(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】無線通信デバイス、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240925BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240925BHJP
H10K 10/00 20230101ALI20240925BHJP
G06K 19/02 20060101ALI20240925BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240925BHJP
H01Q 9/26 20060101ALI20240925BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06K19/077 204
H01L29/78 618B
H10K10/00
G06K19/02 020
G06K19/077 192
G06K19/077 280
H01Q1/38
H01Q9/26
H01Q1/24 Z
(21)【出願番号】P 2021004710
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2020011496
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河井 翔太
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 清一郎
【審査官】田中 啓介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-043115(JP,A)
【文献】特開2013-236093(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009101(WO,A1)
【文献】特開2008-112988(JP,A)
【文献】特開平09-162354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K19/00-19/18
H01L27/04
H01L29/76、29/78
H01Q1/00-1/52
H01Q5/00-11/20
H05B33/00-33/28
H05B44/00、45/60
H10K10/00-19/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
回路部と、
前記回路部に接続されたアンテナと、
を備え、
前記回路部が、上部電極と下部電極とを有する素子を有し、
前記アンテナが、上層アンテナと下層アンテナとを有し、
前記上層アンテナを構成する材料が、前記上部電極を構成する材料と同一であり、
前記下層アンテナを構成する材料が、前記下部電極を構成する材料と同一であ
り、
前記上層アンテナおよび前記下層アンテナの少なくとも一方が、導電性成分と有機成分とを含む、
無線通信デバイス。
【請求項2】
前記素子が電界効果型トランジスタである、請求項1に記載の無線通信デバイス。
【請求項3】
前記上層アンテナまたは前記下層アンテナのうち一方が導電性成分と有機成分とを含み、もう一方が金属成分を含む、請求項1
または2に記載の無線通信デバイス。
【請求項4】
前記下層アンテナおよび前記下部電極の厚みが等しい請求項1~
3のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項5】
前記下層アンテナおよび前記下部電極の厚みが1μm以下である、請求項
4に記載の無線通信デバイス。
【請求項6】
前記上層アンテナが導電成分と有機成分とを含み、前記上層アンテナの厚みが前記下層アンテナの厚みより3倍以上厚い、請求項1~
5のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項7】
前記上層アンテナと前記下層アンテナとの重なり部の面積が、アンテナ全体の上方からの投影面積中の50%以上である、請求項1~
6のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項8】
前記素子が電界効果型トランジスタであり、前記電界効果型トランジスタが半導体層を含み、前記半導体層がカーボンナノチューブを含有する、請求項1~
7のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項9】
前記素子が電界効果型トランジスタであり、前記上部電極がソース電極およびドレイン電極であり、前記下部電極がゲート電極である、請求項1~
8のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項10】
前記素子が電界効果型トランジスタであり、前記上部電極がゲート電極であり、前記下部電極がソース電極およびドレイン電極である、請求項1~
8のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項11】
前記アンテナが非接触で送受信装置と信号の送受信を行う、請求項1~
10のいずれかに記載の無線通信デバイス。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の無線通信デバイスの製造方法であって、
(A)基板上に、素子の下部電極と下層アンテナとを、同時にまたは連続的に形成する工程と、
(B)前記基板上に、前記素子の上部電極と上層アンテナとを、同時にまたは連続的に形成する工程と、
を含む無線通信デバイスの製造方法。
【請求項13】
(B)前記基板上に、前記素子の上部電極と上層アンテナとを、同時にまたは連続的に形成する工程が、(B-1)前記基板上に、導電体粒子と感光性有機成分とを含有する感光性導電性ペーストを用いて塗布膜を形成する成膜工程と、(B-2)前記塗布膜を、フォトリソグラフィ法によってパターン加工する工程と、を含む、請求項
12に記載の無線通信デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイス、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁性基板上に形成された半導体層を用いて電界効果型トランジスタ(以下、FETという)を構成する技術の開発が進められている。FETはICや画像表示装置のスイッチング素子などの電子デバイスに広く応用されている。特に近年では、FETで構成された回路を有する非接触型タグとして、RFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムが注目されている。
【0003】
RFIDタグは半導体素子で構成された回路を有するICチップと、リーダ/ライタとの無線通信するためのアンテナを有しており、タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、ICチップ内の駆動回路が動作する。
【0004】
RFIDタグは、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用が期待されており、交通カードなどのICカード、商品タグなど一部で導入が始まっている。
【0005】
RFIDタグは、あらゆる商品で使用されることが期待されており、低コスト化が要求されている。そのため、真空や高温を使用する製造プロセスから脱却し、塗布・印刷技術を用いてフレキシブル基材上に製造することによる低コスト化が検討されている。
【0006】
RFID用のアンテナを形成する方法としては、プラスチックフィルムなどの基材に貼り付けた金属箔を、金属箔上に形成したレジスト層をマスクとしてエッチングする方法があげられる(例えば、特許文献1参照)。また、プラスチックフィルムなどの基材に感光性導電性ペーストを塗布し、アンテナに対応するパターンと回路部の電極に対応するパターンごとにフォトリソ加工する方法(例えば、特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-8857号公報
【文献】国際公開第2017/030070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された金属箔をエッチングする手法は、数100μm程度のパターン形成は可能だが、製造コストが高くなるという問題がある。特許文献2に記載された感光性導電性ペーストを用いてアンテナパターンと回路部の一部の電極パターンとをフォトリソ加工するという手法は、アンテナパターンにICを実装する手法に比べ、温度や湿度といった環境変化によって生じる材料伸縮による歪みがアンテナ部と回路部で異なりやすく、材料の剥がれや無線通信デバイスの特性劣化が発生しやすいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に着目し、製造コストが低く、アンテナサイズが小型化でき、環境変化による剥がれや特性劣化が抑制された無線通信デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信デバイスは、
