(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】立体物印刷装置および立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240925BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240925BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240925BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240925BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240925BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240925BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05B12/00 A
B05C11/10
B05D7/00 K
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2020171064
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】望月 建寿
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042696(JP,A)
【文献】特開2018-192551(JP,A)
【文献】特開2017-071173(JP,A)
【文献】特開2016-172379(JP,A)
【文献】特開2016-043439(JP,A)
【文献】特開2007-136431(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032615(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141483(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B05C 5/00
B05B 12/00
B05C 11/10
B05D 7/00
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、
前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を有し、
前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、 前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と時間との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、
前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を有し、
前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、 前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と前記相対的な位置との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項3】
前記N個のエンコーダーからのすべての出力を用いた演算により取得される位置情報を用いずに、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記N個のエンコーダーのうちの前記第1エンコーダーとは異なる1つのエンコーダーを第2エンコーダーとするとき、
前記第2エンコーダーからの出力を用いずに、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記ロボットの動作は前記第1エンコーダーと、前記第2エンコーダーと、の出力に基づいて制御される、
ことを特徴とする請求項4に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記N個のエンコーダーのうちの前記第1エンコーダー以外のN-1個のエンコーダーからの出力を用いずに、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記第1エンコーダーは、前記N個の可動部のうち、前記ロボットの動作中に最も動作量の大きい可動部に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記対応情報は、前記ロボットが前記液体吐出ヘッドを印刷経路に沿って移動させる予備動作における前記第1エンコーダーからの出力に基づいて生成される、
ことを特徴とする
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、
前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、
前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御モジュールと、
第1処理回路と、
第2処理回路と、
を有し、
前記第1処理回路は、前記液体吐出ヘッドの移動すべき経路を示す経路情報に基づいて、前記N個の可動部のそれぞれの動作量を演算し、
前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーである第1エンコーダーは、前記第2処理回路を介して前記第1処理回路と電気的に接続し、
前記制御モジュールは、前記第2処理回路と電気的に接続する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項10】
前記制御モジュールは前記第2処理回路を介して前記第1処理回路と電気的に接続する、
ことを特徴とする請求項9に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第2処理回路は、前記N個のエンコーダーからのすべての出力を用いた演算を行わない、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記第2処理回路の制御周期は、前記第1処理回路の制御周期に比べて短い、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と時間との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と前記相対的な位置との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
前記N個のエンコーダーのうちの前記第1エンコーダーとは異なる1つのエンコーダーを第2エンコーダーとするとき、
前記第2処理回路は、前記制御モジュールに入力する信号を前記第2エンコーダーからの出力を用いずに生成する、
ことを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項16】
前記ロボットの動作は前記第1エンコーダーと、前記第2エンコーダーと、の出力に基づいて制御される
ことを特徴とする請求項15に記載の立体物印刷装置。
【請求項17】
前記第2処理回路は、前記制御モジュールに入力する信号を前記N個のエンコーダーのうちの前記第1エンコーダー以外のN-1個のエンコーダーからの出力を用いずに生成する、
ことを特徴とする請求項9から16のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項18】
前記第1エンコーダーは、前記N個の可動部のうち、前記ロボットの動作中の期間にわたる動作量の最も大きい可動部に設けられる、
ことを特徴とする請求項9から17のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項19】
前記第2処理回路は、前記ロボットの駆動中の期間における前記第1エンコーダーから出力されるパルスの数が閾値を超えるタイミングで、前記制御モジュールに入力する信号を変化させる、
ことを特徴とする請求項9から18のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項20】
前記第2処理回路の処理内容を設定する設定部をさらに有し、
前記設定部は、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力に関する出力情報と、前記相対的な位置に関する位置情報と、を取得し、
前記出力情報と前記位置情報とに基づいて、前記第2処理回路の処理内容を設定する、 ことを特徴とする請求項19に記載の立体物印刷装置。
【請求項21】
前記設定部は、前記第2処理回路の処理内容として前記閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項20に記載の立体物印刷装置。
【請求項22】
前記位置情報は、前記N個のエンコーダーからの出力を用いた前記第1処理回路での演算により得られる、
ことを特徴とする請求項20または21に記載の立体物印刷装置。
【請求項23】
前記相対的な位置を測定するセンサーをさらに有し、
前記位置情報は、前記センサーによる測定結果を用いて得られる、
ことを特徴とする請求項20または21に記載の立体物印刷装置。
【請求項24】
前記第2処理回路から前記制御モジュールに入力する信号は、前記液体吐出ヘッドの駆動を開始するためのトリガー信号を含む、
ことを特徴とする請求項9から23のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項25】
前記第2処理回路から前記制御モジュールに入力する信号は、前記液体吐出ヘッドの駆動タイミングを規定するためのタイミング信号を含む、
