(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 Z
(21)【出願番号】P 2020176623
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正寛
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 龍一
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-180885(JP,A)
【文献】特開2018-026649(JP,A)
【文献】特開2009-231554(JP,A)
【文献】特開2014-160877(JP,A)
【文献】特開2009-027477(JP,A)
【文献】特開2020-028095(JP,A)
【文献】特開2009-16894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B5/30-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路が設けられている第1面及び前記第1面と表裏関係にある第2面を有する半導
体基板と、
前記半導体基板の前記第1面
側に配置されている振動素子と、
前記第1面側に開口する凹部と、前記凹部内に前記振動素子を収容するように前記第1
面
側で当接する当接面と、を有
するリッドと、
前記第1面と前記当接面との間に配置され
、前記第1面及び前記当接面と接合する金属
層と、を備え、
前記第1面の法線方向から見た平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記
金属層と重なって
おり、
前記金属層と前記集積回路との間には絶縁層が設けられている、
振動デバイス。
【請求項2】
集積回路が設けられている第1面及び前記第1面と表裏関係にある第2面を有する半導
体基板と、
前記半導体基板の前記第1面
側に配置されている振動素子と、
前記第1面側に開口する凹部と、前記凹部内に前記振動素子を収容するように前記第1
面
側で当接する当接面と、を有
するリッドと、
前記第1面と前記当接面との間に配置され
、前記第1面及び前記当接面と接合する金属
層と、を備え、
前記第1面の法線方向から見た平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記
金属層と重なって
おり、
前記第2面には外部端子が設けられており、前記集積回路と前記外部端子とは、前記半
導体基板に設けられている貫通電極を介して電気的に接続されている、
振動デバイス。
【請求項3】
集積回路が設けられている第1面及び前記第1面と表裏関係にある第2面を有する半導
体基板と、
前記半導体基板の前記第1面
側に配置されている振動素子と、
前記第1面側に開口する凹部と、前記凹部内に前記振動素子を収容するように前記第1
面
側で当接する当接面と、を有
するシリコンにより形成されたリッドと、
前記第1面と前記当接面との間に配置され、
前記第1面及び前記当接面と接合する金属
層と、を備え、
前記第1面の法線方向から見た平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記
金属層と重なって
おり、
前記リッドの前記凹部の底面には、前記金属層と電気的に導通する厚さ20nm以下の
第3金属層が設けられており、
赤外線が前記リッド及び前記第3金属層を透過することができる
振動デバイス。
【請求項4】
前記金属層は、前記第1面に設けられた第1金属層と、前記当接面に設けられた第2金
属層と、が活性化接合されてなる金属層である、
請求項1
乃至請求項3記載の振動デバイス。
【請求項5】
前記金属層はAuを含む、
請求項1
乃至請求項
4記載の振動デバイス。
【請求項6】
前記平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記金属層と重なっている領域
には、前記集積回路の一部としての配線が設けられており、前記配線は定電位配線である
、
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の振動デバイス。
【請求項7】
前記平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記金属層と重なっている領域
には、前記集積回路の一部としての配線が設けられており、前記配線は電源配線である、
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の振動デバイス。
【請求項8】
前記配線は、前記平面視において、閉曲線状である、
