(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/14 20060101AFI20240925BHJP
B65C 9/42 20060101ALI20240925BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240925BHJP
B41J 3/36 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
B65H7/14
B65C9/42
B41J11/42
B41J3/36 Z
(21)【出願番号】P 2021012855
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】本山 浩之
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-61698(JP,A)
【文献】特開2015-142975(JP,A)
【文献】特開2018-001487(JP,A)
【文献】特開2018-001703(JP,A)
【文献】特開2020-138825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
B65C 9/42
B41J 11/00
-11/70
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の台紙に複数のラベルが間隔を空けて配置されると共に前記ラベルの位置を示すマークが前記ラベル毎に形成されたラベル紙を含む複数種類の印刷媒体へ印刷を実行可能な印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送部と、
前記搬送方向における所定位置で前記印刷媒体へ印刷する印刷ヘッドと、
前記搬送方向において前記印刷ヘッドよりも上流の位置に配設されており、前記ラベル紙の前記ラベルが配置されていない前記台紙の領域から前記ラベルの領域へ切り替わる境界をラベル位置として検出可能な透過型の光学センサー、および、前記マークをラベル位置として検出可能な反射型の光学センサーと、
前記ラベルを前記搬送方向における前記印刷ヘッドによる印刷位置へ位置決めする前記印刷媒体の搬送である位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、前記透過型の光学センサーまたは前記反射型の光学センサーのいずれかに決定するセンサー決定処理をし、前記センサー決定処理により決定したセンサーが検出する前記ラベル毎のラベル位置に基づいて前記搬送部を制御して前記ラベル毎の前記位置決め処理を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記センサー決定処理では、
前記搬送部に前記印刷媒体を搬送させながら、前記透過型の光学センサーと前記反射型の光学センサーとのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、
前記第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記印刷媒体を搬送する第1搬送を前記搬送部に実行させ、
前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置を検出することなく前記第1搬送が終了した場合は、前記第1センサーを、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、
前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、前記第1センサーと前記第2センサーとのうち、前記第1ラベル位置と前記第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち前記印刷位置に近い方の位置を検出したセンサーを、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置の検出に成功し、前記第1センサーと前記第2センサーとのうち、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定した方のセンサーを主センサーとし、他方のセンサーをサブセンサーとしたとき、
前記主センサーが前記ラベル毎に検出した各ラベル位置と前記主センサーとの前記搬送方向における相対位置の情報である第1位置管理情報を、前記印刷媒体の搬送に応じて更新しつつ記憶し、かつ、前記サブセンサーが前記ラベル毎に検出した各ラベル位置と前記サブセンサーとの前記搬送方向における相対位置の情報である第2位置管理情報を、前記印刷媒体の搬送に応じて更新しつつ記憶し、
前記位置決め処理では、前記第1位置管理情報に基づいて、前記印刷位置より前記搬送方向上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記搬送部を制御し、
前記制御部は、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、前記主センサーから前記サブセンサーへ変更する旨の指示を受けた場合、前記位置決め処理では、前記第2位置管理情報に基づいて、前記印刷位置より前記搬送方向上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記搬送部を制御する、ことを特徴とする請求項1の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記センサー決定処理では、前記搬送部に前記印刷媒体を所定距離搬送させても前記透過型の光学センサーおよび前記反射型の光学センサーのいずれもラベル位置を検出できない場合は、前記搬送部に前記印刷媒体を前記搬送方向の逆方向へ第2所定距離搬送させ、前記逆方向への搬送が終了した時点で前記印刷ヘッドと対向している前記印刷媒体の位置を印刷開始位置に決定して前記センサー決定処理を終え、
