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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】搬送装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/38 20060101AFI20240925BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B65H5/38
B65H5/06 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020214095
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099989
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】中幡 彰伸
(72)【発明者】
【氏名】城井 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】向田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】田村 与作
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145078(JP,A)
【文献】特開2007-128003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/38
B65H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、
前記装置本体に設けられ、前記搬送経路を開閉可能なカバー部と、
前記装置本体において第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路の一部を形成し、前記第2位置では前記下降経路から退避する第1経路形成部と、
前記カバー部に設けられ、前記カバー部が前記搬送経路を閉止する閉止状態において、前記上昇経路を形成し且つ前記第1経路形成部と共に前記下降経路を形成する第2経路形成部と、
前記カバー部の開閉動作に伴って前記第1経路形成部を前記第1位置及び前記第2位置の一方に移動させる移動部と、
を備え、
前記第1経路形成部の少なくとも一部は、前記閉止状態において、前記第2経路形成部の移動領域に位置し、
前記移動部は、前記カバー部が開動作される場合、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させ、前記カバー部が閉動作される場合、前記第1経路形成部を前記第1位置へ移動させる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記第1経路形成部と前記第2経路形成部は、所定の間隔をあけて対向配置されることで前記下降経路を形成し、
前記移動部は、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させる場合、前記第1経路形成部と前記第2経路形成部との間隔を前記所定の間隔以上の間隔とする、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置において、
前記第1経路形成部は、前記媒体を支持可能な媒体支持部材と、前記媒体支持部材を前記第1位置及び前記第2位置の一方へ回転可能に支持する第1回転軸と、を備え、
前記第1回転軸は、前記装置高さ方向において、前記第2経路形成部の前記移動領域より下方に位置する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置において、
前記第1経路形成部を前記第1位置において保持する保持部が設けられ、
前記保持部は、前記カバー部が前記開動作される場合、前記第1経路形成部の保持状態を解除する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、
前記保持部は、第2回転軸と、前記第2回転軸に固定され且つ前記カバー部の開閉動作に連動して前記第2回転軸を回転させるレバー部と、前記第2回転軸に固定され前記媒体支持部材を前記第1位置において支持する支持部と、を備え、
前記レバー部は、前記カバー部が前記閉止状態の場合に前記カバー部と接触し、前記カバー部が開放状態の場合に前記カバー部から離れ、
前記レバー部が前記カバー部と接触する状態において、前記支持部は前記媒体支持部材を支持する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の搬送装置において、
前記移動部は、前記保持部を兼ねる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記第1回転軸は、前記媒体を搬送可能な第1搬送ローラーが設けられ、
前記第2経路形成部は、前記第1搬送ローラーと共に前記媒体を搬送する第2搬送ローラーが設けられ、
前記カバー部が前記閉止状態となる場合、前記第1搬送ローラーと前記第2搬送ローラーとが前記媒体を挟むニップ部を形成し、前記カバー部が開放状態となる場合、前記ニップ部の形成が解除される、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の搬送装置において、
前記第1経路形成部は、前記媒体を支持する支持ローラーが設けられ、
前記第2経路形成部は、前記支持ローラーと対向し且つ前記支持ローラーと共に回転されることで前記媒体を搬送する対向ローラーが設けられ、
前記第1経路形成部が前記第1位置に配置された場合、前記支持ローラーと前記対向ローラーとがニップ状態とされ、前記第1経路形成部が前記第2位置に配置された場合、前記支持ローラーと前記対向ローラーとのニップ状態が解除される、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送装置において、
