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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エンジンの排気構造
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20240925BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20240925BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240925BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240925BHJP
   F02B 77/11 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F01N13/14
F01N3/28 301Z
F01N3/24 L
F01N13/08 D
F02B77/11 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020208430
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095234
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】藤平 伸次
(72)【発明者】
【氏名】坂下 泰靖
(72)【発明者】
【氏名】宮野 辰徳
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 靖
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正芳
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226968(JP,A)
【文献】特開2010-285923(JP,A)
【文献】米国特許第05331810(US,A)
【文献】特開2018-105182(JP,A)
【文献】特開2012-086746(JP,A)
【文献】特開2000-282885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 13/00
F02B 77/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームに配設されるエンジンであって、車両前後方向において当該エンジンの前方側に開口する排気ポートが形成された前方排気のエンジンと、
前記車両前後方向において前記エンジンの後方に配置された排気浄化装置と、
前記排気ポートと前記排気浄化装置とを連通する排気マニホールドと
を備えており、
前記エンジンは、発電用エンジンであり、
前記エンジンは、前記エンジンルームにおける車幅方向の両側の側面から離れた位置に配置され、
前記エンジンルームの一方の前記側面と前記エンジンとの間には、前記エンジンが発生する回転駆動力を利用して発電を行う発電機を含む電気系ユニットが配置され、
前記排気マニホールドは、前記排気ポートから車幅方向において前記エンジンの側方を通って前記排気浄化装置に至るように、かつ、前記エンジンルームの他方の前記側面と前記エンジンとの間を通るように配設されている、
エンジンの排気構造。
【請求項2】
車両のエンジンルームに配設されるエンジンであって、車両前後方向において当該エンジンの前方側に開口する排気ポートが形成された前方排気のエンジンと、
前記車両前後方向において前記エンジンの後方に配置された排気浄化装置と、
前記排気ポートと前記排気浄化装置とを連通する排気マニホールドと、
前記排気マニホールドから離間して前記排気マニホールドの周囲を取り囲むように配置され、車両前方から前記エンジンに向かう空気を前記排気マニホールドに沿って案内する通風路を形成する通風路形成部材と、
を備えており、
前記排気マニホールドは、前記排気ポートから車幅方向において前記エンジンの側方を通って前記排気浄化装置に至るように配設され、
前記通風路形成部材は、前記エンジン前方において前記排気マニホールドの前側を覆う前側部分と、前記前側部分に連続して前記エンジン側方において前記排気マニホールドの側方外側を覆う側方部分とを有する平面視でL字形状のカバー部材を備えており、
前記カバー部材は、前記前側部分における前記側方部分から遠い側の端部に形成された導入口と、前記側方部分の後端部に形成された排出口とを有する、
エンジンの排気構造。
【請求項3】
前記車両は、前記エンジンルームに対して車幅方向外側に配置されたタイヤと、前記タイヤの車両前方側の部分と前記エンジンルームとの間を仕切る仕切り部材とを備え、
前記排出口は、前記車両前後方向において前記仕切り部材の後端と同じ位置またはその近傍の位置に配置されている、
