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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】位置推定システム及び移動局
(51)【国際特許分類】
   G01S 1/68 20060101AFI20240925BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20240925BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240925BHJP
【FI】
G01S1/68
H04W48/18
H04W88/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020210295
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096978
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】三宅 史朗
(72)【発明者】
【氏名】細谷 喜義
(72)【発明者】
【氏名】中江 悟
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526904(JP,A)
【文献】特開2018-036246(JP,A)
【文献】国際公開第2005/115034(WO,A1)
【文献】特表2017-525195(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0789445(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/00 - 1/68
5/00 - 5/14
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有のID情報を含むビーコン信号を送信するビーコン発信機と、
前記ビーコン発信機から前記ビーコン信号を受信し、前記受信したビーコン信号に基づく測位データを送信する移動局と、
前記移動局から送信された測位データに基づいて、前記移動局の位置を推定する位置推定装置と、
を含んで構成される位置推定システムであって、
前記移動局は、
ビーコン信号を受信するビーコン受信部と、
第1の通信方式により無線通信を行う第1の送信部と、
前記第1の通信方式よりも通信可能距離が短い第2の通信方式により無線通信を行う第2の送信部と、
前記ビーコン受信部で受信したビーコン信号に基づく測位データを前記第1の送信部で送信させるか前記第2の送信部で送信させるかを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記受信したビーコン信号に含まれるID情報から、ビーコン信号の発信元が屋外のビーコン発信機か屋内のビーコン発信機かを判定し、前記受信したビーコン信号の発信元が屋外のビーコン発信機であると判定した場合に前記第1の送信部から前記測位データを送信し、前記受信したビーコン信号の発信元が屋内のビーコン発信機であると判定した場合に前記第2の送信部から前記測位データを送信するように制御する
位置推定システム。
【請求項2】
前記位置推定装置に接続され、前記第1の通信方式により無線通信可能な第1の受信装置と、前記位置推定装置に接続され、前記第2の通信方式により無線通信可能な第2の受信装置と、を備え、
前記移動局は、前記受信したビーコン信号の発信元が屋外のビーコン発信機であると判定した場合に前記測位データの送信先を前記第1の受信装置に切り換え、前記受信したビーコン信号の発信元が屋内のビーコン発信機であると判定した場合に前記測位データの送信先を前記第2の受信装置に切り換える、
請求項に記載の位置推定システム。
【請求項3】
ビーコン信号を受信するビーコン受信部と、
第1の通信方式により無線通信を行う第1の送信部と、
前記第1の通信方式よりも通信可能距離が短い第2の通信方式により無線通信を行う第2の送信部と、
前記ビーコン受信部で受信したビーコン信号に基づく測位データ前記第1の送信部で送信させるか前記第2の送信部で送信させるかを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記受信したビーコン信号に含まれるID情報から、ビーコン信号の発信元が屋外のビーコン発信機か屋内のビーコン発信機かを判定し、前記受信したビーコン信号の発信元が屋外のビーコン発信機であると判定した場合に前記第1の送信部から前記測位データを送信し、前記受信したビーコン信号の発信元が屋内のビーコン発信機であると判定した場合に前記第2の送信部から前記測位データを送信するように制御する
