(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】注入口配設構造
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240925BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20240925BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZHV
F01N3/08 ZAB
B60K13/04 A
B60K15/063 A
(21)【出願番号】P 2020191098
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】國井 一人
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221884(JP,A)
【文献】実開昭63-174569(JP,U)
【文献】国際公開第98/042972(WO,A1)
【文献】特開2008-012932(JP,A)
【文献】特開2016-216040(JP,A)
【文献】特開2018-141360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B60K 13/04
B60K 15/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられた乗降用のステップ部と、
排ガス浄化用の液体還元剤を還元剤タンクに注入するための注入口と、を備え、
前記ステップ部は、前記車室の床面よりも低い位置に踏面を有し、
前記注入口は、前記ステップ部における、前記床面より低く、前記踏面より高い位置に配設されて
おり、
前記ステップ部の近傍の車体に乗降用の開口部が形成されており、
前記開口部の周縁部には、当該開口部をシールするシール部材が設けられ、
前記踏面の外縁部は、前記シール部材のうち当該踏面の下方に位置する部分のピーク部よりも車室外方に延出している、注入口配設構造。
【請求項2】
前記踏面の面積は、前記床面の面積よりも小さい、請求項1に記載の注入口配設構造。
【請求項3】
前記注入口は、前記踏面に向かう下り勾配の傾斜面に突設されており、
前記傾斜面における該傾斜面の勾配方向と直交する方向の両端部には、前記勾配方向に沿って延在するガイド壁が立設されている、請求項1又は2に記載の注入口配設構造。
【請求項4】
前記踏面にはカーペットが敷設されない、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の注入口配設構造。
【請求項5】
プロペラシャフトよりも車幅方向一方側に燃料タンクが配設され、
前記プロペラシャフトよりも車幅方向他方側に前記還元剤タンクが配設され、
前記注入口は、車幅方向において前記還元剤タンクが配設される側に設けられた前記ステップ部に配設される、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の注入口配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入口配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車室外に開口する給油口を有する燃料タンクと、排気浄化に用いる液体還元剤としての尿素水溶液を貯蔵する尿素タンクとを搭載した車両の排気浄化装置配設構造であって、前記尿素タンクは車室外に配設され、該尿素タンクの注入口は車室内に設けた、車両の排気浄化装置配設構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の排ガス浄化用の液体還元剤を還元剤タンクに注入するための注入口を、ラゲッジスペース内に設けたものがある。そのような構造では、液体還元剤を注入口から注入する際にラゲッジスペースの床面に液体還元剤がこぼれる可能性が有る。ラゲッジスペースの床面にはフェルト等の生地で構成されたカーペットが敷設されており、当該液体還元剤はカーペットにしみ込む。液体還元剤は乾燥すると白化するため、乾燥する前に除去することが望ましい。しかし、カーペットにしみ込んだ当該液体還元剤を、拭き取り又は洗浄等の清掃手段により簡易に除去することはできず、清掃作業が煩雑となる要因となっていた。
【0005】