前記移動部は、前記第1経路形成部を前記装置高さ方向における上方に移動させることで、前記支持ローラーを前記対向ローラーとニップする位置まで押し上げる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される媒体に記録を行う記録部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のインクジェット記録装置は、搬送方向の上流の搬送ローラーから下流の搬ローラーへ向けて、記録媒体が上昇する搬送経路が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-14253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインクジェット記録装置において、装置を大型化させずに搬送経路の長さを長くする構成として、搬送経路の一部が装置高さ方向にオーバーラップするように、搬送経路の一部に下降部及び上昇部を設ける構成が考えられる。搬送経路は、装置本体に残る部材と、装置本体に対して開閉可能な部材とで構成される。
しかし、この構成では、搬送経路を開放する場合、搬送経路の一部に下降部及び上昇部が存在することで部材が干渉し、搬送経路を開放できなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る搬送装置は、媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、前記装置本体に設けられ、前記搬送経路を開閉可能なカバー部と、前記装置本体において第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路の一部を形成し、前記第2位置では前記下降経路から退避する第1経路形成部と、前記カバー部に設けられ、前記カバー部が前記搬送経路を閉止する閉止状態において、前記上昇経路を形成し且つ前記第1経路形成部と共に前記下降経路を形成する第2経路形成部と、前記カバー部の開閉動作に伴って前記第1経路形成部を前記第1位置及び前記第2位置の一方に移動させる移動部と、を備え、前記第1経路形成部の少なくとも一部は、前記閉止状態において、前記第2経路形成部の移動領域に位置し、前記移動部は、前記カバー部が開動作される場合、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させ、前記カバー部が閉動作される場合、前記第1経路形成部を前記第1位置へ移動させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係るプリンターの用紙の搬送経路を示す図。
図2】実施形態に係るプリンターの用紙の搬送経路の概略図。
図3】実施形態に係るプリンターの搬送経路が開放された状態を示す斜視図。
図4】実施形態に係る搬送部の下ガイド部材及び移動部を下方から見た斜視図。
図5】実施形態に係る搬送部の下ガイド部材の一部を示す斜視図。
図6】実施形態に係る搬送部の下ガイド部材が本体フレームによって支持される状態を示す縦断面図。
図7】実施形態に係る搬送部の下ガイド部材が支持部に支持される状態を示す縦断面図。
図8】実施形態に係る搬送部のレバー部材がカバー部の被接触面に接触する状態を示す斜視図。
図9】実施形態に係る搬送部の搬送経路の一部を拡大した概略図。
図10】実施形態に係る搬送部のレバー部材の回転に伴って下ガイド部材が第1位置から第2位置へ移動する状態を示す側面図。
図11】実施形態に係るプリンターのカバー部が開動作されることで搬送経路が開放された状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について概略的に説明する。
第1の態様に係る搬送装置は、媒体が装置高さ方向の下方へ搬送される下降経路と前記媒体が前記装置高さ方向の上方へ搬送される上昇経路とが、前記装置高さ方向においてオーバーラップする搬送経路が形成される装置本体と、前記装置本体に設けられ、前記搬送経路を開閉可能なカバー部と、前記装置本体において第1位置及び第2位置に移動可能に設けられ、前記第1位置では前記下降経路の一部を形成し、前記第2位置では前記下降経路から退避する第1経路形成部と、前記カバー部に設けられ、前記カバー部が前記搬送経路を閉止する閉止状態において、前記上昇経路を形成し且つ前記第1経路形成部と共に前記下降経路を形成する第2経路形成部と、前記カバー部の開閉動作に伴って前記第1経路形成部を前記第1位置及び前記第2位置の一方に移動させる移動部と、を備え、前記第1経路形成部の少なくとも一部は、前記閉止状態において、前記第2経路形成部の移動領域に位置し、前記移動部は、前記カバー部が開動作される場合、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させ、前記カバー部が閉動作される場合、前記第1経路形成部を前記第1位置へ移動させることを特徴とする。
本態様によれば、前記装置高さ方向に沿って直線状に延びる搬送経路を有する構成に比べて、前記装置高さ方向においてオーバーラップする前記上昇経路及び前記下降経路を有することで、前記搬送経路の経路長を長くすることができる。
また、前記第1経路形成部の少なくとも一部が、前記カバー部の前記閉止状態において、前記第2経路形成部の前記移動領域に位置する。換言すると、前記第1経路形成部の少なくとも一部と前記第2経路形成部の少なくとも一部とが前記装置高さ方向にオーバーラップする配置であるので、前記搬送装置を小型化できる。
さらに、前記移動部が、前記カバー部が開動作される場合、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させることで、前記第1経路形成部が前記第2経路形成部の前記移動領域から離れるので、前記カバー部の開動作が制限され難くなり、前記搬送経路を開放し易くなる。これにより、前記搬送経路にジャムなどによって留まる前記媒体を、簡単に取り除くことができる。
