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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】振動モータ、および、触覚デバイス
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020217900
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102876
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 篤範
(72)【発明者】
【氏名】平野 宏明
(72)【発明者】
【氏名】光畑 遼一
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-016153(JP,A)
【文献】特開2006-038109(JP,A)
【文献】特開2016-073126(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030266(WO,A1)
【文献】特開2012-213710(JP,A)
【文献】米国特許第09004883(US,B2)
【文献】特開2015-097984(JP,A)
【文献】特開2018-057230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137628(US,A1)
【文献】特開2020-121240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
前記静止部に対して、上下方向に延びる中心軸に沿って振動可能な可動部と、
を有し、
前記静止部は、
前記可動部を前記中心軸に沿って振動可能に支持し、かつ前記中心軸に沿って延びる筒状である軸受部と、
前記可動部の少なくとも一部と径方向に直接的または間接的に対向するコイルと、
を有し、
前記軸受部の下端部は、前記中心軸に沿って延びる筒状であり、
前記下端部の径方向内方には、上下方向に貫通し、かつ前記軸受部の外部と前記軸受部における前記下端部よりも上方の部分の内部とを連通させる連通孔が設けられ、
前記下端部には、径方向に延び、かつ前記下端部の下面から上方へ凹む溝状の連通部が形成され、
前記可動部の下面の少なくとも一部は、前記連通孔と上下方向に重なる、振動モータ。
【請求項2】
前記可動部よりも上方に配置される弾性部材を有し、
前記可動部の上端部は前記弾性部材の下端部に固定され、
前記静止部は、
前記可動部および前記弾性部材を収容するハウジングと
前記ハウジングの上端部に固定され、かつ前記弾性部材の上端部と固定される天面部と、
を有する、請求項1に記載の振動モータ。
【請求項3】
前記可動部の外径と、前記軸受部の内径と、前記連通孔を構成する前記軸受部の下端部の内径は、略同一である、請求項1または請求項2に記載の振動モータ。
【請求項4】
前記軸受部の上端における内径は、前記軸受部の前記下端における内径よりも小さい、請求項3に記載の振動モータ。
【請求項5】
前記軸受部の内径は、下方に向かうにつれて連続的に大きくなる、請求項4に記載の振動モータ。
【請求項6】
前記軸受部の上端における内径は、前記軸受部の前記下端における内径よりも大きい、請求項3に記載の振動モータ。
【請求項7】
前記軸受部は、前記可動部と径方向に対向して配置され、上下方向に延びる筒状の軸受筒部を有し、
前記軸受部の前記下端部は、前記軸受筒部の径方向内端よりも径方向内方に延びる内方延伸部を有し、
前記内方延伸部の上面は、前記可動部の下面の一部と上下方向に対向して配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項8】
前記軸受部の前記下端部は、前記軸受筒部よりも下方に配置され、かつ前記軸受筒部とは別体である、請求項7に記載の振動モータ。
【請求項9】
前記軸受部よりも下方に配置され、かつ前記中心軸と交差する方向に広がる基板を有し、