ことを特徴とする請求項9から23のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項26】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を用いて前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、 前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と時間との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項27】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を用いて前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、 前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と前記相対的な位置との対応関係に関する対応情報を記憶し、
前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項28】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、
前記可動部の動作を検出する検出手段と、を有し、
前記ロボットが前記液体吐出ヘッドを印刷経路に沿って移動させる予備動作において前記可動部の動作を前記検出手段により検出し、
前記ロボットが前記液体吐出ヘッドを前記印刷経路に沿って移動させつつ前記液体
吐出ヘッドが前記液体を吐出する印刷動作において、前記予備動作における前記検出手段の検出結果に基づいて前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項29】
前記検出手段は、前記可動部の動作量を計測するエンコーダーを有し、
前記予備動作において、前記可動部の動作を前記エンコーダーにより検出し、
前記印刷動作において、前記予備動作における前記エンコーダーの検出結果に基づいて前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする請求項28に記載の立体物印刷装置。
【請求項30】
前記相対的な位置を測定する測定手段を有する、
ことを特徴とする請求項28または29に記載の立体物印刷装置。
【請求項31】
前記ロボットの駆動を制御する機能と、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を前記ロボットの駆動に同期させるための信号を生成する機能と、を有するコントローラーを有する、
ことを特徴とする請求項28から30のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項32】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記可動部の動作を検出する検出手段と、を用いて前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記ロボットが前記液体吐出ヘッドを印刷経路に沿って移動させる予備動作と、
前記ロボットが前記液体吐出ヘッドを前記印刷経路に沿って移動させつつ前記液体吐出ヘッドが前記液体を吐出する印刷動作と、を含み、
前記予備動作において、前記可動部の動作を前記検出手段により検出し、
前記印刷動作において、前記予備動作における前記検出手段の検出結果に基づいて前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置および立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体物の表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、凹面状に湾曲した基板にインクジェット方式により塗布液を塗布する装置が記載される。特許文献1に記載の装置は、当該基板を一方向に搬送する移動機構と、インクジェット方式の塗布ヘッドを昇降させる昇降装置と、を有する。ここで、塗布ヘッドは、移動機構に設けられたリニアエンコーダーの出力に基づく時間間隔で液滴を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷対象である立体物とインクジェットヘッドとの相対的な位置を変化させる機構としては、前述の特許文献1のように1つの軸に沿って動作する移動機構および昇降機構を用いる構成のほか、多軸ロボットが挙げられる。多軸ロボットでは、一般に、各関節に設けられたエンコーダーからのすべての出力に基づく演算により、TCP(Tool Center Point)の位置をロボットのベース座標系の座標値として算出可能である。そこで、多軸ロボットを用いる場合、この座標値に基づいてインクジェットヘッドからの吐出タイミングを規定することが考えられる。しかし、このように吐出タイミングを規定すると、座標値の算出に要する時間に起因して、印刷位置または印刷タイミングにずれが生じてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を有し、前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と時間との対応関係に関する対応情報を記憶し、前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する。
【0006】
本発明に係る立体物印刷装置の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を有し、前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と前記相対的な位置との対応関係に関する対応情報を記憶し、前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する。
【0007】
本発明に係る立体物印刷装置の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御モジュールと、第1処理回路と、第2処理回路と、を有し、前記第1処理回路は、前記液体吐出ヘッドの移動すべき経路を示す経路情報に基づいて、前記N個の可動部のそれぞれの動作量を演算し、前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーである第1エンコーダーは、前記第2処理回路を介して前記第1処理回路と接続し、前記制御モジュールは、前記第2処理回路と接続する。
【0008】
本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を用いて前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と時間との対応関係に関する対応情報を記憶し、前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する。
【0009】
本発明に係る立体物印刷方法の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、N(ただし、Nは、2以上の自然数である)個の可動部を有し、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、前記N個の可動部について各可動部に対応して設けられ、各可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーと、を用いて前記ワークに印刷を行う立体物印刷方法であって、前記N個のエンコーダーのうちの1つのエンコーダーを第1エンコーダーとするとき、前記ロボットの動作中における前記第1エンコーダーからの出力と前記相対的な位置との対応関係に関する対応情報を記憶し、前記ロボットを動作させつつ、前記第1エンコーダーからの出力と前記対応情報とに基づいて、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における液体吐出ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】第2処理回路の具体的な構成例を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における印刷動作を説明するための図である。
【
図7】各エンコーダーから出力される信号の一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態におけるタイミング信号生成回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図10】スイッチ回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図11】第2実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図12】第2実施形態におけるタイミング信号生成回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図13】第3実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図14】第3実施形態におけるタイミング信号生成回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0013】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のワークWおよび基台210が設置される空間に設定されるベース座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0014】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置100は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0015】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。
図1に示す例では、ワークWが直方体であり、面WFがZ1方向を向く平面である。なお、印刷対象は、ワークWが有する複数の面のうち面WF以外の面でもよい。また、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0016】