以後の印刷では前記印刷開始位置を基準にして前記搬送部による搬送を制御し、
前記第2所定距離は、前記印刷媒体の先端が前記印刷ヘッドと対向する位置まで到達するために必要な距離である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記センサー決定処理では、前記搬送部に前記印刷媒体を所定距離搬送させても前記透過型の光学センサーおよび前記反射型の光学センサーのいずれもラベル位置を検出できない場合は、前記搬送部に前記印刷媒体を前記搬送方向の逆方向へ搬送させ、前記透過型の光学センサーまたは前記反射型の光学センサーのいずれかが前記印刷媒体の先端を検出したとき、前記先端を前記印刷媒体の印刷開始位置に決定して前記センサー決定処理を終え、
前記印刷開始位置が前記印刷位置へ到達するまで前記搬送部に前記印刷媒体を搬送させると共に、以後の印刷では前記印刷開始位置を基準にして前記搬送部による搬送を制御する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
長尺状の台紙に複数のラベルが間隔を空けて配置されると共に前記ラベルの位置を示すマークが前記ラベル毎に形成されたラベル紙を含む複数種類の印刷媒体へ印刷するための印刷制御方法であって、
前記印刷媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、
前記ラベルを前記搬送方向における所定位置に配設された印刷ヘッドによる印刷位置へ位置決めする前記印刷媒体の搬送である位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、前記搬送方向において前記印刷ヘッドよりも上流の位置に配設されており、前記ラベル紙の前記ラベルが配置されていない前記台紙の領域から前記ラベルの領域へ切り替わる境界をラベル位置として検出可能な透過型の光学センサー、および、前記マークをラベル位置として検出可能な反射型の光学センサー、のうちのいずれかに決定するセンサー決定工程と、
前記センサー決定工程により決定したセンサーが検出する前記ラベル毎のラベル位置に基づいて前記搬送を制御して前記ラベル毎の前記位置決めを行う前記位置決め工程と、
前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体へ印刷する印刷工程と、を備え、
前記センサー決定工程では、
前記印刷媒体を搬送しながら、前記透過型の光学センサーと前記反射型の光学センサーとのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、
前記第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記印刷媒体を搬送する第1搬送を実行し、
前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置を検出することなく前記第1搬送が終了した場合は、前記第1センサーを、前記位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、
前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、前記第1センサーと前記第2センサーとのうち、前記第1ラベル位置と前記第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち前記印刷位置に近い方の位置を検出したセンサーを、前記位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する、ことを特徴とする印刷制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターは、長尺状の台紙に複数のラベルが間隔を空けて配置されたラベル紙へ印刷をする場合、ラベル紙を搬送しながらラベルをセンサーで検出し、検出したラベルを印刷ヘッドによる印刷位置へ位置決めする。このような位置決め処理を、頭出し処理とも言う。位置決め処理のためにラベルを検出する方法は、透過型の光学センサーにより、ラベル間の台紙の領域からラベルの領域へ切り替わる境界を検出する方法(以下、ギャップ検出方法)と、台紙においてラベル毎の先端位置に対応して予め印刷されているマークを反射型の光学センサーで検出する方法(以下、マーク検出方法)と、の二通りがある。
【0003】
関連技術として、透過型、反射型兼用のセンサーによる透過受光レベルおよび反射受光レベルに基づいて、ロール紙の種類が、ダイカットラベル紙またはマーク付きラベル紙であるか、否か(普通紙であるか)、を判定するプリンターが開示されている(特許文献1参照)。前記文献1によれば、紙種がダイカットラベル紙またはマーク付きラベル紙である場合、つまりセンサー上に印刷不能な台紙部が存在する場合、台紙部の上流直近のラベル部を印刷ヘッドの印刷位置下へ搬送して、セルフ印刷の印刷開始位置を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザーは、ラベル検出のためにギャップ検出方法とマーク検出方法とのいずれを採用するかを予め設定することができる。それぞれの検出方法にとって、ラベル検出に適した印刷媒体とそうでない印刷媒体とがある。そのため、検出方法の設定と、使用する印刷媒体の種類とが合っていないと、位置決め処理のためのラベル検出ができず、ラベルの検出エラーに陥ってしまう。さらに、適切な検出方法を設定することに加え、位置決め処理の過程で、印刷されないまま搬送方向下流へ搬送されるラベルの発生、つまりラベルの損失を、できるだけ抑制するための工夫も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
