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特許7559509付加製造物の設計方法、付加製造物の設計装置及び付加製造物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】付加製造物の設計方法、付加製造物の設計装置及び付加製造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/80 20210101AFI20240925BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20240925BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240925BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240925BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240925BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240925BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240925BHJP
【FI】
B22F10/80
B22C9/06 F
B29C64/153
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y50/00
B33Y80/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020184707
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074564
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】三井 哲弥
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195303(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106570257(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16,10/00,10/80
B22C 9/06
B29C 64/00,64/153,64/386
B33Y 10/00,50/00,80/00
G06F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料粉末に光ビームを照射し、前記材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う付加製造装置により、内部空間を有するように付加製造される付加製造物を設計する付加製造物の設計方法であって、
付加製造する前記付加製造物のうち、前記内部空間に関連する最適化目的について重要度が相対的に高い立体面構造の領域を設定する領域設定工程と、
前記領域設定工程にて設定された前記領域の前記立体面構造を形成する複数の面を分割して二次元に展開すると共に、二次元に展開された後に不連続となる分割面の間を互いに接続する仮想面を付加して、前記領域を展開図データに変換する変換工程と、
前記変換工程にて変換された前記仮想面を含む前記展開図データにおいて前記最適化目的に基づくトポロジー最適化を行う最適化工程と、
前記最適化工程にて前記分割面及び前記仮想面において前記トポロジー最適化を行った二次元データを三次元データに再変換する再変換工程と、
を順に実行する、付加製造物の設計方法。
【請求項2】
前記再変換工程において再変換された前記三次元データは、
前記分割面における前記二次元データと前記仮想面における前記二次元データとの接続に関するデータを有する、請求項1に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項3】
前記再変換工程にて再変換された前記三次元データにおいて、前記内部空間の形状について形状最適化を行う形状最適化工程を実行する、請求項1又は2に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項4】
前記内部空間は、流体を流入する流入路と前記流体を排出する流出路とを有し、前記流体を前記流入路から前記流出路に向けて流通する流路である、請求項1-3の何れか一項に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項5】
前記再変換工程において再変換された前記三次元データは、
前記分割面における前記二次元データと前記仮想面における前記二次元データとの接続に関するデータであって、前記分割面における前記流路と前記仮想面における前記流路との接続位置に関するデータを有する、請求項4に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項6】
前記接続位置に関するデータは、
前記仮想面によって接続された第一分割面と第二分割面とについて、前記再変換工程において再変換に伴って前記第一分割面及び前記第二分割面を接続した際に一致するように前記第一分割面に設定された第一基準点及び前記第二分割面に設定された第二基準点の各々を基準とし、前記第一分割面における前記流路の前記第一基準点を基準とする第一点及び第二点と、前記第二分割面における前記流路の前記第二基準点を基準とする第三点及び第四点とを用いた場合、
前記第一点と前記第三点との中央値を表す第一中央値、前記第二点と前記第四点との中央値を表す第二中央値、及び、前記第一中央値と前記第二中央値との差分を表す差分値を含む、請求項5に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項7】
前記流路は、前記領域を含んで前記付加製造物における冷却対象部に隣接して配置され、且つ、前記流体として前記冷却対象部を冷却するための冷却媒体を流通する冷却路であり、
前記最適化目的は、前記内部空間を流通する前記流体の特性に関連するものであり、
前記領域において、前記流路を流通する前記冷却媒体による冷却特性、前記冷却媒体の流速及び前記冷却媒体の流量のうちの少なくとも1つのバラつきを最小化することである、請求項4-6の何れか一項に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項8】
前記付加製造物は、前記冷却路を有する金型であり、
前記冷却対象部は、前記金型に形成されていて溶融材料が供給されるキャビティである、請求項7に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項9】
前記キャビティは、有底形状を有しており、
前記冷却路は、前記キャビティにおける底面及び側面に沿って設計される、請求項8に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項10】
前記付加製造物は、前記冷却路を有すると共に、回転部材と前記回転部材を回転可能に支持する有底円筒形状部を有するハウジングとを備えた工作機械の主軸であり、
前記冷却対象部は、前記有底円筒形状部である、請求項7に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項11】
前記冷却路は、前記有底円筒形状部における底面及び周面に沿って設計される、請求項10に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項12】
前記付加製造装置は、平らに敷き詰められた前記材料粉末に対して光ビームを照射し、前記材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う、請求項1-11の何れか一項に記載の付加製造物の設計方法。