請求項6又は請求項7記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子などの圧電振動子を用いた振動デバイスは、携帯電話などの電子機器で広く使用されており、電子機器の小型化に伴い、振動デバイスの更なる小型化が求められている。そして、振動デバイスを小型化するために、集積回路を含む半導体基板に圧電振動子を搭載し、圧電振動子を被うように蓋であるリッドを半導体基板に配置する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体集積部品に圧電振動子を直接載置して接続し、半導体集積部品上から圧電振動子を被うようにフタを配置し、接着剤を用いてフタを半導体集積部品に固着した構成の圧電発振器が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、表面側に回路部が形成され、裏面に振動素子が搭載された第1基板と、振動素子を収容する凹部が形成されたリッド基板である第2基板と、を備え、振動素子が凹部内に収容される状態で、第1基板と、第2基板と、を接合した構成の圧電発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-128591号公報
【文献】特開2017-139717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、接着剤を用いてフタを固着するため、フタと、半導体集積部品と、を高温で加圧しながら固着させる必要があり、フタを固着する際に半導体集積回路が破損し易くなる。このため、接着剤を用いてフタを固着する場合は、フタと半導体集積部品とを固着する領域と、半導体集積回路と、が重ならないように配置する必要があり、圧電発振器が大型化する、という課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された構成では、圧電発振器を薄型化するために第1基板を研削、研磨する場合、第1基板の回路部が形成されている表面側を研削、研磨することはできない。このため、第1基板の振動素子を搭載する裏面を、振動素子を搭載するより前に研削、研磨する必要があり、圧電発振器の薄型化が困難である、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
振動デバイスは、集積回路が設けられている第1面及び前記第1面と表裏関係にある第2面を有する半導体基板と、前記第1面に配置されている振動素子と、前記第1面側に開口する凹部と、前記凹部内に前記振動素子を収容するように前記第1面に当接する当接面とを、有し、前記当接面において前記第1面に接合されているリッドと、前記第1面と前記当接面との間に配置された金属層と、を備え、前記第1面の法線方向から見た平面視において、前記集積回路の少なくとも一部が前記金属層と重なっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る振動デバイスを示す斜視図。
【
図3】実施形態1に係る振動デバイスの概略構成を示す平面図。
【
図4】実施形態1に係る振動デバイスの主要な製造工程を示すフローチャート。
【
図5】実施形態1に係る振動デバイスの製造工程を表す断面模式図。
【
図6】実施形態1に係る振動デバイスの製造工程を表す断面模式図。
【
図7】実施形態1に係る振動デバイスの製造工程を表す断面模式図。
【
図8】実施形態1に係る振動デバイスの製造工程を表す断面模式図。
【
図9】実施形態1に係る振動デバイスの製造工程を表す断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態1
【0011】
実施形態1に係る振動デバイス1について、
図1~
図3を参照して説明する。なお、
図3は、振動デバイス1の内部の構成を説明する便宜上、リッド3を取り外した状態を図示している。また、図中、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
【0012】
図面に付記する座標においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向がプラス方向である。また、Z方向を「法線方向」、Z方向のプラス方向を「上」又は「上方」、Z方向のマイナス方向を「下」又は「下方」として説明する。また、Z方向から見たときの平面視において、Z方向プラス側の面を上面、これと反対側となるZ方向マイナス側の面を下面として説明する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、振動デバイス1は、振動素子5と、振動素子5を収容するパッケージ2と、を有する。パッケージ2は、半導体基板4と、リッド3と、金属層6と、を有する。
【0014】
半導体基板4は、集積回路41が設けられている第1面4h及び第1面4hと表裏関係にある第2面4rを有する。
【0015】
