部分にキッチン25と浴室26とを備えるとともに、上下の階層に行き来するための螺旋状の階段32を備えた間取りとすることができるが、これに限らず、例えば、図9(a)に示すように、1階部分に玄関ドア21、居室23及びキッチン25を備え、図9(b)に示すように、2階部分に浴室26とトイレ27とを備えるとともに、上下の階層に行き来するための直線状の階段32を備えた間取りとするなど、その間取りは種々変更可能である。
【0057】
他の実施形態の木質住宅3では、これを構成する2つの分割ユニット3A、3Bは、間口幅Wが2.2m以下であり、軸線方向の長さLA、LBが2.8m以下且つ2.2mより大きく、高さが2.8mより大きく且つ12m以下であるのが好ましい。図示する場合では、木質住宅3を構成する2つの分割ユニット3A、3Bは、それぞれ間口幅Wが2.2m、長さLが2.8m、高さHが約5.6m、となっている。
【0058】
これにより、木質住宅3を、メゾネットとして大きな床面積を確保しつつ、これを構成する分割ユニット3A、3Bを、それぞれ床部10と天井部11が前後方向を向き、一対の壁部12、13が左右方向を向く横倒しの姿勢とすることで、トラック40の荷台41に限界サイズの範囲内で搭載することが可能なものとすることができる。図10に示すように、例えば、分割ユニット3Aをトラック40の荷台41に搭載する際には、分割ユニット3Aを、分割床部10Aと分割天井部11Aとをトラック40の前後方向に向け、一対の分割壁部12A、13Aを左右方向に向けた横倒しの姿勢とすることで、トラック40の荷台41に限界サイズの範囲内で搭載することができる。
【0059】
したがって、木質住宅3を構成する2つの分割ユニット3A、3Bを制限外積載許可なしでトラック40により工場から建築現場にまで搬送可能な構成としつつ、木質住宅3を、その住戸がメゾネットとなる複層の構成として、内部空間ないし床面積を拡大することができる。
【0060】
図11は、本発明の、さらに他の実施形態である室としての木質住宅4の平面視での断面図であり、図12は、図11に示す木質住宅4の変形例の平面視での断面図である。なお、図11、12においては、前述した部材には同一の符号を付してある。
【0061】
図1に示す木質住宅1は、1つの住戸のみを備えたものであるが、一対の壁部12、13の間に隔壁を備えることで、一対の壁部12、13の間に隔壁により分割された複数の住戸を備えた構成とすることもできる。
【0062】
例えば、図11に示す木質住宅4は、一対の壁部12、13の間に1つの隔壁33を備え、この隔壁33により一方の端壁14と他方の端壁15との間の全範囲に亘って内部空間が2つに区画されることで、一対の壁部12、13の間に隔壁33により分割された2つの住戸が設けられた構成となっている。図11に示す木質住宅4のそれぞれの住戸は、ロフトが設けられていない以外、その間取りは図1に示す木質住宅1のものと基本的に同一である。
【0063】
図11に示す木質住宅4も、図1に示す木質住宅1と同様に、3つの分割ユニット4A、4B、4Cが連結された構成になっている。それぞれの分割ユニット4A、4B、4Cは、分割壁部12A、12B、12Cと分割壁部13A、13B、13Cとの間に分割隔壁33A、33B、33Cを備えている。したがって、3つの分割ユニット4A、4B、4Cが連結されることで、2つの住戸を備えた木質住宅4を構築することができる。
【0064】
木質住宅4は、例えば、図12に示すように、一対の壁部12、13の間に2つの隔壁33を備えることで、これらの隔壁33により分割された3つの住戸が設けられた構成とするなど、隔壁33ないし住戸の数を種々変更することもできる。
【0065】
図12に示す木質住宅4も、図11に示す木質住宅4と同様に、3つの分割ユニット4A、4B、4Cが連結された構成になっている。それぞれの分割ユニット4A、4B、4Cは、分割壁部12A、12B、12Cと分割壁部13A、13B、13Cとの間に2つの分割隔壁33A、33B、33Cを備えている。したがって、3つの分割ユニット4A、4B、4Cが連結されることで、3つの住戸を備えた木質住宅4を構築することができる。
【0066】