【請求項13】
材料粉末に光ビームを照射し、前記材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う付加製造装置により、流体を流通する流路を有するように付加製造される付加製造物を設計する付加製造物の設計装置であって、
付加製造する前記付加製造物のうち、前記流路を流通する前記流体の特性に関連する最適化目的について重要度が相対的に高い立体面構造の領域を設定する領域設定部と、
前記領域設定部により設定された前記領域の前記立体面構造を形成する複数の面を分割して二次元に展開すると共に、二次元に展開された後に不連続となる分割面の間を互いに接続する仮想面を付加して、前記領域を展開図データに変換する領域展開部と、
前記領域展開部により変換された前記仮想面を含む前記展開図データにおいて前記最適化目的に基づいてトポロジー最適化を行うことによって前記流路の二次元の流路構造を設計する流路構造設計部と、
前記流路構造設計部により前記分割面及び前記仮想面において設計された二次元の前記流路構造に基づいて、前記流路の三次元データを有する三次元モデルを生成する三次元モデル生成部と、
を備えた、付加製造物の設計装置。
【請求項14】
前記三次元モデル生成部により生成された前記三次元モデルが有する前記流路の前記三次元データは、
前記流路構造設計部により設計された前記分割面における前記二次元の前記流路構造と前記仮想面における前記二次元の前記流路構造との接続位置に関するデータを有する、請求項13に記載の付加製造物の設計装置。
【請求項15】
前記接続位置に関するデータは、
前記仮想面によって接続された第一分割面と第二分割面とについて、前記三次元モデル生成部により生成された前記三次元モデルにおいて前記第一分割面及び前記第二分割面を接続した際に一致するように前記第一分割面に設定された第一基準点及び前記第二分割面に設定された第二基準点の各々を基準とし、前記第一分割面における前記流路構造の前記第一基準点を基準とする第一点及び第二点と、前記第二分割面における前記流路構造の前記第二基準点を基準とする第三点及び第四点とを用いた場合、
前記第一点と前記第三点との中央値を表す第一中央値、前記第二点と前記第四点との中央値を表す第二中央値、及び、前記第一中央値と前記第二中央値との差分を表す差分値と含む、請求項14に記載の付加製造物の設計装置。
【請求項16】
前記三次元モデル生成部により生成された前記流路の前記三次元モデルにおいて、前記流路の形状最適化を行うことによって前記流路の最終形状を設計する最終形状設計部を備えた、請求項13-15の何れか一項に記載の付加製造物の設計装置。
【請求項17】
前記流路は、前記流体を流入する流入路と前記流体を排出する流出路とを有しており、前記領域を含んで前記付加製造物における冷却対象部に隣接して配置され、且つ、前記流体として前記冷却対象部を冷却するための冷却媒体を前記流入路から前記流出路に向けて流通する冷却路であり、
前記流路構造設計部は、前記領域において、前記流路を流通する前記冷却媒体の冷却特性、前記冷却媒体の流速及び前記冷却媒体の流量のうちの少なくとも1つのバラつきを最小化することを前記最適化目的として、前記流路構造を設計する、請求項13-16の何れか一項に記載の付加製造物の設計装置。
【請求項18】
前記付加製造装置は、平らに敷き詰められた前記材料粉末に対して光ビームを照射し、前記材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う、請求項13-17の何れか一項に記載の付加製造物の設計装置。
【請求項19】
請求項1-12の何れか一項に記載の付加製造物の設計方法による設計工程と、
前記付加製造物を製造する製造工程と、を備えた、付加製造物の製造方法であって、
前記付加製造物は、流体を流通する流路を有すると共に、溶融材料が供給されるキャビティを有する金型であり、
前記製造工程は、
前記材料粉末を供給する工程と、
前記材料粉末に対して前記光ビームを照射する工程と、
前記光ビームにより前記材料粉末を溶融する工程と、
溶融した前記材料粉末を凝固させる工程と、
を備える、付加製造物の製造方法
【請求項20】
前記キャビティは、有底形状を有しており、
前記流路は、前記金型における冷却対象部である前記キャビティを冷却するための冷却媒体を流通する冷却路であり、前記キャビティにおける底面及び側面に沿って設計される、請求項19に記載の付加製造物の製造方法
【請求項21】
請求項1-12の何れか一項に記載の付加製造物の設計方法による設計工程と、
前記付加製造物を製造する製造工程と、を備えた、付加製造物の製造方法であって、
前記付加製造物は、流体を流通する流路を有すると共に、回転部材と前記回転部材を回転可能に支持する有底円筒形状部を有するハウジングとを備えた工作機械の主軸であり、
前記製造工程は、
前記材料粉末を供給する工程と、
前記材料粉末に対して前記光ビームを照射する工程と、
前記光ビームにより前記材料粉末を溶融する工程と、
溶融した前記材料粉末を凝固させる工程と、
を備える、付加製造物の製造方法
【請求項22】
前記流路は、前記主軸における冷却対象部である前記有底円筒形状部を冷却するための冷却媒体を流通する冷却路であり、前記有底円筒形状部の底面及び周面に沿って設計される、請求項21に記載の付加製造物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造物の設計方法、付加製造物の設計装置及び付加製造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造には、例えば、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式等があることが知られている。粉末床溶融結合方式は、平らに敷き詰められた材料粉末に対して、光ビーム(レーザビーム及び電子ビーム等)を照射することで付加製造を行う。粉末床溶融結合方式には、SLM(Selective Laser Melting)、EBM(Electron Beam Melting)等が含まれる。指向性エネルギー堆積方式は、光ビームの照射と材料粉末の吐出を行うヘッドの位置を制御することで付加製造を行う。指向性エネルギー堆積方式には、LMD(Laser Metal Deposition)、DMP(Direct Metal Printing)等が含まれる。
【0003】
粉末床溶融結合方式の付加製造においては、平らに敷き詰められた材料粉末を溶融及び凝固させながら一層ずつ積層させて付加製造物を造形する。このため、粉末床溶融結合方式及び指向性エネルギー堆積方式のうち、粉末床溶融結合方式の付加製造は、内部空間を有する付加製造物を精密に造形する場合に好適である。
【0004】
特許文献1には、粉末床溶融結合方式の付加製造において、三次元の付加製造物を製造する場合、三次元データについてのトポロジー最適化を適用することによって付加製造物の形状を設計し、内部空間を有する付加製造物を造形する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-167562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、トポロジー最適化を適用して付加製造物の形状を設計する場合、設計領域を付加製造物の全体にしてトポロジー最適化を行うと、最適化目的を設定する領域以外の領域を含んで最適化が行われる。これにより、相対的に重要度の低い箇所の影響を受ける場合があり、その結果、最適か目的を設定する領域における最適形状、換言すれば、最適化目的を達成する形状が設計されない可能性がある。
【0007】
又、三次元の付加製造物についてトポロジー最適化を行う場合、トポロジー最適化を適用する領域を三次元のままを行うと計算量が膨大になり、その結果、計算コストが増大すると共に解析時間(計算時間)が長くなる場合がある。これに対して、トポロジー最適化を適用する領域を二次元とすることが考えられるが、計算領域を2次元化した場合には、不連続領域が生じ、その結果、最適化目的を達成する形状の設計が不能になる場合がある。
