(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ロボットシステムの制御方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2021011876
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】吉井 宏治
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-167831(JP,A)
【文献】特開2012-210675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記対象物に対して追従しながら作業を行うロボットと、を有するロボットシステムの制御方法であって、
前記搬送装置により搬送される前記対象物を複数回撮像して複数の画像を取得する画像取得ステップと、
前記複数の画像に基づいて前記対象物の搬送方向に直交する幅方向への周期的な往復変位を示す往復変位情報を得る往復変位情報取得ステップと、
前記往復変位情報に基づいて前記ロボットの位置指令を補正する補正ステップと、を含
み、
前記往復変位情報取得ステップでは、全ての前記画像の中から前記幅方向の離間距離が最も大きくなる2つの前記対象物を抽出し、抽出した2つの前記対象物の位置に基づいて前記往復変位情報を得ることを特徴とするロボットシステムの制御方法。
【請求項2】
前記補正ステップでは、前記往復変位情報と、前記対象物の前記搬送方向の位置と、を対応付けて前記位置指令を補正する請求項
1に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項3】
搬送ローラーの回転によりベルトを駆動することで前記搬送装置による搬送が行われ、
前記搬送ローラーの円周に基づいて前記往復変位情報が適切か否かを判断する判断ステップを含み、
前記判断ステップは、前記往復変位情報取得ステップの後で、かつ、前記補正ステップの前に行われる請求項1
または2に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項4】
前記画像取得ステップにおいて前記画像を撮像する範囲の前記搬送方向の長さは、前記搬送ローラーの円周以上である請求項
3に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項5】
前記画像取得ステップの後に行われ、
前記画像取得ステップで得られた前記画像の数が所定値よりも少ない場合にエラーを報知するエラー報知ステップを含む請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のロボットシステムの制御方法。
【請求項6】
対象物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記対象物に対して追従しながら作業を行うロボットと、を有するロボットシステムの制御方法であって、
前記搬送装置により搬送される前記対象物を複数回撮像して複数の画像を取得する画像取得ステップと、
前記複数の画像に基づいて前記対象物の搬送方向に直交する幅方向への周期的な往復変位を
有する前記対象物の搬送軌道を含む往復変位情報を得る往復変位情報取得ステップと、
前記往復変位情報に基づいて前記ロボットの位置指令を補正する補正ステップと、を含
み、
前記往復変位情報取得ステップでは、前記搬送軌道の振幅と、前記搬送軌道の周期とを求めることを特徴とするロボットシステムの制御方法。
【請求項7】
対象物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記対象物に対して追従しながら作業を行うロボットと、
前記搬送装置により搬送される前記対象物を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された複数の画像に基づいて前記対象物の搬送方向に直交する幅方向への周期的な往復変位を示す往復変位情報を得、前記往復変位情報に基づいて前記ロボットの位置指令を補正する制御装置と、を有
し、
