(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240925BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G03G21/00 502
G03G21/00 386
G03G21/00 318
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020169868
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【氏名又は名称】今村 文典
(74)【代理人】
【識別番号】100187492
【氏名又は名称】新保 元啓
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】森本 加奈子
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066710(JP,A)
【文献】特開2006-234894(JP,A)
【文献】特開2017-090665(JP,A)
【文献】特開2014-137382(JP,A)
【文献】特開2007-079503(JP,A)
【文献】特開2013-156418(JP,A)
【文献】特開2014-202949(JP,A)
【文献】特開2019-211499(JP,A)
【文献】特開2017-040852(JP,A)
【文献】米国特許第10379476(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に当接したクリーニングブレードと、
前記像担持体の逆回転及び正回転を駆動するモーターと、
前記モーターの電流値に基づいて前記像担持体の逆回転時の第1トルクと前記像担持体の正回転時の第2トルクとを測定する測定部と、
前記第1トルク及び前記第2トルクの測定結果に基づいて、前記像担持体の表面上の付着物の量を推定する推定部と
、を備え、
前記像担持体は感光体ドラムを含み、前記付着物は放電生成物を含み、
前記推定部は、前記推定により得られた前記放電生成物の量が第1閾値より大きい場合には、前記放電生成物の量を低減する回復動作が実行されるように制御し、
前記測定部は、前記回復動作が実行された後に、前記第1トルク及び前記第2トルクを再度測定し、
前記推定部は、前記第1トルク及び前記第2トルクの再度の測定結果に基づいて、前記放電生成物の量を再度推定し、前記放電生成物の量の変化率が第2閾値より大きい場合には、前記感光体ドラムの異常を知らせる警告をユーザーに提示する、画像形成装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1トルクを測定した後に前記第2トルクを測定する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記像担持体が1回転する前に前記第1トルクの測定を終了する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記第1トルク及び前記第2トルクの測定時に、前記像担持体が画像形成時の通常速度より遅い速度で回転するように制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記測定部は、前記第1トルク及び前記第2トルクの測定時に、前記クリーニングブレードのみが前記像担持体に当接するように制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記第1トルクと前記第2トルクとの差分に基づいて、前記付着物の量を推定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の画像形成装置は、トナー像を担持する中間転写ベルトと、残留トナーを清掃するように中間転写ベルトに当接するクリーニングブレードと、環境温度センサーと、制御部とを備える。制御部は、中間転写ベルトを駆動するモーターの電流検出値から求めた駆動トルクと、環境温度センサーで検出された機内温度とに基づいて、クリーニングブレードの故障を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像形成装置では、中間転写ベルトの通常回転(正回転)における駆動トルクが用いられたため、クリーニングブレードで清掃しきれない中間転写ベルトの表面上の付着物の量を正確に推定することができなかった。
【0005】
本発明は、像担持体の表面上の付着物の量を正確に推定することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、クリーニングブレードと、モーターと、測定部と、推定部とを備える。前記像担持体は、トナー像を担持する。前記クリーニングブレードは、前記像担持体に当接する。前記モーターは、前記像担持体の逆回転及び正回転を駆動する。前記測定部は、前記モーターの電流値に基づいて前記像担持体の逆回転時の第1トルクと前記像担持体の正回転時の第2トルクとを測定する。前記推定部は、前記第1トルク及び前記第2トルクの測定結果に基づいて、前記像担持体の表面上の付着物の量を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、像担持体の表面上の付着物の量を正確に推定することができる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】感光体ドラムの周辺の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