【0008】
第2の態様に係る搬送装置は、第1の態様において、前記第1経路形成部と前記第2経路形成部は、所定の間隔をあけて対向配置されることで前記下降経路を形成し、前記移動部は、前記第1経路形成部を前記第2位置へ移動させる場合、前記第1経路形成部と前記第2経路形成部との間隔を前記所定の間隔以上の間隔とすることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1経路形成部が前記第2位置へ移動される場合、前記所定の間隔以上の間隔が維持される。つまり、前記第1経路形成部と前記第2経路形成部が接触し難くなるので、前記搬送経路に留まる前記媒体が破損することを抑制できる。
【0009】
第3の態様に係る搬送装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記第1経路形成部は、前記媒体を支持可能な媒体支持部材と、前記媒体支持部材を前記第1位置及び前記第2位置の一方へ回転可能に支持する第1回転軸と、を備え、前記第1回転軸は、前記装置高さ方向において、前記第2経路形成部の前記移動領域より下方に位置することを特徴とする。
本態様によれば、前記第1経路形成部が前記第1回転軸を中心に回転されることで前記第1位置及び前記第2位置の一方へ移動されるので、簡単な構成で前記第1経路形成部を移動させることができる。また、前記第1回転軸が前記第2経路形成部の前記移動領域より下方に位置するので、前記第1回転軸が前記第2経路形成部と接触するのを防ぐことができる。
【0010】
第4の態様に係る搬送装置は、第3の態様において、前記第1経路形成部を前記第1位置において保持する保持部が設けられ、前記保持部は、前記カバー部が前記開動作される場合、前記第1経路形成部の保持状態を解除することを特徴とする。
本態様によれば、前記カバー部が前記開動作される場合、前記保持部が前記第1経路形成部の保持状態を解除する。ここで、前記第1経路形成部は、保持状態が解除されることで前記第1回転軸による片持ち状態となり、自重によって回転するので、簡単な構成で前記第2経路形成部の前記移動領域を開放させることができる。
【0011】
第5の態様に係る搬送装置は、第4の態様において、前記保持部は、第2回転軸と、前記第2回転軸に固定され且つ前記カバー部の開閉動作に連動して前記第2回転軸を回転させるレバー部と、前記第2回転軸に固定され前記媒体支持部材を前記第1位置において支持する支持部と、を備え、前記レバー部は、前記カバー部が前記閉止状態の場合に前記カバー部と接触し、前記カバー部が開放状態の場合に前記カバー部から離れ、前記レバー部が前記カバー部と接触する状態において、前記支持部は前記媒体支持部材を支持することを特徴とする。
本態様によれば、前記カバー部が前記閉止状態となる場合、前記レバー部が前記カバー部と接触することで、前記レバー部に押付力が作用する。これにより、前記レバー部が前記第2回転軸及び前記支持部を回転させる。そして、前記支持部は、回転されながら前記媒体支持部材を押し上げ、前記媒体支持部材を前記第1位置において支持する。
前記カバー部が開放状態となる場合、前記媒体支持部材が自重により下がることで前記支持部が回転され、前記第2経路形成部の前記移動領域が開放される。
このように、前記カバー部の開閉によって、前記媒体支持部材即ち、前記第1経路形成部を変位させることができる。
【0012】
第6の態様に係る搬送装置は、第4の態様又は第5の態様において、前記移動部は、前記保持部を兼ねることを特徴とする。
本態様によれば、前記移動部とは別の構成として前記保持部を設けなくて済むので、前記第1経路形成部を移動及び保持する構成を簡単な構成にできる。
【0013】
第7の態様に係る搬送装置は、第3の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、前記第1回転軸は、前記媒体を搬送可能な第1搬送ローラーが設けられ、前記第2経路形成部は、前記第1搬送ローラーと共に前記媒体を搬送する第2搬送ローラーが設けられ、前記カバー部が前記閉止状態となる場合、前記第1搬送ローラーと前記第2搬送ローラーとが前記媒体を挟むニップ部を形成し、前記カバー部が開放状態となる場合、前記ニップ部の形成が解除されることを特徴とする。
本態様によれば、前記搬送経路において前記媒体を搬送するローラー対のニップ部のうち、前記第1搬送ローラー及び前記第2搬送ローラーによって形成される前記ニップ部が、前記カバー部が開放状態となることに連動して解除されるので、前記搬送経路に残留する前記媒体を取り出し易くなる。
【0014】
第8の態様に係る搬送装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記第1経路形成部は、前記媒体を支持する支持ローラーが設けられ、前記第2経路形成部は、前記支持ローラーと対向し且つ前記支持ローラーと共に回転されることで前記媒体を搬送する対向ローラーが設けられ、前記第1経路形成部が前記第1位置に配置された場合、前記支持ローラーと前記対向ローラーとがニップ状態とされ、前記第1経路形成部が前記第2位置に配置された場合、前記支持ローラーと前記対向ローラーとのニップ状態が解除されることを特徴とする。
本態様によれば、前記搬送経路において前記媒体を搬送するローラー対のニップ部のうち、前記支持ローラー及び前記対向ローラーによって形成されるニップ状態が、前記カバー部が開放状態となることに連動して解除されるので、前記搬送経路に残留する前記媒体を取り出し易くなる。
【0015】
第9の態様に係る搬送装置は、第8の態様において、前記移動部は、前記第1経路形成部を前記装置高さ方向における上方に移動させることで、前記支持ローラーを前記対向ローラーとニップする位置まで押し上げることを特徴とする。
