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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】搬送装置および画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 26/04 20060101AFI20240925BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B65H26/04
B41J15/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020196573
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085082
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】西垣 裕次
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 輝人
(72)【発明者】
【氏名】森下 悠理
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133360(JP,A)
【文献】特開2015-116798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 26/04
B41J 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のシートが巻かれて形成されたロール体を支持した状態で回転可能な支持部材と、
上記ロール体から引き出された上記シートを搬送向きに送る搬送ローラと、
上記搬送ローラより上記搬送向きの上流に位置し、上記ロール体から引き出された上記シートと接触し、上記支持部材および上記搬送ローラの各軸と交差する交差方向に移動可能なガイド部材と、
上記ガイド部材に接触する上記シートに張力を付与するように、上記交差方向の成分を含む付勢方向に上記ガイド部材を付勢する付勢部材と、
上記交差方向における上記ガイド部材の位置を検出するセンサと、
コントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記支持部材および上記搬送ローラがそれぞれ回転するように制御し、
上記ロール体の径に応じて、上記ガイド部材の上記交差方向における目標位置を決定するとともに、決定した目標位置に応じた許容位置を決定し、
上記ガイド部材の上記交差方向における位置が、決定した上記目標位置となるように、上記支持部材の回転量および上記搬送ローラの回転量の少なくとも一方を制御し、
上記センサにより検出された上記ガイド部材の位置が上記許容位置を超えているか否かを判定し、
上記許容位置を超えていると判定したことに応じて、上記シートの搬送エラーを報知する、搬送装置。
【請求項2】
長尺のシートが巻かれて形成されたロール体を支持した状態で回転可能な支持部材と、
上記ロール体から引き出された上記シートを搬送向きに送る搬送ローラと、
上記搬送ローラより上記搬送向きの上流に位置し、上記ロール体から引き出された上記シートと接触し、上記支持部材および上記搬送ローラの各軸と交差する交差方向に移動可能なガイド部材と、
上記ガイド部材に接触する上記シートに張力を付与するように、上記交差方向の成分を含む付勢方向に上記ガイド部材を付勢する付勢部材と、
上記交差方向における上記ガイド部材の位置を検出するセンサと、
コントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記支持部材および上記搬送ローラがそれぞれ回転するように制御し、
上記ロール体の径に応じて、上記ガイド部材の上記交差方向における目標位置を決定するとともに、決定した目標位置に応じた許容位置を決定し、
上記ガイド部材の上記交差方向における位置が、決定した上記目標位置となるように、上記支持部材の回転量および上記搬送ローラの回転量の少なくとも一方を制御し、
上記センサにより検出された上記ガイド部材の位置が上記許容位置を超えているか否かを判定し、
上記許容位置を超えていると判定したことに応じて、上記支持部材および上記搬送ローラの回転を停止させるように制御する、搬送装置。
【請求項3】
上記許容位置は、上記目標位置を基準とする第1許容位置および第2許容位置を含み、
上記第1許容位置は、上記目標位置を基準として上記第2許容位置より遠くの位置であり、
上記コントローラは、
上記搬送ローラを加速若しくは減速させるよう回転させている場合には、上記センサによる検出位置が上記第1許容位置を超えたときに上記報知を行い、
上記搬送ローラを定速で回転させている場合には上記検出位置が上記第2許容位置を超えたときに上記報知を行う、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
上記交差方向および上記付勢方向とは互いに平行な方向であり、
上記センサは、リニアエンコーダである、請求項1からのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
上記付勢方向は、上記搬送向きと逆向きの成分を含む方向である、請求項1からのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
上記ガイド部材と上記支持部材との間には、上記ロール体から引き出された上記シートを送る搬送ローラが設けられていない、請求項1からのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の搬送装置と、