前記制御装置は、全ての前記画像の中から前記幅方向の離間距離が最も大きくなる2つの前記対象物を抽出し、抽出した2つの前記対象物の位置に基づいて前記往復変位情報を得ることを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムの制御方法およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルトコンベア等の搬送装置によって搬送されるワークをカメラで撮像し、その撮像結果と搬送装置の搬送速度とに基づいて、搬送装置によって搬送されるワークがピッキング装置によってピッキングされ得るピッキング予測位置および当該位置でのワークの姿勢を算出するロボットの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のロボットの制御方法では、ピッキング予測位置および当該位置でのワークの姿勢しか算出しない。そのため、搬送装置で搬送されるワークをピッキング予測位置においてピックアップするといった瞬間的な作業を行う場合はよいが、例えば、搬送装置で搬送されるワークに追従しながら連続的な作業を行う場合には、各時刻によるワークの位置や姿勢が不明となり、その作業を精度よく行うことができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットシステムの制御方法は、対象物を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記対象物に対して追従しながら作業を行うロボットと、を有するロボットシステムの制御方法であって、
前記搬送装置により搬送される前記対象物を複数回撮像して複数の画像を取得する画像取得ステップと、
前記複数の画像に基づいて前記対象物の搬送方向に直交する幅方向への周期的な往復変位を示す往復変位情報を得る往復変位情報取得ステップと、
前記往復変位情報に基づいて前記ロボットの位置指令を補正する補正ステップと、を含む。
【0006】
本発明のロボットシステムは、対象物を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記対象物に対して追従しながら作業を行うロボットと、
前記搬送装置により搬送される前記対象物を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された複数の画像に基づいて前記対象物の搬送方向に直交する幅方向への周期的な往復変位を示す往復変位情報を得、前記往復変位情報に基づいて前記ロボットの位置指令を補正する制御装置と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
【
図3】ロボットシステムの制御工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の制御工程を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットシステムの制御方法およびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1は、好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成図である。
図2は、ワークの搬送を示す平面図である。
図3は、ロボットシステムの制御工程を示すフローチャートである。
図4は、
図3の制御工程を詳細に示すフローチャートである。
【0010】
図1に示すロボットシステム100は、ロボット200と、撮像部300と、制御装置400と、搬送装置600と、を有する。ロボットシステム100では、搬送装置600が対象物であるワークWを搬送方向Aに沿って搬送し、制御装置400が撮像部300で取得される画像に基づいてワークWの搬送状況を検出し、ロボット200がワークWの搬送状況に基づいて搬送中のワークWに対して追従しながら作業を行う。ワークWに対して行われる作業としては、特に限定されず、例えば、穴あけ、他の部材との接続(挿入、ねじ止め、螺号等)、洗浄、検査等が挙げられる。以下では、ワークWに形成された穴W1に挿入物Qを挿入する作業について代表して説明する。また、ワークWとしては、例えば、プリンターや自動車のような工業製品またはこれらの部品等、ロボット200による作業が可能なあらゆる物体が挙げられる。
【0011】
ロボット200は、床に固定されたベース230と、ベース230に支持されたマニピュレーター220と、マニピュレーター220に支持されたエンドエフェクター210と、を有する。マニピュレーター220は、複数のアームが回動自在に連結されたロボティックアームであり、本実施形態では6つの関節J1~J6を備える6軸アームである。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。ただし、マニピュレーター220としては、上述した挿入作業が可能であれば特に限定されない。
【0012】