本態様によれば、前記移動部が前記第1経路形成部を移動させることで、前記支持ローラーが前記対向ローラーとニップ状態となるので、前記第1経路形成部の移動と、前記支持ローラーと前記対向ローラーとをニップ状態とする動作とを別々に行う構成に比べて、簡単な構成で、前記支持ローラーと前記対向ローラーとをニップさせることができる。
【0016】
第10の態様に係る印刷装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか1つに記載の搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される媒体に記録を行う記録部と、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様から第9の態様のいずれか1つに記載の作用及び効果を得ることができる。
【0017】
以下、本発明に係る搬送装置の一例としての搬送部30及び印刷装置の一例としてのプリンター10を具体的に説明する。
図1に示されるように、プリンター10は、媒体の一例としての用紙Pに対し、液体の一例であるインクQを吐出することで記録を行うインクジェット方式の装置として構成される。なお、各図において表すX-Y-Z座標系は直交座標系である。
X方向は、プリンター10の操作者から見た場合の装置幅方向であり、水平方向である。X方向のうち左に向かう方向を+X方向、右に向かう方向を-X方向とする。
Y方向は、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向且つ装置奥行き方向であり、水平方向である。Y方向の手前に向かう方向を+Y方向、奥に向かう方向を-Y方向とする。
Z方向は、装置高さ方向の一例であり、鉛直方向である。Z方向の上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。本実施形態において、「上方」は、Z方向における上方の成分を含む方向を意味する。「下方」は、Z方向における下方の成分を含む方向を意味する。
【0018】
プリンター10において、用紙Pは、破線で表す搬送経路Tを通って搬送される。なお、用紙Pが搬送される搬送方向は、搬送経路Tに沿った方向であるため、搬送経路Tの各部において異なる。
プリンター10は、装置本体12と、後述する搬送部30と、ラインヘッド28とを備える。
装置本体12は、外郭となる筐体が含まれる。装置本体12のZ方向の中央より+Z方向には、記録された用紙Pが排出される空間を含む排出部13が形成される。また、装置本体12は、複数の用紙カセット14が設けられる。なお、装置本体12の-X方向の端部は、X方向に開口する開口部12Aが形成される。開口部12Aの開放状態において、後述する搬送経路Tは、露出される。
【0019】
複数の用紙カセット14は、用紙Pが収納される。用紙カセット14に収納された用紙Pは、ピックローラー16及び搬送ローラー対17、18によって搬送経路Tに沿って搬送される。搬送経路Tは、不図示の外部装置から用紙Pが搬送される搬送路T1と、装置本体12に設けられた手差トレイ19から送込ローラー対31を介して用紙Pが搬送される搬送路T2とが合流する。プリンター10におけるX方向の中央より-X方向の部位は、用紙Pを搬送する搬送装置の一例としての搬送部30として構成される。搬送部30の詳細は後述する。搬送部30の本体は、一例として、装置本体12と兼用される。
【0020】
搬送経路Tは、2つのプーリー21と、2つのプーリー21に巻き掛けられた搬送ベルト22と、用紙Pのスキュー補正などを行うレジストローラー対23と、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラー対24と、用紙Pが搬送される経路を切り替える複数のフラップ25と、用紙PのY方向の幅を検出する媒体幅センサー26とが配置される。搬送経路Tにおける搬送ベルト22より下流には、排出部13に向かう搬送路T3と、用紙Pの表裏を反転させるための反転路T4とが設けられる。
【0021】
搬送経路Tにおいて、媒体幅センサー26に対する上流には湾曲経路Rが形成される。
湾曲経路Rは、1組の山部及び谷部を有する経路として形成される。具体的には、湾曲経路Rは、搬送ローラー対18から+X方向且つ+Z方向の位置に向けて湾曲する導入経路R1と、導入経路R1の+X方向の端部から+X方向且つ-Z方向の位置に向けて下降しながら湾曲する下降経路R2と、下降経路R2の+X方向の端部から+X方向且つ+Z方向に向けて上昇しながら湾曲する上昇経路R3とを有する。
【0022】
また、装置本体12は、インクQを収容するインクタンク27と、ラインヘッド28と、プリンター10の各部の動作を制御する制御部29とが設けられる。
ラインヘッド28は、用紙Pの搬送方向において媒体幅センサー26より下流に位置する。また、ラインヘッド28は、記録部の一例であり、搬送部30によって搬送される用紙Pに、インクタンク27から供給されたインクQを吐出することで記録する。
制御部29は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びストレージを含んで構成され、プリンター10における用紙Pの搬送や、ラインヘッド28及び搬送部30を含む各部の動作を制御する。
【0023】
図6に示されるように、装置本体12は、装置本体12の一部を構成する本体フレーム15を有する。
本体フレーム15は、後述する第1経路形成部42に対して-Z方向に位置する。また、本体フレーム15は、一例として、板金が複数箇所で屈曲されることで形成されており、Y方向から見て、+Z方向に開口するU字状に形成される。具体的には、本体フレーム15は、X-Y面に沿った底壁15Aと、底壁15Aの-X方向の端部において+Z方向に直立する支持壁15Bと、底壁15Aの一部を+Z方向に切り起こすことで形成された縦壁15Cとを有する。縦壁15Cには、Y方向に貫通する貫通孔15Dが形成される。
【0024】
