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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】根菜類収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 27/00 20060101AFI20240925BHJP
   A01D 33/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A01D27/00
A01D33/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021003561
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108519
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127265(JP,A)
【文献】特開2012-044966(JP,A)
【文献】特開2010-241548(JP,A)
【文献】特開2017-118843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0216441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
B66C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行部(A)と操縦部(B)と圃場から根菜類を収穫する収穫部(C)と、搬送中の人参を補助作業者が選別する選別搬送部(D)と、収穫した根菜類を収容する収容部(E)を装備した根菜類収穫機において、該収容部(E)に収穫部(C)から搬送された根菜類を収納する収容部材(22)を載置する載置台(26)を設け、該載置台(26)に載置された収容部材(22)を吊って機体左右方向外側の圃場に降ろす作動アーム(24)を設けると共に、該載置台(26)に載置された収容部材(22)が載置台(26)上を滑落して載置台(26)の前方または後方の圃場に降りるように載置台(26)を前傾または後傾させる構成とし、
選別搬送部(D)は、収容部(E)に斜め右上方に向けて搬送する可動搬送コンベア(21b)を設け、
作動アーム(24)は、基部が可動搬送コンベア(21b)右端部に枢支され、先端側が機体右外側上方に向けて延設されている基部アーム(24a)と、該基部アーム(24a)先端に回動自在に枢支された回動アーム(24b)と、基部アーム(24a)と回動アーム(24b)間に配設された回動用アクチュエータとしての回動用電動シリンダ(24c)から構成され、
機体前側に設ける操縦パネル(9)の右側に十字方向操作レバー(27)が設けられており、可動搬送コンベア(21b)の上昇及び下降、回動アーム(24b)の回動を操作する構成とし、
十字方向操作レバー(27)の操作時に、可動搬送コンベア(21b)が最上昇位置にないと十字方向操作レバー(27)による回動アーム(24b)による回動を規制することを特徴とする根菜類収穫機。
【請求項2】
載置台(26)を前傾または後傾させるアクチュエータ(38)を載置台(26)の下方に配置したことを特徴とする請求項1に記載の根菜類収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場から作物を採ってフレコンバッグ等の収容部材に収容する根菜類収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、引抜搬送装置で圃場から根菜類を引抜き搬送し、選別搬送装置の搬送終端部に設けたフレコンバッグで根菜類を収容する根菜類収穫機がある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-115069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、根菜類が満杯になったフレコンバッグを機体後方に向けて圃場に降ろすので、機体を旋回させて隣接条の作物を収穫する際に圃場に降ろされたフレコンバッグが進行する機体のすぐ側方にあり、フレコンバッグが傾いたり機体が少し蛇行したりすると、機体にフレコンバッグが接触してフレコンバッグが破れて根菜類が圃場に散乱して適正な収穫作業が行なえなくなるような事態が発生する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圃場に降ろしたフレコンバッグ等の収容部材に機体が接触することを回避した根菜類収穫