(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】歩隔計測装置、計測システム、歩隔計測方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240925BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20240925BHJP
A63B 71/06 20060101ALI20240925BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61B5/11 230
G01S15/10
A63B71/06 M
A63B69/00 C
(21)【出願番号】P 2021012549
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 浩司
【審査官】喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】特許第6307673(JP,B1)
【文献】特許第6783013(JP,B1)
【文献】特開2016-137228(JP,A)
【文献】特開2006-167001(JP,A)
【文献】重道 温 Ataka SHIGEMICHI,加速度センサを用いた無拘束三次元足軌跡の計測の試み Trial measurement of unrestraint three-dimensional foot track by using acceleration sensor,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.106 No.490 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2007年01月19日,第106巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、前記ユーザの両足間距離を計算する距離計算手段と、
前記ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、前記センサの高さを計算する高さ計算手段と、
同一のタイミングで計測された前記両足間距離と前記センサの高さとを用いて、前記ユーザの歩隔を計算する歩隔計算手段とを備える歩隔計測装置。
【請求項2】
前記距離計算手段は、
第1の足に装着された前記超音波送受信装置に含まれる超音波送信器から送信された送信超音波の送信時刻と、前記第1の足に装着された前記超音波送受信装置に含まれる超音波受信器によって受信された前記送信超音波の反射波の受信時刻とを用いて、前記送信時刻に対応付けられた前記両足間距離を計算し、
前記歩隔計算手段は、
前記送信時刻に対応付けられた前記両足間距離と、第2の足に装着された前記センサによって前記送信時刻に計測された前記センサデータに基づいて計算された前記センサの高さとを用いて、前記ユーザの歩隔を計算する請求項1に記載の歩隔計測装置。
【請求項3】
前記距離計算手段は、
第1の足に装着された前記超音波送受信装置に含まれる超音波送信器から送信された送信超音波の送信時刻と、第2の足に装着された前記超音波送受信装置に含まれる超音波受信器によって受信された前記送信超音波の反射波の受信時刻とを用いて、前記受信時刻に対応付けられた前記両足間距離を計算し、
前記歩隔計算手段は、
前記受信時刻に対応付けられた前記両足間距離と、前記第2の足に装着された前記センサによって前記受信時刻に計測された前記センサデータに基づいて計算された前記センサの高さとを用いて、前記ユーザの歩隔を計算する請求項1に記載の歩隔計測装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の歩隔計測装置と、
ユーザの両足の各々に配置され、前記ユーザの歩行に応じて空間加速度および空間角速度を計測し、計測された前記空間加速度および前記空間角速度に基づくセンサデータを生成するとともに、前記ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置を制御し、前記超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを生成し、生成された前記センサデータおよび前記伝播データを前記歩隔計測装置に送信するデータ取得装置とを備える計測システム。
【請求項5】
前記歩隔計測装置は、
前記センサデータに基づいて前記ユーザの歩行における歩行パラメータを検出し、前記歩行パラメータが検出されたタイミングに応じて前記データ取得装置を制御する計測制御手段を備える請求項4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記計測制御手段は、
前記データ取得装置によって生成された前記センサデータに含まれる空間加速度や空間角速度に関するパラメータの時系列データに基づいて立脚中期を検出し、
前記立脚中期が検出された方の足に装着された前記超音波送受信装置から超音波を送信させるように前記データ取得装置を制御する請求項5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記計測制御手段は、
前記ユーザの両足に装着された前記超音波送受信装置から超音波を送信させ、一方の足に装着された前記超音波送受信装置から超音波が送信されるタイミングを、他方の足に装着された前記超音波送受信装置から超音波が送信されるタイミングに近づけるように前記データ取得装置を制御することによって、前記ユーザの両足に装着された前記データ取得装置の時刻を同期させる請求項5または6に記載の計測システム。
【請求項8】
前記ユーザの両足の各々に装着され、超音波の送受信方向を足の内側に向けて配置された超音波送受信装置を備える請求項4乃至7のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項9】
コンピュータが、
ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、前記ユーザの両足間距離を計算し、
前記ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、前記センサの高さを計算し、
同一のタイミングで計測された前記両足間距離と前記センサの高さとを用いて、前記ユーザの歩隔を計算する歩隔計測方法。
【請求項10】
ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、前記ユーザの両足間距離を計算する処理と、
前記ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、前記センサの高さを計算する処理と、
同一のタイミングで計測された前記両足間距離と前記センサの高さとを用いて、前記ユーザの歩隔を計算する処理とをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行パラメータを計測する歩隔計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアへの関心の高まりから、歩行の特徴を含む歩容を計測し、計測された歩容に応じた情報をユーザに提供するサービスが注目されている。歩行に関するデータから、歩隔や歩幅、足角などの歩行パラメータを検出できれば、歩容に応じたサービスを提供できる。例えば、歩行パラメータの一つである歩隔は、歩行者の状態の指標となる。そのため、日常の歩行における歩隔を計測できれば、その歩行者の状態に応じた適切なサービスを提供できる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、歩行時や走行時における二肢の間隔を計測するシステムについて開示されている。特許文献1には、超音波を用いた非接触式の間隔計測器を用いて、二肢の間隔(両足間距離とも呼ぶ)を計測する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法では、一方の足に装備された超音波送波部から発せられた超音波を、もう一方の足に装備された受波部で受波し、超音波の伝播時間に基づいて両足間距離を算出する。特許文献1の手法によれば、歩行時や走行時において、一方の足に装備された超音波送波部ともう一方の足に装備された受波部との間隔を、両足間距離として計測できる。しかしながら、特許文献1の手法では、歩行時や走行時における両足間距離は計測できるものの、歩隔を計測することはできなかった。
【0006】
本開示の目的は、日常の歩行時における歩隔を計測できる歩隔計測装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の歩隔計測装置は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算する距離計算部と、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算する高さ計算部と、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する歩隔計算部とを備える。
【0008】
本開示の一態様の歩隔計測方法においては、コンピュータが、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算し、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算し、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算する処理と、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算する処理と、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、日常の歩行時における歩隔を計測できる歩隔計測装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る計測システムが備える超音波送受信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る計測システムが備えるデータ取得装置、超音波送信器、および超音波受信器の配置例を示すブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る計測システムにおいて設定される座標系について説明するための概念図である。
【
図5】第1の実施形態に係る計測システムにおいて適用される人体面について説明するための概念図である。
【
図6】右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。
【
図7】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置等の構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】第1の実施形態に係る計測システムの超音波送受信装置から送受信される超音波のパターンの一例について説明するための概念図である。
【
図9】第1の実施形態に係る計測システムの超音波送受信装置から送受信される超音波のパターンの別の一例について説明するための概念図である。
【
図10】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置等の構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置による歩隔の計算方法について説明するための概念図(上面図)である。
【
図12】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置による歩隔の計算方法について説明するための概念図(背面図)である。
【
図13】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置によって計測された歩隔に関する情報の表示例について説明するための概念図である。
【