図2に示されるように、搬送部30は、一例として、装置本体12と、カバー部32と、第1経路形成部42と、第2経路形成部74と、移動部60とを備える。
装置本体12は、既述の通り、導入経路R1と、下降経路R2と、上昇経路R3とを有する搬送経路Tが形成される。
下降経路R2は、用紙Pが+Z方向の下方へ搬送される経路である。
上昇経路R3は、用紙Pの搬送方向において下降経路R2より下流に配置される。また、上昇経路R3は、用紙PがZ方向の上方へ搬送される経路である。
下降経路R2及び上昇経路R3は、後述する第1経路形成部42及び第2経路形成部74によって形成される。搬送経路Tに含まれる下降経路R2と上昇経路R3とは、Z方向における範囲ZAにおいてオーバーラップする。
【0025】
図3に示されるように、カバー部32は、所定の厚さを有する板状に形成される。カバー部32は、装置本体12の-X方向の端部において、開口部12Aの-Y方向の端部に不図示のヒンジ部を介して設けられる。これにより、カバー部32は、Z方向に沿った軸回りに回転可能とされる。
カバー部32は、回転に伴って開口部12Aを開放又は閉止させることで、搬送経路Tを開閉可能とする。換言すると、カバー部32は、搬送経路Tを露出させる開放位置と、搬送経路Tを隠す閉止位置とに回転可能とされる。さらに、カバー部32は、一例として、反転路形成部材34と、後述する第2経路形成部74とが取り付けられる。
反転路形成部材34は、反転路T4(図1)のZ方向の中央より上方を形成する上部36と、反転路T4のZ方向の中央より下方を内包する下部38とを有する。下部38は、第2経路形成部74が取り付けられる。
【0026】
図1及び図4には、搬送経路Tを形成する状態における第1経路形成部42及び移動部60が示される。
第1経路形成部42は、装置本体12において第1位置及び第2位置に移動可能に設けられる。第1経路形成部42は、第1位置に位置する場合、下降経路R2の一部を形成する。また、第1経路形成部42は、第2位置に配置された場合、下降経路R2から-Z方向に退避した状態となる。
第1経路形成部42は、一例として、用紙Pを支持可能な下ガイド部材46と、下ガイド部材46を第1位置及び第2位置の一方へ回転可能に支持する第1回転軸43とを備える。
【0027】
図2に示されるように、第1回転軸43は、下降経路R2と上昇経路R3との接続部且つ変曲部において、搬送経路Tに対する-Z方向に位置する。また、第1回転軸43は、Z方向において、後述する第2経路形成部74の移動領域Sより下方に位置する。
第1経路形成部42の中央部より-X方向の一部は、カバー部32の閉止状態において、第2経路形成部74の移動領域S内に位置する。
第1回転軸43に対する+Z方向には、第2搬送ローラー81が位置する。第2搬送ローラー81は、Y方向に沿った軸部81Aを有し、後述する第1搬送ローラー45と共に用紙Pを挟み、回転されながら用紙Pを下流へ搬送する。
【0028】
図4に示されるように、第1回転軸43は、Y方向に沿って延びる円柱状に形成される。第1回転軸43のY方向の両端部は、装置本体12(図1)の不図示のフレームに設けられたベアリング44によって回転可能に支持される。第1回転軸43のY方向の中央部には、第1搬送ローラー45が設けられる。
第1搬送ローラー45は、第1回転軸43の回転に伴って回転される。また、第1搬送ローラー45は、用紙Pを搬送可能である。本実施形態では、一例として、第1搬送ローラー45がY方向に間隔をあけて2つ設けられる。
【0029】
下ガイド部材46は、媒体支持部材の一例であり、上壁47と、前壁48と、後壁51と、2つの側壁52と、2つのアーム部54と、補強部56と、被支持部58とを含んで構成される。なお、ここでは、下ガイド部材46が第2位置に配置された状態、即ち、X方向に沿った状態にあるものとして、各構成の配置を説明する。
上壁47は、Z方向に所定の厚さを有する四角形の板状に形成される。上壁47のY方向の幅は、用紙PのY方向の幅より大きい。
前壁48は、上壁47における-X方向の端部から-Z方向に延びる。なお、上壁47と前壁48との接続部分は、R面とされる。
後壁51は、上壁47における+X方向の端部から-Z方向に延びる。
2つの側壁52は、上壁47のY方向の両端部から-Z方向に延び、前壁48と後壁51をX方向に繋ぐ。
【0030】
図5に示されるように、上壁47におけるX方向の中央より-X方向の部位には、上壁47の上面47Aから-Z方向に窪んだ収納部49が形成される。収納部49は、支持ローラー53がY方向を軸方向として回転可能に設けられる。また、収納部49は、後述する軸部53AをZ方向に案内する溝部49Aを有する。
支持ローラー53は、円柱状に形成されており、軸部53A及び外周面53Bを有する。外周面53Bの一部は、上面47Aより+Z方向に突出される。そして、支持ローラー53は、搬送される用紙Pを支持すると共に下流へ搬送する。
上面47Aは、複数のリブ47Bが形成される。
【0031】
図7に示されるように、下ガイド部材46における収納部49に対するY方向の外側には、ばね収納部59が設けられる。ばね収納部59は、コイルばね61が収納される。
コイルばね61は、Z方向に伸縮が可能であり、軸部53Aを+Z方向に押圧する。
支持ローラー53は、外力を受けた場合、-Z方向に移動されるが、軸部53Aがコイルばね61によって+Z方向に押圧されていることで、外力と反力が釣り合う位置で止まる。
【0032】
図4に示されるように、アーム部54は、側壁52の+X方向の両端部から、後壁51より+X方向に延びる。アーム部54のX方向の長さは、第1搬送ローラー45の半径に相当する長さより長い。また、アーム部54における+X方向の端部には、切欠部55が形成される。
切欠部55は、Y方向から見て、+X方向に開口するU字状に形成される。切欠部55は、第1回転軸43の外周面と接触し且つ摺動可能である。換言すると、下ガイド部材46は、切欠部55が第1回転軸43と接触した状態において、第1回転軸43の周りに回転、即ち揺動可能となる。