リッド3は、半導体基板4の第1面4h側に開口する凹部32と、半導体基板4の第1面4hに当接する当接面31と、を有する箱状の蓋体である。なお、リッド3の当接面31が半導体基板4の第1面4hに当接するとは、リッド3の当接面31と、半導体基板4の第1面4hと、が直接的に接触することを必ずしも意味するものではなく、半導体基板4の第1面4hと、リッド3の当接面31と、が金属層6などを介して接触することを含む。
【0016】
金属層6は、半導体基板4と、リッド3と、を接合する接合部であり、半導体基板4の第1面4hと、リッド3の当接面31と、の間に配置されている。リッド3は、当接面31において、金属層6を介して、半導体基板4の第1面4hに接合している。
【0017】
集積回路41の少なくとも一部は、半導体基板4の第1面4hの法線方向であるZ方向から見た平面視において、金属層6と重なっている。言い換えると、集積回路41の少なくとも一部と、金属層6すなわち半導体基板4とリッド3とを接合する接合部と、は平面視において、重なっている。
【0018】
振動素子5は、半導体基板4の第1面4hに配置されている。半導体基板4の第1面4hと、リッド3の当接面31と、を接合することにより、リッド3の凹部32内に振動素子5が収容される。言い換えると、リッド3の凹部32の開口が半導体基板4により塞がれ、半導体基板4の第1面4hに振動素子5を収容する収容空間Sが形成される。
【0019】
図2及び
図3に示すように、半導体基板4は平板状であり、半導体基板4は、上面である第1面4hと、下面である第2面4rと、を有する。第2面4rは、第1面4hと表裏関係にある。半導体基板4の第1面4hには、第1面4hの外縁に沿って配置された枠状の第1金属層61が設けられている。
【0020】
第1金属層61は、本実施形態では、厚さ100nmの金(Au)により形成されている。なお、第1金属層61としては、金(Au)以外の金属、例えば、銅(Cu)などを用いても構わない。
【0021】
また、本実施形態では、第1金属層61と、半導体基板4の第1面4hと、の間に図示しない密着層が設けられている。密着層は、第1金属層61と、半導体基板4の第1面4hと、の密着性を向上させる機能を有する。密着層は、厚さ5nmのチタン(Ti)により形成されている。なお、密着層は、チタン(Ti)以外の金属、例えば、タングステン(W)などを用いても構わない。また、密着層は設けなくても構わない。
【0022】
リッド3は、半導体基板4の第1面4h側すなわち下方に開口する有底の凹部32と、凹部32の外縁に沿って枠状に設けられ、半導体基板4の第1面4hに当接する当接面31と、を有する。なお、本実施形態では、リッド3は、シリコン基板により形成されている。ただし、リッド3は、シリコン以外の材料、例えば、ガラスやセラミックスなどにより形成されていても構わない。
【0023】
当接面31には、全周にわたって第2金属層62が設けられている。
【0024】
第2金属層62は、本実施形態では、厚さ20nmの金(Au)により形成されている。なお、第2金属層62としては、金(Au)以外の金属、例えば、銅(Cu)などを用いても構わない。
【0025】
また、本実施形態では、第2金属層62と、リッド3の当接面31と、の間に図示しない密着層が設けられている。密着層は、第2金属層62と、リッド3の当接面31と、の密着性を向上させる機能を有する。密着層は、厚さ5nmのチタン(Ti)により形成されている。なお、密着層は、チタン(Ti)以外の金属、例えば、タングステン(W)などを用いても構わない。また、密着層は設けなくても構わない。
【0026】
半導体基板4の第1面4hに設けられている第1金属層61と、当接面31に設けられている第2金属層62と、は活性化接合により接合され、金属層6を形成する。このようにして、リッド3の当接面31と、半導体基板4の第1面4hと、は金属層6を介して接合する。
【0027】
活性化接合は、中性アルゴンイオンビームなどを第1金属層61及び第2金属層62に照射することにより、第1金属層61及び第2金属層62の表面を活性化させた後に、第1金属層61と、第2金属層62と、を接触させて接合を行う方法である。このような活性化接合によれば、第1金属層61及び第2金属層62の表面の金属原子、本実施形態では、金(Au)原子が第1金属層61と第2金属層62との接触面において拡散、再組織化を生じて接合が行われるため、接合界面のない強固な接合となる。また、第1金属層61及び第2金属層62の表面を平滑にすることにより、第1金属層61及び第2金属層62の表面の自由表面エネルギーのみで接合を行うことができるので、常温でかつ積極的な加圧をせずに接合を行うことができる。
【0028】