移動局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定システム及び移動局に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の位置を推定する位置推定システムの利用が広がっている。位置推定システムとして、GPS(Global Positioning System)衛星のGPS信号を使用して屋外の位置情報を算出するシステムの他に、GPS信号が受信できない屋内の位置情報を入手するため、Bluetooth(登録商標)や無線LAN(Local Area Network)などのビーコン信号を用いるシステムが実現されている。
【0003】
関連する技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、携帯端末が屋内と屋外のどちらに存在するかに応じて、ビーコン信号を用いた屋内測位またはGPS信号を用いた屋外測位により測位処理を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-134152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように関連する技術では、屋内の位置推定ではビーコン信号が利用され、屋外の位置推定ではGPS信号が利用されている。しかしながら、屋外でGPS信号を使用した場合でも、トンネル内や屋根のあるような環境では不感エリアが発生するため、位置を推定できない場合がある。また、常にBluetoothなどの近距離無線を使用しようとすると、環境によって必要な情報を取得できないため、位置を推定できない恐れがある。このため、関連する技術では、より確実に位置を推定することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ビーコン信号を送信するビーコン発信機と、前記ビーコン発信機から前記ビーコン信号を受信し、前記受信したビーコン信号のID情報を含む測位データを送信する移動局と、前記移動局から送信された測位データに基づいて、前記移動局の位置を推定する位置推定装置と、を備え、前記移動局は、複数の送信手段を有し、前記受信したビーコン信号に基づいて、前記測位データの送信手段を切り換える、位置推定システムを提供する。
【0007】
本発明は、ビーコン発信機からビーコン信号を受信する受信部と、前記受信したビーコン信号のID情報を含む測位データを第1の通信方式により無線送信する第1の送信部と、前記測位データを第2の通信方式により無線送信する第2の送信部と、前記受信したビーコン信号に基づいて、前記測位データを送信する送信部を前記第1の送信部または前記第2の送信部のいずれかに切り換える制御部と、を備える、移動局を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より確実に位置を推定することが可能な位置推定システム及び移動局を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る位置推定システムの構成例を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係るビーコン発信機及び移動局の構成例を示す構成図である。
図3】実施の形態1に係るBLEゲートウェイ及び基地局の構成例を示す構成図である。
図4】実施の形態1に係る位置情報サーバ及び端末装置の構成例を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る移動局の動作例を示すフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る移動局の送信選択テーブルの例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る位置情報サーバの動作例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態2に係るビーコン発信機の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図面においては、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態に係る位置推定システムの構成例を示している。図1に示すように、本実施の形態に係る位置推定システム1は、複数のビーコン発信機10、移動局20、BLEゲートウェイ30、基地局40、位置情報サーバ50、端末装置60を備える。
【0012】
位置推定システム1は、ビーコン発信機10が送信し、移動局20が受信するビーコン信号bs(ここではbs1とする)を用いて、移動局20の位置を測定するシステムである。例えば、ビーコン信号bsは、Bluetooth Low Energy(BLE)のiBeacon(登録商標)などである。
