(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/42 20060101AFI20240925BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B41J11/42
B65H5/02 J
(21)【出願番号】P 2020179327
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】山口 健司
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-267422(JP,A)
【文献】特開2007-55749(JP,A)
【文献】特開2015-182224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B65H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送部に前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送させる時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる制御部と、
前記搬送ベルトのうち前記搬送方向とは逆の方向に戻る下部の表面を洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記洗浄部は、
洗浄に用いる洗浄液を貯留している洗浄槽と、
前記洗浄槽の内側に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触している状態で回転するブラシローラーと、
前記洗浄槽の内側において前記ブラシローラーから前記逆の方向に向かう位置に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面から前記洗浄液を除去するブレードと、
を含み、
前記印刷が行われる時に前記ブラシローラー及び前記ブレードが前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触しており、
前記搬送部は、前記従動ローラーにブレーキをかけることが可能なブレーキ部を含み、
前記制御部は、前記印刷の前に前記ブレーキ部で前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整するテンション調整処理を前記搬送部に実施させる、印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記駆動ローラーを逆転させることにより前記搬送ベルトを逆方向に回転させるバックフィード処理を前記搬送部に実施させ、
前記バックフィード処理の後、且つ、前記印刷の前に、前記テンション調整処理を前記搬送部に実施させ、
前記印刷の前に、前記ブレーキ部による前記従動ローラーへのブレーキを前記搬送部に解除させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを、前記搬送ベルトに対向する印刷実行領域と、前記搬送ベルトに対向しないフラッシング領域と、に移動させるヘッド移送部
と、
前記搬送部に前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送させる時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる制御部と、
を備え、
前記搬送部は、前記従動ローラーにブレーキをかけることが可能なブレーキ部を含み、
前記制御部は、前記印刷ヘッドが前記フラッシング領域に位置する期間を含む印刷準備期間において
前記ブレーキ部で前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整するテンション調整処理を前記搬送部に実施させる
、印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記テンション調整処理が実施される時における前記駆動ローラーの前記正転の加速度を、前記印刷が行われる時における前記駆動ローラーの前記正転の加速度に等しくなるように制御する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記印刷装置の電源オン時に前記テンション調整処理を前記搬送部に実施させる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送ベルトのうち前記搬送方向とは逆の方向に戻る下部の表面を洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記洗浄部は、
洗浄に用いる洗浄液を貯留している洗浄槽と、
前記洗浄槽の内側に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触している状態で回転するブラシローラーと、
前記洗浄槽の内側において前記ブラシローラーから前記逆の方向に向かう位置に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面から前記洗浄液を除去するブレードと、
を含み、
前記印刷が行われる時に前記ブラシローラー及び前記ブレードが前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触しており、
前記搬送部は、前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送する時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる、印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法であって、
前記印刷の前に前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整する、印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトを備える印刷装置、及び、該印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトを備える印刷装置として、例えば、シリアル方式の捺染プリンターが知られている。シリアル方式の捺染プリンターは、長尺な記録媒体の搬送方向と交差する幅方向へ移動する印刷ヘッドからインク滴を記録媒体に吐出する主走査、及び、記録媒体を搬送方向へ間欠的に搬送する副走査を繰り返す。捺染プリンターは、搬送ベルトのうち記録媒体の搬送方向へ進む上部に記録媒体を密着させ、搬送ベルトのうち搬送方向とは逆の方向に戻る下部に洗浄ユニットを上昇させることにより接触させる。印刷完了後、捺染プリンターは、洗浄ユニットを下降させ、搬送ベルトの下部に付着した水滴が次の印刷において記録媒体を濡らさないようにするために搬送ベルトを逆向きに若干回転させる。
【0003】
特許文献1には、第一のモーターに直結された駆動ローラーと、第二のモーターにより駆動ローラーとは逆回転させるように回転駆動される従動ローラーと、駆動ローラーと従動ローラーとによって保持された転写ベルト、とを備えるカラー画像形成装置が開示されている。駆動ローラーは、従動ローラーよりも摩擦係数が大きい。印刷中は、常に、駆動ローラーと従動ローラーの両方が回転駆動される。この場合、駆動ローラーが単独で回転駆動される場合に比べて大きな張力が駆動ローラーと従動ローラーとの間で転写ベルトに掛かるので、転写ベルトの波打ちが補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷完了後に装置メンテナンス等で搬送ベルトが逆向きに若干回転すると、搬送ベルトのうち記録媒体の密着面に緩みが生じる。この状態から印刷が開始されると、印刷開始時において印刷画像に記録ずれが発生する。特に、印刷装置がシリアル方式である場合、印刷開始時の記録ずれが目立ち易い。上述したカラー画像形成装置は、印刷開始時に発生する記録ずれが考慮されていない。
尚、上述のような問題は、シリアル方式の捺染プリンターに限らず、ライン方式の捺染プリンター等の種々の印刷装置にも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送部に前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送させる時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる制御部と、
前記搬送ベルトのうち前記搬送方向とは逆の方向に戻る下部の表面を洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記洗浄部は、
洗浄に用いる洗浄液を貯留している洗浄槽と、