【0008】
本発明は、計算コストを低減すると共に解析時間を短縮して最適形状を設計することができる付加製造物の設計方法、付加製造物の設計装置及び付加製造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(付加製造物の設計方法)
付加製造物の設計方法は、材料粉末に光ビームを照射し、材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う付加製造装置により、内部空間を有するように付加製造される付加製造物を設計する付加製造物の設計方法であって、付加製造する付加製造物のうち、内部空間に関連する最適化目的について重要度が相対的に高い立体面構造の領域を設定する領域設定工程と、領域設定工程にて設定された領域の立体面構造を形成する複数の面を分割して二次元に展開すると共に、二次元に展開された後に不連続となる分割面の間を互いに接続する仮想面を付加して、領域を展開図データに変換する変換工程と、変換工程にて変換された仮想面を含む展開図データにおいて最適化目的に基づくトポロジー最適化を行う最適化工程と、最適化工程にて分割面及び仮想面においてトポロジー最適化を行った二次元データを三次元データに再変換する再変換工程と、を順に実行する。
【0010】
(付加製造物の設計装置)
付加製造物の設計装置は、材料粉末に光ビームを照射し、材料粉末を溶融及び凝固させて付加製造を行う付加製造装置により、流体を流通する流路を有するように付加製造される付加製造物を設計する付加製造物の設計装置であって、付加製造する付加製造物のうち、流路を流通する流体の特性に関連する最適化目的について重要度が相対的に高い立体面構造の領域を設定する領域設定部と、領域設定部により設定された領域の立体面構造を形成する複数の面を分割して二次元に展開すると共に、二次元に展開された後に不連続となる分割面の間を互いに接続する仮想面を付加して、領域を展開図データに変換する領域展開部と、領域展開部により変換された仮想面を含む展開図データにおいて最適化目的に基づいてトポロジー最適化を行うことによって流路の二次元の流路構造を設計する流路構造設計部と、流路構造設計部により分割面及び仮想面において設計された二次元の流路構造に基づいて、流路の三次元データを有する三次元モデルを生成する三次元モデル生成部と、を備える。
【0011】
(付加製造物の製造方法
付加製造物の製造方法は、上記の付加製造物の設計方法による設計工程と、付加製造物を製造する製造工程と、を備えた、付加製造物の製造方法であって、付加製造物は、流体を流通する流路を有すると共に、溶融材料が供給されるキャビティを有する金型であり、製造工程は、材料粉末を供給する工程と、材料粉末に対して光ビームを照射する工程と、光ビームにより材料粉末を溶融する工程と、溶融した材料粉末を凝固させる工程と、を備える。
また、付加製造物の製造方法は、上記の付加製造物の設計方法による設計工程と、付加製造物を製造する製造工程と、を備えた、付加製造物の製造方法であって、付加製造物は、流体を流通する流路を有すると共に、回転部材と回転部材を回転可能に支持する有底円筒形状部を有するハウジングとを備えた工作機械の主軸であり、製造工程は、材料粉末を供給する工程と、材料粉末に対して光ビームを照射する工程と、光ビームにより材料粉末を溶融する工程と、溶融した材料粉末を凝固させる工程と、を備える。
【0012】
これらによれば、最適化目的について相対的に重要度の高い立体面構造の領域を設定し、設定した領域を二次元に展開した後に不連続となる領域の分割面の間を互いに接続する仮想面を付加してトポロジー最適化を適用することができる。これにより、トポロジー最適化において、領域における最適形状、換言すれば、最適化目的を達成する形状を設計することができる。又、二次元に展開した際に仮想面を付加してトポロジー最適化を行うため、三次元の付加製造物についてトポロジー最適化を行う場合に比べて、計算量を低減することができ、その結果、計算コストを低減することができると共に解析時間(計算時間)を短縮することができる。更に、計算領域に不連続領域を生じさせることがないため、最適化目的を達成する形状を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】付加製造装置及び最適形状設計装置を示す図である。
図2図1の付加製造装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図1の付加製造装置によって内部空間(流路)を有するように付加製造される付加製造物の構成を説明するための図である。
図4図3の内部空間(流路)の構造を説明するための図である。
図5図3のV-V断面を示し、内部空間(流路)の構造を説明するための断面図である。
図6図1の最適形状設計装置の構成を説明するためのブロック図である。
図7図4の領域設定部(領域設定工程)によって設定される第一領域及び第二領域を説明するための図である。
図8図7の第一領域の構成を説明するための図である。
図9図7のIX-IX断面を示し、第一領域の構成を説明するための断面図である。
図10図6の領域展開部(変換工程)によって出力される第一領域の基準面及び分割面を展開した実展開図データを説明するための図である。
図11図6の仮想面設定部(変換工程)によって出力される分割面を接続する仮想面を付加した展開図データを説明するための図である。
図12図6の流路構造設計部(最適化工程)により、トポロジー最適化を適用して設計される流路構造を説明するための図である。
図13図6の座標データ生成部(再変換工程)によって生成される流路構造の二次元の座標データを説明するための図である。
図14図6の座標データ生成部(再変換工程)によって生成される接続位置に関するデータを説明するための拡大図である。
図15図6の三次元モデル生成部(再変換工程)によって生成される三次元モデルを説明するための図である。
図16図6の最終形状設計部(形状最適化工程)によって最終的に設計された形状を説明するための図である。
図17】第一別例に係る最適形状設計装置の構成を説明するためのブロック図である。
図18】第二別例に係り、付加される仮想面を説明するための図である。
図19】第二別例に係り、付加される仮想面を説明するための図である。
図20】その他の別例に係る流路構造(流路)を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.付加製造装置1の構成)
付加製造装置1の構成について図面を参照しながら説明する。本例の付加製造装置1は、粉末床溶融結合方式であってSLM方式を採用する。付加製造装置1は、図1に示すように、層状に配置された(積層された)材料粉末としての金属粉末Sに光ビーム40aを照射することを繰り返すことによって、内部空間Tを有する付加製造物Wを製造する装置である。尚、本例においては、付加製造装置1が粉末床溶融結合方式を採用する場合を例示するが、付加製造装置としてLMD方式やDMP方式を含む指向性エネルギー堆積方式を採用することも可能である。
【0015】
ここで、光ビーム40aは、例えば、レーザビーム及び電子ビームを含み、その他に金属粉末Sを溶融することができる種々のビームを含む。又、レーザビームには、例えば、ファイバレーザ、COレーザ(遠赤外レーザ)、半導体レーザ等、種々のレーザを適用でき、対象の金属粉末S(例えば、アルミ、ステンレス鋼、チタン、マルエージング鋼、合金工具鋼等)に応じて適宜決定される。
【0016】
付加製造装置1は、図1に示すように、チャンバ10、付加製造物支持装置20、粉末供給装置30、光ビーム照射装置40、加熱装置50及び制御装置60を備える。
【0017】
チャンバ10は、内部の空気を、例えば、He(ヘリウム)やN(窒素)、Ar(アルゴン)等の不活性ガスに置換可能に構成されている。尚、チャンバ10は、内部を不活性ガスに置換することに代えて、内部を減圧可能な構成としても良い。
