IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許7559545電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法
<>
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図1
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図2
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図3
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図4
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図5
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図6
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図7
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図8
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図9
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図10
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図11
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図12
  • 特許-電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電装品異常判定装置及び電装品異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240925BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B60R16/02 660D
B60R16/02 650J
G01R31/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020215143
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100889
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】堀川 敦
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-186322(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040836(WO,A1)
【文献】特開2015-134543(JP,A)
【文献】特開2013-028232(JP,A)
【文献】米国特許第10877087(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102005061018(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第111263288(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された電装品の異常を判定する電装品異常判定装置であって、
前記車両の電源電流を取得する電源電流取得部と、
前記電源電流取得部で取得した前記電源電流の電流波形を、前記電装品毎の電流波形に分解する波形分解部と、
前記電装品が正常に動作しているときの電流波形を記録した基準電流波形を記憶する記憶部と、
前記電装品を動作させる指令信号を取得して動作状態にある電装品を特定する電装品特定部と、
前記電装品特定部で特定された動作状態にある電装品の基準電流波形を前記記憶部から取得し、取得した前記基準電流波形と、前記波形分解部で分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には前記電装品が異常であると判定する異常判定部と
を備え
前記電装品には、パワーステアリングが含まれ、
前記電源電流取得部は、ハンドルの舵角が変化するたびに前記電源電流を取得し、
前記記憶部には、ハンドルの舵角毎に、前記パワーステアリングが正常に動作しているときの電流波形を記録した前記基準電流波形が記憶され、
前記異常判定部は、前記ハンドルの舵角毎の前記基準電流波形と、前記波形分解部で分解された前記パワーステアリングの電流波形とをそれぞれ比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には、前記パワーステアリングが異常であると判定する、
ことを特徴とする電装品異常判定装置。
【請求項2】
車両に搭載された電装品の異常を判定する電装品異常判定装置であって、
前記車両の電源電流を取得する電源電流取得部と、
前記電源電流取得部で取得した前記電源電流の電流波形を、前記電装品毎の電流波形に分解する波形分解部と、
前記電装品が正常に動作しているときの電流波形を記録した基準電流波形を記憶する記憶部と、