長尺状の台紙に複数のラベルが間隔を空けて配置されると共に前記ラベルの位置を示すマークが前記ラベル毎に形成されたラベル紙を含む複数種類の印刷媒体へ印刷を実行可能な印刷装置は、前記印刷媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送部と、前記搬送方向における所定位置で前記印刷媒体へ印刷する印刷ヘッドと、前記搬送方向において前記印刷ヘッドよりも上流の位置に配設されており、前記ラベル紙の前記ラベルが配置されていない前記台紙の領域から前記ラベルの領域へ切り替わる境界をラベル位置として検出可能な透過型の光学センサー、および、前記マークをラベル位置として検出可能な反射型の光学センサーと、前記ラベルを前記搬送方向における前記印刷ヘッドによる印刷位置へ位置決めする前記印刷媒体の搬送である位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、前記透過型の光学センサーまたは前記反射型の光学センサーのいずれかに決定するセンサー決定処理をし、前記センサー決定処理により決定したセンサーが検出する前記ラベル毎のラベル位置に基づいて前記搬送部を制御して前記ラベル毎の前記位置決め処理を実行する制御部と、を備える。前記制御部は、前記センサー決定処理では、前記搬送部に前記印刷媒体を搬送させながら、前記透過型の光学センサーと前記反射型の光学センサーとのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、前記第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記印刷媒体を搬送する第1搬送を前記搬送部に実行させ、前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置を検出することなく前記第1搬送が終了した場合は、前記第1センサーを、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、前記第1センサーと前記第2センサーとのうち、前記第1ラベル位置と前記第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち前記印刷位置に近い方の位置を検出したセンサーを、前記位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する。
【0007】
長尺状の台紙に複数のラベルが間隔を空けて配置されると共に前記ラベルの位置を示すマークが前記ラベル毎に形成されたラベル紙を含む複数種類の印刷媒体へ印刷するための印刷制御方法は、前記印刷媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送工程と、前記ラベルを前記搬送方向における所定位置に配設された印刷ヘッドによる印刷位置へ位置決めする前記印刷媒体の搬送である位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、前記搬送方向において前記印刷ヘッドよりも上流の位置に配設されており、前記ラベル紙の前記ラベルが配置されていない前記台紙の領域から前記ラベルの領域へ切り替わる境界をラベル位置として検出可能な透過型の光学センサー、および、前記マークをラベル位置として検出可能な反射型の光学センサー、のうちのいずれかに決定するセンサー決定工程と、前記センサー決定工程により決定したセンサーが検出する前記ラベル毎のラベル位置に基づいて前記搬送を制御して前記ラベル毎の前記位置決めを行う前記位置決め工程と、前記印刷ヘッドにより前記印刷媒体へ印刷する印刷工程と、を備える。前記センサー決定工程では、前記印刷媒体を搬送しながら、前記透過型の光学センサーと前記反射型の光学センサーとのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、前記第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が前記印刷位置へ到達するように前記印刷媒体を搬送する第1搬送を実行し、前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置を検出することなく前記第1搬送が終了した場合は、前記第1センサーを、前記位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、前記第1搬送の期間中に前記第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、前記第1センサーと前記第2センサーとのうち、前記第1ラベル位置と前記第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち前記印刷位置に近い方の位置を検出したセンサーを、前記位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】ラベル紙が時間の進みに応じて搬送方向の下流へ移動する様子を示す図。
【
図5】ステップS120で“Yes”と判定した後の処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】ステップS120で“Yes”と判定した後の処理の他の例を示すフローチャート。
【
図7】主センサー変更に関する制御処理を説明するための図。
【
図8】主センサー変更に関する制御処理であって
図7と異なる例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0010】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。