前記基板は、前記連通孔と上下方向に重なる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の振動モータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の振動モータを有する、触覚デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動モータ、および、触覚デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォン等の携帯機器など各種機器には、振動発生装置として振動モータが備えられている。振動モータは、例えば、着信またはアラーム等を利用者に知らせる機能、あるいはヒューマンインタフェースにおける触覚フィードバックの機能などの用途で用いられる。
【0003】
振動モータは、筐体と、コイルと、弾性部材と、可動部と、を有する。可動部は、マグネットを有する。可動部と筐体とは、弾性部材により接続される。コイルに通電して磁界を発生させることにより、可動部は振動する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-65990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、可動部が、振動方向に直交する径方向においては支持されていない構成である場合、可動部を径方向に精度良く配置させるために、振動モータの製造効率が低下する可能性があった。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、製造効率を向上させることができる振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な振動モータは、静止部と、前記静止部に対して、上下方向に延びる中心軸に沿って振動可能な可動部と、を有する。前記静止部は、前記可動部を前記中心軸に沿って振動可能に支持し、かつ前記中心軸に沿って延びる筒状である軸受部と、前記可動部の少なくとも一部と径方向に直接的または間接的に対向するコイルと、を有する。前記軸受部の下端部は、前記中心軸に沿って延びる筒状である。前記下端部の径方向内方には、上下方向に貫通し、かつ前記軸受部の外部と前記軸受部における前記下端部よりも上方の部分の内部とを連通させる連通孔が設けられる。前記可動部の下面の少なくとも一部は、前記連通孔と上下方向に重なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の例示的な振動モータによると、製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態に係る振動モータの斜視図である。
図2図2は、本発明の例示的な実施形態に係る振動モータの縦断面斜視図である。
図3図3は、本発明の例示的な実施形態に係る振動モータの縦断面図である。
図4図4は、基板とコイルとの電気的な接続に関する構成を示す斜視図である。
図5図5は、振動モータの製造工程における一工程を示す断面図である。
図6図6は、変形例に係る振動モータの一部構成を示す縦断面図である。
図7図7は、別の変形例に係る軸受部の下端部を示す斜視図である。
図8図8は、振動モータを搭載したタッチペンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の例示的な実施形態について説明する。
【0011】
なお、図面において、振動モータ10の中心軸Jが延びる方向を「上下方向」として、上方をX1、下方をX2として示す。なお、上記上下方向は、振動モータ10を機器に搭載する際の振動モータ10の取り付け方向を限定しない。
【0012】
また、中心軸Jに対する径方向を単に「径方向」と称し、中心軸Jに近づく方向を径方向内方、中心軸Jから遠ざかる方向を径方向外方と称する。
【0013】
<1.振動モータの全体構成>
図1は、本発明の例示的な実施形態に係る振動モータ10の斜視図である。図2は、図1に示す振動モータ10の縦断面斜視図である。図3は、図1に示す振動モータ10の縦断面図である。
【0014】
振動モータ10は、静止部1と、可動部2と、を有する。本実施形態においては、振動モータ10は、弾性部材3と、基板4と、をさらに有する。可動部2は、中心軸Jに沿って延びる。可動部2は、静止部1に対して、中心軸Jに沿って振動可能である。中心軸Jは、上下方向に延びる。
【0015】
<2.静止部>
静止部1は、軸受部12と、コイル13と、を有する。本実施形態においては、静止部1は、ハウジング11と、天面部14と、をさらに有する。