本発明の目的は、液体還元剤をこぼした際の清掃作業を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る注入口配設構造では、液体還元剤を還元剤タンクに注入するための注入口が、乗降用のステップ部における、車室の床面より低く、踏面より高い位置に配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体還元剤をこぼした際の清掃作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る注入口配設構造を左前上方から見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る注入口配設構造の変形例を示す、
図1に相当する左前上方から見た斜視図である。
【
図4】
図1のステップ部の車両後方側近傍を示す左側面図である。
【
図5】実施形態に係る車両の車室外の配設関係を表す下面図である。
【
図7】実施形態に係る注入口配設構造の変形例であって、ステップ部の車両後方側近傍を示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る注入口配設構造の変形例であって、ステップ部の車両後方側近傍を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態にかかる注入口配設構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方をそれぞれ示し、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方をそれぞれ示す。なお、以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車両上下方向上方、下方、車両左右方向左方、右方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「車両上方」「車両下方」「車両左方」「車両右方」と称する。また、LH方向及びRH方向は車室外方に相当する。なお、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態にかかる車両V(
図1,
図2,
図3,及び
図5参照)は、例えばディーゼルエンジンを動力として走行するディーゼル自動車である。ディーゼルエンジンは窒素酸化物を含んだ排ガスを排出する。そのため、車両Vは、排ガス中の窒素酸化物を、窒素及び水蒸気に還元することにより、排ガスを浄化する排ガス浄化機能を備える。
【0011】
排ガス浄化は、ディーゼルエンジンから排出されたガスが排気管を経由して排出される過程において、排ガスに液体還元剤を噴射することにより行う。より具体的には、還元剤タンクに貯蔵された液体還元剤をポンプで吸引し、配管及び噴射ノズルを通じて排気管中に噴射する。噴射された液体還元剤は、例えばエンジンの排熱により加水分解されてアンモニアガスを生じる。そして、排ガス中の窒素酸化物は、当該アンモニアガスと化学反応することにより、窒素及び水蒸気に還元される。このようにして排ガス浄化が行われる。
【0012】
本実施形態にかかる注入口配設構造1は、
図1乃至
図8に示すように、床面10、ステップ部20、踏面30、注入口40、及び還元剤タンク50を備える。
【0013】
車両Vは、
図1乃至
図3、及び
図5乃至
図6に示すように、板状の部材であるフロアパネル5によって、車室内と車室外とに区分されている。フロアパネル5の車室内側の面は床面10を構成する。床面10には乗員が着座するためのシート100が、所定の位置に設けられている。車室内のうちシート100よりも車両後方側の部分は荷物を積載するスペース(ラゲッジスペース)を構成する。床面10には、例えばフェルト、ナイロン、又はポリプロピレン等の繊維を織って構成した生地を備えたカーペットが敷設されている。なお、シート100は設けられていなくてもよい。その場合には、図示しない運転席よりも車両後方側の部分がラゲッジスペースを構成する。
【0014】
図1乃至
図3に示すように、車両Vの車両左方側面には、乗員が乗降するための開口部60が設けられている。開口部60は、図示しないスライドドアにより開閉される。また、開口部60の周縁部65には、開口部60とスライドドアとの間に介在することにより、開口部60をシールするシール部材67が設けられている。このため、車外の風雨や音が、開口部60とスライドドアとの隙間を通って車内に侵入することが抑制される。
【0015】
なお、開口部60の位置は車両Vの車両左方側面に限定されない。換言すれば、開口部60は、車両Vの車両右方側面に設けられていてもよく、車両左方側面及び車両右方側面に設けられていてもよい。また、車両前後方向における開口部60の位置は、シート100の位置に従い適宜設定することができる。
【0016】
図1に示すように、開口部60の車室内側近傍には、乗員が車両Vに乗降する際に用いるステップ部20が設けられている。床面10とステップ部20とで、全体として階段状の形状をなすように構成されている。