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、機体を走行させる走行部(A)と、操縦部(B)と、圃場から根菜類を収穫する収穫部(C)と、搬送中の人参を補助作業者が選別する選別搬送部(D)と、収穫した根菜類を収容する収容部(E)を装備した根菜類収穫機において、該収容部(E)に収穫部(C)から搬送された根菜類を収納する収容部材(22)を載置する載置台(26)を設け、該載置台(26)に載置された収容部材(22)を吊って機体左右方向外側の圃場に降ろす作動アーム(24)を設けると共に、該載置台(26)に載置された収容部材(22)が載置台(26)上を滑落して載置台(26)の前方または後方の圃場に降りるように載置台(26)を前傾または後傾させる構成とし、
選別搬送部(D)は、収容部(E)に斜め右上方に向けて搬送する可動搬送コンベア(21b)を設け、
作動アーム(24)は、基部が可動搬送コンベア(21b)右端部に枢支され、先端側が機体右外側上方に向けて延設されている基部アーム(24a)と、該基部アーム(24a)先端に回動自在に枢支された回動アーム(24b)と、基部アーム(24a)と回動アーム(24b)間に配設された回動用アクチュエータとしての回動用電動シリンダ(24c)から構成され、
機体前側に設ける操縦パネル(9)の右側に十字方向操作レバー(27)が設けられており、可動搬送コンベア(21b)の上昇及び下降、回動アーム(24b)の回動を操作する構成とし、
十字方向操作レバー(27)の操作時に、可動搬送コンベア(21b)が最上昇位置にないと十字方向操作レバー(27)による回動アーム(24b)による回動を規制することを特徴とする根菜類収穫機である。
第2の本発明は、載置台(26)を前傾または後傾させるアクチュエータ(38)を載置台(26)の下方に配置したことを特徴とする第1の本発明の根菜類収穫機である。
本発明に関連する第1の発明は、機体を走行させる走行部Aと操縦部Bと圃場から根菜類を収穫する収穫部Cと収穫した根菜類を収容する収容部Eを装備した根菜類収穫機において、該収容部Eに収穫部Cから搬送された根菜類を収納する収容部材22を載置する載置台26を設け、該載置台26に載置された収容部材22を吊って機体左右方向外側の圃場に降ろす作動アーム24を設けると共に、該載置台26に載置された収容部材22が載置台26上を滑落して載置台26の前方または後方の圃場に降りるように載置台26を前傾または後傾させる根菜類収穫機である。
【0007】
本発明に関連する第1の発明によれば、該収容部Eに収穫部Cから搬送された根菜類を収納する収容部材22を載置する載置台26を設け、該載置台26に載置された収容部材22を吊って機体左右方向外側の圃場に降ろす作動アーム24を設けると共に、該載置台26に載置された収容部材22が載置台26上を滑落して載置台26の前方または後方の圃場に降りるように載置台26を前傾または後傾させるので、載置台26に載置された収容部材22を作動アーム24にて吊り上げて、機体左右方向外側の位置で圃場に降ろすことができ、圃場に降ろされた収容部材22が傾いたり機体が多少蛇行したりしても、機体に収容部材22が接触することを回避でき、良好で適切な収穫作業を行なうことができる。また、機体が畦や障害物の側方に沿って人参の収穫作業を行なっている場合には、載置台26を前傾または後傾させて、収容部材22を機体前方または後方に向けて圃場に降ろすことができる。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、走行停止状態でないと、作動アーム24が作動しない本発明に関連する第1の発明の根菜類収穫機である。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、機体に傾斜センサを設け、作動アーム24が作動する時に機体が危険角度まで傾斜した場合、警報を発するか作動アーム24の作動を停止する本発明に関連する第1または第2の発明の根菜類収穫機である。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、作動アーム24に下方を画像認識するセンサを設け、作動アーム24下方に人間が入ると、作動アーム24の作動を禁止する本発明に関連する第1~第3のいずれかの発明の根菜類収穫機である。
【0011】
本発明に関連する第5の発明は、載置台26を前傾または後傾させるアクチュエータ38を作動アーム24が載置台26から収容部材22を吊り上げるのに邪魔にならない位置に配置した本発明に関連する第1~第4のいずれかの発明の根菜類収穫機である。
【0012】