【0016】
ハウジング11は、上下方向に延びる円筒状の部材である。なお、ハウジング11は、円筒状に限らず、例えば四角筒状などであってもよい。すなわち、ハウジング11は、上下方向に延びる筒状であればよい。ハウジング11は、磁性体により構成される。上記磁性体は、例えばステンレスである。ハウジング11は、可動部2、および弾性部材3を収容する。本実施形態においては、ハウジング11は、後述する軸受部12をさらに収容する。
【0017】
軸受部12は、中心軸Jに沿って延びる筒状のスリーブ軸受である。軸受部12は、例えば低摩擦係数・低摩耗性の樹脂から構成される。上記樹脂は、例えばPOM(ポリアセタール)である。
【0018】
軸受部12は、上下方向に延びる中空部12Aを有する。軸受部12は、第1領域部121と、第2領域部122と、第3領域部123と、を有する。第2領域部122は、第1領域部121の下方に配置される。第3領域部123は、第1領域部121の上方に配置される。
【0019】
第1領域部121、第2領域部122、および第3領域部123は、一体的に形成される。すなわち、軸受部12は、一体成型により形成される。図3に示す構成では、軸受部12の上端における内径D1は、軸受部12の下端における内径D2よりも小さい。内径D1は、内径D2よりも微小に小さい。これにより、一体成型による軸受部12の製造時に、金型を下方に抜きやすくなる。また、可動部2が上下方向に振動する際に、可動部2の上下方向の中心に近い領域を軸受部12の上端で支持することによって、可動部2が中心軸Jから径方向に振れることを抑制できるため、可動部2の振動が安定する。
【0020】
より具体的には、軸受部12の内径は、内径D1から内径D2へ向かって連続的に大きくなる。図3において、中空部12Aの外縁は、下方かつ径方向外方へ直線状に傾いている。すなわち、軸受部12の内径は、下方に向かうにつれて連続的に大きくなる。これにより、軸受部12を製造するための金型の製造が容易となる。
【0021】
なお、例えば、内径D1から内径D2にかけて、内径が上下方向に一定の領域を上下方向に複数並べ、内径を下方に向かうに従って非連続的に大きくしてもよい。これによっても、金型は下方に抜きやすくなる。
【0022】
第1領域部121は、上下方向に延びる円筒状である。第1領域部121の径方向外周には、導線が巻き付けられてコイル13が形成される。コイル13は、中心軸J周りに導線が巻かれることで形成される。コイル13の径方向内側面は、第1領域部121の径方向外側面に接触する。すなわち、第1領域部121は、コイル13の径方向内方に配置されるコイル内領域部121Aを有する。
【0023】
第1領域部121の径方向外端位置は、コイル13の径方向内端位置と一致する。これにより、振動モータ10の製造時に、軸受部12を形成してから、コイル13を第1領域部121に巻き付けることができるため、製造コストを低減できる。
【0024】
第2領域部122は、上下方向に延びる円筒状の軸受筒部122Aと、軸受筒部122Aの下方に配置される下端部122Bと、を有する。すなわち、軸受部12は、軸受筒部122Aを有する。軸受筒部122Aは、上下方向に延びる筒状である。軸受部12は、下端部122Bを有する。下端部122Bは、中心軸Jに沿って延びる筒状である。より詳細に述べると、下端部122Bは、円筒状である。下端部122Bの径方向外端は、軸受筒部122Aの径方向外端よりも径方向外方に配置される。振動モータ10の製造時に、軸受部12は、ハウジング11内部に下方から挿入される。挿入により、下端部122Bの径方向外端部における上面は、ハウジング11の下面と上下方向に接触する。これにより、ハウジング11に対して軸受部12の上下方向における位置決めを行うことができる。
【0025】
また、下端部122Bの径方向内側面に囲まれる空間は、連通孔H1である。連通孔H1は、中空部12Aの下端部に相当する。すなわち、下端部122Bの径方向内方には、上下方向に貫通し、かつ軸受部12の外部と軸受部12における下端部122Bよりも上方の部分の内部とを連通させる連通孔H1が設けられる。連通孔H1を設ける理由については、後述する。
【0026】