マニピュレーター220の先端部すなわち関節J6にはメカニカルインターフェイスを介してエンドエフェクター210が装着されている。エンドエフェクター210は、一対の爪部211、212を有し、一対の爪部211、212が開閉することによって挿入物Qを把持、開放する。ただし、エンドエフェクター210としては、挿入物Qを把持、開放することができれば、特に限定されず、例えば、エアチャック、電磁チャック等によって挿入物Qを吸着把持することのできる構成であってもよい。
【0013】
また、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6には、それぞれ、モーターM1、M2、M3、M4、M5、M6と、モーターM1、M2、M3、M4、M5、M6の回転量を検出するエンコーダーE1、E2、E3、E4、E5、E6と、が設置されている。また、エンドエフェクター210には、一対の爪部211、212を開閉するモーターM7と、モーターM7の回転量を検出するエンコーダーE7と、が設置されている。制御装置400は、ロボットシステム100の運転中、エンコーダーE1~E6の出力が示す関節J1~J6の回転角度およびエンコーダーE7の出力が示す爪部211、212の離間距離と図示しないホストコンピューターから送られる位置指令とを一致させるフィードバック制御を実行する。これにより、ロボット200に位置指令に応じた作業を行わせることができる。
【0014】
搬送装置600は、ベルトコンベヤーであり、ベルト620と、ベルト620を送る搬送ローラー630と、搬送ローラー630を駆動する図示しないモーターと、搬送ローラー630の回転量に応じた信号を制御装置400に出力する搬送量センサー640と、を有する。制御装置400は、ロボットシステム100の運転中、搬送量センサー640の出力が示すワークWの搬送速度と制御目標である目標搬送速度とを一致させるフィードバック制御を実行する。これにより、ワークWを所望の速度で安定して搬送することができる。
【0015】
撮像部300は、搬送装置600の上方からワークを撮像し、撮像した画像を制御装置400に出力するカメラである。撮像部300の撮像エリアEは、ロボット200の作業エリアよりも搬送方向Aの上流側に位置する。撮像部300は、
図1中の破線で示すように、ベルト620上を搬送されるワークWを含む画角を有する。撮像部300から出力される画像における位置は、制御装置400によって搬送経路における位置と関連付けられる。したがって、撮像部300の画角内にワークWが存在する場合、撮像部300の画像内におけるワークWの位置に基づいてワークWの座標を特定することができる。
【0016】
制御装置400は、ロボット200、撮像部300および搬送装置600の駆動をそれぞれ制御する。このような制御装置400は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。なお、制御装置400の構成要素の一部または全部は、ロボット200の筐体の内側に配置されてもよい。また、制御装置400は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。
【0017】
以上、ロボットシステム100の構成について簡単に説明した。次に、制御装置400によるロボットシステム100の制御方法を説明する。
【0018】
ここで、搬送装置600は、ワークWが搬送方向Aに沿って直線的に搬送されるように設計されており、ロボット200の位置指令もこれを前提として作成される。しかしながら、実機においては、種々の要因により、
図2に示すように、ワークWは、正弦曲線を描く搬送軌道D上を搬送される場合がある。つまり、ワークWは、搬送方向Aに直交する幅方向Bに向けて周期的に往復変位(蛇行)しながら搬送方向Aに沿って搬送される場合がある。ワークWが正弦曲線状の搬送軌道D上を搬送される場合、ワークWが搬送方向Aに沿って直線的に搬送されることを前提とした位置指令に基づいてロボット200の駆動を制御すると、ワークWに対して精度のよい作業を行うことができないおそれがある。
【0019】
そこで、制御装置400は、ワークWに対する作業を行う前に、ワークWの搬送軌道Dを検出し、検出した搬送軌道Dに基づいてロボット200の位置指令を補正し、補正した位置指令に基づいてロボット200の駆動を制御する。これにより、搬送軌道Dに沿って搬送されるワークWに対してスムーズかつ精度よく作業を行うことができる。
【0020】
なお、ワークWが幅方向Bに向けて周期的に往復変位(以下、単に「幅方向Bへの変位」とも言う。)する要因としては、種々考えられるが、その中でも特に搬送ローラー630に起因したものが大きい。そのため、以下では、搬送ローラー630に起因してワークWの幅方向Bへの変位が生じる場合について代表して説明する。