基板上に、
回路部と、
上記回路部に接続されたアンテナと、
を備え、
上記回路部が、上部電極と下部電極とを有する素子を有し、
上記アンテナが、上層アンテナと下層アンテナとを有し、
上記上層アンテナを構成する材料が、上記上部電極を構成する材料と同一であり、
上記下層アンテナを構成する材料が、上記下部電極を構成する材料と同一である、
無線通信デバイスである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、製造コストが低く、アンテナと回路部とのインピーダンス整合が調整しやすく、複雑な形状や微細パターンの形成が可能なアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスの一構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスの模式断面図である。
【
図3】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスのアンテナ部を抜粋した模式断面図である。
【
図4】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスのアンテナ部を抜粋した模式断面図である。
【
図5】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスのアンテナ部を抜粋した模式断面図である。
【
図6】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスのアンテナ部を抜粋した模式断面図である。
【
図7】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスのアンテナ部を抜粋した模式断面図である。
【
図8】
図1に示す無線通信デバイスの一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における本発明の実施の形態2に係る無線通信デバイスの模式断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスの製造方法の一例を示す部分拡大模式図である。
【
図10】本発明の実施例1に係る無線通信デバイスの製造方法の一例を示す部分拡大模式図である。
【
図11】本発明の実施例1に係る無線通信デバイスが備えたリングオシレータの構成を示す模式平面図である。
【
図12】無線通信デバイスの折り曲げ耐性の評価を行う際の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る無線通信デバイスおよびその製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。
【0014】
<無線通信デバイス>
本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスは、基板上に、回路部と、上記回路部に接続されたアンテナと、を備え、上記回路部が、上部電極と下部電極とを有する素子を有し、上記アンテナが、上層アンテナと下層アンテナとを有し、上記上層アンテナを構成する材料が、上記上部電極を構成する材料と同一であり、上記下層アンテナを構成する材料が、上記下部電極を構成する材料と同一である、無線通信デバイスである。
【0015】
この無線通信デバイスは、アンテナが受信する無線電波を用いて動作するデバイスである。無線通信デバイスの例としては、特に制限はないが、(1)アダプタによる有線接続を用いず非接触でエネルギーの給電を行う給電装置、(2)センシングに用いられるような搬送波を一部変調して電気通信を行う装置、(3)リーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信される搬送波を受信することで情報のやりとりを行う装置、などが挙げられる。(3)のより具体的な例としては、商品タグ、万引防止タグ、各種チケットやスマートカードなどの、非接触型タグであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが挙げられる。
【0016】
無線通信デバイスの具体的な動作を、RFIDタグを例に挙げて説明する。例えばリーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信された無線信号をRFIDタグ中のアンテナが受信すると、RFIDタグ中の回路部において、整流回路により当該無線信号が直流電流に変換され、RFIDタグが起電する。次に、起電されたRFIDタグは、無線信号からコマンドを受信し、コマンドに応じた動作を行う。その後、コマンドに応じた結果の回答をRFIDタグ中のアンテナからリーダ/ライタのアンテナへ無線信号として送信する。なお、コマンドに応じた動作は復調回路、制御回路、変調回路等によって実行される。
【0017】
本発明の実施の形態に係る無線通信デバイスにおいて、回路部が有する、上部電極と下部電極を有する素子とは、回路部を構成するキャパシタ、電界効果型トランジスタ、整流素子など、上述の用途に応じた回路構成に必要となる素子を構成する素子である。
【0018】
以下の実施の形態では、素子が電界効果型トランジスタ(FET)である場合を例に挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限られるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1および
図2は、本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスの構成を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイスは、基材1の上に、アンテナ101と、回路部102と、回路部とアンテナとの接続配線103とを備えている。
【0020】
図2は、
図1の一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における断面図であり、
図1に示す無線通信デバイスを構成するアンテナと、回路部が有するFETとの構成例を示す。
図2では説明簡略化のため、回路部が有するFET104を2つ分だけ示しているが、本実施の形態における回路部102は、同様の構成のFETを、上述した復調回路、動作制御ロジック回路、変調回路などを構成するのに必要な数だけ含んでいる。また、回路部102は、それらの回路をつなぐ接続配線も含む。
【0021】
本実施の形態1に係る無線通信デバイスにおいては、基板1上に、アンテナ101およびFET104が形成されている。
図2において、FET104は2個であり、基板1の上に、上部電極に該当するソース電極5およびドレイン電極6と、ゲート絶縁層3と、下部電極に該当するゲート電極2とを有する。ゲート電極2は、ゲート絶縁層3によりソース電極5およびドレイン電極6と電気的に絶縁されている。FET104は、さらに、ソース電極5およびドレイン電極6の間に半導体層4を有する。本実施の形態1において、ゲート絶縁層3は、2個のFET104の間で共通化されているが、各FET104において独立に設けられていてもよい。
【0022】
図2で例示したFET104の構造は、ゲート電極が半導体層の下側(基板側)に配置され、半導体層の同一平面上にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるボトムゲート構造である。
【0023】
アンテナ101は、二層構造を有し、上層アンテナ12と下層アンテナ11とから構成される。アンテナが二層構造であることで、アンテナと回路部とのインピーダンス整合を調整する手法のバリエーションが広がる。具体的には、アンテナの面積や厚みだけでなく、上層アンテナと下層アンテナの材料の組み合わせによっても上記調整ができる。そのため、アンテナサイズの小型化や薄膜化に効果がある。
【0024】
また、上層アンテナ12を構成する材料は、ソース電極5およびドレイン電極6を構成する材料と同一であり、下層アンテナ11を構成する材料は、ゲート電極2を構成する材料と同一である。これにより、無線通信デバイスの製造コストを低減することができる。
【0025】
また、アンテナを構成する材料と、回路部の有するFETの電極層を構成する材料とを同一とすることで、温度や湿度といった環境変化によって生じる材料伸縮を、アンテナと回路部(本実施の形態1においては、上層アンテナとソース電極5およびドレイン電極6、ならびに下層アンテナ11とゲート電極2)とで揃えることができるため、環境変化により、アンテナや電極層が剥がれたり、無線通信デバイスの特性が劣化したりすることを抑制できる。