図1に示す例では、立体物印刷装置100は、垂直多関節ロボットを用いるインクジェットプリンターである。具体的には、
図1に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200と液体吐出ユニット300と液体供給ユニット400とコントローラー600とを有する。以下、まず、
図1に示す立体物印刷装置100の各部を順次簡単に説明する。
【0017】
ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ユニット300の位置および姿勢を変化させる移動機構である。
図1に示す例では、ロボット200は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。具体的には、ロボット200は、基台210とアーム220とを有する。
【0018】
基台210は、アーム220を支持する台である。
図1に示す例では、基台210は、Z1方向を向く床面等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基台210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、
図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0019】
アーム220は、基台210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム220は、アーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0020】
アーム221は、基台210に対して第1回動軸O1まわりに回動可能に関節部230_1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して第2回動軸O2まわりに回動可能に関節部230_2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して第3回動軸O3まわりに回動可能に関節部230_3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して第4回動軸O4まわりに回動可能に関節部230_4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して第5回動軸O5まわりに回動可能に関節部230_5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して第6回動軸O6まわりに回動可能に関節部230_6を介して連結される。なお、以下では、関節部230_1~230_6のそれぞれを関節部230という場合がある。
【0021】
関節部230_1~230_6のそれぞれは、「可動部」の一例である。
図1では、当該可動部の数Nが6個である場合が例示される。
図1に示す例では、関節部230_1~230_6のそれぞれは、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。
図1では図示しないが、関節部230_1~230_6のそれぞれには、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、当該駆動機構の集合体は、後述の
図2に示すアーム駆動機構240に相当する。また、当該エンコーダーは、後述の
図2等に示すエンコーダー241に相当する。
【0022】
第1回動軸O1は、基台210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。第2回動軸O2は、第1回動軸O1に対して垂直な軸である。第3回動軸O3は、第2回動軸O2に対して平行な軸である。第4回動軸O4は、第3回動軸O3に対して垂直な軸である。第5回動軸O5は、第4回動軸O4に対して垂直な軸である。第6回動軸O6は、第5回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0023】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0024】
以上のアーム220の先端、すなわち、アーム226には、エンドエフェクターとして、液体吐出ユニット300が装着される。
【0025】
液体吐出ユニット300は、液体の一例であるインクをワークWに向けて吐出する液体吐出ヘッド310を有する機構である。本実施形態では、液体吐出ユニット300は、液体吐出ヘッド310のほか、液体吐出ヘッド310に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整弁320と、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置関係を検出するセンサー330と、を有する。これらは、ともにアーム226に固定されるので、互いの位置および姿勢の関係が固定される。
【0026】
図1では図示しないが、液体吐出ヘッド310は、複数の圧電素子と、インクを収容する複数のキャビティと、複数のノズルと、有する。ここで、当該ノズルは、キャビティごとに設けられており、当該キャビティに連通する。当該圧電素子は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このような液体吐出ヘッド310は、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、当該圧電素子は、後述の
図2に示す圧電素子311に相当する。また、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0027】
圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、液体吐出ヘッド310のノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0028】
なお、
図1に示す例では、液体吐出ユニット300が有する液体吐出ヘッド310および圧力調整弁320のそれぞれの数が1個であるが、当該数は、
図1に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁320およびセンサー330の設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基台210に対して固定の位置でもよい。
【0029】
センサー330は、所定方向におけるワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置関係を検出する。具体的には、センサー330は、ワークWに対して相対的な位置が固定される図示しない基準面との間の距離を計測する光学式変位計等の距離センサーである。なお、当該基準面は、ワークWの表面でもよいし、ワークWとは別の物体の表面でもよい。また、当該基準面の向く方向は、あらかじめワークWの面WFに対する位置および姿勢が把握されていればよく、任意である。
【0030】
液体供給ユニット400は、インクを液体吐出ヘッド310に供給するための機構である。液体供給ユニット400は、液体貯留部410と供給流路420とを有する。
【0031】
液体貯留部410は、インクを貯留する容器である。液体貯留部410は、例えば、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックである。液体貯留部410に貯留されるインクは、例えば、染料または顔料等の色材を含むインクである。なお、液体貯留部410に貯留されるインクの種類は、色材を含むインクに限定されず、例えば、金属粉末等の導電材料を含むインクでもよい。また、インクが紫外線硬化性等の硬化性を有してもよい。インクが紫外線硬化性等の硬化性を有する場合、例えば、液体吐出ユニット300に紫外線照射機構が搭載される。
【0032】
図1に示す例では、液体貯留部410は、常に液体吐出ヘッド310よりもZ1方向に位置するように、壁、天井または柱等に固定される。すなわち、液体貯留部410は、液体吐出ヘッド310の移動領域よりも鉛直方向での上方に位置する。このため、ポンプ等の機構を用いなくても、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の加圧力でインクを供給することができる。
【0033】
なお、液体貯留部410の設置場所は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給することができればよく、液体吐出ヘッド310よりも鉛直方向での下方に位置してもよい。この場合、例えば、ポンプを用いて、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給すればよい。
【0034】
供給流路420は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310にインクを供給する流路である。供給流路420の途中には、圧力調整弁320が設けられる。このため、液体吐出ヘッド310と液体貯留部410との位置関係が変化しても、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力の変動を低減することができる。
【0035】
供給流路420は、例えば、管体の内部空間で構成される。ここで、供給流路420に用いる管体は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されており、可撓性を有する。このように、可撓性を有する管体を用いて供給流路420を構成することにより、液体貯留部410と圧力調整弁320との相対的な位置関係の変化が許容される。したがって、液体貯留部410の位置および姿勢を固定したまま、液体吐出ヘッド310の位置または姿勢が変化しても、液体貯留部410から圧力調整弁320へインクを供給することができる。
【0036】
なお、供給流路420の一部が可撓性を有しない部材で構成されてもよい。また、供給流路420の一部は、インクを複数箇所に分配する分配流路を有する構成でもよいし、液体吐出ヘッド310または圧力調整弁320と一体で構成されてもよい。