【0021】
搬送ローラー630は、ベルト620をスムーズに搬送するために円柱形に設計されるが、その形成精度によっては、例えば、全体形状が円柱からずれる場合がある。搬送ローラー630の形状が円柱からずれると、そのズレに起因して、搬送ローラー630の回転によってベルト620が幅方向Bに周期的に往復変位する場合がある。このように、ベルト620自体が幅方向Bに周期的に往復変位することにより、ベルト620上に載置されたワークWの幅方向Bへの変位が生じる。また、搬送ローラー630の回転軸が幅方向Bに対して傾いていたり、搬送ローラー630の回転軸が中心軸に対して傾いていたりしても、同様の現象が生じる場合がある。
【0022】
以下、制御装置400によるロボットシステム100の制御方法について、
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、制御装置400によるロボットシステム100の制御方法は、画像取得ステップS1と、エラー報知ステップS2と、往復変位情報取得ステップS3と、判断ステップS4と、補正ステップS5と、作業ステップS6と、を含む。以下、これら各ステップについて、
図4に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0023】
<画像取得ステップS1>
搬送装置600によるワークWの搬送が開始されると、ワークWが撮像エリアEを通過する間、ワークWを撮像部300によって所定のフレームレートで連続撮像し、ワークWが写った複数の画像Gを取得する。画像Gの数は、特に限定されないが、多い程好ましい。画像Gの数が多い程、短い時間間隔で各時刻におけるワークWの座標を知ることができる。そのため、後の往復変位情報取得ステップS3において、搬送軌道Dを精度よく検出することができる。
【0024】
なお、必要な画像Gの枚数をX[枚]とし、搬送ローラー630の直径をR[mm]とし、円周率をπとし、搬送装置600の搬送方向AへのワークWの搬送速度をV[mm/s]とし、撮像部300のフレームレートをF[frame/s]としたとき、X<F×π×R/Vなる式から搬送速度Vを設定することができる。
【0025】
ここで、
図1に示すように、撮像エリアEの搬送方向Aの長さLは、搬送ローラー630の円周以上である。つまり、L≧π×Rである。前述したように、ワークWの幅方向Bへの変位は、搬送ローラー630に起因したものである。そのため、搬送軌道Dの周期fは、搬送ローラー630の1周分すなわち円周に相当する。したがって、撮像エリアEの長さLを搬送ローラー630の円周以上とすることにより、撮像エリアE内に1周期以上の搬送軌道Dを含ませることができる。その結果、往復変位情報取得ステップS3において、搬送軌道Dを精度よく検出することができる。ただし、長さLとしては、特に限定されず、搬送ローラー630の円周未満であってもよい。つまり、L<π×Rであってもよい。
【0026】
<エラー報知ステップS2>
エラー報知ステップS2では、画像取得ステップS1で得られた画像Gの数が所定値よりも少ない場合にエラーを報知する。まず、画像取得ステップS1で取得した画像Gの数が所定値以上であるかを判断する。なお、前記所定値は、使用者等によって事前に制御装置400に記憶される。画像Gの数が所定値以上である場合、次の往復変位情報取得ステップS3に移行する。一方、画像Gの数が所定値未満である場合、その旨を使用者に対して「エラー」として報知する。そして、往復変位情報取得ステップS3、判断ステップS4および補正ステップS5を飛ばして作業ステップS6に移行する。使用者に対してエラーを報知することにより、使用者は、搬送軌道Dを検出するのに必要な画像Gの数が足りていないことを容易に気付くことができる。なお、報知方法としては、特に限定されず、例えば、モニターに表示して報知してもよいし、音声や警告音で報知してもよいし、警告灯を点灯、点滅させて報知してもよい。
【0027】
<往復変位情報取得ステップS3>
往復変位情報取得ステップS3では、画像取得ステップS1で取得した画像Gに基づいてワークWの搬送軌道Dを算出し、搬送軌道Dを含む往復変位情報Jを生成する。
【0028】