【0026】
アンテナを構成する材料と電極を構成する材料とが同一であるとは、アンテナに含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素と、電極に含まれる元素の中で最も含有モル比率が高い元素とが同一であることをいう。アンテナや電極に含まれる元素の種類と含有比率は、X線光電子分光(XPS)による元素分析によって、同定することができる。
【0027】
図2では、上層アンテナ12と下層アンテナ11が同じ形状でずれることなく重なっているが、本実施の形態1に係る無線通信デバイスが有するアンテナ101はこれに限られない。
図3~
図7に、
図2と同様の断面図により、上層アンテナ12と下層アンテナ11との重なり方のバリエーションを示す。なお、これらの図においては、簡略化のため、回路部102の図示を省略している。
【0028】
図3に示すように、上層アンテナ12と下層アンテナ11がずれて重なっても構わない。また、
図4に示すように、上層アンテナ12と下層アンテナ11とが重なっていない領域が部分的に存在しても構わない。また、
図5および
図6に示すように、下層アンテナ11と上層アンテナ12のサイズが異なって重なっていても構わない。さらに、
図7に示すように、上層アンテナ12の一部が下層アンテナ11の一部または全体を覆うように重なっていても構わない。
【0029】
本実施の形態1に係る無線通信デバイスが有するアンテナ101の上層アンテナ12と下層アンテナ11の重なり方は、これらに限定されるものではなく、発明の目的を達成でき、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の重なり方をとることができる。
【0030】
基板1に用いられる材料は、特に制限はないが、少なくとも電極が配置される面が絶縁性であれば良い。例えば、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体、シリコンウエハ等、およびそれらの表面を酸化膜で被覆したもの等の無機材料;
ポリイミド(PI)樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、シクロオレフィン樹脂などの樹脂;
を含む基材が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0031】
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、PPS、ポリフェニレンサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミドまたはPIの中から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましく、低価格の観点からはPETフィルムが好ましい。
【0032】
また、基板と、下部電極や配線との密着性の観点からは、ポリサルフォン樹脂基板、PPS樹脂基板も好ましい。これは、下部電極や配線中の金属原子が、これらの樹脂に含まれる硫黄原子と強く相互作用するためと推定される。
【0033】
基材の厚みは25μm以上100μm以下であることが好ましい。この範囲にあることで、耐久性と適度な柔軟性とを有し得る。
【0034】
本発明では、基板上にプライマー層を形成してもよい。これにより、基板の平坦性を高めると共に下部電極の密着性を向上することができる。
【0035】
プライマー層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的にはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシロキサン樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等を用いることができる。
【0036】
プライマー層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の樹脂材料から形成してもよいし、複数の樹脂材料を積層して形成しても構わない。
【0037】
アンテナ101に用いられる材料は、特に制限はなく、使用されうる導電性成分を含むものであればいかなるものでもよい。上層アンテナ12と下層アンテナ11とをそれぞれ別の材料で構成することで、アンテナの面積や厚みを変えなくてもアンテナと回路部とのインピーダンス整合を調整できるため、アンテナサイズの小型化や薄膜化により大きな効果がある。
【0038】
導電性成分としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物が挙げられる。また、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属、これらの中から選択される複数の金属の合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質が挙げられる。また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体、ヨウ素などのドーピングによって導電率を向上させた導電性ポリマーが挙げられる。さらには、炭素材料、有機成分と導電性成分とを含有する材料などが挙げられる。これらの導電性成分は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0039】
上層アンテナ12および下層アンテナ11の少なくとも一方は、導電性成分と有機成分とを含むことが好ましい。これにより、アンテナの柔軟性が増し、屈曲時にも基板との密着性が良く電気的接続が良好となる。有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。電極の折り曲げ耐性向上の観点からは、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。
【0040】
また、上層アンテナ12または下層アンテナ11のうち一方が導電性成分と有機成分とを含み、もう一方のアンテナが金属成分を含んでいることがさらに好ましい。これにより、導電性および安定性に優れるアンテナが得られやすくなる。
【0041】
本発明に用いられる導電性成分は、銀であることが好ましい。導電性成分が銀であることにより、導電性および安定性に優れる導電膜および導電パターンが得られやすくなる。
【0042】
本発明で用いられる有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマーもしくはポリマー、光重合開始剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられるが、折り曲げ耐性向上の観点からは、オリゴマーもしくはポリマーが好ましい。
【0043】
オリゴマーもしくはポリマーとしては特に限定されず、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミド等が挙げられる。中でも、屈曲時の耐クラック性の観点からアクリル樹脂が好ましい。これは、アクリル樹脂のガラス転移温度は100℃以下であり、導電膜の熱硬化時に軟化し、導電体粒子間の結着が高まるためと推定される。
【0044】
アクリル樹脂とは、繰返し単位に少なくともアクリル系モノマーに由来する構造を含む樹脂である。アクリル系モノマーの具体例としては炭素-炭素二重結合を有するすべての化合物が使用可能であるが、好ましくはメチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、i-プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、1-ナフチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマーおよびこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものやスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1-ビニル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0045】
これらアクリル系モノマーは、単独あるいは2種以上用いても構わない。
【0046】
本発明で用いられる金属成分としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム、タングステン、モリブデン等が挙げられる。中でも金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含有することが好ましい。
【0047】