【0033】
補強部56は、上壁47から-Z方向に延びる複数の縦壁57から成る。
被支持部58は、補強部56の一部に形成されており、上壁47のX方向の中央より-X方向となる部位から-Z方向に延びる壁部である。被支持部58の-Z方向の端面58Aは、X-Y面に沿う平面である。
【0034】
移動部60は、カバー部32(図3)の開閉動作に伴って、第1経路形成部42を既述の第1位置及び第2位置の一方に移動させる。具体的には、移動部60は、カバー部32が開動作される場合、第1経路形成部42を第2位置へ移動させ、カバー部32が閉動作される場合、第1経路形成部42を第1位置へ移動させる。
ここでの移動とは、下ガイド部材46に力を付与することで移動させる構成に限られず、下ガイド部材46の支持を解除することで移動させる構成や、下ガイド部材46を支持した状態で移動することで下ガイド部材46を移動させる構成も含まれる。
なお、本実施形態において、移動部60は、第1経路形成部42を第1位置において保持する保持部の一例でもある。つまり、移動部60は、保持部を兼ねる。そして、移動部60は、カバー部32が開動作される場合、第1経路形成部42の保持状態を解除する。
【0035】
移動部60は、一例として、第2回転軸62と、レバー部64と、支持部68とを備える。
第2回転軸62は、下ガイド部材46に対する-Z方向に位置する。また、第2回転軸62は、Y方向に沿って延びる円柱状に形成される。第2回転軸62のY方向の両端部は、本体フレーム15の縦壁15C(図6)によって回転可能に支持される。第2回転軸62のY方向の中央部には、後述する支持部68が設けられる。
【0036】
レバー部64は、一例として、第2回転軸62の+Y方向の端部に固定される。また、レバー部64は、+Y方向の側壁52に対して+Y方向に配置される。そして、レバー部64は、カバー部32の後述する被接触面86(図8)と接触することで、カバー部32の開閉動作に連動して第2回転軸62を回転させる。レバー部64は、第2回転軸62から径方向に延びる取付部65と、取付部65の端部から径方向と交差する方向に延びる延在部66と、延在部66の先端に形成された接触部67とを有する。
延在部66は、+Y方向から見て、上壁47より+Z方向に延びる。
接触部67は、延在部66から-X方向に突出される。接触部67は、+Y方向から見て-X方向に上底を有する台形状に形成される。接触部67の台形の上底に相当する位置には、接触面67Aが形成される。
【0037】
支持部68は、一例として、第2回転軸62に固定され下ガイド部材46を第1位置において支持する。また、支持部68は、第2回転軸62から下ガイド部材46に向けて、-X方向且つ+Z方向に延びる第1板部69と、第1板部69における第2回転軸62側とは反対の部位から-X方向に延びる第2板部71とを有する。
第2板部71の+Z方向の上面71Aが、端面58Aと接触することで、支持部68が下ガイド部材46を支持する。換言すると、移動部60が下ガイド部材46を保持する。
【0038】
移動部60は、第1経路形成部42を第2位置へ移動させる場合、第1経路形成部42と後述する第2経路形成部74(図2)との間隔を所定の間隔d(図2)以上の間隔とする。ここで、所定の間隔dとは、第1経路形成部42が第1位置に配置され且つ第2経路形成部74と対向した状態で、用紙Pが搬送可能となるときのZ方向における第1経路形成部42と第2経路形成部74との最短の間隔である。
また、移動部60は、第1経路形成部42をZ方向における上方に移動させることで、支持ローラー53を後述する対向ローラー82(図2)とニップする位置まで押し上げる。
【0039】
レバー部64は、カバー部32が閉止状態の場合にカバー部32と接触され、カバー部32が開放状態の場合にカバー部32から離れる。具体的には、カバー部32が閉止状態の場合に、レバー部64の接触面67Aが後述する被接触部84の被接触面86(図8)と接触される。
レバー部64がカバー部32と接触する状態において、支持部68は下ガイド部材46を支持する。
【0040】
図6に示されるように、第1経路形成部42が第2位置に配置された場合、下ガイド部材46はX方向に沿って配置される。ここで、第1板部69の+Z方向の上面69Aが、端面58Aと接触することで、支持部68が下ガイド部材46を支持する。このように、支持部68は、一例として、第1経路形成部42が第1位置、第2位置のいずれに位置するかに関わらず、下ガイド部材46を支持する。
【0041】
図2に示されるように、第2経路形成部74は、カバー部32における-Z方向の端部に設けられる。また、第2経路形成部74は、カバー部32が開口部12Aを閉止する、即ち、カバー部32が搬送経路Tを閉止する閉止状態において、上昇経路R3を形成し且つ第1経路形成部42と共に下降経路R2を形成する。なお、本実施形態において、第2経路形成部74は、カバー部32に設けられた部材のうち下降経路R2及び上昇経路R3を形成する部位を指す。
【0042】
Y方向から見て、第2経路形成部74の+Z方向の端部を通りX方向に沿う仮想線K1と、第2経路形成部74の-Z方向の端部を通りX方向に沿う仮想線K2とで挟まれた領域を、第2経路形成部74の移動領域Sと称する。
移動領域Sは、カバー部32が開閉される場合、第2経路形成部74が移動する領域である。図2では、移動領域Sが斜線の領域として示される。
【0043】
図9に示されるように、第2経路形成部74は、一例として、上ガイド部材76と、第2搬送ローラー81と、対向ローラー82と、被接触部84(図8)とが設けられる。
上ガイド部材76は、-Z方向の下端に位置する底壁77を有する。底壁77は、下ガイド部材46とZ方向に対向する凹部78と、凹部78より用紙Pの搬送方向の下流に位置する凸部79とを有する。
凹部78は、+Z方向に窪んだ部位である。また、凹部78は、+X方向且つ+Z方向の位置に向けて延びる斜面78Aと、斜面78Aより下流において+X方向且つ-Z方向の位置に向けて延びる斜面78Bとを有する。斜面78Bは、上面47AとZ方向に対向する。