上記搬送ローラにより送られた上記シートに画像を記録する記録ヘッドと、を備える画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール紙プリンタに用いられ、ロール紙を搬送するための搬送装置が記載されている。搬送装置には、ロール紙の搬送路においてロール紙の収納部および搬送ローラの間に、ロール紙に作用する張力の変動に追従して移動可能なテンショナが備わっている。搬送装置のコントローラは、テンショナが可動領域内の目標位置に位置するように、搬送ローラやロール紙の回転量を制御する。また、コントローラは、テンショナが可動領域内のエラー領域に留まり続けると、ロール紙の搬送エラーが発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-117125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロール紙プリンタでは、印刷によりロール紙の径が変わると、収納部およびテンショナの間におけるロール紙の搬送ルートが変わる。その結果、テンショナがロール紙により移動させられ、テンショナの目標位置が変わる。しかし、ロール紙プリンタではエラー領域が固定されているため、ロール紙の径が変わると、搬送エラーを誤判定するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、テンショナの目標位置を変更する搬送装置において、搬送エラーの誤判定を抑制可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置であって、長尺シートが巻かれて形成されたロール体を支持した状態で回転可能な支持部材と、上記ロール体から引き出された上記シートを搬送向きに送る搬送ローラと、上記搬送ローラより上記搬送向きの上流に位置し、上記ロール体から引き出された上記シートと接触し、上記支持部材および上記搬送ローラの各軸と交差する交差方向に移動可能なガイド部材と、上記ガイド部材に接触する上記シートに張力を付与するように、上記交差方向の成分を含む付勢方向に上記ガイド部材を付勢する付勢部材と、上記交差方向における上記ガイド部材の位置を検出するセンサと、コントローラと、を備える。上記コントローラは、上記支持部材および上記搬送ローラがそれぞれ回転するように制御し、上記ロール体の径に応じて、上記ガイド部材の上記交差方向における目標位置を決定するとともに、決定した目標位置に応じた許容位置を決定し、上記ガイド部材の上記交差方向における位置が、決定した上記目標位置となるように、上記支持部材の回転量および上記搬送ローラの回転量の少なくとも一方を制御し、上記センサにより検出された上記ガイド部材の位置が上記許容位置を超えているか否かを判定し、上記許容位置を超えていると判定したことに応じて、上記シートの搬送エラーを報知する。
【0007】
本発明の搬送装置であって、長尺シートが巻かれて形成されたロール体を支持した状態で回転可能な支持部材と、上記ロール体から引き出された上記シートを搬送向きに送る搬送ローラと、上記搬送ローラより上記搬送向きの上流に位置し、上記ロール体から引き出された上記シートと接触し、上記支持部材および上記搬送ローラの各軸と交差する交差方向に移動可能なガイド部材と、上記ガイド部材に接触する上記シートに張力を付与するように、上記交差方向の成分を含む付勢方向に上記ガイド部材を付勢する付勢部材と、上記交差方向における上記ガイド部材の位置を検出するセンサと、コントローラと、を備える。
【0008】
上記コントローラは、上記支持部材および上記搬送ローラがそれぞれ回転するように制御し、上記ロール体の径に応じて、上記ガイド部材の上記交差方向における目標位置を決定するとともに、決定した目標位置に応じた許容位置を決定し、上記ガイド部材の上記交差方向における位置が、決定した上記目標位置となるように、上記支持部材の回転量および上記搬送ローラの回転量の少なくとも一方を制御し、上記センサにより検出された上記ガイド部材の位置が上記許容位置を超えているか否かを判定し、上記許容位置を超えていると判定したことに応じて、上記支持部材および上記搬送ローラの回転を停止させるように制御する。
【0009】
本発明の画像記録装置は、第1形態および第2形態のいずれかの搬送装置と、上記搬送ローラにより送られた上記シートに画像を記録する記録ヘッドと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テンショナの目標位置を変更する搬送装置において、搬送エラーの誤判定を抑制可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】搬送装置200を備えた画像記録装置100の構成を示す模式図。
図2】画像記録装置100および搬送装置200のブロック図。
図3】ガイド部材230,付勢部材240およびセンサ260の詳細な構成を示す模式図。
図4】画像記録装置100における画像記録の処理手順を示すフローチャート。
図5】(A)は、テーブル281の内容を示す模式図であり、(B)は、可動範囲MRにおける目標位置TPおよび許容位置PPとの関係を示す模式図。
図6】画像記録装置100における搬送停止・搬送エラー報知の処理手順を示すフローチャート。
図7】変形例に係る画像記録の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る画像記録装置100および搬送装置200について説明する。なお、実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0013】
[用語の定義]
以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、図1等に示すように、画像記録装置100が使用可能に設置された状態を基準として上下方向7が定義され、排出口118が設けられている側を手前側として前後方向8が定義され、画像記録装置100を前方から見て左右方向9が定義される。
【0014】
[画像記録装置100の外観構成]
図1において、画像記録装置100は、ラベルプリンタであって、ロール体211をなすシート213に画像をインクジェット記録方式で記録する。画像記録装置100は、卓上、床面またはラックに載置した状態で使用可能である。
【0015】
[筐体110]
画像記録装置100は、概ね直方体形状の筐体110を備える。筐体110は、複数の壁として、底壁111、前壁112、後壁113、左壁114、右壁115、および上壁116を有する。複数の壁は、筐体110の内部空間117を外部から区画する。なお、画像記録装置100の内部構成を示すため、右壁115の大部分が省略されている。
【0016】
前壁112において上寄りの位置には、左右に長いスリット形状の排出口118が形成されている。排出口118からは、画像記録済みのシート213が排出される。
【0017】
