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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】サスペンションフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B62D21/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021008084
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112307
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】望月 晋栄
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030480(JP,A)
【文献】特開2020-023198(JP,A)
【文献】特開2007-137377(JP,A)
【文献】特開2015-101324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるフレーム本体部と、該フレーム本体部の車幅方向両側部の車両後方側にそれぞれ配置され、前記フレーム本体部と車体とを繋ぐ左右一対のブレース部と、を備えたサスペンションフレーム構造において、
前記ブレース部は、車両前後方向に延びる底面部と、該底面部の車幅方向両側部から車両上方側にそれぞれ延びる内側壁部および外側壁部と、を有し、前記内側壁部と前記外側壁部との間隔が、前記車体の側から前記フレーム本体部の側に近づくにつれて広がるように形成されており、
前記内側壁部は、車両前後方向に延びる上辺部が車両前後方向に延びる下辺部よりも車幅方向内側に位置するとともに、前記上辺部と前記下辺部との間を繋ぐ傾斜面の車両上下方向の高さおよび車幅方向の幅が前記フレーム本体部の側に近づくほど増大するように形成されていることを特徴とするサスペンションフレーム構造。
【請求項2】
前記内側壁部は、前記上辺部から車幅方向内側に突出する内側フランジ部を有し、
前記外側壁部は、車両前後方向に延びる上辺部から車幅方向外側に突出する外側フランジ部を有し、
前記内側フランジ部の車幅方向の突出長が、前記外側フランジ部の車幅方向の突出長よりも長くなるように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項3】
前記ブレース部は、前記底面部の後部に設けられ前記車体に固定される車体固定部を有しており、車両側面視で前記車体固定部と重なる位置において、前記内側壁部および前記外側壁部のそれぞれの車両上下方向の高さが前記底面部の車幅方向の幅の1/4以上となるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンションフレーム構造。
【請求項4】
前記ブレース部は、
前記底面部の後部に設けられ前記車体に固定される車体固定部と、
前記底面部と前記内側壁部との角部に形成され車両前後方向に延びる内側ビード部と、
前記底面部と前記外側壁部との角部に形成され車両前後方向に延びる外側ビード部と、
前記内側ビード部の後端と前記外側ビードの後端とを繋ぐ後側ビード部と、を有し、
前記内側ビード部の後部、前記外側ビード部の後部および後側ビード部が、前記車体固定部を囲んでいる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のサスペンションフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントサスペンションが取り付けられるサスペンションフレームは、車体に連結されており、サスペンションからの荷重を受け止め、サスペンションを所定位置に保持する役割を持つ。従来のサスペンションフレーム構造として、例えば、特許文献1には、前記サスペンションフレームに相当にするサスペンションメンバが左右のスペーサを介して下部車体のサイドメンバに装着された構造が開示されている。この従来の構造におけるスペーサは、サイドメンバに固定するためのボルト孔を形成する部分から車両前方に延びる延伸部を有し、延伸部以外の少なくとも一部においてサスペンションメンバに溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-011533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の構造については、サスペンションフレーム(サスペンションメンバ)がサスペンションからの荷重を受けたときに生じるスペーサの変形によって、操縦安定性能やNVH(騒音、振動、ハーシュネス)性能が悪化してしまう可能性があった。
【0005】
具体的に、従来の構造において、サスペンションフレームがサスペンションから左右方向の荷重を受けた場合、荷重入力点の反対側のスペーサが曲げ変形する。また、サスペンションフレームがサスペンションから前後方向の荷重を受けた場合には、荷重入力点と同じ側にあるスペーサが曲げ変形する。このようなサスペンションからの荷重入力によるスペーサの曲げ変形が大きくなると、車両の走行中にサスペンションジオメトリーの変化が生じて操縦安定性能が悪化するとともに、振動入力の増加によるNVH性能の悪化を招くことになる。