請求項に記載のエンジンの排気構造。
【請求項4】
前記車両は、前記エンジンの周辺に低耐熱部品を備え、
前記排気構造は、前記排気マニホールドにおける前記低耐熱部品の近傍の部分を覆う断熱部材をさらに備えている、
請求項1~のいずれか1項に記載のエンジンの排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルーム内においてエンジンとともに排気浄化装置が収容された構造では、エンジンルーム内の限られたスペースでレイアウトするためにエンジンと排気浄化装置との距離が近くなりやすく、排気ガスの熱による排気浄化装置への熱害が懸念される。
【0003】
例えば、車体前側に配置されたエンジンルームにエンジンおよび排気浄化装置が収容された構造において、排気浄化装置をエンジンルームの後端のダッシュパネル近傍に備えた構造が考えられる。このような構造では、排気温度が高いエンジン(例えば、ロータリーエンジンなど)でありしかも後方排気の構造のエンジン(すなわち、エンジンにおける車両後方を向く側に排気ポートがあるエンジン)の場合には、排気ポートから排気浄化装置までの距離が近くなって排気浄化装置に熱害を及ぼすことが懸念される。
【0004】
そこで、排気ポートから排気浄化装置までの距離を延ばすために、排気ポートをエンジンにおける車両前方を向く側に配置した前方排気のエンジンを採用することが考えられる。
【0005】
前方排気のエンジンの排気構造に関しては、特許文献1に、エンジンルームに前方排気のエンジンを備え、エンジン前側の排気ポートから延びる排気マニホールドがエンジンの下方を通ってエンジン後方の排気浄化装置に接続される構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献2記載には、エンジンルームに前方排気のエンジンとモータを備えたハイブリッド車両において、エンジン前側の排気ポートから延びる排気マニホールドがモータの下方を通ってエンジン後方の排気浄化装置に接続される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-30429号公報
【文献】特開2013-184497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1~2に示されるエンジンの排気構造では、いずれも前方排気のエンジン前側の排気ポートから排気ポートがエンジンまたはモータの下方を通る構造である。このように、排気マニホールドをエンジンを含むパワーユニットの下方もしくは上方を通って車両後方に延びるように配設した場合、ボンネットやパワーユニット重心の高さが高くなることが懸念される。また、前記高さが高くなることを抑えるために排気マニホールドをエンジンの下方を通って配設する場合には、エンジンのオイルパンに凹みを形成させて当該凹みを通るように排気マニホールドを配設することが考えられるが、その場合、今度はオイルパンに貯留されるオイルの容量が減少することが懸念される。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ボンネット高さやパワーユニットの重心高さおよびオイル容量に影響を与えることなく排気マニホールドを配設して排気浄化装置を熱害から保護することが可能なエンジンの排気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るエンジンの排気構造は、車両のエンジンルームに配設されるエンジンであって、車両前後方向において当該エンジンの前方側に開口する排気ポートが形成された前方排気のエンジンと、前記車両前後方向において前記エンジンの後方に配置された排気浄化装置と、前記排気ポートと前記排気浄化装置とを連通する排気マニホールドとを備えており、前記エンジンは、発電用エンジンであり、前記エンジンは、前記エンジンルームにおける車幅方向の両側の側面から離れた位置に配置され、前記エンジンルームの一方の前記側面と前記エンジンとの間には、前記エンジンが発生する回転駆動力を利用して発電を行う発電機を含む電気系ユニットが配置され、前記排気マニホールドは、前記排気ポートから車幅方向において前記エンジンの側方を通って前記排気浄化装置に至るように、かつ、前記エンジンルームの他方の前記側面と前記エンジンとの間を通るように配設されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成では、前方排気のエンジンの排気構造として、排気マニホールドがエンジンの前方側に開口する排気ポートから車幅方向においてエンジンの側方を通って排気浄化装置に至るように配設されている。したがって、排気マニホールドは、エンジン側方を通ってエンジンを迂回するので、ボンネット高さやエンジンを含むパワーユニットの重心高さおよびオイルパンのオイル容量に影響を与えることなく排気マニホールドの長さを確保することが可能になる。このため、排気ガスが排気マニホールド内部を通る間に排気浄化装置にとって安全な温度まで排気ガスの温度を下げることが可能になる。その結果、排気浄化装置を高温の排気ガスに起因する熱害から保護することが可能となる。