下端部122Bと軸受部12における下端部122Bよりも上方の上方部分との境界において、下端部122Bの内径(連通孔H1の外径)と、上記上方部分の内径は同一である。つまり、可動部2の外径と、軸受部12の内径と、連通孔H1を構成する軸受部12の下端部122Bの内径は、略同一である。これにより、下端部122Bを含めて軸受部12を一体成型することができる。
【0027】
軸受部12をハウジング11内に収容した状態において、ハウジング11は、コイル13の径方向外端よりも径方向外方に配置される。
【0028】
軸受筒部122Aの径方向外側面は、コイル13の径方向外側面よりも径方向外方に配置される。すなわち、第2領域部122の径方向外側面は、第1領域部121の径方向外側面よりも径方向外方に配置される。第2領域部122の上面は、コイル13の下端と上下方向に対向して配置される。これにより、コイル13が第2領域部122の上面よりも下方に移動することを抑制できる。
【0029】
第3領域部123は、上下方向に延びる円筒状である。第3領域部123の径方向外端は、コイル13の径方向内端よりも径方向外方に配置される。第3領域部123の下面は、コイル13の上端と上下方向に対向して配置される。第3領域部123は、フランジ部である。これにより、コイル13が第3領域部123の下面よりも上方に移動することを抑制できる。
【0030】
<3.可動部>
可動部2は、コア部21と、保持部22と、を有する。
【0031】
コア部21は、軸方向に沿って延びる円柱状の部材である。本実施形態においては、コア部21は、例えば、上下方向に並ぶ2つのマグネットと、当該マグネットに上下に挟み込まれて配置される磁性体と、を有する。この場合、例えば、上方のマグネットにおける下方がN極であり、上方がS極である。下方のマグネットの上方がN極であり、下方がS極である。すなわち、N極同士が上記磁性体を挟んで上下方向に対向する。ハウジング11を磁性体により構成することで、マグネットおよびコイル13により生じる磁界が振動モータ10の外部へ漏れることを抑制し、磁力を高めることができる。なお、上記各マグネットの磁極は、上下方向で上記と反対にしてもよい。
【0032】
保持部22は、コア部21における上端部21Tを保持する。保持部22は、上方へ円柱状に凹む柱状凹部221を有する。上端部21Tは、柱状凹部221内に配置される。上端部21Tは、柱状凹部221に例えば接着により固定される。すなわち、保持部22は、コア部21に固定される。
【0033】
保持部22は、ウェイト(おもり)として機能し、例えば金属により構成される。当該金属の一例は、タングステン合金である。
【0034】
保持部22は、上面から下方へ円環状に凹む円環凹部222を有する。円環凹部222には、弾性部材3の下端部が固定される。弾性部材3の円環凹部222への固定は、例えば溶接または接着により行われる。すなわち、弾性部材3は、可動部2よりも上方に配置される。可動部2の上端部は、弾性部材3の下端部に固定される。
【0035】
天面部14は、中心軸Jを中心とする略円盤状の蓋部材である。天面部14は、下面から上方へ円環状に凹む円環凹部141を有する。弾性部材3の上端部は、円環凹部141に固定される。弾性部材3の円環凹部141への固定は、例えば溶接または接着により行われる。すなわち、天面部14は、弾性部材3の上端部と固定される。
【0036】
天面部14は、径方向に突出する天面フランジ部142を有する。振動モータ10の製造時において、天面部14は、上方からハウジング11内に挿入される。このとき、天面フランジ部142の下面は、ハウジング11の上面と上下方向に接触する。これにより、ハウジング11に対する天面部14の上下方向における位置決めを行えるとともに、振動モータ10の強度向上を図ることができる。天面部14は、ハウジング11の上端部に固定される。
【0037】