【0018】
付加製造物支持装置20は、チャンバ10の内部に設けられ、付加製造物Wを付加製造するための支持部材により構成されている。付加製造物支持装置20は、付加製造用容器21、昇降テーブル22及びベース23を備えている。付加製造用容器21は、上側に開口部を有し、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。昇降テーブル22は、付加製造用容器21の内部にて内壁面に沿うように上下方向に昇降動作可能に設けられる。ベース23は、昇降テーブル22の上面に着脱可能に載置され、ベース23の上面が付加製造物Wを付加製造するための部位となる。即ち、ベース23は、昇降テーブル22の降下に伴って上面に層状に金属粉末Sを配置すると共に、付加製造時に付加製造物Wを支持可能とされている。
【0019】
粉末供給装置30は、チャンバ10の内部であって、付加製造物支持装置20に隣接して設けられている。粉末供給装置30は、粉末収納容器31、供給テーブル32及びリコータ33を備えている。粉末収納容器31は上側に開口部を有しており、粉末収納容器31の開口部の高さは付加製造用容器21の開口部の高さと同一に設けられている。粉末収納容器31は、上下方向の軸線に平行な内壁面を有している。供給テーブル32は、粉末収納容器31の内部にて内壁面に沿うように上下方向に移動可能に設けられている。そして、粉末収納容器31内において、供給テーブル32の上側領域に、金属粉末Sが収納されている。
【0020】
リコータ33は、付加製造用容器21の開口部及び粉末収納容器31の開口部の全領域に亘って、両開口部の上面に沿って往復移動可能に設けられている。リコータ33は、例えば、図1の左右方向にて右側から左側に移動するとき、即ち、粉末収納容器31の開口部から付加製造用容器21の開口部に向けて移動するときに、粉末収納容器31の開口部から盛り出ている金属粉末Sを付加製造用容器21に運搬する。これにより、金属粉末Sは、平らに敷き詰められる(配置される)。
【0021】
更に、リコータ33は、降下した昇降テーブル22と共に降下したベース23の上面にて運搬した金属粉末Sを均し、ベース23の上面にて同種の金属粉末Sを層状に配置する、即ち、リコートする。ここで、「同種」とは、材料粉末である金属粉末Sの材質が同一であり、金属粉末Sの平均粒径等が所定の範囲内に含まれることを意味する。
【0022】
光ビーム照射装置40は、図1に示すように、例えば、チャンバ10の外部に配置されており、ベース23の上面に層状に配置された同種の金属粉末Sの表面にチャンバ10の外部から光ビーム40aを照射する。尚、本例においては、光ビーム照射装置40をチャンバ10の外部に配置する場合を例示するが、光ビーム照射装置40をチャンバ10の内部に配置することも可能である。
【0023】
光ビーム照射装置40は、リコートされた金属粉末Sに光ビーム40a(例えば、上述したレーザビーム及び電子ビーム等)を照射することにより、金属粉末Sを融点以上の温度に加熱する。これにより、金属粉末Sは溶融してその後凝固し(又は焼結し)、一体化された層からなる付加製造物Wが付加製造される。即ち、隣接する金属粉末S同士は、溶融結合によって一体化される。
【0024】
光ビーム照射装置40は、レーザ発振器41及びレーザヘッド42を備えている。又、光ビーム照射装置40は、レーザ発振器41から発振された光ビーム40a(例えば、近赤外レーザ光)をレーザヘッド42に伝送する光ファイバ43を備えている。
【0025】
光ビーム照射装置40は、予め設定されたプログラムに従って、光ビーム40aの照射位置を移動すると共に、ビーム強度を変更することができる。光ビーム40aの照射位置を移動することにより、図1に示すように、内部空間T(流路又は冷却路)を有する三次元の付加製造物Wを付加製造することができる。ここで、光ビーム40aは、加熱装置50により加熱される範囲よりも狭い範囲に対して照射可能である。尚、光ビーム40aは、チャンバ10の上側に設けられる透明なガラス又は樹脂を通してチャンバ10内に照射されるようになっている。
【0026】
加熱装置50は、昇降テーブル22に内蔵される。加熱装置50は、ベース23を介して付加製造物Wを加熱するためのヒータであり、昇降テーブル22を介してベース23の全体を加熱する。加熱装置50は、例えば、コイルヒータ、カートリッジヒータ、ノズルヒータ、面状ヒータ等、種々のヒータを適用できる。加熱装置50による加熱範囲は、光ビーム40aの照射範囲を一部に含む範囲に設定されている。ここで、加熱装置50は、光ビーム40aのように金属粉末Sを溶融させることはない。
【0027】
(2.制御装置60の構成)
制御装置60は、CPU、ROM、RAM、インターフェース等を主要構成部品とするマイクロコンピュータであり、付加製造装置1の作動を統括的に制御する。即ち、制御装置60は、付加製造物支持装置20、粉末供給装置30、光ビーム照射装置40及び加熱装置50を制御する。このため、制御装置60は、図2に示すように、データ記憶部61、昇降テーブル作動制御部62、粉末供給制御部63、光ビーム照射制御部64及び加熱制御部65を備える。又、制御装置60は、後述する最適形状設計装置70と通信可能に接続されている。
【0028】
データ記憶部61は、二次元又は三次元の形状に造形される内部空間T(流路又は冷却路)を有する付加製造物Wを所定の厚さで分割した分割層毎のデータが含まれていて、分割層における形状を表す形状データSDを含む各種データを記憶している。ここで、形状データSDは、図2にて詳細な図示を省略する最適形状設計装置70から供給されるようになっている。尚、最適形状設計装置70は、所謂、CAD(Computer Aided Design)機能を有している。
【0029】
昇降テーブル作動制御部62は、昇降テーブル22を昇降させる駆動装置(図示省略)の作動を制御する。昇降テーブル作動制御部62は、粉末供給装置30が金属粉末Sを供給する際において、予め設定された降下量となるように昇降テーブル22を降下させる。
【0030】
粉末供給制御部63は、粉末供給装置30の作動を制御するものである。具体的に、粉末供給制御部63は、供給テーブル32を上下方向に移動させて粉末収納容器31に収容された金属粉末Sを粉末収納容器31の開口部から盛り出させると共に、リコータ33を往復移動させるように制御する。
【0031】
光ビーム照射制御部64は、光ビーム照射装置40の作動を制御するものである。具体的に、光ビーム照射制御部64は、光ビーム照射装置40が照射する光ビーム40aの照射位置(照射軌跡)及びビーム強度を、データ記憶部61に記憶されている形状データSDに基づいて制御する。
【0032】
加熱制御部65は、加熱装置50の作動を制御するものである。尚、加熱制御部65による加熱装置50の作動制御の詳細については、本発明に直接関係しないため、その説明を省略する。
【0033】
(3.付加製造物Wの例)
付加製造物Wの例について、図3を参照して説明する。付加製造物Wは、上述した付加製造装置1により付加製造(造形)される。従って、付加製造物Wは、任意の三次元形状とすることができる。本例の付加製造物Wは、射出成形、プレス加工等に用いられる金型を例に挙げる。尚、付加製造物Wは、金型に限られず、各種製品、部品等とすることが可能であることは言うまでもない。
【0034】
本例において例示する付加製造物Wは、直方体の外形を有する。尚、付加製造物Wの外形は、任意の形状とすることができる。付加製造物Wは、金型に形成されて溶融材料が供給される有底形状のキャビティとしての凹部Hを有する。凹部Hは、図4及び図5に示すように、例えば、長方形状(矩形状)に形成されて、上面にて開口するように形成されている。尚、本例においては、凹部Hは、図5に示すように、有底形状に形成されている。
【0035】