図14】第1の実施形態に係る計測システムの超音波送受信装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図15】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置による伝播データの生成の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図16】第1の実施形態に係る計測システムのデータ取得装置によるセンサデータの生成の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図17】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図18】第1の実施形態に係る計測システムの歩隔計測装置による歩隔計算処理の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図19】第2の実施形態に係る計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図20】第2の実施形態に係る計測システムが備える超音波送受信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図21】第2の実施形態に係る計測システムが備えるデータ取得装置、超音波送信器、および超音波受信器の配置例を示すブロック図である。
【
図22】第2の実施形態に係る計測システムが備える歩隔計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】第2の実施形態に係る計測システムが備えるデータ取得装置の時刻を同期させる同期制御について説明するための概念図である。
【
図24】第2の実施形態に係る計測システムが備える歩隔計測装置による同期制御処理について説明するためのフローチャートである。
【
図25】第3の実施形態に係る歩隔計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図26】各実施形態の歩隔計測装置を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る計測システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施形態の計測システムは、加速度や角速度などの足の動きに関する物理量と、超音波の伝播時間とに基づいて、歩行時における歩隔を計測する。歩隔は、右足と左足の間隔である。より厳密には、歩隔は、人体を垂直上方から見下ろして、水平面上に投影された右足と左足の間隔である。例えば、歩隔は、両足の内側の間隔である。例えば、歩隔は、両足の中心軸の間隔であってもよい。本実施形態においては、両足が横方向に交差するタイミングにおいて歩隔を計測する例について説明する。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態の計測システム1の構成の一例を示すブロック図である。計測システム1は、超音波送受信装置11、データ取得装置12、および歩隔計測装置15を備える。超音波送受信装置11とデータ取得装置12は、データ計測装置10を構成する。超音波送受信装置11とデータ取得装置12は、有線で接続される。データ取得装置12と歩隔計測装置15は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。超音波送受信装置11、データ取得装置12、および歩隔計測装置15は、単一の装置で構成されてもよい。また、計測システム1は、超音波送受信装置11やデータ取得装置12を含まず、歩隔計測装置15のみで構成されてもよい。
【0015】
図2は、超音波送受信装置11の構成の一例を示すブロック図である。超音波送受信装置11は、少なくとも一つの超音波送信器111と、少なくとも一つの超音波受信器112を有する。超音波送信器111および超音波受信器112は、一般的な超音波センサである。超音波送受信装置11は、超音波送信器111および超音波受信器112を少なくとも一つずつ含めばよい。なお、超音波を送受信できる単一の超音波送受信装置を、超音波送受信装置11として構成してもよい。例えば、超音波の送信時間帯と、その超音波の反射波の受信時間帯とを分ければ、単一のトランスデューサ(図示しない)で超音波を送受信できる。
【0016】
図3は、超音波送信器111、超音波受信器112、およびデータ取得装置12を、靴100に配置する一例を示す概念図である。超音波送信器111と超音波受信器112は、データ取得装置12に有線で接続される。なお、超音波送信器111、超音波受信器112、およびデータ取得装置12は、一体化されてもよい。左右の靴100に設置される超音波送信器111は、同じ周波数帯の超音波を送信してもよいし、異なる周波数帯の超音波を送信してもよい。左右の靴100に設置される超音波送信器111は、同じパルス幅の超音波を送信してもよいし、異なるパルス幅の超音波を送信してもよい。左右の靴100に設置される超音波送信器111が異なる周波数帯やパルス幅の超音波を送信すれば、超音波受信器112によって受信される超音波の反射波の周波数帯やパルス幅に応じて、受信された超音波の送信元を区別できる。
【0017】
超音波送受信装置11は、データ取得装置12の制御に応じて、超音波送信器111からパルス状の超音波(送信超音波とも呼ぶ)を送信する。例えば、超音波送信器111は、データ取得装置12によって生成された生成パルスを、トランスデューサ(図示しない)で送信超音波に変換して送信する。超音波送受信装置11は、超音波送信器111から送信された送信超音波の反射波を、超音波受信器112で受信する。例えば、超音波受信器112は、超音波送信器111から送信された送信超音波の反射波を、トランスデューサ(図示しない)で電気信号に変換する。超音波送受信装置11は、変換後の電気信号をデータ取得装置12に出力する。
【0018】
右足に装着される超音波送信器111は、超音波の発信部が左足の内側(親指側の足側面)に向くように、右足の靴100の外側に配置される。右足に装着される超音波受信器112は、超音波の受信部が左足の内側に向くように、右足の靴100の外側に配置される。左足に装着される超音波送信器111は、超音波の発信部が右足の内側に向くように、左足の靴100の外側に配置される。左足に装着される超音波受信器112は、超音波の受信部が右足の内側に向くように、左足の靴100の外側に配置される。超音波送信器111および超音波受信器112は、ユーザの左右の靴100の内側に装着されてもよい。例えば、超音波送信器111の送信部と超音波受信器112の受信部が面する靴100の部分に、貫通孔を開けたり、メッシュ状の部分を設けたりすれば、超音波送信器111と超音波受信器112を靴100の内側に配置できる。
【0019】
超音波送信器111は、データ取得装置12の制御に応じて、送信超音波を送信する。超音波送信器111が送信する送信超音波の周波数は、測距に適した周波数に設定されればよい。例えば、超音波送信器111は、40キロヘルツ(kHz)の周波数の送信超音波を送信する。超音波送信器111は、データ取得装置12によって設定された送信パルスに応じた送信超音波を送信する。送信超音波の送信パルスのパルス幅は、データ取得装置12による計測周期に合わせて設定されることが好ましい。例えば、データ取得装置12による計測周期が100Hzの場合、送信パルスのパルス幅は20~80kHzに設定されることが好ましい。超音波送信器111から送信された送信超音波は、空気中を伝播し、反対側の足の内側で反射される。反対側の足の内側で反射された送信超音波の反射波は、超音波受信器112によって受信される。
【0020】
超音波受信器112は、超音波送信器111から送信された送信超音波の反射波(以下、単に反射波とも呼ぶ)を受信する。超音波受信器112は、受信された反射波を電気信号に変換する。超音波受信器112は、反射波に基づく電気信号をデータ取得装置12に出力する。また、超音波受信器112は、反対側の足(反対足とも呼ぶ)に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波を受信してもよい。反対足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波を受信する場合、両足の各々に装着された超音波送信器111から送信される超音波の周波数帯やパルス幅を異なるように構成されることが好ましい。両足の各々に装着された超音波送信器111から送信される超音波の周波数帯やパルス幅を異なれば、送信超音波の送信元を区別できる。
【0021】
データ取得装置12は、超音波送信器111を駆動制御し、超音波送信器111から送信超音波を送信させる。データ取得装置12は、送信超音波のパルス幅を設定するための送信パルスを、超音波送信器111に出力する。超音波送信器111は、データ取得装置12の制御に応じて、データ取得装置12から出力された送信パルスに応じた送信超音波を送信する。
【0022】
データ取得装置12は、送信超音波の反射波に基づく電気信号を超音波受信器112から取得する。送信超音波は、空気中で放射状に拡がったり、空気によって吸収されたりするため、空気中を伝播する距離に応じて信号強度が減衰する。そのため、データ取得装置12は、反射波に基づく電気信号を増幅する。例えば、データ取得装置12は、増幅された電気信号からピークを検出し、検出されたピークの時刻を特定する。
【0023】
データ取得装置12は、送信超音波の送信時刻と、その送信超音波の反射波の受信時刻とを対応付けたデータ(伝播データとも呼ぶ)を生成する。データ取得装置12は、送信パルスに対応する送信超音波を構成する複数の超音波の送信時刻と、送信パルスを構成する複数の超音波の受信時刻とを対応付けて、伝播データを生成する。データ取得装置12は、生成された伝播データを歩隔計測装置15に送信する。歩隔計測装置15に送信された伝播データは、歩隔の計測に用いられる。
【0024】
また、データ取得装置12は、加速度センサおよび角速度センサを含む。データ取得装置12は、履物を履くユーザの足の動きに関する物理量として、空間加速度や空間角速度などの足の動きに関する物理量を計測する。データ取得装置12が計測する足の動きに関する物理量には、加速度や角速度に加えて、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度も含まれる。また、データ取得装置12が計測する足の動きに関する物理量には、加速度を二階積分することによって計算される位置(軌跡)も含まれる。また、データ取得装置12が計測する足の動きに関する物理量には、加速度や角速度を微分することによって計算される加加速度や角加速度も含まれる。
【0025】
データ取得装置12は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。慣性計測装置は、VG(Vertical Gyro)や、AHRS(Attitude Heading)、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)等でもよい。データ取得装置12は、加速度センサおよび角速度センサによって計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置12は、伝播データと同様に、変換後のセンサデータを歩隔計測装置15に送信する。
【0026】
例えば、データ取得装置12は、ユーザが携帯する携帯端末(図示しない)を介して、サーバ等に実装された歩隔計測装置15に接続される。携帯端末(図示しない)は、ユーザによって携帯可能な通信器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンや、スマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する携帯型の通信器である。携帯端末は、ユーザの足の動きに関するセンサデータ、および伝播データをデータ取得装置12から受信する。携帯端末は、受信されたセンサデータおよび伝播データを、歩隔計測装置15が実装されたサーバ等に送信する。なお、歩隔計測装置15の機能は、携帯端末にインストールされたアプリケーションによって実現されてもよい。その場合、携帯端末は、受信されたセンサデータを、自身にインストールされたアプリケーションソフトウェアによって処理する。
【0027】