印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、印刷部16、記憶部22等を備える。印刷部16は、搬送部17、キャリッジ18、印刷ヘッド19、透過型光学センサー20、反射型光学センサー21等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0011】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0012】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0013】
表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。記憶部22は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブや、その他のメモリーや記憶装置である。RAM11cを、記憶部22の一部と解してもよい。また、記憶部22は、制御部11に含まれると解してもよい。
【0014】
印刷部16は、例えば、インクジェット方式により印刷を行う機構である。
搬送部17は、所定の搬送方向へ印刷媒体を搬送するための手段であり、例えば、ローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。搬送方向の上流、下流を、単に上流、下流とも言う。印刷ヘッド19は、不図示のノズルを複数有する。印刷ヘッド19は、制御部11によって生成された、画像をインクで印刷するための印刷データに基づいて、各ノズルからインクのドットを吐出したり吐出しなかったりすることにより、印刷媒体へ画像を印刷する。印刷ヘッド19は、例えば、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インク等の各色インクを吐出可能である。むろん、印刷ヘッド19は、CMYK以外の色のインクや液体も吐出するとしてもよい。
【0015】
キャリッジ18は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて所定の主走査方向に沿って往復移動可能な機構である。主走査方向は、搬送方向に対して交差している。ここで言う交差は、直交あるいはほぼ直交と解してよい。キャリッジ18は印刷ヘッド19を搭載している。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ18とともに、主走査方向に沿って往復移動する。
【0016】
主走査方向に沿ったキャリッジ18の移動に伴い印刷ヘッド19がインクを吐出する動作を、主走査、あるいはパスと呼ぶ。印刷部16は、パスと、搬送部17による印刷媒体の搬送方向への一定量の搬送とを組み合わせることにより、印刷媒体への印刷を行う。
【0017】
透過型光学センサー20は、搬送部17により搬送される印刷媒体が通過する搬送路を挟んで対向する、発光部と、発光部からの光を受光して印刷媒体における透過光量を検出する受光部と、を備える。透過型光学センサー20は、ギャップ検出方法を行うためのセンサーである。反射型光学センサー21は、搬送路に配設された、発光部と、発光部が発する光の反射光を受光して印刷媒体による反射光量を検出する受光部と、を備える。反射型光学センサー21は、マーク検出方法を行うためのセンサーである。透過型光学センサー20および反射型光学センサー21は、いずれも印刷ヘッド19より上流に配設されている。
【0018】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、互いに通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。
つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11として機能する印刷制御装置と、印刷部16に該当するプリンターと、を含む。このような印刷装置10または印刷システム10により、本実施形態の印刷制御方法が実現される。
【0019】
図2は、印刷媒体の一種であるラベル紙30の表面30aと裏面30bとを同時に示している。ラベル紙30は、長尺状の台紙31と、台紙31の上に粘着剤で貼り付けられた複数のラベル32とを有する。ラベル32に対して印刷が施される。裏面30bは、台紙31のラベル32が貼り付けられていない方の面である。ラベル32は、一定あるいはほぼ一定の間隔を空けて、台紙31の長手方向に沿って複数配置されている。
図2では、台紙31の長手方向を搬送方向D1に一致させている。
【0020】
表面30aのうち、ラベル32以外の領域を台紙領域33と呼ぶ。ラベル32とラベル32との隙間34は、台紙領域33の一部である。台紙領域33においては、ラベル32と同じ素材の層(以下、余材)が、ラベル32と共に台紙31に貼り付けられたままのこともあれば、予め剥がされていることもある。つまり、ラベル紙30には、余材が除去されている種類と、余材が残っている種類とがある。余材が除去されていれば、台紙領域33では、台紙31そのものが露出していることになる。
【0021】
図2の例によれば、ラベル紙30の裏面30bには、表面30aに有るラベル32毎の先端の位置を示すマーク35が予め形成されている。印刷媒体やラベル32等に関して、先端とは、下流を向く端部を意味する。マーク35は、台紙31とは異なる色であり、例えば黒色である。マーク35の形状は、検出に適した形状であればよく特に限定されない。なお、ラベル紙30の種類によっては、このようなマーク35を有さないタイプもある。
【0022】
このように、印刷装置10が使用可能なラベル紙30の種類としては、余材が有る種類、無い種類、マーク35が有る種類、無い種類といったように様々である。また、ラベル紙と称しても、素材は紙に限定されず、例えば、フィルム素材の媒体であってもよい。また、印刷装置10は、ラベル紙以外の種類の印刷媒体、例えば、普通紙への印刷も実行可能である。
【0023】