【0037】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御するロボットコントローラーである。
図1では図示しないが、コントローラー600は、液体吐出ユニット300における吐出動作を制御する制御モジュールが電気的に接続される。コントローラー600および当該制御モジュールには、コンピューターが通信可能に接続される。なお、当該制御モジュールは、後述の
図2に示す制御モジュール500に相当する。当該コンピューターは、後述の
図2に示すコンピューター700に相当する。
【0038】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、立体物印刷装置100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。また、
図2では、エンコーダー241_1~241_6を含むアーム駆動機構240が示される。アーム駆動機構240は、関節部230_1~230_6を動作させる前述の駆動機構の集合体である。エンコーダー241_1~241_6は、関節部230_1~230_6に対応して設けられたロータリーエンコーダーであり、関節部230_1~230_6の回転角度等の動作量を計測する。なお、以下では、エンコーダー241_1~241_6のそれぞれをエンコーダー241という場合がある。
【0039】
図2に示すように、立体物印刷装置100は、前述のロボット200と液体吐出ユニット300とコントローラー600のほか、制御モジュール500とコンピューター700とを有する。なお、以下に述べる電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、制御モジュール500またはコントローラー600の機能の一部または全部は、コントローラー600に接続されるコンピューター700により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー600に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0040】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御する機能と、液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。コントローラー600は、第1記憶回路610と第2記憶回路620と第1処理回路630と第2処理回路640とを有する。
【0041】
第1記憶回路610は、第1処理回路630が実行する各種プログラムと、第1処理回路630が処理する各種データと、を記憶する。第1記憶回路610は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、第1記憶回路610の一部または全部は、第1処理回路630に含まれてもよい。
【0042】
第1記憶回路610には、経路情報Daが記憶される。経路情報Daは、液体吐出ヘッド310の移動すべき経路を示す情報である。例えば、経路情報Daは、ベース座標系の座標値を用いて表される。経路情報Daは、ワークWの位置および形状を示すワーク情報に基づいて決められる。当該ワーク情報は、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データ等の情報を前述のベース座標系に対応付けることにより得られる。以上の経路情報Daは、コンピューター700から第1記憶回路610に入力される。
【0043】
第2記憶回路620は、第2処理回路640が実行する各種プログラムと、第2処理回路640が処理する各種データと、を記憶する。第2記憶回路620は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、第2記憶回路620の一部または全部は、第2処理回路640に含まれてもよいし、第1記憶回路610と一体で構成されてもよい。
【0044】
第2記憶回路620には、対応情報Dbが記憶される。対応情報Dbは、エンコーダー241_1~241_6のうちの1つのエンコーダー241からの出力と時間または位置との対応関係に関する情報である。以上の対応情報Dbは、コンピューター700から第2記憶回路620に入力される。対応情報Dbについては、後に詳述する。
【0045】
第1処理回路630は、経路情報Daに基づいて、関節部230_1~230_6のそれぞれの動作量を演算する。具体的には、第1処理回路630は、経路情報Daを各関節部230_1~230_6の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。
【0046】
以上の第1処理回路630は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、第1処理回路630は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0047】
第2処理回路640は、第1処理回路630での演算結果に基づいて関節部230_1~230_6の動作を制御するとともに、信号D3を生成する。具体的には、第2処理回路640は、各関節部230_1~230_6の実際の回転角度および回転速度等の動作量が第1処理回路630での演算結果となるように、ロボット200のアーム駆動機構240に含まれるエンコーダー241_1~241_6からの出力D1_1~D1_6に基づいて、各関節部230_1~230_6に対して制御信号Sk_1~Sk_6を出力するフィードバック制御を行う。制御信号Sk_1~Sk_6は、関節部230_1~230_6に対応しており、対応する関節部230に設けられるモーターの駆動を制御する。つまり、コントローラー600は、アーム駆動機構240に含まれるエンコーダー241_1~241_6からの出力D1_1~D1_6に基づいて、ロボット200の動作を制御する。なお、出力D1_1~D1_6は、エンコーダー241_1~241_6に対応する。以下では、出力D1_1~D1_6のそれぞれを出力D1という場合がある。
【0048】
また、第2処理回路640は、エンコーダー241_1~241_6のうちの1つのエンコーダー241からの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。この生成には、対応情報Dbが用いられる。第2処理回路640および信号D3については、後に詳述する。
【0049】
以上の第2処理回路640は、前述の第1処理回路630とは個別の回路で構成される。このため、第1処理回路630での処理負荷が第2処理回路640の処理負荷に影響することが防止される。ここで、第2処理回路640は、例えば、第1処理回路630と同様、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含んでもよいが、第1処理回路630よりも制御周期の短い回路であることが好ましい。第2処理回路640の制御周期を短くすることで、各関節部230_1~230_6に対するフィードバック制御の周期を短くすることができ、ロボット200の動作精度を高めることができる。さらに、第2処理回路640の制御周期が長い場合に比べて、エンコーダー241からの出力D1が第2処理回路640に入力されてから、信号D3を出力するまでに要する時間を短くすることができるため、信号の遅延を抑制できる。また、第2処理回路640は、立体物印刷装置100の使用環境に適した信号D3の生成を容易にする観点から、FPGA(Field-Programmable Gate Array )やDSP(Digital Signal Processor)等の演算を実行可能なデバイスを含むことが好ましい。
【0050】
制御モジュール500は、コントローラー600から出力される信号D3とコンピューター700からの印刷データとに基づいて、液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御する回路である。制御モジュール500は、タイミング信号生成回路510と電源回路520と制御回路530と駆動信号生成回路540とを有する。
【0051】
タイミング信号生成回路510は、信号D3を契機としてタイミング信号PTSを生成する。つまり、信号D3はタイミング信号PTSの生成を開始するためのトリガー信号である。本実施形態のタイミング信号生成回路510は、信号D3に含まれるパルスPSの検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。信号D3の波形については、後に詳述する。なお、詳細については後述するが、タイミング信号PTSは、液体吐出ヘッド310の動作のタイミングを規定する信号、いわゆるPulse Timing Signalである。
【0052】
電源回路520は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、立体物印刷装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路520は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ユニット300に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路540に供給される。
【0053】
制御回路530は、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路540に入力され、それ以外の信号は、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される。
【0054】
制御信号SIは、液体吐出ヘッド310が有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、圧電素子311に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定する。この指定により、例えば、圧電素子311に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。以上の信号のうち、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される信号については、後に詳述する。