図3の例において、データ取得装置12は、左右の足の足弓の裏側に当たる位置に配置される。本実施形態においては、左右の区別なく、同じスペックで生産されたデータ取得装置12を左右の靴100の中に配置する。左右の靴100に配置されるデータ取得装置12の上下の向き(Z軸方向の向き)は、一致するものとする。そのため、左足に由来するセンサデータと、右足に由来するセンサデータに設定される軸は、左右で共通である。
図2の例では、データ取得装置12には、左右方向のx軸、前後方向のy軸、上下方向のz軸を含むローカル座標系が設定される。x軸は左方を正とし、y軸は後方を正とし、z軸は上方を正とする。データ取得装置12に設定される軸の向きは、左右の足で同じであれば、
図3の例に限定されない。
【0028】
例えば、データ取得装置12は、靴100の中に挿入されるインソールに配置される。例えば、データ取得装置12は、靴100の底面や本体に配置されてもよい。データ取得装置12は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。なお、データ取得装置12は、足の動きに関するセンサデータを取得できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に配置されてもよい。例えば、データ取得装置12は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレットなどの装飾品に設置されてもよい。例えば、データ取得装置12は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。例えば、データ取得装置12は、靴100の外側に配置されてもよい。
【0029】
図4は、データ取得装置12を足弓の裏側に設置する場合に、データ取得装置12に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、ユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向(垂直方向とも呼ぶ)がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。本実施形態においては、データ取得装置12を基準とするx方向、y方向、およびz方向からなるローカル座標系を設定する。本実施形態においては、左右の足に同じ向きの座標系が設定される。
【0030】
図5は、人体に対して設定される面(人体面とも呼ぶ)について説明するための概念図である。本実施形態では、身体を左右に分ける矢状面、身体を前後に分ける冠状面、身体を水平に分ける水平面が定義される。
図5のような直立した状態では、世界座標系とローカル座標系が一致する。本実施形態においては、x軸を回転軸とする矢状面内の回転をロール、y軸を回転軸とする冠状面内の回転をピッチ、z軸を回転軸とする水平面内の回転をヨーと定義する。また、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角をロール角、y軸を回転軸とする冠状面内の回転角をピッチ角、z軸を回転軸とする水平面内の回転角をヨー角と定義する。本実施形態においては、身体を右側から見て、矢状面内における時計回りの回転を正と定義し、矢状面内における反時計回りの回転を負と定義する。
【0031】
図6は、右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。左足を基準とする一歩行周期も、右足と同様である。
図6の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期を100%として正規化された歩行周期である。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、立脚初期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。
【0032】
歩行周期においては、複数の事象(歩行イベントとも呼ぶ)が検出される。
図6の(a)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。
図6の(b)は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。
図6の(c)は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。
図6の(d)は、左足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。
図6の(e)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。
図6の(f)は、左足の足裏が接地した状態で、左足と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。
図6の(g)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。
図6の(h)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。
図6の(h)は、
図6の(a)から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。
【0033】
本実施形態においては、両足が横方向に交差するタイミングにおいて歩隔を計測する。歩行周期で表現すると、両足が横方向に交差するタイミングは、立脚中期T2と立脚終期T3の間のタイミングや、遊脚中期T6の真ん中のタイミングに相当する。また、歩行イベントで表現すると、両足が横方向に交差するタイミングは、踵持ち上がりのタイミングや、足交差のタイミングに相当する。
【0034】
例えば、両足が横方向に交差するタイミングは、データ取得装置12によって取得されるセンサデータに含まれる空間加速度や空間角速度に関するパラメータの時系列データ(歩行波形)から検出される。例えば、歩行波形から検出される踵持ち上がりや足交差などの歩行イベントのタイミングにおいて、歩隔を計測すればよい。例えば、踵持ち上がりは、ロール角速度の歩行波形において、反対足爪先離地と反対足踵接地の間の加速変曲点のタイミングとして検出される。例えば、足交差は、爪先離地と脛骨垂直の間の進行方向加速度(Y方向加速度)の極小ピークのタイミングとして検出される。なお、踵接地のタイミングと爪先離地のタイミングの中央のタイミングを、両足が横方向に交差するタイミングとして検出してもよい。両足が横方向に交差するタイミングにおいて両足間距離が最小になる。そのため、超音波の伝搬時間が最小になる時刻を、両足が横方向に交差するタイミングとして検出してもよい。
【0035】
歩隔計測装置15は、サーバや携帯端末に実装される。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12から取得されたセンサデータと伝播データを用いて、ユーザの歩隔を計測する。例えば、歩隔計測装置15は、一方の足(第1の足)に装着されたデータ取得装置12から取得されたセンサデータと、他方の足(第2の足)に装着されたデータ取得装置12から取得された伝播データとを用いて、ユーザの歩隔を計測する。なお、第1の足が右足の場合、第2の足は左足である。また、第2の足が右足の場合、第1の足は左足である。
【0036】
歩隔計測装置15は、歩隔の計測時刻に関して、センサデータに含まれる高さ方向の加速度(Z方向加速度)を二階積分した値を、データ取得装置12の高さ(Z方向高さ)として計算する。また、歩隔計測装置15は、歩隔の計測時刻(第1時刻とも呼ぶ)に関して、伝播データに含まれる送信超音波の送信時刻とその送信超音波の反射波の受信時刻とを用いて、左右の足の間隔を計算する。第1時刻は、両足が横方向に交差するタイミングに相当する。例えば、歩隔計測装置15は、第1時刻において、超音波送信器111から送信超音波が送信されるように、データ取得装置12を制御する。この場合、超音波送信器111から送信超音波が送信される時刻(送信時刻とも呼ぶ)が、第1時刻に相当する。歩隔計測装置15は、歩隔の計測時刻(第1時刻)に関して、三角測量の原理で、データ取得装置12の高さ(センサ高さとも呼ぶ)と左右の足の間隔(両足間距離とも呼ぶ)とを用いて、歩隔を計算する。歩隔計測装置15による歩隔の計測方法の詳細については後述する。
【0037】
歩隔計測装置15は、歩隔の計測結果を含むデータ(歩隔データとも呼ぶ)を出力する。例えば、歩隔計測装置15は、歩隔の計測時刻(第1時刻)における歩隔データを出力する。例えば、歩隔計測装置15は、歩隔の計測時刻(第1時刻)を含む期間における、歩隔データの時系列データを出力する。例えば、歩隔計測装置15は、図示しない上位システムに歩隔データを出力する。上位システムは、取得された歩隔データを用いて、任意の処理を行う。例えば、歩隔計測装置15は、図示しない表示装置に歩隔データを出力する。表示装置は、取得された歩隔データに応じた情報を画面に表示させる。
【0038】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置12の詳細構成について説明する。
図7は、データ取得装置12の詳細構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置12は、加速度センサ121、角速度センサ122、制御部123、およびデータ送信部125を有する。また、データ取得装置12は、図示しない電源や時計を含む。以下においては、加速度センサ121、角速度センサ122、制御部123、およびデータ送信部125の各々を動作主体として説明するが、データ取得装置12を動作主体とみなしてもよい。
【0039】
加速度センサ121は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ121は、計測された加速度を制御部123に出力する。例えば、加速度センサ121には、圧電型やピエゾ抵抗型、静電容量型などの方式のセンサを用いることができる。なお、加速度センサ121に用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0040】
角速度センサ122は、3軸方向の角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ122は、計測された角速度を制御部123に出力する。例えば、角速度センサ122には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、角速度センサ122に用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0041】
加速度センサ121によって計測された空間加速度や、角速度センサ122によって計測された空間角速度は、種々の歩行パラメータの計測に用いられる。例えば、空間加速度や空間角速度は、歩行速度や歩幅、接地角、離地角、足上げ高さ、分回し、爪先角度などの歩行パラメータの計測に用いられる。
【0042】
制御部123は、超音波送受信装置11およびデータ取得装置12の全体制御やデータ処理を行う例えば、制御部123は、マイクロコンピュータやマイクロコントローラによって実現される。例えば、制御部123は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。
【0043】
制御部123は、加速度センサ121および角速度センサ122の各々から、3軸の加速度および3軸の角速度の各々を取得する。制御部123は、取得された加速度および角速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)する。なお、加速度センサ121および角速度センサ122によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ121および角速度センサ122の各々において、デジタルデータに変換されてもよい。制御部123は、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)をデータ送信部125に出力する。制御部123は、リアルタイムでセンサデータをデータ送信部125に出力してもよいし、フラッシュメモリ等に一時的に記憶されたセンサデータをまとめてデータ送信部125に出力してもよい。センサデータには、デジタルデータに変換された加速度データと、デジタルデータに変換された角速度データとが少なくとも含まれる。加速度データには、3軸方向の加速度ベクトルが含まれる。角速度データには、3軸回りの角速度ベクトルが含まれる。なお、加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、制御部123は、取得された加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成されてもよい。また、制御部123は、取得された加速度データおよび角速度データを用いて、3軸回りの角度データを生成してもよい。
