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特許7559505情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240925BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240925BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240925BHJP
   D06P 7/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06F3/12 357
G06F3/12 364
G06F3/12 308
G06F3/12 378
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 451
D06P5/30
D06P7/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020182404
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072771
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恒之
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-276673(JP,A)
【文献】特開2017-132070(JP,A)
【文献】特開2006-234869(JP,A)
【文献】特開2000-290882(JP,A)
【文献】特開2019-162777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/12
B41J29/00-29/70
B41J2/01;2/205;2/21
D06P5/30;7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、
前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備え
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記画像データは、前記布帛に描画された画像の解像度以上となる解像度で電子化したデータであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像データは、前記布帛の表面を電子化したデータと、前記布帛の裏面を電子化したデータとを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記画質パラメーターと、前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターとの対応関係を示す導出用データを記憶する記憶部と、
前記導出用データに基づいて、ユーザーが指定する前記画質パラメーターと対応する前記推奨パラメーターを導出する制御部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、
前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備え
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、
前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含み、
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置が、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、
前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含み、
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、
前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させ
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、
前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、
前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、
前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させ
前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、布帛に捺染処理を行う捺染プリンタシステムが記載されている。捺染プリンタシステムは、例えば、インクジェット装置と、前処理装置と、後処理装置とを備える。ユーザーは、例えば、ユーザーのクライアントが要求する画質に合わせて、各装置のパラメーターを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-174943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クライアントが要求する画質に合わせて各装置のパラメーターを設定するためには、その画質を客観的に評価することが重要である。画質には、鮮鋭度、粒状性など多々あるが、そうした画質を客観的に評価することはユーザーにとっては難しい場合がある。この場合、ユーザーは、クライアントから提供されるサンプルデータを目で確認することによって、クライアントが要求する画質を主観的に評価する。
【0005】
クライアントが要求する画質をユーザーが主観的に評価する場合、ユーザーとクライアントとの間で画質の評価が一致しないことがある。すなわち、ユーザーは、クライアントが要求する画質を把握できないことがある。この場合、ユーザーは、クライアントが要求する画質を得るまで各装置のパラメーターを変えながら捺染処理を繰り返すことになり、ユーザーの作業が煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する情報処理装置は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決する情報処理装置は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備える。
【0008】
上記課題を解決する情報処理方法は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含む。
【0009】
上記課題を解決する情報処理方法は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出したインクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含む。
【0010】
上記課題を解決するプログラムは、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させる。
【0011】
上記課題を解決するプログラムは、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】捺染システムを示すブロック図。
図2】捺染処理の手順を示すフローチャート。
図3】第1実施形態の情報処理装置を示すブロック図。
図4】第1実施形態の情報処理装置の動作を示すフローチャート。
図5図4とは別の動作を示すフローチャート。
図6】第1実施形態の情報処理装置と接続されるサーバーの動作を示すフローチャート。
図7】第2実施形態の情報処理装置を示すブロック図。
図8】第2実施形態の情報処理装置の動作を示すフローチャート。
図9】第2実施形態の情報処理装置と接続されるサーバーの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、情報処理装置の第1実施形態について図を参照しながら説明する。情報処理装置は、捺染システムが行う捺染処理に関する情報を処理する装置である。まず、捺染システムについて説明する。
【0014】
図1に示すように、捺染システム10は、例えば、前処理装置11と、インクジェット装置12と、後処理装置13とで構成される。捺染システム10は、前処理装置11とインクジェット装置12とで構成されてもよいし、インクジェット装置12と後処理装置13とで構成されてもよい。すなわち、捺染システム10は、インクジェット装置12と、前処理装置11及び後処理装置13の少なくとも一方とを備える。
【0015】