本発明に関連する第6の発明は、載置台26の基部内側辺を機体フレーム1に枢支軸41にて回動自在に設け、アクチュエータにて右外側が下方に下がり圃場に接地してアウトリガーの機能を果たす本発明に関連する第1~第5のいずれかの発明の根菜類収穫機である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例の人参収穫機の平面図である。
図2】本発明の一実施例の人参収穫機の作用説明用背面図である。
図3】本発明の一実施例の人参収穫機の側面図である。
図4】本発明の第2実施形態の人参収穫機の作用説明用背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の一実施例として示す根菜類収穫機の一種である人参収穫機を説明する。以下においては、機体の前進方向を基準に、前後、左右と謂う。
【0015】
<全体構成>
人参収穫機は、機体を走行させる走行部Aと、操縦者が搭乗する操縦部Bと、機体左右一側で圃場から人参を引き抜いて機体後上側に搬送する収穫部Cと、該収穫部Cから人参を引き継いで茎葉切断部にて機体後方に搬送しながら茎葉部を切断し、茎葉切断部から落下する人参を受けて残葉処理部にて人参に残った茎葉部を処理し、残葉処理部から人参を引き継いで人参を機体左右一側から左右他側へと搬送し、搬送中の人参を補助作業者が選別する選別搬送部Dと、該選別搬送部Dから排出される人参の収容部材を配置する収容部Eから構成される。
【0016】
<走行部A>
機体フレーム1の下方に機体前部側の左右駆動スプロケット2,2と機体後部側の左右従動輪3,3と、該左右駆動スプロケット2,2と左右従動輪3,3との間に取り付けた複数の転輪4の周りに左右ベルト5,5を巻き掛けて左右のクローラ6L,6Rを構成する。そして、該左右クローラ6L,6Rの左右駆動スプロケット2,2を、エンジンの動力が伝動されるミッションケースから左右両側に延出させた左右ドライブシャフトに取り付け、一定の左右間隔を設けて左右クローラ6L,6Rを該機体フレーム1に取り付ける。
【0017】
<操縦部B>
前記機体フレーム1の右側上部に操縦部フレーム7を取り付け、該操縦部フレーム7には操縦座席8を取り付けると共に、機体前側に操縦パネル9を取り付ける。そして、該操縦パネル9に機体の前後進及び走行速度を切り換える変速操作レバー10を取り付けると共に、機体の左右旋回操作及び収穫部Cの作業高さを操作する昇降操作レバー11を取り付ける。
【0018】
そして、操縦パネル9の右側に後述の十字方向操作レバー27が設けられており、可動搬送コンベア21bの上昇及び下降、回動アーム24bの回動を操作する。
【0019】
また、前記操縦部フレーム7の機体左右他側(機体右側)にエンジンを冷却するラジエータ(図示省略)を保護すると共に冷却風を取り込むラジエータカバー12を着脱自在に取り付けることにより。操縦部Bが構成される。
【0020】
上記構成により、変速操作レバー10や昇降操作レバー11のような、1本で複数の操作を行える操縦部材を設けることによって、機体の操縦が容易になるため操縦者の作業を軽減することができる。
【0021】
<収穫部C>
左右引抜フレーム13,13の機体前側に左右従動プーリ14a,14aを回転自在に装着し、機体後側に左右駆動プーリ14b,14bを装着し、該左右従動プーリ14a,14aと左右駆動プーリ14b,14bとの間に人参を引き抜き機体後部へと搬送する左右挟持搬送ベルト15,15を巻き掛けると共に、複数のテンションローラ16によって該左右挟持搬送ベルト15,15を張圧し、左右挟持搬送ベルト15,15の機体内側面を互いに圧接させて人参の引抜搬送経路(引抜搬送通路)Rを構成する。そして、前記機体フレーム1の上方に左右横軸を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレームを取り付け、該回動フレームの後端部に前記左右駆動プーリ14b,14bに駆動力を伝動する伝動ケースを、回動支点を中心として上下回動自在に取り付ける。また、前記機体フレーム1と回動フレームとを昇降シリンダで連結し、該昇降シリンダを操縦部Bで操作可能に取り付けて引抜搬送装置17を構成する。
【0022】
また、該引抜搬送装置17の前方に人参の茎葉部を引き起こす縦引起し装置18と、該縦引起し装置18が引起した茎葉部を掬い上げる横引起し装置19と、該横引起し装置19の前部に設ける分草杆20と、引抜搬送装置17の下り過ぎを防止する回転自在なゲージ輪と、前記エンジンの駆動力で往復振動して土中の人参の左右の土を解す左右振動ソイラSとを設ける。
【0023】
そして、前記引抜搬送通路Rの下方に引抜搬送装置17で搬送中の人参のひげ根を切断する尻尾切装置を取り付けて、収穫部Cを構成する。
【0024】