【0012】
また、上記のエンジンの排気構造では、前記エンジンは、発電用エンジンであり、前記エンジンは、前記エンジンルームにおける車幅方向の両側の側面から離れた位置に配置され、前記エンジンルームの一方の前記側面と前記エンジンとの間には、前記エンジンが発生する回転駆動力を利用して発電を行う発電機を含む電気系ユニットが配置され、前記排気マニホールドは、前記エンジンルームの他方の前記側面と前記エンジンとの間を通るように配設されている。
【0013】
かかる構成によれば、エンジンルームの一方の側面とエンジンとの間に発電機を含む電気系ユニットが配置された構成において、排気マニホールドがエンジンルームにおける電気系ユニットから遠い側、すなわち、エンジンルームの他方の側面とエンジンとの間を通るように配設されている。これにより、排気ガスが通る排気マニホールドを電気系ユニットから離間することが可能になり、電気系ユニットへの熱害を防止することが可能である。
【0014】
本発明の請求項2に係るエンジンの排気構造は、車両のエンジンルームに配設されるエンジンであって、車両前後方向において当該エンジンの前方側に開口する排気ポートが形成された前方排気のエンジンと、前記車両前後方向において前記エンジンの後方に配置された排気浄化装置と、前記排気ポートと前記排気浄化装置とを連通する排気マニホールドと、前記排気マニホールドから離間して前記排気マニホールドの周囲を取り囲むように配置され、車両前方から前記エンジンに向かう空気を前記排気マニホールドに沿って案内する通風路を形成する通風路形成部材と、を備えており、
前記排気マニホールドは、前記排気ポートから車幅方向において前記エンジンの側方を通って前記排気浄化装置に至るように配設され、前記通風路形成部材は、前記エンジン前方において前記排気マニホールドの前側を覆う前側部分と、前記前側部分に連続して前記エンジン側方において前記排気マニホールドの側方外側を覆う側方部分とを有する平面視でL字形状のカバー部材を備えており、前記カバー部材は、前記前側部分における前記側方部分から遠い側の端部に形成された導入口と、前記側方部分の後端部に形成された排出口とを有する、ことを特徴とする。
【0015】
かかる構成では、通風路形成部材が排気マニホールドの周囲を取り囲むように配置され、当該通風路形成部材によって、車両前方からエンジンに向かう空気を排気マニホールドに沿って案内する通風路が形成される。これにより、車両走行中に車両前方からエンジンに向かう空気を通風路に通すことによって、排気マニホールドを効率よく冷却することが可能である。その結果、排気浄化装置を熱害から確実に保護することが可能になる。
【0016】
また、上記のエンジンの排気構造では、前記通風路形成部材は、前記エンジン前方において前記排気マニホールドの前側を覆う前側部分と、前記前側部分に連続して前記エンジン側方において前記排気マニホールドの側方外側を覆う側方部分とを有する平面視でL字形状のカバー部材を備えており、前記カバー部材は、前記前側部分における前記側方部分から遠い側の端部に形成された導入口と、前記側方部分の後端部に形成された排出口とを有する。
【0017】
かかる構成では、通風路形成部材が平面視でL字形状のカバー部材を備えている。このため、車両走行中において空気は、エンジンの前方からカバー部材の前側部分に形成された導入口に流入し、L字形状のカバー部材内部に形成される通風路を通って側方部分の後端部に形成された排出口から排出される。これにより、カバー部材の内部を通る空気によって排気マニホールドを効果的に冷却することが可能である。
【0018】
上記のエンジンの排気構造において、前記車両は、前記エンジンルームに対して車幅方向外側に配置されたタイヤと、前記タイヤの車両前方側の部分と前記エンジンルームとの間を仕切る仕切り部材とを備え、前記排出口は、前記車両前後方向において前記仕切り部材の後端と同じ位置またはその近傍の位置に配置されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成では、カバー部材の排出口が車両前後方向においてタイヤの車両前方側の部分とエンジンルームとの間を仕切る仕切り部材の後端と同じ位置またはその近傍の位置に配置されている。このため、カバー部材の排出口から排出された空気をタイヤ周辺からエンジンルームの外側に円滑に排出することが可能である。
【0020】
上記のエンジンの排気構造において、前記車両は、前記エンジンの周辺に低耐熱部品を備え、前記排気構造は、前記排気マニホールドにおける前記低耐熱部品の近傍の部分を覆う断熱部材をさらに備えているのが好ましい。
【0021】