【0013】
また、移動局20は、ビーコン発信機10と同様にビーコン信号bs(ここではbs2とする)を送信するとともに、例えば業務用無線のRF信号rsを送信する。例えば、ビーコン信号bsは、Bluetoothで使用する2.4GHzの近距離無線信号であり、数m~100m程度の範囲で通信可能である。RF信号rsは、業務用無線で使用するUHFまたはVHFの100MHz~900MHzの長距離無線信号であり、数Km~数十Kmの範囲で通信可能である。なお、ビーコン信号bsは、Bluetoothに限らず、無線LAN等のその他の近距離無線信号でもよい。また、RF信号rsは、業務用無線に限らず、携帯電話等のその他の遠距離無線信号でもよい。
【0014】
ビーコン発信機10は、屋内または屋外に設置されている。例えば、ビーコン発信機10は、ビーコン信号bsにより位置推定が可能な範囲、数m~100mの間隔で設置される。屋内または屋外に設置されたビーコン発信機10の周辺のエリアを移動局20が移動し、位置情報サーバ50が屋内または屋外の移動局20の位置を推定する。
【0015】
ビーコン発信機10、移動局20及びBLEゲートウェイ30は、BLE信号により無線通信可能なBLE無線通信システムを構成するとも言える。例えば、BLEゲートウェイ30と移動局20の間に、BLE信号(ビーコン信号bs2)を中継するBLEセンサを備えていてもよい。また、移動局20及び基地局40は、業務用無線のRF信号により無線通信可能な業務用無線通信システムを構成するとも言える。例えば、基地局40と移動局20の間に、RF信号rsを中継するリピータを備えていてもよい。
【0016】
ビーコン発信機10は、位置測定のためのビーコン信号bs1を発信する発信機である。図2(a)は、本実施の形態に係るビーコン発信機10の構成例を示している。図2(a)に示すように、ビーコン発信機10は、例えば、ビーコン送信部11、制御部12、記憶部13、電源14を備える。ビーコン送信部11は、BLE等の通信規格にしたがってビーコン信号bs1を無線送信する。ビーコン送信部11は、発信元のビーコン発信機10を識別するID情報(UUID:Universally Unique Identifier)を含むビーコン信号bs1を、定期的(例えば100ms毎に)に周囲へブロードキャストする。
【0017】
制御部12は、ビーコン発信機10の各部を制御する制御部である。制御部12は、ビーコン信号bs1として送信されるビーコンフレームの生成や、ビーコン信号bs1の送信タイミング及び送信電力等を制御する。記憶部13は、ビーコン発信機10の動作に必要な情報を記憶する記憶部である。記憶部13には、ビーコン信号bs1に含まれるビーコン発信機10のID情報等が記憶されている。
【0018】
電源14は、ビーコン発信機10が動作するためのバッテリ電源等である。電源は、ビーコン発信機10に内蔵されていてもよいし、外部から供給されてもよい。ビーコン発信機10は、その他、必要に応じて、ビーコン発信機10の向きを検出する地磁気センサや、GPS信号を受信するGPS受信部、ユーザに情報を表示する表示部等を備えてもよい。
【0019】
移動局20は、ビーコン発信機10から送信されたビーコン信号bs1を受信する受信機であり、位置測定対象の機器である。この例では、移動局20は、基地局40とRF信号rsによる業務用無線通信を行うトランシーバである。例えば、移動局20は、RF信号rsにより音声通話やデータ通信が可能な移動式の携帯型無線機である。
【0020】
また、移動局20は、位置測定のために、受信したビーコン信号bs1に基づいた測位データを出力する機器である。この例では、移動局20は、受信したビーコン信号bs1の測位データを、ビーコン信号bs2(BLE信号)によりBLEゲートウェイ30へ送信し、または、RF信号rsにより基地局40へ送信する。受信するビーコン信号bs1と送信するビーコン信号bs2は、BLE等の同じ通信方式のビーコン信号であり、移動局20は、ビーコン信号を送受信する送受信機であるとも言える。
【0021】
図2(b)は、本実施の形態に係る移動局20の構成例を示している。図2(b)に示すように、移動局20は、例えば、ビーコン受信部21、ビーコン送信部22、RF送受信部23、制御部24、記憶部25、電源26を備える。なお、移動局20は、後述の動作が可能であれば、その他の構成でもよい。
【0022】