【0055】
駆動信号生成回路540は、液体吐出ヘッド310が有する各圧電素子311を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路540は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路540では、当該DA変換回路が制御回路530からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路520からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、スイッチ回路340を介して、駆動信号生成回路540から圧電素子311に供給される。スイッチ回路340は、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0056】
コンピューター700は、コントローラー600に経路情報Daを供給する機能と、制御モジュール500に印刷データを供給する機能と、を有する。これらの機能のほか、本実施形態のコンピューター700は、第2処理回路640の処理内容を設定する機能を有する。本実施形態では、当該処理内容は、対応情報Dbの内容と信号D3の開始タイミングのための閾値とを含む。
【0057】
また、本実施形態のコンピューター700は、前述のセンサー330に電気的に接続されており、センサー330からの信号D2に基づいて、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を検出可能である。
【0058】
1-3.液体吐出ユニット
図3は、第1実施形態における液体吐出ユニット300の概略構成を示す斜視図である。
【0059】
以下の説明は、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、a軸に沿う一方向をa1方向といい、a1方向と反対の方向をa2方向という。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向をb1方向およびb2方向という。また、c軸に沿って互いに反対の方向をc1方向およびc2方向という。
【0060】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のロボット200の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図3に示す例では、c軸が前述の第6回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0061】
液体吐出ユニット300は、前述のように、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とを有する。これらは、
図3中の二点鎖線で示される支持体350に支持される。
【0062】
支持体350は、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、
図3では、支持体350が扁平な箱状をなすが、支持体350の形状は、特に限定されず、任意である。
【0063】
以上の支持体350は、前述のアーム220の先端、すなわちアーム226に装着される。このため、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とのそれぞれは、アーム226に固定される。
【0064】
図3に示す例では、圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310に対してc1方向に位置する。センサー330は、液体吐出ヘッド310に対してa2方向に位置する。
【0065】
供給流路420は、圧力調整弁320により上流流路421と下流流路422とに区分される。すなわち、供給流路420は、液体貯留部410と圧力調整弁320とを連通させる上流流路421と、圧力調整弁320と液体吐出ヘッド310とを連通させる下流流路422と、を有する。
図3に示す例では、供給流路420の下流流路422の一部が流路部材422aで構成される。流路部材422aは、圧力調整弁320からのインクを液体吐出ヘッド310の複数箇所に分配する流路を有する。流路部材422aは、例えば、樹脂材料で構成される複数の基板の積層体であり、各基板には、インクの流路のための溝または孔が適宜に設けられる。
【0066】
液体吐出ヘッド310は、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。
図3に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列L1と第2ノズル列L2とに区分される。第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれは、「ノズル列」の一例であり、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、液体吐出ヘッド310における第1ノズル列L1の各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列L2の各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0067】
ただし、第1ノズル列L1における複数のノズルNと第2ノズル列L2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列L1における複数のノズルNと第2ノズル列L2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0068】
1_4.第2処理回路640
図4は、第2処理回路640の具体的な構成例を説明するための図である。第2処理回路640は、例えば、
図4に示すように、関節部230_1~230_6に対応して設けられた第2処理回路640_1~640_6を有する。
【0069】
第2処理回路640_1は、関節部230_1の実際の回転角度等の動作量が第1処理回路630での演算結果となるように、エンコーダー241_1からの出力D1_1に基づいて、制御信号Sk_1を出力し、関節部230_1の動作量を制御する。同様に、第2処理回路640_2~640_6は、対応する関節部230_2~230_6の実際の回転角度等の動作量が第1処理回路630での演算結果となるように、エンコーダー241_2~241_6からの出力D1_2~D1_6に基づいて、制御信号Sk_2~6を出力し、関節部230_2~230_6の動作量を制御する。
【0070】
また、第2処理回路640_1~640_6のうち、第2処理回路640_1は、コンピューター700による処理内容の設定後、対応情報Dbを用いて信号D3を出力する。ここで、第2処理回路640_1は、対応情報Dbを用いて、エンコーダー241_1からの出力D1_1を信号D3に変換する。
【0071】
1-5.立体物印刷装置の動作および立体物印刷方法
図5は、第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、立体物印刷装置100を用いて行われる。まず、立体物印刷装置100は、
図5に示すように、ステップS110において、予備動作を行う。この予備動作では、ロボット200が経路情報Daの示す経路で液体吐出ヘッド310を移動させつつ、エンコーダー241_1からの出力に関する出力情報と、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置に関する位置情報と、を取得する。この取得は、コンピューター700の設定部710により行われる。設定部710は、図示しないプログラムをコンピューター700が実行することにより実現される。当該位置情報は、予備動作中におけるセンサー330による測定結果を用いて取得してもよいし、予備動作中におけるエンコーダー241_1~241_6からの出力を用いて第1処理回路630での演算により取得してもよい。また、当該位置情報は、予備動作中にワークWに対してテストパターンを印刷し、図示しないカメラによって当該テストパターンを撮像することによって取得してもよい。この場合、例えばカメラをアーム226に固定することで、液体吐出ユニット300とカメラとの互いの位置および姿勢の関係を固定し、カメラによる撮像情報に基づいて当該位置情報を取得する。またはテストパターンの印刷はワークWを用いずともよく、テストパターンの印刷領域がワークWと同一の形状である物体を用いることもできる。
【0072】
次に、立体物印刷装置100は、ステップS120において、対応情報Dbを記憶する。具体的には、前述のステップS110で得られた位置情報および出力情報を用いて対応情報Dbを生成した後、対応情報Dbを第2記憶回路620に記憶させる。
【0073】
次に、立体物印刷装置100は、ステップS130において、信号D3のタイミングに関する閾値tを設定する。具体的には、前述のステップS110で得られた位置情報および出力情報に基づいて、印刷時における信号D3のタイミングが所望のタイミングとなるように、閾値tが設定される。この設定は、コンピューター700の設定部710により行われる。
【0074】
次に、立体物印刷装置100は、ステップS140において、印刷動作を行う。この印刷動作では、ロボット200が経路情報Daの示す経路で液体吐出ヘッド310を移動させつつ、液体吐出ヘッド310が吐出動作を行う。当該吐出動作は、信号D3に同期した状態で、コンピューター700からの印刷データに基づいて行われる。このように、当該吐出動作は、エンコーダー241_1からの出力と対応情報Dbとに基づいて制御される。
【0075】
図6は、第1実施形態における印刷動作を説明するための図である。
図6では、立体物印刷装置100がワークWの面WFに対して印刷を行う状態が例示される。
図6に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200が液体吐出ヘッド310を所定の走査方向DSに移動させながら、液体吐出ヘッド310からインクを吐出させることにより、面WFに対して印刷を行う。走査方向DSは、前述の経路情報Daの示す経路に沿う方向である。