かかる構成では、排気マニホールドから発生する熱を断熱部材によってエンジン周辺の耐熱性が低い低耐熱部品から遮断することが可能になり、低耐熱部品の熱害を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエンジンの排気構造によれば、排気マニホールドをボンネット高さやパワーユニットの重心高さおよびオイル容量に影響を与えることなく排気マニホールドを配設して排気浄化装置を熱害から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの排気構造におけるエンジンおよびその周辺部分を斜め前上方から見た斜視説明図である。
図2図1のエンジンおよびその周辺部分を車両前方から見た正面図である。
図3図1のエンジンおよびその周辺部分の底面図である。
図4図1のエンジンおよびその周辺部分の平面図である。
図5図2のV-V線断面図である。
図6図5の排気マニホールド周辺の拡大断面図である。
図7図1のL字形状のカバー部材周辺の拡大斜視図である。
図8図7のL字形状のカバー部材を取り外して排気マニホールドを露出させた状態を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~4に示される車両1は、ハイブリッド車などのように、車両1の前側のエンジンルーム2の内部においてエンジン7とモータ10とを両方備えた自動車である。
【0025】
図1~4に示される車両1は、互いに車幅方向Yに離間し、車両前後方向Xにそれぞれ延びる一対のサイドフレーム3、4と、車幅方向Yに延びて一対のサイドフレーム3、4の後端部に固定されたダッシュパネル5と、車幅方向Yに延びて一対のサイドフレーム3、4の前方端部にそれぞれ固定されたバンパ6(図5参照)とを備える。これら一対のサイドフレーム3、4、ダッシュパネル5、バンパ6によって、エンジンルーム2が形成される。
【0026】
図2および図5に示されるように、エンジンルーム2の前側(車両前後方向Xにおける前方側X1)には、ファン31と、ファン31の周囲を取り囲むファンシュラウド32と、ファン31の前方に配置されたラジエータ33と、ラジエータ33の前方に配置されたコンデンサ34とが配置されている。ファン31は、車両前方側X1に形成された導入口35から空気を導入してラジエータ33およびコンデンサ34を冷却する空気流れWを生成するとともに後述するカバー部材16の導入口42へ空気を送ることが可能である。
【0027】
車両1は、エンジンルーム2に対して車幅方向Yの外側(図1~5における車幅方向Yのうちの一方側Y1)に配置されたタイヤ26と、タイヤ26の上半分を円弧状に覆うマッドガード28と、タイヤ26の車両1前方側の部分とエンジンルーム2との間を仕切る仕切り部材としてスプラッシュガード29とを備えている。タイヤ26の上半分は、マッドガード28およびスプラッシュガード29によって形成されたタイヤ収容空間27に収容される。
【0028】
エンジンルーム2内には、主要な構成として、エンジン7と、発電機9およびモータ10を含む電気系ユニット30とが収容されている。
【0029】
エンジン7は、発電機9を駆動する発電用に用いられ、図1~5に示されるように、車両前後方向Xにおいて当該エンジン7の前方側X1に開口する排気ポート7a(図5および図8参照)が形成された前方排気のエンジンである。エンジン7は、エンジンルーム2内部において、エンジンルーム2における車幅方向Yの両側の側面2a、2b(すなわち、一対のサイドフレーム4、3の互いに対向する面)(図4参照)から離れた位置に配置されている。
【0030】
エンジン7は、種々のエンジンを採用することが可能であるが、エンジン7としてロータリーエンジンを採用すれば、小型、高出力であり、かつ振動や騒音が低い点で好ましい。
【0031】
図1~4に示されるように、エンジン7の上部には、吸気系の構成要素として、一端がエンジン7の吸気口(図示せず)に接続された吸気マニホールド13と、吸気マニホールド13の他端に接続されたエアクリーナボックス25とが配置されている。エンジン7の下部には、エンジン7の潤滑用のオイルを貯留するオイルパン20が設けられている。
【0032】
本実施形態では、図1~2、図7~8に示されるように、エンジン7の側方上部には、ウォーターポンプ21と、エンジン7の出力軸7bに固定された駆動側プーリ23と、ウォーターポンプ21の入力軸21aに固定された出力側プーリ24と、駆動側プーリ23および出力側プーリ24に掛け回された無端ベルト22とを備えている。無端ベルト22は、ゴムまたは樹脂などからなり、耐熱性が低い低耐熱部品である。また、エンジン7の後側上方(車両後方X2かつ車両上方Z1(図2参照))には、他の低耐熱部品として、エンジン7を下方(図2の車両下方Z2)から支持するゴム製の支持部材(ゴムマウント)やバッテリなども配置されている。
【0033】
図1~5に示されるように、電気系ユニット30は、第1減速機8と、発電機9と、モータ10と、第2減速機11とを備える。