捺染システム10は、布帛99に捺染処理を行うシステムである。捺染システム10は、例えば、前処理、描画処理、後処理の3つの処理によって、布帛99に捺染処理を行う。前処理は、前処理装置11によって行われる。描画処理は、インクジェット装置12によって行われる。後処理は、後処理装置13によって行われる。
【0016】
捺染処理は、例えば、前処理、描画処理、後処理の順で布帛99に処理を行うことによって実現される。捺染システム10が前処理装置11とインクジェット装置12とで構成される場合、捺染処理は、前処理と描画処理とによって実現される。捺染システム10がインクジェット装置12と後処理装置13とで構成される場合、捺染処理は、描画処理と後処理とによって実現される。すなわち、捺染処理は、描画処理と、前処理及び後処理の少なくとも一方とによって実現される。
【0017】
捺染処理は、一のユーザーが所有する装置で実現されてもよいし、他のユーザーが所有する装置と協働することによって実現されてもよい。例えば、第1ユーザーが所有する前処理装置11と、第1ユーザーとは異なる第2ユーザーが所有するインクジェット装置12及び後処理装置13とによって、捺染処理が実現されてもよい。この場合、第1ユーザーが布帛99に前処理を行い、第2ユーザーが布帛99に描画処理及び後処理を行うことによって、捺染処理が実現される。
【0018】
捺染システム10において、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13の装置間で、連携が取られていてもよいし、取られていなくともよい。すなわち、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13は、相互に情報を授受してもよいし、相互に情報を授受しなくてもよい。
【0019】
前処理装置11は、画像が描画される前の布帛99に前処理を行う装置である。前処理とは、描画処理の前に行われる処理である。前処理装置11は、例えば、塗布部14と、矯正部15と、前処理乾燥部16とを備える。
【0020】
塗布部14は、布帛99に前処理液を塗布するように構成される。塗布部14は、例えば、前処理液を貯留する貯留槽を含む。例えば、貯留槽内を布帛99が通過することによって、布帛99に前処理液が塗布される。前処理液は、描画処理においてインクを布帛99に定着させるための液体である。前処理液は、インクに対する布帛99の親水性に影響する。
【0021】
矯正部15は、布帛99を矯正するように構成される。矯正部15は、例えば、布帛99に力を加えることによって、布帛99を構成する経糸又は緯糸を引き伸ばす。これにより、布帛99が矯正される。矯正部15は、例えば、布帛99が巻き掛けられるローラー、布帛99の両側を保持するピン、クリップなどを含む。矯正部15は、いわゆるテンターである。布帛99に前処理液が塗布されると、布帛99に縮みが生じることがある。そのため、矯正部15は、布帛99を引き伸ばすことによって、布帛99を矯正する。
【0022】
前処理乾燥部16は、布帛99を乾燥させるように構成される。前処理乾燥部16は、前処理装置11が備える乾燥部である。前処理乾燥部16は、例えば、布帛99を加熱することによって、前処理液が塗布された布帛99を乾燥させる。前処理乾燥部16は、例えば、ヒーターを含む。
【0023】
インクジェット装置12は、布帛99に描画処理を行う装置である。描画処理とは、布帛99に画像を描画する処理のことである。インクジェット装置12は、布帛99にインクを吐出することによって画像を描画する。インクジェット装置12は、例えば、絵、模様などの絵柄画像を描画する。インクジェット装置12は、例えば、搬送部17と、ヘッド18と、キャリッジ19とを備える。
【0024】
搬送部17は、布帛99を搬送するように構成される。搬送部17は、例えば、ベルト、ローラーなどである。搬送部17は、例えば、布帛99を間欠的に搬送する。
ヘッド18は、布帛99にインクを吐出するように構成される。ヘッド18は、インクが吐出されるノズル21を有する。ヘッド18のノズル解像度は、例えば、600dpiである。そのため、ヘッド18は、解像度が600dpiの画像を布帛99に描画できる。
【0025】
キャリッジ19は、ヘッド18を搭載する。キャリッジ19は、布帛99に対して走査するように構成される。キャリッジ19が走査しながらヘッド18がインクを布帛99に吐出することによって、布帛99に画像が描画、すなわち印刷される。このように、インクジェット装置12は、いわゆるシリアルタイプのプリンターである。
【0026】
キャリッジ19は、例えば、インクを収容する容器22を装着可能に構成される。容器22は、例えば、インクカートリッジである。容器22がキャリッジ19に装着されると、容器22からヘッド18にインクが供給される。容器22には、収容するインクの種類を示すためのコード23が付されている。コード23は、例えば、バーコードである。
【0027】
容器22は、キャリッジ19に搭載されることに限らず、例えばチューブを介してヘッド18と接続されてもよい。容器22は、例えば、インクジェット装置12が別途備える収容容器にインクを補充するための容器、いわゆるインクボトルであってもよい。
【0028】
後処理装置13は、画像が描画された後の布帛99に後処理を行う装置である。後処理とは、描画処理の後に行われる処理のことである。後処理装置13は、例えば、後処理乾燥部24と、スチーム部25と、洗浄部26とを備える。
【0029】
後処理乾燥部24は、布帛99を乾燥させるように構成される。後処理乾燥部24は、後処理装置13が備える乾燥部である。後処理乾燥部24は、例えば、布帛99を加熱することによって、インクが吐出された布帛99を乾燥させる。後処理乾燥部24は、例えば、ヒーターを含む。後処理乾燥部24は、前処理乾燥部16と同一の乾燥部であってもよい。すなわち、前処理装置11と後処理装置13とは、乾燥部を共有してもよい。
【0030】
スチーム部25は、布帛99に高温のスチームを供給するように構成される。スチーム部25が布帛99をスチームで加熱すると、布帛99に吐出されたインクの定着が促進される。
【0031】
洗浄部26は、布帛99を洗浄するように構成される。洗浄部26は、例えば、洗浄液を貯留する洗浄槽を含む。例えば、洗浄槽内を布帛99が通過することによって、布帛99が洗浄される。洗浄液は、例えば、水である。布帛99が洗浄されると、布帛99に定着していないインク、前処理液などが布帛99から除去される。
【0032】
捺染システム10は、例えば、図2に示すフローチャートに沿って、捺染処理を行う。捺染処理は、例えば、ユーザーによって開始される。
図2に示すように、捺染システム10は、まず、ステップS11において、塗布部14によって布帛99に前処理液を塗布する。
【0033】
捺染システム10は、ステップS12において、矯正部15によって布帛99を矯正する。
捺染システム10は、ステップS13において、前処理乾燥部16によって布帛99を乾燥させる。
【0034】
捺染システム10は、ステップS14において、搬送部17によって搬送される布帛99にヘッド18からインクを吐出させることによって、布帛99に画像を描画する。このとき、ヘッド18とともにキャリッジ19が駆動する。
【0035】
捺染システム10は、ステップS15において、後処理乾燥部24によって布帛99を乾燥させる。このとき、捺染システム10は、布帛99に吐出されたインクの裏移りが抑制される程度に布帛99を乾燥させる。すなわち、ステップS15では、捺染システム10は、布帛99に吐出されたインクの表面が乾燥する程度に、布帛99を乾燥させる。
【0036】
捺染システム10は、ステップS16において、スチーム部25によって布帛99にスチームを供給する。
捺染システム10は、ステップS17において、洗浄部26によって布帛99を洗浄する。
【0037】
捺染システム10は、ステップS18において、後処理乾燥部24によって布帛99を乾燥させる。ステップS18では、ステップS15とは異なり、捺染システム10は、布帛99を完全に乾燥させる。その結果、洗浄液で濡れた布帛99が乾燥される。ステップS18の処理が完了すると、捺染処理が完了する。
【0038】
次に、情報処理装置30について説明する。
図1に示すように、情報処理装置30は、捺染システム10と電気的に接続される。例えば、情報処理装置30は、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13と電気的に接続される。そのため、情報処理装置30は、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13と情報を授受可能である。
【0039】