前記電装品を動作させる指令信号を取得して動作状態にある電装品を特定する電装品特定部と、
前記電装品特定部で特定された動作状態にある電装品の基準電流波形を前記記憶部から取得し、取得した前記基準電流波形と、前記波形分解部で分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には前記電装品が異常であると判定する異常判定部と
を備え
前記電装品には、対を成す左右のスピーカが含まれ、
前記左右のスピーカには、逆相のテスト電流を流すように予め設定されており、
前記記憶部は、前記テスト電流が流れたときの電流波形を記録したテスト電流用の基準電流波形を記憶しており、
前記電源電流取得部は、前記テスト電流が流れると、前記車両の電源電流を取得し、
前記波形分解部は、前記電源電流取得部で取得した前記電源電流の電流波形を、前記左右のスピーカの電流波形に分解し、
前記異常判定部は、前記テスト電流用の基準電流波形を前記記憶部から取得し、取得した前記テスト電流用の基準電流波形と、前記波形分解部で分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には前記左右のスピーカが異常であると判定する
ことを特徴とする電装品異常判定装置。
【請求項3】
前記電装品異常判定装置が、前記車両に搭載されたリレーボックスに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電装品異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電装品の異常を判定する電装品異常判定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、車両用バッテリを監視する車両用バッテリの監視装置として、特許文献1が開示されている。特許文献1に開示された車両用バッテリの監視装置では、車両用バッテリの暗電流値を計測し、計測した暗電流値が閾値以上である場合に異常であると判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-237868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、暗電流値を閾値と比較しただけでは、異常の発生を検出することはできたとしても、どの電装品で異常が発生しているのかを特定することはできないという問題点があった。特に、近年では、車両に搭載される電装品の数が増加しているので、異常が発生している電装品を特定することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、車両に搭載されている電装品の中から異常が発生している電装品を特定することのできる電装品異常判定装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る電装品異常判定装置及びその方法は、車両の電源電流を取得し、取得した電源電流の電流波形を電装品毎の電流波形に分解する。また、電装品が正常に動作しているときの電流波形を記録した基準電流波形を記憶部に記憶させておく。そして、電装品を動作させる指令信号を取得して動作状態にある電装品を特定し、動作状態にあると特定された電装品の基準電流波形と、分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には電装品が異常であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に搭載されている電装品の中から異常が発生している電装品を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置による電流波形を分解する方法を説明するための図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置による正常時と異常時の電流波形の違いを説明するための図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置による電装品異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置による電装品の異常を判定するタイミングを説明するためのタイミングチャートである。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置により異常を判定する際の電流波形を示す図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置により異常を判定する際の電流波形を示す図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態に係る電装品異常判定装置により異常を判定する電装品がLEDである場合の異常の判定方法を説明するための図である。
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る電装品異常判定装置により電装品に流されるテスト電流の電流波形を示す図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係る電装品異常判定装置により電装品に流されるテスト電流の電流波形を示す図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る電装品異常判定装置により電装品に流されるテスト電流の電流波形を示す図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係る電装品異常判定装置により異常を判定する電装品がスピーカである場合の異常の判定方法を説明するための図である。