このような構成により、可動部2は、弾性部材3を介して天面部14により支持される。弾性部材3が自然長の状態で、図3に示すように、コア部21における下方側の一部は、軸受部12の中空部12A内に収容される。これにより、コア部21は、軸受部12によって中心軸Jに沿って振動可能に支持される。すなわち、軸受部12は、可動部2を中心軸Jに沿って振動可能に支持する。つまり、軸受部12は、可動部2を中心軸Jに沿って振動可能に支持し、かつ中心軸Jに沿って延びる筒状である。より具体的には、コア部21の一部は、第3領域部123、第1領域部121、および軸受筒部122Aのそれぞれの径方向内方において、第3領域部123、第1領域部121、および軸受筒部122Aと径方向に対向する。すなわち、軸受筒部122Aは、可動部2と径方向に対向して配置される。すなわち、軸受部12は、中心軸Jに沿って延び、可動部2を中心軸Jに沿って振動可能に支持する。また、可動部2の下方側の径方向外側面は、軸受部12によって支持されるが、可動部2の下方側は、軸方向には支持されていない。これにより、可動部を上下方向の両方から弾性部材等で支持する場合に比べて、可動部の上下方向における復元力が必要以上に大きくなることを抑制できる。よって、可動部の上下方向における振動を大きくすることができる。また、可動部2よりも下方に弾性部材を配置する必要がないため、振動モータ10の構成が簡素になり、量産性が向上する。
【0038】
静止部1は、コイル13を有する。弾性部材3が自然長の状態で、図3に示すように、コア部21の一部は、コイル内領域部121Aを介してコイル13と径方向に対向する。すなわち、コイル13は、可動部2の少なくとも一部と径方向に間接的に対向する。なお、軸受部をコイルよりも下方に設け、コイルは、可動部の少なくとも一部と径方向に直接的に対向してもよい。
【0039】
コイル13に通電を行うことにより、コイル13から磁界が発生する。発生した磁界と、コア部21による磁界との相互作用により、可動部2は上下方向に振動する。
【0040】
第1領域部121がコイル内領域部121Aを有することにより、可動部2とコイル13とをコイル内領域部121Aにより隔てることができる。これにより、コイル内領域部121Aの径方向厚みを小さくすることができ、振動モータ10を径方向に小型化することが可能となる。
【0041】
また、第2領域部122は、コイル13の下端よりも下方に配置される。従って、第1領域部121に加えて第2領域部122を軸受部12に設けることで、軸受部12における可動部2と径方向に対向する内側面の上下方向長さが長くなり、可動部2の振動時における傾きを抑制できる。これにより、振動を安定化できる。
【0042】
また、図3に示すように、弾性部材3が自然長の状態において、第1領域部121の径方向内側面および第2領域部122の径方向内側面のそれぞれの径方向内方に、可動部2の一部が配置される。これにより、軸受部12の内側面と径方向に対向する可動部2の上下方向長さが長くなり、可動部2の振動時における傾きを抑制できる。従って、可動部2の振動が安定する。なお、弾性部材3が自然長の状態において、可動部2の一部は第2領域部122の径方向内方に位置しなくてもよい。
【0043】
また、軸受部12は、第1領域部121よりも上方に配置される第3領域部123を有する。これにより、軸受部12における可動部2と径方向に対向する内側面の上下方向長さが長くなり、可動部2の振動時における傾きをより抑制できる。なお、第3領域部123の径方向外端は、コイル13の径方向内端よりも径方向内方に配置されてもよい。
【0044】
また、保持部22の下面22Aは、第3領域部123の上面123Aと上下方向に直接対向して配置される。すなわち、可動部2は、第3領域部123の上面123Aと上下方向に直接対向して配置される面22Aを有する。これにより、可動部2の面22Aが第3領域部123の上面123Aと接触することが可能となり、可動部2の下方への移動を制限できる。特に、可動部2の下方への移動が上記のように制限されることで、可動部2が第2領域部122より下方へ抜けることを抑制できる。また、後述するように、基板4が第2領域部122の下方に配置される場合に、可動部2が基板4に接触することを抑制できる。
【0045】
また、図3に示すように、保持部22は、上方に突出する突出部223を有する。突出部223、すなわち保持部22の上面223Aは、天面部14の下面14Aと上下方向に直接対向して配置される。これにより、保持部22の上面223Aが天面部14の下面14Aと接触することが可能となり、可動部2の上方への移動を制限できる。
【0046】
<4.基板とコイルとの電気的接続の構成>
図4は、コイル13との電気的な接続に関する構成を示す斜視図である。図4に示すように、軸受部12における第2領域部122の径方向外側面には、上下方向に延び、かつ径方向内方に凹む凹部12Bが形成される。コイル13から引き出される引出線131の一部は、凹部12Bに収容される。なお、引出線131の全部が凹部12Bに収容されてもよい。すなわち、引出線131の少なくとも一部が凹部12に収容されていればよい。