【0034】
第1減速機8は、発電用のエンジン7が発生する回転駆動力を減速して発電機9に伝達する。発電機9は、第1減速機8で減速された回転駆動力を受けて発電を行う。発電機9で発電した電気は、図示しないバッテリに充電されるかまたはモータ10へ直接供給される。モータ10は、車両1の走行状態に応じて発電機9から供給される電流および図示しないバッテリから供給される電流のうちの少なくとも1つが供給されることによって、回転駆動する。第2減速機11は、モータ10が発生する回転駆動力を減速して図示しない駆動軸に伝達する。駆動軸に伝達された回転駆動力によって、タイヤ26を回転することが可能である。
【0035】
エンジン7の排気構造は、図1~4に示されるように、エンジンルーム2内において、エンジン7と、排気浄化装置14と、排気浄化装置14の下流側に連通する排気管15と、エンジン7の排気ポート7a(図5および図8参照)と排気浄化装置14とを連通する排気マニホールド12と、通風路形成部材としてのカバー部材16と、断熱部材としてのインシュレータ17とを備えている。排気管15は、図3~4に示されるダッシュパネル5のトンネル部5aを通って車両後方X2へ延びる。
【0036】
排気浄化装置14は、車両前後方向Xにおいてエンジン7の後方(車両前後方向Xの後方側X2)の位置に配置されている。
【0037】
排気浄化装置14は、排気マニホールド12を介して送られてきたエンジン7の排気ガスを浄化する機能を有しており、具体的には、白金やパラジウムなどの金属の触媒を含むフィルタなどを備える。
【0038】
排気浄化装置14は、排気ガスの熱が高すぎると浄化機能の低下や排気浄化装置14の劣化のおそれがあるので、排気ガスの温度が所定温度以下(例えば800度以下)になるように排気マニホールド12をある程度の長さを確保して配設をする必要がある。本実施形態では、排気マニホールド12は、排気ポート7aに接続される吸入部12a(図5~6および図7~8参照)を有し、排気ポート7aから車幅方向Yにおいてエンジン7の側方を通って排気浄化装置14に至るように配設されている。これにより、前方排気のエンジン7の排気ポート7aに接続された排気マニホールド12をボンネット高さやエンジン7を含むパワーユニットの重心高さに影響を与えることなく、排気マニホールド12の長さを確保しながら当該排気マニホールド12の配設を行うことが可能になる。
【0039】
本実施形態では、排気マニホールド12は、電気系ユニット30の熱害を回避するために、車幅方向Yにおいて電気系ユニット30と反対側を通るように配設されている。すなわち、電気系ユニット30がエンジンルーム2の一方の側面2a(図3~4に示されるサイドフレーム4の車内側の側面)とエンジン7との間に配置されている構成において、排気マニホールド12は、エンジンルーム2の他方の側面2b(図3~4に示されるサイドフレーム3の車内側の側面)とエンジン7との間を通るように配設されている。排気マニホールド12は、エンジン7の前側部分から側方部分にかけて延びるL字形状を有するパイプによって構成されている。
【0040】
図1~7に示されるように、カバー部材16は、排気マニホールド12から離間して排気マニホールド12の周囲を取り囲むように配置されている。カバー部材16は、車両1前方からエンジン7に向かう空気を排気マニホールド12に沿って案内する通風路41を形成する。
【0041】
カバー部材16は、図5~7に示されるように、エンジン7の前方(すなわち、車両前後方向Xにおける前方X1)において排気マニホールド12の前側を覆う前側部分16aと、前側部分16aに連続してエンジン7の側方において排気マニホールド12の側方外側を覆う側方部分16bとを有する。すなわち、本実施形態の通風路形成部材は、平面視でL字形状のカバー部材16によって構成されている。L字形状のカバー部材16は、L字形状の排気マニホールド12を隙間なく連続的に覆うことが可能である。
【0042】
カバー部材16は、排気マニホールド12を覆った状態では排気マニホールド12に沿って延びるL字形状の通風路41を形成する。図5~7に示されるように、カバー部材16は、前側部分16aにおける側方部分16bから遠い側の端部16a1に形成された通風路41の導入口42と、側方部分16bの後端部16b1に形成された通風路41の排出口43とを有する。
【0043】
導入口42は、図5~7に示されるように、車両前方側X1から空気が流入可能な向きおよび位置に開口しており、車両走行時において走行風およびファン31によって発生する風による空気流れWを導入することが可能である。
【0044】
導入口42の周辺には、図2~3、図5~8に示されるように、空気流れWを導入口42に案内するガイド部材19が設けられている。ガイド部材19は、車両前方X1に突出するL字形状の壁を有する。
【0045】