図13図13は、本発明の第2実施形態に係る電装品異常判定装置による電装品異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明を適用した第1実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0010】
[電装品異常判定装置の構成]
図1は、本実施形態に係る電装品異常判定装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る電装品異常判定装置1は、車両に搭載された電装品の異常を判定する装置であり、車両の電源電流を計測する電流センサ3と、電装品7a-7dを制御するECU5a-5cに接続されている。
【0011】
電流センサ3は、車両のバッテリから出力される電源電流の電流値を計測するセンサであり、計測された電流値は電装品異常判定装置1に出力される。
【0012】
ECU(Electronic Control Unit)5a-5cは、車両の乗員から入力される操作信号や車両のコントローラから入力される制御信号に応答して、電装品7a-7dを動作させる指令信号を出力する。また、ECU5a-5cは、CAN-BUS(Controller Area Network-BUS)やイーサネット(Ethernet)等の通信回線を介して、出力した指令信号を電装品異常判定装置1に送信する。
【0013】
電装品7a-7dは、車両に搭載された電気関係の部品であり、例えばカーオーディオやヘッドライト、エアコン、パワーウィンドウなどである。電装品7a-7dの中で、電装品7a、7c、7dは、ECU5a、5cから指令信号が入力されて動作する。一方、電装品7bは、ECU5bからの指令信号によってリレー9がオンオフすることによって動作する。
【0014】
電装品異常判定装置1は、図1に示すように、電源電流取得部11と、波形分解部13と、記憶部15と、通信部17と、電装品特定部19と、異常判定部21とを備えている。
【0015】
尚、電装品異常判定装置1は、車両のどの位置に配置されていてもよいが、リレーボックス内に設けられていることが好ましい。車両のリレーボックスは、電源電流の電流値やECU5a-5cからの指令信号が予め送られてくるような構成となっている。そこで、電装品異常判定装置1をリレーボックス内に設けることにより、新たに配線や通信を行うことなく、必要な情報を取得することが可能になる。
【0016】
電源電流取得部11は、電流センサ3に接続され、車両のバッテリから出力された電源電流の電流値や電流波形を取得する。特に、電源電流取得部11は、ECU5a-5cから指令信号が出力されたか否かを判定し、指令信号が出力されたと判定すると、電流センサ3から電源電流を取得する。
【0017】
波形分解部13は、電源電流取得部11で取得した電源電流の電流波形を、電装品7a-7d毎の電流波形に分解する。例えば、図2に示すように、電流センサ3から取得した電源電流の電流波形30を、高速フーリエ変換等の手法を利用して、現在動作している電装品毎の電流波形に分解する。図2では、3つの電流波形32、34、36に分解されている。
【0018】
記憶部15は、電装品が正常に動作しているときの電流波形を記録した基準電流波形を記憶している。電装品は、正常に動作しているときには、それぞれ特有の電流波形によって駆動されている。そこで、電装品が正常に動作しているときの電流波形を予め記録しておき、基準電流波形として記憶部15に記憶している。
【0019】
通信部17は、車両のCAN-BUSやイーサネット等を介して、車両各部と通信している。特に、通信部17は、ECU5a-5cから指令信号を受信して、電源電流取得部11と電装品特定部19に出力する。尚、電装品異常判定装置1をリレーボックスに配置した場合には、リレーボックスに予め設置されている通信装置を利用できるので、通信部17を設けなくてもよい。これにより、通信部17を設置するコストを削減することができる。
【0020】
電装品特定部19は、通信部17を介して、電装品を動作させる指令信号を取得して、電装品7a-7dの中から動作状態にある電装品を特定する。例えば、ECU5aからの指令信号を取得した場合には、電装品7aが動作状態にあると特定する。また、ECU5cからの指令信号を取得した場合には、電装品7cへの指令信号か、電装品7dへの指令信号かを識別し、いずれの電装品が動作状態にあるかを特定する。
【0021】
異常判定部21は、電装品特定部19で動作状態にあると特定された電装品の基準電流波形を記憶部15から取得し、取得した基準電流波形と、波形分解部13で分解された電流波形とを比較する。そして、取得した基準電流波形と分解された電流波形が一致するか否かを判断し、一致する場合には電装品が正常であると判定し、一致しない場合には電装品が異常であると判定する。
【0022】
例えば、電装品であるドアスピーカが正常に接続されている場合の電流波形と、ドアスピーカが外れている場合の異常時の電流波形には、図3に示すような違いがある。そこで、図3の正常時の電流波形を基準電流波形として記憶しておき、図3の異常時のような基準電流波形とは異なる電流波形を電源電流から取得した場合には、異常判定部21によって異常であると判定される。