ビーコン受信部21は、BLE等の通信規格にしたがってビーコン発信機10から無線送信されたビーコン信号bs1を受信し、さらに、受信したビーコン信号bs1の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定する。ビーコン送信部22は、BLE等の通信規格にしたがってビーコン信号bs2を無線送信する。ビーコン送信部22は、受信したビーコン信号bs1に基づいた測位データと移動局20を識別するID情報を含むビーコン信号bs2を送信する。
【0023】
RF送受信部23は、DMR(Digital Mobile Radio)等の業務用無線通信規格にしたがって、基地局40とRF信号rsを送受信する。RF送受信部23は、設定されたチャネルのRF信号rsにより、基地局40と音声やデータを送受信する。RF送受信部23は、受信したビーコン信号bs1に基づいた測位データと移動局20を識別するID情報を含むRF信号rsを送信する。測位データを送信するチャネルは、音声チャネルでもよいし、データチャネルでもよい。例えば、RF送受信部23は、第1の通信方式により測位データを送信する第1の送信手段(第1の送信部)であり、ビーコン受信部21は、第1の通信方式よりも通信可能距離が短い第2の通信方式により測位データを送信する第2の送信手段(第2の送信部)である。
【0024】
制御部24は、移動局20の各部を制御する制御部である。制御部24は、受信したビーコン信号bs1から測位データを生成する生成部である。測位データは、移動局20の位置を測定するためのデータであり、受信したビーコン信号bs1に含まれるビーコン発信機10のID情報とビーコン信号bs1の受信信号強度を含む。なお、測位データは、少なくともビーコン信号bs1のID情報のみを含んでいてもよい。制御部24は、所定期間(例えば2秒毎)に受信した複数のビーコン信号bs1のうち最も受信信号強度が強いビーコン信号bs1から測位データを生成する。制御部24は、記憶部25の送信選択テーブルを参照し、受信したビーコン信号bs1に基づいて、ビーコン信号bs1の測位データを送信する送信手段を切り換える切換部でもある。具体的には、制御部24は、ビーコン信号bs1のID情報に基づいて、測位データを送信する送信手段をビーコン送信部22(BLE)またはRF送受信部23(RF)のいずれかに切り換える。さらに、制御部24は、ビーコン信号bs1のID情報に基づいて、測位データを送信する送信先をBLEゲートウェイ30または基地局40のいずれかに切り換える。制御部24は、測位データの送信手段及び送信先を含む送信経路を判定(選択)する判定部(選択部)であるとも言える。この例では、送信手段及び送信先の両方を切り換えるが、いずれか一方を切り換えてもよい。
【0025】
例えば、BLEは屋内の測位に適し、RFは屋外の測位に適している。このため、ビーコン信号bs1のID情報から、ビーコン信号bs1の発信元のビーコン発信機10が屋内に設置されたビーコン発信機10か屋外に設置されたビーコン発信機10かを判別し、屋内のビーコン発信機10の場合にBLEを選択し、屋外のビーコン発信機10の場合にRFを選択してもよい。例えば、移動局20がGPS受信機を備え、GPS受信機により検出される位置から屋内または屋外を判定し、判定結果に基づいて送信手段を選択してもよい。また、BLEは通信距離が短く、通信速度が速く、消費電力が小さいという特徴があり、RFは通信距離が長く、通信速度が遅く、消費電力が大きいという特徴がある。このため、BLEゲートウェイ30までの距離が所定よりも短い場合(例えばBLEゲートウェイ30からの電波を受信できる場合)や、短時間で位置を測定する必要がある場合(例えば緊急目的で使用する場合)、移動局の消費電力を抑えたい場合(例えば電源の残量が所定よりも少ない場合)などに、送信手段をBLEとしてもよい。BLEゲートウェイ30までの距離が所定よりも遠い場合(例えばBLEゲートウェイ30からの電波を受信できない場合)や、短時間で位置を測定する必要がない場合(例えば緊急性が不要な目的で使用する場合)、移動局の消費電力を抑える必要がない場合(例えば電源の残量が所定よりも多い場合)などに、送信手段をRFとしてもよい。また、BLE(ビーコン送信部22)とRF(RF送受信部23)で通信品質が良い方の送信手段を選択してもよい。
【0026】
記憶部25は、移動局20の動作に必要な情報を記憶する記憶部である。記憶部25には、送信するビーコン信号bs2やRF信号rsに含まれる移動局20のID情報等が記憶されている。また、記憶部25は、測位データを送信する送信手段及び送信先を選択するための送信選択テーブルを記憶する。例えば、必要に応じて、専用の設定ツールがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)を移動局20に接続し、PCの設定ツールから送信選択テーブルなどの各種設定を行うことができる。
【0027】