前壁112には、操作パネル1110が設けられる。操作パネル1110は、操作ボタンやディスプレイを有している。ユーザは、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするために操作ボタンを操作する。ディスプレイは、コントローラ290の制御下で各種情報を表示する。
【0018】
[画像記録装置100の内部構成,搬送装置200の構成]
画像記録装置100は、内部空間117に、搬送装置200、タンク120、搬送・支持機構130、および記録ヘッド140を備える。搬送装置200は、支持部材210、搬送ローラ対220、ガイド部材230、付勢部材240、および排出ローラ対250を備える。図2に示すように、搬送装置200は、操作パネル1110に加え、センサ260、モータ271,272、ロータリエンコーダ281,282およびコントローラ290をさらに備える。
【0019】
[支持部材210]
図1において、内部空間117には、ロール体211が収容される。ロール体211は、円筒状の芯管212と、長尺のシート213とを有する。シート213は、芯管212に巻回されている。シート213は、セパレータおよび複数のラベルから構成される。セパレータには、セパレータの先端から間隔をあけて、ラベルが1枚ずつ貼り付けられている。
【0020】
なお、ロール体211は、芯管212を有さず、シート213がロール状に巻回されていてもよい。
【0021】
図1において、内部空間117の後端寄り且つ下端寄りの位置には、左右に延びる支持部材210が位置する。支持部材210は、左右方向9における一方端で、筐体110内のサイドフレーム(図示せず)に支持される。支持部材210は、左右方向9に平行な回転軸210Aを有しており、回転軸210Aの周方向に回転可能である。支持部材210には、モータ271(図2参照)が発生した動力が伝達される。この動力により、支持部材210は回転する。なお、画像記録(図4参照)の実行中、支持部材210は、図1において反時計回りの向きに回転する。
【0022】
上記構成の支持部材210には、ロール体211が装着される。装着時、芯管212が支持部材210に挿通される。その結果、芯管212の軸芯は、回転軸210Aと概ね一致する。また、装着時、シート213の左右中心は、搬送路160の左右方向9における中心面A(図3参照)に沿って位置する。以下、特に断らない場合、「ロール体211」という用語は、支持部材210に装着されたロール体211を意味する。ロール体211は、支持部材210の回転とともに回転する。その結果、ロール体211に巻回されているシート213は、上方へと繰り出される。
【0023】
[搬送ローラ対220]
搬送ローラ対220(搬送ローラの一例)は、支持部材210から上方に離れ且つ後壁113から前方に離れて位置する。搬送ローラ対220は、駆動ローラ221および従動ローラ222を有する。駆動ローラ221は、一対のサイドフレーム(図示せず)の各々に、駆動ローラ221の回転軸221Aの周方向に回転可能に支持される。従動ローラ222は、例えばピンチローラであって、一対のサイドフレームの各々に従動ローラ222の回転軸の周方向に回転可能に支持される。従動ローラ222は、駆動ローラ221の下端に下方から当接する。以下、駆動ローラ221および従動ローラ222の当接部分を、ニップ223とも称する。ニップ223の上下位置は、排出口118の上下位置と概ね同じである。
【0024】
上記構成の搬送ローラ対220は、ガイド部材230から延びるシート213をニップ223で挟み込む。駆動ローラ221には、モータ272(図2参照)が発生した動力が伝達される。この動力により、駆動ローラ221は、回転軸221Aの周方向に回転する。従動ローラ222は、駆動ローラ221の回転により従動し回転する。その結果、搬送ローラ対220は、ニップ223から搬送向き8Aへとシート213を送り出す。搬送向き8Aは、前向きである。
【0025】
なお、駆動ローラ221および従動ローラ222は、従動ローラ222が駆動ローラ221の上端に上方から当接するよう配置されてもよい。
【0026】
[排出ローラ対250]
排出ローラ対250は、搬送ローラ対220から前方に離れて位置する。排出ローラ対250は、駆動ローラ251および従動ローラ252を有する。駆動ローラ251および従動ローラ252は、各々の回転軸周りに回転可能に一対のサイドフレーム(図示せず)の各々により支持される。従動ローラ222は、例えば拍車であり、駆動ローラ251の下端に下方から当接し、駆動ローラ251の回転により従動し回転する。駆動ローラ251および従動ローラ252は、排出口118の上下位置と概ね同じ上下位置で当接し合う。
【0027】
排出ローラ対250は、搬送ローラ対220から送り出されたシート213を挟み込み、搬送向き8Aへと送り出す。シート213は、排出口118から排出される。
【0028】
[ガイド部材230,付勢部材240]
図1において、ガイド部材230は、上下方向7において支持部材210から上方に離れて位置する。ガイド部材230は、前後方向8において後壁113および搬送ローラ対220の間に位置する。また、図3(A)に示すように、ガイド部材230は、筐体110内の一対のサイドフレーム119の間で延びる。ガイド部材230の左右端は、一対のサイドフレーム119により支持される。
【0029】
図3(A)において、ガイド部材230は、一対のサイドフレーム119により、可動範囲MR(図5(B)参照)内で可動方向8Bに移動可能に支持されている。可動方向8Bは、回転軸210A,221A(図1参照)の双方に交差する方向である。可動方向8Bは、交差方向の一例である。本実施形態では、可動方向8Bは、前後方向8に平行である。しかし、これに限らず、可動方向8Bは、前後方向8に対して傾いていてもよい。なお、以下では、可動範囲MRにおいてガイド部材230移動可能な後方側および前方側の限界位置を、「後限界位置RLP」および「前限界位置FLP」(図5(B)参照)とも称する。
【0030】
図1図3(A)において、ガイド部材230は、筐体110の外側(詳細には、後壁113および上壁116の方)に向いている湾曲面231を有する。湾曲面231の上端は、上下方向7において、ニップ223と概ね同じ位置にある。湾曲面231の上端は、前後左右に拡がる平坦面である。湾曲面231において上端および下端の後端同士を繋ぐ部分は、左右方向9からの平面視で、筐体110の外側(詳細には、後方斜め上方)に向かって円弧状に膨らんでいる。
【0031】