【0044】
制御部123がセンサデータを生成するタイミングは、任意に設定される。例えば、制御部123は、データ取得装置12を装着したユーザの歩行を検知すると、そのユーザの足の動きに基づくセンサデータを生成し始める。例えば、制御部123は、センサデータを生成し始めると、予め設定された所定の期間、センサデータを生成し続ける。例えば、制御部123は、10ミリ秒間隔でセンサデータを計測する。例えば、制御部123は、歩行の停止を検知すると、センサデータの生成を終了する。
【0045】
また、制御部123は、超音波送信器111を駆動制御し、超音波送信器111から送信超音波を送信させる。制御部123は、送信超音波のパルス幅を設定するための送信パルスを、超音波送信器111に出力する。超音波送信器111は、制御部123の制御に応じて、制御部123から出力された送信パルスに応じた送信超音波を送信する。制御部123は、送信超音波の反射波に基づく電気信号を超音波受信器112から取得する。送信超音波は、空気中で放射状に拡がったり、空気によって吸収されたりするため、空気中を伝播する距離に応じて信号強度が減衰する。そのため、制御部123は、反射波に基づく電気信号を増幅する。制御部123は、増幅された電気信号からピークを検出し、検出されたピークの時刻を特定する。
【0046】
制御部123は、送信パルスに含まれるパルスごとに、送信超音波の送信時刻と、その送信超音波の反射波の受信時刻との時間差(伝播時間とも呼ぶ)を計算する。制御部123は、算出された伝播時間を、その伝播時間の計算に用いられた送信時刻および受信時刻に関する第1時刻に対応付けたデータ(伝播データとも呼ぶ)をデータ送信部125に出力する。なお、制御部123は、送信超音波の送信時刻と、その送信超音波の反射波の受信時刻とを含むデータを、伝播データとして生成してもよい。例えば、制御部123は、送信パルスに対応する送信超音波を構成する複数の超音波の送信時刻と、その送信パルスを構成する複数の超音波の受信時刻とが対応付けられた伝播データを生成する。また、制御部123は、送信パルスに対応する送信超音波の時系列データと、その送信超音波の反射波に関する時系列データとを対応付けたデータを、伝播データとして生成してもよい。また、制御部123は、伝播時間を距離に換算した値を、その伝播時間の計算に用いられた送信時刻および受信時刻に関する第1時刻に対応付けたデータを、伝播データとして生成してもよい。伝播時間を距離に換算する方法については後述する。
【0047】
例えば、制御部123は、送信パルスに対応する送信超音波の送信時にタイマモジュール(図示しない)を起動し、その送信超音波の反射波の検出時にタイマ値をキャプチャする。このときにキャプチャされたタイマ値が、送信超音波の伝播時間に相当する。例えば、制御部123は、送信パルスに相当する高周波駆動信号の生成、駆動期間の設定、送信超音波の反射波を受信するまでの遅延時間を計測する。制御部123によって生成される高周波駆動信号に応じて、超音波送信器111は、高周波の連続パルスの送信超音波を送信する。超音波送信器111から送信された送信超音波のうち、空気より密度の高い対象物によって反射された反射波の一部が、超音波受信器112によって受信される。本実施形態においては、空気より密度の高い対象物として、送信超音波の送信元の超音波送信器111が装着された足の反対足を想定する。送信超音波の反射波に基づく電気信号(受信信号とも呼ぶ)は、検出精度を高めるために増幅される。例えば、制御部123は、増幅された受信信号から、送信パルスに対応するピークを検出し、送信超音波のパルスごとに往復時間を計測する。例えば、制御部123が、送信超音波のパルスごとの往復時間を、空気中の音速に基づいて、距離に換算してもよい。
【0048】
図8は、制御部123によって生成される送信パルスに対応する送信超音波の送信タイミングと、それらの送信超音波の反射波(受信超音波とも呼ぶ)の受信タイミングの一例について説明するための概念図である。
図8には、複数のパルスによって構成される送信超音波を送信する例を示す。以下において、送信超音波を構成するi番目のパルスを、送信超音波パルスiと呼ぶ(iは自然数)。また、以下において、送信超音波パルスiに対応する受信超音波のパルスを、受信超音波パルスiと呼ぶ。
図8の例の場合、送信超音波は、送信超音波パルス1、送信超音波パルス2、・・・、送信超音波パルス9によって構成される。また、
図8の例の場合、受信超音波は、受信超音波パルス1、受信超音波パルス2、・・・、受信超音波パルス9によって構成される。
【0049】
下記の式1のように、送信超音波パルスiに対応する受信超音波パルスiの受信時刻triと、送信超音波パルスiの送信時刻tsiとの差が、送信超音波パルスiの伝播時間Tiに相当する。
Ti=tri-tsi・・・(1)
伝播時間Tiは、送信超音波パルスiが送信されてから、その送信超音波パルスiに対応する受信超音波パルスiが戻ってくるまでの往復時間に相当する。
【0050】
音速をvsとすると、送信超音波パルスiが送信されたタイミングにおける左右の足の間隔Liは、下記の式2を用いて算出される。
Di=(vs/Ti)/2・・・(2)
ただし、上記の式2においては、送信超音波パルスiの送信時刻と、その送信超音波パルスiに対応する受信超音波パルスiの受信時刻との間における、左右の足の平均的な間隔Liが算出される。また、上記の式2において、音速vの値は、温度や湿度等に応じて調整されてもよい。
【0051】
図9は、制御部123によって生成される送信パルスに対応する送信超音波の送信タイミングと、それらの送信超音波の反射波(受信超音波とも呼ぶ)の受信タイミングの別の一例について説明するための概念図である。
図9の例では、制御部123は、変調された送信パルスに対応する送信超音波を送信する。送信パルスが等間隔の場合、対応すべき送信超音波と受信超音波がずれる可能性がある。
図9のように送信パルスに変調を掛ければ、その送信パルスに基づく送信超音波と、その送信超音波の反射波とを、変調パターンに応じて対応付けしやすくなるため、誤検出の可能性が低くなる。
【0052】
制御部123が伝播データを生成するタイミングは、任意に設定される。例えば、制御部123は、データ取得装置12を装着したユーザの歩行を検知すると、そのユーザの足の動きに基づく伝播データを生成し始める。例えば、制御部123は、伝播データを生成し始めると、予め設定された所定の期間、伝播データを生成し続ける。例えば、制御部123は、伝播データを生成し始めると、連続するパルスによって構成される送信超音波を、所定の時間間隔で、所定の時間送信する。例えば、制御部123は、歩隔計測装置15の指示に応じて、送信超音波を送信する。例えば、制御部123は、センサデータに基づいて検出された立脚相の期間において、送信超音波を送信する。例えば、制御部123は、センサデータに基づいて検出された遊脚相の期間において、送信超音波を停止する。例えば、制御部123は、歩行の停止を検知すると、伝播データの生成を終了する。
【0053】
データ送信部125は、制御部123からセンサデータおよび伝播データを取得する。データ送信部125は、取得されたセンサデータおよび伝播データを、歩隔計測装置15に送信する。例えば、データ送信部125は、無線通信を介して、センサデータおよび伝播データを歩隔計測装置15に送信する。例えば、データ送信部125は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信器能(図示しない)を介して、センサデータおよび伝播データを歩隔計測装置15に送信するように構成される。なお、データ送信部125の通信器能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。例えば、データ送信部125は、ケーブルなどの有線を介して、センサデータおよび伝播データを歩隔計測装置15に送信してもよい。データ送信部125は、任意のタイミングで、センサデータを歩隔計測装置15に送信する。例えば、データ送信部125は、センサデータが生成されるたびに、そのセンサデータを歩隔計測装置15に送信する。例えば、データ送信部125は、一定期間のセンサデータをまとめて歩隔計測装置15に送信する。例えば、データ送信部125は、1ストライド分のセンサデータをまとめて歩隔計測装置15に送信する。
【0054】
〔歩隔計測装置〕
次に、歩隔計測装置15の詳細構成について図面を参照しながら説明する。
図10は、歩隔計測装置15の詳細構成の一例を示すブロック図である。歩隔計測装置15は、距離計算部151、高さ計算部152、歩隔計算部153、および計測制御部155を有する。なお、
図10の構成においては、伝播データやセンサデータを取得する取得部や、歩隔データを出力する出力部を省略する。
【0055】
距離計算部151は、一方の足に装着されたデータ取得装置12から伝播データを取得する。距離計算部151は、取得された伝播データを用いて、その伝播データに対応付けられた時刻における左右の足の間隔(両足間距離L)を計算する。例えば、距離計算部151は、一番早い時刻に受信された反射波や、強度が一番大きな反射波を用いて、両足間距離Lを計算する。反射波の強度が最大になるタイミングは、両足の進行方向(Y方向)の位置が一致する足交差のタイミングに相当する。距離計算部151は、算出された両足間距離Lの値を、歩隔計算部153に出力する。両足間距離Lが伝播データに含まれる場合、距離計算部151は、その両足間距離Lの値を歩隔計算部153に出力する。
【0056】
高さ計算部152は、一方の足に装着されたデータ取得装置12から取得された伝播データに含まれる送信超音波の送信時刻に計測されたセンサデータを、他方の足に装着されたデータ取得装置12から取得する。高さ計算部152は、他方の足に装着されたデータ取得装置12から取得されたセンサデータを用いて、足の高さ(センサ高さH)を計算する。例えば、高さ計算部152は、他方の足に装着されたデータ取得装置12から取得されたセンサデータに基づいて算出される高さを、他方の足の高さ(センサ高さH)として算出する。センサデータに基づいて計測されるデータ取得装置12の高さは、センサデータに含まれる高さ方向の加速度(Z方向加速度)を二階積分することによって計算できる。なお、データ取得装置12の高さ(センサ高さH)は、超音波送受信装置11の高さと一致するものとする。なお、センサデータを用いてデータ取得装置12の高さ(センサ高さH)の値を出力するソフトウェアを用いる場合は、そのソフトウェアによって出力されたデータ取得装置12の高さ(センサ高さH)を用いればよい。高さ計算部152は、算出されたセンサ高さHの値を、歩隔計算部153に出力する。
【0057】
歩隔計算部153は、歩隔の計測時刻(第1時刻)における両足間距離Lを距離計算部151から取得する。また、歩隔計算部153は、歩隔の計測時刻(第1時刻)におけるセンサ高さHを高さ計算部152から取得する。歩隔計算部153は、歩隔の計測時刻(第1時刻)における両足間距離Lとセンサ高さHを用いて歩隔Dを計算する。
【0058】
計測制御部155は、センサデータや伝播データを計測するために、データ取得装置12を制御する。例えば、計測制御部155は、センサデータおよび伝播データの計測タイミングにおいて、センサデータおよび伝播データの計測指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、計測制御部155は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行を検知すると、センサデータおよび伝播データを生成する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、計測制御部155は、ユーザが携帯する携帯端末のセンサによって歩行が検知されると、センサデータおよび伝播データを生成する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、データ取得装置12がユーザの歩行を検知できる場合、ユーザの歩行が検知されたタイミングをセンサデータおよび伝播データの生成タイミングに設定してもよいため、計測制御部155による計測指示を省略できる。