付加製造物Wは、図3図4及び図5に示すように、内部空間Tとして、流路(冷却路)である第一内部配管T1及び第二内部配管T2を有する。第一内部配管T1及び第二内部配管T2は、冷却対象部であるキャビティ即ち凹部Hに隣接するように配置され、流体として、例えば、凹部Hを冷却するための冷却媒体である冷却水が流通する。尚、冷却媒体は、液体に限られず、気体であっても良い。第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造は、後述する最適形状設計装置70により、例えば、凹部Hにおける冷却効果が良好となるように設計される。本例において、第一内部配管T1及び第二内部配管T2は、冷却水を流入する流入路Iと冷却水を流出する(排出する)流出路Oとに接続される。尚、流入路I及び流出路Oは、図3及び図4に示すように、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の各々に接続されるように分岐されている。
【0036】
又、本例において、最適形状として設計された第一内部配管T1の流路構造は、凹部Hの各々の側面に沿って冷却水を流通させる第一配管部T11と、凹部Hの角部に対応して各々の側面に沿って形成された第一配管部T11同士を接続して冷却水を流通させる第二配管部T12と、を有するように設計されて形成される。又、本例において、最適形状として設計された第二内部配管T2の流路構造は、凹部Hの底面に沿って冷却水を流通させるように設計されて形成される。
【0037】
ここで、本例の第一内部配管T1及び第二内部配管T2の形状は、矩形状としたが、任意の形状とすることができる。即ち、金型のキャビティとしての凹部Hの形状は、成形対象の形状、例えば、円形状や円柱状、多角形状に応じて適宜変更される。このため、第一内部配管T1及び第二内部配管T2も、キャビティとなる凹部Hの形状に応じた適宜の形状とすることができる。
【0038】
尚、本例においては、凹部Hの側面に沿って形成される第一内部配管T1を1つの流路として設計して形成する場合を例示するが、第一内部配管T1が複数の流路として設計して形成することも可能である。又、本例においては、凹部Hの底部を冷却するために第二内部配管T2を設けるようにするが、必要に応じて、第二内部配管T2を省略することも可能である。
【0039】
又、付加製造物Wは、例えば、工作機械の主軸等とすることもできる。工作機械の主軸には、主軸の回転部材を挿通する円筒形状部の冷却用の流路が形成されている。この場合、例えば、冷却効果(冷却性能)に応じて、流路を螺旋状等の任意の形状として形成することができる。又、付加製造物Wは、例えば、車両に搭載される内燃機関やインバータ、モータ等の冷却用部品とすることも可能である。更に、付加製造物Wは、金型のような平板状の形状に代えて、例えば、箱形状とすることも可能である。
【0040】
(4.最適形状設計装置70の構成)
本例の設計装置としての最適形状設計装置70は、付加製造装置1によって付加製造される付加製造物Wについて、内部空間Tであって流路としての第一内部配管T1及び第二内部配管T2を流通する流体の特性に関連する最適化目的を実現するように、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の最適形状を設計する。ここで、本例の流体の特性としては、流体である冷却媒体としての冷却水が冷却対象部である凹部Hを冷却する冷却特性を例に挙げることができる。そして、本例の最適化目的としては、凹部Hにおける冷却温度のバラつきを最小化して効率良く冷却する、即ち、流体である冷却水の冷却特性のバラつきを最小化することができる第一内部配管T1及び第二内部配管T2の最適形状を設計する。特に、最適形状設計装置70は、トポロジー最適化を適用することで、最適な第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造を設計する。
【0041】
最適形状設計装置70は、図6に示すように、領域設定部71、領域展開部72、仮想面設定部73、流路構造設計部74、座標データ生成部75、三次元モデル生成部76、最終形状設計部77を備える。最適形状設計装置70を構成する各部71,72,73,74,75,76,77は、プロセッサや記憶装置等により構成されており、プロセッサによって図示省略のプログラムが実行されることにより実現される。
【0042】
領域設定部71は、領域設定工程を実行する。領域設定部71は、図7図8及び図9に示すように、第一内部配管T1及び第二内部配管T2を省略した三次元形状の仮の付加製造物W1について、第一内部配管T1及び第二内部配管T2を設ける、即ち、流路構造を設計する領域であって最適化目的についての重要度が相対的に高い立体面構造の領域である第一領域R1と、流路構造を設計しない領域であって最適化目的についての重要度が相対的に低い第二領域R2とを設定する。本例において、形成される第一内部配管T1及び第二内部配管T2は、上述したように、トポロジー最適化における最適化目的として、最終的な付加製造物Wにおいて凹部Hの周囲を、バラつきを小さくして効率良く冷却することである。
【0043】
このため、領域設定部71は、図7-9にて太線で示すように、冷却対象部としての凹部Hの周囲、より詳しくは、冷却する重要度の高い凹部Hの底面及び側面(4面)をそれぞれ囲む面J1,J2,J3,J4,J5からなる立体面構造を第一領域R1として設定し、凹部Hの周囲から外方に向けて離間した部分、即ち、冷却する重要度の低い部分を第二領域R2として設定する。ここで、本例においては、第一領域R1を形成する面J1を「基準面」とし、基準面である面J1に接続し且つ分割された面J2,J3,J4,J5を「分割面」とする。
【0044】
領域展開部72は、変換工程を実行する。領域展開部72は、領域設定部71によって設定された立体面構造の5面即ち面J1,J2,J3,J4,J5からなる第一領域R1について、図10に示すように、第一領域R1を二次元に展開した実展開図データOTを出力する。本例においては、領域展開部72は、凹部Hの底面に対向する面J1を基準面として、凹部Hの側面に対向する面であって面J1(基準面)に接続され且つ分割された分割面である面J2,J3,J4,J5が面J1に平行となるように、第一領域R1を展開して二次元の実展開図データOTを出力する。
【0045】
ここで、分割面である面J2,J3,J4,J5は、二次元に展開する前(即ち、図7図8及び図9に示す状態)において互いに連続しており、二次元に展開した後(即ち、図10に示す状態、即ち、実展開図データOT)において互いに不連続になる。即ち、第一領域R1は、二次元に展開する前において連続し且つ展開した後において不連続となる部分を含む。
【0046】
仮想面設定部73は、変換工程を実行する。仮想面設定部73は、図11にて梨地により示すように、領域展開部72によって二次元に展開された後に不連続となる部分、即ち、分割面である面J2と面J3との間、面J3と面J4との間、面J4と面J5との間、及び、面J5と面J2との間において、各面J2,J3,J4,J5の間を接続するように、仮想面JS1,JS2,JS3,JS4を設定して付加する。即ち、仮想面JS1は、分割面である面J2と面J3との間において不連続となる部分を接続する仮想的な面である。仮想面JS2は、分割面である面J3と面J4との間において不連続となる部分を接続する仮想的な面である。仮想面JS3は、分割面である面J4と面J5との間において不連続となる部分を接続する仮想的な面である。仮想面JS4は、分割面である面J5と面J2との間において不連続となる部分を接続する仮想的な面である。
【0047】
ここで、本例においては、仮想面設定部73が付加する仮想面JS1-JS4は、図11に示すように、正方形として設定される。但し、仮想面設定部73が付加する(設定する)仮想面JS1-JS4の形状については、正方形に限られるものではなく、例えば、三角形を含む多角形や、円形、円弧等種々の形状とすることができる。即ち、後述するように、流路構造設計部74によって設計される第一内部配管T1の第二配管部T12が含まれる形状であれば、如何なる形状であっても良い。
【0048】