上記構成により、機体前側に分草杆20を備える横引起し装置19と、縦引起し装置18を設けることによって、圃場に倒伏した人参の茎葉を掻き上げながら収穫作業ができ、収穫する人参の視認性が向上するので引き抜き位置が合わせやすく、作物の抜き残しが減少するため作業能率が向上する。
【0025】
また、人参に左右振動ソイラS等が接触して傷つくことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0026】
そして、機体フレーム1と左右横軸を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレームとを昇降シリンダで連結し、昇降シリンダを操縦部Bの昇降操作レバー11を操作することによって伸縮させる構成としたことによって、昇降操作レバー11の操作により収穫部C全体の上下高さを調節することができるので、収穫部Cの引抜搬送始端部の位置を上下方向に調節しするとともに圃場に植生する人参の適切な引き抜き高さに合わせて引抜搬送始端部の位置調節を行え、人参の抜き残しが防止されるので作業能率が向上する。
【0027】
また、旋回時に収穫部Cを上昇させておくと、収穫部Cの下端部が圃場に接触しにくくなるため、旋回動作がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0028】
<選別搬送部D>
選別搬送部Dの選別作業用の選別搬送装置21は、収穫部Cの引抜搬送装置17の後部下方から人参を収容する収容部材であるフレコンバッグ22のある収容部Eに向けて機体左右方向に配置され、エンジンからの駆動力にて周回動する一定間隔の桟を備えるチェーンコンベアにて構成されている。なお、引抜搬送装置17にて茎葉部が挟持されて搬送してきた人参は、その茎葉部下端(人参の頭部の少し上)が茎葉切断部にて切断されて人参が下方に落下するが、該落下する人参を残葉処理部が受けて人参に残った茎葉部を処理して選別搬送部Dに搬送する。そして、選別搬送部Dの選別搬送装置21は、人参をその左端から右方(収容部E)に搬送する。
【0029】
また、選別搬送装置21は、収穫部Cの引抜搬送装置17の後部下方から機体右側に水平に設けられた水平搬送コンベア21aと該水平搬送コンベア21a右端部から収穫作物を引き継いで収容部Eに斜め右上方に向けて搬送する可動搬送コンベア21bから構成される。
【0030】
可動搬送コンベア21bは、水平搬送コンベア21a右端部から収穫作物を引き継ぐ左端部が枢支軸で回動自在に支持されており、上下動用電動シリンダ21cの伸縮作動により収容部E側の右端部側が上下動して傾斜角度が変更できるようになっている。
【0031】
そして、該可動搬送コンベア21bの機体後方側に補助作業座席23が設けられており、該補助作業座席23に着座した作業者が可動搬送コンベア21bにて送られてくる人参のなかから商品にならないもの(小さい人参や異形の人参)を取り出して、適正な商品価値のある人参のみを収容部Eに送るようにする。
【0032】
また、補助作業座席23に着座した作業者は、足踏み式の上昇スイッチ及び下降スイッチにて前記上下動用電動シリンダ21cを伸縮作動させて可動搬送コンベア21bの右端部側を上下動させる。
【0033】
<収容部E>
収容部Eは、選別搬送装置21の右側方に配置され、該選別搬送装置21の可動搬送コンベア21b右端部に設けた作動アーム24により上下動及び左右動する吊り下げハンガー25と、該吊り下げハンガー25に吊り下げられたフレコンバッグ22を載置する載置台26により構成されている。
【0034】
可動搬送コンベア21bは、左端基部から右端上部に向けて斜め上方に向かって設けられている。即ち、エンジンからの駆動力にて周回動して人参を斜め上方に搬送し、上端部から下方に放出する。また、可動搬送コンベア21bの基部は、枢支軸にて回動自在に設けられており、中途部には、機体フレーム1に基部が枢支された上下動用電動シリンダ21cのピストン先端が連結されている。
【0035】
即ち、該可動搬送コンベア21bは、補助作業座席23に着座した作業者が踏み操作する上昇スイッチを踏み込み操作している間、上下動用電動シリンダ21cが伸長して枢支軸回りに回動して上昇し、下降スイッチを踏み込み操作している間、上下動用電動シリンダ21cが縮小して枢支軸回りに回動して下降する。また、可動搬送コンベア21bは、後述の操縦パネル9右端に設けた十字方向操作レバー27を作業者が圃場に降りて機体後方を向いた状態で右に操作すると上下動用電動シリンダ21cが伸長して枢支軸回りに回動して上昇し、左に操作すると上下動用電動シリンダ21cが縮小して枢支軸回りに回動して下降する。
【0036】
吊り下げハンガー25は、可動搬送コンベア21b右端部に設けた作動アーム24により上下動及び左右動する。