【0059】
例えば、計測制御部155は、センサデータに基づく歩行波形から検出される歩行イベントに応じて、伝播データを計測するためにデータ取得装置12を制御する。例えば、計測制御部155は、センサデータに基づく歩行波形から踵持ち上がりや足交差などの歩行イベントが検出されると、伝播データを計測するためにデータ取得装置12を制御する。計測制御部155は、データ取得装置12からセンサデータを受信すると、受信されたセンサデータに基づく歩行波形から歩行イベントを検出する。
【0060】
例えば、計測制御部155は、一方の足の歩行波形を用いて立脚相を検出すると、立脚相が検出された方の足に装着されたデータ取得装置12に対して、送信超音波の送信指示を出力する。例えば、計測制御部155は、進行方向加速度(Y方向加速度)や高さ方向加速度(Z方向加速度)の歩行波形を用いて検出される踵接地のタイミングに基づいて、立脚相を検出する。例えば、計測制御部155は、一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、最大ピークが検出されるタイミングと、最大ピークの次に現れる極小ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する。例えば、計測制御部155は、立脚相に含まれる踵持ち上がりや、反対足爪先離地、反対足踵接地などの歩行イベントに基づいて、立脚相を検出してもよい。例えば、計測制御部155は、ロール角速度などの歩行波形を用いて、踵持ち上がりや、反対足爪先離地、反対足踵接地などの歩行イベントを検出する。
【0061】
計測制御部155は、データ取得装置12から伝播データを受信すると、距離計算部151、高さ計算部152、および歩隔計算部153に歩隔計算処理を実行させる。距離計算部151、高さ計算部152、および歩隔計算部153は、計測制御部155の指示に応じて、歩隔計算処理を実行する。
【0062】
例えば、計測制御部155は、一方の足の歩行波形から遊脚相を検出すると、遊脚相が検出された方の足に装着されたデータ取得装置12に対して、超音波の送信を停止する指示を出力する。例えば、計測制御部155は、進行方向加速度(Y方向加速度)の歩行波形を用いて検出される爪先離地のタイミングに基づいて、遊脚相を検出する。例えば、計測制御部155は、一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、最小ピークに含まれる二つの谷の間に極大ピークが検出されるタイミングを爪先離地のタイミングとして検出する。例えば、計測制御部155は、遊脚相に含まれる足交差や脛骨垂直などの歩行イベントに基づいて、遊脚相を検出してもよい。例えば、計測制御部155は、ロール角速度などの歩行波形を用いて、踵持ち上がりや、反対足爪先離地、反対足踵接地などの歩行イベントを検出する。例えば、計測制御部155は、進行方向加速度(Y方向加速度)やZ方向加速度(Z方向加速度)などの歩行波形を用いて、足交差や脛骨垂直などの歩行イベントを検出する。
【0063】
図11および
図12は、歩隔Dの計算方法について説明するための概念図である。
図11は、左足が立脚相であり、右足が遊脚相であるタイミングにおける、両足の靴100を上方から見下ろした上面図である。
図12は、
図11と同じタイミングにおいて、両足の靴100を後方から見た背面図である。
図11および
図12は、両足の爪先と踵の進行方向位置(Y方向位置)が同じになるタイミング(足交差のタイミング)における靴100の位置を示す。ただし、足交差のタイミングにおいて、遊脚相の足の足裏は地面に対して平行であると仮定する。歩隔Dは、両足の内側の側面間の横方向(X方向)の距離に相当する。なお、超音波送信器111の送信部と足の側面は、一致するものとする。
【0064】
歩隔計算部153は、歩隔の計測時刻(第1時刻)における、両足間距離Lとセンサ高さHを用いて、三角測量の原理で歩隔Dを計算する。例えば、両足の進行方向(Y方向)の座標が一致する場合、歩隔計算部153は、以下の式3を用いて歩隔Dを計算する。
【0065】
なお、両足の進行方向(Y方向)の位置座標が一致していない場合は、両足の各々の横方向(X方向)の位置座標を用いて歩隔Dを算出してもよい。
【0066】
例えば、左右の足の中心軸の間隔を歩隔Dとして定義する場合は、左右の足の中心軸と足の内側面との距離を、左右の足の内側面間の距離に足し合わせた値を、歩隔Dとすればよい。足の中心軸がY軸と平行でない場合は、左右の足の爪先や踵、土踏まずなどの部分の間隔を歩隔Dと定義すればよい。
【0067】
歩隔計算部153は、算出された歩隔Dを含むデータ(歩隔データとも呼ぶ)を出力する。例えば、歩隔計算部153は、歩隔の計測対象の時刻(第1時刻)における、歩隔データを出力する。例えば、歩隔計算部153は、歩隔の計測対象の期間における、歩隔データの時系列データを出力する。例えば、歩隔計算部153は、図示しない上位システムに歩隔データを出力する。上位システムは、取得された歩隔データを用いて、任意の処理を行う。例えば、歩隔計算部153は、図示しない表示装置に歩隔データを出力する。表示装置(図示しない)は、取得された歩隔データに応じた情報を画面に表示させる。
【0068】
図13は、歩隔計算部153から出力された歩隔データに関する情報を表示装置17の画面に表示させる例を示す概念図である。
図13は、歩隔データに含まれる歩隔の値を表示装置17の画面に表示させる例である。
図13の例では、「歩隔はAAです。」という情報を、表示装置17の画面に表示させる。例えば、歩隔の軌跡を生成すれば、歩行時の水平面内における歩隔を検証できる。例えば、歩隔の軌跡は、ファッションモデルの歩行訓練や、足の老化傾向の分析、怪我や病気の回復の判定などに用いることができる。
【0069】
(動作)
次に、本実施形態に係る計測システム1の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、計測システム1に含まれる超音波送受信装置11、データ取得装置12、および歩隔計測装置15の各々の動作について、個別に説明する。
【0070】
〔超音波送受信装置〕
まず、超音波送受信装置11の動作の一例について説明する。
図14は、超音波送受信装置11の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図14のフローチャートに沿った処理は、立脚相の期間における超音波送受信装置11の処理に関する。
【0071】
図14において、送信パルスを受信すると(ステップS111でYes)、超音波送受信装置11は、送信パルスに対応する送信超音波を超音波送信器111から送信する(ステップS111)。送信パルスを受信していない場合(ステップS111でNo)、超音波送受信装置11は、送信パルスが受信されるまで待機する。
【0072】
ステップS111の後に、超音波受信器112が送信超音波の反射波を受信すると(ステップS113でYes)、超音波送受信装置11は、受信された反射波を電気信号に変換する(ステップS114)。超音波受信器112が送信超音波に対応する反射波を受信していない場合(ステップS113でNo)、超音波送受信装置11は、反射波が受信されるまで待機する。
【0073】
なお、一方の足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波が、その足の反対足に当たらない場合がある。そのような場合に備えて、超音波送信器111から送信超音波が送信されてから、その送信超音波の反射波の到来予測時刻を過ぎた時点で、その送信超音波を歩隔計測の計測対象から外すようにしてもよい。例えば、反射波の到来予測時刻は、超音波送信器111が送信超音波を送信した時刻から、ユーザのストライドが最大になるタイミングにおける両足間距離を超音波が往復する時間が経過した時刻に設定される。
【0074】
ステップS114の次に、超音波送受信装置11は、変換後の信号をデータ取得装置12に出力する(ステップS115)。
図14のステップS112~ステップS115の処理は、ステップS111で受信された送信パルスに基づく送信超音波の反射波が受信されるまで継続される。例えば、一方の足(第1の足)の超音波送信器111から送信された送信超音波を、他方の足(第2の足)に装着された超音波受信器112が受信した受信時刻を、データ取得装置12に送信するように構成されてもよい。他方の足(第2の足)に装着された超音波受信器112における送信超音波の受信時刻は、一方の足(第1の足)に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波の送信時刻と受信時刻の中間の時刻に相当する。
【0075】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置12の動作の一例について説明する。以下においては、データ取得装置12による、歩隔データの生成処理(歩隔データ生成処理とも呼ぶ)と、センサデータの生成処理(センサデータ生成処理とも呼ぶ)について個別に説明する。データ取得装置12は、歩隔データ生成処理とセンサデータ生成処理を並行して行う。
【0076】
<歩隔データ生成処理>
図15は、データ取得装置12による歩隔データ生成処理に関する動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図15において、超音波の送信タイミングになると(ステップS121でYes)、データ取得装置12は、超音波送受信装置11の超音波送信器111から送信される送信超音波のパルスを設定するための送信パルスを生成する(ステップS122)。超音波の送信タイミングではない場合(ステップS121でNo)、データ取得装置12は、送信パルスを生成しないで待機する。
【0077】
超音波の送信タイミングは、任意に設定できる。例えば、超音波の送信タイミングは、歩隔計測装置15によって設定される。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行を検知すると、超音波を送信する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、歩隔計測装置15は、ユーザが携帯する携帯端末のセンサによって歩行が検知されると、超音波を送信する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12から出力されたセンサデータに基づいて、センサデータの時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)に基づいて検出される歩行イベントに応じて、超音波を送信する指示をデータ取得装置12に出力してもよい。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行において立脚相を検出すると、超音波を送信する指示をデータ取得装置12に出力する。立脚相であれば、超音波送受信装置11の位置がそれほど変化しないので、送信超音波の送信方向が安定する。例えば、データ取得装置12がユーザの歩行を検知できる場合、ユーザの歩行が検知されたタイミングを超音波の送信タイミングに設定してもよい。
【0078】
ステップS122の次に、データ取得装置12は、生成された送信パルスを超音波送受信装置11に出力する(ステップS123)。データ取得装置12から出力された送信パルスを取得した超音波送受信装置11は、その送信パルスに応じた送信超音波を超音波送信器111から送信する。
【0079】
ここで、超音波送信器111から送信された送信超音波の反射波に基づく信号を受信すると(ステップS124でYes)、データ取得装置12は、受信された信号に基づいて伝播データを生成する(ステップS125)。例えば、データ取得装置12は、送信超音波の反射波の受信時刻と、その送信超音波の送信時刻とを含む伝播データを生成する。例えば、データ取得装置12は、送信超音波の反射波の受信時刻と、その送信超音波の送信時刻との差の時間(伝播時間)を含む伝播データを生成する。送信超音波の反射波に基づく信号を受信していない場合(ステップS124でNo)、超音波送受信装置11は、反射波に基づく信号が受信されるまで待機する。