図6に示す例では、走査方向DSがX1方向である。また、ツール座標系におけるa1方向が走査方向DSを向く。
【0076】
このような印刷動作において、ロボット200が液体吐出ヘッド310を走査方向DSに移動させるには、関節部230_1~230_6の動作量を適宜に組み合わせる必要がある。したがって、各エンコーダー241からの出力D1は、液体吐出ヘッド310の走査方向DSでの位置と線形的な関係とはならない。エンコーダー241からの出力D1は対応する関節部の回転を示す信号である。
【0077】
図7は、各エンコーダー241から出力される信号の一例を示す図である。エンコーダー241は、図示しないが、例えば、スケールと発光素子と受光素子とを有する。ここで、発光素子は、スケールに向けて光を出射する。受光素子は、当該光のうちスケールの反射光または透過光を受光することにより、
図7に示すように、エンコーダー241から出力される信号として、信号ENC_AおよびENC_Bを出力する。なお、エンコーダー241は、アブソリュート型でもよいし、インクリメンタル型でもよい。また、信号の波形は、
図7に示す例に限定されない。
【0078】
信号ENC_AおよびENC_Bのそれぞれは、関節部の回転に伴って出現するパルスPEを含む。パルスPEが出現する時間間隔Tdは、関節部の回転速度が速くなるに従い、短くなる。このため、時間間隔Tdに基づいて、関節部の回転速度を計測することができる。また、信号ENC_AおよびENC_Bの時間間隔Tdは、互い等しい。ただし、信号ENC_AおよびENC_Bの位相は、ずれ量ΔTとして、90度ずれる。ここで、関節部の回転方向によって、信号ENC_AおよびENC_Bの位相のずれる方向が異なる。このため、当該方向に基づいて、関節部の回転方向を識別することができる。
【0079】
図8は、対応情報Dbを説明する図である。
図8中の上段は、印刷動作中において、ロボット200が経路情報Daの示す経路で液体吐出ヘッド310を移動させた際のエンコーダー241_1からの出力D1_1の推移Aを示し、
図8の下段はワークWの面WF上のX軸方向において、液体吐出ヘッド310による印刷が可能な位置の推移Bを示す。
【0080】
液体吐出ユニット300がワークWの面WF上を走査方向DSに沿って通過する途中において、最初の印刷を施すべき液体吐出ユニット300の位置を印刷開始位置Xsとする。また、ロボット200が駆動を開始してから、当該印刷開始位置Xsに印刷を施すために、液体吐出ユニット300による液体の吐出開始に適切な位置に到達する時間を吐出開始時間Tsとする。つまり、ワークWの面WF上において印刷開始位置Xsから適切に印刷を施すためには、吐出開始時間Tsのタイミングで液体吐出ユニット300からインクの吐出を開始する必要がある。
【0081】
本実施形態では、前述の予備動作に基づき、印刷開始位置Xsに適切に印刷を施すことが可能な吐出開始時間Tsと、吐出開始時間Tsにおけるエンコーダー241_1の出力D1_1sとの対応関係を対応情報Dbとしてあらかじめ把握しておく。これにより、エンコーダー241_1からの出力D1_1に基づき、適切な吐出開始時間Tsのタイミングで液体吐出ユニット300からインクを吐出し、印刷開始位置Xsから適切に印刷を施すことができる。なお、
図8の例では、液体吐出ヘッド310の走査方向DSがX軸方向であるため、X軸方向の位置のみを用いて説明したが、走査方向によってはY軸方向やZ軸方向の位置を用いることもできる。
【0082】
また、本実施形態では、前述の予備動作に基づき、印刷開始位置Xsにおけるエンコーダー241_1の出力D1_1sとの対応関係を対応情報Dbとしてあらかじめ把握しておくこともできる。これにより、エンコーダー241_1からの出力D1_1に基づき、適切な吐出開始時間Tsのタイミングで液体吐出ユニット300からインクを吐出し、印刷開始位置Xsから適切に印刷を施すことができる。
【0083】
図9は、第1実施形態におけるタイミング信号生成回路510の動作を説明するためのタイミングチャートである。信号D3は、パルスPSを含む。このパルスPSは、エンコーダー241から出力される信号ENC_AのパルスPE_tの出現に伴って出現する。パルスPE_tは、所定の閾値tにより設定されるタイミングに出現するパルスPEである。ここで、
図9中に示すパルスPE_t+1は、パルスPE_tに後続するパルスPEである。なお、パルスPSは、エンコーダー241から出力される信号ENC_B等の他のパルスの出現に伴って出現させてもよい。
【0084】
図9に示すように、タイミング信号PTSは、前述のパルスPSの出現を契機としてタイミング信号生成回路510を構成するタイマーから出力される。タイミング信号PTSは、制御回路530および駆動信号生成回路540に入力される。制御回路530および駆動信号生成回路540は、タイミング信号PTSの入力を契機として、スイッチ回路340に対し、液体の吐出を制御するための信号を出力する。つまり、信号D3に含まれるパルスは、液体吐出ヘッド310が液体の吐出を開始するためのトリガー信号である。
図9では、パルスPSの立ち上がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始される場合が例示される。ここで、パルスPSの立ち上がりタイミングは、信号ENC_AのパルスPE_tの立下りタイミングに一致することから、
図9に示す例では、パルスPE_tの立ち下がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始される。なお、パルスPSの立ち下がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始されてもよい。
【0085】
タイミング信号PTSは、期間Tごとにn個のパルスPlsPを含む。ただし、nは、1以上の自然数である。
図9に示す例では、nが7個である場合が示される。
図9では、n個のパルスPlsPがパルスPlsP_1~PlsP_nで表記される。なお、nは、
図9に示す例に限定されず、例えば、好ましくは、1以上20以下の範囲内であり、より好ましくは、5以上10以下の範囲内である。
【0086】
期間Tは、例えば、後述の単位期間Tuに相当する。ただし、パルスPlsPは、後述のラッチ信号LATのパルスPlsLに対してずれたタイミングでもよい。なお、期間Tの長さは、単位期間Tuの長さと同じでも異なってもよい。期間Tの長さが単位期間Tuの長さと同じである場合、前述の制御回路530は、タイミング信号PTSをそのままラッチ信号LATとして出力してもよいし、タイミング信号PTSをずれたタイミングでラッチ信号LATとして出力してもよい。期間Tの長さが単位期間Tuの長さと異なる場合、制御回路530は、タイミング信号PTSをラッチ信号LATに変換する処理を行う。
【0087】
図10は、スイッチ回路340の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図10に示すように、ラッチ信号LATは、単位期間Tuを規定するためのパルスPlsLを含む。単位期間Tuは、例えば、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として規定される。また、チェンジ信号CNGは、単位期間Tuを制御期間Tu1と制御期間Tu2とに区分するためのパルスPlsCを含む。制御期間Tu1は、例えば、パルスPlsLの立ち上がりからパルスPlsCの立ち上がりまでの期間である。制御期間Tu2は、例えば、パルスPlsCの立ち上がりからパルスPlsLの立ち上がりまでの期間である。
【0088】
また、制御信号SIは、各単位期間Tuにおける圧電素子311[1]~311[M]の動作の種類を指定する個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。個別指定信号Sd[1]~Sd[M]は、単位期間Tuに先立って、クロック信号CLKに同期してスイッチ回路340に供給される。スイッチ回路340は、当該単位期間Tuにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、オンオフを切り替える。なお、Mは、圧電素子311の数であり、mは、1以上M以下の自然数である。添え字[M]または[m]は、M個の圧電素子311を区別するための表記である。また、以下では、M個の他の要素についても、添え字[m]を用いて、圧電素子311[m]との対応関係を示すことがある。
【0089】
図10に示すように、駆動信号Comは、制御期間Tu1に設けられる波形PXと、制御期間Tu2に設けられる波形PYと、を有する。
図10に示す例では、波形PXにおける最高電位VHXと最低電位VLXとの電位差が、波形PYにおける最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差よりも大きい。なお、駆動信号Comの波形は、
図10に示す例に限定されず、例えば、波形PYを省略してもよい。
【0090】
個別指定信号Sd[m]が中ドットの形成を指定する値である場合、スイッチ回路340は、制御期間Tu1においてオンとなるとともに制御期間Tu2においてオフとなる。このため、駆動信号Comにおける波形PXのみが駆動パルスPDとして圧電素子311に供給される。この結果、その圧電素子311に対応するノズルから中ドットに相当する量のインクが吐出される。
【0091】
個別指定信号Sd[m]が小ドットの形成を指定する値である場合、スイッチ回路340が制御期間Tu1においてオフとなるとともに制御期間Tu2においてオンとなる。このため、駆動信号Comにおける波形PYのみが駆動パルスPDとして圧電素子311に供給される。この結果、その圧電素子311に対応するノズルから小ドットに相当する量のインクが吐出される。
【0092】
個別指定信号Sd[m]が大ドットの形成を指定する値である場合、スイッチ回路340が制御期間Tu1およびTu2の両期間においてオンとなる。このため、駆動信号Comにおける波形PXおよびPYが駆動パルスPDとして圧電素子311に供給される。この結果、その圧電素子311に対応するノズルから大ドットに相当する量のインクが吐出される。
【0093】
個別指定信号Sd[m]がインクの非吐出を指定する値である場合、スイッチ回路340が制御期間Tu1およびTu2の両期間においてオフとなる。このため、駆動信号Comにおける波形PXおよびPYのいずれも圧電素子311に供給されない。この結果、その圧電素子311に対応するノズルからインクが吐出されない。