電源26は、移動局20が動作するための電源である。電源26は、移動局20に内蔵されていてもよいし、外部から供給されてもよい。移動局20は、その他、必要に応じて、GPS信号を受信する受信部、ユーザが操作する操作部、ユーザが通話を行うマイク及びスピーカ、ユーザに情報を表示する表示部等を備えていてもよい。
【0028】
BLEゲートウェイ30は、移動局20から送信されたビーコン信号bs2を受信する受信装置であり、受信するビーコン信号bs2に含まれる測位データを位置情報サーバ50へ中継する機器である。例えば、BLEゲートウェイ30は、位置情報サーバ50とシリアル回線2を介して接続されるが、任意の通信回線やネットワークを介して接続されてもよい。
【0029】
図3(a)は、本実施の形態に係るBLEゲートウェイ30の構成例を示している。図3(a)に示すように、BLEゲートウェイ30は、例えば、ビーコン受信部31、シリアル送受信部32、制御部33を備える。ビーコン受信部31は、BLE等の通信規格にしたがって移動局20から無線送信されたID情報と測位データとを含むビーコン信号bs2を受信する。
【0030】
シリアル送受信部32は、シリアル通信規格にしたがい、シリアル回線2を介して位置情報サーバ50と通信を行う。シリアル送受信部32は、移動局20から受信した移動局20のID情報とビーコン信号bs1の測位データを位置情報サーバ50へ送信する。制御部33は、BLEゲートウェイ30の各部を制御する制御部である。制御部33は、受信したビーコン信号bs2に含まれる情報をシリアル送受信部32へ転送する。
【0031】
基地局40は、移動局20から送信されたRF信号rsを受信する受信装置であり、受信するRF信号rsに含まれる測位データを位置情報サーバ50へ中継する機器である。この例では、基地局40は、RF信号rsにより複数の移動局20と業務用無線通信を行う固定式のシステム無線機である。例えば、基地局40は、位置情報サーバ50とシリアル回線3を介して接続されるが、任意の通信回線やネットワークを介して接続されてもよい。例えば、基地局40は、第1の通信方式により測位データを受信する第1の受信装置であり、BLEゲートウェイ30は、第2の通信方式により測位データを受信する第2の受信装置である。
【0032】
図3(b)は、本実施の形態に係る基地局40の構成例を示している。図3(b)に示すように、基地局40は、例えば、RF送受信部41、シリアル送受信部42、制御部43を備える。RF送受信部41は、DMR等の業務用無線通信規格にしたがって、移動局20とRF信号rsを送受信する。RF送受信部41は、設定されたチャネルのRF信号rsにより、移動局20と音声やデータを送受信する。また、RF送受信部41は、移動局20から送信されたID情報と測位データとを含むRF信号rsを受信する。
【0033】
シリアル送受信部42は、シリアル通信規格にしたがい、シリアル回線3を介して位置情報サーバ50と通信を行う。シリアル送受信部42は、移動局20から受信した移動局20のID情報とビーコン信号bs1の測位データを位置情報サーバ50へ送信する。制御部43は、基地局40の各部を制御する制御部である。制御部43は、受信したRF信号rsに含まれる情報をシリアル送受信部42へ転送する。基地局40は、その他、必要に応じて、ユーザが操作する操作部、ユーザが通話を行うマイク及びスピーカ、ユーザに情報を表示する表示部等を備えていてもよい。
【0034】
位置情報サーバ50は、ビーコン発信機10のビーコン信号bs1の測位データに基づいて、移動局20の位置を推定する位置推定装置である。例えば、位置情報サーバ50は、端末装置60とネットワーク4を介して接続される。ネットワーク4は、LANや無線LAN、インターネット等でもよいし、シリアル回線などの通信回線でもよい。図4(a)は、本実施の形態に係る位置情報サーバ50の構成例を示している。図4(a)に示すように、位置情報サーバ50は、例えば、シリアル送受信部51、シリアル送受信部52、ネットワーク送受信部53、記憶部54、制御部55を備える。なお、位置情報サーバ50は、後述の動作が可能であれば、その他の構成でもよい。
【0035】
シリアル送受信部51は、シリアル通信規格にしたがい、シリアル回線2を介してBLEゲートウェイ30と通信を行う。シリアル送受信部51は、BLEゲートウェイ30が移動局20から受信したビーコン信号bs2に含まれるID情報及び測位データを、BLEゲートウェイ30から受信する。シリアル送受信部52は、シリアル通信規格にしたがい、シリアル回線3を介して基地局40と通信を行う。シリアル送受信部52は、基地局40が移動局20から受信したRF信号rsに含まれるID情報及び測位データを、基地局40から受信する。シリアル送受信部52は、基地局40を介した第1の経路で測位データを受信する第1の受信部であり、シリアル送受信部51は、BLEゲートウェイ30を介した第2の経路で測位データを受信する第2の受信部である。