上記構成の湾曲面231には、図1に示すように、ロール体211から引き出されたシート213が掛けられる。シート213は、湾曲面231と接触し、湾曲面231に沿って案内され、ニップ223の方へと向きを変える。
【0032】
図1図3(A)において、付勢部材240は、圧縮コイルバネであり、ガイド部材230と、筐体110内のフレーム(図示せず)との間で、前後方向8に延びる。付勢部材240の前端は、ガイド部材230よりも前方の位置でフレームと繋がる。付勢部材240は、前後方向8に延びる。付勢部材240の後端は、ガイド部材230と繋がる。
【0033】
付勢部材240は、図3(A)に示すように、ガイド部材230に付勢向き8Cの力(以下、付勢力とも称する)を加える。付勢向き8Cは、可動方向8Bの成分を含む方向である。本実施形態では、付勢向き8Cは、可動方向8Bおよび前後方向8に平行である。
【0034】
なお、以下では、ガイド部材230および付勢部材240の組み合わせをテンショナとも称する。
【0035】
[搬送路160]
図1に示すように、内部空間117には、ニップ223から排出口118に至る搬送路160が形成されている。搬送路160は、搬送向き8Aに沿って概ね直線的に延び、シート213が通過可能な空間である。搬送路160は、上下方向7に離れて位置する搬送・支持機構130および記録ヘッド140等により区画される。
【0036】
[タンク120]
タンク120は、内部空間117の前端寄り且つ搬送路160より下方の位置で、インクを貯留している。タンク120内のインクは、図示しないチューブを通じて記録ヘッド140へと供給される。
【0037】
[記録ヘッド140]
記録ヘッド140は、前後方向8において、搬送ローラ対220および排出ローラ対250の間に位置する。記録ヘッド140は、上下方向7において、搬送路160より僅かに上方に位置する。この位置で、記録ヘッド140は、コントローラ290の制御下で内部のインクを外部に吐出する。
【0038】
記録ヘッド140の下面には、複数のノズル142の開口が左右に配列されている。なお、図1には、1個のノズル142のみが示される。複数のノズル142からは、搬送路160を通過するシート213に向けてインク滴が下方へ吐出される。これにより、シート213に画像が記録される。なお、複数のノズル142は、記録ヘッド140の下面に前後方向8および左右方向9に配列されていてもよい。
【0039】
[搬送・支持機構130]
搬送・支持機構130は、駆動ローラ131、従動ローラ132および無端ベルト133を備える。駆動ローラ131は、前後方向8において、搬送ローラ対220および複数のノズル142の間に位置する。従動ローラ132は、前後方向8において、複数のノズル142および排出ローラ対250の間に位置する。駆動ローラ131および従動ローラ132の各上端の上下位置は、搬送路160の上下位置より僅かに下方である。なお、駆動ローラ131および従動ローラ132の前後位置の関係は逆であってもよい。駆動ローラ131および従動ローラ132には、無端ベルト133が張架される。無端ベルト133の上端面は、搬送面134として用いられる。搬送面134は、搬送路160を挟んで複数のノズル142と対向している。
【0040】
駆動ローラ131は、モータ272(図2参照)で発生した動力により回転し、無端ベルト133を回転させる。無端ベルト133の回転に伴い、従動ローラ132が回転する。画像記録(図4参照)の実行中には、搬送面134が搬送向き8Aへと移動するように、駆動ローラ131は回転する。また、搬送面134は、搬送路160を通過するシート213を下方から支持しつつ、搬送向き8Aの力(以下、搬送力とも称する)をシート213に与える。
【0041】
なお、搬送・支持機構130は、シート213を吸着するよう構成されていてもよい。
【0042】
[センサ260]
図2において、センサ260は、可動範囲MR内におけるガイド部材230の現在位置を検出する。詳細には、センサ260は、図3に示すように、透過型のリニアエンコーダであって、ストリップ261、発光素子262、および少なくとも2個の受光素子263A,263Bを有している。
【0043】
ここで、図3(A)は、ガイド部材230およびセンサ260の構成を示す模式図でもある。また、図3(B)は、図3(A)に示す矢印Bの方向(即ち、後方)から見たセンサ260の構成を示す模式図であり、図3(C)は、図3(B)に示す矢印Cの方向(即ち、右方)から見たセンサ260の構成を示す模式図である。
【0044】
ストリップ261は、図3(A)に示すように、ガイド部材230より若干右方の位置で、可動方向8Bに延びており、筐体110内のフレーム(図示せず)に固定されている。ストリップ261の主面は、ガイド部材230の右側面232と向かい合う。ストリップ261は、図3(C)に示すように、主面に、A相のスリット群261AおよびB相のスリット群261Bを含む。スリット群261Bは、スリット群261Aよりも下方に離れ、且つ可動方向8Bの一方(具体的には後方)に僅かにずれた位置に形成される。スリット群261A,261Bは、可動方向8Bにおいて等間隔に並ぶ複数のスリットからなる。各スリットの形状は互いに同一である。
【0045】
発光素子262は、図3(B)に示すように、ストリップ261よりも左方の位置で、スリット群261A,261Bと向かい合うように右側面232に固定されている。この位置で、発光素子262は、コントローラ290の制御下で、ストリップ261に向けて光を出射する。
【0046】
受光素子263A,263Bの各々は、図3(B)に示すように、ストリップ261よりも右方の位置で、ストリップ261を挟んで発光素子262と向かい合うように、右側面232に固定されている。この位置で、受光素子263A,263Bは、ストリップ261側からの入射光量に応じた信号Va,Vb(図2参照)をコントローラ290に出力する。
【0047】
[ロータリエンコーダ281,282]
図2において、ロータリエンコーダ281,282はいずれも、透過型のリニアエンコーダであり、エンコーダディスク、発光素子および受光素子を有している。
【0048】
各エンコーダディスクには、エンコーダディスクが有する回転軸の周方向において等間隔をあけて、同一形状のスリットが形成されている。ロータリエンコーダ281のエンコーダディスクは、自身の回転軸が回転軸210Aと一致するように、支持部材210の左右方向9における一方端に取り付けられている。ロータリエンコーダ282のエンコーダディスクは、自身の回転軸が回転軸221Aと一致するように、駆動ローラ221の左右方向9における一方端に取り付けられている。