【0094】
以上の立体物印刷装置100は、前述のように、液体吐出ヘッド310とロボット200とN個のエンコーダー241とを有する。ただし、Nは、2以上の自然数である。ここで、液体吐出ヘッド310は、立体的なワークWに対して、「液体」の一例であるインクを吐出する。ロボット200は、「N個の可動部」の一例であるN個の関節部230を有し、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる。N個のエンコーダー241は、N個の関節部230について各関節部230に対応して設けられ、各関節部230の動作量を計測する。
【0095】
本実施形態では、N個のエンコーダー241のうちの1つのエンコーダー241_1が「第1エンコーダー」として例示される。立体物印刷装置100は、対応情報Dbを記憶し、ロボット200を動作させつつ、エンコーダー241_1からの出力と対応情報Dbとに基づいて液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御する。対応情報Dbは、ロボット200の動作中におけるエンコーダー241_1からの出力と時間との対応関係に関する情報である。なお、前述のように、対応情報Dbは、当該時間に代えて、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を用いてもよい。
【0096】
本実施形態では、立体物印刷装置100がN個の可動部の動作量を計測するN個のエンコーダーを有し、少なくとも2個のエンコーダーからの出力に基づいてロボット200の動作を制御することができる。つまり、コントローラー600は、少なくとも2個のエンコーダーからの出力を用いた演算を行うことより、液体吐出ヘッドユニットの位置情報を取得する。また、コントローラー600は、取得した位置情報に基づき、少なくとも2個の可動部に対して動作量を指定する制御信号を送るフィードバック制御を行う。この結果、コントローラー600は、ロボット200の動作を適切に制御することができる。なお、立体物印刷装置100がN個すべてのエンコーダーからの出力に基づいてロボット200の動作を同様に制御することもできる。また、ロボット200の動作時に動作する関節に対応するエンコーダーからの出力に基づいてロボット200の動作を同様に制御することもできる。
【0097】
以上の立体物印刷装置100では、N個のエンコーダー241からのすべての出力を用いなくても、エンコーダー241_1からの出力と対応情報Dbを用いることにより、液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に所望のタイミングで同期させることができる。ここで、当該タイミングの算出にN個のエンコーダー241からのすべての出力を用いる構成に比べて、当該算出の処理負荷が小さいので、当該算出による信号遅延を低減することができ、この結果、印刷位置または印刷タイミングのずれを低減することができる。このように、ロボット200を用いて立体的なワークWに対する印刷の画質を高めることができる。
【0098】
このように、立体物印刷装置100は、N個のエンコーダー241からのすべての出力を用いた演算により取得される位置情報を用いずに、液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御することにより、印刷位置または印刷タイミングのずれを低減することができる。
【0099】
ここで、前述のように、N個のエンコーダー241のうちエンコーダー241_1を除く少なくとも1つのエンコーダー241を用いずに、液体吐出ヘッド310の吐出動作が制御される。すなわち、N個のエンコーダー241のうちのエンコーダー241_1とは異なる1つのエンコーダー241を「第2エンコーダー」とするとき、当該第2エンコーダーからの出力を用いずに、液体吐出ヘッド310の吐出動作が制御される。
【0100】
また、前述のように、N個のエンコーダー241のうちのエンコーダー241_1以外のN-1個のエンコーダー241からの出力を用いずに、液体吐出ヘッド310の吐出動作が制御される。このため、液体吐出ヘッド310の吐出制御に2個以上のエンコーダー241を用いる構成に比べて、当該相対的な位置の算出の処理負荷を小さくすることができる。なお、液体吐出ヘッド310の吐出制御に用いるエンコーダー241の数は、N-1個以下であればよく、1個に限定されない。
【0101】
液体吐出ヘッド310の吐出動作の制御に用いるエンコーダー241は、N個の関節部230のうち、ロボット200の動作中に最も動作量の大きい関節部230に設けられることが好ましい。本実施形態では、エンコーダー241_1は、N個の関節部230のうち、ロボット200の動作中に最も動作量の大きい関節部230_1に設けられる。このため、ロボット200の動作中の広範囲にわたり1個のエンコーダー241_1からの出力を用いて液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御することができる。なお、本実施形態では、信号D3の生成にエンコーダー241_1からの出力を用いたが、エンコーダー241_1からの出力に代えて、または、エンコーダー241_1からの出力に加えて、他のエンコーダー241からの出力を用いて信号D3を生成してもよい。
【0102】
本実施形態の立体物印刷装置100は、液体吐出ヘッド310とロボット200とエンコーダー241_1~241_6とのほか、前述のように、制御モジュール500と第1処理回路630と第2処理回路640とを有する。制御モジュール500は、液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御する。第1処理回路630は、液体吐出ヘッド310の移動すべき経路を示す経路情報Daに基づいて、関節部230_1~230_6のそれぞれの動作量を演算する。エンコーダー241_1は、第2処理回路640を介して第1処理回路630と接続し、制御モジュール500は、第2処理回路640と接続する。また、制御モジュールは前記第2処理回路を介して前記第1処理回路と接続する。第2処理回路640は、エンコーダー241_1からの出力に基づいて、液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させるための信号D3を生成する。また、第2処理回路640は、制御モジュール500に電気的に接続される。一方、第1処理回路630は、第2処理回路640を介して制御モジュール500と電気的に接続される。
【0103】
このように、制御モジュール500は、第1処理回路630とエンコーダー241_1との間に設けられた第2処理回路640と接続し、第2処理回路640が信号D3を生成することにより、第1処理回路630が信号D3を生成する構成に比べて、第2処理回路640の処理負荷を低減することができる。また、第1処理回路630が信号D3を生成する構成に比べて、エンコーダー241_1から制御モジュール500に至るまでの信号の伝搬経路を短縮できる。この結果、印刷位置または印刷タイミングのずれを低減することができる。
【0104】
また、第2処理回路640が第1処理回路630とは別の回路であるため、これらの回路の制御周期を互いに異ならせることができる。ここで、第2処理回路640の制御周期は、第1処理回路630の制御周期に比べて短いことが好ましい。この場合、そうでない場合に比べて、第2処理回路640において信号D3の生成に必要な算出を迅速に行うことができる。
【0105】
本実施形態では、N個のエンコーダー241のうちの1個のエンコーダー241_1からの出力のみを用いて信号D3が生成される。すなわち、第2処理回路640は、制御モジュール500に入力する信号D3をN個のエンコーダー241のうちのエンコーダー241_1以外のN-1個のエンコーダー241からの出力を用いずに生成する。したがって、N個のエンコーダー241のうちのエンコーダー241_1とは異なる1つのエンコーダーを第2エンコーダーとするとき、第2処理回路640は、制御モジュール500に入力する信号D3を当該第2エンコーダーからの出力を用いずに生成する。
【0106】
第2処理回路640は、ロボット200の駆動中の期間におけるエンコーダー241_1から出力されるパルスPEの数が閾値tを超えるタイミングで、制御モジュール500に入力する信号D3を変化させる。このため、制御モジュール500が信号D3の変化を契機として液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させることができる。
【0107】
本実施形態では、前述のように、第2処理回路640は、FPGAやDSP等の演算を実行可能なデバイスである。また、立体物印刷装置100は、第2処理回路640の処理内容を設定する設定部710をさらに有する。設定部710は、ロボット200を動作させつつ、エンコーダー241_1からの出力に関する出力情報と、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置に関する位置情報と、を取得し、当該出力情報と当該位置情報とに基づいて、第2処理回路640の処理内容を設定する。
【0108】
ここで、設定部710は、第2処理回路640の処理内容として前述の閾値tを設定する。このため、ロボット200の動作条件に適した閾値tを設定することができる。
【0109】
当該位置情報は、前述のように、例えば、N個のエンコーダー241からの出力を用いた第1処理回路630Aでの演算により得られる。このため、当該位置情報を第2処理回路640で行う構成に比べて、第2処理回路640における処理負荷が低減される。
【0110】
また、本実施形態のように、立体物印刷装置100AがワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を測定するセンサー330を有する場合、当該位置情報は、センサー330による測定結果を用いて得られてもよい。この場合、N個のエンコーダー241からの出力を用いた演算により位置情報を得る構成に比べて、精度の高い位置情報を得ることができる。
【0111】