前記洗浄槽の内側に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触している状態で回転するブラシローラーと、
前記洗浄槽の内側において前記ブラシローラーから前記逆の方向に向かう位置に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面から前記洗浄液を除去するブレードと、
を含み、
前記印刷が行われる時に前記ブラシローラー及び前記ブレードが前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触しており、
前記搬送部は、前記従動ローラーにブレーキをかけることが可能なブレーキ部を含み、
前記制御部は、前記印刷の前に前記ブレーキ部で前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整するテンション調整処理を前記搬送部に実施させる、態様を有する。
【0007】
また、本発明の印刷装置は、
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを、前記搬送ベルトに対向する印刷実行領域と、前記搬送ベルトに対向しないフラッシング領域と、に移動させるヘッド移送部と、
前記搬送部に前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送させる時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる制御部と、
を備え、
前記搬送部は、前記従動ローラーにブレーキをかけることが可能なブレーキ部を含み、
前記制御部は、前記印刷ヘッドが前記フラッシング領域に位置する期間を含む印刷準備期間において前記ブレーキ部で前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整するテンション調整処理を前記搬送部に実施させる、態様を有する。
【0008】
さらに、本発明の印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法は、
正転及び逆転が可能な駆動ローラーと、従動ローラーと、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに懸架され記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトとを含み、前記駆動ローラーの駆動により回転する前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体を前記駆動ローラーの前記正転により搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送ベルトに支持された前記記録媒体に印刷を行う印刷ヘッドと、
前記搬送ベルトのうち前記搬送方向とは逆の方向に戻る下部の表面を洗浄する洗浄部と、
を備え、
前記洗浄部は、
洗浄に用いる洗浄液を貯留している洗浄槽と、
前記洗浄槽の内側に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触している状態で回転するブラシローラーと、
前記洗浄槽の内側において前記ブラシローラーから前記逆の方向に向かう位置に配置され、前記搬送ベルトにおける下部の表面から前記洗浄液を除去するブレードと、
を含み、
前記印刷が行われる時に前記ブラシローラー及び前記ブレードが前記搬送ベルトにおける下部の表面に接触しており、
前記搬送部は、前記記録媒体を前記搬送方向へ搬送する時、前記駆動ローラーを正転させることにより、前記記録媒体が前記搬送方向へ搬送される順方向に前記搬送ベルトを回転させる、印刷装置における搬送ベルトのテンション調整方法であって、
前記印刷の前に前記従動ローラーにブレーキをかけた状態で前記駆動ローラーを正転させることにより前記搬送ベルトのテンションを調整する、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトを備える印刷装置の例を模式的に示す正面図。
【
図3】印刷ヘッドのノズル面の例を模式的に示す底面図。
【
図4】印刷装置の電気回路の構成例を模式的に示すブロック図。
【
図5】搬送部及び洗浄ユニットの動作例を模式的に示す図。
【
図6】印刷装置で行われる印刷処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図7】印刷装置で行われる調整パターン印刷処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図8】印刷装置が調整パターンを印刷する例を模式的に示す図。
【
図9】正転量を変えて印刷された複数の調整パターンの例を模式的に示す図。
【
図10】印刷装置で行われる調整処理の例を模式的に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~10に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図の各部材を認識可能な程度の大きさにするため各部材の尺度が実際とは異なることがあり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0012】
[態様1]
本技術の一態様に係る印刷装置1は、搬送部20、印刷ヘッド42、及び、制御部100を備える。前記搬送部20は、正転及び逆転が可能な駆動ローラー21と、従動ローラー22と、前記駆動ローラー21と前記従動ローラー22とに懸架され記録媒体ME0を支持する無端状の搬送ベルト23とを含み、前記駆動ローラー21の駆動により回転する前記搬送ベルト23に支持された前記記録媒体ME0を前記駆動ローラー21の前記正転により搬送方向D1へ搬送する。前記印刷ヘッド42は、前記搬送ベルト23に支持された前記記録媒体ME0に印刷を行う。前記制御部100は、前記搬送部20に前記記録媒体ME0を前記搬送方向D1へ搬送させる時、前記駆動ローラー21を正転させることにより、前記記録媒体ME0が前記搬送方向D1へ搬送される順方向D11に前記搬送ベルト23を回転させる。前記搬送部20は、前記従動ローラー22にブレーキをかけることが可能なブレーキ部BR0を含んでいる。前記制御部100は、
図5,6に例示するように、前記印刷の前に前記ブレーキ部BR0で前記従動ローラー22にブレーキをかけた状態で前記駆動ローラー21を正転させることにより前記搬送ベルト23のテンションを調整するテンション調整処理200を前記搬送部20に実施させる。
【0013】
印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0の支持部(例えば搬送ベルト23における上部の表面23a)に緩みがあっても搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、上記態様は、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制する印刷装置を提供することができる。
【0014】
ここで、記録媒体には、布帛、フィルム、等が含まれる。記録媒体は、搬送ベルトに支持されればよく、ロール状といった長尺状に限定されず、カット状でもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図5,6に例示するように、前記制御部100は、前記駆動ローラー21を逆転させることにより前記搬送ベルト23を逆方向D12に回転させるバックフィード処理220を前記搬送部20に実施させてもよい。また、前記制御部100は、前記バックフィード処理220の後、且つ、前記印刷の前に、前記テンション調整処理200を前記搬送部20に実施させてもよい。さらに、前記制御部100は、前記印刷の前に、前記ブレーキ部BR0による前記従動ローラー22へのブレーキを前記搬送部20に解除させてもよい。
バックフィード処理220が行われると、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0の支持部(23a)に緩みが生じる。バックフィード処理220の後、且つ、印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、上記態様は、バックフィードにより搬送ベルトにおける記録媒体の支持部に緩みが生じることによる記録ずれを抑制することができる。
【0016】
[態様3]
図2に例示するように、本印刷装置1は、前記印刷ヘッド42を、前記搬送ベルト23に対向する印刷実行領域AR1と、前記搬送ベルト23に対向しないフラッシング領域AR2と、に移動させるヘッド移送部45をさらに備えていてもよい。前記制御部100は、前記印刷ヘッド42が前記フラッシング領域AR2に位置する期間を含む印刷準備期間210において前記テンション調整処理200を前記搬送部20に実施させてもよい。本態様は、印刷ヘッド42がフラッシング領域AR2に位置する期間を含む印刷準備期間210においてテンション調整処理200が行われるので、テンション調整処理を実施する好適な例を提供することができる。