【0080】
なお、一方の足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波が、その足の反対足に当たらない場合がある。そのような場合に備えて、超音波送信器111から送信超音波が送信されてから、その送信超音波の反射波の到来予測時刻を過ぎた時点で、その送信超音波を歩隔計測の計測対象から外すようにしてもよい。
【0081】
ステップS125の次に、データ取得装置12は、生成された伝播データを歩隔計測装置15に出力する(ステップS126)。歩隔計測装置15に出力された伝播データは、歩隔の計測に用いられる。例えば、データ取得装置12は、遊脚期の足に装着された超音波受信器112によって、立脚相の足の超音波送信器111から送信された送信超音波が受信された受信時刻を、歩隔計測装置15に送信するように構成されてもよい。
【0082】
ここで、超音波の送信を停止するタイミングの場合(ステップS127でYes)、
図15のフローチャートに沿った処理は終了である。一方、超音波の送信を停止するタイミングではない場合(ステップS127でNo)、ステップS124に戻る。
【0083】
超音波の送信を停止するタイミングは、任意に設定できる。例えば、超音波の送信を停止するタイミングは、歩隔計測装置15によって設定される。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行が停止したことを検知すると、超音波の送信を停止する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行において遊脚相を検出すると、超音波の送信を停止する指示をデータ取得装置12に出力する。遊脚相において、超音波送受信装置11の位置が大きく変化するので、送信超音波の送信方向が安定しない。例えば、データ取得装置12がユーザの歩行の停止を検知できる場合、ユーザの歩行の停止が検知されたタイミングを超音波の送信タイミングに設定してもよい。
【0084】
<センサデータ生成処理>
図16は、データ取得装置12によるセンサデータ生成処理に関する動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図16において、センサデータの生成タイミングになると(ステップS131でYes)、データ取得装置12は、3軸方向の加速度(空間角速度とも呼ぶ)および3軸回りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する(ステップS132)。センサデータの生成タイミングではない場合(ステップS131でNo)、データ取得装置12は、3軸方向の加速度および角速度を計測しないで待機する。
【0085】
次に、データ取得装置12は、計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成する(ステップS133)。センサデータの生成タイミングは、任意に設定できる。例えば、センサデータの生成タイミングは、歩隔計測装置15によって設定される。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行を検知すると、センサデータを生成する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、歩隔計測装置15は、ユーザが携帯する携帯端末のセンサによって歩行が検知されると、センサデータを生成する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、データ取得装置12がユーザの歩行を検知できる場合、ユーザの歩行が検知されたタイミングをセンサデータの生成タイミングに設定してもよい。
【0086】
次に、データ取得装置12は、生成されたセンサデータを歩隔計測装置15に出力する(ステップS134)。歩隔計測装置15に出力されたセンサデータは、歩行波形の生成や、歩行イベントの検出、歩隔の計測などに用いられる。
【0087】
ここで、センサデータの生成を停止するタイミングの場合(ステップS135でYes)、
図16のフローチャートに沿った処理は終了である。一方、センサデータの生成を停止するタイミングではない場合(ステップS135でNo)、ステップS132に戻る。
【0088】
センサデータの生成を停止するタイミングは、任意に設定できる。例えば、センサデータの生成を停止するタイミングは、歩隔計測装置15によって設定される。例えば、歩隔計測装置15は、データ取得装置12が装着されたユーザの歩行が停止したことを検知すると、センサデータの生成を停止する指示をデータ取得装置12に出力する。例えば、データ取得装置12がユーザの歩行の停止を検知できる場合、ユーザの歩行の停止が検知されたタイミングをセンサデータの生成を停止するタイミングに設定してもよい。
【0089】
〔歩隔計測装置〕
次に、歩隔計測装置15の動作の一例について図面を参照しながら説明する。
図17は、歩隔計測装置15の一例について説明するためのフローチャートである。
図17のフローチャートにおいては、センサデータの受信を起点とし、そのセンサデータから検出される歩行イベントに基づいて超音波の生成/停止を指示する例をあげる。
図17の例では、立脚相に含まれる立脚中期のタイミングを、歩隔の計測時刻(第1時刻)とする例について説明する。
【0090】
図17において、まず、歩隔計測装置15は、データ取得装置12からセンサデータを受信する(ステップS151)。歩隔計測装置15は、受信されたセンサデータに基づいて歩行イベントを検出する(ステップS152)。例えば、歩隔計測装置15は、ユーザが携帯する携帯端末のセンサによって歩行が検知されると、センサデータを取得する指示をデータ取得装置12に出力する。
【0091】
受信されたセンサデータに基づいて立脚中期が検出されると(ステップS152でYes)、歩隔計測装置15は、立脚相が検出された方の足に装着されたデータ取得装置12に対して、送信超音波の送信指示を出力する(ステップS153)。立脚中期が検出されなかった場合は(ステップS152でNo)、ステップS156に進む。
【0092】
例えば、歩隔計測装置15は、進行方向加速度(Y方向加速度)や高さ方向加速度(Z方向加速度)の歩行波形を用いて検出される踵接地のタイミングに基づいて、立脚中期を検出する。例えば、歩隔計測装置15は、一歩行周期分の進行方向加速度の歩行波形において、最大ピークが検出されるタイミングと、最大ピークの次に現れる極小ピークが検出されるタイミングとの中点のタイミングを踵接地のタイミングとして検出する。例えば、歩隔計測装置15は、立脚相に含まれる踵持ち上がりや、反対足爪先離地、反対足踵接地などの歩行イベントに基づいて、立脚中期を検出してもよい。例えば、歩隔計測装置15は、ロール角速度などの歩行波形を用いて、踵持ち上がりや、反対足爪先離地、反対足踵接地などの歩行イベントを検出する。
【0093】
ステップS153の次に、歩隔計測装置15は、伝播データを受信する(ステップS154)。次に、歩隔計測装置15は、歩隔計算処理を実行する(ステップS155)。歩隔計算処理の詳細については後述する。
【0094】
ステップS152でNoの場合、またはステップS155の後、歩隔の計測を継続する場合は(ステップS156でYes)、ステップS151に戻る。一方、歩隔の計測を継続しない場合は(ステップS156でNo)、
図17のフローチャートに沿った処理は終了である。
【0095】
<歩隔計算処理>
次に、歩隔計測装置15による歩隔計算処理の一例について図面を参照しながら説明する。
図18は、歩隔計測装置15による歩隔計算処理(
図17のステップS155)の一例について説明するためのフローチャートである。
【0096】
図18において、まず、歩隔計測装置15は、一方の足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波の送信時刻とその送信超音波の反射波の受信時刻を用いて、両足間距離Lを計算する(ステップS161)。例えば、歩隔計測装置15は、送信超音波の反射波の受信時刻から送信超音波の送信時刻を引いて算出される超音波の伝播時間に、音速を掛け合わせることによって、両足間距離Lを計算する。
【0097】
次に、歩隔計測装置15は、送信超音波の送信時刻と、その送信超音波の反射波の受信時刻とに関する第1時刻におけるセンサデータを用いて、その受信時刻における足上げ高さH(センサ高さとも呼ぶ)を計算する(ステップS162)。第1時刻は、送信時刻と受信時刻の間のいずれか時刻であり、送信時刻や受信時刻であってもよい。例えば、歩隔計測装置15は、他方の足に装着されたデータ取得装置12によって取得されたセンサデータに含まれる高さ方向の加速度(Z方向加速度)を二階積分することによって、足上げ高さHを計算する。例えば、歩隔計測装置15は、他方の足に装着された超音波受信器112によって受信された受信超音波の受信時刻に対応するセンサデータを用いて、その受信時刻における足上げ高さHを計算してもよい。
【0098】
例えば、一方の足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波が他方の足に装着された超音波受信器112によって受信されたタイミングで、他方の足に装着された超音波送信器111から送信超音波を送信するようにしてもよい。その場合、歩隔計測装置15は、他方の足に装着された超音波送信器111から送信された送信超音波の送信時刻と、その送信超音波の反射波の受信時刻を用いて、超音波の往復時間を計算できる。
【0099】
次に、歩隔計測装置15は、算出された両足間距離Lと足上げ高さHを用いて、送信超音波の送信時刻における歩隔Dを計算する(ステップS163)。
【0100】
次に、歩隔計測装置15は、算出された歩隔Dに関する歩隔データを出力する(ステップS164)。歩隔計測装置15から出力される歩隔データは、種々の用途に用いられる。
【0101】
以上のように、本実施形態の計測システムは、超音波送受信装置、データ取得装置、および歩隔計測装置を備える。超音波送受信装置は、ユーザの両足の各々に装着される。超音波送受信装置は、超音波の送受信方向が足の内側に向くように配置される。データ取得装置は、ユーザの両足の各々に配置される。データ取得装置は、ユーザの歩行に応じて空間加速度および空間角速度を計測し、計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成する。また、データ取得装置は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置を制御し、超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを生成する。データ種痘装置は、生成されたセンサデータおよび伝播データを歩隔計測装置に送信する。
【0102】
本実施形態の歩隔計測装置は、距離計算部、高さ計算部、歩隔計算部、および計測制御部を備える。距離計算部は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算する。高さ計算部は、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算する。歩隔計算部は、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。計測制御部は、センサデータに基づいてユーザの歩行における歩行パラメータを検出し、歩行パラメータが検出されたタイミングに応じてデータ取得装置を制御する。
【0103】
歩行パラメータの一つである歩隔は、歩行者の状態の指標となる。例えば、歩隔が大きくなると、歩行時のエネルギー消費が大きくなり、疲れやすくなる。高齢者では、歩隔が増大する傾向がある。その一方で、高齢者でありながら歩隔が小さくなると、転倒リスクが増大する。また、変形性膝関節症や半月板損傷などのリハビリでは、歩隔を広げると疼痛を緩和できる。そのため、日常の歩行における歩隔を計測し、計測された歩隔に応じた情報を歩行者に提供できれば、その歩行者の状態を改善できる可能性がある。例えば、床反力計や感圧シート、モーションセンサなどを用いれば、歩隔を正確に計測できる。しかしながら、床反力計や感圧シート、モーションセンサなどを用いる場合、固定された計測環境が必要であるため、日常の歩行時における歩隔を計測することはできなかった。
【0104】