情報処理装置30は、捺染処理に関する情報を処理する装置である。情報処理装置30は、捺染システム10を制御する制御装置を兼ねてもよい。この場合、ユーザーは、情報処理装置30を介して捺染システム10を制御する。情報処理装置30は、捺染システム10の捺染処理に関する捺染パラメーターを制御する。捺染パラメーターは、例えば、前処理装置11の前処理に関する前処理パラメーター、インクジェット装置12の描画処理に関する描画処理パラメーター、後処理装置13の後処理に関する後処理パラメーター、などを含む。
【0040】
前処理パラメーターとは、例えば、塗布部14による前処理液の塗布量、塗布部14による前処理液の塗布時間、前処理液の種類、矯正部15が布帛99に加える力の方向、矯正部15が布帛99に加える力の大きさ、矯正部15が布帛99に力を加える時間、前処理乾燥部16による乾燥時間、前処理乾燥部16による乾燥温度などである。
【0041】
描画処理パラメーターとは、例えば、搬送部17による布帛99の搬送速度、ヘッド18と布帛99との距離、キャリッジ19の移動速度、キャリッジ19のパス数、印刷モード、単方向印刷又は双方向印刷を示す印刷方向などである。
【0042】
後処理パラメーターとは、例えば、後処理乾燥部24による乾燥時間、後処理乾燥部24による乾燥温度、スチーム部25が供給するスチームの温度、スチーム部25によるスチームの供給時間、洗浄部26による洗浄時間、洗浄水の温度などである。
【0043】
情報処理装置30は、例えば、パーソナルコンピューターである。情報処理装置30は、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0044】
図3に示すように、情報処理装置30は、例えば、入力部31と、出力部32と、取得部33と、制御部34と、記憶部35と、送信部36と、受信部37とを備える。
入力部31は、ユーザーが情報処理装置30にデータを入力するためのインターフェースである。そのため、入力部31は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力装置38と接続される。ユーザーは、入力装置38を操作することによって、入力部31を通じて情報処理装置30にデータを入力する。入力部31を通じて入力されたデータは、例えば、記憶部35に記憶される。
【0045】
ユーザーは、例えば、入力部31を通じて、クライアントに関する情報を示すクライアントデータを入力する。クライアントに関する情報とは、例えば、クライアントの国、クライアントの名称などである。ユーザーは、例えば、入力部31を通じて、捺染処理された布帛99の用途に関する情報を示す用途データを入力する。用途に関する情報とは、例えば、女性服、子供服、インテリアなどの用途をあらわす情報である。ユーザーは、クライアントデータ、用途データに限らず、入力部31を通じてその他の情報をデータとして情報処理装置30に入力してもよい。
【0046】
出力部32は、情報処理装置30からデータを出力するためのインターフェースである。出力部32は、例えば、ディスプレイ、スピーカーなどの出力装置39と接続される。例えば、ユーザーは、出力装置39を確認することによって、出力部32を通じて情報処理装置30から出力されるデータを把握できる。
【0047】
取得部33は、外部からデータを取得するためのインターフェースである。取得部33は、例えば、画像取込装置41、秤量装置42、読取装置43、温湿度計44、ネットワーク45、捺染システム10などと接続される。取得部33は、その他に、例えば、USBフラッシュドライブ、メモリーカードなどの記憶媒体などと接続されてもよい。取得部33は、接続された対象からデータを取得する。取得部33が取得したデータは、例えば、記憶部35に記憶される。
【0048】
取得部33は、例えば、捺染処理に関する情報を示すデータを取得する。取得部33は、例えば、捺染システム10が捺染処理を行うにあたって、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13に設定された捺染パラメーターを捺染システム10から取得する。
【0049】
画像取込装置41は、布帛99を画像として取り込む装置である。画像取込装置41は、例えば、カメラ、スキャナーなどである。画像取込装置41は、布帛99を撮影又はスキャンすることによって、布帛99を画像として取り込む。このとき、画像取込装置41は、布帛99を画像として電子化した画像データを生成する。したがって、取得部33は、画像取込装置41を通じて布帛99を画像として電子化した画像データを取得する。
【0050】
ユーザーは、画像取込装置41を使用することによって、布帛99を画像として適宜取り込む。例えば、ユーザーは、捺染処理が行われる前の布帛99、捺染処理が行われた後の布帛99、前処理が行われた後であって且つ描画処理が行われる前の布帛99、描画処理が行われた後であって且つ後処理が行われる前の布帛99などを、画像取込装置41によって画像として取り込む。ユーザーは、例えば、捺染処理が行われる前、捺染処理が行われた後、前処理が行われた後であって且つ描画処理が行われる前、描画処理が行われた後であって且つ後処理が行われる前、のタイミングで布帛99を画像として取り込む。したがって、画像取込装置41は、捺染処理が行われる前の布帛99を画像として電子化した捺染前画像データ、捺染処理が行われた後の布帛99を画像として電子化した捺染後画像データ、前処理が行われた後であって且つ描画処理が行われる前の布帛99を画像として電子化した描画前画像データ、後処理が行われる前であって且つ描画処理が行われた後の布帛99を画像として電子化した描画後画像データ、を生成する。したがって、取得部33は、布帛99を画像として電子化した画像データとして、捺染前画像データ、捺染後画像データ、描画前画像データ、描画後画像データを取得できる。本例の取得部33は、画像データのうち少なくとも捺染後画像データを取得する。
【0051】
画像取込装置41は、例えば、インクジェット装置12が描画した画像の解像度以上となる解像度で、布帛99を画像として電子化する。この場合、画像データは、布帛99に描画された画像の解像度以上となる解像度で電子化したデータである。こうすると、後述する画像解析において適した画像データとすることができる。画像取込装置41は、布帛99をフルカラーの画像で取り込むが、モノクロの画像で取り込んでもよいし、グレースケールの画像で取り込んでもよい。
【0052】
ユーザーは、画像取込装置41によって布帛99を画像として取り込む際、布帛99の表面と、布帛99の裏面とを画像として取り込んでもよい。この場合、画像データは、布帛99の表面を電子化したデータと、布帛99の裏面を電子化したデータとを含む。
【0053】
ユーザーは、画像取込装置41によって布帛99を画像として取り込む際、布帛99を引き伸ばした状態の画像と、布帛99を引き伸ばしていない状態の画像とを取り込んでもよい。この場合、画像データは、布帛99を引き伸ばした状態で電子化したデータと、布帛99を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含む。例えば、ユーザーは、布帛99を手で引き伸ばしながら、その布帛99を画像として取り込む。ユーザーは、経糸に沿う方向に布帛99を引き伸ばしてもよいし、緯糸に沿う方向に布帛99を引き伸ばしてもよいし、経糸及び緯糸に対して斜めに布帛99を引き伸ばしてもよい。
【0054】
秤量装置42は、布帛99を秤量する装置である。ユーザーは、秤量装置42を使用することによって、布帛99の単位面積当たりの重さを測る。これにより、取得部33は、秤量装置42を通じて布帛99の単位面積当たりの重さを示す秤量データを取得する。
【0055】
読取装置43は、例えば、容器22に付されたコード23を読み取る装置である。読取装置43は、例えば、リーダーである。ユーザーは、容器22に付されたコード23を読取装置43に読み取らせる。取得部33は、例えば、記憶部35に記憶されるデータベースを参照することによって、読取装置43が読み取ったコード23と対応するインクデータを取得する。インクデータとは、例えば、反応インク、分散インク、酸性インクなどインクの種類を示すデータである。取得部33は、読取装置43により容器22に付されたコード23を読み取ることによって、容器22が収容するインクの種類を示すインクデータを取得する。
【0056】
温湿度計44は、温度及び湿度を測定するセンサーである。温湿度計44は、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13が設置された環境の温度及び湿度を測定する。これにより、取得部33は、捺染システム10が設置される環境の温度及び湿度を示す温湿度データを取得する。
【0057】
取得部33は、ユーザーから入力されたデータに基づいて、ネットワーク45を通じてデータを取得してもよい。例えば、取得部33は、ユーザーから入力された布帛99の型番を示すデータに基づいて、ネットワーク45上のデータベースからその布帛99に関する情報を示す布帛データを取得してもよい。布帛データとは、布帛99を構成する糸の太さ、密度、表面粗さなど布帛99の特徴量を示すデータである。布帛データは、布帛99の特徴量を数値化したデータであってもよいし、布帛99の特徴量に基づいて大別された布帛99の種類を示すデータであってよい。