本発明に用いられる金属成分は、銅であることがより好ましい。金属成分が銅であることにより、導電性および安定性に優れるアンテナが得られやすくなる上に、該金属成分を含むアンテナ層と、上述した導電性成分と有機成分とを含むアンテナ層との密着性が良好になる。
【0048】
また、下層アンテナ11の厚みは、FET104の下部電極の厚みと等しいことが好ましい。これにより、両者の厚みを異ならせる場合に比べ、容易かつ低コストで下層アンテナと下部電極とを形成することができる。 また、下層アンテナおよび前記下部電極の厚みは、それぞれ1μm以下であることが好ましく、いずれも1μm以下であることがより好ましい。これにより、ゲート絶縁層の厚さが薄い場合でも、上部電極と下部電極との間のリーク電流の発生を防ぎやすくなるとともに、FET特性を向上させることができるため、無線通信デバイスの動作安定性を向上させることができる。
【0049】
また、上層アンテナ12が導電成分と有機成分とを含み、上層アンテナ12の厚みが下層アンテナ11の厚みより3倍以上厚いことが好ましい。これにより、上層アンテナと下層アンテナとの密着性を向上させると共に、無線通信デバイスの折り曲げ耐性を向上させることができる。また、長尺の基板上に上記無線通信デバイスを多数個、RtoR方式で製造する場合において、以下のような利点を有する。RtoR方式による製造では、無線通信デバイスの製造工程や、製造後の無線通信デバイスが多数形成された長尺フィルムを保管する時に、長尺フィルムに折り曲がりや擦れが発生する。これらはフィルム上の無線通信デバイスの剥離や欠けの原因となりうるものであるが、上層アンテナ12が導電成分と有機成分とを含み、上層アンテナ12の厚みが下層アンテナ11の厚みより3倍以上厚いという構成を取ることで、そのような剥離や欠けを抑制することができる。
【0050】
上層アンテナ、下層アンテナおよび下部電極の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで無線通信デバイスの断面を観察し、上層アンテナ、下層アンテナおよび下部電極それぞれに対し任意の5箇所の厚みを測定した値の平均値から算出できる。
【0051】
また、上層アンテナと下層アンテナとの重なり部の面積が、アンテナ全体の上方からの投影面積中の50%以上であることが好ましい。上層アンテナと下層アンテナの重なり部の面積とは、下層アンテナに上層アンテナが直接積層している部分の面積を意味する。上記重なり部の面積がアンテナ全体の上方からの投影面積中の50%以上であることで、上層アンテナと下層アンテナの密着性を向上しつつ、回路部とアンテナのインピーダンス整合が調整しやすくなる。
【0052】
下層アンテナに上層アンテナが直接積層しているかは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで無線通信デバイスの断面を観察して確認することができる。また、重なり部の面積は無線通信デバイスを必要に応じて基材から剥離し、表側と裏側から観察することで、上層アンテナと下層アンテナの重なり面積を算出することができる。
【0053】
接続部103に用いられる材料は、特に制限はなく、使用されうる導電性成分を含むものであればいかなるものでもよいが、上層アンテナ12および/または下層アンテナ11を構成する材料と同一の材料を用いた方が、材料の種類を削減しつつ、異種金属間接合による強度不足や剥離を避けることができる。
【0054】
FET104の詳細については後に説明する。
【0055】
本発明の実施の形態1に記載の無線通信デバイスは、回路部にLEDを接続することで、非接触でLEDにエネルギーの給電を行い点灯させる用途などに利用できる。また、回路部にセンサを接続することで、センサ感知を受けて、非接触で搬送波を一部変調させて電気信号として通信を行う用途などに利用できる。また、回路部にメモリ素子を備えさせ、リーダ/ライタを通じて非接触で固有の情報を信号として送受信する用途などに利用できる。
【0056】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る無線通信デバイスの構成を示す模式図である。これは、
図1に示す無線通信デバイスを構成するアンテナおよび回路部が有するFETの別の構成例を示すものである。
【0057】
本実施形態についても、実施の形態1で示した
図2と同様に、
図1の一点鎖線で囲った範囲内での、I-I’線における無線通信デバイスを構成するアンテナおよび回路部が有するFETの構成例の断面図を例に挙げて説明する。
図8では説明簡略化のため、回路部が有するFET204を2つ分示しているが、本実施の形態における回路部102は、同様の構成のFETを、上述した復調回路、動作制御ロジック回路、変調回路などを構成するのに必要な数だけ含んでいる。また、回路部102は、それらの回路をつなぐ接続配線も含む。
【0058】
本実施の形態2に係る無線通信デバイスにおいては、基板1上に、アンテナ101およびFET204が形成されている。
図8において、FET104は2個であり、基板1の上に、下部電極に該当するソース電極5およびドレイン電極6と、ゲート絶縁層3と、上部電極に該当するゲート電極2とを有する。ゲート電極2はゲート絶縁層3によりソース電極5およびドレイン電極6と電気的に絶縁されている。FET104は、さらにソース電極5およびドレイン電極6の間に半導体層4を有する。本実施の形態2において、ゲート絶縁層3は、2個のFET104の間で共通化されているが、各FET104において独立に設けられていてもよい。
【0059】
図8で例示したFET104の構造は、ゲート電極が半導体層の上側(基板と反対側)に配置され、半導体層と同一平面上にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるトップゲート構造である。
【0060】
このように、FET204がトップゲート構造を取ること以外は、実施の形態2に係る無線通信デバイスには、上述の実施の形態1に係る無線通信デバイスと同様である。
【0061】
<電界効果型トランジスタ>
次に、上記した本発明の各実施の形態に好適に用いられる電界効果型トランジスタ(FET)について、実施の形態1および実施の形態2の部分図を代表例とする内容を中心に詳細に説明する。
【0062】
(下部電極および上部電極)
下部電極および上部電極に用いられる材料は、導電性成分を含むものであればいかなるものでもよい。
【0063】
上部電極および下部電極の幅、厚み、および各電極間の間隔は任意である。具体的には、ゲート電極の場合、電極の幅は5μm以上、1mm以下であることが好ましい。ゲート電極の幅をこの範囲とすることで、ソース・ドレイン電極とのオーバーラップ制御やチャネル長制御によるFET特性制御が行いやすくなる。ソース電極とドレイン電極との間隔は1μm以上、500μm以下であることが好ましい。
【0064】
さらに、配線の幅および厚みも任意である。具体的には、配線の厚みは0.01μm以上、100μm以下であることが好ましい。配線の幅は5μm以上、500μm以下であることが好ましい。しかし、これらの寸法は、上記のものに限らない。
【0065】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層に用いられる材料は、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール等の有機高材料;あるいは無機材料粉末と有機材料の混合物を挙げられる。中でもケイ素原子と炭素原子の結合を含む有機化合物を含むことが好ましい。また、それに加えて金属原子および酸素原子の結合を含む金属化合物を含むことがさらに好ましい。
【0066】
ゲート絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数の絶縁層を形成しても構わない。
【0067】
(半導体層)
半導体層に用いられる材料は、半導体性を示す材料であれば特に限定されず、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いられる。また、低コストで簡便な塗布プロセスが適用できるものが好ましく、有機半導体やカーボン材料が好ましい例として挙げられる。
【0068】
有機半導体としては、ペンタセン、ポリチオフェン類、チオフェンユニットを主鎖中に含む化合物、ポリピロール類、ポリ(p-フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン類、含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、縮合多環芳香族化合物、複素芳香族化合物、芳香族アミン誘導体、ビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、有機色素、など公知のものを利用でき、これらを2種以上含有してもよい。
【0069】