【0037】
作動アーム24は、基部が可動搬送コンベア21b右端部に背面視で反時計方向には回動するが時計方向には所定位置で回動が停止するように枢支され、先端側が機体右外側上方に向けて延設されている基部アーム24aと、該基部アーム24a先端に回動自在に枢支された回動アーム24bと、基部アーム24aと回動アーム24b間に配設された回動用アクチュエータとしての回動用電動シリンダ24cから構成される。
【0038】
基部アーム24aと回動アーム24bは、へ字状に湾曲しているので、基部アーム24aと回動アーム24b間に回動用電動シリンダ24cを装着する取り付けスペースが有効にとれる。
【0039】
また、回動アーム24bは、前後アーム間をX字状のフレームで連結しているので、強固である。
【0040】
また、回動アーム24b先端部に下方即ちフレコンバッグ22の方を照らす照明を付けておけば、作業性が良い。
【0041】
吊り下げハンガー25は、回動アーム24bの先端に設けられている。載置台26上方で、吊り下げハンガー25の4つのフック25aをフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔に各々引っ掛けてフレコンバッグ22を吊下げ支持する。
【0042】
操縦パネル9右端には、十字方向操作レバー27が設けられており、作業者が圃場に降りて機体後方を向いた状態で右に操作すると上下動用電動シリンダ21cが伸長して可動搬送コンベア21bが枢支軸回りに回動して上昇し、左に操作すると上下動用電動シリンダ21cが縮小して可動搬送コンベア21bが枢支軸回りに回動して下降し、機体後方に操作すると回動用電動シリンダ24cが伸長して回動アーム24bが枢支軸回りに回動して右外側方に開き、機体前方に操作すると回動用電動シリンダ24cが縮小して回動アーム24bが枢支軸回りに回動して左機体内側に閉じる。
【0043】
この十字方向操作レバー27の操作時に、可動搬送コンベア21bが最上昇位置にないと十字方向操作レバー27を機体後方に操作しても回動用電動シリンダ24cは作動せず回動アーム24bが枢支軸回りに回動して右外側方に開くことはない。即ち、可動搬送コンベア21bが最上昇位置にある時のみ、十字方向操作レバー27を機体後方に操作して回動用電動シリンダ24cを作動させて回動アーム24bを枢支軸回りに回動して右外側方に開くことができる。
【0044】
また、載置台26には荷重センサ28が設けられており、吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22が持ち上げられてフレコンバッグ22の底が載置台26から離れた時のみ(荷重センサ28がフレコンバッグ22を検出しなくなった時のみ)、十字方向操作レバー27を機体後方に操作して回動用電動シリンダ24cを作動させて回動アーム24bを枢支軸回りに回動して右外側方に開くことができる。
【0045】
また、載置台26右外側端には上方に物体があることを検出するフォトセンサ29が設けられており、吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22が持ち上げられて回動用電動シリンダ24cの作動により回動アーム24bが枢支軸回りに回動して右外側方に開いて機体右外側方に移動した時に、フレコンバッグ22が載置台26右外側端上方にないこと(フレコンバッグ22が載置台26右外側端よりも右外側方に移動したこと)を検出しないと、十字方向操作レバー27を左に操作して可動搬送コンベア21bを枢支軸回りに回動して下降させようとしても、上下動用電動シリンダ21cは作動せず、可動搬送コンベア21bは下動しない。よって、吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22を圃場に降ろす際に、誤ってフレコンバッグ22が載置台26右外側端に接触することを回避できる。
【0046】
また、載置台26の右外側端辺には、右外側下方に向けて傾斜面が形成されており、フレコンバッグ22を右外側方に吊り降ろす際に、フレコンバッグ22底面が載置台26の右外側端辺に引っ掛からないようになっている。なお、載置台26右外側端辺を右外側下方に向けた傾斜面にするのに変えて、右外側端辺の構造部材を丸棒のような丸断面部材にしても良く、また、ローラ等の回転部材を設けても同様の効果がある。更に、載置台26上面に滑りテープ等の滑り抵抗を下げる部材を張り付けても良い。
【0047】
また、操縦部Bに設けた駐車ブレーキを作動させた状態または変速操作レバー10を中立にした状態(即ち、走行停止状態)でないと、十字方向操作レバー27を操作しても回動用電動シリンダ24cは作動せず回動アーム24bが右外側方に開かないようにしても、誤作動や危険防止となる。