【0047】
これにより、引出線131を軸受部12の径方向外方で引き回す必要がない。よって、引出線131を軸受部12の径方向外方で引き回す場合に比べて、振動モータ10において、引出線131が他の部位又は他の部材と干渉することを抑制でき、振動モータ10を径方向に小型化できる。また、振動モータ10の製造効率が向上する。
【0048】
また、図4に示すように、基板4は、第2領域部122よりも下方に配置される。基板4は、径方向に広がる。すなわち、基板4は、中心軸Jと交差する方向に広がる。基板4は、フレキシブルプリント基板でも、リジッドプリント基板であってもよい。
【0049】
軸受部12は、第2領域部122の下面から下方に突出する凸部12Cを有する。下方に引き出された引出線131の下端部は、凸部12Cに巻かれる。すなわち、引出線131は、凸部12Cにからげられる。
【0050】
基板4は、第1電極部41と、第2電極部42と、を有する。第1電極部41と第2電極部42とは、基板4内部の配線パターン(図4で図示せず)により電気的に接続される。振動モータ10の製造時においては、基板4を第2領域部122に取り付け、第1電極部41と、凸部12Cにからげられた引出線131とを、はんだ付けなどにより電気的に接続する作業が行われる。当該作業は、自動でも手作業であってもよい。従って、引出線を直接的に基板に接続するよりも、作業性良く振動モータ10の製造を行える。また、引出線131を第1凸部12Cにからげる機構により、引出線の外径が小さい場合でも引出線と基板4との電気的接続の信頼性が向上する。よって、引出線の外径が小さい場合でも大きい場合でも、引出線と基板との電気的接続の信頼性が向上するため、振動モータの用途に合わせて引出線の外径を調整することができ、コイル13の電気抵抗や出力特性を調整しやすくなる。
【0051】
このようにして、コイル13から下方に引き出される引出線131の下端部は、基板4と電気的に接続される。これにより、コイル13と基板4とを電気的に接続するための引出線131の引き回しを容易にできる。
【0052】
また、基板4は、基板4の径方向外縁から中心軸Jに近づく向きに凹む複数の切欠き部4Aを有する。軸受部12は、第2領域部122の下面から下方に突出する複数の凸部12Dを有する。複数の凸部12Dは、複数の切欠き部4Aに収容される。これにより、基板4の位置決めを行うことができる。
【0053】
図3に示すように、基板4が下端部122Bに取り付けられた状態で、基板4は、連通孔H1と上下方向に重なる。これにより、異物が軸受部12内部に侵入することを抑制できる。
【0054】
<5.振動モータの製造方法>
次に、振動モータ10の製造方法について説明する。
【0055】
振動モータ10の製造時には、ハウジング11、軸受部12、およびコイル13を一体化させた構成を第1ユニットU1として、あらかじめ組み立てておく。一方、コア部21、保持部22、弾性部材3、および天面部14を一体化させた構成を第2ユニットU2として、あらかじめ組み立てておく。
【0056】
そして、図5に示すように、第1ユニットU1を治具20に設置する。治具20は、治具20の上面から下方に向けて円柱状に凹む凹部20Aと、第1凹部20Aから治具20の下面まで貫通する貫通孔20Bと、を有する。凹部20Aの中心軸と貫通孔20Bの中心軸は一致する。凹部20Aの外径は、ハウジング11の外径と略同一である。貫通孔20Bの外径は、凹部20Aの外径よりも小さい。
【0057】
第1ユニットU1を治具20に設置するときには、第1ユニットU1における下方を凹部20A内部に挿入し、第1ユニットU1の底面を凹部20Aと貫通孔20Bとの境界面20Sに接触させる。境界面20Sは、凹部20Aを構成する治具20の筒状の部位が径方向内方に突出する部位の上面である。
【0058】
そして、棒状の治具30を貫通孔20Bから治具20内部に挿入する。治具30を軸受部12内部、ハウジング11内部の順に上方へ挿入させ、ハウジング11外部で第2ユニットU2における可動部2(コア部21)の下面2Bに固定する。図5は、この固定状態を示す。
【0059】