カーボン材料としては、カーボンナノチューブ(以下、CNTという)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられるが、ロール・トゥ・ロール方式に適用した場合、200℃以下の低温形成可能である点、塗布プロセスへの適性が高い点、有機半導体と異な結晶化を必要とせずCNT同士のネットワーク構造により高移動度が達成できるためシート基材が熱や張力などの外部起因によって伸縮しても高移動度が維持しやすい点でCNTが好ましい。
【0070】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。半導体の特性を示すという観点から単層CNTを用いることが好ましく、中でも単層CNTが半導体型単層CNTを90重量%以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは単層CNTが半導体型単層CNTを95重量%以上含むことである。
【0071】
さらに、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT(以下、CNT複合体という)は、溶液中での分散安定性に優れ、高移動度が得られるため、特に好ましい。ここで、共役系重合体とは、繰り返し単位が共役構造をとり、重合度が2以上の化合物を指す。また、CNTが均一に分散した溶液を用いることで、CNTが均一に分散した膜をインクジェット法等の塗布法により形成することができる。
【0072】
共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのはそれぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的にはX線光電子分光法(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の質量比を同定することができる。
【0073】
CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。CNTへの付着のしやすさから、該共役系重合体は、重量平均分子量が1000以上であることが好ましい。
【0074】
共役系重合体をCNTに付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法等が挙げられる。本発明では、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0075】
本発明において、CNTの長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0076】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
【0077】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ-p-フェニレン系重合体、ポリ-p-フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン-ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、また、グラフト重合したものなどを用いることができる。
【0078】
また、半導体層は、CNT複合体と有機半導体を混合して用いてもよい。有機半導体中にCNT複合体を均一に分散させることにより、有機半導体そのものの特性を維持しつつ、高い移動度を実現することが可能となる。
【0079】
また半導体層は、さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、本発明の絶縁材料組成物や、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0080】
半導体層は単層でも複数層でもよい。半導体層の膜厚は1nm以上200nm以下が好ましく、100nm以下がさらに好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0081】
また、ゲート絶縁層と半導体層の間に配向性層を設けることもできる。配向性層には、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、特に有機シラン化合物が好ましい。
【0082】
本発明では、半導体層に対してゲート絶縁層と反対側に第2絶縁層を形成してもよい。これにより、半導体層を酸素や水分などの外部環境から保護することができる。
【0083】
第2絶縁層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などのポリマー材料、あるいは無機材料粉末とポリマー材料の混合物や有機低分子材料とポリマー材料の混合物を挙げることができる。
【0084】
形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの性能の指標となる移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0085】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dはゲート絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εrはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10-12F/m)である。
【0086】
上記のFETは、移動度が高く、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との相対位置が高精度に制御されたFETとなる。
【0087】
<無線通信デバイスの製造方法>
本発明に係る無線通信デバイスの製造方法について、実施の形態1に係る無線通信デバイスの製造方法を代表例とする内容を中心に詳細に説明する。本発明に係る無線通信デバイスの製造方法は、上述した実施形態に係る無線通信デバイスを製造するものである。上述した実施形態に係る無線通信デバイスを製造する場合の製造方法は、無線通信デバイスを構成するアンテナおよび回路部において、
(A)基板上に、電界効果型トランジスタの下部電極と下層アンテナとを、同時にまたは連続的に形成する工程と、
(B)前記基板上に、前記電界効果型トランジスタの上部電極と上層アンテナとを、同時にまたは連続的に形成する工程と、
を含むことが好ましい。これにより材料の種類および工程数を削減することができる。
【0088】
図9は、
図1の一点鎖線で囲った範囲内での、斜視図であり、
図1に示す無線通信デバイスを構成するアンテナおよび回路部が有するFETの構成例を示す。
図9では説明簡略化のため、回路部が有するFETを2つ分示しているが、本実施の形態における回路部102は、同様の構成のFETを、上述した復調回路、動作制御ロジック回路、変調回路などを構成するのに必要な数だけ含んでいる。また、回路部102は、それらの回路をつなぐ接続配線も含む。
【0089】
まず、
図9(a)に示すように、基材1の上に下部電極に該当するゲート電極2および下層アンテナ11を、同時にまたは連続的に形成する。同時にとは、ゲート電極2および下層アンテナ11を一括で形成することである。連続的にとは、ゲート電極2または下層アンテナ11の一方を先に形成し、続いて、次のゲート絶縁層を形成する工程の前に他方を形成することである。これらの中でも、ゲート電極2および下層アンテナ11を一括で形成することが好ましい。
【0090】
ゲート電極および下層アンテナの形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの公知技術を用いた方法や、有機成分および導電体粒子を含むペーストをブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術で絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い形成する方法などが挙げられるが、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0091】
下部電極、下層アンテナをパターン状に形成する方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極および配線物質の真空蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。また、インクジェットや印刷法を用いて直接パターンを形成してもよい。
【0092】
例えば、PET基板全面にスパッタリングまたは真空蒸着法によって金属膜を形成し、下層アンテナおよび下部電極がデザインされたフォトマスクを介してフォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法によってパターン形成する。