【
図3】クリーニングブレードの配置の一例を示す拡大断面図である。
【
図4】画像形成装置の回路構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
図1を参照して、実施形態に係る画像形成装置100について説明する。
図1は、画像形成装置100の一例を示す概略断面図である。画像形成装置100は、例えばカラープリンターである。
図1において、便宜上、左から右への向きをX軸の正の向き、手前から奥への向きをY軸の正の向き、下から上への向きをZ軸の正の向きとする。
【0011】
図1に示されるように、画像形成装置100は、操作部2、給紙部3、搬送部4、トナー補給部5、画像形成部6、転写部7、定着部8、及び排出部9を備える。
【0012】
操作部2は、ユーザーからの指示を受け付ける。操作部2は、液晶ディスプレー21と、複数の操作キー22とを含む。液晶ディスプレー21は、例えば、各種処理結果を表示する。操作キー22は、例えば、テンキー、及びスタートキーを含む。
【0013】
給紙部3は、給紙カセット31と、給紙ローラー群32とを有する。給紙カセット31は、複数枚の用紙Pを収容可能である。給紙ローラー群32は、給紙カセット31に収容された用紙Pを1枚ずつ搬送部4へ給紙する。
【0014】
搬送部4は、ローラー及びガイド部材を備える。搬送部4は、給紙部3から排出部9まで延在する。搬送部4は、画像形成部6及び定着部8を経由するように、給紙部3から排出部9まで用紙Pを搬送する。
【0015】
トナー補給部5は、画像形成部6にトナーを補給する。トナー補給部5は、第1装着部51Y、第2装着部51C、第3装着部51M、及び第4装着部51Kを備える。
【0016】
第1装着部51Yには、第1トナーコンテナ52Yが装着される。同様に、第2装着部51Cには第2トナーコンテナ52Cが、第3装着部51Mには第3トナーコンテナ52Mが、第4装着部51Kには第4トナーコンテナ52Kが装着される。第1装着部51Y~第4装着部51Kの構成は、装着されるトナーコンテナの種類が異なるのみで他の構成は同様である。
【0017】
第1トナーコンテナ52Y、第2トナーコンテナ52C、第3トナーコンテナ52M、及び第4トナーコンテナ52Kには、トナーがそれぞれ収容される。本実施形態において、第1トナーコンテナ52Yには、イエロートナーが収容される。第2トナーコンテナ52Cには、シアントナーが収容される。第3トナーコンテナ52Mには、マゼンタトナーが収容される。第4トナーコンテナ52Kには、ブラックトナーが収容される。
【0018】
画像形成部6は、露光装置61、第1画像形成ユニット62Y、第2画像形成ユニット62C、第3画像形成ユニット62M、及び第4画像形成ユニット62Kを備える。
【0019】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの各々は、帯電装置63、現像装置64、感光体ドラム65、及びクリーニング装置66を有する。感光体ドラム65は、「像担持体」の一例に相当する。
【0020】
帯電装置63、現像装置64、及びクリーニング装置66は、感光体ドラム65の周面に沿って配置される。本実施形態において、感光体ドラム65は、
図1の矢印R1で示す方向(時計回り)に回転する。
【0021】
帯電装置63は、放電によって感光体ドラム65を所定の極性に均一に帯電させる。本実施形態において、帯電装置63は、感光体ドラム65を正の極性に帯電させる。露光装置61は、帯電した感光体ドラム65にレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム65の表面に静電潜像が形成される。
【0022】
現像装置64は、感光体ドラム65の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。現像装置64には、トナー補給部5からトナーが補給される。現像装置64は、トナー補給部5から補給されたトナーを感光体ドラム65の表面に供給する。この結果、感光体ドラム65の表面にトナー像が形成される。
【0023】
本実施形態において、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64は、第1装着部51Yと接続する。したがって、第1画像形成ユニット62Yが有する現像装置64には、イエロートナーが補給される。第1画像形成ユニット62Yが有する感光体ドラム65の表面には、イエロートナー像が形成される。
【0024】
第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64は、第2装着部51Cと接続する。したがって、第2画像形成ユニット62Cが有する現像装置64には、シアントナーが補給される。第2画像形成ユニット62Cが有する感光体ドラム65の表面には、シアントナー像が形成される。
【0025】