【0058】
例えば、取得部33は、ユーザーから入力された装置の型番を示すデータに基づいて、ネットワーク45上のデータベースからその装置に関する情報を示す装置データを取得してもよい。装置に関する情報とは、その装置の仕様、設定などに関する情報を含む。すなわち、取得部33は、前処理装置11の装置情報を示す装置データを取得してもよい。取得部33は、インクジェット装置12の装置情報を示す装置データを取得してもよい。取得部33は、後処理装置13の装置情報を示す装置データを取得してもよい。
【0059】
取得部33は、インクジェット装置12が布帛99に描画する画像の元データである元画像データを、例えば記憶媒体、ネットワーク45などから取得する。すなわち、インクジェット装置12は、この元画像データに基づいて布帛99に画像を描画する。元画像データは、描画処理によって描画される画像の元データであるともいえる。元画像データは、例えば、クライアントからユーザーに提供されるデータである。
【0060】
取得部33は、画像データ、秤量データ、インクデータ、布帛データ、装置データ、捺染パラメーター、元画像データに限らず、その他のデータを取得してもよい。取得部33は、ネットワーク45を通じてデータを取得してもよいし、入力部31を通じてデータを取得してもよい。取得部33が取得するデータの種別と、そのデータを取得する手段とについて、上述した例はあくまで一例である。そのため、取得部33は、上述した種別以外のデータを取得してもよいし、上述した手段以外の手段でデータを取得してもよい。
【0061】
取得部33は、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13の使用状況を示す状況データを取得してもよい。状況データは、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13の環境情報を含む使用状況を示すデータである。
【0062】
状況データは、例えば、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13が稼働してから経過した時間である稼働時間、捺染システム10が設置された環境の温度及び湿度、洗浄部26で使用する洗浄液の水質などを示すデータである。状況データは、環境情報を示すデータとして、温湿度データを含む。取得部33は、状況データとして、例えば、捺染システム10から各装置の稼働時間を示す稼働データを取得する。取得部33は、環境情報を示すデータとして、例えば、洗浄液の水質をユーザーが入力部31を通じて入力することによって、洗浄液の水質を示す水質データを取得する。
【0063】
取得部33は、環境情報を示すデータとして、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13が設置された標高を示す標高データを取得してもよい。取得部33は、例えば、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13が設置された標高をユーザーが入力部31を通じて入力することによって、標高データを取得する。取得部33は、ネットワーク45から標高データを取得してもよいし、取得部33に接続される気圧計から換算することによって標高データを取得してもよい。
【0064】
制御部34は、例えば、上述したCPUである。制御部34は、情報処理装置30を統括的に制御する。制御部34は、記憶部35に記憶されるプログラムを実行することによって、各種構成を制御する。制御部34は、例えば、捺染システム10を制御することもできる。制御部34は、例えば、捺染システム10に捺染パラメーターを送信することによって、捺染システム10を制御する。
【0065】
記憶部35は、例えば、上述したメモリーである。記憶部35は、制御部34が実行するプログラムの他に、例えば、入力部31を通じて入力されたデータ、出力部32を通じて出力されるデータ、取得部33が取得したデータなどを記憶する。記憶部35は、例えば、データセット46と、導出用データ47とを記憶する。
【0066】
記憶部35は、1又は複数のデータセット46を記憶している。データセット46は、一の捺染処理に関する複数のデータをまとめたセットである。データセット46は、入力部31を通じて入力されたデータ、取得部33を通じて取得したデータなどを含む。すなわち、記憶部35は、入力部31を通じて入力されたデータ、取得部33が取得したデータなどを、データセット46として記憶する。記憶部35は、例えば、表1に示すデータセット46を記憶する。
【0067】
【表1】
表1に示すように、データセット46には、例えば、クライアントデータ、布帛データ、元画像データ、捺染パラメーター、捺染後画像データ、評価データなどの複数のデータが関連付けられている。表1には、クライアントデータ、布帛データ、元画像データ、捺染パラメーター、捺染後画像データ、評価データが記載されているが、実際には、上述したインクデータ、用途データ、秤量データ、状況データなど、入力部31を通じて入力されたデータ及び取得部33が取得したその他のデータも関連付けられている。
【0068】
評価データとは、その評価データと関連付いた捺染後画像データの電子化前である捺染後画像に対するクライアントの評価を示すデータである。評価データは、例えば、入力部31を通じて入力される。クライアントは、例えば、捺染後画像の画質について3段階で評価する。表1に示す例では、第1データセット及び第4データセットの評価データが評価A、第2データセットの評価データが評価B、第3データセットの評価データが評価Cを示している。
【0069】
評価Aは、画質が十分であるとクライアントが評価したことを示している。評価Bは、画質が少し不十分であるとクライアントが評価したことを示している。評価Cは、画質が不十分であるとクライアントが評価したことを示している。
【0070】
データセット46は、一の捺染処理によって得られた捺染後画像を電子化した画像データと、その捺染後画像に対する評価データと、その捺染処理に付随する各種データ及び各種パラメーターとがまとめられたセットである。導出用データ47については、送信部36、受信部37の後に説明する。
【0071】
送信部36は、サーバー50にデータを送信するためのインターフェースである。送信部36は、捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信する。送信部36は、データセット46をサーバー50に送信してもよい。
【0072】
受信部37は、サーバー50からデータを受信するためのインターフェースである。受信部37は、元画像データに対する捺染後画像データの画質を示す画質パラメーターを受信する。この画質パラメーターは、送信部36がサーバー50に送信した捺染後画像データと元画像データとに基づいてサーバー50が生成するパラメーターである。受信部37が受信した画質パラメーターは、記憶部35に記憶されてもよい。
【0073】
画質パラメーターとは、画像の画質を定量化したパラメーターである。すなわち、画質パラメーターとは、画像の画質を客観的な指標で評価したパラメーターである。送信部36が捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信すると、サーバー50において、元画像データを基準に捺染後画像データの画質が客観的な指標で評価される。サーバー50において元画像データに対して捺染後画像データの画質が定量化された画質パラメーターを、受信部37が受信する。
【0074】
画質には、例えば、黒濃度、ガマット、裏抜け、にじみ、鮮鋭性、色味、粒状性、バンディング、階調などがある。画質パラメーターは、こうした画質を数値であらわしたパラメーターである。
【0075】
画像の画質を画質パラメーターとして評価することによって、ユーザーとクライアントとが画質を同じ指標で評価できる。画像の画質を主観的に評価する場合、ユーザーとクライアントとで画質の評価が異なる場合がある。この場合には、ユーザーが、クライアントの求める画質を把握できず、捺染処理が円滑に進まないおそれがある。そのため、画像の画質を定量化することが重要である。画像の画質を定量化する方法については後述する。
【0076】
ユーザーは、受信部37が受信した画質パラメーターと、その画質パラメーターと関連する評価データとのデータ群から、画質に対するクライアントの評価基準を推定できる。すなわち、ユーザーは、大量のデータセット46から、画質が十分であるとクライアントが評価する画質パラメーターを推定できる。
【0077】