それに対し、本実施形態の歩隔計測装置は、超音波の送受信時刻に関する伝播データと、空間加速度および空間角速度を含むセンサデータとを用いることによって、歩行時における歩隔をリアルタイムで計測できる。そのため、本実施形態の歩隔計測装置によれば、日常の歩行時における歩隔を計測できる。
【0105】
本実施形態の一態様において、距離計算部は、超音波送受信装置から送受信される超音波の送受信時刻を用いて、送信時刻に対応付けられた両足間距離を計算する。距離計算部は、第1の足に装着された超音波送受信装置に含まれる超音波送信器から送信された送信超音波の送信時刻と、第1の足に装着された超音波送受信装置に含まれる超音波受信器によって受信された送信超音波の反射波の受信時刻とを用いる。歩隔計算部は、送信時刻に対応付けられた両足間距離と、第2の足に装着されたセンサによって送信時刻に計測されたセンサデータに基づいて計算されたセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。本態様によれば、第1の足に装着された超音波送受信装置から送受信される超音波の送受信時刻と、第2の足に装着されたセンサによって第1時刻に計測されたセンサデータとに基づいて、ユーザの歩隔を計算できる。
【0106】
本実施形態の一態様において、距離計算部は、超音波送受信装置から送受信される超音波の送受信時刻を用いて、送信時刻に対応付けられた両足間距離を計算する。距離計算部は、第1の足に装着された超音波送受信装置に含まれる超音波送信器から送信された送信超音波の送信時刻と、第2の足に装着された超音波送受信装置に含まれる超音波受信器によって受信された送信超音波の反射波の受信時刻とを用いる。歩隔計算部は、受信時刻に対応付けられた両足間距離と、第2の足に装着されたセンサによって受信時刻に計測されたセンサデータに基づいて計算されたセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。本態様によれば、第1の足および第2の足に装着された超音波送受信装置から送受信される超音波の送受信時刻と、第2の足に装着されたセンサによって第1時刻に計測されたセンサデータとに基づいて、ユーザの歩隔を計算できる。
【0107】
本実施形態の一態様において、計測制御部は、データ取得装置によって生成されたセンサデータに含まれる空間加速度や空間角速度に関するパラメータの時系列データに基づいて立脚中期を検出する。計測制御部は、立脚中期が検出された方の足に装着された超音波送受信装置から超音波を送信させるようにデータ取得装置を制御する。本態様によれば、立脚相の足に装着された超音波送信器から送信超音波を送信するため、送信超音波の送信方向が安定し、歩隔の計測精度が向上する。また、本態様によれば、遊脚相の期間において、超音波送受信装置から超音波を送信しないため、超音波送受信装置の消費電力を低減できる。
【0108】
本実施形態の手法で求められた歩隔データは、種々の用途に適用できる。例えば、日常の歩行においては、道がぬかるんでいたり、路面が凍結していたりすると、それらの路面状態に応じて歩隔が変化する。そのため、路面状態に応じた歩隔の特徴を学習させたモデルを構築しておけば、歩隔の値や変化に応じて、路面状態を推測することもできる。例えば、ユーザの体調や状態に応じて、歩隔が変化することがある。そのため、ユーザの体調に応じた歩隔の特徴を学習させたモデルを構築しておけば、歩隔の値や変化に応じて、そのユーザの体調や状態を推測することもできる。
【0109】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る計測システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の計測システムは、超音波送受信装置に含まれる超音波受信器の数が、第1の実施形態とは異なる。また、本実施形態の計測システムは、両足に装着されたデータ取得装置の時刻を同期する点において、第1の実施形態とは異なる。本実施形態においては、超音波受信器が二つ含まれる例について説明するが、超音波受信器は三つ以上含まれてもよい。また、超音波送受信装置に含まれる超音波送信器の数が複数であってもよい。
【0110】
(構成)
図19は、本実施形態の計測システム2の構成の一例を示すブロック図である。計測システム2は、超音波送受信装置21、データ取得装置22、および歩隔計測装置25を備える。超音波送受信装置21とデータ取得装置22は、データ計測装置20を構成する。超音波送受信装置21とデータ取得装置22は、有線で接続される。データ取得装置22と歩隔計測装置25は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。超音波送受信装置21、データ取得装置22、および歩隔計測装置25は、単一の装置で構成されてもよい。また、計測システム2は、超音波送受信装置21やデータ取得装置22を含まず、歩隔計測装置25のみで構成されてもよい。データ取得装置22の構成は、第1の実施形態のデータ取得装置12と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0111】
〔超音波送受信装置〕
図20は、超音波送受信装置21の構成の一例を示すブロック図である。超音波送受信装置21は、超音波送信器211、第1超音波受信器212、および第2超音波受信器213を有する。超音波送信器211は、第1の実施形態の超音波送信器111と同様の構成である。第1超音波受信器212および第2超音波受信器213は、第1の実施形態の超音波受信器112と同様の構成である。
【0112】
図21は、超音波送信器211、第1超音波受信器212、第2超音波受信器213、およびデータ取得装置22を靴200に配置する一例を示す概念図である。超音波送信器211、第1超音波受信器212、および第2超音波受信器213は、データ取得装置22に有線で接続される。なお、超音波送信器211、第1超音波受信器212、第2超音波受信器213、およびデータ取得装置22は、一体化されてもよい。
【0113】
右足に装着される超音波送信器211は、超音波の発信部が左足の内側(親指側の足側面)に向くように、右足の靴200の外側に配置される。右足に装着される第1超音波受信器212および第2超音波受信器213は、超音波の受信部が左足の内側に向くように、右足の靴200の外側に配置される。左足に装着される超音波送信器211は、超音波の発信部が右足の内側に向くように、左足の靴200の外側に配置される。左足に装着される第1超音波受信器212および第2超音波受信器213は、超音波の受信部が右足の内側に向くように、左足の靴200の外側に配置される。超音波送信器211、第1超音波受信器212、および第2超音波受信器213は、ユーザの左右の靴200の内側に装着されてもよい。例えば、超音波送信器211の送信部と、第1超音波受信器212および第2超音波受信器213の受信部が面する靴200の部分に、貫通孔を開けたり、メッシュ状の部分を設けたりすれば、それらの構成を靴200の内側に配置できる。
【0114】
例えば、超音波送信器211から送信される送信超音波の受信は、第1超音波受信器212および第2超音波受信器213のうち、いずれか一方を用いてもよいし、両方を用いてもよい。例えば、第1超音波受信器212および第2超音波受信器213を用いて送信超音波を受信する場合は、それらの受信器によって反射波が受信された時刻を平均化したり、反射波が先に受信された時刻を用いたりして、伝播データを生成すればよい。
【0115】
〔歩隔計測装置〕
図22は、歩隔計測装置25の構成の一例を示すブロック図である。歩隔計測装置25は、距離計算部251、高さ計算部252、歩隔計算部253、および計測制御部255を有する。なお、
図22の構成においては、伝播データやセンサデータを取得する取得部や、歩隔データを出力する出力部を省略する。また、距離計算部251、高さ計算部252、および歩隔計算部253は、第1の実施形態の対応する構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0116】
計測制御部255は、センサデータや伝播データを計測するために、データ取得装置22を制御する。センサデータや伝播データの計測における、計測制御部255によるデータ取得装置22の制御方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0117】
また、計測制御部255は、所定のタイミングにおいて、左右の靴200に設置された超音波送信器211から送信される送信超音波を用いて、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。計測制御部255は、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22から同期用パルスを超音波送信器211に出力させるタイミングを合わせることによって、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。
【0118】
例えば、計測制御部255は、予め設定された時刻において、左右の足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。例えば、計測制御部255は、計測システム2が起動するタイミングに合わせて、左右の足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。例えば、計測制御部255は、データ取得装置22が設置された靴200を履いたユーザの歩行が歩隔計測装置25によって検知されたタイミングにおいて、左右の足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。例えば、計測制御部255は、データ取得装置22が設置された靴200を履いたユーザの歩行の停止が歩隔計測装置25によって検知されたタイミングにおいて、左右の足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻を同期させる。左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の同期制御の頻度は、歩隔の計測精度に応じて設定されればよい。左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の同期制御の頻度が大きいほど、それらのデータ取得装置22の時刻のずれが小さくなり、センサデータや伝播データの計測精度が向上する。
【0119】
例えば、計測制御部255は、所定のタイミングにおいて、同期制御を行う通知(同期制御通知とも呼ぶ)をユーザの携帯端末に出力する。例えば、同期制御通知を取得した携帯端末は、音声や振動、画面表示などによって、同期制御通知を取得したことをユーザに通知するように構成すればよい。携帯端末を使用するユーザは、音声や振動、画面表示などによって同期制御通知を確認すると、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の同期制御のために、進行方向(Y方向)において爪先と踵の位置が揃うように、左右の靴200を横に並べる。例えば、ユーザは、データ取得装置22が設置された左右の靴200を履いた状態で、両足をそろえて直立することによって、左右の靴200を横に並べる。例えば、ユーザは、データ取得装置22が設置された左右の靴200を脱いだ状態で、左右の靴200を横に並べてもよい。例えば、計測制御部255は、両足に装着されたデータ取得装置22の加速度がゼロになったタイミングで、自動的に同期を開始してもよい。
【0120】
図23は、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻の同期制御について説明するための概念図である。
図23の例では、左右の靴200に設置された超音波送信器211から送信された送信超音波を、反対足の靴200の第1超音波受信器212および第2超音波受信器213で受信する。
【0121】