第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64は、第3装着部51Mと接続する。したがって、第3画像形成ユニット62Mが有する現像装置64には、マゼンタトナーが補給される。第3画像形成ユニット62Mが有する感光体ドラム65の表面には、マゼンタトナー像が形成される。
【0026】
第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64は、第4装着部51Kと接続する。したがって、第4画像形成ユニット62Kが有する現像装置64には、ブラックトナーが補給される。第4画像形成ユニット62Kが有する感光体ドラム65の表面には、ブラックトナー像が形成される。
【0027】
転写部7は、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kが有する各感光体ドラム65の表面に形成された各トナー像を用紙Pに重ねて転写する。本実施形態において、転写部7は、二次転写方式によって各トナー像を用紙Pに重ねて転写する。詳しくは、転写部7は、4つの一次転写ローラー71、中間転写ベルト72、駆動ローラー73、従動ローラー74、二次転写ローラー75、及びクリーニング機構76を有する。
【0028】
中間転写ベルト72は、4つの一次転写ローラー71、駆動ローラー73、及び、従動ローラー74に張架された無端ベルトである。中間転写ベルト72は、駆動ローラー73の回転に応じて駆動する。
図1において、中間転写ベルト72は、反時計回りに周回する。従動ローラー74は、中間転写ベルト72の駆動に応じて回転駆動する。
【0029】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dに沿って、中間転写ベルト72の下面と対向して配置される。本実施形態において、第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kは、中間転写ベルト72の下面の駆動方向Dの上流側から下流側に向けて第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kの順で配置される。
【0030】
各一次転写ローラー71は、中間転写ベルト72を介して各感光体ドラム65に対向して配置され、各感光体ドラム65に向けて押圧されている。このため、各感光体ドラム65の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト72に順次転写される。本実施形態において、中間転写ベルト72には、イエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像、及びブラックトナー像がこの順で重ねて転写される。
【0031】
第1画像形成ユニット62Y~第4画像形成ユニット62Kが有する各クリーニング装置66は、中間転写ベルト72へのトナー像の転写後の感光体ドラム65の上の残留トナーを除去する。
【0032】
二次転写ローラー75は、中間転写ベルト72を介して駆動ローラー73に対向して配置される。二次転写ローラー75は、駆動ローラー73に向けて押圧されている。これにより、二次転写ローラー75と駆動ローラー73との間に転写ニップが形成される。用紙Pが転写ニップを通過すると、中間転写ベルト72上の積層されたトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、搬送部4によって定着部8へ向けて搬送される。
【0033】
クリーニング機構76は、中間転写ベルト72の上の残留トナーを除去する。クリーニング機構76は、例えば従動ローラー74の近傍に配置される。
【0034】
定着部8は、加熱部材81と、加圧部材82とを備える。加熱部材81及び加圧部材82は、互いに対向して配置され、定着ニップを形成する。画像形成部6から搬送された用紙Pは、定着ニップを通過することにより所定の定着温度で加熱されながら、加圧される。この結果、トナー像が用紙Pに定着する。用紙Pは、搬送部4によって定着部8から排出部9へ向けて搬送される。
【0035】
排出部9は、排出ローラー対91及び排出トレイ93を有する。排出ローラー対91は、排出口92を介して排出トレイ93へ用紙Pを搬送する。排出口92は、画像形成装置100の上部に形成される。
【0036】
次に、
図1及び
図2を参照して、感光体ドラム65の周辺の詳細構成について説明する。
図2は、感光体ドラム65の周辺の詳細構成の一例を示す拡大断面図である。
【0037】
図2に示されるように、帯電装置63は、帯電ローラー631を有する。帯電ローラー631は、感光体ドラム65の周面に接触する。詳細に説明すると、帯電ローラー631は、導電性シャフトと、基層と、表層とを有する。導電性シャフトは、金属製のシャフトである。基層は、導電性ゴム弾性体を含み、導電性シャフトの表面を被覆する。表層は、基層の表面を被覆して、高抵抗コート層として機能する。
【0038】
現像装置64は、帯電装置63の位置よりも感光体ドラム65の回転方向の下流側に配置される。現像装置64は、二成分現像剤を収容する現像容器640を有する。現像装置64は、現像容器640の内部に現像ローラー641、第1攪拌スクリュー643、第2攪拌スクリュー644、及びブレード645を有する。詳しくは、現像ローラー641は、第2攪拌スクリュー644と対向して配置される。ブレード645は、現像ローラー641と対向して配置される。
【0039】