【0006】
サスペンションフレームがサスペンションを効率よく保持するためには、上記のようなスペーサの曲げ変形を低減する必要がある。しかしながら、従来の構造におけるスペーサは剛性の不足により曲げ変形を十分に防ぐことができない虞があり、改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、サスペンションからの入力荷重に対して高い剛性を確保し、操縦安定性能およびNVH性能を向上させることができるサスペンションフレーム構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、車幅方向に延びるフレーム本体部と、該フレーム本体部の車幅方向両側部の車両後方側にそれぞれ配置され、前記フレーム本体部と車体とを繋ぐ左右一対のブレース部と、を備えたサスペンションフレーム構造を提供する。このサスペンションフレーム構造において、前記ブレース部は、車両前後方向に延びる底面部と、該底面部の車幅方向両側部から車両上方側にそれぞれ延びる内側壁部および外側壁部と、を有し、前記内側壁部と前記外側壁部との間隔が、前記車体の側から前記フレーム本体部の側に近づくにつれて広がるように形成されている。前記内側壁部は、車両前後方向に延びる上辺部が車両前後方向に延びる下辺部よりも車幅方向内側に位置するとともに、前記上辺部と前記下辺部との間を繋ぐ傾斜面の車両上下方向の高さおよび車幅方向の幅が前記フレーム本体部の側に近づくほど増大するように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るサスペンションフレーム構造によれば、ブレース部の剛性が高められ、サスペンションからの入力荷重に対してフレーム本体部の位置がずれ難くなるため、操縦安定性能およびNVH性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るサスペンションフレーム構造が適用された車両を左側斜め下方から見た斜視図である。
図2図1におけるサスペンションフレームを車両後側斜め上方から見た斜視図である。
図3図1におけるサスペンションフレームを車両後側斜め下方から見た斜視図である。
図4図2における右側のブレース部周辺を拡大して示す斜視図である。
図5図3における右側のブレース部周辺を拡大して示す斜視図である。
図6図4における右側のブレース部周辺を車幅方向内側から見た側面図である。
図7図5におけるA-A線断面図である。
図8図5におけるB-B線断面図である。
図9図5におけるC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1図9は、本発明の一実施形態に係るサスペンションフレーム構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で前方を示し、矢印U方向は車両上下方向で上方を示し、矢印L方向は車両幅方向で左方を示し、矢印R方向は車両幅方向で右方を示している。また、実施形態の説明における「左右」は、車両室内から前方を見たときの左右に対応している。
【0012】
本実施形態に係るサスペンションフレーム構造が適用された車両は、図1に示すように、車両前部に配置されているパワーユニットルームPの車両下方側にサスペンションフレーム1を有している。パワーユニットルームP内には、左右両側に車両前後方向へ延びる一対のフロントサイドメンバ2が配置されているとともに、サスペンションフレーム1の車両前方側に図示しない駆動装置(エンジンや電動モータ等)および駆動伝達装置などが設けられている。また、パワーユニットルームPの車両後方側には、図示しないダッシュパネルが設けられおり、該ダッシュパネルによってパワーユニットルームPと車両室Rとが区画されている。車両室Rのフロア部には、車両前後方向に延びる左右一対のフロアサイドメンバ3と、該フロアサイドメンバ3に接合されるなどしたフロアパネル4が設けられている。フロアサイドメンバ3およびフロアパネル4は、車体の一部を構成し、高い剛性を有している。
【0013】
サスペンションフレーム1は、図1図3に示すように、車幅方向に延びるフレーム本体部10と、該フレーム本体部10と車体とを繋ぐ左右一対のブレース部20と、を備えている。左右一対のブレース部20は、フレーム本体部10の車幅方向両側部の車両後方側にそれぞれ配置されている。ブレース部20は、前述した従来構造におけるスペーサに相当している。本実施形態では、左右のブレース部20により、フレーム本体部10と左右のフロアサイドメンバ3(車体)とが連結されている。
【0014】
以下、本実施形態のサスペンションフレーム1におけるフレーム本体部10およびブレース部20の詳細な構造について説明する。
【0015】