具体的には、まず、全画像Gから各時刻におけるワークWの座標を求め、求めた座標に基づいてワークWの幅方向Bへの変位の振幅hと周期fとを算出し、算出した振幅hおよび周期fから搬送軌道Dを算出し、往復変位情報Jを生成する。振幅hおよび周期fの算出方法としては、特に限定されない。本実施形態では、まず、全ての画像Gの中から幅方向Bの離間距離が最も大きくなる2つのワークWを抽出する。言い換えると、全ての画像Gの中から最も幅方向Bの一方側に位置するワークWと最も幅方向Bの他方側に位置するワークWとを抽出する。次に、抽出した2つのワークWの座標に基づいて振幅hと周期fとを算出する。振幅hは、抽出した2つのワークWの幅方向Bの離間距離の半分として算出することができ、周期fは、抽出した2つのワークWの搬送方向Aの離間距離の2倍として算出することができる。そして、算出した振幅hおよび周期fから搬送軌道Dを算出し、往復変位情報Jを生成する。このような方法によれば、簡単な演算で往復変位情報Jを得ることができる。
【0029】
<判断ステップS4>
判断ステップS4では、搬送ローラー630の円周に基づいて往復変位情報取得ステップS3にて生成した往復変位情報Jが適切か否かを判断する。前述したように、ワークWの幅方向Bへの変位は、搬送ローラー630に起因したものであり、搬送軌道Dの周期fは、搬送ローラー630の円周とほぼ一致する。そのため、仮に、周期fと搬送ローラー630の円周との間に大きな乖離があれば、搬送軌道Dが搬送ローラー630に起因したものでない、あるいは、その算出過程に誤りがある、と判断することができる。
【0030】
したがって、判断ステップS4では、搬送ローラー630の円周と搬送軌道Dの周期fとを比較し、若干のばらつきを考慮した上で、周期fが搬送ローラー630の円周に対して所定範囲内、本実施形態では±5%以内に収まっているか否かを判定する。なお、ばらつきの考慮は、適宜設定すればよい。周期fが所定範囲内であれば、搬送軌道Dは、搬送ローラー630に起因した適切なものであると判断し、次の補正ステップS5に移行する。一方で、周期fが所定範囲外であれば、搬送軌道Dは、搬送ローラー630に起因しない不適切なものであると判断し、補正ステップS5を飛ばして作業ステップS6に移行する。
【0031】
判断ステップS4を行うことにより、例えば、突発的に生じたワークWの幅方向Bへの変位等、搬送ローラー630に起因しない変位を除外することができる。また、往復変位情報取得ステップS3での誤算出をやり直すこともできる。そのため、後の補正ステップS5において、適切な往復変位情報Jに基づいて位置指令を補正することができる。
【0032】
<補正ステップS5>
補正ステップS5では、往復変位情報JとワークWの搬送方向Aにおける位置とを対応付けて位置指令を補正する。具体的には、
図2に示すように、位置指令に対して、ワークWの搬送方向Aにおける位置p1、p2、p3、…pn毎に、その位置における振幅h1、h2、h3、…hn分だけロボット200の軌道を幅方向Bにずらす補正を行う。これにより、ワークWが搬送方向Aに直線的に搬送されることを前提にして生成された位置指令が、ワークWが搬送軌道Dに沿って搬送されることを前提とした位置指令に補正される。このような方法によれば、位置指令を精度よく補正することができる。
【0033】
<作業ステップS6>
作業ステップS6では、補正後の位置指令に基づいてロボット200の駆動を制御することによりワークWに対して作業を行う。これにより、搬送軌道Dに沿って搬送されるワークWに対してスムーズかつ正確な作業を行うことができる。ただし、エラー報知ステップS2でエラーを報知した場合および判断ステップS4で往復変位情報Jが不適切と判断された場合は、往復変位情報Jが得られていないため、位置指令を補正することなく、そのままの位置指令に基づいてロボット200の駆動を制御することによりワークWに対して作業を行う。
【0034】
なお、始めのワークWに対する作業時に位置指令を補正すれば、その後のワークWに対する作業時においても、同じ位置指令を繰り返し使用することができる。そのため、本実施形態では、所定数のワークWに対する作業を終えるまでは、補正後の位置指令を繰り返し使用する。また、エラー報知ステップS2でエラーを報知した場合および判断ステップS4で往復変位情報Jが不適切と判断された場合は、新たなワークWが搬送される度に位置指令が補正されるまで画像取得ステップS1からやり直せばよい。
【0035】
以上、ロボットシステム100およびロボットシステム100の制御方法について説明した。このようなロボットシステム100の制御方法は、前述したように、対象物であるワークWを搬送する搬送装置600と、搬送装置600により搬送されるワークWに対して追従しながら作業を行うロボット200と、を有するロボットシステム100の制御方法であって、搬送装置600により搬送されるワークWを複数回撮像して複数の画像Gを取得する画像取得ステップS1と、複数の画像Gに基づいてワークWの搬送方向Aに直交する幅方向Bへの周期的な往復変位を示す往復変位情報Jを得る往復変位情報取得ステップS3と、往復変位情報Jに基づいてロボット200の位置指令を補正する補正ステップS5と、を含む。これにより、幅方向Bに変位しながら搬送方向Aに搬送されるワークWに対して精度のよい作業を行うことができる。