【0048】
また、機体に傾斜センサを設けて、回動用電動シリンダ24cを作動させて回動アーム24bが右外側方に開く場合に、機体が危険角度まで傾斜した場合には、警報を発したり、回動用電動シリンダ24cの作動を停止するようにすれば、安全である。更に、走行部Aに車体水平制御機構を設けて、回動用電動シリンダ24cを作動させて回動アーム24bが右外側方に開く場合に、機体が危険角度まで傾斜した場合には、車体水平制御機構を作動させれば転倒リスクを軽減できる。
【0049】
また、回動アーム24bや吊り下げハンガー25に下方を画像認識するセンサを設けて、回動アーム24bや吊り下げハンガー25下方にフレコンバッグ22以外の人間が入ると、回動アーム24bが右外側方に開かないようにすれば危険防止となる。
【0050】
また、回動アーム24b先端に吊り下げハンガー25は枢支軸にて回動自在に設けられており、フレコンバッグ22の上部開口は水平になるように構成されているが、回動アーム24bと吊り下げハンガー25間に固定ピンを抜き挿し自在に設けて、回動アーム24bが右外側方に開く時には、該固定ピンにて回動アーム24bと吊り下げハンガー25を固定するようにすれば、機体が右傾斜して機体が転倒しそうになった場合に、回動アーム24bと吊り下げハンガー25が転倒防止安全フレームの機能を持ち、安全である。
【0051】
そして、十字方向操作レバー27の上端には、吊り下げハンガー25の4つのフック25aを開閉操作するフック開閉スイッチ30が設けられている。
【0052】
フック開閉スイッチ30は、一度押すと各フック25aの回動支点部に設けた電磁ソレノイド31を作動させて各フック25aを閉じ、再度、押すと電磁ソレノイド31を作動させて各フック25aを開く。なお、各フック25aを開く操作の時は、誤操作防止の為に、フック開閉スイッチ30を0.5秒以上押していないと電磁ソレノイド31は作動せず各フック25aは開かない。
【0053】
また、可動搬送コンベア21b上端部にフレコンバッグ22の口紐22aを係止する口紐フック32を設ける場合には、該口紐フック32の開閉もフック開閉スイッチ30にて同様にして行なう。
【0054】
そして、作動アーム24の最も高い位置即ち基部アーム24a先端上部に報知手段としての警告灯の一例である赤色回転灯33を設けている。
【0055】
赤色回転灯33は、載置台26に設けた荷重センサ28が吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22が持ち上げられてフレコンバッグ22の底が載置台26から離れたことを検出し、且つ、作動アーム24の基部アーム24a先端に枢支された回動アーム24bが回動用電動シリンダ24cにて右外側方に開き始めた時に回転点灯し、作動アーム24が作動してフレコンバッグ22を圃場に降ろしていることを周囲に報知する。なお、基部アーム24a先端に枢支された回動アーム24b基部にはポテンショメータ34が設けられていて、回動アーム24bが回動用電動シリンダ24cにて右外側方に開き始めたことを検出する。
【0056】
また、赤色回転灯33が回転点灯する際に、ホーンを鳴らして報知すれば、更に安全である。なお、ホーンの音は、後進ブザー音や操縦者が鳴らす警告音とは異なる断続音とする。
【0057】
従って、作動アーム24を作動させてフレコンバッグ22を圃場に降ろす際に、作動アーム24の最も高い位置で赤色回転灯33が回転点灯するので、夕方でも目立ち周囲に適確に報知できる。
【0058】
そして、機体後部に予備のフレコンバッグ22を吊り下げておく背の高いポール状の予備収容部材掛けとしての予備フレコンバック掛け35が設けられているが、該予備フレコンバック掛け35の上端部にも第2報知手段としての第2赤色回転灯36を設けて、赤色回転灯33が回転点灯する時に連動して回転点灯するようにしておくと、作動アーム24でフレコンバッグ22を圃場に降ろす動作時に赤色回転灯33が低い位置になっても、背の高いポール状の予備フレコンバック掛け35上端部の第2赤色回転灯36が良く視認できて、安全である。
【0059】
載置台26は、前端辺に回動支軸37を設けて、載置台26下方に配置したアクチュエータとしての電動シリンダー38にて後端側が下方に回動する構成としている。そして、操縦パネル9に設けた載置台傾斜スイッチ39にて、電動シリンダー38を作動させて載置台26をフレコンバッグ22が載置される水平状態(イ)とフレコンバッグ22が載置台26上面を滑落して機体後方に向けて圃場に降ろす後傾状態(ロ)とに変更できる。
【0060】