フレーム本体部10は、図2および図3に示すように、所定の前後方向長さを有し、車幅方向に延びている。フレーム本体部10は、車幅方向両端の前側部分から車両前方に突出している前側突出部11と、車幅方向両端の後側部分から車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜して延びている外側延長部12と、を備えている。左側の前側突出部11および外側延長部12には、図示しない左側のサスペンションアームが取り付けられる。また、右側の前側突出部11および外側延長部12には、図示しない右側のサスペンションアームが取り付けられる。サスペンションアームには、当該車両のフロントサスペンションが連結されている。フレーム本体部10は、サスペンションアームを介してフロントサスペンションを支持している。
【0016】
また、フレーム本体部10は、車両上下方向に所定の厚みを持ち、車両前方を臨む前壁面部13と、車両後方を臨む後壁面部14と、を有している。前壁面部13は、フレーム本体部10の上面15の前端から車両下方に突出し、左右の前側突出部11に亘って車幅方向に延びている。後壁面部14は、フレーム本体部10の上面15の後端から車両下方に突出し、左右の外側延長部12に亘って車幅方向に延びている。詳細な説明は省略するが、フレーム本体部10は、上面15を形成する上側部と、下面16を形成し図示しない機械部品が設置される下側部とによって構成されている。
【0017】
フレーム本体部10の左右の前側突出部11のそれぞれには、車体連結部材17が設けられている。車体連結部材17は、フレーム本体部10から車両上方に向かって延び、先端部分が車幅方向外側に向かって湾曲しており、該先端部分がフロントサイドメンバ2の下部に連結される(図1)。フレーム本体部10の左右の外側延長部12における車両後側部分のそれぞれには、左右一対のブレース部20の前端部が接合されている。
【0018】
左右一対のブレース部20のそれぞれは、図2および図3に示すように、車両前後方向に延びる底面部21と、該底面部21の車幅方向両側部から車両上方側にそれぞれ延びる内側壁部22および外側壁部23と、を有している。各々のブレース部20は、左右対称の構造になっている。このため、以下では右側のブレース部20について図4図9を参照しながら詳しく説明し、左側のブレース部20については説明を省略する。
【0019】
図4図6は、右側のブレース部20およびその周辺を拡大して示した図であって、図4が車両後側斜め上方から見た斜視図、図5が車両後側斜め下方から見た斜視図、図6が車幅方向内側から見た側面図である。また、図7図9は、右側のブレース部20の断面形状を示した図であって、図7図5のA-A線断面図、図8図5のB-B線断面図、図9図5のC-C線断面図である。
【0020】
ブレース部20は、図4および図5に示すように、内側壁部22と外側壁部23との間隔が、フロアサイドメンバ3(車体)の側からフレーム本体部10の側に近づくにつれて広がるように形成されている。すなわち、本実施形態のブレース部20においては、内側壁部22と外側壁部23との間隔が、車両後方側ほど相対的に狭く、車両前方側ほど相対的に広くなっている。
【0021】
ブレース部20の内側壁部22は、図4図8に示すように、車両前後方向にそれぞれ延びる上辺部22aおよび下辺部22bを有している。内側壁部22は、上辺部22aが下辺部22bよりも車幅方向内側に位置しているとともに、上辺部22aと下辺部22bとの間を繋ぐ傾斜面22cの車両上下方向の高さおよび車幅方向の幅がフレーム本体部10の側に近づくほど増大するように形成されている。換言すると、本実施形態における内側壁部22の傾斜面22cは、下辺部22bから車両上方側に向かう従い車幅方向内側に傾斜して延びており、下辺部22bから上辺部22aまでの距離(斜辺の長さ)が、車両後方側ほど相対的に短く、車両前方側ほど相対的に長くなっている。内側壁部22の前部分は、図4図6に示すように、フレーム本体部10の外側延長部12における後壁面の車幅方向内側部分に接合されている。なお、内側壁部22の前端上部は、フレーム本体部10の上面15まで延びて、該上面15に接合されていてもよい。
【0022】
内側壁部22の上辺部22aは、ブレース部20が固定されるフロアサイドメンバ3の下面部の形状に合わせて、車両側面視(図6)で概ね直線状に形成されている。また、内側壁部22は、上辺部22aから車幅方向内側に突出する内側フランジ部22dを有している。内側フランジ部22dの上面は、ブレース部20がフロアサイドメンバ3に固定されたときに該フロアサイドメンバ3の下面部に当接する。内側フランジ部22dの突出長は、外側壁部23の後述する外側フランジ部23dの突出長よりも長くなっている。具体的に、内側フランジ部22dの突出長は、例えば19mm以上とするのが好ましい。
【0023】
ブレース部20の外側壁部23は、図4図8に示すように、車両前後方向にそれぞれ延びる上辺部23aおよび下辺部23bを有している。外側壁部23は、車両上面視で、上辺部23aおよび下辺部23bが概ね重なるように配置されており、上辺部23aと下辺部23bの間を繋ぐ縦面23cが、車両前後方向および車幅方向に対して垂直に近い角度で形成されている。この縦面23cの車両上下方向の高さは、フレーム本体部10の側に近づくほど増大するように形成されている。換言すると、本実施形態における外側壁部23の縦面23cは、下辺部23bから車両上方に延びており、下辺部23bから上辺部23aまでの高さが、車両後方側ほど相対的に低く、車両前方側ほど相対的に高くなっている。外側壁部23の前端部分は、図4図6に示すように、フレーム本体部10の外側延長部12における後壁面の車幅方向外側端部に接合されている。