凸部79は、-Z方向に突出した部位である。凸部79の頂部は、第1搬送ローラー45とZ方向に対向する。
ここで、第1経路形成部42と第2経路形成部74は、既述の所定の間隔dをあけて対向配置されることで、下降経路R2を形成する。
【0044】
第2搬送ローラー81は、一例として、凸部79の頂部に設けられる。第2搬送ローラー81は、Y方向に沿って延びる軸部81Aを有する。軸部81Aは、上ガイド部材76に設けられた不図示のベアリングに回転可能に支持される。そして、第2搬送ローラー81は、第1搬送ローラー45と共に用紙Pを挟み、回転されながら用紙Pを搬送する。
カバー部32が閉止状態となる場合、第1搬送ローラー45と第2搬送ローラー81とが用紙Pを挟むニップ部N1を形成する。カバー部32が開放状態となる場合、ニップ部N1の形成が解除される。
【0045】
対向ローラー82は、一例として、凹部78の最も窪んだ部位に対して+X方向の位置に設けられる。対向ローラー82は、Y方向に沿って延びる軸部82Aを有する。軸部82Aは、上ガイド部材76に設けられた不図示のベアリングに回転可能に支持される。そして、対向ローラー82は、支持ローラー53とZ方向に対向し且つ支持ローラー53と共に用紙Pを挟み、回転されることで用紙Pを搬送する。
第1経路形成部42が第1位置に配置された場合、支持ローラー53と対向ローラー82とがニップ状態とされ、ニップ部N2が形成される。カバー部32が開放状態とされ、第1経路形成部42が第2位置に配置された場合、支持ローラー53と対向ローラー82とのニップ状態が解除される。
【0046】
図8に示されるように、上ガイド部材76の+Y方向の端部には、被接触部84が設けられる。なお、被接触部84は、カバー部32(図2)に含まれる。
被接触部84は、一例として、Y-Z面に沿って直立する縦壁85と、縦壁85を-X方向から支持するリブ87とを有する。縦壁85の+X方向の端面は、Y-Z面に沿った被接触面86とされる。
被接触面86は、カバー部32が閉止される閉動作中及び閉止状態において、接触部67とX方向で接触する。被接触面86が接触部67と接触することで、カバー部32から被接触面86及び接触部67を介してレバー部64へ+X方向の押付力が作用される。これにより、レバー部64が回転され、第1経路形成部42(図2)が第1位置に配置される。
【0047】
次に、プリンター10の作用について説明する。
図2に示されるように、カバー部32による閉止状態において、カバー部32が開口部12Aを閉止している。下ガイド部材46は、-X方向且つ+Z方向の位置に向けて傾斜配置されている。この閉止状態において、カバー部32が開動作されたとする。
【0048】
図10及び図11に示されるように、カバー部32の-X方向の移動に伴って、被接触部84(図8)がレバー部64から離れる。これにより、レバー部64が自由に回転可能な状態になると共に、支持部68が下ガイド部材46を支持する支持力が弱まる。
ここで、下ガイド部材46の-X方向の部位が自重の作用によって下がることで、支持部68が回転すると共にレバー部64も回転する。そして、第1板部69が本体フレーム15(図6)と接触することで、下ガイド部材46の回転が止まる。このとき、下ガイド部材46は、X方向に沿って第2位置に位置する。換言すると、第1経路形成部42は、第2経路形成部74の移動領域S(図9)に対して-Z方向に退避する。
第1経路形成部42が-Z方向に退避することで、第2経路形成部74の移動領域S内に、第2経路形成部74の移動を規制する部材が無くなる。これにより、カバー部32は、開口部12A及び搬送経路Tが開放される位置まで開動作が可能となる。
【0049】
一方、搬送経路Tが開放された状態からカバー部32が閉動作された場合、接触部67が被接触面86(図8)と接触することで、レバー部64が逆方向に回転される。そして、レバー部64の逆方向の回転に伴って支持部68も逆方向に回転されることで、第2板部71が下ガイド部材46の-X方向の端部を+Z方向に押し上げる。これにより、下ガイド部材46は、逆方向に回転されると共に第1位置に位置する。このとき、ニップ部N1及びニップ部N2(図9)が形成される。
このようにして、カバー部32が搬送経路T及び開口部12Aを閉止する。
【0050】
以上、説明した通り、搬送部30によれば、Z方向に沿って直線状に延びる搬送経路を有する構成に比べて、Z方向においてオーバーラップする上昇経路R3及び下降経路R2を有することで、搬送経路Tの経路長を長くすることができる。
また、第1経路形成部42の一部が、カバー部32の閉止状態において、第2経路形成部74の移動領域Sに位置する。換言すると、第1経路形成部42の一部と第2経路形成部74の一部とがZ方向にオーバーラップする配置であるので、搬送部30を小型化できる。
さらに、移動部60が、カバー部32が開動作される場合、第1経路形成部42を第2位置へ移動させることで、第1経路形成部42が第2経路形成部74の移動領域Sから離れるので、カバー部32の開動作が制限され難くなり、搬送経路Tを開放し易くなる。これにより、搬送経路Tにジャムなどによって留まる用紙Pを、簡単に取り除くことができる。
【0051】
搬送部30によれば、第1経路形成部42が第2位置へ移動される場合、所定の間隔d以上の間隔が維持される。つまり、第1経路形成部42と第2経路形成部74が接触し難くなるので、搬送経路Tに留まる用紙Pが破損することを抑制できる。
搬送部30によれば、第1経路形成部42が第1回転軸43を中心に回転されることで第1位置及び第2位置の一方へ移動されるので、簡単な構成で第1経路形成部42を移動させることができる。また、第1回転軸43が第2経路形成部74の移動領域Sより下方に位置するので、第1回転軸43が第2経路形成部74と接触するのを防ぐことができる。
【0052】