【0049】
各発光素子は、同じロータリエンコーダにおけるエンコーダディスクと対向する位置で、コントローラ290の制御下で、エンコーダディスクのスリットに向けて光を出射する。
【0050】
各受光素子は、同じロータリエンコーダにおけるエンコーダディスクを挟んで発光素子と対向する位置に設けられる。ロータリエンコーダ281の受光素子は、エンコーダディスク側からの入射光量に応じた信号Vcをコントローラ290に出力する。ロータリエンコーダ282の受光素子は、エンコーダディスク側からの入射光量に応じた信号Vdをコントローラ290に出力する。
【0051】
[コントローラ290,モータ271,272]
図2において、コントローラ290は、内部バスで電気的に接続されたCPU、ROM、RAM、EEPROMおよびASICを備えている。コントローラ290において、CPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを、RAMを作業領域として用いつつ実行する。制御プログラムは、画像記録装置100の動作をCPUが制御するためのプログラムである。ASICは、モータ271,272を回転させるための駆動信号を、CPUの制御下で生成し、モータ271,272に出力する。
【0052】
なお、コントローラ290は、CPUのみが各種処理を行うものであってもよいし、ASICのみが各種処理を行うものであってもよいし、CPUとASICとが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、コントローラ290は、1つのCPUが単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPUが処理を分担して行うものであってもよい。また、コントローラ290は、1つのASICが単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASICが処理を分担して行うものであってもよい。
【0053】
[その他の構成]
画像記録装置100は、図示しない定着ユニットやメンテナンスユニットを備える。定着ユニットは、左右に長いハロゲンヒータであり、記録ヘッド140より前方且つ搬送路160より上方に位置する。定着ユニットは、自身の下方を通過するシート213に赤外線を輻射することで、インクをシート213に定着させる。メンテナンスユニットは、記録ヘッド140が有する複数のノズル142を覆うキャップや、記録ヘッド140の下面を拭うワイパなどを含む。
【0054】
また、搬送装置200は、支持部材210とガイド部材230との間で搬送されるシート213に搬送力を与える搬送ローラ対を備えていない。また、搬送装置200は、支持部材210とガイド部材230との間で搬送されるシート213にテンションを与える別のガイド部材を備えていない。
【0055】
[画像記録装置100,搬送装置200の動作]
画像記録装置100の作業者は、新品のロール体211を支持部材210に装着する。その後、作業者は、シート213の先端をロール体211から上方に引き出す。シート213は、ガイド部材230の湾曲面231に掛けられ、前方へと湾曲させられる。シート213の先端は、搬送ローラ対220のニップ223に挟み込まれる。その後、画像記録装置100は、ロール体211の各ラベルに記録する画像を示す画像データが外部のパーソナルコンピュータ等から受信することを待機する。
【0056】
画像データの受信に応じて、コントローラ290は、画像記録の準備処理を行う(図4のS100)。準備処理(即ち、S100)は、S101~S106を含む。
【0057】
S101において、コントローラ290は、まず、モータ272に駆動信号を与えることで、搬送路160上のシート213を搬送向き8Aとは逆向きに所定量だけ搬送するように、駆動ローラ221,251,131を回転させる。その結果、ガイド部材230の周囲において、シート213は緩み、ガイド部材230が可動範囲MRにおける後限界位置RLPに移動する。後限界位置RLPは、ガイド部材230の可動方向8Bにおける位置の原点として用いられる。
【0058】
次に、コントローラ290は、S102で、モータ271に駆動信号を与えることで、搬送路160上のシート213を搬送向き8Aに搬送するように、支持部材210および駆動ローラ221,251,131をそれぞれ回転させる。この過程で、シート213は、ガイド部材230の湾曲面231に搬送向き8Aの力を加える。また、ガイド部材230には、搬送向き8Aの力に抗して、付勢部材240による付勢向き8Cの付勢力が加わっている。これにより、シート213にはテンションが加わる。ガイド部材230は、可動範囲MR内においてテンションに応じて位置を変える。
【0059】
S103で、コントローラ290は、受光素子263Aから信号Vaの取得と、受光素子263Bからの信号Vbの取得を開始する。コントローラ290は、信号Va,Vbから、原点に対する現在位置を一定時間間隔で導出し、記憶する。現在位置は、可動方向8Bにおけるガイド部材230の現在位置である。
【0060】
S104で、コントローラ290は、公知の手法により、ロール体211からシート213をS102により搬送させたときのシート213の搬送量と、支持部材210の周方向への回転量とに基づいてロール体211の径を推定する。詳細には、シート213がガイド部材230と搬送ローラ対220の間で弛みのない状態になった後、コントローラ290は、ロータリエンコーダ282から信号Vdを取得し、信号Vdに含まれるパルス数に基づき、搬送ローラ対220の回転量を導出する。コントローラ290は、導出した搬送ローラ対220の回転量と、予め定められている駆動ローラ221の周長とから、シート213の搬送向き8Aにおける搬送量を導出する。コントローラ290は、ロータリエンコーダ281から信号Vcを取得し、信号Vcに含まれるパルス数から支持部材210の回転量を導出する。コントローラ290は、シート213の搬送量と、支持部材210の回転量とから、ロール体211の径を推定する。
【0061】
なお、ロール体211の径の推定手法に関しては、光学センサを使ってロール体211の外周部分を把握することでロール体211の径を推定する等、他の公知技術を用いてもよい。