【0023】
尚、電装品異常判定装置1は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路とメモリ等の周辺機器から構成されたコントローラであり、電装品異常判定処理を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされている。電装品異常判定装置1の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含むプログラムされた処理装置を含み、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置も含んでいる。
【0024】
[電装品異常判定処理]
次に、本実施形態に係る電装品異常判定装置1によって実行される電装品異常判定処理を説明する。図4は、本実施形態に係る電装品異常判定装置1による電装品異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図4に示す電装品異常判定処理は、車両の電源がONされると、スタートする。
【0025】
図4に示すように、ステップS110において、電源電流取得部11は、ECU5a-5cから指令信号が出力されたか否かを判定する。車両の乗員により電装品を動作させるスイッチがONされて操作信号がECUに入力された場合や車両のコントローラからECUに制御信号が入力された場合には、ECU5a、5cは操作信号又は制御信号に応じて電装品7a、7c、7dに指令信号を出力する。また、ECU5bは、操作信号または制御信号が入力されると、電装品7bをオンオフするためのリレー9に指令信号を出力する。このとき、電源電流取得部11は、通信部17を介して指令信号を取得すると、ECUから指令信号が出力されたと判定して、ステップS120に進む。一方、指令信号を取得できない場合には、継続して指令信号が出力されたか否かを判定する。
【0026】
ステップS120において、電源電流取得部11は、ステップS110で指令信号が出力されたと判定すると、電流センサ3から電源電流を取得する。ECU5a-5cから指令信号が出力されると、電装品7a-7dがONされてバッテリから電源電流が供給されるので、電装品7a-7dの動作状態に応じて電源電流の電流波形が変化する。そこで、電源電流取得部11は、このタイミングで電流センサ3から電源電流を取得する。
【0027】
例えば、図5に示すように、時刻t0に車両の電源がONされて、電装品の1つであるナビゲーション装置が起動されると、電源電流取得部11は、時刻t0から所定時間の電源電流を取得する。同様に、時刻t1にエアコンが起動されると、電源電流取得部11は、時刻t1から所定時間の電源電流を取得する。この後も時刻t2~t9に各電装品が起動されると、電源電流取得部11は、そのタイミングで電源電流を取得する。
【0028】
また、電装品が起動されたタイミングだけでなく、電装品を常時監視して異常を判定するようにしてもよい。その場合には、ECUからの指令信号が出力されたタイミングだけでなく、指令信号が変化したタイミングでも電源電流を取得する。例えば、電装品がパワーステアリングの場合には、ハンドルの舵角が変化するたびに電源電流を取得する。図5では、時刻t4、t6、t8のタイミングでハンドルの舵角が変化しているので、電源電流取得部11は、それらのタイミングで電源電流を取得する。尚、この場合には、ハンドルの舵角毎に基準電流波形が記録されて、記憶部15に記憶されている。
【0029】
ステップS130において、波形分解部13は、ステップS120で取得した電源電流の電流波形を、電装品毎の電流波形に分解する。電源電流は複数の電装品に供給されているので、高速フーリエ変換等の手法を利用して、図2に示すように、電源電流の電流波形30を、各電装品の電流波形32、34、36に分解する。
【0030】
ステップS140において、電装品特定部19は、通信部17を介してECU5a-5cから出力された指令信号を取得し、電装品7a-7dの中から動作状態にある電装品を特定する。電装品特定部19は、ECU5a-5cから指令信号が出力されている電装品を、動作状態にある電装品であると特定する。
【0031】
ステップS150において、異常判定部21は、ステップS140で動作状態にあると特定された電装品の基準電流波形を記憶部15から取得し、取得した基準電流波形と、ステップS130で分解された電流波形とを比較する。
【0032】
このとき、異常判定部21は、ラジエターファンやLEDで構成されたヘッドライトのようにPWM(Pulse Width Modulation)で駆動される電装品の場合には、図6に示すように電流波形の周期と振幅を比較する。また、起動時に電流波形に傾きがある電装品では、電流波形の傾きを比較してもよい。さらに、図7に示すように、起動時の電流波形の形状に特徴がある電装品では、電流波形の形状を比較してもよい。
【0033】
また、電装品がLED(Light Emitting Diode)である場合には、図8に示すように、LEDドライバ40から供給される電流の周波数が、LED42a-42d毎にそれぞれ異なっている。そこで、異常判定部21は、周波数の違いによって、LED42a-42dのそれぞれを区別して比較することができる。これにより、ヘッドライトに多くのLEDが使用されていても、その中からどのLEDに異常があるのかを特定することができる。