また、本実施形態では、図1~2、図5~7に示されるように、導入口42の近傍において排気マニホールド12を車両前方側X1から覆う遮熱部材18を有する。遮熱部材18は、排気マニホールド12から放出する輻射熱を遮断することにより、ファン31を輻射熱から保護する。遮熱部材18は、排気マニホールド12のうち導入口42から車両前方X1に露出する部分を覆う主板部18aと、主板部18aの縁から車両前方X1に突出して空気流れWを導入口42に案内する立壁部18bとを有する。主板部18aには、排気マニホールド12に空気流れWの一部を通して冷却するためのスリット18cが形成されている。
【0046】
排出口43は、車両1前後方向においてスプラッシュガード29の後端29aと同じ位置またはその近傍の位置に配置されている。このため、カバー部材16の排出口43から排出された空気を、スプラッシュガード29による干渉を受けることなく、タイヤ26周辺からエンジンルーム2の外側に円滑に排出することが可能である。
【0047】
インシュレータ17は、図3~8に示されるように、排気マニホールド12における低耐熱部品(上記の無端ベルト22などの部品)の近傍の部分および排気浄化装置14の両方を連続的に覆っている。インシュレータ17は、断熱性を有する材料(ガラス繊維など)で構成されたシート状の部材である。インシュレータ17は、排気マニホールド12のうち後側(車両前後方向Xにおける後方側X2)の部分、具体的にはカバー部材16から外側にはみ出ている部分を覆っている。
【0048】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のエンジン7の排気構造は、車両1のエンジンルーム2に配設されるエンジン7であって、車両1前後方向において当該エンジン7の前方側に開口する排気ポート7aが形成された前方排気のエンジン7と、車両1前後方向においてエンジン7の後方に配置された排気浄化装置14と、排気ポート7aと排気浄化装置14とを連通する排気マニホールド12とを備えている。
【0049】
図1~4に示されるように、排気マニホールド12は、排気ポート7aから車幅方向Yにおいてエンジン7の側方を通って排気浄化装置14に至るように配設されている。
【0050】
かかる構成では、前方排気のエンジン7の排気構造として、排気マニホールド12がエンジン7の前方側に開口する排気ポート7aから車幅方向Yにおいてエンジン7の側方を通って排気浄化装置14に至るように配設されている。したがって、排気マニホールド12は、エンジン7側方を通ってエンジン7を迂回するので、ボンネット高さやパワーユニット重心高さおよびオイルパン20のオイル容量に影響を与えることなく排気マニホールド12の長さを確保することが可能になる。このため、排気ガスが排気マニホールド12内部を通る間に排気浄化装置14にとって安全な温度まで排気ガスの温度を下げることが可能になる。その結果、排気浄化装置14を高温の排気ガスに起因する熱害から保護することが可能となる。
【0051】
さらに詳しく説明すれば、排気マニホールド12は、エンジン7側方を通ってエンジン7を迂回するので、排気マニホールド12をエンジン7の下方(図2の車両下方Z2)に通すためにエンジン7のオイルパン20に凹みを形成させる必要がなく、その結果、オイルパン20に貯留されるオイルの容量に影響を与えない。
【0052】
エンジン7としてロータリーエンジンを採用した場合には、排気ガスの温度がレシプロエンジンの場合と比較して高温(約900度)になる傾向があるが、ロータリーエンジンの排気構造として上記の構成を採用すれば、ボンネット高さやパワーユニット重心高さに影響を与えることなく排気浄化装置14の触媒を熱害から保護することが可能になる。これにより、エンジン7としてロータリーエンジンを採用しても排気浄化装置14の熱害を回避することが可能になるとともに、ロータリーエンジンがレシプロエンジンと比較して小型であるという特性を利用して、エンジンルーム2内部におけるエンジン7およびその周辺のレイアウトをよりコンパクトにすることが可能になる。
【0053】
(2)
本実施形態のエンジン7の排気構造では、エンジン7は、発電用エンジンである。エンジン7は、図3~4に示されるように、エンジンルーム2内部において、エンジンルーム2における車幅方向Yの両側の側面2a、2bから離れた位置に配置されている。エンジンルーム2の一方の側面2aとエンジン7との間には、エンジン7が発生する回転駆動力を利用して発電を行う発電機9を含む電気系ユニット30が配置されている。排気マニホールド12は、エンジンルーム2の他方の側面2bとエンジン7との間を通るように配設されている。
【0054】
かかる構成によれば、エンジンルーム2の一方の側面2aとエンジン7との間に発電機9を含む電気系ユニット30が配置された構成において、排気マニホールド12がエンジンルーム2における電気系ユニット30から遠い側、すなわち、エンジンルーム2の他方の側面2bとエンジン7との間を通るように配設されている。これにより、排気ガスが通る排気マニホールド12を電気系ユニット30から離間することが可能になり、電気系ユニット30への熱害を防止することが可能である。