【0036】
ネットワーク送受信部53は、Ethernet(登録商標)等の規格にしたがい、ネットワーク4を介して端末装置60と通信を行う。記憶部54は、位置情報サーバ50の動作に必要な情報を記憶する。記憶部54は、地図情報や、ビーコン発信機10の地図上の位置、算出した移動局20の位置情報等を記憶する。
【0037】
制御部55は、位置情報サーバ50の各部を制御する制御部である。制御部55は、移動局20が受信したビーコン信号bs1の測位データに基づいて、移動局20の位置情報を推定する。制御部55は、BLEゲートウェイ30または基地局40から、移動局20がビーコン発信機10から受信したビーコン信号bs1のID情報と受信信号強度とを含む測位データを受け取り、ビーコン発信機10の地図上の位置と受信信号強度から算出される移動局20までの距離を使用して、ビーコン信号bs2のID情報から識別される移動局20の位置を推定する。例えば、制御部55は、複数のビーコン発信機10のビーコン信号bs1うち、最も強い受信信号強度のビーコン信号bs1のID情報及び受信信号強度に基づいて移動局20の位置を推定する。
【0038】
端末装置60は、位置情報サーバ50にアクセスし、移動局20の位置情報を参照するクライアント端末である。端末装置60は、PCやスマートフォン等の任意の情報処理装置である。図4(b)は、本実施の形態に係る端末装置60の構成例を示している。
【0039】
図4(b)に示すように、端末装置60は、例えば、ネットワーク送受信部61、表示部62、制御部63を備える。ネットワーク送受信部61は、Ethernet等の規格にしたがい、ネットワーク4を介して位置情報サーバ50と通信を行う。表示部62は、ユーザに情報を表示する表示部である。表示部62は、例えば、移動局20の位置情報を地図情報に重ね合わせて表示する。制御部63は、端末装置60の各部を制御する制御部である。制御部63は、位置情報サーバ50が演算した移動局20の位置情報や地図情報を、位置情報サーバ50から取得し、表示部62に表示するよう制御する。
【0040】
図5は、本実施の形態に係る移動局20の動作例を示している。図5に示すように、まず、移動局20は、ビーコン信号bs1を受信する(S101)。複数のビーコン発信機10は、それぞれビーコン信号bs1を定期的に発信している。移動局20のビーコン受信部21は、複数のビーコン発信機10からそれぞれビーコン信号bs1を受信する。受信するビーコン信号bs1には、それぞれ発信元のビーコン発信機10のID情報が含まれている。
【0041】
続いて、移動局20は、ビーコン信号bs1の受信信号強度を測定する(S102)。ビーコン受信部21は、ビーコン発信機10から受信したビーコン信号bs1の受信信号強度を測定する。ビーコン受信部21は、複数のビーコン信号bs1を受信すると、受信する毎にビーコン信号bs1の受信信号強度を測定し、また、ビーコン信号bs1に含まれるID情報を取得する。
【0042】
続いて、移動局20は、最も受信信号強度が強いビーコン信号bs1を特定する(S103)。この例では、移動局20に最も近いビーコン発信機10の位置をもとに、移動局20の位置を推定する。このため、制御部24は、所定期間に受信した複数のビーコン信号bs1の受信信号強度を比較し、最も受信信号強度が強いビーコン信号bs1を特定する。
【0043】
続いて、移動局20は、ビーコン信号bs1に基づいて送信手段を判定する(S104)。図6は、記憶部25に記憶された、測位データの送信手段及び送信先を選択するための送信選択テーブルの例を示している。図6に示すように、送信選択テーブルは、ビーコン信号bs1のID情報(UUID)ごとに、ビーコン信号bs1の測位データを送信する送信手段及び送信先の識別情報が関連付けられている。制御部24は、記憶部25の送信選択テーブルの中から、受信及び特定されたビーコン信号bs1のID情報を検索し、該当するID情報に関連つけられた送信手段及び送信先を選択する。
【0044】
送信手段がBLEの場合(S104/BLE)、移動局20は、ビーコンフレームを生成し(S105)、ビーコン信号bs2を送信する(S106)。制御部24は、受信及び特定されたビーコン信号bs1のID情報が例えば「00010001」の場合、送信手段はBLEであり、かつ、送信先はBLEゲートウェイであると判定し、BLEの規格にしたがったビーコン信号用のビーコンフレームを生成する。例えば、ビーコンフレームのペイロードに、受信したビーコン信号bs1のID情報及び受信信号強度を含む測位データを設定し、ビーコンフレームの送信先にBLEゲートウェイ30のID情報を設定し、ビーコンフレームの送信元(UUID)に移動局20のID情報を設定する。ビーコン送信部22は、生成されたビーコンフレームをBLEの規格にしたがったBLE信号により、ビーコン信号bs2として無線送信する。