【0093】
その他の方法としては、PET基板上に感光性導電性ペーストを塗布し、下層アンテナおよび下部電極がデザインされたフォトマスクを用いてフォトリソグラフィ法によって直接パターン形成する。
【0094】
ただし、これらの方法の中でも、スパッタリングもしくは真空蒸着法によって成膜した金属膜を加工し、下部電極および下層アンテナに対応するパターンに加工する方法が好ましい。これらの方法を用いることで、平坦性が高く、厚みおよびパターン形状が均一な下部電極および下層アンテナを形成することができるため、FETのリーク率低減やFET特性ばらつきを低減できる。
【0095】
次に
図9(b)に示すように、ゲート電極2の上にゲート絶縁層3を形成する。ゲート絶縁層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
次に
図9(c)に示すように、ゲート絶縁層3の上にCNTを含む溶液を塗布して半導体層4を形成する。半導体層4の形成方法としては、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコート法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。中でも、インクジェット法、ディスペンサー法およびスプレー法からなる群より選ばれるいずれか一つであることが好ましい。さらに、原料の使用効率の観点から、インクジェット法がより好ましい。これらの塗布方法から、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて適切なものを選択できる。
【0097】
また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0098】
次に
図9(d)に示すように、ゲート絶縁層3および半導体層4の上に、上部電極に該当するソース電極5およびドレイン電極6を形成する。また、下層アンテナ11の上に上層アンテナ12を形成する。これらを、同時にまたは連続的に形成する。同時にとは、ソース電極5、ドレイン電極6および上層アンテナ12を一括で形成することである。連続的にとは、ソース電極5およびドレイン電極6、または上層アンテナ12の一方を先に形成し、続いて、他方を形成することである。これらの中でも、ソース電極5、ドレイン電極6および上層アンテナ12を一括で形成することが好ましい。
【0099】
これらの形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの公知技術を用いた方法や、有機成分および導電性粒子を含むペーストをスピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの公知の技術で絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い形成する方法などが挙げられるが、導通を取ることができれば特に制限されない。上部電極、上層アンテナをパターン状に形成する方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極および配線物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。また、インクジェットや印刷法を用いて直接パターンを形成してもよい。
【0100】
これらの方法の中でも、感光性導電性ペーストを塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターン形成することが好ましい。
【0101】
感光性導電性ペーストを用いて上層アンテナおよび上部電極を同時に形成する方法としては、(B-1)基板上に、導電体粒子と感光性有機成分とを含有する感光性導電性ペーストを用いて塗布膜を形成する成膜工程と、(B-2)上記塗布膜を、フォトリソグラフィ法によってパターン加工する工程と、を含むことが好ましい。より具体的には、基板上に感光性導電性ペーストを塗布し塗布膜を形成する工程と、塗布膜を露光する工程と、露光した塗布膜を現像する工程とを含み、さらに塗布膜をキュアすることで上層アンテナと上部電極に対応するパターンの導電性を同時に発現させる工程とを含むことが好ましい。
【0102】
基板上に感光性導電性ペーストを塗布し、塗布膜を形成する工程では、露光工程および現像工程で上層アンテナおよび上部電極に対応するパターンを形成するために必要な領域を塗布する方法や、上層アンテナに対応するパターン膜と露光工程および現像工程で上部電極に対応するパターンを形成するために必要な領域とを塗布する方法などがある。また、厚みを増やすために塗布膜の一部または全体を積層塗布しても構わない。
【0103】
基板上に感光性導電性ペーストを塗布する工程により上層アンテナに対応するパターンが形成された場合でも、上層アンテナパターンをさらに露光、現像することで、膜強度や導電性を向上させることが可能になる。
【0104】
また、TFTの下部電極と上部電極の位置合わせにおいては、感光性導電性ペーストを用いることで、下部電極をマスクとして利用し基材に対し感光性導電性ペーストの塗布膜がある面の裏側から露光するセルフアライメント方式によるフォトリソグラフィ法を用いることで高い位置合わせ精度で上部電極パターンを形成することが可能となる。
【0105】
感光性導電性ペーストは、少なくとも導電性粒子と感光性有機成分とを含有する。導電性ペーストは、必要な材料を混合した後、例えば、三本ローラー、ボールミル若しくは遊星式ボールミル等の分散機又は混練機を用いて製造される。
【0106】
(導電性粒子)
本発明で用いられる導電性ペーストが含有する導電性粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム、タングステン、モリブデン又は炭素等が挙げられる。中でも金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム及び炭素からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を含有する導電性粒子であることが好ましい。
【0107】
本発明に用いられる導電性成分においては、前記導電性成分が、銀粒子であることがより好ましい。前記導電性成分が銀粒子であることにより、導電性および安定性に優れる導電膜、導電パターンが得られやすくなる。
ましく、銀粒子が特に好ましい。
【0108】
(感光性有機成分)
感光性有機成分は、分子内に重合性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーを含むものであることが好ましい。重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基等のエチレン性不飽和基又はアクリルアミド基が挙げられる。
【0109】
(光重合開始剤・増感剤)
上記のような感光性有機成分を光反応によって光硬化させるために、導電性ペーストには、光重合開始剤が含まれることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤が挙げられるが、露光工程で用いる光によって適宜選択すればよい。
【0110】
また、導電性ペーストには、光重合開始剤と共に増感剤を使用することで感度を向上させ、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
【0111】
(溶剤)
感光性導電性ペーストは、粘度調整及び塗布膜の表面平滑性向上の観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。導電性ペースト粘度(ブルックフィールド型粘度計で3rpm測定した値)は、導電性粒子の沈降による塗布不良や液垂れ防止又は被覆性向上の観点から、10~100Pa・sが好ましく、10~50Pa・sがより好ましい。
【0112】
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸等、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、テルピネオール、3-メチル-3-メトキシブタノール、テキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0113】
(その他の成分)
導電性ペーストには、例えば、有機系若しくは無機系の顔料、ガラス粉末、フィラー、可塑剤、特殊ビニル系重合物若しくは特殊アクリル系重合物等のレベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤又は酸化防止剤等の添加剤が配合されていても構わない。
【0114】