現像容器640は、仕切壁640cによって第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとに区画される。仕切壁640cは、現像ローラー641の軸方向(Y軸方向)に延びる。第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとは、仕切壁640cの長手方向の両端の外方において連通している。
【0040】
第1攪拌室640aには、第1攪拌スクリュー643が配置される。第1攪拌室640aには、磁性体キャリアが収容されている。第1攪拌室640aには、非磁性体のトナーがトナー補給口640hを介して補給される。
【0041】
第2攪拌室640bには、第2攪拌スクリュー644が配置される。第2攪拌室640bには、磁性体のキャリアが収容されている。
【0042】
トナーは、第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644によって攪拌されてキャリアと混合される。この結果、キャリア及びトナーからなる二成分現像剤が構成される。
【0043】
第1攪拌スクリュー643及び第2攪拌スクリュー644は、第1攪拌室640aと第2攪拌室640bとの間で現像剤を循環させて攪拌する。この結果、トナーが所定の極性に帯電する。本実施形態において、トナーは、正の極性に帯電する。
【0044】
現像ローラー641は、非磁性の回転スリーブ641aと、マグネット体641bとによって構成される。マグネット体641bは、回転スリーブ641aの内部に固定して配置される。マグネット体641bは、複数の磁極を含む。現像剤は、マグネット体641bの磁力によって、現像ローラー641に吸着する。この結果、現像ローラー641の表面に磁気ブラシが形成される。
【0045】
本実施形態において、現像ローラー641は、
図2の矢印R2で示す方向(反時計回り)に回転する。現像ローラー641は、回転することによって磁気ブラシをブレード645と対向する位置まで搬送する。ブレード645は、現像ローラー641との間にギャップ(隙間)が形成されるように配置されている。したがって、磁気ブラシの厚さがブレード645によって規定される。ブレード645は、現像ローラー641と感光体ドラム65とが対向する位置よりも現像ローラー641の回転方向の上流側に配置される。
【0046】
現像ローラー641には、所定の電圧が印加される。これにより、表面に形成された現像剤層が感光体ドラム65と対向する位置まで搬送され、現像剤中のトナーが感光体ドラム65に付着する。
【0047】
クリーニング装置66は、クリーニングブレード661と、摺擦ローラー662とを有する。クリーニング装置66は、一次転写ローラー71と感光体ドラム65とが対向する位置よりも感光体ドラム65の回転方向の下流側に配置される。
【0048】
クリーニングブレード661は、感光体ドラム65の表面に付着している残留トナーを除去する。そのため、クリーニングブレード661のエッジが感光体ドラム65の表面に当接する。クリーニングブレード661は、例えばゴム製である。
【0049】
摺擦ローラー662は、感光体ドラム65に対向して回転軸の回りに回転可能に配置される。摺擦ローラー662は、金属シャフトの周りを発泡ウレタンのような弾性部材で覆われた構成を持つ。例えば、摺擦ローラー662の回転速度は、感光体ドラム65の回転速度よりも速いか、又は遅い。
【0050】
感光体ドラム65の帯電過程において、感光体ドラム65の表面上に放電生成物が付着することが知られている。放電生成物は、窒素酸化物のようなイオン性物質を含む。感光体ドラム65の表面上に放電生成物が付着すると、感光体ドラム65の表面の摩擦係数が大きくなる。感光体ドラム65の表面の摩擦係数が過度に大きくなると、クリーニングブレード661のエッジに過大な負荷がかかり、クリーニングブレード661のエッジに局所的な欠けが生じるという問題があった。そこで、摺擦ローラー662によって感光体ドラム65の表面を研磨することにより、感光体ドラム65の表面上に付着した放電生成物が除去される。そのため、感光体ドラム65の表面からクリーニングブレード661によって回収されたトナーの一部が、摺擦ローラー662へ供給される。あるいは、非印字時に現像装置64から摺擦ローラー662へトナーが供給される。摺擦ローラー662の表面には、均一の厚さのトナーの層が形成される。例えば、トナーには、研磨剤である酸化チタンが含まれている。
【0051】
次に、
図1~
図3を参照して、クリーニングブレード661の配置について説明する。
図3は、クリーニングブレード661の配置の一例を示す拡大断面図である。
【0052】
図3に示されるように、クリーニングブレード661は、第1ブレード面B1と、第2ブレード面B2とを有する。第1ブレード面B1は、板状のクリーニングブレード661の1つの主面である。第2ブレード面B2は、クリーニングブレード661の1つの端面である。第1ブレード面B1と第2ブレード面B2とが交差する部分にエッジが形成されている。エッジは、感光体ドラム65の表面に当接する。感光体ドラム65が
図3の矢印R1で示す正回転方向(時計回り)に回転するとき、感光体ドラム65の表面と第2ブレード面B2とが形成する空間に、外添剤を含むトナー粒子Tが?き集められる。感光体ドラム65の表面上に付着した放電生成物のうちの大部分は、クリーニングブレード661のエッジの下をすり抜ける。