【0045】
また、送信手段がRFの場合(S104/RF)、移動局20は、データフレームを生成し(S107)、RF信号rsを送信する(S108)。制御部24は、受信及び特定されたビーコン信号bs1のID情報が例えば「00010002」の場合、送信手段はRFであり、かつ、送信先は基地局であると判定し、業務用無線の規格にしたがったデータ通信用のデータフレームを生成する。例えば、データフレームのペイロードに、受信したビーコン信号bs1のID情報及び受信信号強度を含む測位データを設定し、データフレームの送信先に基地局40のID情報を設定し、データフレームの送信元に移動局20のID情報を設定する。RF送受信部23は、生成されたデータフレームを業務用無線の規格にしたがったRF信号rsにより無線送信する。
【0046】
図7は、本実施の形態に係る位置情報サーバ50の動作例を示している。図7に示すように、まず、位置情報サーバ50は、測位データを受信する(S201)。シリアル送受信部51またはシリアル送受信部52は、移動局20から送信された測位データを受信する。移動局20からビーコン信号bs2により測位データが送信された場合、シリアル送受信部51は、BLEゲートウェイ30を介して、ビーコン信号bs2に含まれる測位データを受信する。また、移動局20からRF信号rsにより測位データが送信された場合、シリアル送受信部52は、基地局40を介して、RF信号rsに含まれる測位データを受信する。
【0047】
続いて、位置情報サーバ50は、ビーコン信号bs1のID情報及び受信信号強度を取得する(S202)。制御部55は、BLEゲートウェイ30または基地局40から受信した測位データに基づいて、ビーコン信号bs1を発信したビーコン発信機10のID情報と、移動局20が測定したビーコン信号bs1の受信信号強度を取得する。これにより、制御部55は、最も受信信号強度が強いビーコン信号bs1のID情報と受信信号強度を取得する。
【0048】
続いて、位置情報サーバ50は、移動局20の位置を推定する(S203)。例えば、制御部55は、取得したビーコン信号bs1のID情報から、該当するID情報のビーコン発信機10の位置を特定し、特定したビーコン発信機10の位置の周辺のエリアに、移動局20の位置が含まれることを推定してもよい。また、制御部55は、ビーコン信号bs1の受信信号強度によりビーコン発信機10と移動局20の距離を算出し、ビーコン発信機10を中心として算出した距離により特定されるエリアに、移動局20の位置が含まれることを推定してもよい。
【0049】
例えば、ビーコン信号の一つであるiBeaconの信号内には、いくつかの情報が組み込まれており、その中にMeasured Powerと呼ばれるパラメータが含まれる。iBeaconの場合、発信機と受信機を1m離して測定した受信信号強度をMeasured Powerと定義しており、この基準となる受信信号強度を「RSSI@1m」とする。そうすると、基準となる受信信号強度と実際に測定した受信信号強度から、以下のような式で発信機と受信機の距離(d)が算出できる。例えば、制御部55は、この式(1)により、ビーコン信号bs1の受信信号強度からビーコン発信機10と移動局20の距離を算出する。
【0050】
d=10^{(RSSI@1m-RSSI)/(10*n)} ・・・(1)
なお、この式(1)内のnは伝搬損失係数である。nは理想的な環境では2となり、電波の受信環境によって変動する。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、移動局の位置を推定する位置推定システムにおいて、屋内や屋外に設置したビーコン発信機からビーコン信号を発信し、移動局が受信したビーコン信号に基づいた測位データを、移動局からRF信号またはBLE信号により送信する。例えば、ビーコン発信機によるネットワーク敷設が困難な場所ではRF信号による送信を行い、ビーコン発信機によるネットワーク敷設が可能な場所ではBLE信号で送信する。これにより、いずれの場所でも移動局から測位データを取得可能となるため、より確実に位置を推定することができる。特に、GPS信号の受信が困難な場所にビーコン発信機を設置することにより、移動局の位置管理を確実に行うことができる。また、BLE信号を用いて送信することにより、RFチャンネルを節約することもできる。