【0062】
コントローラ290は、EEPROM等に、ロール体211の径の範囲ごとに、ガイド部材230の目標位置TPを記録したテーブル281(図5(A)参照)を記憶している。図5(A)において、テーブル281に記録される目標位置TPの各々は、原点を基準とする可動方向8Bにおける位置であって、画像記録装置100の設計・開発段階で定められている。
【0063】
S104の次にS105で、コントローラ290は、目標位置TPを決定する。詳細には、コントローラ290は、推定した径に対応する目標位置TPをテーブル281から抽出し、RAM等に記憶する。
【0064】
コントローラ290は、S105でさらに、4つの許容位置PP(図5(B)参照)として、第1後側許容位置RPP1および第1前側許容位置FPP1の組み(以下、第1許容位置セットとも称する)と、第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2の組み(以下、第2許容位置セットとも称する)とを決定し、RAM等に記憶する。
【0065】
画像記録の実行中、コントローラ290は、モータ271,272を予め定められている駆動プロファイルに従って動作させる。駆動プロファイルにより、モータ271,272の回転は、回転開始から定常状態(即ち、定速)に至るまでの間、加速する。また、モータ271,272の回転は、定常状態から回転停止に至るまでの間、減少する。
【0066】
第1後側許容位置RPP1および第1前側許容位置FPP1は、モータ271,272が定常状態のときにコントローラ290により使用され、図5(B)に示すように、目標位置TPから可動方向8Bの後方および前方にそれぞれ第1距離だけ離れた位置である。第1後側許容位置RPP1は、後限界位置RLPより前方の位置であり、第1前側許容位置FPP1は、前限界位置FLPより後方の位置である。
【0067】
第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2は、モータ271,272の回転が加速あるいは減速しているときにコントローラ290により使用され、図5(B)に示すように、目標位置TPから可動方向8Bの後方および前方にそれぞれ第2距離だけ離れた位置である。第2距離は、第1距離よりも長い。よって、第2後側許容位置RPP2は、第1後側許容位置RPP1より後方且つ後限界位置RLPより前方の位置であり、第2前側許容位置FPP2は、第1前側許容位置FPP1より前方且つ前限界位置FLPより後方の位置である。第1後側許容位置RPP1および第1前側許容位置FPP1は、第1許容位置の一例であり、第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2は、第2許容位置の一例である。
【0068】
コントローラ290は、S106で、シート213が画像記録の開始位置に到達したことに応じて、駆動信号の出力を停止する。
【0069】
S101~S106の処理により、シート213は開始位置で停止し、RAMには、ガイド部材230について、現在位置、目標位置TPおよび4つの許容位置PPとが記憶される。
【0070】
S106の次に、S107~S109の処理により、コントローラ290は、画像記録のために画像記録装置100の各部を制御する。
【0071】
S107で、コントローラ290は、駆動プロファイルに従ってモータ271,272への駆動信号の出力を開始する。これにより、コントローラ290は、搬送路160上のシート213を搬送向き8Aに搬送するように、支持部材210および駆動ローラ221,251,131をそれぞれ回転させ始める。この過程でも、シート213にはテンションが加わり、ガイド部材230は、可動範囲MR内において前後方向8に移動する。
【0072】
S108で、コントローラ290は、画像データに基づいて、複数のノズル142からインクを吐出させる。その結果、シート213のラベルには画像が記録される。
【0073】
S109で、コントローラ290は、画像記録を終了するか否かを判断する。終了しないと判断した場合(即ち、S109でNo)、コントローラ290は、S108を実行して、インク吐出を継続する。終了すると判断した場合(即ち、S109でYes)、コントローラ290は、S110で、駆動プロファイルに従ってモータ271,272に駆動信号を出力することを停止する。そして、コントローラ290は、図4の処理を終了する。
【0074】
コントローラ290は、S107~S109の処理と並行して、図6の処理を実行する。
【0075】
図6のS201で、コントローラ290は、モータ271,272の回転開始から定常状態に至るまでの間(即ち、加速中)、第1許容位置セットおよび第2許容位置セットのうち、第2許容位置セットを選択する。なお、モータ271,272の回転開始から定常状態までの間の時間は、駆動プロファイルにより定められている。
【0076】
S202で、コントローラ290は、S104と同様の手法で、ガイド部材230の現在位置を一定時間間隔で導出する。コントローラ290は、S202でさらに、導出した現在位置がS106で決定した目標位置TPとなるように、モータ271,272の回転をフィードバック制御する。フィードバック制御において、コントローラ290は、モータ271,272に与える駆動信号のパラメータを調整する。パラメータは、モータ271,272の種類により定められるが、例えば、パルス幅や振幅である。
【0077】
S203で、コントローラ290は、現在位置を導出するたびに、導出した現在位置が第2後側許容位置RPP2よりも後方の位置であるか否かを判定する。現在位置が第2後側許容位置RPP2よりも後方でないと判断した場合(即ち、S203でNoの場合)、コントローラ290は、S204を実行する。現在位置が第2後側許容位置RPP2よりも後方であると判断した場合(即ち、S203でYesの場合)、コントローラ290は、S216を実行する。
【0078】
画像記録装置100では、駆動プロファイルに基づいてモータ271,272の回転を制御している間に、搬送路160でシート213が詰まること、即ち、ジャムが発生することがある。この種のジャムが発生すると、やがて搬送路160ではシート213が搬送されなくなるため、テンショナによるテンションがシート213に加わらなくなる。この状況下では、S203でYesと判断され、S216が実行される。なお、この点については、後述のS208,S213でも同様である。