例えば、計測制御部255は、一方の靴200に設置された超音波送信器211からの送信超音波の送信時刻を固定し、もう一方の靴200に設置された超音波送信器211からの送信超音波の送信時刻を所定時間ずつずらしていく。計測制御部255は、両足の送信超音波の送信時刻のずれが小さくなるように、もう一方の靴200に設置された超音波送信器211からの送信超音波の送信時刻をずらしていく。計測制御部255は、両足の送信超音波の送信時刻のずれが許容時間以下になると、その時刻で、左右の靴200に設置されたデータ取得装置22の時計の時刻を同期させる。例えば、計測制御部255は、両足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻が、1ミリ秒以下の誤差になるまで時刻を近づける。両足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻が1ミリ秒以下の誤差まで近づければ、100分1ストライド分の誤差以下の精度を得ることができる。
【0122】
(動作)
次に、歩隔計測装置25による、両足の靴200に設置されたデータ取得装置22の時刻の同期制御処理について図面を参照しながら説明する。
図24は、歩隔計測装置25による、両足の靴200に設置されたデータ取得装置の時刻の同期制御処理について説明するためのフローチャートである。
図24のフローチャートに沿った処理においては、歩隔計測装置25に含まれる計測制御部255を動作主体として説明する。
【0123】
図24において、同期制御のタイミングの場合(ステップS201でYes)、計測制御部255は、両足の靴200のデータ取得装置22を同期制御し、それらの靴200に設置された超音波送信器211に同期用パルスを出力させる(ステップS202)。同期用パルスを受信した超音波送信器211は、同期用パルスに対応する送信超音波を送信する。一方、同期制御のタイミングではない場合(ステップS201でNo)、計測制御部255は、同期制御のタイミングまで待機する。
【0124】
ステップS202の次に、計測制御部255は、同期用パルスに基づく送信超音波の反射波が、第1超音波受信器212および第2超音波受信器213によって受信された受信時刻を受信する(ステップS203)。
【0125】
次に、計測制御部255は、同期用パルスに基づく送信超音波の反射波の受信時刻を比較する(ステップS204)。同期用パルスに基づく超音波の反射波の受信時刻のずれが許容時間よりも大きい場合(ステップS205でNo)、計測制御部255は、時刻調整対象のデータ取得装置22からの超音波の送信時刻をシフトさせる(ステップS206)。ステップS206の後は、ステップS205に戻る。一方、同期用パルスに基づく超音波の反射波の受信時刻のずれが許容時間以下の場合(ステップS205でYes)、計測制御部255は、シフトさせた送信時刻に合わせて、時刻調整対象のデータ取得装置22の時計(図示しない)の時刻を更新する(ステップS207)。
【0126】
以上のように、本実施形態の計測システムは、超音波送受信装置、データ取得装置、および歩隔計測装置を備える。超音波送受信装置、データ取得装置、および歩隔計測装置を備える。超音波送受信装置は、ユーザの両足の各々に装着される。超音波送受信装置は、超音波の送受信方向が足の内側に向くように配置される。データ取得装置は、ユーザの両足の各々に配置される。データ取得装置は、ユーザの歩行に応じて空間加速度および空間角速度を計測し、計測された空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成する。また、データ取得装置は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置を制御し、超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを生成する。データ種痘装置は、生成されたセンサデータおよび伝播データを歩隔計測装置に送信する。
【0127】
本実施形態の歩隔計測装置は、距離計算部、高さ計算部、歩隔計算部、および計測制御部を備える。距離計算部は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算する。高さ計算部は、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算する。歩隔計算部は、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。計測制御部は、センサデータに含まれる空間加速度および空間角速度の時系列データに基づいてユーザの歩行における歩行パラメータを検出し、歩行パラメータが検出されたタイミングに応じてデータ取得装置を制御する。
【0128】
本実施形態の歩隔計測装置は、超音波の送受信時刻に関する伝播データと、空間加速度および空間角速度を含むセンサデータとを用いることによって、歩行時における歩隔をリアルタイムで計測できる。そのため、本実施形態の歩隔計測装置によれば、日常の歩行時における歩隔を計測できる。
【0129】
本実施形態の一態様において、計測制御部は、ユーザの両足に装着された超音波送受信装置から超音波を送信させる。計測制御部は、一方の足の超音波送受信装置から超音波が送信されるタイミングを、他方の足に装着された超音波送受信装置から超音波が送信されるタイミングに近づけるようにデータ取得装置を制御する。このように制御して、計測制御部は、ユーザの両足に装着されたデータ取得装置の時刻を同期させる。本態様によれば、両足に装着された超音波送受信装置から送信される超音波の送信時刻を近づけることによって、両足に装着されたデータ取得装置の時刻を同期させることができる。
【0130】
本実施形態の手法においては、両足が横方向にそろったタイミングにおいて、一方の足に装着された超音波送信器から送信された送信超音波が、他方の足に装着された二つの超音波受信器によって同時に受信される。そのため、本実施形態の手法によれば、両足の同期が取れるため、より正確な歩隔を計測できる。また、本実施形態の手法によれば、両足が横方向にそろったタイミングとして、足交差のタイミングを正確に検出できる。足交差のタイミングにおいては、両足間距離が最短になり、一方の足に装着された超音波送信器から送信される送信超音波の反射波の強度が最大になる。すなわち、本実施形態の手法によれば、足交差のタイミングを特定して歩隔を計測することによって、より正確な歩隔を計測できる。
【0131】
本実施形態の手法による両足のデータ取得装置の時刻の同期は、歩隔の計測以外にも適用できる。本実施形態の手法によって両足のデータ取得装置の時刻を同期させれば、両足のデータ取得装置によって取得されるセンサデータの時刻を正確に合わせることができる。両足のデータ取得装置によって取得されるセンサデータの時刻を正確に合わせることができれば、両足の動きに基づく物理量に応じて、種々の歩行イベントをより正確に計測できる。
【0132】
なお、本実施形態の手法による両足のデータ取得装置の時刻の同期は、超音波受信器が単一の場合にも適用できる。また、本実施形態の手法による両足のデータ取得装置の時刻の同期は、超音波送信器が複数の場合にも適用できる。すなわち、本実施形態の手法による両足のデータ取得装置の時刻の同期は、超音波送信器や超音波受信器の数によらず、超音波送信器や超音波受信器が任意の数の場合に適用できる。
【0133】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る歩隔計測装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の歩隔計測装置は、第1~第2の実施形態の歩隔計測装置を簡略化した構成である。なお、本実施形態の歩隔計測装置単体で、計測システムを構成してもよい。
【0134】
図25は、本実施形態の歩隔計測装置35の構成の一例を示すブロック図である。歩隔計測装置35は、距離計算部351、高さ計算部352、および歩隔計算部353を備える。距離計算部351は、ユーザの両足の各々に装着された超音波送受信装置によって送受信される超音波の送受信時刻に関する伝播データを用いて、ユーザの両足間距離を計算する。高さ計算部352は、ユーザの両足の各々に装着されたセンサによって計測された空間加速度および空間角速度を含むセンサデータを用いて、センサの高さを計算する。歩隔計算部353は、同一のタイミングで計測された両足間距離とセンサの高さとを用いて、ユーザの歩隔を計算する。
【0135】
本実施形態の歩隔計測装置は、超音波の送受信時刻に関する伝播データと、空間加速度および空間角速度を含むセンサデータとを用いることによって、歩行時における歩隔をリアルタイムで計測できる。そのため、本実施形態の歩隔計測装置によれば、日常の歩行時における歩隔を計測できる。
【0136】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る歩隔計測装置や制御部等の処理を実行するハードウェア構成について、
図26のコンピュータ90を一例として挙げて説明する。なお、
図26のコンピュータ90は、各実施形態の歩隔計測装置等の処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0137】
図26のように、コンピュータ90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図26においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0138】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、コンピュータ90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る歩隔計測装置等による処理を実行する。
【0139】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0140】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0141】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、コンピュータ90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0142】
コンピュータ90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0143】
また、コンピュータ90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、コンピュータ90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介してコンピュータ90に接続すればよい。
【0144】
また、コンピュータ90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、コンピュータ90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介してコンピュータ90に接続すればよい。
【0145】
以上が、本発明の各実施形態に係る歩隔計測装置等を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図26のハードウェア構成は、各実施形態に係る歩隔計測装置等の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る歩隔計測装置等に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0146】
各実施形態の歩隔計測装置等の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の歩隔計測装置等の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0147】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0148】
1、2 計測システム
10、20 データ計測装置
11、21 超音波送受信装置
12、22 データ取得装置
15、25、35 歩隔計測装置
17 表示装置
111、211 超音波送信器
112 超音波受信器
121 加速度センサ
122 角速度センサ
123 制御部
125 データ送信部
151、251、351 距離計算部
152、252、352 高さ計算部
153、253、353 歩隔計算部
155、255 計測制御部
212 第1超音波受信器
213 第2超音波受信器