以上説明した無線通信デバイスの製造方法によれば、回路部がボトムゲート構造を有する電界効果型トランジスタを備え、電界効果型トランジスタに含まれるゲート電極の形成と下層アンテナの形成と、ソース電極およびドレイン電極と上層アンテナの形成とをそれぞれ同時にまたは連続的に行うものであるので、電極と配線とを別々の工程で製造する場合と比べ、工程数の削減ができる。
【0115】
また、回路部とアンテナをフォトリソグラフィ法によってパターン形成するため、回路部とアンテナを別々に形成し貼り合わせを行う方法に比べ、回路部とアンテナの位置合わせ精度を向上させることができる。
【0116】
以上の無線通信デバイスの製造方法は、枚葉基板上に無線通信デバイスを製造する場合と、長尺の基板上に複数の無線通信デバイスをRtoR方式にて製造する場合とのいずれにも適用できる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0118】
(感光性ペーストの作製)
合成例1;化合物P1(感光性有機成分)
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、「EA」)/メタクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2-EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/アクリル酸(以下、「AA」)=20/40/20/5/15。
【0119】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2-EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P1を得た。
【0120】
合成例2;化合物P2(感光性有機成分)
共重合比率(質量基準):2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル3002A;共栄社化学(株)製)/2官能エポキシアクリレートモノマー(エポキシエステル70PA;共栄社化学(株)製)/GMA/St/AA=20/40/5/20/15。
【0121】
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエポキシエステル3002A、40gのエポキシエステル70PA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、化合物P2を得た。
【0122】
合成例3;化合物P3(感光性有機成分)
化合物P2のウレタン変性化合物
窒素雰囲気の反応容器中に、100gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、感光性成分P2を10g、3.5gのn-ヘキシルイソシアネートおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、ウレタン結合を有する化合物P3を得た。
【0123】
調製例1;感光性ペーストA
100mlクリーンボトルに、上記により得られた化合物P1を16g、化合物P3を4g、ライトアクリレートBP-4EA(共栄社化学(株)製)を2g、光重合開始剤OXE-01(BASFジャパン株式会社製)4g、酸発生剤SI-110(三新化学工業株式会社製)を0.6g、γ-ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)を10g入れ、自転-公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;(株)シンキー製)で混合し、感光性樹脂溶液1を34.6g(固形分78.5質量%)を得た。得られた感光性樹脂溶液1を8.0gと平均粒子径0.06μmのAg粒子42.0gを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、50gの感光性ペーストAを得た。
【0124】
調整例2;感光性ペーストB
クリーンボトルに、25.0gのアルカリ可溶性樹脂1の溶液(40質量%)、光重合開始剤として1.5gのイルガキュア(登録商標)OXE02(オキシムエステル系化合物;BASF社製)、5.5gのライトアクリレート(登録商標)PE-4A(共栄社化学社製)及び分散剤として2.0gのDISPERBYK(登録商標)140(ビックケミー・ジャパン株式会社製)(アミン価:146mgKOH/g)を入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE-310;(株)シンキー製)で混合して、感光性樹脂溶液2を得た。
【0125】
得られた感光性樹脂溶液2を8.0gと平均粒子径0.06μmのAg粒子42.0gを混ぜ合わせ、さらにDMEAを固形分比率が80質量%になるように加えた後に3本ローラー“EXAKT M-50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練することで、導電性ペーストBを得た。
【0126】
調整例3;感光性ペーストC
平均粒子径0.30μmのAg粒子を用いたこと以外は、調整例2と同様の方法で、感光性ペーストCを得た。
【0127】
調整例4:感光性ペーストD
平均粒子径0.50μmのAg粒子を用いたこと以外は、調整例2と同様の方法で、感光性ペーストCを得た。
【0128】
(半導体溶液の作製)
半導体溶液の作製では、まず、P3HT(アルドリッチ株式会社製、ポリ(3-ヘキシルチオフェン))を2.0mg含有するクロロホルム溶液(10ml)に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%)を1.0mg加え、氷冷しながら、超音波ホモジナイザー(東京理化器械株式会社製、VCX-500)を用いて出力20%で4時間超音波撹拌した。これにより、CNT分散液A11(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.96g/lのもの)を得た。
【0129】
つぎに、メンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いて、上記CNT分散液A11の濾過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。これによって得られた濾液に、o-DCB(和光純薬工業株式会社製)を5ml加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、これにより、溶媒をo-DCBで置換して、CNT分散液B11を得た。CNT分散液B11(1ml)に、o-DCBを3ml加え、これにより、半導体溶液A(溶媒に対するCNT複合体濃度が0.03g/lのもの)を得た。
【0130】
(ゲート絶縁層の作製例)
3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SucSi)13.12g(0.05モル)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(AcrSi)93.73g(0.40モル)およびフェニルトリメトキシシラン(PheSi)109.06g(0.55モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点146℃)215.91gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とメタノールからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0質量%のポリシロキサン溶液Aを得た。得られたポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、DPHA(商品名「KAYARAD」、日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を1.04g、OXE-01(商品名「イルガキュア」、BASF(株)製)を0.15gとPGMEA4.60gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ゲート絶縁層溶液A(固形分濃度24質量%)を得た。ゲート絶縁層材料溶液A中のDPHAの含有量は、ポリシロキサン60質量部に対して40質量部であった。また、ゲート絶縁層溶液A中のOXE-01の含有量は、ポリシロキサン60質量部に対して3.5質量部であった。
【0131】
(第2絶縁層の作成例)
ポリメチルメタクリレート(富士フィルム和光純薬株式会社製)2.5gをN,N-ジメチルホルムアミド7.5gに溶解し、ポリマー溶液Aを調製した。次に、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン(東京化成工業株式会社製)1gをN,N-ジメチルホルムアミド9.0gに溶解し、化合物溶液Aを調製した。ポリマー溶液A0.68gに化合物溶液A0.30gを添加し、第2絶縁層溶液Aを得た。