このように、接合時に過大な圧力や熱を加えないため、集積回路41の少なくとも一部と、金属層6すなわち半導体基板4とリッド3とを接合する接合部と、が平面視において重なっている場合でも、接合時における集積回路41の破損を低減することができる。このように、集積回路41の少なくとも一部と、半導体基板4とリッド3とを接合する接合部と、を平面視において重ねることができるので、振動デバイス1を小型化することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、半導体基板4の第1金属層61と、リッド3の第2金属層62と、を活性化接合により接合しているが、原子拡散接合を用いても構わない。原子拡散接合を用いることにより、活性化接合と同様に、接合時に過大な圧力や熱を加えずに、半導体基板4の第1金属層61と、リッド3の第2金属層62と、を接合することができる。
【0030】
また、上述したように、本実施形態では、第1金属層61及び第2金属層62は、金(Au)を含んでいる。具体的には、第1金属層61及び第2金属層62は、金(Au)により形成されている。金(Au)を用いることにより、第1金属層61及び第2金属層62の表面には金属酸化膜が形成されないため、活性化接合や原子拡散接合において、金属酸化膜を除去する必要がないので接合を容易に行うことができる。
【0031】
また、リッド3の凹部32の底面321には、第3金属層63が設けられている。第3金属層63は、底面321の全面にわたって設けられており、半導体基板4の第1面4hの法線方向であるZ方向から見た平面視において、振動素子5の少なくとも一部と重なっている。また、凹部32の側面322には、側面322の全面にわたって第4金属層64が設けられている。第3金属層63は、第4金属層64を介して、金属層6と電気的に導通している。第3金属層63及び第4金属層64を設けることにより、第3金属層63及び第4金属層64が遮蔽層として機能し、不要輻射などの外乱から集積回路41や振動素子5を保護することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、第4金属層64は、凹部32の側面322の全面にわたって設けられているが、凹部32の側面322の全面にわたって設けられていなくても構わない。第4金属層64が、金属層6と、第3金属層63と、を電気的に導通させることにより、第3金属層63が遮蔽層として機能し、不要輻射などの外乱から集積回路41や振動素子5を保護することができる。
【0033】
本実施形態では、第3金属層63及び第4金属層64は、第2金属層62と同様に、金(Au)により形成されている。また、第3金属層63と凹部32の底面321との間、及び第4金属層64と凹部32の側面322との間には、チタン(Ti)により形成される図示しない密着層が設けられている。
【0034】
第3金属層63の厚さを20nm以下とすることにより、赤外線は第3金属層63を透過することができるようになる。上述したように、リッド3はシリコン基板により形成されており、シリコンは赤外線を透過するため、第3金属層63の厚さを20nm以下とすることにより、赤外線を用いて、リッド3及び第3金属層63を介して、振動デバイス1の内部、具体的には、例えば、収容空間Sに収容されている振動素子5などを検査することができる。また、赤外線レーザー光をリッド3及び第3金属層63を介して振動素子5に照射することにより振動素子5の一部を除去し、振動素子5の共振周波数を調整することもできる。
【0035】
半導体基板4は、平板状のベース基板40と、ベース基板40の上面に設けられている集積回路41と、集積回路41の上面に設けられている絶縁層42と、を有する。言い換えると、集積回路41と、絶縁層42と、は半導体基板4の第1面4hに設けられている。なお、本実施形態では、ベース基板40は、シリコン基板である。ただし、ベース基板40は、シリコン以外の半導体、例えば、窒化ガリウムなどの半導体により形成されていても構わない。
【0036】
絶縁層42は、厚さ1μmのSiO2により形成されており、集積回路41の上面を覆っている。絶縁層42は、集積回路41を保護する機能を有する。なお、絶縁層42は、設けられていなくても構わない。
【0037】
半導体基板4の絶縁層42の上面には、マウント電極72が設けられている。マウント電極72は、絶縁層42を貫通する配線404と、集積回路41の上面に設けられている図示しない端子と、を介して、集積回路と41と電気的に接続している。マウント電極72は、後述する振動素子5と、集積回路41と、を電気的に接続するために用いられる。
【0038】
集積回路41は、図示しない複数のトランジスターなどの能動素子が図示しない配線により電気的に接続された回路である。なお、回路としては、特に限定されず、例えば、振動素子5を発振させてクロック信号等の基準信号の周波数を生成する発振回路、振動素子5の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路、発振回路からの出力信号を処理する処理回路、静電気保護回路などが挙げられる。
【0039】
集積回路41は、図示しない複数の端子を有する。複数の端子は、集積回路41の上面及び下面に形成され、集積回路41に電気的に接続している。複数の端子には、電源電位に繋がる端子、接地電位に繋がる端子、発振信号が出力される端子などが含まれている。