【0017】
ステップ部20は車室の床面10よりも低い位置に、乗員が車両Vに対して乗降する際に一時的に足を載せるための面である踏面30を有している。踏面30は車両前後方向に延在する、略矩形の領域である。踏面30の面積は床面10の面積よりも小さい。踏面30の車幅方向における車室内側端部には、床面10と踏面30との間で段差をなす蹴上部25が形成されている。また、ステップ部20は、端部領域22を車両後方側に有する。端部領域22には、還元剤タンク50に液体還元剤を注入するための注入口40が配設されている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、ステップ部20は、ステップ部20を覆うカバー部材としてのステップパネル70を備えてもよい。ステップパネル70は、ステップ部20の踏面30を覆うパネル踏面73を有している。この場合において、パネル踏面73は、ステップ部20の踏面30に相当する。また、ステップパネル70は、例えばステンレス、アルミ等の金属や、樹脂素材で構成されている。ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、ステップ部20の破損を抑制することができる。
【0019】
パネル踏面73と端部領域22との間には仕切部75が立設されている。換言すれば、ステップ部20は、踏面30又は踏面30に相当するパネル踏面73と、端部領域22との間に立設された、仕切部75を備えていてもよい。仕切部75は、踏面30又はパネル踏面73とステップ部20の端部領域22とを仕分けている。
【0020】
また、仕切部75には開口77が形成されている。このため、ステップパネル70を除去することなく、後述する蓋部40aの操作、及び注入口40に液体還元剤を注入する作業を行うことができる。なお、ステップパネル70は、仕切部75及び開口77を覆う壁部カバー(図示せず)を備えていてもよい。これにより、注入口40の破損を抑制することができる。
【0021】
踏面30又はパネル踏面73には、床面10と異なり、上述のようなカーペットが敷設されていない。換言すれば、
図1乃至
図3に示すように、ステップ部20においては、踏面30又はパネル踏面73の表面が露出している。なお、踏面30又はパネル踏面73には、合成ゴム、塩化ビニル、又は樹脂トリム等から構成されたステップマットが敷設されていてもよい。
【0022】
図示した例では、ステップ部20は、車両Vの車両左方側面に設けられた開口部60の車室側近傍に配設されているが、これに限定されない。換言すれば、ステップ部20は、開口部60の設けられた位置に応じて開口部60の車室側に配設されていればよい。
【0023】
図3に示すように、踏面30と車両Vの下部ボディパネル80との間には、車室外方に向けて開口した空間Sが形成されている。空間Sには、スライドドアを車両前後方向に移動可能に支持するガイドアーム(図示せず)、ヒンジ(図示せず)等のスライド機構が収納される。
【0024】
下部ボディパネル80の車室外方側端部は、開口部60の周縁部65のうち、車両下方側の縁部を構成する。よって、下部ボディパネル80の車室外方側端部はシール部材67を備える。
【0025】
シール部材67のうち、周縁部65の車両下方側縁部に設けられた部分(下縁部)は、車両前後方向視において、全体として車室外方に向けて下り勾配となる傾斜を有する。また、当該下縁部は、車両前後方向視において最も車両上方に位置するピーク部67pを有する。なお、当該下縁部の傾斜は、車外方向に向けて単調に高さを減ずる態様に限定されない。図に例示したように、車外方向に向けて登り勾配となる部分を含んでいてもよい。
【0026】
踏面30の外縁部30aは、車幅方向においてピーク部67pよりも車室外方に位置するように構成されている。換言すれば、外縁部30aは、シール部材67のうち踏面30の下方に位置する部分のピーク部67pよりも車室外方に延出している。なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、パネル踏面73の外縁部73aは、シール部材67のうちパネル踏面73の下方に位置する部分のピーク部67pよりも車室外方に延出している。
【0027】
なお、踏面30の外縁部30a又はパネル踏面73の外縁部73aは、シール部材67のうち踏面30又はパネル踏面73の下方に位置する部分よりも車室外方に延出してもよい。
【0028】
図4及び
図8に示すように、ステップ部20の端部領域22には、車室外に配設された還元剤タンク50に向けて延伸するチューブTが、車両前方斜め上方向に向けて突出している。また、チューブTの車室側先端部には、排ガス浄化用の液体還元剤を還元剤タンク50に注入するための注入口40が配設されている。注入口40は、例えばブラケット等の固定具を介して、端部領域22の底面に固定されている。