治具30が磁性体から構成される場合であれば、治具30を下面2Bに接触させることで治具30が下面2Bに固定される。また、治具30が非磁性体から構成される場合であれば、治具30の上面と下面2Bとを瞬間接着剤により固定する。なお、治具30の上面と下面2Bとの固定は、他の方法であってもよい。
【0060】
治具30と可動部2が固定された後、図5に矢印で示すように、治具30を下方へ引っ張る。これにより、治具30とともに第2ユニットU2が下方へ引っ張られ、コア部21が上方からハウジング11内部へ挿入される。治具30を下方に引っ張り続けると、コア部21が軸受部12内部に挿入される。
【0061】
可動部2の下面2Bの少なくとも一部は、連通孔H1と上下方向に重なる。ここで、図3に示すように、本実施形態においては、可動部2(コア部21)の下面2Bの全部は、連通孔H1と上下方向に重なる。下面2Bの全部が連通孔H1と上下方向に重なるとは、連通孔H1の径方向外縁を上方に投影した場合に、下面2Bの全部が、投影された上記径方向外縁内に含まれることをいう。これにより、治具20を連通孔H1から軸受部12内に挿入し、治具20を下面2Bに固定し、治具20により可動部2を下方へ引き寄せて軸受部12内部に配置させることが可能となる。
【0062】
また、コア部21を軸受部12内に引っ張り込むときに、保持部22および弾性部材3がハウジング11内に挿入され、天面部14をハウジング11の上端部にはめ込むことができる。天面部14をハウジング11に取り付けた後、治具30を傾けることで治具30を可動部2から取り外す。なお、治具30を可動部2から取り外す際には他の方法を用いても良い。
【0063】
このように、治具を用いることで、振動モータ10の製造効率を向上させることができる。このとき、可動部2は、軸受部12内に配置されるため、可動部2を径方向に精度良く配置させることができる。
【0064】
なお、ハウジング11が磁性体により構成される場合、磁性体から構成される治具30と可動部2とが磁力のみで接続されている場合、吸引力によりコア部21が治具30から外れてハウジング11に吸着される可能性がある。従って、このような場合には、非磁性体から構成される治具30と可動部2とを瞬間接着剤により固定することが望ましい。
【0065】
なお、軸受部12の上端における内径D1は、軸受部12の下端における内径D2よりも大きくしてもよい。この場合は、軸受部12の製造時に金型を軸受部12に対して上方に抜きやすくなる。さらに、治具を用いて可動部2を軸受部12内に引き込むときに、可動部2が軸受部12に接触しにくくなる。
【0066】
<6.変形例>
図6は、変形例に係る振動モータ10の下方側一部縦断面図である。図6に示すように、軸受部12は、軸受筒部122Aと、下端部122Bと、を有する。軸受筒部122Aは、先述した実施形態と同様である。下端部122Bは、軸受筒部122Aよりも下方に配置され、かつ軸受筒部122Aとは別体である。つまり、軸受部12は、軸受筒部122Aよりも下方に配置され、かつ軸受筒部122Aとは別体である下端部122Bを有する。
【0067】
下端部122Bは、連通孔H1を有する。連通孔H1の外径は、軸受筒部122Aの下端の内径よりも小さい。可動部2(コア部21)の下面2Bの一部は、連通孔H1と上下方向に重なる。下面2Bの一部が連通孔H1と上下方向に重なるとは、中心軸Jと直交する方向において連通孔H1の面積が下面2Bの面よりも狭く、かつ、連通孔H1の径方向外縁を上方に投影した場合に、上記径方向外縁内が連通孔H1の一部と重なることをいう。
【0068】
このような構成によっても、先述した実施形態と同様に、連通孔H1に治具を挿入して、治具を第1ユニットU1における可動部2の下面2Bに固定し、治具により可動部2を引き寄せ、可動部2を軸受部12内に配置させることができる。すなわち、可動部2の下面2Bの少なくとも一部が、連通孔1Hと上下方向に重なっていればよい。
【0069】
また、下端部122Bが別体であるため、可動部2の下面2Bの一部と上下方向に重なる連通孔1Hを下端部122Bに形成しやすい。特に、内径D2が内径D1よりも大きい場合(図3)、上記のような連通孔H1を有する下端部122Bを含めて軸受部12を金型により一体的に形成すると金型の引き抜きが困難となるため、下端部122Bは別体とすることが望ましい。
【0070】