【0017】
[態様4]
前記制御部100は、前記テンション調整処理200が実施される時における前記駆動ローラー21の前記正転の加速度を、前記印刷が行われる時における前記駆動ローラー21の前記正転の加速度に等しくなるように制御してもよい。この態様は、印刷開始時に搬送ベルト23における記録媒体ME0の支持部が適度なテンションとなるので、テンション調整処理を実施する好適な例を提供することができる。
【0018】
[態様5]
図6に例示するように、前記制御部100は、前記印刷装置1の電源オン時に前記テンション調整処理200を前記搬送部20に実施させてもよい。印刷装置1の電源オン時、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0の支持部(23a)に緩みがある可能性がある。本態様は、印刷装置1の電源オン時に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、本態様は、印刷装置の電源オン時に搬送ベルトにおける記録媒体の支持部に緩みがあっても記録ずれを抑制することができる。
【0019】
[態様6]
また、本技術の一態様に係る印刷装置1における搬送ベルト23のテンション調整方法において、前記印刷装置1は、搬送部20、及び、印刷ヘッド42を備える。前記搬送部20は、前記記録媒体ME0を前記搬送方向D1へ搬送する時、前記駆動ローラー21を正転させることにより、前記記録媒体ME0が前記搬送方向D1へ搬送される順方向D11に前記搬送ベルト23を回転させる。本テンション調整方法は、
図5,6に例示するように、前記印刷の前に前記従動ローラー22にブレーキをかけた状態で前記駆動ローラー21を正転させることにより前記搬送ベルト23のテンションを調整する。
【0020】
印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0の支持部(23a)に緩みがあっても搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、上記態様は、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制するテンション調整方法を提供することができる。
【0021】
[態様7]
さらに、本技術の一態様に係る印刷装置1のための調整パターン印刷制御プログラムPR2において、前記印刷装置1は、搬送部20、及び、印刷ヘッド42を備える。前記搬送部20は、前記記録媒体ME0を前記搬送方向D1へ搬送する時、前記駆動ローラー21を正転させることにより、前記記録媒体ME0が前記搬送方向D1へ搬送される順方向D11に前記搬送ベルト23を回転させる。前記複数のノズル43は、第一ノズル列NA1と、前記第一ノズル列NA1から前記搬送方向D1へ所定距離L1ずれた第二ノズル列NA2と、を含んでいる。前記搬送部20は、前記従動ローラー22にブレーキをかけることが可能なブレーキ部BR0を含んでいる。
本調整パターン印刷制御プログラムPR2は、
図7に例示するように、バックフィード機能FU1、テンション調整機能FU2、第一印刷制御機能FU3、搬送制御機能FU4、及び、第二印刷制御機能FU5をコンピューター(例えば印刷装置1)に実現させる。前記バックフィード機能FU1は、前記搬送部20に前記駆動ローラー21を逆転させることにより前記搬送ベルト23を逆方向D12に所定量、回転させる第一処理を行う。前記テンション調整機能FU2は、前記第一処理の後、前記搬送部20に前記ブレーキ部BR0で前記従動ローラー22にブレーキをかけた状態で前記駆動ローラー21を設定量αi、正転させる第二処理を行う。前記第一印刷制御機能FU3は、前記第二処理の後、前記印刷ヘッド42に前記第一ノズル列NA1からインク滴48を吐出させることにより第一調整パターンPA1を前記記録媒体ME0に印刷させる第三処理を行う。前記搬送制御機能FU4は、前記第三処理の後、前記搬送部20に前記駆動ローラー21を正転させることにより前記記録媒体ME0を前記搬送方向D1へ前記所定距離L1、搬送させる第四処理を行う。前記第二印刷制御機能FU5は、前記第四処理の後、前記印刷ヘッド42に前記第二ノズル列NA2からインク滴48を吐出させることにより第二調整パターンPA2を前記記録媒体ME0に印刷させる第五処理を行う。
【0022】
調整パターン印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が設定量αi、正転するので、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0の支持部(23a)に緩みがあっても搬送ベルト23のテンションが調整される。この状態で第一ノズル列NA1からインク滴48が吐出されることにより第一調整パターンPA1が記録媒体ME0に印刷される。第一調整パターンPA1の印刷後、記録媒体ME0が搬送方向D1へ所定距離L1、搬送され、第一ノズル列NA1から搬送方向D1へ所定距離L1ずれた第二ノズル列NA2からインク滴48が吐出されることにより第二調整パターンPA2が記録媒体ME0に印刷される。印刷開始時の記録ずれが存在すると、第一調整パターンPA1と第二調整パターンPA2とがずれる。従って、本態様は、調整パターン印刷開始時に発生する記録ずれを抑制することができ、該記録ずれの程度を確認することができる。
【0023】
尚、本技術は、上述した印刷装置に対応する印刷方法、上述した調整パターン印刷制御プログラムに対応する印刷装置及び印刷方法、等に適用可能である。
【0024】
(2)記録媒体を支持する無端状の搬送ベルトを備える印刷装置の具体例:
図1は、記録媒体ME0を支持する無端状の搬送ベルト23を備える印刷装置1を模式的に例示している。
図2は、上から見た印刷装置1を模式的に例示している。
図1,2において、X1方向は左方向を示し、X2方向はX1方向と反対の右方向を示し、Y1方向はX1,X2方向に直交する後方向を示し、Y2方向はY1方向とは反対の前方向を示し、Z1方向はX1,X2方向及びY1,Y2方向に直交する上方向を示し、Z2方向はZ1方向とは反対の下方向を示している。ここで、X1,X2方向をX方向と総称し、Y1,Y2方向をY方向と総称し、Z1,Z2方向をZ方向と総称する。
【0025】
図1,2に示す印刷装置1は、シリアル方式のインクジェットプリンターであり、記録媒体ME0としての布帛に印刷ヘッド42からインク滴を吐出することにより捺染を行う捺染プリンターである。印刷装置1は、搬送部20、媒体密着部60、印刷部40、乾燥ユニット14、洗浄ユニット50、これらの各部を制御する制御部100、等を備えている。印刷装置1の各部は、フレーム部90に取り付けられている。
【0026】
搬送部20は、媒体供給部10、駆動ローラー21、サーボモーターMT0、従動ローラー22、ブレーキ部BR0、無端状の搬送ベルト23、媒体回収部15、等を備えている。記録媒体ME0は、媒体供給部10から媒体回収部15に至る搬送経路C1に沿って搬送される。搬送ベルト23上における記録媒体ME0の搬送方向D1はX1方向であり、搬送方向D1とは逆のバックフィード方向D2はX2方向である。
【0027】
媒体供給部10は、円筒状又は円柱状の供給軸部11、軸受部12、及び、供給軸部11を回転駆動させる不図示の回転駆動部を備え、ロール状の記録媒体ME0を繰り出す。記録媒体ME0としての布帛の材料には、綿、絹、ウール、ポリエステル繊維といった化学繊維、混紡、等を用いることができる。供給軸部11は、軸受部12に対して取り外し可能に取り付けられ、円周方向に回転可能である。予め供給軸部11に巻かれた帯状の記録媒体ME0は、供給軸部11と共に軸受部12に取り付け可能である。軸受部12は、供給軸部11の軸線方向の両端を回転可能に支持している。回転駆動部は、制御部100による制御に従って、記録媒体ME0が送り出される方向に供給軸部11を回転させる。媒体供給部10から繰り出された記録媒体ME0は、搬送ローラー13で方向転換して搬送ベルト23上に供給される。
【0028】
搬送ベルト23は、帯状のベルトの両端部が接続された無端状である。搬送ベルト23は、駆動ローラー21と従動ローラー22とに懸架され、搬送方向D1へ進む上部の表面23a上で記録媒体ME0を支持する。搬送ベルト23の上部が搬送方向D1であるX1方向へ進むと、搬送ベルト23の下部はX2方向へ進む。搬送ベルト23は、従動ローラー22と駆動ローラー21との間の部分が水平になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。搬送部20は、搬送ベルト23のテンションを調整するテンションローラー等、ローラー21,22以外に搬送ベルト23を支持するローラーといった支持部をさらに備えていてもよい。搬送ベルト23の表面23aには、記録媒体ME0を粘着させる粘着層29が設けられている。搬送ベルト23における上部の表面23aは、後述する媒体密着部60で粘着層29に密着された記録媒体ME0を支持する支持面として機能する。これにより、伸縮性のある布帛等の記録媒体ME0に対してインク滴を精度よく着弾させることができる。