仮想面設定部73は、領域展開部72から出力された実展開図データOTに対して仮想面JS1-JS4の二次元の付加データOKを付加することにより、第一領域R1を変換して展開図データOZを生成する。そして、仮想面設定部73は、生成した展開図データOZを流路構造設計部74に出力する。これにより、流路構造設計部74は、展開された第一領域R1を表す実展開図データOT及び付加された仮想面JS1-JS4を表す付加データOKによって形成された展開図データOZにおいて、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造を設計する。
【0049】
流路構造設計部74は、最適化工程を実行する。本例の流路構造設計部74は、二次元に展開された第一領域R1の実展開図データOTに対して付加された仮想面JS-JS4の付加データOKを含む展開図データOZについて、トポロジー最適化を適用して第一内部配管T1及び第二内部配管T2を設計する。具体的に、流路構造設計部74は、予め実験的に測定することができる凹部Hの実冷却温度が、設定された目標冷却温度に対するバラつきを少なくして、維持されるように、トポロジー最適化を適用して第一内部配管T1及び第二内部配管T2即ち流路構造を設計する。
【0050】
流路構造設計部74は、図12に示すように、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zを設計する。この場合、流路構造設計部74は、第一領域R1の面J1においては、流入路I及び流出路Oに連通するループ状の流路構造Zを有する第二内部配管T2を設計する。又、流路構造設計部74は、第一領域R1の分割面である面J2-J5においては直線状の流路構造Zを有する第一内部配管T1の第一配管部T11を設計すると共に、付加された仮想面JS1-JS4においては第一配管部T11同士を接続する曲線状の流路構造Zを有する第一内部配管T1の第二配管部T12を設計する。この場合、流路構造設計部74は、第一領域R1の面J2においては、第一配管部T11が流入路I及び流出路Oの各々に連通する流路構造Zを有する第一内部配管T1を設計する。
【0051】
ここで、流路構造設計部74は、二次元の展開図データOZ、即ち、二次元データに関するトポロジー最適化を適用する。従って、第一領域R1を展開する前の三次元データに関するトポロジー最適化を行う場合に比べて、トポロジー最適化に要する処理時間を短くすることができる。又、流路構造設計部74は、第一領域R1、即ち、冷却対象部である付加製造物Wの凹部Hの周辺についてのみトポロジー最適化を適用する。これにより、トポロジー最適化において、冷却対象部に対して離間した第二領域R2の影響を排除することができ、凹部Hの冷却に特化した第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zを設計することができる。
【0052】
より詳細には、流路構造設計部74は、第一領域R1において目標冷却温度に対する実冷却温度のバラつき(所謂、冷却ムラ)を最小化することを目的関数とし、且つ、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の径方向への広がりがゼロ即ち二次元とすることを制約関数としてトポロジー最適化を適用する。このようなトポロジー最適化により得られた第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zは、凹部Hの周辺における冷却温度のバラつきを小さくできる構造である。但し、トポロジー最適化においては、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の径方向への広がりが制限されている。換言すれば、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zは、二次元の第一領域R1の分割面である面J1-J5及び付加された仮想面JS-JS4において展開された二次元構造を有するに過ぎない。このため、トポロジー最適化により設計された第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zを、三次元の(即ち、立体面構造の)第一領域R1に合わせると共に径方向に広げて管状にする必要がある。
【0053】
座標データ生成部75は、再変換工程を実行する。座標データ生成部75は、流路構造設計部74がトポロジー最適化により設計した二次元の流路構造Zについて、図13に示すように、二次元座標(例えば、XY座標)上における流路構造Zの形状の座標データZDを生成する。本例の座標データ生成部75は、先ず、面J1、即ち、第一領域R1の底面上に設計された第二内部配管T2について、二次元座標上における座標を生成する。そして、座標データ生成部75は、分割面である面J2-J5、即ち、第一領域R1の4つの側面上に設計された第一内部配管T1の第一配管部T11について、二次元座標上における座標を生成する。これらの場合、座標データ生成部75は、例えば、二次元座標の原点から第一軸(例えば、X軸)の座標値と第二軸(例えば、Y軸)の座標値とを用いて、第二内部配管T2及び第一内部配管T1の第一配管部T11の座標を生成する。
【0054】
更に、座標データ生成部75は、仮想面JS1-JS4上に設計された第二配管部T12について、図14及び図15に示すように、第一配管部T11との接続位置の座標を生成する。具体的に、座標データ生成部75は、図14に示すように、例えば、図13にて破線の丸で囲む位置にて、仮想面JS4によって接続された第一分割面としての面J2上に設計された第一配管部T11の第一点Z1及び第二点Z2の各々の二次元座標における座標を生成する。又、座標データ生成部は、仮想面JS4によって接続された第二分割面としての面J5上に設計された第一配管部T11の第三点Z3及び第四点Z4の各々の二次元座標における座標を生成する。
【0055】
ここで、生成された第一点Z1、第二点Z2、第三点Z3及び第四点Z4は、第一分割面である面J2及び第二分割面である面J5の各々における第一配管部T11(流路)と仮想面JS4における第二配管部T12(流路)との接続位置に関するデータである。即ち、生成された第一点Z1、第二点Z2、第三点Z3及び第四点Z4は、分割面である面J2,J5における第一配管部T11(2次元データ)と仮想面JS4における第二配管部T12(2次元データ)との接続に関するデータである。
【0056】
ここで、本例の第一領域R1は、立体面構造として直方体形状に形成される。このため、後述するように、最終的に第一領域R1を3次元化する際には、面J2及び面J5即ち側面は、基準面である面J1に対して90度折り曲げられて、即ち、第一領域R1の高さ方向に対応するZ軸に平行となるように立設される。従って、図15に示すように、本例における第一点Z1及び第三点Z3は、側面に対応する面J2(第一分割面)及び面J5(第二分割面)形成された第一配管部T11の配管最上部に対応する点であり、第二点Z2及び第四点Z4は第一配管部T11の配管最下部に対応する点である。
【0057】
ここで、本例においては、基準面となる面J1に対して側面となる面J2-J5が90度折り曲げられて立設されて三次元の(即ち、立体面構造の領域である)第一領域R1が形成される。このため、三次元の第一領域R1が形成された場合、本例における第一点Z1及び第三点Z3と第二点Z2及び第四点Z4は、基準面である面J1からの高さに対応する。或いは、付加製造物Wの底面を基準とした場合には、第一点Z1及び第三点Z4と第二点Z2及び第四点Z4は、XYZ座標において、Z=0即ちXY平面からの高さに対応する。
【0058】
このため、座標データ生成部75は、図14に示すように、仮想面JS4によって接続された第一分割面である面J2と第二分割面である面J5とについて、三次元化に伴って面J2及び面J5を接続した際に一致するように面J2に設定された第一基準点Zb1及び面J5に設定された第二基準点Zb2を設定する。尚、本例においては、第一基準点Zb1及び第二基準点Zb2は、共に底面(基準面)である面J1の角部に設定されており、面J2及び面J5における共通の基準点になる。