なお、電動シリンダー38は、載置台26の前方または後方に配置して載置台26を前傾または後傾させる構成としても良い。即ち、電動シリンダー38は、載置台26からフレコンバッグ22を作動アーム24にて吊り上げるのに邪魔にならない位置に配置する。
【0061】
<人参の収穫作業>
先ず、十字方向操作レバー27を操作して、回動アーム24bが左機体内側に閉じた状態で可動搬送コンベア21bを最下降位置にする。
【0062】
吊り下げハンガー25の各フック25aにフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔を各々引っ掛けてフレコンバッグ22を吊下げ、十字方向操作レバー27のフック開閉スイッチ30を押して各フック25aを閉じ、フレコンバッグ22の底が載置台26に受けられた状態とする。
【0063】
そして、操縦座席8に着座した操縦者が人参収穫機を進行させて、収穫部Cの引抜搬送装置17の引抜搬送経路R前端を圃場の人参条に合わせた後に昇降操作レバー11を操作して収穫部Cを下降させ、掘取りクラッチを「入」にして各部を駆動させて前進する。すると、分草杆20や縦引起し装置18や横引起し装置19にて人参の茎葉を掻き上げて引抜搬送装置17の引抜搬送経路Rに人参の茎葉が挟持され、左右振動ソイラSにて人参の側方及び下方の土をほぐして、人参は引抜搬送装置17にて挟持されて引き抜かれて、後方上方に搬送される。
【0064】
そして、引抜搬送装置17にて茎葉部が挟持されて搬送してきた人参は、その茎葉部下端(人参の頭部の少し上)が茎葉切断部にて切断されて人参が下方に落下するが、該落下する人参は残葉処理部が受けて人参に残った茎葉部を処理して選別搬送部Dに搬送される。そして、人参は、選別搬送部Dの可動搬送コンベア21bにてその左端から右方(収容部E)に搬送される。
【0065】
そして、可動搬送コンベア21bの機体後方側の補助作業座席23に着座した作業者が可動搬送コンベア21bにて送られてくる人参のなかから商品にならないもの(小さい人参や異形の人参)を取り出し、商品価値のある人参のみが収容部Eに送られる。
【0066】
可動搬送コンベア21bにて右端に送られてきた人参は、可動搬送コンベア21b右端の吊り下げハンガー25の各フック25aに吊下げられたフレコンバッグ22内に落下して収納される。
【0067】
そして、フレコンバッグ22内に収納された人参の量が多くなるにつれて、補助作業座席23に着座した作業者が上昇スイッチを踏み込み操作して上下動用電動シリンダ21cを伸長させて可動搬送コンベア21bを枢支軸回りに回動して順次上昇させる。
【0068】
そして、フレコンバッグ22内に人参が満杯になるまで可動搬送コンベア21bを枢支軸回りに回動して上昇させると、操縦者は機体の駆動を停止して停車する。
【0069】
補助作業座席23に着座した作業者は、補助作業座席23から離れて圃場に降りて操縦パネル9右端近くに立って、機体後方を向いた状態で十字方向操作レバー27を操作する。
【0070】
先ず、十字方向操作レバー27を右に操作して、上下動用電動シリンダ21cを伸長させて可動搬送コンベア21bを最上昇位置まで上昇させて、フレコンバッグ22を載置台26上方に持ち上げる。
【0071】
そして、十字方向操作レバー27を機体後方に操作して、回動用電動シリンダ24cを伸長させて回動アーム24bを枢支軸回りに回動して右外側方に開いて、フレコンバッグ22を載置台26の右外側方まで移動させる。
【0072】
そして、十字方向操作レバー27を左に操作して、上下動用電動シリンダ21cを縮小させて可動搬送コンベア21bを最下降位置まで下降させて、フレコンバッグ22を圃場に降ろす。
【0073】
そして、十字方向操作レバー27のフック開閉スイッチ30を押して各フック25aを開いて吊り下げハンガー25の各フック25aをフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔から外してフレコンバッグ22上部開口を閉じる。その後、十字方向操作レバー27を操作して最初の回動アーム24bが左機体内側に閉じた状態で可動搬送コンベア21bを最下降位置に戻して、吊り下げハンガー25の各フック25aに空のフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔を各々引っ掛けてフレコンバッグ22を吊下げてフレコンバッグ22の底が載置台26に受けられた状態とした後に、補助作業座席23に着座する。そして、各部を駆動して機体を進行させて収穫作業を再開する。
【0074】
また、機体が畦や障害物の側方に沿って人参の収穫作業を行なっている場合には、フレコンバッグ22を載置台26の右外側方の圃場には降ろせない。
【0075】