【0029】
注入口40は、ステップ部20における、床面10より低く、踏面30より高い位置に配設されている。また、注入口40はチューブTを介して、注入口40よりも低い位置に配設された還元剤タンク50に接続されている。
【0030】
注入口40は注入開口部(図示せず)と、蓋部40aと、を備える。注入開口部は、車両前方斜め上方向に向けて開口する、液体還元剤を注入するための開口である。蓋部40aを操作することにより、注入開口部を開閉することができる。図に例示した注入口40は、蓋部40aにより注入開口部が閉じられた状態である。
【0031】
なお、本実施形態では、ステップ部20の車両後方側に注入口40を配設したが、注入口40の配設位置はこれに限定されない。例えば、ステップ部20の車両前方側や、車幅方向中心側に注入口40を配設してもよい。
【0032】
図2、
図3、
図7、及び
図8に示すように、注入口40は、踏面30に向かう下り勾配の傾斜面43を有するガイド部を備えていてもよい。換言すれば、注入口40は、踏面30に向かう下り勾配の傾斜面43に突設されている。また、傾斜面43の勾配方向と直交する方向の両端部は、車両上方に向けて起立するガイド壁43aを有する。換言すれば、傾斜面43における該傾斜面43の勾配方向と直交する方向の両端部には、該勾配方向に沿って延在するガイド壁43aが立設されている。ガイド部は、傾斜面43とガイド壁43aとで、全体として溝型形状をなす。
【0033】
なお、
図7及び
図8に示すように、傾斜面43は、車室外方に向かう下り勾配の傾斜を有していてもよい。なお、図示した例では、注入口40はガイド部を別体として備えるが、一体的に備えていてもよい。
【0034】
なお、
図2に示すように、ステップ部20にステップパネル70が設けられている場合には、注入口40の車両前方側に仕切部75が立設されている。また、傾斜面43の下方端部は、仕切部75よりもパネル踏面73に向けて延出している。
【0035】
次に、車両Vの車室外における、プロペラシャフト90、燃料タンク95、及び還元剤タンク50の配設について説明する。
【0036】
図5及び
図6に示すように、車両Vの車室外には、プロペラシャフト90、燃料タンク95、及び還元剤タンク50が配設されている。図示した例では、プロペラシャフト90は車幅方向略中央において、車両前後方向に延在するように配設されている。燃料タンク95は、プロペラシャフト90の車幅方向右方に配設されており、フロアパネル5の車両下方側に、図示しないボルト等の締結具を介して締結されている。また、還元剤タンク50は、プロペラシャフト90よりも車幅方向左方に配設されており、フロアパネル5の車両下方側に、図示しないボルト等の締結具を介して締結されている。
【0037】
注入口40は、車幅方向において還元剤タンク50が配設される側である、車幅方向左方に設けられたステップ部20に配設されている。
【0038】
なお、燃料タンク95と還元剤タンク50とは、適宜入れ替えて配設してもよい。即ち、燃料タンク95はプロペラシャフト90よりも車幅方向一方側に配設され、還元剤タンク50はプロペラシャフト90よりも車幅方向他方側に配設されていればよい。また、注入口40は、車幅方向において還元剤タンク50が配設される側に設けられたステップ部20に配設されていればよい。
【0039】
図4、
図5及び
図8に示すように、注入口40と還元剤タンク50とは、チューブTにより接続されている。より具体的には、チューブTは還元剤タンク50から車幅方向外側に向けて延伸し、略直角に屈曲して車両前方に向けて延伸し、車室内に導入される。
【0040】
図4及び
図8に示すように、車室内側では、チューブTは車両前方斜め上に向けて延伸し、注入口40と接続される。よって、注入口40とチューブTとは、略直線状に接続される。これにより、注入開口部から注入した液体還元剤が、チューブTの内部に滞留することが抑制され、液体還元剤を注入する作業を効率的に行うことができる。なお、図示した例のように、チューブTは、継手等の接続具を用いて、複数の配管部材を接続して構成されていてもよい。
【0041】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0042】
上記の通り、車両Vは、還元剤タンク50に貯蔵した液体還元剤を用いて、排ガスを浄化する機能を備える。また、還元剤タンク50に貯蔵された液体還元剤は、揮発や排ガスの浄化に用いられたことにより減少するため、所定又は任意のタイミングで液体還元剤を補充する必要がある。
【0043】