【0024】
外側壁部23の上辺部23aは、ブレース部20が固定されるフロアサイドメンバ3の下面部の形状に合わせて、車両側面視(図6)で概ね直線状に形成されている。また、外側壁部23は、上辺部23aから車幅方向外側に突出する外側フランジ部23dを有している。外側フランジ部23dの上面は、ブレース部20がフロアサイドメンバ3に固定されたときに該フロアサイドメンバ3の下面部に当接する。外側フランジ部23dの突出長は、内側壁部22の内側フランジ部22dの突出長よりも短くなっている。
【0025】
ブレース部20の底面部21は、図4および図5に示すように、内側壁部22の下辺部22bと外側壁部23の下辺部23bとの間に位置し、車幅方向の幅がフレーム本体部10の側に近づくほど広くなるように形成されている。底面部21の前端部21aは、図5および図9に示すように、フレーム本体部10の下面16に接合されている。
【0026】
底面部21の後部には、図4図5図8および図9に示すように、フロアサイドメンバ3(車体)に固定される車体固定部21bが設けられている。車体固定部21bは、例えば、底面部21を貫通するボルト孔を有している。ブレース部20は、車体固定部21bのボルト孔を用い、図示しないボスまたはブラケット等を介してフロアサイドメンバ3の下面部にボルトで固定される。また、底面部21における車幅方向の中央部分には、車両下方側に凸で車両前後方向に延びる凸形状部21cが設けられている。この凸形状部21cにより底面部21の剛性が高められている。
【0027】
ブレース部20における底面部21と内側壁部22との角部には、図5図7および図8に示すように、車両前後方向に延びる内側ビード部24が形成されている。また、底面部21と外側壁部23との角部にも、車両前後方向に延びる外側ビード部25が形成されている。本実施形態において、内側ビード部24および外側ビード部25は、車両下方側に凸となる形状を有している。内側ビード部24の後端と外側ビード部25の後端とは、後側ビード部26によって繋がれている。
【0028】
後側ビード部26は、図5および図9に示すように、底面部21の後端に沿って曲線状に延びており、車両下方側に凸となる形状を有している。後側ビード部26は、底面部21の車体固定部21bにおけるボルト孔の周りの固定座面の後半部を囲むように設けられている。つまり、本実施形態のブレース部20では、内側ビード部24および外側ビード部25と後側ビード部26とが連続して、車両下面視でU字状のビードが形成されている。このU字状のビードにおける内側ビード部24の後部、外側ビード部25の後部および後側ビード部26は、底面部21の車体固定部21bを囲んでいる。
【0029】
また、本実施形態におけるブレース部20は、車両側面視で底面部21の車体固定部21bと重なる位置(図5におけるB-B線の位置)において、図8に示すように、内側壁部22および外側壁部23のそれぞれの車両上下方向の高さYが、底面部21の車幅方向の幅Xの1/4以上となるように形成されている(Y≧X/4)。本実施形態において、底面部21の車幅方向の幅Xは、底面部21の車幅方向両端の間の長さ、換言すると、内側壁部22の下辺部22bと外側壁部23の下辺部23bとの間の距離に対応している。また、内側壁部22の車両上下方向の高さYは、内側ビード部24を含めた高さ、すなわち、内側壁部22の上辺部22aから内側ビード部24の突端までの距離に対応している。同様に、外側壁部23の車両上下方向の高さYは、外側壁部23の上辺部23aから外側ビード部25の突端までの距離に対応している。車両側面視で車体固定部21bと重なる位置において、内側壁部22および外側壁部23の高さYは略同じである。高さYの具体的な値としては、例えば17mm以上とするのが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態に係るサスペンションフレーム構造の作用について説明する。
上記のような構造を有するサスペンションフレーム1では、車両の左右のフロントサスペンションからの荷重が、サスペンションアームを介してフレーム本体部10の車幅方向両側部にそれぞれ入力される。フレーム本体部10への入力荷重は、フレーム本体部10の車両後方側に接合されている左右のブレース部20を介してフロアサイドメンバ3に伝達されるとともに、フレーム本体部10の前側突出部11に設けられている左右の車体連結部材17を介してフロントサイドメンバ2にも伝達される。
【0031】
ここで、フレーム本体部10から左右のブレース部20への荷重の伝達に着目すると、フレーム本体部10がサスペンションから左右方向の荷重を受けた場合、荷重入力点の反対側に位置するブレース部20に当該荷重が入力される。また、フレーム本体部10がサスペンションから前後方向の荷重を受けた場合には、荷重入力点と同じ側にあるブレース部20に当該荷重が入力される。
【0032】