【0053】
次に、
図1~
図4を参照して、画像形成装置100の回路構成について説明する。
図4は、画像形成装置100の回路構成の一例を示すブロック図である。
【0054】
図4に示されるように、画像形成装置100は、感光体ドラム65に加えて、制御部10、記憶部11、駆動回路121、及びモーター122を備える。制御部10は、駆動回路121を介してモーター122を制御する。モーター122は、感光体ドラム65を駆動する。感光体ドラム65は、制御部10による制御に従って、
図3の矢印R1で示す正回転方向(時計回り)に限らず、逆回転方向(反時計回り)にも回転し得る。
【0055】
記憶部11は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶部11は、半導体メモリーのような主記憶装置と、ハードディスクドライブのような補助記憶装置とを含む。
【0056】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含み、記憶部11に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、画像形成装置100の各構成を制御する。具体的には、制御部10は、記憶部11に記憶されたコンピューターを実行することにより、測定部101及び推定部102として機能する。
【0057】
測定部101は、モーター122の電流値に基づいて感光体ドラム65の逆回転時の第1トルクT1と感光体ドラム65の正回転時の第2トルクT2とを測定する。
【0058】
測定部101は、第1トルクT1を測定した後に第2トルクT2を測定する。感光体ドラム65を正回転させる前に逆回転させることにより、感光体ドラム65の表面と第2ブレード面B2とが形成する空間(
図3参照)に?き集められた、外添剤を含むトナー粒子Tの影響が緩和される。つまり、放電生成物による感光体ドラム65の表面の摩擦係数の増大が、第1トルクT1と第2トルクT2との差分(T1-T2)に精度良く反映される。測定部101は、感光体ドラム65が1回転する前に第1トルクT1の測定を終了して、第2トルクT2の測定に移行する。
【0059】
測定精度向上のために更に望ましくは、測定部101は、第1トルクT1及び第2トルクT2の測定時に、感光体ドラム65が画像形成時の通常速度より遅い速度で回転するように制御する。また、測定部101は、第1トルクT1及び第2トルクT2の測定時に、クリーニングブレード661のみが感光体ドラム65に当接するように制御する。
【0060】
推定部102は、第1トルクT1及び第2トルクT2の測定結果に基づいて、感光体ドラム65の表面上の放電生成物の量Yを推定する。具体的に説明すると、推定部102は、第1トルクT1と第2トルクT2との差分(T1-T2)に基づいて、放電生成物の量Yを推定する。
【0061】
更に、推定部102は、推定により得られた放電生成物の量Yが第1閾値Y1より大きい場合には、放電生成物の量Yを低減する回復動作が実行されるように制御する。測定部101は、回復動作が実行された後に、第1トルクT1及び第2トルクT2を再度測定する。推定部102は、第1トルクT1及び第2トルクT2の再度の測定結果に基づいて、放電生成物の量Yを再度推定する。推定部102は、放電生成物の量Yの変化率DYが第2閾値D1より大きい場合には、液晶ディスプレー21を介して、感光体ドラム65の異常を知らせる警告をユーザーに提示する。
【0062】
次に、
図1~
図5を参照して、制御部10の処理について説明する。
図5は、制御部10の処理の一例である測定サブルーチンを示すフローチャートである。
【0063】
ステップS101:
図5に示されるように、制御部10は、感光体ドラム65を逆回転させたときのモーター122の電流値に基づいて、第1トルクT1を測定する。ステップS101の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS103へ進む。
【0064】
ステップS103:制御部10は、感光体ドラム65を正回転させたときのモーター122の電流値に基づいて、第2トルクT2を測定する。ステップS103の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS105へ進む。
【0065】
ステップS105:制御部10は、第1トルクT1と第2トルクT2との差分(T1-T2)に基づいて、放電生成物の量Yを推定する。ステップS105の処理が完了すると、制御部10の測定サブルーチンの処理が終了する。
【0066】
放電生成物量が既知である場合の逆回転トルクt1及び正回転トルクt2と、定数pとを用いて、補正された差分aが、
a=p(t1-t2) ・・・(1)
のように計算される。定数pは、クリーニングブレード661のゴム条件、及び環境条件に応じて決定される。
【0067】
ステップS101で測定された第1トルクT1と、ステップS103で測定された第2トルクT2との、補正された差分Aは、
A=p(T1-T2) ・・・(2)
のように計算される。
【0068】
放電生成物の量Yは、変数Xを介し、かつ第1補正定数q及び第2補正定数rを用いて、
X=T1+(a-A) ・・・(3)
Y=qX+r ・・・(4)