木質住宅4では、これを構成する3つの分割ユニット4A、4B、4Cは、間口幅Wが2.8mより大きくより大きく且つ12m以下であり、軸線方向の長さLが2.2m以下であり、高さが2.8m以下且つ2.2mより大きい寸法とするのが好ましい。図11に示す場合及び図12に示す場合は、何れも、木質住宅4を構成する3つの分割ユニット4A、4B、4Cは、それぞれ間口幅Wが6.0m、長さLが2.2m、高さHが2.8m、となっている。
【0067】
これにより、木質住宅4を、3つの分割ユニット4A、4B、4Cを連結することで、複数の住戸を有する木質住宅4を構築することができるようにして、建築現場における作業をさらに少なくして工期を短縮しつつ、これを構成する3つの分割ユニット4A、4B、4Cを、それぞれ床部10と天井部11が上下方向を向き、一対の壁部12、13が前後方向を向く姿勢とすることで、トラック40の荷台41に限界サイズの範囲内で搭載することが可能なものとすることができる。
【0068】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0069】
例えば、前記実施の形態では、木質住宅を2つないし3つの分割ユニットを連結して構成するものとしたが、これに限らず、複数の分割ユニットを連結して構成されるものであれば、その分割ユニットの個数は種々変更可能である。
【0070】
また、木質住宅を構成する分割ユニットのサイズは上記に限らず種々変更可能であり、特に、制限外積載許可なしでトラックにより工場から建築現場にまで搬送可能な構成とする場合には、間口幅、長さ及び高さのうち、何れか1つを2.2m以下、その他の何れか1つを2.8m以下、残りの1つを12m以下とすればよい。なお、制限外積載許可等の所定の手続きを行う場合には、分割ユニットの、間口幅、長さ及び高さのうちトラックに積載した状態において高さ方向となる寸法は、3.55mまで可能である。
【0071】
さらに、前記実施の形態では、室を形成する床部10、天井部11及び壁部12として、それぞれ木質の積層板材を用いた場合を示しているが、床部10、天井部11及び壁部12としては、それぞれ木質の積層板材に限らず、例えば、PC板(プレキャストコンクリート板)、テント素材、石膏ボード、プラスチック製板材、金属製板材などの、種々の部材を用いることができる。この場合、床部10、天井部11及び壁部12として、互いに別の種類の部材を用いることもできる。
【0072】
さらに、室である木質住宅の間取りは、上記に限らず種々変更可能である。
【0073】
さらに、前記実施の形態では、室ないし建築物を共同住宅100とした場合を示したが、建築物は共同住宅100に限らず、例えば、戸建て住宅、病院、ホテル、宿泊施設、老人介護施設、寄宿舎などであってもよい。また、建築物は、所定の場所に常設される恒久的なものに限らず、例えば災害時などに仮設される仮設住宅などの、一時的に設置されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 木質住宅(室)
1A 分割ユニット
1B 分割ユニット
1C 分割ユニット
2A 角筒状部分
2B 角筒状部分
2C 角筒状部分
3 木質住宅(室)
3A 分割ユニット
3B 分割ユニット
4 木質住宅(室)
4A 分割ユニット
4B 分割ユニット
4C 分割ユニット
10 床部
10A 分割床部
10B 分割床部
10C 分割床部
11 天井部
11A 分割天井部
11B 分割天井部
11C 分割天井部
12 壁部
12A 分割壁部
12B 分割壁部
12C 分割壁部
13 壁部
13A 分割壁部
13B 分割壁部
13C 分割壁部
14 端壁
15 端壁
16 区画壁
16B 分割区画壁
16C 分割区画壁
20 窓
21 玄関ドア
22 収納スペース
23 居室
24 廊下
25 キッチン
26 浴室
27 トイレ
28 棚
29 収納スペース
30 ロフト
31 梯子
32 階段
33 隔壁
33A 分割隔壁
33B 分割隔壁
33C 分割隔壁
40 トラック
41 荷台
100 共同住宅(建築物)
W 間口幅
H 高さ
L 長さ
LA 長さ
LB 長さ
LC 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12