【0059】
そして、座標データ生成部75は、第一分割面である面J2における第一配管部T11の第一点Z1及び第二点Z2を、第一基準点Zb1(及び第二基準点Zb2)を基準として生成する。又、座標データ生成部75は、第二分割面である面J5における第一配管部T11の第三点Z3及び第四点Z4を、第二基準点Zb2(及び第一基準点Zb1)を基準として生成する。
【0060】
座標データ生成部75は、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Z、より詳しくは、二次元座標(XY座標)における、第一内部配管T1の第一配管部T11の座標及び第一配管部T11と第二配管部T12との接続位置に関するデータである第一点Z1、第二点Z2、第三点Z3及び第四点Z4の座標と、第二内部配管T2の座標を生成する。そして、座標データ生成部75は、生成した全座標を含む座標データZDを出力する。
【0061】
三次元モデル生成部76は、再変換工程を実行する。三次元モデル生成部76は、座標データ生成部75によって生成された二次元座標上における座標データZDについて、本例においては、直方体形状の三次元モデル、換言すれば、三次元データを生成するように、計算処理を行う。即ち、この計算処理により、図16に示すように、直方体形状の第一領域R1が形成されることに伴い、トポロジー最適化により設計された二次元の流路構造Zが、底面(基準面)である面J1に配置される第二内部配管T2の三次元データに再変換され、側面(分割面)である面J2-J5に配置される第一内部配管T1の第一配管部T11の三次元データに再変換される。そして、三次元モデル生成部76は、第一内部配管T1の第一配管部T11及び第二内部配管T2に予め設定された管径の大きさに基づいて、図16に示すように(具体的には、図15に示すように)、二次元の流路構造Zを径方向に広げる。これにより、第一内部配管T1の第一配管部T11及び第二内部配管T2について、三次元化した即ち三次元データを有する三次元モデルMを生成する。
【0062】
ところで、三次元モデル生成部76によって第一領域R1が直方体形状の三次元化された場合、仮想面JS1-JS4は存在しなくなる。即ち、三次元モデル生成部76によって生成された三次元モデルMにおいては、流路構造設計部74によって設計された第一内部配管T1の第二配管部T12が存在しなくなる。第一内部配管T1が冷却水を流通させるためには、図15に示すように、三次元モデルMにおいて、分割面である面J2-J5に形成される第一配管部T11同士を接続する必要がある。
【0063】
そこで、三次元モデル生成部76は、図15に示すように、座標データ生成部75により生成された第一点Z1及び第三点Z3の座標を用いて、第一点Z1と第三点Z3との中央値(本例においては平均値)を表す、即ち、第一配管部T11の配管最上部を表す第一中央値KUを算出する。又、三次元モデル生成部76は、第二点Z2及び第四点Z4の座標を用いて、第二点Z2と第四点Z4との中央値(本例においては平均値)を表す、即ち、第一配管部T11の配管最下部を表す第二中央値KLを算出する。更に、三次元モデル生成部76は、第一中央値KUと第二中央値KLとの差分を表す差分値によって決定される第二配管部T12の管径KDを算出する。
【0064】
具体的に、三次元モデル生成部76は、下記式1、式2及び式3に従い、第二配管部T12における第一中央値KU、第二中央値KL及び差分値である管径KDを算出する。尚、下記式1におけるZ1及びZ3は上述した座標データ生成部75によって生成された第一点及び第三点であり、下記式2におけるZ2及びZ4は上述した座標データ生成部75によって生成された第二点及び第四点である。
KU=(Z1+Z3)/2 …式1
KL=(Z2+Z4)/2 …式2
KD=KU-KL …式3
これにより、最終形状設計部77は、側面(分割面)である面J2-J5に形成される第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12を設計する。
【0065】
最終形状設計部77は、形状最適化工程を実行する。最終形状設計部77は、再変換工程において座標データ生成部75及び三次元モデル生成部76によって生成された三次元モデルMについて、例えば、付加製造装置1における付加製造制約等を加味し、付加製造装置1によって付加製造可能な第一内部配管T1及び第二内部配管T2を最終的に設計する。この場合、最終形状設計部77は、三次元モデル生成部76によって算出された第一中央値KU、第二中央値KL及び管径KD(差分値)を用いて、第一領域R1の分割面であって側面である面J2-J5に形成される第一内部配管T1の第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12を設計する。即ち、最終形状設計部77は、図16に示すように、面J2及び面J3に形成される第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12、面J3及び面J4に形成される第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12、面J4及び面J5に形成される第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12、面J5及び面J2に形成される第一配管部T11同士を接続する第二配管部T12を設計する。
【0066】
又、最終形状設計部77は、第一内部配管T1及び第二内部配管T2に連通する流入路I及び流出路Oも最終的に設計する。そして、最終形状設計部77は、形状最適化した第一内部配管T1及び第二内部配管T2、流入路I及び流出路Oを含む付加製造物Wの形状を表す形状データSDを制御装置60に出力する。
【0067】
制御装置60においては、最適形状設計装置70の最終形状設計部77から出力された形状データSDに基づき、付加製造装置1を作動させる。これにより、図3に示すように、最適形状の第一内部配管T1及び第二内部配管T2(内部空間であって流路)を有する付加製造物W(金型)を付加製造することができる。
【0068】
以上の説明からも理解できるように、本例の最適形状設計装置70によれば、領域設定工程において領域設定部71が最適化目的について相対的に重要度の高い第一領域R1を設定することができる。そして、変換工程において領域展開部72が設定された第一領域R1を形成する面J1-J5を二次元に展開すると共に仮想面設定部73が分割面である面J2-J5の各々を接続する仮想面JS1-JS4を設定して付加することができる。
【0069】
これにより、最適化工程においては、流路構造設計部74が仮想面JS1-JS4が付加された第一領域R1の展開図データOZに対してトポロジー最適化を適用して流路構造Zを設計することができる。そして、再変換工程において座標データ生成部75及び三次元モデル生成部76によって流路構造Zに基づく内部空間T、即ち、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の三次元データを有する三次元モデルMが生成され、形状最適化工程において最終形状設計部77が最終的な第一内部配管T1及び第二内部配管T2の形状を設計して、形状データSDを付加製造装置1の制御装置60に出力することができる。
【0070】
これにより、トポロジー最適化において、最適化目的について相対的に重要度の低い第二領域R2の影響を受けることなく、第一領域R1における最適形状、換言すれば、最適化目的を達成する形状を設計することができる。又、二次元に展開した際に仮想面を付加してトポロジー最適化を行うため、三次元の付加製造物Wについてトポロジー最適化を行う場合に比べて、計算量を低減することができ、その結果、計算コストを低減することができると共に解析時間(計算時間)を短縮することができる。更に、仮想面JS1-JS4を設定して付加することができるため、計算領域に不連続領域を生じさせることがなく、最適化目的を達成する形状を設計することができる。