液体還元剤を補充する作業は、注入口から、交換用液体還元剤ボトルの液体還元剤を注入することにより行う。そして、この作業中に、作業者が誤って液体還元剤の一部を注入口からこぼす可能性がある。こぼれた液体還元剤は乾燥すると白化するため、乾燥する前に拭き取り又は洗浄等の清掃手段により容易に除去できることが望ましい。
【0044】
本実施形態の注入口配設構造1においては、液体還元剤を還元剤タンク50に補充する際には、まず注入口40の蓋部40aを外し、注入開口部を露出させる。次に、交換用液体還元剤ボトルの液体還元剤を、ノズルや漏斗等を用いて、注入開口部に注入する。注入された液体還元剤は、チューブTを介して還元剤タンク50に補充される。
【0045】
排ガス浄化用の液体還元剤としては、例えば、水と尿素とを所定の比率で含んだ尿素水を用いることができる。具体的には、尿素を25重量%乃至40重量%含んだ尿素水を用いることができる。そのような尿素水は、常温でアンモニアガスを生じず、臭気が抑制されている。そのため、液体還元剤を還元剤タンクに補充する際の取り扱いが容易である。
【0046】
(1)本実施形態では、注入口配設構造1は、車室内に設けられた乗降用のステップ部20と、排ガス浄化用の液体還元剤を還元剤タンク50に注入するための注入口40と、を備える。さらに、ステップ部20は、車室の床面10よりも低い位置に踏面30を有し、注入口40は、ステップ部20における、床面10より低く、踏面30より高い位置に配設されている。
【0047】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、注入口配設構造1は、車室内に設けられた乗降用のステップ部20と、排ガス浄化用の液体還元剤を還元剤タンク50に注入するための注入口40と、を備える。さらに、ステップ部20は、車室の床面10よりも低い位置にパネル踏面73を有し、注入口40は、ステップ部20における、床面10より低く、パネル踏面73より高い位置に配設されている。
【0048】
これにより、液体還元剤を還元剤タンク50に補充する作業を行う際に、誤って液体還元剤の一部をこぼした場合であっても、当該液体還元剤は床面10にこぼれることなく、踏面30又はパネル踏面73にこぼれることとなる。よって、当該液体還元剤が、カーペットが敷設された床面10へと流出することを抑制できる。さらに、踏面30又はパネル踏面73は床面10より低いので、こぼれた液体還元剤を洗い流す際に、床面10を濡らすことを抑制できる。これにより、液体還元剤をこぼした際の清掃作業が容易になる。
【0049】
(2)本実施形態に係る注入口配設構造1では、踏面30の面積は、床面10の面積よりも小さい。
【0050】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、注入口配設構造1では、パネル踏面73の面積は、床面10の面積よりも小さい。
【0051】
これにより、こぼれた液体還元剤が広がる範囲をより小さく規制することができる。よって、清掃範囲を縮小することができる。
【0052】
(3)本実施形態に係る注入口配設構造1では、注入口40は、踏面30に向かう下り勾配の傾斜面43に突設されている。また、傾斜面43における傾斜面43の勾配方向と直交する方向の両端部には、当該勾配方向に沿って延在するガイド壁43aが立設されている。
【0053】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、注入口配設構造1では、注入口40は、パネル踏面73に向かう下り勾配の傾斜面43に突設されている。また、傾斜面43における傾斜面43の勾配方向と直交する方向の両端部には、当該勾配方向に沿って延在するガイド壁43aが立設されている。
【0054】
これにより、注入口40からこぼれた液体還元剤は、傾斜面43に沿って流動するとともに、ガイド壁43aにより傾斜面43の勾配方向と直行する方向への流動が規制される。そのため、当該液体還元剤をより確実に踏面30又はパネル踏面73へ導くことができ、チューブTや注入口40を固定するためのブラケット等の固定具が設けられた端部領域22への当該液体還元剤の流出が抑制される。よって、液体還元剤をこぼした際の清掃作業が容易になる。
【0055】
なお、傾斜面43は、車室外方に向かう下り勾配の傾斜を有していてもよい。
【0056】
これにより、注入口40からこぼれた液体還元剤は、傾斜面43を車室外方に向けて流動する。そのため、当該液体還元剤をより確実に踏面30又はパネル踏面73の車室外方側へと導くことができる。踏面30又はパネル踏面73の車室外方側は開口部60から近く、清掃作業が容易な領域である。よって、液体還元剤をこぼした際の清掃作業が容易になる。
【0057】