尚、搬送ベルトは、粘着層を備える搬送ベルトに限定されず、静電気で記録媒体を搬送ベルトに吸着させる静電吸着式の搬送ベルト等でもよい。
【0029】
駆動ローラー21は、回転の中心線を搬送ベルト23の幅方向D3であるY方向に向けて、印刷ヘッド42を含む印刷部40よりも下流に配置されている。ここで、幅方向D3は、搬送経路C1の幅方向でもある。下流に配置されているとは、平面視において印刷部40から搬送方向D1に駆動ローラー21が配置されていることを意味する。駆動ローラー21の外周面は、搬送ベルト23の内周面23bに接触している。駆動ローラー21の外周面と搬送ベルト23の内周面23bとの間に摩擦があるので、駆動ローラー21は、サーボモーターMT0からのトルクに応じて回転することにより搬送ベルト23を回転させる。駆動ローラー21は、正転及び逆転が可能である。駆動ローラー21は、サーボモーターMT0からの正転方向D21へのトルクに応じて正転することにより搬送ベルト23を順方向D11に回転させ、サーボモーターMT0からの逆転方向D22へのトルクに応じて逆転することにより搬送ベルト23を逆方向D12に回転させる。
【0030】
従動ローラー22は、回転の中心線をY方向に向けて、印刷ヘッド42を含む印刷部40よりも上流に配置されている。ここで、上流に配置されているとは、印刷部40を基準として搬送方向D1とは反対側に従動ローラー22が配置されていることを意味する。従動ローラー22の外周面は、搬送ベルト23の内周面23bに接触している。従動ローラー22の外周面と搬送ベルト23の内周面23bとの間に摩擦があるので、従動ローラー22は、搬送ベルト23が回転することにより回転する。従動ローラー22は、搬送ベルト23が順方向D11に回転することにより駆動ローラー21の正転方向D21と同じ向きの正転方向へ回転し、搬送ベルト23が逆方向D12に回転することにより駆動ローラー21の逆転方向D22と同じ向きの逆転方向へ回転する。従って、駆動ローラー21の正転により搬送ベルト23が順方向D11に回転すると正転方向へ回転し、駆動ローラー21の逆転により搬送ベルト23が逆方向D12に回転すると逆転方向へ回転する。駆動ローラー21の駆動により回転する搬送ベルト23に支持された記録媒体ME0は、駆動ローラー21の正転により搬送方向D1へ搬送される。従動ローラー22と駆動ローラー21との間において搬送ベルト23に支持されている記録媒体ME0に印刷ヘッド42がインク滴を吐出することにより、記録媒体ME0に印刷が行われる。
【0031】
従動ローラー22には、ブレーキ部BR0によりブレーキをかけることが可能である。従動ローラー22が回転してない時にブレーキ部BR0が従動ローラー22にブレーキをかけると、搬送ベルト23が回転しようとしても従動ローラー22は回転しない。搬送部20は、従動ローラー22にブレーキがかかっていない状態で駆動ローラー21の駆動により回転する搬送ベルト23に支持された記録媒体ME0を駆動ローラー21の正転により搬送方向D1へ搬送する。
【0032】
印刷後の記録媒体ME0は、搬送ベルト23から送り出され、搬送ローラー18,19で方向転換して媒体回収部15に巻き取られる。搬送ローラー18は、印刷画像が形成された記録媒体ME0を搬送ベルト23の粘着層29から剥離させる機能を有する。
【0033】
印刷装置1は、搬送ローラー18と搬送ローラー19との間に乾燥ユニット14を備えている。乾燥ユニット14は、記録媒体ME0に付着したインクを乾燥させる。乾燥ユニット14には、赤外線ヒーター等を用いることができる。
【0034】
媒体回収部15は、円筒状又は円柱状の巻取り軸部16、軸受部17、及び、巻取り軸部16を回転駆動させる不図示の回転駆動部を備え、印刷後の記録媒体ME0をロール状に巻き取ることにより回収する。巻取り軸部16は、軸受部17に対して取り外し可能に取り付けられ、円周方向に回転可能である。巻取り軸部16に巻かれた帯状の記録媒体ME0は、巻取り軸部16と共に取り外し可能である。軸受部17は、巻取り軸部16の軸線方向の両端を回転可能に支持している。回転駆動部は、制御部100による制御に従って、記録媒体ME0が巻き取られる方向に巻取り軸部16を回転させる。
【0035】
印刷部40よりも上流に配置された媒体密着部60は、円筒状又は円柱状の押圧ローラー61、押圧ローラー駆動部62、及び、ローラー支持部63を備え、搬送ベルト23における上部の表面23aに記録媒体ME0を密着させる。押圧ローラー61は、Y方向に向いた軸線を中心として円周方向に回転可能であり、搬送ベルト23の表面23aに記録媒体ME0を押し付ける。ローラー支持部63は、該ローラー支持部63と押圧ローラー61とで搬送ベルト23を挟むように搬送ベルト23の内周面23bに接触している。押圧ローラー駆動部62は、押圧ローラー61をZ2方向へ押圧しながらX1方向及びX2方向へ押圧ローラー61を移動させる。搬送ベルト23に重ね合された記録媒体ME0は、押圧ローラー61とローラー支持部63とに挟まれることにより搬送ベルト23の粘着層29に密着する。
【0036】
印刷部40は、搬送ベルト23からZ1方向に配置され、搬送ベルト23の表面23a上に載置された記録媒体ME0に印刷を行う。印刷部40は、複数色のインク滴を吐出する印刷ヘッド42を含むヘッドユニット41、該ヘッドユニット41を搭載したキャリッジ46、該キャリッジ46を搬送ベルト23の幅方向D3であるY方向に移動させるヘッド移送部45、等を備えている。ヘッド移送部45は、長手方向をY方向に向けたガイドレール45a,45b、不図示の移送機構、及び、不図示の動力源を備えている。ガイドレール45a,45bは、搬送ベルト23から幅方向D3における外側に垂直に設置されているフレーム部90a,90bの間に架け渡されている。ヘッドユニット41を搭載したキャリッジ46は、ガイドレール45a,45bの間でY1方向及びY2方向へ移動可能にガイドレール45a,45bに支持されている。Y方向は、シリアル方式の印刷装置1において印刷ヘッド42を往復移動させる主走査方向である。移送機構には、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構、リニアガイド機構、等を用いることができる。動力源には、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーター、等の種々のモーターを用いることができる。動力源と移送機構は、制御部100による制御に従って、キャリッジ46をY方向へ移動させる。
【0037】
ヘッド移送部45は、印刷ヘッド42を、搬送ベルト23に対向する印刷実行領域AR1と、搬送ベルト23に対向しない2箇所のフラッシング領域AR2と、に移動させる。各フラッシング領域AR2は、印刷実行領域AR1から幅方向D3の外側にある。各フラッシング領域AR2には、印刷ヘッド42に対向する位置において印刷ヘッド42から吐出されたインク滴を受けるインク受け47が設置されている。
【0038】
洗浄ユニット50は、搬送ベルト23の下に設置され、搬送ベルト23のうち搬送方向D1とは逆の方向に戻る下部の表面23aを洗浄する。洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52、及び、キャスター部53を備えている。キャスター部53は、床面99に沿って洗浄ユニット50を一体的に移動させ、所定の位置に洗浄ユニット50を固定させることができる。押圧部52は、洗浄部51を昇降させる昇降装置であり、例えば、エアーシリンダー56とボールブッシュ57とを備える。
【0039】
洗浄部51は、洗浄槽54、ブラシローラー58、及び、ブレード55を備えている。洗浄槽54は、搬送ベルト23の表面23aに付着したインクや異物の洗浄に用いる洗浄液を貯留している。洗浄液には、水、アルコール水溶液といった水溶性溶剤、等を用いることができ、必要に応じて界面活性剤や消泡剤が添加されてもよい。ブラシローラー58は、洗浄槽54の内側に配置され、搬送ベルト23における下部の表面23aに接触している状態で回転可能である。ブラシローラー58が回転すると、洗浄液が搬送ベルト23の表面23aに供給され、ブラシローラー58が搬送ベルト23の表面23aをこする。これにより、搬送ベルト23の表面23aに付着したインクや記録媒体ME0としての布帛の繊維などが表面23aから取り除かれる。ブレード55は、ブラシローラー58からX2方向において洗浄槽54の内側に配置され、順方向D11に回転する搬送ベルト23の表面23aから洗浄液を除去する。
【0040】
図3は、印刷ヘッド42のノズル面42fを模式的に例示している。ノズル面42fは、印刷ヘッド42において搬送ベルト23又はインク受け47に対向する面である。