このとき、ブレース部20の内側壁部22と外側壁部23との間隔がフロアサイドメンバ3(車体)の側からフレーム本体部10の側に近づくにつれて広がるように形成されていることで、ブレース部20は、フレーム本体部10から入力される荷重を効率良くフロアサイドメンバ3に伝達することができる。特に、本実施形態においては、内側壁部22の上辺部22aおよび外側壁部23の上辺部23aが車両側面視で概ね直線状に形成されているので、ブレース部20を伝わる荷重が上辺部22a,23aの特定の部分に集中することなくフロアサイドメンバ3に伝達される。
【0033】
また、本実施形態におけるブレース部20の内側壁部22は、車幅方向内側に傾斜した傾斜面22cを有し、その傾斜面22cの車両上下方向の高さおよび車幅方向の幅がフレーム本体部10の側に近づくほど増大するように形成されている。これにより、フレーム本体部10からブレース部20の内側壁部22に前後方向および左右方向のいずれの方向からの荷重が入力されても、該荷重を内側壁部22の傾斜面22cのせん断方向で受けることが可能である。このため、内側壁部22に変形が生じ難くなり、ブレース部20の剛性を向上させることができる。
【0034】
したがって、本実施形態のサスペンションフレーム1によれば、サスペンションからの入力荷重に対してフレーム本体部10の位置がずれ難くなるため、操縦安定性能およびNVH性能を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態のサスペンションフレーム1では、ブレース部20の内側壁部22における内側フランジ部22dの突出長が外側壁部23における外側フランジ部23dの突出長よりも長くなるように形成されている。これにより、内側壁部22を曲げ変形させようとする荷重に対する抗力が大きくなるので、ブレース部20の内側壁部22がより変形し難くなる。特に、内側フランジ部22dの突出長を19mm以上とすれば、上記抗力を効果的に増大させることが可能である。
【0036】
また、本実施形態におけるブレース部20では、車両側面視で車体固定部21bと重なる位置において、内側壁部22および外側壁部23のそれぞれの車両上下方向の高さYが底面部21の車幅方向の幅Xの1/4以上となるように形成されている。このように、車体固定部21bが設けられているブレース部20の後部において内側壁部22および外側壁部23の高さがY≧X/4の条件を満たしていることで、内側壁部22および外側壁部23がブレース部20の前後方向全体で十分な高さを有するようになるので、ブレース部20の車両上下方向への変形が生じ難くなる。特に、内側壁部22および外側壁部23の高さYを17mm以上とすれば、車両上下方向への変形を効果的に抑えることが可能である。これにより、操縦安定性能およびNVH性能を更に向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態のサスペンションフレーム1では、ブレース部20が内側ビード部24と外側ビード部25と後側ビード部26とを有しており、これらを連続させた上面視でU字状のビードによって内側壁部22と外側壁部23とが連結されている。これにより、内側壁部22および外側壁部23が変形し難くなり、ブレース部20のねじれ変形が生じ難くなるので、ブレース部20の剛性をより高めることができる。また、内側ビード部24の後部、外側ビード部25の後部および後側ビード部26が底面部21の車体固定部21bを囲んでいるので、車体固定部21bの周辺も変形し難くなっている。したがって、サスペンションからの入力荷重に対してフレーム本体部10の位置が更にずれ難くなるため、操縦安定性能およびNVH性能を一層向上させることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、ブレース部20によりフレーム本体部10とフロアサイドメンバ3とが連結される一例を説明したが、ブレース部20がフレーム本体部10とフロアパネル4とを連結するようにしてもよい。
【0039】
また、既述の実施形態では、内側ビード部24の後端と外側ビード部25の後端とが後側ビード部26によって繋がれる一例を示したが、後側ビード部26を設けずに内側ビード部24および外側ビード部25を不連続な状態で形成する、或いは、このようなビードを設けていないブレース部20とすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…サスペンションフレーム
2…フロントサイドメンバ
3…フロアサイドメンバ
4…フロアパネル
10…フレーム本体部
11…前側突出部
12…外側延長部
13…前壁面部
14…後壁面部
15…上面
16…下面
17…車体連結部材
20…ブレース部
21…底面部
21a…前端部
21b…車体固定部
21c…凸形状部
22…内側壁部
22a…上辺部
22b…下辺部
22c…傾斜面
22d…内側フランジ部
23…外側壁部
23a…上辺部
23b…下辺部
23c…縦面
23d…外側フランジ部
24…内側ビード部
25…外側ビード部
26…後側ビード部
P…パワーユニットルーム
R…車両室
X…底面部の幅
Y…内側壁部および外側壁部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9