(4)本実施形態に係る注入口配設構造1では、ステップ部20の近傍の車体に乗降用の開口部60が形成されている。そして、開口部60の周縁部65には、開口部60をシールするシール部材67が設けられている。さらに、踏面30の外縁部30aは、シール部材67のうち踏面30の下方に位置する部分のピーク部67pよりも車室外方に延出している。
【0058】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、注入口配設構造1では、ステップ部20の近傍の車体に乗降用の開口部60が形成されている。そして、開口部60の周縁部65には、開口部60をシールするシール部材67が設けられている。さらに、パネル踏面73の外縁部73aは、シール部材67のうちパネル踏面73の下方に位置する部分のピーク部67pよりも車室外方に延出している。
【0059】
これにより、踏面30又はパネル踏面73にこぼれた液体還元剤が車室外方に向けて流出した際に、シール部材67に向けて滴下した当該液体還元剤は、車室外方に向けて流動する。そのため、踏面30と車両Vの下部ボディパネル80との間の、スライドドア用ヒンジ等を設けた空間Sに、当該液体還元剤が流入することを抑制できる。また、当該液体還元剤を車室外方に向けて洗い流す際にも同様の効果が得られる。
【0060】
踏面30の外縁部30aは、シール部材67のうち踏面30の下方に位置する部分よりも車室外方に延出してもよい。
【0061】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、パネル踏面73の外縁部73aは、シール部材67のうちパネル踏面73の下方に位置する部分よりも車室外方に延出してもよい。
【0062】
これにより、踏面30又はパネル踏面73にこぼれた液体還元剤が車室外方に向けて流出した際に、当該液体還元剤が車外に向けて直接滴下する。そのため、踏面30と車両Vの下部ボディパネル80との間の、スライドドア用ヒンジ等を設けた空間Sに、当該液体還元剤が流入することを抑制できる。また、当該液体還元剤を車室外方に向けて洗い流す際にも同様の効果が得られる。
【0063】
(5)本実施形態に係る注入口配設構造1では、踏面30にはカーペットが敷設されない。
【0064】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、注入口配設構造1では、パネル踏面73にはカーペットが敷設されない。
【0065】
これにより、注入口40からこぼれた液体還元剤は、踏面30又はパネル踏面73の金属製表面や、踏面30又はパネル踏面73に敷設された合成ゴム、塩化ビニル、又は樹脂トリム等から構成されたステップマットの表面のように、当該液体還元剤がしみ込まない材質により構成された面上にこぼれることとなる。そのため、踏面30又はパネル踏面73にカーペットが敷設された場合と異なり、拭き取り又は洗浄等の清掃手段により、容易に当該液体還元剤を除去することができる。
【0066】
(6)本実施形態に係る注入口配設構造1では、プロペラシャフト90よりも車幅方向一方側に燃料タンク95が配設されている。そして、プロペラシャフト90よりも車幅方向他方側に還元剤タンク50が配設されている。さらに、注入口40は、車幅方向において還元剤タンク50が配設される側に設けられたステップ部20に配設されている。
【0067】
これにより、注入口40と還元剤タンク50とをより近づけ、チューブTの長さを短くすることができる。これにより、注入口配設構造1をより簡易に構成することができる。
【0068】
(7)本実施形態に係る注入口配設構造1では、ステップ部20は、踏面30と端部領域22との間に立設された、仕切部75を備えていてもよい。
【0069】
なお、ステップ部20がステップパネル70を備える場合には、ステップ部20は、パネル踏面73と端部領域22との間に立設された、仕切部75を備えていてもよい。
【0070】
これにより、踏面30又はパネル踏面73にこぼれた液体還元剤が、チューブTや注入口40を固定するためのブラケット等の固定具が設けられた端部領域22への当該液体還元剤の流出が抑制される。そのため、液体還元剤をこぼした際の清掃作業が容易になる。
【0071】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0072】
上記実施形態では、ディーゼル自動車を例にとって説明したが、本発明がクリーンディーゼル車、ディーゼルハイブリッド車などにも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10 床面
20 ステップ部
30 踏面
30a 外縁部
40 注入口
43 傾斜面
43a ガイド壁
50 還元剤タンク
60 開口部
65 周縁部
67 シール部材
67p ピーク部
90 プロペラシャフト
95 燃料タンク