【0079】
S204で、コントローラ290は、S202で導出した現在位置が第2前側許容位置FPP2よりも前方の位置であるか否かを判定する。現在位置が第2前側許容位置FPP2よりも前方でないと判断した場合(即ち、S204でNoの場合)、コントローラ290は、S205を実行する。現在位置が第2前側許容位置FPP2よりも前方であると判断した場合(即ち、S204でYesの場合)、コントローラ290は、S216を実行する。
【0080】
画像記録装置100では、支持部材210およびガイド部材230の間でもジャムが発生しうる。この種のジャムが発生すると、シート213は、支持部材210および搬送ローラ対220で搬送されなくなるが、搬送ローラ対220は、シート213を搬送路160へと送り出し続けるため、シート213に過剰なテンションが加わる。この状況下では、S204でYesと判断され、S216が実行される。なお、この点については、S209,S214でも同様である。
【0081】
S205で、コントローラ290は、モータ271,272の回転が定常状態に遷移したか否かを判断する。定常状態に遷移していないと判断した場合(即ち、S205でNoの場合)、コントローラ290は、S202を実行する。定常状態に遷移したと判断した場合(即ち、S205でYesの場合)、コントローラ290は、S206を実行する。
【0082】
S206で、コントローラ290は、第1許容位置セットおよび第2許容位置セットのうち第1許容位置セットを選択する。
【0083】
S207で、コントローラ290は、S202と同様の処理を行う。
【0084】
S208で、コントローラ290は、現在位置を導出するたびに、導出した現在位置が第1後側許容位置RPP1よりも後方の位置であるか否かを判定する。現在位置が第1後側許容位置RPP1よりも後方でないと判断した場合(即ち、S208でNoの場合)、コントローラ290は、S209を実行する。現在位置が第1後側許容位置RPP1よりも後方であると判断した場合(即ち、S208でYesの場合)、コントローラ290は、S216を実行する。
【0085】
S209で、コントローラ290は、S207で導出した現在位置が第1前側許容位置FPP1よりも前方の位置であるか否かを判定する。現在位置が第1前側許容位置FPP1よりも前方でないと判断した場合(即ち、S209でNoの場合)、コントローラ290は、S210を実行する。現在位置が第1前側許容位置FPP1よりも前方であると判断した場合(即ち、S204でYesの場合)、コントローラ290は、S216を実行する。
【0086】
S210で、コントローラ290は、モータ271,272の回転が減速状態に遷移したか否かを判断する。減速状態に遷移していないと判断した場合(即ち、S210でNoの場合)、コントローラ290は、S207を実行する。減速状態に遷移したと判断した場合(即ち、S210でYesの場合)、コントローラ290は、S211を実行する。
【0087】
コントローラ290は、S211~S214で、S201~S204と同様の処理を行う。但し、S214で前方でないと判断した場合(即ち、S214でNoの場合)、コントローラ290は、S215を実行する。
【0088】
S215で、コントローラ290は、モータ271,272の回転が停止したか否かを判断する。停止していないと判断した場合(即ち、S215でNoの場合)、コントローラ290は、S212を実行する。停止したと判断した場合(即ち、S215でYesの場合)、コントローラ290は、図6の処理を終了する。
【0089】
S216で、コントローラ290は、支持部材210および駆動ローラ221,251,131の回転を停止させるよう制御する。即ち、コントローラ290は、モータ271,272への駆動信号の出力を停止する。これにより、シート213の搬送が停止する。S216でさらに、コントローラ290は、インクの吐出を停止する。このようにして、コントローラ290は、図4の画像記録処理を終了させる。
【0090】
S217で、コントローラ290は、シート213の搬送エラーが発生したことを報知する。詳細には、コントローラ290は、操作パネル1110のディスプレイに、搬送エラーが発生したことを示す警告メッセージを各種情報の一つとして表示させる。他にも、画像記録装置100がスピーカを備えている場合、コントローラ290は、搬送エラーが発生したことを示す警告音声をスピーカから出力する。
【0091】
[画像記録装置100,搬送装置200の作用効果]
画像記録装置100では、図4のS105で、ガイド部材230の目標位置TPに応じた許容位置PPが決定されるため、図6の処理において、ガイド部材230の現在位置が許容位置PPを超えていると誤って判定されることが抑制され、その結果、誤報知が抑制される。
【0092】
一般に、搬送装置内でジャムが発生したとき、ガイド部材の現在位置は、許容位置を超えてしまう。ここで、背景技術のように、許容位置を変更し許容位置を変えない場合、許容位置が目標位置TPに過度に近づくことがある。その結果、背景技術では、ジャムが発生していないにも関わらず、搬送エラーを報知してしまうという問題点があった。しかし、図6の処理によれば、目標位置TPに応じて許容位置PPが適切に変更可能となるため、搬送エラーの誤報知を抑制できる。
【0093】
また、背景技術のように、許容位置だけを変更する場合、許容位置が目標位置から過度に遠ざかることがある。その結果、背景技術では、ジャムの発生からシートの搬送停止までの間に過度なタイムラグが生じることがある。しかし、図6の処理によれば、目標位置TPに応じて許容位置PPが適切に変更可能となり、その結果、ジャムの発生から短時間でシートの搬送を停止できるため、シート詰まりの拡大が抑制される。
【0094】
図6の処理によれば、搬送ローラ対220が加減速しているときのために、第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2が用いられる。第2後側許容位置RPP2は、第1後側許容位置RPP1より後方であり、第2前側許容位置FPP2は、第1前側許容位置FPP1より前方である。そのため、現在位置が上記許容位置PPを超えたと誤って判定されることが抑制され、その結果、搬送エラーの誤報知が抑制される。
【0095】