導出用データ47は、画質パラメーターと、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターとの対応関係を示すデータである。推奨パラメーターは、所定の画質を得るにあたって推奨される捺染パラメーターである。すなわち、導出用データ47は、画質パラメーターと、その画質パラメーターが示す画質を得るために推奨される捺染パラメーター、すなわち推奨パラメーターとの対応関係を示す。
【0078】
制御部34が導出用データ47を用いることによって、画質パラメーターから推奨パラメーターが導出される。導出される推奨パラメーターは、例えば、元画像データと同等の画質を得るにあたって推奨される捺染パラメーターであってもよいし、画質が十分であるとクライアントが評価するような画質を得るにあたって推奨される捺染パラメーターであってもよい。求める画質によって導出される推奨パラメーターが変わる。
【0079】
導出用データ47は、例えば、機械学習によって学習された学習済みモデルを規定するデータであってもよいし、多変量解析によって得られた解析モデルを規定するデータであってもよい。
【0080】
学習済みモデルを規定するデータである導出用データ47は、例えば、上述したデータセット46を機械学習用のモデルに入力し、そのデータセット46をモデルに学習させることによって、生成される。解析モデルを規定するデータである導出用データ47は、例えば、上述したデータセット46を多変量解析することによって、生成される。学習済みモデル及び解析モデルについては、例えば、データセット46をもとにサーバー50が計算することによって生成できる。
【0081】
情報処理装置30は、例えば、図4に示すフローチャートに沿って動作する。図4に示す一連の処理は、例えば、ユーザーによって開始される。図4に示す一連の処理は、制御部34によって実行される。
【0082】
図4に示すように、制御部34は、まず、ステップS21において、取得部33によって捺染後画像データと元画像データとを取得する。そのため、ステップS21は、捺染システム10による捺染処理が行われた後に実行される。ステップS21で取得される捺染後画像データは、その捺染処理によって得られた捺染後画像を電子化した画像データである。
【0083】
ステップS21において、制御部34は、捺染後画像データと元画像データとに加え、クライアントデータ、布帛データ、インクデータ、評価データなどを取得してもよい。このとき、制御部34は、入力装置38、画像取込装置41などの外部装置からデータを取得することに限らず、例えば、記憶部35に記憶されるデータセット46からデータを取得してもよい。
【0084】
制御部34は、ステップS22において、送信部36によって捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信する。このとき、制御部34は、捺染後画像データ及び元画像データの他に、別のデータをサーバー50に送信してもよい。例えば、制御部34は、データセット46をサーバー50に送信してもよい。
【0085】
制御部34は、ステップS23において、受信部37によって画質パラメーターをサーバー50から受信する。ステップS23で受信する画質パラメーターは、ステップS22でサーバー50に送信した捺染後画像データ及び元画像データに基づいて、元画像データに対する捺染後画像データの画質をサーバー50が定量化したパラメーターである。
【0086】
制御部34は、ステップS24において、出力部32を通じて受信した画質パラメーターを出力させる。出力部32を通じて画質パラメーターが出力されると、ユーザーは、元画像データに対する捺染後画像データの画質を示す画質パラメーターを把握できる。これにより、ユーザーは、捺染後画像について、元画像データに対して不足する画質パラメーターを把握できる。ユーザーは、出力された画質パラメーターを、所望の画質を得るための指標として活用できる。
【0087】
制御部34は、ステップS24の処理を終えると、図4に示す一連の処理を終了する。
上述したように、捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法は、捺染後画像データと元画像データとを取得することと、捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信することと、元画像データに対する画像データの画質が定量化された画質パラメーターをサーバー50から受信することと、を含む。この情報処理方法は、例えば、プログラムがコンピューターに実行させることによって実施される。このプログラムは、記憶部35に記憶されていてもよいし、記憶媒体に記憶されていてもよい。制御部34は、プログラムを読み出すことによって、上述した情報処理を実行する。
【0088】
制御部34は、ユーザーから画質パラメーターを指定されることによって、導出用データ47に基づいて、指定された画質パラメーターに対応する推奨パラメーターを導出できる。制御部34は、導出用データ47に基づいて、ユーザーが指定した画質パラメーターを得るための推奨パラメーターを導出できる。
【0089】
ユーザーは、例えば、入力部31を通じて、所望する画質を画質パラメーターとして指定、すなわち画質パラメーターを制御部34に入力する。このとき、ユーザーは、例えば、画質に対するクライアントの評価基準と、生産性とを考慮したうえで、画質パラメーターを入力する。基本的に、画質と生産性とは、トレードオフの関係にある。そのため、画質を向上させるほど、生産性が低下する。
【0090】
制御部34は、例えば、入力部31を通じて画質パラメーターが入力された場合に、図5に示すフローチャートに沿って動作する。
図5に示すように、制御部34は、ステップS31において、指定された画質パラメーターと導出用データ47とに基づいて推奨パラメーターを導出する。
【0091】
制御部34は、ステップS32において、出力部32を通じて推奨パラメーターを出力させる。出力部32を通じて推奨パラメーターが出力されると、ユーザーは、指定した画質パラメーターが示す画質、すなわち所望の画質を得るにあたって推奨される捺染パラメーターを把握できる。これにより、ユーザーは、出力された推奨パラメーターを、所望の画質を得るための指標として活用できる。制御部34は、受信した推奨パラメーターを対応する装置に対して自動的に反映させてもよい。
【0092】
制御部34は、ステップS32の処理を終えると、図5に示す一連の処理を終了する。
次に、サーバー50について説明する。
図3に示すように、サーバー50は、情報処理装置30と電気的に接続される。サーバー50は、情報処理装置30と同様に、α:コンピュータープログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサー、β:各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはγ:それらの組み合わせ、を含む回路として構成し得る。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる可読媒体を含む。
【0093】
サーバー50は、制御部51と、記憶部52とを備える。制御部51は、例えば上述した、CPUである。記憶部52は、例えば、上述したメモリーである。
制御部51は、情報処理装置30からデータを受信すると、そのデータを記憶部52に記憶させる。制御部51は、例えば、捺染後画像データと元画像データとを受信すると、その捺染後画像データと元画像データとを記憶部52に記憶させる。制御部51は、例えば、データセット46を受信すると、そのデータセット46を記憶部52に記憶させる。このように、制御部51は、受信したデータを記憶部52に蓄積する。データが記憶部52に蓄積されることによって、いわゆるビッグデータ53が構成される。
【0094】
制御部51は、情報処理装置30から送信される捺染後画像データと元画像データとを受信すると、画像の画質を定量化するために、画像解析を行う。制御部51は、受信した捺染後画像データと元画像データとを解析することによって、元画像データに対する捺染後画像データの画質を定量化する。制御部51は、例えば、高速フーリエ変換によって、画質を定量化する。画像データがフルカラーである場合、制御部51は、例えば原色別に高速フーリエ変換を行う。
【0095】
捺染後画像データは、布帛99に描画された画像の解像度以上となる解像度で電子化したデータである。すなわち、捺染後画像データについては、布帛99を画像として取り込む際に、画質の劣化が抑制されている。そのため、捺染後画像データの画質を適切に定量化できる。
【0096】
サーバー50は、例えば、情報処理装置30による画質パラメーターの要求指示を受信すると、画質パラメーターを情報処理装置30に送信するために、図6に示すフローチャートに沿って動作する。このとき、サーバー50は、画質パラメーターの要求指示とともに、捺染後画像データと元画像データとを受信する。図6に示す一連の処理は、画像データを解析する処理であり、制御部51によって実行される。