【0040】
また、集積回路41は、半導体基板4の第1面4hの法線方向であるZ方向から見た平面視において、集積回路41と、金属層6と、が重なっている領域において、集積回路41の一部としての配線45を有する。集積回路41に含まれる配線45は、集積回路41の外縁に沿って枠状すなわち閉曲線状に配置されている。
【0041】
配線45は、集積回路41に電気的に接続している電源電位に繋がる端子を介して電源電位を供給する電源配線や、接地電位に繋がる端子や静電気保護回路を介して接地電位を供給する接地配線として機能する。これにより、不要輻射などの外乱から集積回路41や振動素子5を保護することができる。また、配線45を閉曲線状に配置することにより、不要輻射などの外乱から集積回路41や振動素子5をさらに保護する効果を向上させることができる。なお、配線45は、電源電位や接地電位などの定電位を供給する定電位配線であれば、電源配線や接地配線でなくとも構わない。
【0042】
また、絶縁層42を貫通する図示しない配線により、配線45と、金属層6と、を電気的に接続することにより、不要輻射などの外乱から集積回路41や振動素子5を保護する効果をさらに向上させることができる。
【0043】
半導体基板4のベース基板40は、ベース基板40を厚さ方向であるZ方向に貫通する貫通穴400と、貫通穴400の内壁面に設けられている絶縁層401と、貫通穴400に挿通される貫通電極402と、を有する。
【0044】
また、半導体基板4のベース基板40は、ベース基板40の下面に設けられている絶縁層46と、絶縁層46の下面に設けられている外部端子70と、を有する。言い換えると、半導体基板4の第2面4rには、絶縁層46と、外部端子70と、が設けられている。
【0045】
貫通電極402の上面は、集積回路41の下面に配置された図示しない端子を介して、集積回路41と電気的に接続されている。貫通電極402の下面は、外部端子70と電気的に接続されている。外部端子70と、集積回路41と、が貫通電極402及び図示しない端子を介して電気的に接続されることにより、外部端子70を介して、集積回路41に電源電位や接地電位を供給することや、集積回路41からクロック信号などを出力することができる。
【0046】
このように、半導体基板4の第2面4rに設けられている外部端子70と、集積回路41と、を貫通電極402によって電気的に接続することにより、Z方向から見た平面視において、振動デバイス1の寸法を集積回路41と略同じ寸法にすることができ、振動デバイス1を小型化することができる。
【0047】
振動素子5は、振動基板51と、振動基板51の上面及び下面に配置された励振電極52と、振動基板51の下面に配置された一対の端子53と、励振電極52と端子53とを電気的に接続する配線54と、を有する。本実施形態では、振動基板51は、水晶基板である。なお、振動基板51は、水晶基板に限らず、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電結晶体でも構わない。
【0048】
振動素子5の下面に配置された一対の端子53と、半導体基板4の第1面4hに設けられているマウント電極72と、を導電性接合部材56によって接合することにより、振動素子5は、半導体基板4の第1面4hに固定、配置される。また、上述したように、マウント電極72は、集積回路41と電気的に接続しているので、振動素子5の振動基板51の上面及び下面に配置された励振電極52と、集積回路41と、は、マウント電極72と、導電性接合部材56と、振動基板51の端子53と、励振電極52の配線54と、を介して、電気的に接続され、集積回路41から出力される発振信号により振動素子5を発振させることができる。
【0049】
なお、導電性接合部材56としては、例えば、金バンプ、はんだバンプなどの各種金属バンプや、エポキシ系、シリコーン系などの樹脂接着剤に銀フィラーなどの導電性フィラーを分散させた導電性接着剤を用いることができる。
【0050】
次に、振動デバイス1の製造方法について、
図4~
図9を参照しながら説明する。振動デバイス1の製造方法は、
図4に示すように、半導体基板形成工程と、振動素子搭載工程と、リッド形成工程と、接合工程と、個片化工程と、を含んでいる。
【0051】
1.1 半導体基板形成工程
図4及び
図5に示すように、ステップS1において、半導体基板4を形成する。複数のベース基板40が一体となったシリコンウエハSW1を準備し、ボッシュプロセス等のシリコンエッチング技法を用いて、貫通穴400を形成する。貫通穴400の内壁面に絶縁層401を形成した後に、貫通穴400にホウ素イオンが注入されたポリシリコンを埋め込むことにより、貫通電極402を形成する。貫通電極402を形成した後に、複数のベース基板40の上面に配線45を含む集積回路41を形成する。集積回路41を形成した後に、絶縁層42、絶縁層46を形成し、さらに、外部端子70、配線404、マウント電極72、第1金属層61を形成する。