そこで、機体が畦や障害物の側方に沿って人参の収穫作業を行なっている場合には、載置台26上のフレコンバッグ22が人参で満杯になると機体を停止して、十字方向操作レバー27のフック開閉スイッチ30を押して各フック25aを開いて吊り下げハンガー25の各フック25aをフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔から外しフレコンバッグ22上部開口を閉じる。そして、操縦パネル9に設けた載置台傾斜スイッチ39にて、電動シリンダー38を作動させて載置台26を水平状態(イ)から後傾状態(ロ)に変更する。すると、フレコンバッグ22は、載置台26上面を滑落して機体後方に向けて圃場に降ろされる。
【0076】
そして、載置台傾斜スイッチ39にて電動シリンダー38を作動させて載置台26を水平状態(イ)に戻し、吊り下げハンガー25の各フック25aに空のフレコンバッグ22の上端縁部の係止孔を各々引っ掛けてフレコンバッグ22を吊下げてフレコンバッグ22の底が載置台26に受けられた状態とした後に、各部を駆動して機体を進行させて収穫作業を再開する。
【0077】
以上要するに、吊り下げハンガー25は、可動搬送コンベア21b右端部に設けた作動アーム24により上下動及び左右動するので、吊り下げハンガー25に吊り下げられた状態で載置台26に載置されたフレコンバッグ22を作動アーム24により載置台26上方に吊り上げて、載置台26の右外側方の位置で圃場に降ろすことができ、圃場に降ろされたフレコンバッグ22が傾いたり機体が多少蛇行したりしても、機体にフレコンバッグ22が接触することを回避でき、良好で適切な収穫作業を行なうことができる。
【0078】
また、機体が畦や障害物の側方に沿って人参の収穫作業を行なっている場合には、載置台26を水平状態(イ)から後傾状態(ロ)に変更して、フレコンバッグ22を機体後方に向けて圃場に降ろすことができる。
【0079】
<他の実施態様>
【0080】
(1)前記実施形態1では、載置台26を後傾させてフレコンバッグ22を機体後方に向けて圃場に降ろす例を示したが、載置台26の後端辺に回動支軸を設けて、載置台26下方に配置した電動シリンダーにて前端側が下方に回動する構成とし、載置台26を前傾させてフレコンバッグ22を機体前方に向けて圃場に降ろしても良い。
【0081】
(2)図4は、収容部Eの第2実施形態を示す。
【0082】
即ち、前記実施形態1の吊り下げハンガー25に吊り下げられた状態で載置台26に載置されたフレコンバッグ22を作動アーム24により載置台26上方に吊り上げて、載置台26の右外側方の位置で圃場に降ろす機能に加えて、人参収穫機の収穫作業時に人参収穫機の右側方を伴走する積載車40の荷台に作動アーム24にてフレコンバッグ22を積載する機能を有する。
【0083】
積載車40は、4輪駆動のトラックで荷台がフレコンバッグ22を2段積みできる箱型になっている。
【0084】
作動アーム24は、基部アーム24aと回動アーム24bが略一直線になる状態まで回動用電動シリンダ24cにて回動アーム24bが上方に回動して、載置台26上に載置された人参が満杯になったフレコンバッグ22を吊り上げて右側方の積載車40の荷台に積載できる。
【0085】
基部アーム24aと回動アーム24bが略一直線になる状態まで回動用電動シリンダ24cにて回動アーム24bを上方に回動した際には、回動アーム24bに吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22の肩部が当たりフレコンバッグ22の姿勢が安定するようになっている。
【0086】
人参収穫機の収穫作業時に、積載車40が人参収穫機の右側方を伴走し、載置台26上に載置された人参が満杯になると、作業者は人参収穫機及び積載車40を停止し、十字方向操作レバー27を操作してフレコンバッグ22を吊り上げて右側方の積載車40の荷台に積載する。積載車40の荷台には、フレコンバッグ22を1段目積載しその上に2段目を積載する。
【0087】
載置台26は、基部内側辺が機体フレーム1に枢支軸41にて回動自在に設けられており、アクチュエータとしての電動シリンダーにて右外側が下方に下がり圃場に接地し、アウトリガーの機能を果たす。即ち、載置台26に設けた荷重センサ28が吊り下げハンガー25に吊るされたフレコンバッグ22が載置台26から持ち上げられたことを検出すると、載置台26は、電動シリンダーにて右外側が下方に下がり圃場に接地しアウトリガーの機能を果たし、機体が転倒するのを防止する。
【符号の説明】
【0088】
22 収容部材(フレコンバッグ)
24 作動アーム
26 載置台
38 アクチュエータ(電動シリンダー)
41 枢支軸
A 走行部
B 操縦部
C 収穫部
E 収容部
図1
図2
図3
図4