【0097】
図6に示すように、制御部51は、ステップS41において、まず、捺染後画像データと元画像データとから解析用画像データを生成する。制御部51は、例えば、捺染後画像データと元画像データとにおいて、対応する画素ごとに輝度の差分をとることによって、解析用画像データを生成する。これにより、画像の絵柄に影響しない解析用画像データが得られる。輝度は、例えば、Lab表色系であらわされる。
【0098】
解析用画像データは、元画像データと捺染後画像データとにおける画質の変化を示す。すなわち、解析用画像データは、元画像データを基準とする捺染後画像データの画質をあらわす。そのため、解析用画像データを解析することによって、元画像データに対して捺染後画像データの画質がどれくらい変化したか、つまり画質の劣化具合を評価できる。
【0099】
制御部51は、ステップS42において、解析用画像データに対してフーリエ変換を行う。このとき、制御部51は、輝度を振幅として、縦方向及び横方向の2方向についてフーリエ変換を行う。これにより、解析用画像データについて、例えば、パワースペクトル、ウィナースペクトルなどのスペクトルが得られる。
【0100】
制御部51は、ステップS43において、スペクトルを解析することによって、捺染後画像データの画質を画質パラメーターとして定量化する。上述したように、画質には、例えば、黒濃度、ガマット、裏抜け、にじみ、鮮鋭性、色味、粒状性、バンディング、階調などがある。こうした画質の指標となる指標値は、ステップS42で得られたスペクトルと相関がある。例えば、バンディングが生じる場合、バンディングの指標となる指標値がスペクトルにあらわれる。例えば、粒状性についても同様に、粒状性の指標となる指標値がスペクトルにあらわれる。
【0101】
制御部51は、例えば、解析用画像データのパワースペクトルと視感度を補正する所定の補正関数とに基づいて、バンディングの指標となる指標値を決定する。制御部51は、例えば、解析用画像データのウィナースペクトルと視感度を補正する所定の補正関数とに基づいて、粒状性の指標となる指標値を決定する。補正関数は、例えば記憶部52に記憶されている。制御部51は、例えば、得られた指標値と、その基準値とを比較することによって、バンディング及び粒状性を評価する。このようにして、制御部51は、捺染後画像データの画質を画質パラメーターとして定量化する。これにより、元画像データに対する捺染後画像データの画質が客観的な指標で評価される。
【0102】
制御部51は、捺染後画像データの画質パラメーターを得ると、その画質パラメーターを、図6に示す一連の処理を開始する契機となった捺染後画像データと元画像データとに関連付けたうえで、記憶部52に記憶させる。そのため、画質パラメーターは、ビッグデータ53を構成する。
【0103】
制御部51は、ステップS44において、画質パラメーターを情報処理装置30に送信する。制御部51は、ステップS44の処理を終えると、図6に示す一連の処理を終了する。
【0104】
サーバー50は、画質パラメーターの要求指示を伴わず、捺染後画像データと元画像データとを受信した場合にも、上記と同様の手法によって画質パラメーターを生成する。具体的には、制御部51は、捺染後画像データと元画像データとを受信すると、ステップS41、ステップS42及びステップS43と同様の手順によって、捺染後画像データの画質を画質パラメーターとして定量化する。その後、制御部51は、得られた画質パラメーターを捺染後画像データと元画像データとに関連付けたうえで、記憶部52に記憶させる。
【0105】
次に、サーバー50による導出用データ47の生成について説明する。制御部51は、生成した導出用データ47を情報処理装置30に送信してもよい。この場合、情報処理装置30の記憶部35に記憶される導出用データ47を更新することができる。
【0106】
制御部51は、記憶部52に格納されるビッグデータ53から、例えば画質パラメーターから推奨パラメーターを導出する学習済みモデルを規定する導出用データ47を生成できる。
【0107】
制御部51は、例えば、記憶部52に蓄積された大量の画質パラメーター及び捺染パラメーターを教師データとしてモデルに入力する。これにより、画質パラメーターと捺染パラメーターとの相関関係をモデルに学習させる。学習手法として、例えば、ディープラーニングが挙げられる。このような学習によって、画質パラメーターが入力されると、その画質パラメーターが示す画質を得るために推奨される捺染パラメーターを出力する学習済みモデルが得られる。
【0108】
制御部51は、学習済みモデルの目的に応じて、ビッグデータ53のうち学習に使用するデータを変更する。すなわち、制御部51は、学習済みモデルに入力する入力変数と学習済みモデルが出力する出力変数とに応じて、学習に使用するデータを変更する。ビッグデータ53のうち学習に使用するデータは任意である。したがって、ビッグデータ53から様々な学習済みモデルを生成できる。例えば、画質パラメーターと評価データとを学習に使用することによって、画質パラメーターと評価データとの相関関係を学習した学習済みモデル、すなわち画質に対するクライアントの評価基準を把握した学習済みモデルが得られる。
【0109】
次に、第1実施形態の情報処理装置30の作用及び効果について説明する。
(1-1)情報処理装置30は、捺染後画像データ及び元画像データを取得する取得部33と、捺染後画像データ及び元画像データをサーバー50に送信する送信部36と、サーバー50において元画像データに対する捺染後画像データの画質が定量化された画質パラメーターをサーバー50から受信する受信部37と、を備える。
【0110】
この構成によれば、情報処理装置30は、元画像データに対する画像データの画質を、定量化された画質パラメーターとしてユーザーに提供する。ユーザーは、画質パラメーターによって、元画像データに対する画像データの画質を客観的に評価できる。そのため、ユーザーとクライアントとは、画質パラメーターによって、元画像データに対する画像データの画質を同じ指標で評価できる。これにより、ユーザーは、クライアントが要求する画質を把握できる。このように、情報処理装置30は、クライアントが要求する画質を把握するための指標をユーザーに提供できる。ユーザーは、画質パラメーターを参考に、各装置のパラメーターを設定できる。したがって、ユーザーの作業を簡便にできる。
【0111】
(1-2)捺染後画像データは、布帛99に描画された画像の解像度以上となる解像度で電子化したデータである。
この構成によれば、元画像データに対する捺染後画像データの画質を示す画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。すなわち、布帛99を画像として取り込む際に、画質の劣化が抑制されているため、サーバー50が精度のよい画像解析を行うことができる。
【0112】
(1-3)捺染後画像データは、布帛99の表面を電子化したデータと、布帛99の裏面を電子化したデータとを含む。
例えば、インクの裏抜けが発生していないことは、画質において重要である。そのため、この構成によれば、元画像データに対する捺染後画像データの画質を示す画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。すなわち、布帛99に吐出されたインクの裏抜けを確認できるため、サーバー50が精度のよい画像解析を行うことができる。
【0113】
(1-4)捺染後画像データは、布帛99を引き伸ばした状態で電子化したデータと、布帛99を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含む。
例えば、布帛99を伸ばした状態でインクの裏抜けが発生していないことは、画質において重要である。そのため、この構成によれば、元画像データに対する捺染後画像データの画質を示す画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。すなわち、布帛99を引き伸ばした状態での絵柄を確認できるため、サーバー50が精度のよい画像解析を行うことができる。
【0114】
(1-5)制御部34は、画質パラメーターと推奨パラメーターとの対応関係を示す導出用データ47に基づいて、ユーザーが指定する画質パラメーターと対応する推奨パラメーターを導出する。
【0115】
この構成によれば、ユーザーは、前処理装置11、インクジェット装置12及び後処理装置13の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターをその装置に設定することによって、指定した画質パラメーターが示す画質を得ることができる。