【0055】
(3)
本実施形態のエンジン7の排気構造は、図1~7に示されるように、排気マニホールド12から離間して排気マニホールド12の周囲を取り囲むように配置され、車両1前方からエンジン7に向かう空気を排気マニホールド12に沿って案内する通風路41を形成する通風路形成部材としてのカバー部材16を備える。
【0056】
かかる構成によれば、カバー部材16が排気マニホールド12の周囲を取り囲むように配置され、当該カバー部材16によって、車両1の前方X1からエンジン7に向かう空気(空気流れW参照)を排気マニホールド12に沿って案内する通風路41が形成される。これにより、車両1の走行中に車両1の前方X1からエンジン7に向かう空気を通風路41に通すことによって、排気マニホールド12を効率よく冷却することが可能である。その結果、排気浄化装置14を熱害から確実に保護することが可能になる。
【0057】
(4)
本実施形態のエンジン7の排気構造では、図5~7に示されるように、通風路形成部材としてのカバー部材16は、エンジン7の前方において排気マニホールド12の前側を覆う前側部分16aと、前側部分16aに連続してエンジン7側方において排気マニホールド12の側方外側を覆う側方部分16bとを有し、平面視でL字形状のカバー部材である。カバー部材16は、前側部分16aにおける側方部分16bから遠い側の端部16a1に形成された通風路41の導入口42と、側方部分16bの後端部16b1に形成された通風路41の排出口43とを有する。
【0058】
かかる構成によれば、本実施形態の通風路形成部材としてのカバー部材16は、平面視でL字形状のカバー部材である。このため、車両1走行中において空気は、エンジン7の前方からカバー部材16の前側部分16aに形成された導入口42に流入し、L字形状のカバー部材16内部に形成される通風路41を通って側方部分16bの後端部に形成された排出口43から排出される。これにより、カバー部材16の内部を通る空気によって排気マニホールド12を効果的に冷却することが可能である。
【0059】
(5)
本実施形態のエンジン7の排気構造では、車両1は、エンジンルーム2に対して車幅方向Yの外側(図1~5における車幅方向Yのうちの一方側Y1)に配置されたタイヤ26と、タイヤ26の車両1前方側の部分とエンジンルーム2との間を仕切る仕切り部材としてのスプラッシュガード29とを備える。排出口43は、車両前後方向Xにおいてスプラッシュガード29の後端29aと同じ位置またはその近傍の位置に配置されている。
【0060】
かかる構成によれば、カバー部材16の排出口43が車両前後方向Xにおいてタイヤ26の車両前方側X1の部分とエンジンルーム2との間を仕切るスプラッシュガード29の後端29aと同じ位置またはその近傍の位置に配置されている。このため、カバー部材16の排出口43から排出された空気を、スプラッシュガード29による干渉を受けることなく、タイヤ26周辺からエンジンルーム2の外側に円滑に排出することが可能である。
【0061】
(6)
本実施形態のエンジン7の排気構造は、車両1がエンジン7の周辺において耐熱性が低い低耐熱部品(ウォーターポンプ21への動力伝達用の無端ベルト22、または図示されないバッテリやゴムマウントなど)を備える構成において、排気マニホールド12における低耐熱部品の近傍の部分を覆う断熱部材としてのインシュレータ17を備えている。
【0062】
かかる構成によれば、排気マニホールド12から発生する熱をインシュレータ17によってエンジン7周辺の耐熱性が低い低耐熱部品(無端ベルト22など)から遮断することが可能になり、低耐熱部品の熱害を防止することが可能になる。
【0063】
本実施形態では、インシュレータ17の内部に排気マニホールド12の熱がこもってもカバー部材16による通風路41が存在するため、通風路41を通る空気流れWによってインシュレータ17および排気マニホールド12の両方を冷却することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 エンジンルーム
3、4 サイドフレーム
5 ダッシュパネル
6 バンパ
7 エンジン
7a 排気ポート
8 第1減速機
9 発電機
10 駆動モータ
11 第2減速機
12 排気マニホールド
13 吸気マニホールド
14 排気浄化装置
16 カバー部材(通風路形成部材)
16a 前側部分
16b 側方部分
16b1 後端部
17 インシュレータ(断熱部材)
26 タイヤ
29 スプラッシュガード(仕切り部材)
29a 後端
30 電気系ユニット
41 通風路
42 導入口
43 排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8