【0132】
(実施例1)
実施例1では、本発明の実施の形態1に係る無線通信デバイス(
図1参照)において、回路部が、ボトムゲート-トップコンタクト構造の電界効果型トランジスタを組み合わせてなるリングオシレータを有するタイプの無線通信デバイスを作製した。
【0133】
本実施例1の半導体装置の作製では、上述した実施の形態1に例示されるように、FETを形成後、一部のFETに対し第2絶縁層を形成することで、p型のFETとn型のFETとを含むインバータを形成し、このインバータを用いて、発振回路であるリングオシレータを作製した。
【0134】
図11は、本実施例1におけるリングオシレータの構成を示す模式平面図である。このリングオシレータ27は、インバータ26を直列に21段分接続することによって構成されるものとした。なお、
図11では、リングオシレータ27の構成を簡略に示すために、21個のインバータ26のうち、繰り返しの構成となるインバータ26の図示は省略している。また、これらのインバータ26を各々構成する複数組のFETは、配線(図示せず)によって接続される。
【0135】
具体的な無線通信デバイスの作製方法を、
図10を参照して説明する。まず、PETフィルム製の基板1(幅35mm、長さ120mm、膜厚50μm)上に、抵抗加熱法により、銅を全面に真空蒸着した。その上にフォトレジスト(商品名「LC100-10cP」、ローム・アンド・ハース(株)製)をスリット塗布で全面印刷し、100℃で4分、熱風乾燥炉にて加熱乾燥した。作製したフォトレジスト膜を、ゲート電極2および下層アンテナ11がデザインされたフォトマスクを介して、露光量40mJ/cm
2(波長365nm換算)で、全線露光を行った。フォトマスクにデザインされたゲート電極幅は50μmとした。露光した後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで水で1分間洗浄した。その後、混酸(商品名SEA-5、関東化学(株)製)で30秒間エッチング処理した後、水で30秒間洗浄した。フォトレジスト剥離液(商品名AZリムーバ100、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株)製)に2分間浸漬してレジストを剥離し、水で30秒間洗浄後、水滴をエアナイフで除去した。その後、80℃で60秒間、熱風乾燥炉にて加熱乾燥することで、下層アンテナ11とゲート電極2を形成した(
図10(a))。
【0136】
その後、ゲート絶縁層となるゲート絶縁層溶液Aをスピンコート塗布で印刷し、100℃で2分熱風乾燥炉にて加熱乾燥した。乾燥膜の上に、再度ゲート絶縁層溶液Aをスピンコート塗布で印刷し、100℃で2分熱風乾燥炉にて加熱乾燥した。作製したゲート絶縁層膜を、フォトマスクを介して、露光量80mJ/cm2(波長365nm換算)で、全線露光を行った。露光した後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、次いで水で1分間洗浄し、ゲート絶縁層からコンタクトホール部分の電極を露出させた。その後、IR乾燥炉にて窒素雰囲気下150℃で20分間熱処理することによって、膜厚1.5μmのゲート絶縁層3を形成した。
【0137】
上記のようにゲート絶縁層が形成された基板上において、ゲート電極に対する投影上に位置するゲート絶縁層上に、それぞれ100plの半導体溶液Aをインクジェット法で塗布し、IR乾燥炉で窒素気流下、150℃で30分間の熱処理を行うことによって半導体層4を形成した(
図10(c))。
【0138】
つぎに、上記ゲート絶縁層が形成されたPETフィルム製の基板上に感光性ペーストAをスクリーン印刷にて塗布し、熱風乾燥炉にて100℃で4分間プリベークを行った。その後、ソース電極5、ドレイン電極6および下層アンテナ11と完全に重なるように設計された上層アンテナ12がデザインされたフォトマスクを介して、露光量80mJ/cm
2(波長365nm換算)で全線露光を行った。露光した後、0.5%のNa
2CO
3溶液で30秒間現像し、超純水で60秒間洗浄後、IR乾燥炉にて150℃で10分間キュアを行った。これにより、ソース電極5、ドレイン電極6および上層アンテナ12を形成した(
図10(d))。ソース電極およびドレイン電極の幅は1000μmとし、これらの電極間の距離は20μmとした。形成された上層アンテナ12および下層アンテナ11を基板1の表面側および裏面側からそれぞれ観察し、上層アンテナと下層アンテナの重なり部の面積が100%であることを確認した。
【0139】
つぎに、上記半導体層が形成されたPETフィルム製の基板上に、第2絶縁層溶液A5μLを、一部の半導体層4上に、半導体層4を覆うようにドロップキャスト法で滴下した。その後、窒素気流下、110℃で30分熱処理して、第2絶縁層7を形成した(
図10(e))。第2絶縁層Xの厚みは20μmであった。
【0140】
得られた無線通信デバイスについて、リングオシレータ回路に電源電圧として5.0Vが印加された状態で、リングオシレータ回路の出力にオシロスコープ(Keysight Technology社製、DSOX6002A)を接続し、波形を観測し、リングオシレータ回路の発振動作を確認した。
【0141】
また、得られた無線通信デバイスについて、以下の[1]~[3]で説明する各評価を行った。[1]~[3]の結果を表1に示す。
【0142】
[1]膜厚の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察し、ゲート電極、下層アンテナ、上層アンテナについてそれぞれ任意の5箇所の厚みを計測し、平均値を算出した。
【0143】
[2]折り曲げ耐性の評価
図12を参照して説明する。無線通信デバイス30について、アンテナを形成した面上の中央部に直径30mmの金属円柱29を固定し、この円柱に沿って、円柱の抱き角0°(サンプルが平面の状態)の状態に置き(
図12(A)参照)、円柱への抱き角が180°(円柱で折り返した状態)となる範囲(
図12(B)参照)で、折り曲げ動作を行った。耐屈曲性は、曲げ動作前後のアンテナ、アンテナと回路部の接続部、回路内のリングオシレータを光学顕微鏡で観察し、剥がれ、断線の有無を確認し、以下の基準で評価を行った。
A(良好):折り曲げ動作を300回繰り返しても剥がれ、断線が見られない。
B(可):折り曲げ動作を100回繰り返しても剥がれ、断線が見られない。
C(不可):折り曲げ動作の繰り返しが100回未満で、剥がれ、断線が見られた。
【0144】
[3]FET特性の評価(電流値)
リングオシレータ回路から、p型FETを5個抽出し、ゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)-ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200-SCS型(ケースレーインスツルメンツ(株)製)を用い、大気下で測定した。Vg=+5V~-5Vに変化させたときのVsd=-5VにおけるVg=-5V時のIdの平均値を計測した。
【0145】
(実施例2)
実施例2では、ゲート電極および下層アンテナを形成する際に、抵抗加熱法により、銅を全面に真空蒸着する銅の厚みを変更した以外は実施例1と同様の方法で無線通信デバイスを作製した。得られた無線通信デバイスについて、リングオシレータ回路に電源電圧として5.0Vが印加された状態で、リングオシレータ回路の出力にオシロスコープ(Keysight Technology社製、DSOX6002A)を接続し、波形を観測し、リングオシレータ回路の発振動作を確認した。
【0146】
また、得られた無線通信デバイスについて、実施例1の[1]~[3]と同様の評価をした。評価結果を、表1に示す。
【0147】
(実施例3~5)
実施例3~5では、ソース電極、ドレイン電極および上層アンテナを形成する際に、感光性ペーストAのかわりに表1に記載の感光性ペーストを用いた以外は実施例2と同様の方法で作製した。得られた無線通信デバイスについて、リングオシレータ回路に電源電圧として5.0Vが印加された状態で、リングオシレータ回路の出力にオシロスコープ(Keysight Technology社製、DSOX6002A)を接続し、波形を観測し、リングオシレータ回路の発振動作を確認した。
【0148】
また、得られた無線通信デバイスについて、実施例1の[1]~[3]と同様の評価をした。評価結果を、表1に示す。
【0149】
【符号の説明】
【0150】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 第2絶縁層
11 下層アンテナ
12 上層アンテナ
25 半導体装置
26 インバータ
27 リングオシレータ
29 金属円柱
30 無線通信デバイス
101 アンテナ
102 回路部
103 接続配線
104 FET
105 p型FET
106 n型FET