【0116】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と比べ、情報処理装置30は、捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信すると、サーバー50から推奨パラメーターを受信する点で異なる。すなわち、第2実施形態では、情報処理装置30は、画質パラメーターを受信しない。第2実施形態では、主に第1実施形態と異なる点について説明する。
【0117】
図7に示すように、第2実施形態では、情報処理装置30の記憶部35が導出用データ47を記憶していない一方で、サーバー50の記憶部52が導出用データ47を記憶している。
【0118】
情報処理装置30は、例えば、図8に示すフローチャートに沿って動作する。図8に示す一連の処理は、例えば、ユーザーによって開始される。図8に示す一連の処理は、制御部34によって実行される。
【0119】
図8に示すように、情報処理装置30は、まず、ステップS51において、ステップS21と同様に、取得部33によって捺染後画像データと元画像データとを取得する。
制御部34は、ステップS52において、ステップS22と同様に、送信部36によって捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信する。
【0120】
制御部34は、ステップS53において、受信部37によって推奨パラメーターをサーバー50から受信する。ステップS53で受信する推奨パラメーターは、ステップS52でサーバー50に送信した捺染後画像データ及び元画像データに基づいてサーバー50が導出したパラメーターである。
【0121】
制御部34は、ステップS54において、出力部32を通じて推奨パラメーターを出力する。出力部32を通じて推奨パラメーターが出力されると、ユーザーは、所望の画質、すなわちクライアントが要求する画質を得るにあたって推奨される捺染パラメーターを把握できる。これにより、ユーザーは、出力された推奨パラメーターを、所望の画質を得るための指標として活用できる。
【0122】
制御部34は、ステップS54の処理を終えると、図8に示す一連の処理を終了する。制御部34は、受信した推奨パラメーターを対応する装置に対して自動的に反映させてもよい。このように、捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法は、捺染後画像データと元画像データとを取得することと、捺染後画像データと元画像データとをサーバー50に送信することと、捺染後画像データ及び元画像データに基づいてサーバー50が導出した推奨パラメーターをサーバー50から受信することと、を含む。この情報処理方法は、例えば、プログラムがコンピューターに実行させることによって実施される。このプログラムは、記憶部35に記憶されていてもよいし、記憶媒体に記憶されていてもよい。制御部34は、プログラムを読み出すことによって、上述した情報処理を実行する。
【0123】
サーバー50は、情報処理装置30による推奨パラメーターの要求指示を受信すると、推奨パラメーターを情報処理装置30に送信するために、例えば図9に示すフローチャートに沿って動作する。このとき、サーバー50は、要求指示とともに、捺染後画像データと元画像データとを受信する。図9に示す一連の処理は、画像データを解析する処理であり、制御部51によって実行される。
【0124】
図9に示すように、制御部51は、まず、ステップS61において、ステップS41と同様に、捺染後画像データと元画像データとから解析用画像データを生成する。
制御部51は、ステップS62において、ステップS42と同様に、解析用画像データに対してフーリエ変換を行う。
【0125】
制御部51は、ステップS63において、ステップS43と同様に、スペクトルを解析することによって、捺染後画像データの画質を画質パラメーターとして定量化する。
制御部51は、捺染後画像データの画質パラメーターを得ると、その画質パラメーターを、図9に示す処理を開始する契機となった捺染後画像データと元画像データとに関連付けたうえで、記憶部52に記憶させる。そのため、画質パラメーターは、ビッグデータ53を構成する。
【0126】
制御部51は、ステップS64において、導出用データ47を用いて、画質パラメーターから推奨パラメーターを導出する。
制御部51は、ステップS65において、推奨パラメーターを情報処理装置30に送信する。
【0127】
制御部51は、ステップS65の処理を終えると、図9に示す一連の処理を終了する。
サーバー50は、推奨パラメーターの要求指示を伴わず、捺染後画像データと元画像データとを受信した場合にも、上記と同様の手法によって画質パラメーターを生成する。具体的には、制御部51は、捺染後画像データと元画像データとを受信すると、ステップS61、ステップS62及びステップS63と同様の手順によって、捺染後画像データの画質を画質パラメーターとして定量化する。その後、制御部51は、得られた画質パラメーターを捺染後画像データと元画像データとに関連付けたうえで、記憶部52に記憶させる。
【0128】
次に、導出用データ47の生成について説明する。
制御部51は、記憶部52に格納されるビッグデータ53から、例えば画質パラメーターから推奨パラメーターを導出する学習済みモデルを規定する導出用データ47を生成できる。
【0129】
制御部51は、例えば、記憶部52に蓄積された大量の画質パラメーター、捺染パラメーター及び評価データを教師データとしてモデルに入力する。これにより、画質パラメーターと捺染パラメーターと評価データとの相関関係をモデルに学習させる。学習手法として、例えば、ディープラーニングが挙げられる。このような学習によって、画質パラメーターが入力されると、画質が十分であるとクライアントが評価する画質を得るために推奨される捺染パラメーターを出力する学習済みモデルが得られる。
【0130】
画質パラメーターは、捺染後画像データ及び元画像データから得られる。そのため、捺染後画像データ及び元画像データに基づいてサーバー50が推奨パラメーターを導出するといえる。捺染後画像データ及び元画像データが入力されると、画質が十分であるとクライアントが評価する画質を得るために推奨される捺染パラメーターを出力する学習済みモデルを生成してもよい。
【0131】
制御部51は、記憶部52に格納されるビッグデータ53から、例えば画質パラメーターから推奨パラメーターを導出する解析モデルを生成できる。制御部51は、この解析モデルを得るために、記憶部52に蓄積された大量のデータセット46について、多変量解析を行う。多変量解析の一例としては、MT法が挙げられる。まず、大量のデータセット46から、評価データが評価Aである母集団、すなわち単位空間を作成する。次に、単位空間に対するマハラノビス距離を算出する。これにより、評価データとその他のデータとの相関関係が把握できる。マハラノビス距離が大きくなるにつれて、評価データが評価A、評価B、評価Cの順に変化する。次に、単位空間に対するマハラノビス距離の閾値を決定する。このようにして得られた解析モデルによれば、画質に対するクライアントの評価基準を把握できる。解析モデルによれば、画質パラメーターから、元画像データと同等の画質を得るために推奨される捺染パラメーター、評価Aとなる画質を得るために推奨される捺染パラメーターなどを推定できる。
【0132】
布帛99の種別、布帛99の用途などによって、画質に対するクライアントの評価基準が変わることが考えられる。例えば、用途が女性服である場合、用途が子供服である場合と比べて、画質に対するクライアントの評価基準が厳しくなることが考えられる。この点、上述した学習済みモデル及び解析モデルであれば、画質に対するクライアントの評価基準と各データとの相関関係を見出すことができる。すなわち、上述した学習済みモデル及び解析モデルによれば、画質に対するクライアントの評価基準がその他のデータに基づいて変わる場合でも、推奨パラメーターを導出できる。
【0133】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)情報処理装置30は、捺染後画像データ及び元画像データを取得する取得部33と、捺染後画像データ及び元画像データをサーバー50に送信する送信部36と、画像データ及び元画像データに基づいてサーバー50が生成したインクジェット装置12、前処理装置11及び前記後処理装置13の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターをサーバー50から受信する受信部37と、を備える。
【0134】
この構成によれば、ユーザーは、インクジェット装置12、前処理装置11及び後処理装置13の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターをその装置に設定することによって、クライアントが要求する画質を得ることができる。したがって、ユーザーの作業を簡便にできる。
【0135】