【0052】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、ビーコン発信機から移動局の送信手段を選択可能とする。なお、位置推定システムの各装置の構成や、ビーコン発信機以外の動作は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図8は、本実施の形態に係るビーコン発信機10の動作例を示している。図8に示すように、ビーコン発信機10は、移動局20の送信手段を選択する(S301)。制御部12は、移動局20がビーコン信号bs1の測位データを送信する送信手段(例えばBLEまたはRF)を選択する。例えば、記憶部13に予め設定された情報から送信手段を選択してもよい。また、ビーコン発信機10の位置に応じて送信手段を選択してもよい。例えば、ビーコン発信機10がGPS受信機を備え、GPS受信機により検出される位置から屋内または屋外を判定し、屋内の場合にBLEを選択し、屋外の場合にRFを選択してもよい。
【0054】
続いて、ビーコン発信機10は、ビーコンフレームを生成し(S302)、移動局20の送信手段を設定する(S303)。制御部12は、BLEの規格にしたがってビーコンフレームを生成する。例えば、ビーコンフレームのペイロードに、選択した送信手段を示す選択情報を設定し、ビーコンフレームの送信先にブロードキャスト情報を設定し、ビーコンフレームの送信元(UUID)にビーコン発信機10のID情報を設定する。
【0055】
続いて、ビーコン発信機10は、ビーコン信号bs1を送信する(S30)。ビーコン送信部11は、生成されたビーコンフレームをBLEの規格にしたがったBLE信号により、ビーコン信号bs1として無線送信する。そうすると、移動局20は、受信したビーコン信号bs1に含まれる選択情報により送信手段を選択し、選択した送信手段によりビーコン信号bs1の測位データを送信する。
【0056】
このように、ビーコン発信機が移動局の送信手段を選択する選択情報を含めてビーコン信号bs1を送信し、移動局が受信するビーコン信号bs1に含まれる選択情報により送信手段を選択してもよい。この場合、移動局の記憶部に送信選択テーブルは不要であり、移動局に予め設定しなくてもよい。なお、送信手段と同様、送信先(例えばBLEゲートウェイまたは基地局)をビーコン発信機10が選択し、選択した送信先の情報をビーコン信号bs1に含めて送信してもよい。これにより、移動局20は、受信したビーコン信号bs1に含まれる情報により送信先を選択できる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、移動局が2つの送信手段を備える例について説明したが、2つに限らず3つ以上の送信手段を備えてもよい。例えば、通信可能距離が異なる3つ以上の送信手段の中から測位データを送信する送信手段を選択してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、移動局は2つの送信手段のいずれかで測位データを送信する例について説明したが、2つの送信手段の両方で測位データを送信してもよい。この場合、位置情報サーバ50は、2つの経路から受信する測位データのいずれかを選択し、選択した測位データを使用して位置を推定してもよい。
【0059】
さらに、上記実施の形態では、最も受信信号強度が強いビーコン信号に基づいて移動局の位置を推定したが、受信した複数のいずれかのビーコン信号を使用してもよい。例えば、所定期間のうち最後に受信したビーコン信号を使用して位置を推定してもよい。また、1つのビーコン信号に限らず、複数のビーコン信号を使用して位置を推定してもよい。
【0060】
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置の機能(処理)を、CPUやメモリ等を有するコンピュータにより実現してもよい。例えば、記憶装置に実施形態における方法(制御方法や位置推定方法)を行うためのプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたプログラムをCPUで実行することにより実現してもよい。
【0061】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0062】
1 位置推定システム
2、3 シリアル回線
4 ネットワーク
10 ビーコン発信機
12 制御部
13 記憶部
14 電源
20 移動局
21 ビーコン受信部
22 ビーコン送信部
23 RF送受信部
24 制御部
25 記憶部
26 電源
30 BLEゲートウェイ
31 ビーコン受信部
32 シリアル送受信部
33 制御部
40 基地局
41 RF送受信部
42 シリアル送受信部
43 制御部
50 位置情報サーバ
51、52 シリアル送受信部
53 ネットワーク送受信部
54 記憶部
55 制御部
60 端末装置
61 ネットワーク送受信部
62 表示部
63 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8