搬送部30によれば、カバー部32が開動作される場合、移動部60が第1経路形成部42の保持状態を解除する。ここで、第1経路形成部42は、保持状態が解除されることで第1回転軸43による片持ち状態となり、自重によって回転するので、簡単な構成で第2経路形成部74の移動領域Sを開放させることができる。
搬送部30によれば、カバー部32が閉止状態となる場合、レバー部64がカバー部32の被接触面86と接触することで、レバー部64に押付力が作用する。これにより、レバー部64が第2回転軸62及び支持部68を回転させる。そして、支持部68は、回転されながら下ガイド部材46を押し上げ、下ガイド部材46を第1位置において支持する。
カバー部32が開放状態となる場合、下ガイド部材46が自重により下がることで支持部68が回転され、第2経路形成部74の移動領域Sが開放される。
このように、カバー部32の開閉によって、下ガイド部材46即ち、第1経路形成部42を変位させることができる。
【0053】
搬送部30によれば、移動部60とは別の構成として保持部を設けなくて済むので、第1経路形成部42を移動及び保持する構成を簡単な構成にできる。
搬送部30によれば、搬送経路Tにおいて用紙Pを搬送するローラー対のニップ部のうち、第1搬送ローラー45及び第2搬送ローラー81によって形成されるニップ部Nが、カバー部32が開放状態となることに連動して解除されるので、搬送経路Tに残留する用紙Pを取り出し易くなる。
【0054】
搬送部30によれば、搬送経路Tにおいて用紙Pを搬送するローラー対のニップ部のうち、支持ローラー53及び対向ローラー82によって形成されるニップ状態が、カバー部32が開放状態となることに連動して解除されるので、搬送経路Tに残留する用紙Pを取り出し易くなる。
搬送部30によれば、移動部60が第1経路形成部42を移動させることで、支持ローラー53が対向ローラー82とニップ状態となるので、第1経路形成部42の移動と、支持ローラー53と対向ローラー82とをニップ状態とする動作とを別々に行う構成に比べて、簡単な構成で、支持ローラー53と対向ローラー82とをニップさせることができる。
プリンター10によれば、搬送部30の作用及び効果を得ることができる。
【0055】
本発明の実施形態に係る搬送部30及びプリンター10は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0056】
プリンター10において、第1経路形成部42の全部が移動領域Sに位置してもよい。
下降経路R2及び上昇経路R3がX方向に逆に配置される構成、即ち、搬送経路Tの一部が+Z方向に山型となる構成であってもよい。
媒体は、用紙Pに限らず、フィルムであってもよい。
移動部60は、第1経路形成部42を第2位置へ移動させる場合、第1経路形成部42と第2経路形成部74との間隔が所定の間隔dに維持されるように、第1経路形成部42を移動させてもよい。
【0057】
プリンター10において、第1経路形成部42は、下ガイド部材46を回転させる構成に限らず、下ガイド部材46を-Z方向又は斜め下方にスライドさせる構成であってもよい。
移動部60と、第1経路形成部42を第1位置において保持する保持部とが別々に設けられてもよい。例えば、保持部がバネを有し、第1経路形成部42が第1位置に位置する状態において、バネが第1経路形成部42に押付力を作用させることで、第1経路形成部42の位置を保持してもよい。また、保持部をZ方向に昇降する部材とモーターとで構成し、カバー部32の開閉に伴ってモーターを駆動することで、第1経路形成部42を保持してもよい。
【0058】
プリンター10において、第1搬送ローラー45及び第2搬送ローラー81が設けられていなくてもよい。また、支持ローラー53及び対向ローラー82が設けられていなくてもよい。
移動部60は、支持ローラー53をニップ位置まで押し上げなくてもよい。
記録部は、ラインヘッド28に限らず、用紙Pの幅方向に往復移動するシリアルヘッドを有する構成であってもよい。
装置高さ方向は、鉛直方向と交差する方向であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…プリンター、12…装置本体、12A…開口部、13…排出部、
14…用紙カセット、15…本体フレーム、15A…底壁、15B…支持壁、
15C…縦壁、15D…貫通孔、16…ピックローラー、17…搬送ローラー対、
18…搬送ローラー対、19…手差トレイ、21…プーリー、22…搬送ベルト、
23…レジストローラー対、24…搬送ローラー対、25…フラップ、
26…媒体幅センサー、27…インクタンク、28…ラインヘッド、29…制御部、
30…搬送部、31…送込ローラー対、32…カバー部、34…反転路形成部材、
36…上部、38…下部、42…第1経路形成部、43…第1回転軸、44…ベアリング、
45…第1搬送ローラー、46…下ガイド部材、47…上壁、47A…上面、
47B…リブ、48…前壁、49…収納部、49A…溝部、51…後壁、52…側壁、
53…支持ローラー、53A…軸部、53B…外周面、54…アーム部、55…切欠部、
56…補強部、57…縦壁、58…被支持部、58A…端面、59…収納部、
60…移動部、62…第2回転軸、64…レバー部、65…取付部、66…延在部、
67…接触部、67A…接触面、68…支持部、69…第1板部、69A…上面、
71…第2板部、71A…上面、74…第2経路形成部、76…上ガイド部材、
77…底壁、78…凹部、78A…斜面、78B…斜面、79…凸部、
81…第2搬送ローラー、81A…軸部、82…対向ローラー、82A…軸部、
84…被接触部、85…縦壁、86…被接触面、87…リブ、K1…仮想線、
K2…仮想線、N1…ニップ部、N2…ニップ部、P…用紙、Q…インク、
R1…導入経路、R2…下降経路、R3…上昇経路、S…移動領域、T…搬送経路、
T1…搬送路、T2…搬送路、T3…搬送路、T4…反転路、ZA…範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11