上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上述した実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0136】
・第1実施形態において、サーバー50に送信される捺染後画像データは、クライアントから提供される捺染処理済みの布帛99を、画像として電子化したデータでもよい。この場合、捺染後画像データの画質が、クライアントの要求する画質となる。そのため、ユーザーは、クライアントが要求する画質を、画質パラメーターとして把握できる。
【0137】
・第2実施形態において、サーバー50に送信される捺染後画像データは、クライアントから提供される捺染処理済みの布帛99を、画像として電子化したデータでもよい。この場合、捺染後画像データの画質が、クライアントの要求する画質となる。そのため、第2実施形態において導出用データ47によって規定される学習済みモデルは、第1実施形態と同様の学習済みモデルでもよい。すなわち、評価データを学習に使用していない学習済みモデルであっても、捺染後画像データに基づいて、クライアントが要求する画質を得るための推奨パラメーターを導出できる。
【0138】
・捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムは、例えば、記憶媒体に記憶された状態で頒布及び販売されてもよいし、通信回線を通じて頒布及び販売されてもよい。
【0139】
・情報処理装置30とは別に、捺染システム10を制御する制御装置を備えてもよい。この場合、ユーザーは、情報処理装置30が提供する情報に基づいて、制御装置を通じて捺染システム10を制御する。
【0140】
・画像取込装置41は、捺染システム10に組み込まれていてもよい。例えば、画像取込装置41は、情報処理装置30によって制御されてもよい。
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
【0141】
(A)情報処理装置は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、前記画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、前記画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備える。
【0142】
この構成によれば、情報処理装置は、元画像データに対する画像データの画質を、定量化された画質パラメーターとしてユーザーに提供する。ユーザーは、画質パラメーターによって、元画像データに対する画像データの画質を客観的に評価できる。そのため、ユーザーとクライアントとは、画質パラメーターによって、元画像データに対する画像データの画質を同じ指標で評価できる。これにより、ユーザーは、クライアントが要求する画質を把握できる。このように、情報処理装置は、クライアントが要求する画質を把握するための指標をユーザーに提供できる。ユーザーは、画質パラメーターを参考に、各装置のパラメーターを設定できる。したがって、ユーザーの作業を簡便にできる。
【0143】
(B)上記情報処理装置において、前記画像データは、前記布帛に描画された画像の解像度以上となる解像度で電子化したデータであってもよい。
この構成によれば、画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。
【0144】
(C)上記情報処理装置において、前記画像データは、前記布帛の表面を電子化したデータと、前記布帛の裏面を電子化したデータとを含んでもよい。
この構成によれば、画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。
【0145】
(D)上記情報処理装置において、前記画像データは、前記布帛を引き伸ばした状態で電子化したデータと、前記布帛を引き伸ばしていない状態で電子化したデータとを含んでもよい。
【0146】
この構成によれば、画質パラメーターを得るために適した画像データとすることができる。
(E)上記情報処理装置は、前記画質パラメーターと、前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターとの対応関係を示す導出用データを記憶する記憶部と、前記導出用データに基づいて、ユーザーが指定する前記画質パラメーターと対応する前記推奨パラメーターを導出する制御部と、を備える。
【0147】
この構成によれば、ユーザーは、インクジェット装置、前処理装置及び後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターをその装置に設定することによって、指定した画質パラメーターが示す画質を得ることができる。
【0148】
(F)情報処理装置は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理装置であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得する取得部と、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信する送信部と、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信する受信部と、を備える。
【0149】
この構成によれば、ユーザーは、インクジェット装置、前処理装置及び後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターをその装置に設定することによって、クライアントが要求する画質を得ることができる。したがって、ユーザーの作業を簡便にできる。
【0150】
(G)情報処理方法は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含む。
【0151】
この方法によれば、上述した情報処理装置と同様の効果が得られる。
(H)情報処理方法は、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報を処理する情報処理方法であって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出したインクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を含む。
【0152】
この方法によれば、上述した情報処理装置と同様の効果が得られる。
(I)プログラムは、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記サーバーにおいて前記元画像データに対する前記画像データの画質が定量化された画質パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させる。
【0153】
このプログラムによれば、上述した情報処理装置と同様の効果が得られる。
(J)プログラムは、布帛にインクを吐出することによって画像を描画するインクジェット装置と、画像が描画される前の前記布帛に前処理を行う前処理装置、及び、画像が描画された後の前記布帛に後処理を行う後処理装置の少なくとも一方と、によって行う捺染処理に関する情報をコンピューターに処理させるプログラムであって、前記捺染処理が行われた前記布帛を画像として電子化した画像データ、及び、前記布帛に描画された画像の元データである元画像データを取得することと、前記画像データ及び前記元画像データをサーバーに送信することと、前記画像データ及び前記元画像データに基づいて前記サーバーが導出した前記インクジェット装置、前記前処理装置及び前記後処理装置の少なくとも1つの装置に関する推奨パラメーターを前記サーバーから受信することと、を実行させる。
【0154】
このプログラムによれば、上述した情報処理装置と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0155】
10…捺染システム、11…前処理装置、12…インクジェット装置、13…後処理装置、14…塗布部、15…矯正部、16…前処理乾燥部、17…搬送部、18…ヘッド、19…キャリッジ、21…ノズル、22…容器、23…コード、24…後処理乾燥部、25…スチーム部、26…洗浄部、30…情報処理装置、31…入力部、32…出力部、33…取得部、34…制御部、35…記憶部、36…送信部、37…受信部、38…入力装置、39…出力装置、41…画像取込装置、42…秤量装置、43…読取装置、44…温湿度計、45…ネットワーク、46…データセット、47…導出用データ、50…サーバー、51…制御部、52…記憶部、53…ビッグデータ、99…布帛。
図1
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図7
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