図3に示す印刷ヘッド42は、第一チップCH1、第二チップCH2、第三チップCH3、及び、第四チップCH4に分かれている。各チップCH1~CH4は、搬送ベルト23の幅方向D3へ並べられた複数のノズル列NA0を有している。
図3に示す複数のノズル列NA0は、シアンのインク滴を吐出するシアンノズル列NAc、マゼンタのインク滴を吐出するマゼンタノズル列NAm、イエローのインク滴を吐出するイエローノズル列NAy、及び、ブラックのインク滴を吐出するブラックノズル列NAkを含んでいる。各ノズル列NA0は、幅方向D3と交差する並び方向D4へ並べられた複数のノズル43を含んでいる。各ノズル43は、インク滴を吐出する。
図3に示すノズル列NA0に含まれる複数のノズル43の並び方向D4は幅方向D3と直交しているが、並び方向D4は幅方向D3と直交せず斜めに交差していてもよい。また、
図3に示す各ノズル列NA0に含まれる複数のノズル43は一列に並べられているが、ノズル列に含まれる複数のノズルは千鳥状に並べられてもよい。
【0041】
図3に示す印刷ヘッド42は、搬送方向D1において隣り合うチップ同士が1ノズル分重なるようにチップCH1~CH4が千鳥状に配置されている。すなわち、第一チップCH1のX2方向側の端部にあるノズル43と第二チップCH2のX1方向側の端部にあるノズル43とが搬送方向D1において同じ位置にあり、第二チップCH2のX2方向側の端部にあるノズル43と第三チップCH3のX1方向側の端部にあるノズル43とが搬送方向D1において同じ位置にあり、第三チップCH3のX2方向側の端部にあるノズル43と第四チップCH4のX1方向側の端部にあるノズル43とが搬送方向D1において同じ位置にある。印刷ヘッド42は、幅方向D3への走査においてチップCH1のX1方向側の端部にあるノズル43からチップCH4のX2方向側の端部にあるノズル43までの範囲にインク滴を吐出することにより、搬送ベルト23に支持された前記記録媒体ME0に印刷を行う。むろん、搬送方向D1におけるチップ同士のノズル43の重なりは、1ノズル分に限定されず、2ノズル分以上でもよく、無くてもよい。
【0042】
尚、
図8,9に示す調整パターンPA1,PA2を説明する際の便宜上、第四チップCH4に配置されたノズル列NA0を第一ノズル列NA1と呼び、第一チップCH1に配置されたノズル列NA0を第二ノズル列NA2と呼ぶことにする。第二ノズル列NA2は、第一ノズル列NA1から搬送方向D1へ3チップ分である所定距離L1、ずれている。調整パターンPA1,PA2の詳細は、後述する。
【0043】
図4は、印刷装置1の電気回路の構成を模式的に例示している。
図4に示す印刷装置1は、上述したヘッドユニット41、ヘッド移送部45、サーボモーターMT0、及び、ブレーキ部BR0に加えて、制御部100、電源、及び、電源スイッチSW1を備えている。電源は、印刷装置1の各部に電力を供給する。電源スイッチSW1は、電源をオフからオンに切り替えたりオンからオフに切り替えたりするためのスイッチである。制御部100は、I/F102、プロセッサーであるCPU103、バッファーを含む半導体メモリー104、記憶部105、及び、制御回路106を備えている。ここで、I/Fはインターフェイスの略称であり、CPUはCentral Processing Unitの略称である。I/F102には、入力装置110が接続されている。むろん、印刷装置1は、
図4に示されていない要素を含んでいてもよい。
【0044】
入力装置110は、印刷対象の画像を含む印刷データ等のデータを印刷装置1に入力するためのホスト装置である。入力装置110には、タブレット型端末を含むパーソナルコンピューターといったコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、等を用いることができる。入力装置110に接続されたI/F102は、入力装置110から印刷データ等のデータを受信して半導体メモリー104に格納したり、印刷装置1の状態を表す情報等の情報を入力装置110に送信したりする。入力装置110は、印刷装置1と別体で設けられることに限定されず、印刷装置1と一体に設けられてもよい。
【0045】
CPU103は、印刷装置1の印刷動作の制御を行うための演算処理装置である。半導体メモリー104は、ROMとRAMを含み、搬送ベルト23の回転を含む印刷を制御するための印刷制御プログラムPR1、
図8,9に示す調整パターンPA1,PA2の印刷を制御するための調整パターン印刷制御プログラムPR2、等を保持している。ここで、ROMはRead Only Memoryの略称であり、RAMはRandom Access Memoryの略称である。RAMは、受信された印刷データ等を格納するためのバッファーを含んでいる。プログラムPR1,PR2は、ROMに書き込まれていてもよいし、記憶部105から読み出されてRAMに格納されてもよい。記憶部105は、搬送ベルト23のテンション調整処理が行われる時の駆動ローラー21の正転の所定量α等を記憶し、プログラムPR1,PR2を記憶してもよい。記憶部105には、フラッシュメモリーといったEEPROM等の不揮発性半導体メモリー、ハードディスク等の磁気記憶装置、等を用いることができる。ここで、EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略称である。半導体メモリー104や記憶部105は、プログラムPR1,PR2を記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体となる。CPU103は、RAMをワークエリアとして使用しながらプログラムPR1,PR2等のプログラムに従って印刷装置1の各部を制御する。
【0046】
制御回路106は、CPU103の制御に従って、ヘッドユニット41、ヘッド移送部45、サーボモーターMT0、及び、ブレーキ部BR0の動作を制御する。制御部100は、制御回路106からの制御信号に従ってヘッドユニット41の印刷ヘッド42の駆動を制御することにより印刷ヘッド42にインク滴を吐出させる。制御部100は、制御回路106からの制御信号に従ってヘッド移送部45の動力源の駆動を制御することによりキャリッジ46をY1方向及びY2方向へ移動させる。これにより、印刷ヘッド42が搬送ベルト23の幅方向D3へ往復移動する。制御部100は、制御回路106からの制御信号に従ってサーボモーターMT0の駆動を制御することにより駆動ローラー21を正転方向D21及び逆転方向D22に回転させる。制御部100は、制御回路106からの制御信号に従ってブレーキ部BR0の駆動を制御することにより、従動ローラー22にブレーキをかけたり従動ローラー22のブレーキを解除させたりする。
【0047】
印刷装置1では、印刷ヘッド42を幅方向D3へ移動させながら印刷ヘッド42にインク滴を吐出させる主走査と、駆動ローラー21の正転による搬送ベルト23の順方向D11への回転により記録媒体ME0を搬送方向D1へ搬送させる副走査と、が概ね交互に繰り返される。副走査は主走査が行われる主走査期間のうち印刷ヘッド42がインク滴を吐出しない期間に行われてもよいし、印刷ヘッド42がインク滴を吐出しない期間の主走査は副走査が行われる副走査期間に行われてもよい。主走査期間において印刷ヘッド42から吐出されたインク滴が記録媒体ME0に着弾すると、記録媒体ME0にドットが形成される。主走査と副走査の繰り返しにより、ドットパターンで表現される印刷画像が記録媒体ME0に形成される。
【0048】
図5は、本具体例に想到した背景、及び、テンション調整処理200を模式的に例示している。
図5には、搬送部20及び洗浄ユニット50の動作例が示されている。
印刷が行われている状態ST1では、サーボモーターMT0が駆動ローラー21を正転方向D21へ回転させ、これにより搬送ベルト23が順方向D11に回転し、搬送ベルト23の表面23aに支持されている記録媒体ME0が搬送方向D1へ搬送される。従って、搬送部20は、記録媒体ME0を搬送方向D1へ搬送する時、駆動ローラー21を正転させることにより、記録媒体ME0が搬送方向D1へ搬送される順方向D11に搬送ベルト23を回転させる。尚、ブレーキがかかっていない従動ローラー22は、正転方向D21と同じ向きの正転方向へ回転する。洗浄ユニット50は、洗浄部51を上昇させており、搬送ベルト23における下部の表面23aをブラシローラー58及びブレード55で洗浄している。
【0049】
印刷完了後、印刷装置1のメンテナンス状態ST2では、洗浄ユニット50が洗浄部51を下降させている。ここで、搬送ベルト23をバックフィードさせずに次の印刷時に洗浄ユニット50が洗浄部51を上昇させると、搬送ベルト23の表面23aのうち直前の印刷でブレード55により水滴が付着した箇所にブレード55が接触するため、表面23aに残っている水滴の一部がブレード55で除去されずに搬送ベルト23とともに順方向D11に回転する。これにより、ブレード55で除去されない水滴が記録媒体ME0を濡らしてしまい、新しいデザインの印刷が開始された時に記録媒体ME0に形成される印刷画像の画質を低下させてしまう。そこで、搬送部20は、制御部100の制御に従って、駆動ローラー21を逆転方向D22へ所定量β、回転させることにより搬送ベルト23を逆方向D12に回転させるバックフィード処理220を実施する。駆動ローラー21の逆転の所定量βは、搬送ベルト23が逆方向D12に少し、例えば、5~20mm程度回転する逆転量とすることができる。バックフィード処理220の後、次の印刷時に洗浄ユニット50が洗浄部51を上昇させると、搬送ベルト23の表面23aのうち直前の印刷でブレード55により水滴が付着した箇所よりも上流の位置にブレード55が接触するため、次の印刷時における搬送ベルト23の順方向D11への回転の際に、搬送ベルト23の表面23aに残っている水滴がブレード55によって除去される。