【0052】
なお、ベース基板40の下面に設けられている絶縁層46及び外部端子70は、後述する接合工程の後に形成することにしても構わない。
【0053】
また、ステップS1において、マウント電極72と、第1金属層61と、は、例えば、スパッタ技法を用いて、金(Au)を成膜し、その膜をフォトリソグラフィー技法及びエッチング技法を用いてパターニングすることにより、同時に形成することができる。
【0054】
1.2 振動素子搭載工程
図4及び
図6に示すように、ステップS2において、導電性接合部材56を介して、振動素子5の下面に配置された端子53と、半導体基板4の第1面4hに設けられているマウント電極72と、を接合する。これにより、振動素子5は、半導体基板4の第1面4hに固定される。
【0055】
1.3 リッド形成工程
図4及び
図7に示すように、ステップS3において、リッド3を形成する。複数のリッド3が一体となったシリコンウエハSW2を準備し、ボッシュプロセス等のシリコンエッチング技法を用いて、シリコンウエハSW2の下面すなわちリッド3の下面に凹部32を形成する。凹部32を形成した後に、リッド3の凹部32の外縁に沿って設けられている当接面31に第2金属層62を形成し、リッド3の凹部32の底面321に第3金属層63を形成し、凹部32の側面322に第4金属層64を形成する。第2金属層62、第3金属層63、及び第4金属層64は、例えば、スパッタ技法を用いて、シリコンウエハSW2の下面の全面に金(Au)を成膜することにより同時に形成することができる。
【0056】
1.4 接合工程
図4及び
図8に示すように、ステップS4において、半導体基板4の第1面4hと、リッド3の当接面31と、を第1金属層61及び第2金属層62を介して接合する。接合方法としては、本実施形態では、上述したように活性化接合を用いている。活性化接合により、第1金属層61と、第2金属層62と、が接合し、金属層6が形成される。このようにして、シリコンウエハSW1と、シリコンウエハSW2と、が貼り合わされて、複数の振動デバイス1が一体的に形成された状態のシリコンウエハが得られる。
【0057】
なお、接合工程の後に、シリコンウエハを研磨、研削することにより薄板化し、振動デバイス1を薄型化しても構わない。具体的には、複数の振動デバイス1が一体的に形成された状態のシリコンウエハの上面すなわちリッド3の上面を研磨、研削して薄板化しても構わないし、シリコンウエハの下面すなわち半導体基板4の第2面4rを研磨、研削して薄板化しても構わない。
【0058】
本実施形態では、集積回路41及び振動素子5は、半導体基板4の第1面4hに設けられているため、半導体基板4の第1面4hと表裏関係にある第2面4rを研磨、研削することにより、振動デバイス1を薄型化することができる。このように、振動素子5を搭載する半導体基板4の第1面4hを、振動素子5を搭載するより前に研削、研磨する必要がないので、振動デバイス1を容易に薄型化することができる。
【0059】
なお、接合工程の後に半導体基板4の第2面4rを研磨、研削してシリコンウエハを薄板化する場合は、薄板化した後に、半導体基板4の第2面4rに絶縁層46及び外部端子70を形成する。
【0060】
1.5 個片化工程
図4及び
図9に示すように、ステップS5において、シリコンウエハから各振動デバイス1をダイシングなどの切断方法を用いて個片化する。
以上の製造工程により、振動デバイス1を製造することができる。
【0061】
以上述べた通り、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。集積回路41及び振動素子5が設けられている第1面4hを有する半導体基板4と、第1面4hに当接する当接面31を有し当接面31において第1面4hに接合されているリッド3と、第1面4hと当接面31との間に配置された金属層6と、を備え、第1面4hの法線方向であるZ方向から見た平面視において、集積回路41の少なくとも一部と、半導体基板4とリッド3との接合部である金属層6と、が重なっていることにより、振動デバイス1を小型化することができる。
【0062】
また、集積回路41及び振動素子5が設けられていない半導体基板4の第2面4rを研磨、研削することができるので、振動デバイス1を容易に薄型化することができる。
【0063】
なお、上述した振動デバイス1は、発振器や、加速度センサーや角速度センサーなどの慣性センサーとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…振動デバイス、2…パッケージ、3…リッド、4…半導体基板、4h…第1面、4r…第2面、5…振動素子、6…金属層、31…当接面、32…凹部、40…ベース基板、41…集積回路、42…絶縁層、45…配線、61…第1金属層、62…第2金属層、63…第3金属層、64…第4金属層、321…底面、322…側面、70…外部端子、400…貫通穴、402…貫通電極。