また、第2処理回路640から制御モジュール500に入力する信号D3は、液体吐出ヘッド310の駆動を開始するためのトリガー信号を含む。このため、印刷開始位置のずれを好適に防止し、この結果、印刷位置のずれを好適に防止することができる。
【0112】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0113】
図11は、第2実施形態に係る立体物印刷装置100Aの電気的な構成を示すブロック図である。立体物印刷装置100Aは、コントローラー600および制御モジュール500に代えて、コントローラー600Aおよび制御モジュール500Aを有する以外は、前述の第1実施形態の立体物印刷装置100と同様である。
【0114】
コントローラー600Aは、第2処理回路640に代えて第2処理回路640Aを有する以外は、前述のコントローラー600と同様である。第2処理回路640Aは、信号D3に代えて信号D4を生成する以外は、前述の第2処理回路640と同様である。
【0115】
信号D4は、走査方向DSにおけるワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置の単位変化ごとに出現するパルスPEを含む信号である。信号D4は、印刷動作中における関節部230_1の動作量に応じたエンコーダー241_1からの出力D1_1と対応情報Dbとに基づいて生成する信号である。ここで、本実施形態における対応情報Dbとは、
図8の上段で示す印刷動作中におけるエンコーダー241_1からの出力D1_1の推移、つまりはエンコーダーの出力と時間の関係である。もしくは、本実施形態における対応情報Dbとは、エンコーダー241_1からの出力D1_1とワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置との関係である。このような対応情報Dbをコントローラー600Aがあらかじめ記憶しておくことで、液体吐出ヘッド310の移動時間もしくは位置に応じた信号D4をエンコーダー241の出力から生成することが可能である。
【0116】
制御モジュール500Aは、タイミング信号生成回路510に代えてタイミング信号生成回路510Aを有する以外は、前述の制御モジュール500と同様である。タイミング信号生成回路510Aは、信号D4に基づいてタイミング信号PTSを生成する。本実施形態のタイミング信号生成回路510Aは、信号D4をタイミング信号PTSに変換するように逓倍する逓倍回路で構成される。
【0117】
図12は、第2実施形態におけるタイミング信号生成回路510Aの動作を説明するためのタイミングチャートである。信号D4は、複数のパルスPTを含む。走査方向DSにおける液体吐出ヘッド310の移動速度が一定である場合、パルスPTが出現する時間間隔は、一定である。
図12では、この時間間隔が期間Tである場合が例示される。
【0118】
図12に示すように、タイミング信号PTSは、前述のパルスPTの出現を契機として出力を開始する。つまり、第1実施形態と同様に、信号D4に含まれるパルスは、液体吐出ヘッド310が液体の吐出を開始するためのトリガー信号である。
図12では、パルスPTの立ち上がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始される場合が例示される。なお、パルスPTの立ち下がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始されてもよい。第1実施形態におけるタイミング信号PTSは、タイミング信号生成回路510を構成するタイマーから出力される。これに対し、第2実施形態におけるタイミング信号PTSは、タイミング信号生成回路510Aが信号D4を変換して出力される。
【0119】
以上の立体物印刷装置100Aによっても、前述の第1実施形態の立体物印刷装置100と同様、ロボット200を用いて立体的なワークWに対する印刷の画質を高めることができる。本実施形態では、第2処理回路640Aから制御モジュール500Aに入力される信号D4は、液体吐出ヘッド310の駆動タイミングを規定するためのタイミング信号を含む。このため、印刷タイミングのずれを好適に防止することができる。
【0120】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0121】
図13は、第3実施形態に係る立体物印刷装置100Bの電気的な構成を示すブロック図である。立体物印刷装置100Bは、コントローラー600および制御モジュール500に代えて、コントローラー600Bおよび制御モジュール500Bを有する以外は、前述の第1実施形態の立体物印刷装置100と同様である。
【0122】
コントローラー600Bは、第2処理回路640に代えて第2処理回路640Bを有する以外は、前述のコントローラー600と同様である。第2処理回路640Bは、信号D3に代えて信号D5を生成する以外は、前述の第2処理回路640と同様である。
【0123】
信号D5は、エンコーダー241_1からの出力そのものの信号であるか、または、エンコーダー241_1からの出力に基づく信号である。
【0124】
制御モジュール500Bは、タイミング信号生成回路510に代えてタイミング信号生成回路510Bを有する以外は、前述の制御モジュール500と同様である。タイミング信号生成回路510Bは、信号D5に基づいてタイミング信号PTSを生成する。本実施形態のタイミング信号生成回路510Bは、対応情報Dbを用いて信号D5をタイミング信号PTSに変換する。ここで、本実施形態における対応情報Dbとは、例えば
図8の上段で示す印刷動作中におけるエンコーダー241_1からの出力D1_1の推移、つまりはエンコーダーの出力と時間の関係である。もしくは、本実施形態における対応情報Dbとは、エンコーダー241_1からの出力D1_1とワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置との関係である。このような対応情報Dbを制御モジュール500Aがあらかじめ記憶しておくことで、液体吐出ヘッド310の移動時間もしくは位置に応じた信号D5をエンコーダー241の出力から生成することが可能である。
【0125】
図14は、第3実施形態におけるタイミング信号生成回路510Bの動作を説明するためのタイミングチャートである。信号D5は、複数のパルスPTを含む。
図14では、信号D5としてエンコーダー241からの信号ENC_Aそのものを用いる場合が例示される。したがって、
図14に示す例では、パルスPTの出現する時間間隔は、エンコーダー241からの信号ENC_AのパルスPEの出現する時間間隔に等しい。
【0126】
図14に示すように、タイミング信号PTSは、前述のパルスPTの出現を契機として出力を開始する。
図14では、パルスPTの立ち下がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始される場合が例示される。なお、パルスPTの立ち上がりタイミングでタイミング信号PTSの出力が開始されてもよい。
【0127】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態または第2実施形態と同様、ロボット200を用いて立体的なワークWに対する印刷の画質を高めることができる。本実施形態では、制御モジュール500Bで対応情報Dbを用いるので、第2実施形態に比べて、第2処理回路640Bの処理負荷を低減することができる。
【0128】
4.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0129】
4-1.変形例1
前述の形態では、移動機構として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。移動機構は、ワークに対して液体吐出ヘッドの相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させることができればよい。したがって、移動機構は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットアームが有する可動部は、回動機構のみに限定されず、例えば、伸縮機構等を有してもよい。
【0130】
4-2.変形例2
前述の形態では、ロボットアームの先端に対する液体吐出ヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構により液体吐出ヘッドを把持することにより、ロボットアームの先端に対して液体吐出ヘッドを固定してもよい。
【0131】
4-3.変形例3
また、前述の形態では、液体吐出ヘッドを移動させる構成の移動機構が例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、液体吐出ヘッドの位置が固定されており、移動機構がワークを移動させ、液体吐出ヘッドに対してワーク相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0132】
4-4.変形例4
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0133】
4-5.変形例5
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0134】
100…立体物印刷装置、100A…立体物印刷装置、100B…立体物印刷装置、200…ロボット、230…関節部(可動部)、230_1…関節部(可動部)、230_2…関節部(可動部)、230_3…関節部(可動部)、230_4…関節部(可動部)、230_5…関節部(可動部)、230_6…関節部(可動部)、241…エンコーダー、241_1~241_6…エンコーダー、310…液体吐出ヘッド、330…センサー、500…制御モジュール、500A…制御モジュール、500B…制御モジュール、630…第1処理回路、630A…第1処理回路、640…第2処理回路、640A…第2処理回路、640B…第2処理回路、640_1…第2処理回路、640_2…第2処理回路、710…設定部、D1…エンコーダーからの出力、D3…信号、D4…信号、D5…信号、Da…経路情報、Db…対応情報、ENC_A…信号(エンコーダーからの出力)、PE…パルス、PE_t…パルス、S110…ステップ(予備動作)、W…ワーク、t…閾値。