【0036】
また、前述したように、往復変位情報取得ステップS3では、全ての画像Gの中から幅方向Bの離間距離が最も大きくなる2つのワークWを抽出し、抽出した2つのワークWの位置に基づいて往復変位情報Jを得る。このような方法によれば、簡単な演算で往復変位情報Jを得ることができる。
【0037】
また、前述したように、補正ステップS5では、往復変位情報Jと、ワークWの搬送方向Aの位置と、を対応付けて位置指令を補正する。これにより、位置指令を精度よく補正することができる。
【0038】
また、前述したように、ロボットシステム100の制御方法では、搬送ローラー630の回転によりベルト620を駆動することで搬送装置600による搬送が行われる。また、ロボットシステム100の制御方法は、搬送ローラー630の円周に基づいて往復変位情報が適切か否かを判断する判断ステップS4を含み、判断ステップS4は、往復変位情報取得ステップS3の後で、かつ、補正ステップS5の前に行われる。これにより、不適切な往復変位情報Jによって位置指令が補正されてしまうことを抑制することができる。
【0039】
また、前述したように、画像取得ステップS1において画像を撮像する範囲である撮像エリアEの搬送方向Aの長さLは、搬送ローラー630の円周以上である。これにより、撮像エリアE内において、1周期以上の搬送軌道Dを発生させることができる。そのため、往復変位情報Jをより正確に取得することができる。
【0040】
また、前述したように、ロボットシステム100の制御方法は、画像取得ステップS1の後に行われ、画像取得ステップS1で得られた画像Gの数が所定値よりも少ない場合にエラーを報知するエラー報知ステップS2を含む。これにより、使用者は、画像Gの数が足りていないことを容易に気付くことができる。
【0041】
また、前述したように、ロボットシステム100は、対象物であるワークWを搬送する搬送装置600と、搬送装置600により搬送されるワークWに対して追従しながら作業を行うロボット200と、搬送装置600により搬送されるワークWを撮像する撮像部300と、撮像部300により撮像された複数の画像Gに基づいてワークWの搬送方向Aに直交する幅方向Bへの周期的な往復変位を示す往復変位情報Jを得、往復変位情報Jに基づいてロボットの位置指令を補正する制御装置400と、を有する。これにより、幅方向Bに変位しながら搬送方向Aに搬送されるワークWに対して精度のよい作業を行うことができる。
【0042】
以上、本発明のロボットシステムの制御方法およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0043】
また、前述した実施形態では、ロボット200が床に固定され、マニピュレーター220の駆動によってワークWに追従させているが、これに限定されず、例えば、ベース230が無人搬送車(AGV)等の移動部に固定され、当該移動部が搬送装置600によって搬送されるワークWと並走することにより、ワークWに対して作業を行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
100…ロボットシステム、200…ロボット、210…エンドエフェクター、211…爪部、212…爪部、220…マニピュレーター、230…ベース、300…撮像部、400…制御装置、600…搬送装置、620…ベルト、630…搬送ローラー、640…搬送量センサー、A…搬送方向、B…幅方向、D…搬送軌道、E…撮像エリア、E1…エンコーダー、E2…エンコーダー、E3…エンコーダー、E4…エンコーダー、E5…エンコーダー、E6…エンコーダー、E7…エンコーダー、G…画像、J…往復変位情報、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、M1…モーター、M2…モーター、M3…モーター、M4…モーター、M5…モーター、M6…モーター、M7…モーター、L…長さ、Q…挿入物、S1…画像取得ステップ、S2…エラー報知ステップ、S3…往復変位情報取得ステップ、S4…判断ステップ、S5…補正ステップ、S6…作業ステップ、W…ワーク、W1…穴、f…周期、h…振幅、h1…振幅、h2…振幅、h3…振幅、hn…振幅、p1…位置、p2…位置、p3…位置、pn…位置