【0050】
ただ、ブレーキ部BR0にブレーキがかかっていなくても、駆動ローラー21が逆転すると、搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が緩んでしまう。この状態から新しいデザインの印刷が開始されると、搬送ベルト23における上部の表面23aが前後左右に大きく変動するため、印刷開始時において搬送ベルト23のテンションが安定するまで印刷画像に記録ずれが発生する。印刷装置1がシリアル方式である場合、最初の主走査である1パス目では状態ST2のように搬送ベルト23の上部が緩んでいる状態で記録媒体ME0に印刷が行われ、次の主走査である2パス目では状態ST1のように搬送ベルト23の上部にある程度のテンションがかかっている状態で記録媒体ME0に印刷が行われる。状態ST2と状態ST1とで搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部のテンションが大きく変化するため、記録媒体ME0に1パス目で形成される画像と2パス目で形成される画像とにずれが生じる。これにより、細線が太くなったり色味が変わったりする等の画質低下が発生する。従って、印刷装置1がシリアル方式である場合、印刷開始時の記録ずれが目立ち易い。
【0051】
本具体例では、印刷の前に従動ローラー22にブレーキをかけた状態で駆動ローラー21を所定量α、正転させるテンション調整処理200を実施することにより、搬送ベルト23のテンションを調整し、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制することにしている。
尚、印刷中に常に従動ローラーが駆動ローラーと逆向きに回転駆動されると、印刷中に従動ローラーを回転駆動するための電力、及び、従動ローラーの回転駆動に打ち勝つ程度に駆動ローラーを回転駆動する電力が必要である。本具体例は、これらの電力を必要としないので、低消費電力で印刷開始時に発生する記録ずれを抑制することができる。
【0052】
搬送部20は、テンション調整処理200を実施するため、従動ローラー22にブレーキをかけることが可能なブレーキ部BR0を備えている。ブレーキ部BR0には、電磁ブレーキといった電磁式ブレーキ、ディスクブレーキやドラムブレーキといった機械式ブレーキ、等を用いることができる。上述した状態ST1,ST2において、ブレーキ部BR0は従動ローラー22のブレーキを解除している。
図5に示す「OFF」は、従動ローラー22のブレーキが解除されていることを意味している。
【0053】
バックフィード処理220の実施後、搬送ベルト23のテンション調整状態ST3では、テンション調整処理200が実施され、ブレーキ部BR0が従動ローラー22のブレーキをかけ、サーボモーターMT0が駆動ローラー21を正転方向D21へ所定量α、回転させている。
図5に示す「ON」は、従動ローラー22にブレーキがかけられていることを意味している。所定量αは、駆動ローラー21の制御量であり、制御部100からサーボモーターMT0に出される。駆動ローラー21の正転の所定量αは、搬送ベルト23が順方向D11に少し、例えば、1~10mm程度回転する正転量とすることができる。従動ローラー22にブレーキがかかった状態での駆動ローラー21の正転により、搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が順方向D11へ引っ張られ、搬送ベルト23の上部の緩みが解消される。従って、印刷装置1における搬送ベルト23のテンション調整方法は、印刷の前に従動ローラー22にブレーキをかけた状態で駆動ローラー21を正転させることにより搬送ベルト23のテンションを調整する工程を含んでいる。尚、テンション調整状態ST3において、洗浄ユニット50が洗浄部51を上昇させている。
【0054】
制御部100は、テンション調整処理200が実施される時におけるサーボモーターMT0の正転方向D21へのトルクを、印刷が行われる時におけるサーボモーターMT0の正転方向D21へのトルクとなるように制御することにしている。すなわち、制御部100は、テンション調整処理200が実施される時における駆動ローラー21の正転の加速度を、印刷が行われる時における駆動ローラー21の正転の加速度に等しくなるように制御する。これにより、搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が適度なテンションとなる。
【0055】
テンション調整処理200の実施後、ブレーキ部BR0が従動ローラー22のブレーキを解除し、洗浄ユニット50が洗浄部51を上昇させる。本実施形態では、洗浄ユニット50による洗浄部51の上昇をテンション調整処理200の実施後に行っているが、バックフィード後に上昇させるようにしてもよい。次の印刷が行われている状態ST4では、搬送ベルト23の上部のテンションが維持され、サーボモーターMT0が駆動ローラー21を正転させ、これにより搬送ベルト23が順方向D11に回転し、搬送ベルト23の表面23aに支持されている記録媒体ME0が搬送方向D1へ搬送される。テンション調整状態ST3から新しいデザインの印刷が開始されることにより、搬送ベルト23における上部の表面23aの変動が少なく、印刷開始時に発生する記録ずれが抑制される。なお、テンション調整処理200の実施後に洗浄部51を上昇させる場合は、搬送ベルト23の表面23aに残っている水滴を確実に除去するために、α=<βとするのがよい。
【0056】
(3)印刷装置で行われる印刷処理の具体例:
次に、
図6等を参照して、印刷装置1で行われる印刷処理の例を説明する。
図6に示す印刷処理は、制御部100が主体となって行う。
図4に示す電源スイッチSW1がオンにされると、印刷処理が開始される。
図6において、ステップS104~106は、テンション調整処理200に対応している。ステップS102~S108は、
図2に示すフラッシング領域AR2に印刷ヘッド42が位置する期間を含む印刷準備期間210に対応している。ステップS114は、バックフィード処理220に対応している。以下、「ステップ」の記載を省略し、括弧内にステップの符号を付すことにする。
【0057】
まず、制御部100は、
図1,2に示す印刷部40に印刷前フラッシングを実行させる(S102)。印刷前フラッシングは、インクの増粘等によるインク滴吐出不良を防ぐために、印刷前に印刷ヘッド42をフラッシング領域AR2に移動させインク受け47に向けて印刷ヘッド42にインク滴を吐出させることを意味する。印刷ヘッド42は、S102~S108の印刷準備期間210の少なくとも一部の期間においてフラッシング領域AR2に位置する。
【0058】
印刷前フラッシングの開始後、制御部100は、従動ローラー22にブレーキをかける指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0で従動ローラー22にブレーキをかけた状態にさせる(S104)。この状態において、制御部100は、駆動ローラー21を所定量α、正転させる指令をサーボモーターMT0に出すことにより、駆動ローラー21を所定量α、正転させる(S106)。制御部100は、
図4に示す記憶部105に記憶されている所定量αをS106の処理に使用することができる。また、制御部100は、テンション調整処理200が実施される時における駆動ローラー21の正転の加速度を、印刷が行われる時における駆動ローラー21の正転の加速度に等しくなるように制御する。
従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転することにより、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0を支持する上部が順方向D11へ引っ張られ、搬送ベルト23の上部の緩みが解消される。この状態は、
図5に示すテンション調整状態ST3に相当する。このようにして、制御部100は、印刷の前にブレーキ部BR0で従動ローラー22にブレーキをかけた状態で駆動ローラー21を正転させることにより搬送ベルト23のテンションを調整するテンション調整処理200を搬送部20に実施させる。テンション調整処理200が印刷装置1の電源オン時に行われる場合、制御部100は、電源オン時にテンション調整処理200を搬送部20に実施させることになる。