また、図6に示す構成では、軸受部12の下端部122Bは、軸受筒部122Aの径方向内端よりも径方向内方に延びる内方延伸部1221を有する。内方延伸部1221の上面1221Aは、可動部2の下面2Bの一部と上下方向に対向して配置される。上記下面2Bの一部は、円環状である。これにより、上面1221Aと上下方向に対向する下面領域に基板4を接着剤等により固定することができる。従って、基板4を強固かつ容易に固定できる。また、保持部22の下面22Aと第3領域部123の上面123Aとが上下方向に対向することで可動部2の下方への移動を制限する構成を設けない場合でも、可動部2の下面2Bが上面1221Aと接触可能となるので、可動部2の下方への移動を制限できる。
【0071】
図7は、別の変形例に係る軸受部12の下端部122Bを示す斜視図である。図7は、基板4を取り外した状態の図である。
【0072】
図7に示すように、下端部122Bには、径方向に延び、かつ下端部122Bの下面から上方へ凹む溝状の連通部1222が形成される。連通部1222は、下端部122Bの径方向内方の空間と径方向外方の空間とを連通する。すなわち、軸受部12は、軸受部12の径方向内方の空間と径方向外方の空間とを連通する連通部1222を有する。これにより、可動部2が上下に振動する場合に、連通部1222を通して軸受部12内部の気体が軸受部12外部へ排出されるため、軸受部12内部の気体が圧縮されて振動の振幅が低下することを抑制できる。また、本実施形態のように基板4が軸受部12の下方を塞ぐ構成では、連通部1222を設ける構成が特に有用である。
【0073】
なお、連通部1222は、溝状に限らず、例えば軸受部12を径方向に貫通する貫通孔として形成されてもよい。
【0074】
<7.搭載対象機器>
図8は、振動モータ10を搭載する対象機器の一例としてのタッチペン50を模式的に示す図である。タッチペン50は、スマートフォンまたはタブレットなどの機器のタッチパネルに接触させることにより、上記機器を操作する装置である。タッチペン50に振動モータ10を搭載することにより、タッチペン50を振動させてユーザに触覚フィードバックを与えることができる。すなわち、タッチペン50は、振動モータ10を有する触覚デバイスの一例である。つまり、触覚デバイスは、振動モータ10を有する。例えば、触覚フィードバックにより、タッチペン50であたかも紙などの上で文字などを記入している感覚をユーザに与えることができる。振動モータ10を触覚デバイスに搭載することにより、製造効率が良い振動モータ10を有する触覚デバイスを実現できる。
【0075】
また、タッチペンに限らず、振動モータ10は、空中操作デバイスなど各種の機器に搭載することが可能である。例えば、振動モータ10を電子ペンや電子筆記具、マウス等の機器に搭載し、当該機器を立体映像や仮想現実の映像に対して入力可能な電子機器とすることが可能である。
【0076】
特に、タッチペンなどの機器に振動モータ10を搭載する場合には、振動モータ10のサイズを小さくする必要があるが、そのようなサイズの小さい振動モータ10であっても、先述したように治具を用いることで製造が容易となる。
【0077】
<8.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、タッチペンなどの各種機器に搭載される振動モータに利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 静止部
1H 連通孔
2 可動部
2B 下面
3 弾性部材
4 基板
4A 切欠き部
10 振動モータ
11 ハウジング
12 軸受部
12A 中空部
12B 凹部
12C,12D 凸部
13 コイル
14 天面部
20 治具
21 コア部
22 保持部
30 治具
41 第1電極部
42 第2電極部
50 タッチペン
121 第1領域部
121A コイル内領域部
122 第2領域部
122A 軸受筒部
122B 下端部
1221 内方延伸部
1222 連通部
123 第3領域部
131 引出線
141 円環凹部
142 天面フランジ部
221 柱状凹部
222 円環凹部
223 突出部
H1 連通孔
J 中心軸
U1 第1ユニット
U2 第2ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8