【0071】
(5.第一別例)
上述した本例においては、三次元モデル生成部76及び最終形状設計部77は、予め設定された管径となるように、第一内部配管T1及び第二内部配管T2を生成及び最終設計するようにした。これに代えて、三次元モデル生成部76及び最終形状設計部77は、図17に示すように、例えば、管径に関連する流量(又は流速)と温度との関係即ち流体の特性を記憶するデータベース78を用いて、目標温度(目標冷却温度)に対応する管径(流量又は流速)を決定するようにしても良い。これによれば、より最適な第一内部配管T1及び第二内部配管T2を設計することが可能になると共に、第一内部配管T1及び第二内部配管T2を流通する流体(冷却水)の圧損等を低減することが可能となる。
【0072】
(6.第二別例)
上述した本例及び第一別例においては、付加製造物Wである金型が直方体形状の凹部Hを有する場合を例示した。しかしながら、上述したように、凹部Hの形状については、直方体形状に限られず、有底円筒形状や角錐形状であっても良い。
【0073】
凹部Hが有底円筒形状の場合、例えば、第一領域Rを凹部Hの形状に合わせて有底円筒形状に設定すると、図18に示すように、円形状の底面である面J11と、円筒状の側面(周面)を形成する分割面として複数の面J12,J13,J14,J15とが、基準である面J11に平行となるように、二次元に展開される。そして、この場合においては、面J12と面J13とを連結する仮想面JS11、面J13と面J14とを連結する仮想面JS12、面J14と面J15とを連結する仮想面JS13、及び、面J15と面J12とを連結する仮想面JS14が設定される。又、面J12,J13,J14,J15には、それぞれ、三次元化されることに伴って接続された際に一致するように、第一基準点Zb1及び第二基準点Zb2が設定される。これにより、流路構造設計部74は、上述した本例及び第一別例と同様に、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zを設計する。尚、この場合、流路構造設計部74は、図18に示すように、円環状の第一内部配管T1及び第二内部配管T2を設計することができる。
【0074】
又、凹部Hが角錐形状(四角錘形状)の場合、例えば、第一領域Rを凹部Hの形状に合わせて角錐形状(四角錘形状)に設定すると、図19に示すように、筒状の側面(周面)を形成する複数の面J21,J22,J23,J24が二次元に展開される。そして、この場合においては、面J21と面J22とを連結する仮想面JS21、面J22と面J23とを連結する仮想面JS22、面J23と面J24とを連結する仮想面JS23、及び、面J24と面J21とを連結する仮想面JS24が設定される。又、面J21,J22,J23,J24の共通する頂点には、三次元化されることに伴って接続された際に一致するように、共通の第一基準点Zb1(第二基準点Zb2)が設定される。これにより、流路構造設計部74は、上述した本例及び第一別例と同様に、第一内部配管T1及び第二内部配管T2の流路構造Zを設計する。
【0075】
(6.その他)
上述した本例、第一別例及び第二別例においては、付加製造物Wの内部空間Tとして、各々1本の第一内部配管T1及び第二内部配管T2を形成するようにした。しかしながら、内部空間T、即ち、流路である第一内部配管T1及び第二内部配管T2を形成する数については、限定されるものではなく、上述したように、必要に応じて複数本を形成可能である。例えば、図20に示すように、第一内部配管T1を2本形成すると共に、第二内部配管T2を1本形成することも可能である。
【0076】
又、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、付加製造物Wとしてキャビティである四角状の有底形状の凹部Hを有する金型を例示した。しかし、付加製造物Wとしては、金型に限られるものではなく、内部空間T、特に、流路として冷却路を有するものであれば、例えば、上述した工作機械の主軸とすることも可能である。
【0077】
工作機械の主軸は、回転部材と、回転部材を回転可能に支持する有底円筒形状部を有するハウジングとを有する。この場合、有底円筒形状部は、回転部材が回転することにより高温になる場合があり、適切に冷却される必要がある。従って、工作機械の主軸を付加製造装置1によって製造する場合には、最適形状設計装置70を用いた設計方法に従い、領域設定工程、変換工程、最適化工程、再変換工程、及び、必要に応じて形状最適化工程を経ることにより、例えば、図18に示すように、有底円筒形状部を冷却する冷却路を最適に設計することができる。従って、付加製造物Wとして工作機械の主軸を付加製造する場合であっても、最適形状設計装置70を用いた設計方法に従って主軸を形成する円筒形状部を冷却する最適形状の冷却路を設計することができ、上述した本例、第一別例及び第二別例と同様の効果が得られる。
【0078】
又、上述した本例及び第一別例においては、付加製造物Wに形成される内部空間として単純な形状を有する第一内部配管T1及び第二内部配管T2を例示した。しかし、付加製造装置1によれば、内部空間が複雑な形状であっても、付加製造することが可能である。
【0079】
ところで、内部空間が、例えば、箱形状であって複雑な形状を有する場合、重力等の作用により、付加製造中に造形した内部空間の形状が変化する可能性がある。このため、内部空間の形状が複雑な場合には、最終形状設計部77は、例えば、内部空間を形成するオーバハング部分の重力による沈み込みを防止する支持部材を最終形状として設計することができる。この場合、内部空間に関連する最適化目的は、例えば、内部空間を形成する壁の強度や形状を最適化することを例示することができ、第一領域は、例えば、内部空間の壁を含む複数の側面を設定することができる。これにより、側面を展開した展開図データにおいて、壁を支持する支持部材の強度や形状の最適化目的に基づくトポロジー最適化を行うことができる。
【0080】
更に、上述した本例及び第一別例においては、材料粉末として金属粉末Sを用いて付加製造する場合を例示した。材料粉末としては、金属の粉末に限られず、例えば、樹脂の粉末であっても、付加製造することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…付加製造装置、10…チャンバ、20…付加製造物支持装置、21…付加製造用容器、22…昇降テーブル、23…ベース、30…粉末供給装置、31…粉末収納容器、32…供給テーブル、33…リコータ、40…光ビーム照射装置、40a…光ビーム、41…レーザ発振器、42…レーザヘッド、43…光ファイバ、50…加熱装置、60…制御装置、61…データ記憶部、62…昇降テーブル作動制御部、63…粉末供給制御部、64…光ビーム照射制御部、65…加熱制御部、S…金属粉末(材料粉末)、W…付加製造物、W1…仮の付加製造物、70…最適形状設計装置、71…領域設定部、72…領域展開部、73…仮想面設定部、74…流路構造設計部、75…座標データ生成部、76…三次元モデル生成部、77…最終形状設計部、78…データベース、H…凹部、R1…第一領域、R2…第二領域、J1…面(基準面)、J2…面(分割面、第一分割面)、J3…面(分割面)、J4…面(分割面)、J5…面(分割面、第二分割面)、JS1-JS4…仮想面、T…内部空間、T1…第一内部配管、T11…第一配管部,T12…第二配管部、T2…第二内部配管、I…流入路、O…流出路、OT…実展開図データ、OK…付加データ、OZ…展開図データ、Z…流路構造、ZD…座標データ、Zb1…第一基準点、Zb2…第二基準点、Z1…第一点、Z2…第二点、Z3…第三点、Z4…第四点、M…三次元モデル、SD…形状データ
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