【0059】
テンション調整処理200の後、制御部100は、従動ローラー22のブレーキを解除させる指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0による従動ローラー22へのブレーキを解除させる(S108)。また、制御部100は、洗浄ユニット50に洗浄部51を上昇させる。尚、洗浄部51の上昇は、人手が介在してもよい。
以上のようにして、制御部100は、印刷ヘッド42がフラッシング領域AR2に位置する期間を含む印刷準備期間210においてテンション調整処理200を搬送部20に実施させる。尚、印刷前フラッシングは、S110の印刷実行処理の前に完了していればよい。
【0060】
その後、制御部100は、印刷ヘッド42にインク滴を吐出させる主走査と搬送部20に記録媒体ME0を搬送方向D1へ搬送させる副走査とを繰り返させることにより印刷を実行させる(S110)。この状態は、
図5に示す印刷状態ST1に相当する。このようにして、制御部100は、搬送部20に記録媒体ME0を搬送方向D1へ搬送させる時、駆動ローラー21を正転させることにより、記録媒体ME0が搬送方向D1へ搬送される順方向D11に搬送ベルト23を回転させる。
【0061】
印刷完了後、制御部100は、洗浄ユニット50に洗浄部51を下降させる(S112)。尚、洗浄部51の下降は、人手が介在してもよい。
【0062】
洗浄部51の下降後、制御部100は、駆動ローラー21を所定量β、逆転させる指令をサーボモーターMT0に出すことにより、駆動ローラー21を所定量β、逆転させ、搬送ベルト23を逆方向D12に回転させる(S114)。この状態は、
図5に示すメンテナンス状態ST2に相当する。駆動ローラー21が逆転したことにより、搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が緩んでいる。制御部100は、次の印刷を実行する場合(S116)、処理をS102に戻す。以下、S114のバックフィード処理220が実施されてから次の印刷が行われるまでの処理を説明する。
【0063】
バックフィード処理220の後、制御部100は、
図1,2に示す印刷部40に印刷前フラッシングを実行させる(S102)。印刷前フラッシングの開始後、制御部100は、従動ローラー22にブレーキをかける指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0で従動ローラー22にブレーキをかけた状態にさせる(S104)。この状態において、制御部100は、駆動ローラー21を所定量α、正転させる指令をサーボモーターMT0に出すことにより、駆動ローラー21を所定量α、正転させる(S106)。これにより、搬送ベルト23のうち記録媒体ME0を支持する上部が順方向D11へ引っ張られ、搬送ベルト23の上部の緩みが解消される。この状態は、
図5に示すテンション調整状態ST3に相当する。テンション調整処理200がバックフィード処理220の後に行われる場合、制御部100は、バックフィード処理220の後、且つ、印刷の前にテンション調整処理200を搬送部20に実施させることになる。
【0064】
テンション調整処理200の後、制御部100は、従動ローラー22のブレーキを解除させる指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0による従動ローラー22へのブレーキを解除させる(S108)。また、制御部100は、洗浄ユニット50に洗浄部51を上昇させる。尚、洗浄部51の上昇は、人手が介在してもよい。
【0065】
その後、制御部100は、印刷ヘッド42にインク滴を吐出させる主走査と搬送部20に記録媒体ME0を搬送方向D1へ搬送させる副走査とを繰り返させることにより印刷を実行させる(S110)。この状態は、
図5に示す印刷状態ST4に相当する。印刷完了後、制御部100は、洗浄ユニット50に洗浄部51を下降させる(S112)。尚、洗浄部51の下降は、人手が介在してもよい。
【0066】
洗浄部51の下降後、制御部100は、バックフィード処理220を搬送部20に実施させる(S114)。制御部100は、次の印刷を実行するか否かを判断し(S116)、次の印刷を実行する場合に処理をS102に戻し、次の印刷を実行しない場合は
図6に示す印刷処理を終了させる。尚、次の印刷を実行しない場合、直前のS114のバックフィード処理220を省略することが可能である。
【0067】
以上より、バックフィード処理220により搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部に緩みが生じても、印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、バックフィードにより搬送ベルト23における記録媒体ME0の支持部に緩みが生じることによる記録ずれが抑制される。
また、印刷装置1の電源オン時に搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部に緩みがあっても、印刷前に従動ローラー22にブレーキがかかっている状態で駆動ローラー21が正転するので、搬送ベルト23のテンションが調整される。従って、電源オン時に搬送ベルト23における記録媒体ME0の支持部に緩みがあっても記録ずれが抑制される。
【0068】
(4)テンション調整処理における駆動ローラーの正転量を決める具体例:
テンション調整処理200における駆動ローラー21の正転の所定量αは、
図7に例示する調整パターン印刷処理を行い、
図10に示す調整処理を行うことにより、設定することができる。
【0069】
図7は、印刷装置1で行われる調整パターン印刷処理を模式的に例示している。調整パターン印刷処理は、
図8,9に例示する調整パターンPA1,PA2を印刷する指示を入力装置110等が受け付けた時に開始し、制御部100が主体となって行う。
図8は、印刷装置1が調整パターンPA1,PA2を印刷する様子を模式的に例示している。
図9は、正転量αiを変えて印刷された複数の調整パターンを模式的に例示している。分かり易く示すため、
図8,9には、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックのいずれか一つのノズル列NA0のみ示されている。
図10は、印刷装置1で行われる調整処理を模式的に例示している。調整処理は、
図7に示す調整パターン印刷処理が終了した時に開始し、制御部100が主体となって行う。
図7において、S202,S218は、第一処理を行うバックフィード機能FU1に対応している。S204~S210は、第二処理を行うテンション調整機能FU2に対応している。S212は、第三処理を行う第一印刷制御機能FU3に対応している。S214は、第四処理を行う搬送制御機能FU4に対応している。S216は、第五処理を行う第二印刷制御機能FU5に対応している。
【0070】
図7に示す調整パターン印刷処理が開始すると、制御部100は、駆動ローラー21を所定量β、逆転させる指令をサーボモーターMT0に出すことにより、駆動ローラー21を所定量β、逆転させ、搬送ベルト23を逆方向D12に回転させる(S202)。これにより、
図5に示すメンテナンス状態ST2のように搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が緩んでいる状態となる。
【0071】
搬送ベルト23のバックフィード後、制御部100は、テンション調整時の正転量αiを設定する(S204)。正転量αiは、テンション調整処理を実施する時における駆動ローラー21の正転の設定量であり、例えば、1mm、2mm、3mm、…のように、搬送ベルト23の順方向D11への移動量に対応する駆動ローラー21の回転量とすることができる。以下、正転量αiを設定量αiと呼ぶことにする。設定量αiの設定後、制御部100は、従動ローラー22にブレーキをかける指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0で従動ローラー22にブレーキをかけた状態にさせる(S206)。この状態において、制御部100は、駆動ローラー21を設定量αi、正転させる指令をサーボモーターMT0に出すことにより、駆動ローラー21を設定量αi、正転させる(S208)。これにより、搬送ベルト23の上部の緩みが設定量αiに応じて軽減される。S206~S208は、上述したテンション調整処理200に対応している。
【0072】
駆動ローラー21の正転後、制御部100は、従動ローラー22のブレーキを解除させる指令をブレーキ部BR0に出すことにより、ブレーキ部BR0による従動ローラー22へのブレーキを解除させる(S210)。
【0073】
その後、制御部100は、
図8の上部に示すように、印刷ヘッド42に第四チップCH4の第一ノズル列NA1からインク滴48を吐出させることにより第一調整パターンPA1を記録媒体ME0に印刷させる(S212)。