のように計算される(ステップS105)。
【0069】
次に、
図1~
図6を参照して、制御部10の処理について更に説明する。
図6は、制御部10の処理の一例である状態判定処理を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS201:
図6に示されるように、制御部10は、定期的なメンテナンスのタイミングであるか否かを判定する。メンテナンスのタイミングであると制御部10が判定した場合(ステップS201でYes)には、制御部10の処理がステップS203へ進む。メンテナンスのタイミングでないと制御部10が判定した場合(ステップS201でNo)には、制御部10の状態判定処理が終了する。
【0071】
ステップS203:制御部10は、測定サブルーチンを実行する。その結果、制御部10は、放電生成物の量Yの推定値を取得する。ステップS203の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS205へ進む。
【0072】
ステップS205:制御部10は、ステップS203で取得した放電生成物の量Yの推定値が第1閾値Y1より大きいか否かを判定する。放電生成物の量Yの推定値が第1閾値Y1より大きいと制御部10が判定した場合(ステップS205でYes)には、制御部10の処理がステップS207へ進む。放電生成物の量Yの推定値が第1閾値Y1より大きくないと制御部10が判定した場合(ステップS205でNo)には、制御部10の状態判定処理が終了する。
【0073】
ステップS207:制御部10は、摺擦ローラー662を用いて感光体ドラム65の表面を研磨する回復動作が実行されるように制御する。その結果、感光体ドラム65の表面上の放電生成物の量Yが低減して、感光体ドラム65の表面状態が初期状態に近づく。ステップS207の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS209へ進む。
【0074】
ステップS209:制御部10は、測定サブルーチンを再度実行する。その結果、制御部10は、低減された放電生成物の量Yの推定値を取得する。ステップS209の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS211へ進む。
【0075】
ステップS211:制御部10は、放電生成物の量Yの単位時間当たりの変化率DYを算出する。ステップS211の処理が完了すると、制御部10の処理がステップS213へ進む。
【0076】
ステップS213:制御部10は、ステップS211で算出した変化率DYが第2閾値D1より大きいか否かを判定する。変化率DYが第2閾値D1より大きいと制御部10が判定した場合(ステップS213でYes)には、制御部10の処理がステップS215へ進む。変化率DYが第2閾値D1より大きくないと制御部10が判定した場合(ステップS213でNo)には、制御部10の状態判定処理が終了する。
【0077】
ステップS215:制御部10は、液晶ディスプレー21を介して、感光体ドラム65の異常を知らせる警告をユーザーに提示する。ステップS215の処理が完了すると、制御部10の状態判定処理が終了する。
【0078】
図6の状態判定処理によれば、必要に応じて感光体ドラム65の回復(研磨)動作が実行されるので、クリーニングブレード661の劣化が抑制される。
【0079】
実施形態によれば、感光体ドラム65の表面上に付着した放電生成物の量Yを正確に推定することができる画像形成装置100が提供される。
【0080】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の個数等は、図面作成の都合から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
実施形態では、画像形成装置100がカラープリンターであったが、これに限られない。画像形成装置100は、電子写真方式で画像を形成する装置であればよい。
【0082】
また、実施形態では、現像剤が二成分現像剤であったが、これに限られない。現像剤は、一成分現像剤であってもよい。
【0083】
また、実施形態では、像担持体が感光体ドラム65であったが、これに限られない。像担持体は、中間転写ベルト72であってもよい。クリーニング機構76は、中間転写ベルト72に当接するクリーニングブレードを備える。測定部101は、中間転写ベルト72の逆回転時の第1トルクと中間転写ベルト72の正回転時の第2トルクとを測定する。推定部102は、第1トルク及び第2トルクの測定結果に基づいて、中間転写ベルト72の表面上の付着物の量を推定する。
【0084】
また、実施形態では、式(1)~式(4)に従って放電生成物の量Yが計算されたが、これに限られず他の計算式でもよい。放電生成物の量Yは、絶対的な値(単位:mg/cm2)でもよいし、単位面積当たりの相対的な付着比率でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、画像形成装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 制御部
65 感光体ドラム(像担持体)
100 画像形成装置
101 測定部
102 推定部
122 モーター
631 帯電ローラー
661 クリーニングブレード
662 摺擦ローラー