【0034】
また、従来では、電装品の異常をECUで判定することが行われていたが、電装品7bのようにリレーで駆動される電装品の場合には、ECU5bはリレー9をオンオフするだけなので、電装品7bの異常を判定することはできなかった。しかし、異常判定部21は、分解された電流波形と基準電流波形とを比較して、電装品7bの異常を判定するので、リレーで駆動される電装品の場合でも異常を判定することが可能である。
【0035】
こうして比較した結果、異常判定部21は、分解された電流波形と基準電流波形が一致するか否かを判断し、一致しない場合には電装品が異常であると判定してステップS160に進む。一方、分解された電流波形と基準電流波形が一致した場合には電装品が正常であると判定して、本実施形態に係る電装品異常判定処理を終了する。
【0036】
ステップS160において、異常判定部21は、異常であると判定した電装品を特定して、車両の乗員に通知する。例えば、車室内の警告灯を点灯させて、車両の乗員に電装品の異常を通知する。こうして電装品の異常が通知されると、本実施形態に係る電装品異常判定処理を終了する。
【0037】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る電装品異常判定装置1では、電源電流の電流波形を電装品毎の電流波形に分解し、電装品を動作させる指令信号を取得して動作状態にある電装品を特定する。そして、動作状態にあると特定された電装品の基準電流波形と、分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には電装品が異常であると判定する。これにより、車両に搭載されている電装品の中から異常が発生している電装品を特定することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る電装品異常判定装置1では、車両に搭載されたリレーボックスに電装品異常判定装置1を配置する。これにより、新たに配線や通信を行うことなく、必要な情報を取得することができる。また、リレーボックスに予め設置されている通信装置を利用できるので、通信部17を設ける必要がなくなり、コストを削減することができる。
【0039】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本実施形態では、電装品異常判定装置1の構成は、第1実施形態と同一なので、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0040】
第1実施形態では、電装品の起動時に異常の判定を行っていたが、電装品の中には、スピーカ等の音響機器のように通常の動作時には音楽などが流れているので、特定の電流波形が流れないものがある。そこで、本実施形態では、音響機器のような電装品の場合に、車両の起動時などの所定のタイミングにテスト電流を流して電装品の異常を判定するようにしている。
【0041】
例えば、電装品7aが音響機器である場合について説明すると、電装品7aは所定の波形パターンを有するテスト電流が所定のタイミングで流れるように予め設定されている。ただし、音響機器の場合には、テスト電流を車両の走行時に流すと、テスト電流による音声が車室内に流れるので、乗員に違和感を与えてしまう。そこで、車両の起動時に流れるオープニング音楽と同時に低周波でテスト電流を流して、乗員に気づかれないようにすることが好ましい。あるいは、オープニング音楽を流すための電流をテスト電流としてもよい。さらに、左右のスピーカにテスト電流を逆相で流すことによって、音声を出力せずにテスト電流を流すようにしてもよい。
【0042】
同様に、メータパネルやディスプレイの場合にも、通常の動作時にテスト電流を流すと、テスト電流によるノイズが画面に表示されるので、乗員に違和感を与えてしまう。そこで、車両の起動時に表示されるオープニング画面と同時にテスト電流を流して、乗員に気づかれないようにテスト電流を流すことが好ましい。あるいは、オープニング画面を表示するための電流をテスト電流としてもよい。さらに、バックライトを点灯させてから消灯して電流値を変化させたり、一定のタイミングで起動とスリープを繰り返すことによって電流値を変化させてテスト電流としてもよい。
【0043】
この他のテスト電流としては、図9に示すように、交流駆動されている電装品において、通常の動作時の電流波形に短時間のオフ時間を追加した波形を、テスト電流としてもよい。また、図10に示すように、電装品を起動する前に所定のパターンのダミー電流を流してから、電装品を起動するようにしてもよい。さらに、図11に示すように、直流駆動されている電装品では、ダミー電流を流したり止めたりして、所定のパターンのテスト電流が流れるようにしてもよい。
【0044】
また、電装品が音響機器である場合には、図12に示すように、オーディオアンプ50から供給されるテスト電流の波形パターンを、スピーカ52a-52d毎にそれぞれ異なるようにしている。例えば、図12では、パターンA~Dのそれぞれ異なる波形パターンのテスト電流がスピーカ52a-52dに供給されている。したがって、異常判定部21は、スピーカ毎にテスト電流の波形パターンが異なっているので、スピーカ52a-52dのそれぞれを区別して異常を判定することができる。これにより、複数のスピーカの中からどのスピーカに異常があるのかを特定することができる。