図8の上部には、第一調整パターンPA1が印刷された状態ST11が示されている。調整パターンPA1,PA2の印刷は、駆動ローラー21の正転の所定量αを決定するために行われるので、印刷ヘッド42がY1方向へ移動している時のみ記録媒体ME0に調整パターンPA1,PA2を形成する単方向印刷が好ましい。むろん、単方向印刷は、印刷ヘッド42がY2方向へ移動している時のみ記録媒体ME0に調整パターンPA1,PA2を形成する印刷でもよい。第一調整パターンPA1と第二調整パターンPA2とは同じ形状であることが好ましいが、これに限定されない。
図8に示す調整パターンPA1,PA2は、搬送方向D1及び幅方向D3におけるずれを見易くするため、十字状とされている。むろん、調整パターンPA1,PA2の形状は、十字状に限定されず、四角形状といった多角形状等でもよい。調整パターンPA1,PA2の色は、視認し易いブラックといった単色でもよいし、複数色の組合せでもよい。シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックのそれぞれについて調整パターンPA1,PA2が印刷されると、各色のインク滴吐出不良を確認することができる。
【0074】
第一調整パターンPA1の印刷後、制御部100は、記録媒体ME0を搬送方向D1へ所定距離L1、搬送させるように駆動ローラー21を正転させる指令をサーボモーターMT0に出す(S214)。すなわち、制御部100は、搬送部20に駆動ローラー21を正転させることにより搬送ベルト23を順方向D11に回転させ、記録媒体ME0を搬送方向D1へ所定距離L1、搬送させる。所定距離L1は、搬送方向D1において第四チップCH4の第一ノズル列NA1と第一チップCH1の第二ノズル列NA2とがずれている距離である。
【0075】
その後、制御部100は、
図8の下部に示すように、印刷ヘッド42に第一チップCH1の第二ノズル列NA2からインク滴48を吐出させることにより第二調整パターンPA2を記録媒体ME0に印刷させる(S216)。
図8の下部には、第二調整パターンPA2が印刷された状態ST12が示されている。搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部の緩みが適切に解消されていると、第一調整パターンPA1の印刷位置と第二調整パターンPA2の印刷位置とがほぼ一致する。搬送ベルト23の上部の緩みが解消されていないと、第二調整パターンPA2の印刷位置が第一調整パターンPA1の印刷位置からずれる。
【0076】
第二調整パターンPA2の印刷後、制御部100は、記録媒体ME0をバックフィード方向D2へ所定距離L1、搬送させるように駆動ローラー21を逆転させる指令をサーボモーターMT0に出す(S218)。すなわち、制御部100は、搬送部20に駆動ローラー21を逆転させることにより搬送ベルト23を逆方向D12に回転させ、記録媒体ME0をバックフィード方向D2へ所定距離L1、搬送させる。これにより、
図5に示すメンテナンス状態ST2のように搬送ベルト23において記録媒体ME0を支持する上部が緩んでいる状態となる。
【0077】
その後、制御部100は、駆動ローラー21の正転の設定量αiを変えて次の調整パターンPA1,PA2を印刷させるか否かに応じて処理を分岐させる(S220)。次の調整パターンPA1,PA2を印刷する場合、制御部100は、S204~S220の処理を繰り返す。制御部100は、S212,S216において、既に印刷された調整パターンPA1,PA2と重ならない位置に新たな調整パターンPA1,PA2を印刷する制御を行えばよい。例えば、設定量αiが1mm、2mm、及び、3mmの順に設定されたとする。
図9には、設定量α1=1mmである場合の調整パターンPA1,PA2が印刷された状態ST21、設定量α2=2mmである場合の調整パターンPA1,PA2が印刷された状態ST22、及び、設定量α3=3mmである場合の調整パターンPA1,PA2が印刷された状態ST23が示されている。
次の調整パターンPA1,PA2を印刷しない場合、制御部100は、
図7に示す調整パターン印刷処理を終了させる。
【0078】
駆動ローラー21の正転の所定量αは、
図10に示す調整処理に従って決定することができる。
調整処理が開始すると、制御部100は、テンション調整処理200を実施する時の正転の所定量αを取得する(S302)。例えば、制御部100は、入力装置110から所定量αの入力を受け付けることにより所定量αを取得することができる。
図9に示す調整パターンPA1,PA2を見たユーザーは、設定量α1,α2,α3の中から調整パターンPA1,PA2のずれが最も少ない設定量α3を所定量αとして入力装置110に操作入力してもよい。また、印刷装置1又は入力装置110に接続された撮像装置が全設定量αiの調整パターンPA1,PA2を撮像し、印刷装置1又は入力装置110が撮像装置から取得した撮影画像に対して画像解析を行うことによりずれが最も少ない調整パターンPA1,PA2に対応する設定量α3を取得してもよい。
【0079】
所定量αの取得後、制御部100は、取得された所定量αを
図4に示す記憶部105に記憶させ(S304)、調整処理を終了させる。
図6に示す印刷処理が行われると、記憶部105に記憶された所定量αがS106の処理において使用される。
【0080】
以上説明したように、印刷開始時の記録ずれが存在すると、第一調整パターンPA1と第二調整パターンPA2とがずれる。本具体例は、
図9に示す調整パターンPA1,PA2の印刷物に基づいて、テンション調整時の駆動ローラー21の正転量に応じた記録ずれの程度を確認することができる。また、本具体例は、テンション調整処理200を実施する時に駆動ローラー21の正転の所定量αを調整パターンPA1,PA2の記録ずれが少なくなるように決定することができるので、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制することができる。
【0081】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、印刷装置は、シリアル方式のインクジェットプリンターに限定されず、記録媒体の全幅にわたって搬送ベルトの幅方向へ並べられた複数のノズルを有するライン方式のインクジェットプリンター等でもよい。
記録媒体に画像を形成する色材の種類は、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの組合せに限定されない。色材には、シアンよりも低濃度のライトシアン、マゼンタよりも低濃度のライトマゼンタ、イエローよりも高濃度のダークイエロー、ブラックよりも低濃度のライトブラック、オレンジ、グリーン、画質向上用の無着色の色材、等が含まれてもよい。また、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの一部の色材を使用しない場合にも、本技術を適用可能である。
【0082】
尚、印刷装置1の電源オン時にテンション調整処理200を行わずにバックフィード処理220の後にテンション調整処理200を行う場合、バックフィード処理220の後にテンション調整処理200を行わずに印刷装置1の電源オン時にテンション調整処理200を行う場合、等の場合でも、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制する基本的な効果が得られる。
【0083】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、印刷開始時に発生する記録ずれを抑制する技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1…印刷装置、20…搬送部、21…駆動ローラー、22…従動ローラー、23…搬送ベルト、23a…表面、40…印刷部、41…ヘッドユニット、42…印刷ヘッド、42f…ノズル面、43…ノズル、45…ヘッド移送部、46…キャリッジ、47…インク受け、48…インク滴、50…洗浄ユニット、51…洗浄部、55…ブレード、58…ブラシローラー、60…媒体密着部、100…制御部、103…CPU、104…半導体メモリー、105…記憶部、106…制御回路、110…入力装置、200…テンション調整処理、210…印刷準備期間、220…バックフィード処理、AR1…印刷実行領域、AR2…フラッシング領域、BR0…ブレーキ部、C1…搬送経路、CH1~CH4…チップ、D1…搬送方向、D2…バックフィード方向、D3…幅方向、D4…並び方向、D11…順方向、D12…逆方向、D21…正転方向、D22…逆転方向、FU1…バックフィード機能、FU2…テンション調整機能、FU3…第一印刷制御機能、FU4…搬送制御機能、FU5…第二印刷制御機能、L1…所定距離、ME0…記録媒体、MT0…サーボモーター、NA0…ノズル列、NA1…第一ノズル列、NA2…第二ノズル列、PA1…第一調整パターン、PA2…第二調整パターン、PR1…印刷制御プログラム、PR2…調整パターン印刷制御プログラム、SW1…電源スイッチ。