また、センサ260は、リニアエンコーダである。また、可動方向8Bが上下方向7の成分を含まない。そのため、センサ260の上下寸法を抑えることができる。これにより、画像記録装置100の高さを低くできる。
【0096】
また、付勢部材240が前方側からガイド部材230を付勢するため、後方側から付勢する場合との比較において、画像記録装置100および搬送装置200の前後寸法を小型化できる。
【0097】
[変形例]
実施形態において、図4のS107~S110の間、シート213がロール体211から繰り出される。そのため、時間経過により、ロール体211の径は、小さくなっていき、S104で推定された径との差が大きくなっていく。
【0098】
そこで、変形例に係る画像記録装置100において、コントローラ290は、図7に示すような画像記録を実行する。以下、図7の画像記録は、図4の画像記録と比較すると、S107およびS108の間にS301と含む点と、S108およびS109の間にS302,S303を含む点で相違する。そのため、以下では、図7の画像記録において図4の画像記録との相違点について説明する。
【0099】
コントローラ290は、S107の実行後、S301で、ロータリエンコーダ281から信号Vdを取得し始め、信号Vdに基づいて支持部材210の回転総数の導出を開始する。回転総数は、S301以降に支持部材210が回転した数である。
【0100】
コントローラ290は、S108の実行後、ロール体211の径の更新タイミングになったことに応じて、S302で、ロール体211の現在の径を推定する。ロール体211におけるセパレータおよびラベルの総厚さは予め定められている。そのため、コントローラ290は、前回推定したロール体211の径から、回転総数、総厚さおよび2との乗算値を減算することで、現在のロール体211の径を導出する。
【0101】
次に、S303で、コントローラ290は、S105と同様にして、現在のロール体211の径に対応する目標位置TPを決定する。コントローラ290はさらに、4つの許容位置PP(図5(B)参照)を決定する。コントローラ290は、RAM等に記憶されている目標位置TPおよび4つの許容位置PPを、S303で決定した目標位置TPおよび4つの許容位置PPに更新する。
【0102】
なお、S108の実行後に、ロール体211の径の更新タイミングになっていなければ、S302,S303はスキップされる。
【0103】
[変形例の作用効果]
変形例に係る画像記録処理によれば、画像記録の実行中に、ロール体211の現在の径に応じて、目標位置TPおよび4つの許容位置PPが更新されるため、図6の処理において、ガイド部材230の現在位置が許容位置PPを超えていると誤って判定されることがより抑制される。
【0104】
[その他の変形例]
実施形態では、S201,S211で、第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2の双方が選択されていた。しかし、これに限らず、モータ271,272のオーバーシュートに起因する搬送エラーの誤判定を抑制することを重視するのであれば、S201では、第2後側許容位置RPP2および第2前側許容位置FPP2のうち、第2前側許容位置FPP2だけが選択されてもよい。この場合、S203は実行されない。また、モータ271,272のアンダーシュートを重視するのであれば、S211では、第2後側許容位置RPP2だけが選択されてもよい。この場合、S213は実行されない。
【0105】
実施形態では、S206で、第1後側許容位置RPP1および第1前側許容位置FPP1の双方が選択されていた。しかし、これに限らず、S206では、第1後側許容位置RPP1および第1前側許容位置FPP1のいずれか一方だけが選択されてもよい。
【0106】
実施形態では、画像記録装置100は、インクジェット記録方式により画像をシート213に記録していた。しかし、画像記録方式は、インクジェット記録方式に限らず、電子写真方式や熱転写方式でもよい。また、熱転写方式の場合、記録ヘッドをシートに直接当接させるダイレクトプリンタがある。ダイレクトプリンタでは、記録ヘッドよりも搬送向き8Aの上流側に搬送ローラ対がなく、記録ヘッドの直下に搬送ベルト(搬送ローラの他の一例)を備えている。
【0107】
実施形態では、センサ260は、リニアエンコーダであった。しかし、これに限らず、センサ260は、ロータリエンコーダであってもよい。この場合、ガイド部材230は、回転軸周りに揺動するタイプになる。揺動タイプのガイド部材は、ガイド部材の下端部分をシートの幅方向と平行に延びる回転軸L周りに回転可能に支持されたレバー部材と、レバー部材の上端部分に回転可能に取り付けられたローラを備えている。レバー部材は、コイルばねによって後方に付勢される。
【0108】
実施形態では、画像記録装置100は、シート213に搬送力を与える搬送・支持機構130を備えていた。しかし、画像記録装置100は、搬送・支持機構130に代えて、シート213を支持するだけのプラテンを備えていてもよい。
【0109】
実施形態では、図6の処理は、S216およびS217の双方を含んでいた。しかし、これに限らず、S216およびS217のいずれか一方が実行されればよい。
【0110】
実施形態および変形例では、図4図7のS104と、図7のS302では、ロール体211の径を推定していた。しかし、ロール体211の径は、搬送ローラ対220が搬送向き8Aに搬送した量に相関するので、コントローラ290は、図4図7のS104と、図7のS302では、搬送ローラ対220によるシート211の搬送量を導出し、導出した搬送量に応じた目標位置、許容位置を、図4図7のS105や図7のS302を決定してもよい。搬送ローラ対220の搬送量は、排出ローラ対250の搬送量でも代替できる。さらに他にも、ロール体211の径は、記録ヘッド140が画像を記録したラベルの枚数にも相関するため、コントローラ290は、図4図7のS104と、図7のS302では、画像を記録したラベルの枚数を導出し、導出したラベル枚数に応じた目標位置、許容位置を、図4図7のS105や図7のS302を決定してもよい。
【符号の説明】
【0111】
100…画像記録装置
200…搬送装置
210…支持部材
220…搬送ローラ対
230…ガイド部材
240…付勢部材
250…排出ローラ対
260…センサ
271,272…モータ
280…コントローラ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7