【0045】
尚、記憶部15は、テスト電流を電装品に流したときの電流波形を予め記録しておき、この電流波形をテスト電流用の基準電流波形として記憶している。
【0046】
また、異常判定部21は、テスト電流で電装品の異常を判定する場合には、テスト電流用の基準電流波形を記憶部15から取得し、取得したテスト電流用の基準電流波形と、波形分解部13で分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断する。
【0047】
[電装品異常判定処理]
次に、本実施形態に係る電装品異常判定装置1によって実行される電装品異常判定処理を説明する。図13は、本実施形態に係る電装品異常判定装置1による電装品異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。図13に示す電装品異常判定処理は、車両の電源がONされると、スタートする。また、本実施形態では、電装品7aが音響機器である場合について説明する。
【0048】
図13に示すように、ステップS210において、電源電流取得部11は、ECU5aからテスト電流を流す指令信号が出力されたか否かを判定する。ECU5aは、車両の起動時などの所定のタイミングになると、電装品7aにテスト電流が流れるように指令信号を出力する。このとき、電源電流取得部11は、通信部17を介して指令信号を取得すると、ECUからテスト電流を流す指令信号が出力されたと判定して、ステップS220に進む。一方、指令信号を取得できない場合には、継続して指令信号が出力されたか否かを判定する。
【0049】
ステップS220において、電源電流取得部11は、ステップS210でテスト電流を流す指令信号が出力されたと判定すると、電流センサ3から電源電流を取得する。ECU5aからテスト電流を流す指令信号が出力されると、電装品7aがONされてバッテリからテスト電流が供給されるので、テスト電流に応じて電源電流の電流波形が変化する。そこで、電源電流取得部11は、このタイミングで電流センサ3から電源電流を取得する。
【0050】
ステップS230において、波形分解部13は、ステップS220で取得した電源電流の電流波形を、電装品毎の電流波形に分解する。電源電流は複数の電装品に供給されているので、高速フーリエ変換等の手法を利用して、電源電流の電流波形を各電装品の電流波形に分解する。このとき分解される電装品7aの電流波形は、テスト電流による電流波形となる。
【0051】
ステップS240において、電装品特定部19は、通信部17を介してECU5aから出力された指令信号を取得し、テスト電流が流れる電装品として電装品7aを特定する。電装品特定部19は、ECU5aから電装品7aに指令信号が出力されているので、テスト電流が流れる電装品として電装品7aを特定する。
【0052】
ステップS250において、異常判定部21は、ステップS240で特定された電装品のテスト電流用の基準電流波形を記憶部15から取得し、取得したテスト電流用の基準電流波形と、ステップS230で分解された電流波形とを比較する。
【0053】
そして、異常判定部21は、分解された電流波形とテスト電流用の基準電流波形が一致するか否かを判断し、一致しない場合には電装品が異常であると判定してステップS260に進む。一方、分解された電流波形とテスト電流用の基準電流波形が一致した場合には電装品が正常であると判定して、本実施形態に係る電装品異常判定処理を終了する。
【0054】
ステップS260において、異常判定部21は、異常であると判定した電装品を特定して、車両の乗員に通知する。例えば、車室内の警告灯を点灯させて、車両の乗員に電装品の異常を通知する。こうして電装品の異常が通知されると、本実施形態に係る電装品異常判定処理を終了する。
【0055】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る電装品異常判定装置1では、所定の波形パターンを有するテスト電流が所定のタイミングで電装品に流れるように予め設定されている。また、記憶部15には、テスト電流が流れたときの電流波形を記録したテスト電流用の基準電流波形が記憶されている。そして、テスト電流用の基準電流波形と、分解された電流波形とを比較して一致するか否かを判断し、一致しない場合には電装品が異常であると判定する。これにより、通常の動作時には特定の電流波形を有する電源電流が流れない電装品であっても、車両に搭載されている電装品の中から異常が発生している電装品を特定することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る電装品異常判定装置1では、電装品が音響機器または表示装置である場合に、テスト電流を車両の起動時に流している。これにより、オープニング音楽やオープニング画面を利用して、音響機器や表示装置の電装品の異常を判定することができる。
【0057】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 電装品異常判定装置
3 電流センサ
5a~5c ECU
7a~7d 電装品
11 電源電流取得部
13 波形分解部
15 記憶部
17 通信部
19 電装品特定部
21 異常判定部
40 LEDドライバ
42a~42d LED
50 オーディオアンプ
52a~52d スピーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13