余材が無いラベル紙30においては、隙間34とラベル32の領域とでは、厚みの相違により光の透過量が異なる。従って、透過型光学センサー20は、余材が無いラベル紙30が搬送されている場合、受光部が受光する透過光量の変化に基づいて、隙間34からラベル32の領域へ切り替わる境界、つまりラベル32の先端を、ラベル位置として検出することができる。また、反射型光学センサー21は、裏面30bにマーク35が形成されているラベル紙30が搬送されている場合、受光部が受光する反射光量の変化に基づいて、台紙31の色からマーク35の色へ切り替わる境界、つまりラベル32の先端を、ラベル位置として検出することができる。なお、マーク35は、裏面30bにおいて隙間34に対応する位置に形成されていて、反射型光学センサー21は、マーク35の色から台紙31の色へ切り替わる境界をラベル32の先端として検出してもよい。透過型光学センサー20、反射型光学センサー21それぞれによる検出結果を示す信号は、制御部11へ送信される。
【0024】
2.印刷制御処理:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する印刷制御処理をフローチャートにより示している。制御部11は、印刷媒体が印刷装置10へセットされたことを契機として、当該フローチャートを開始する。ユーザーは、印刷装置10が有する不図示の印刷媒体用の収納位置へ、ロール状に巻かれた印刷媒体を収納するとともに、この印刷媒体の先端を搬送経路内へある程度挿入することにより、印刷装置10への印刷媒体のセットを完了する。制御部11は、このようなセットの完了を、ユーザーからの入力や所定のセンサーによるセンシングで認識したとき、印刷媒体が印刷装置10へセットされたと認識する。
【0025】
ステップS100では、制御部11は、搬送部17を制御して搬送方向D1への印刷媒体の搬送を開始する。つまり、「搬送工程」を開始する。また、制御部11は、ステップS100の搬送開始を契機として、透過型光学センサー20、反射型光学センサー21の夫々に、ラベル位置の検出を開始させる。以下に説明するように、ステップS100~S170は、ラベルを搬送方向D1における印刷ヘッド19による「印刷位置」へ位置決めする印刷媒体の搬送である「位置決め処理」のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを決定する、「センサー決定処理」に該当する。
【0026】
ステップS110では、制御部11は、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のどちらかがラベル位置の検出に成功したか否かを判定する。制御部11は、透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のどちらもラベル位置の検出に成功していない場合は、“No”の判定からステップS120へ進む。一方、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のどちらかがラベル位置の検出に成功した場合、制御部11は、“Yes”の判定からステップS130へ進む。
【0027】
ステップS120では、制御部11は、ステップS100による搬送開始以降の印刷媒体の搬送距離が、所定距離に達したか否かを判定し、所定距離に達していない場合は、“No”の判定からステップS110へ戻る。ここで言う所定距離とは、印刷装置10へセットされた印刷媒体から、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のどちらかでラベル位置を検出するために十分な搬送距離であり、予め決められている。
【0028】
制御部11は、ステップS110の“No”の判定が続く状態で、ステップS100による搬送開始以降の印刷媒体の搬送距離が所定距離に達した場合、ステップS120で“Yes”と判定する。印刷媒体が、例えば、余材が有り且つマーク35が無いラベル紙であったり、一般的な普通紙であったりする場合は、ステップS120で“Yes”と判定される。ステップS120で“Yes”と判定した場合の処理については後述する。
【0029】
制御部11は、ステップS110において“Yes”と判定したとき、透過型光学センサー20と反射型光学センサー21とのうち、この時点でラベル位置の検出に成功した方のセンサーを「第1センサー」とし、他方のセンサーを「第2センサー」として認識する。第1センサーは、透過型光学センサー20と反射型光学センサー21とのうち“先にラベル位置の検出に成功した方のセンサー”である。
【0030】
ステップS130では、制御部11は、ステップS110のタイミングで第1センサーにより検出されたラベル位置である「第1ラベル位置」が、印刷位置へ到達するように印刷媒体を搬送する「第1搬送」を、搬送部17に開始させる。なお、印刷媒体の搬送はステップS100で開始されているため、ステップS100で開始した搬送の途中から第1搬送が始まる。搬送部17は、ステップS100で開始した搬送と、第1搬送との間で一旦搬送を止めたりする必要は無い。
【0031】
ステップS140では、制御部11は、第2センサーがラベル位置の検出に成功したか否かを判定する。制御部11は、第2センサーがラベル位置の検出に成功していない場合は、“No”の判定からステップS150へ進む。一方、第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合、制御部11は、“Yes”の判定からステップS160へ進む。ステップS140の“Yes”は、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合、に該当する。なお、ステップS140のタイミングで第2センサーにより検出されたラベル位置を「第2ラベル位置」と呼ぶ。
【0032】
ステップS150では、制御部11は、第1搬送が終了したか否かを判定し、第1搬送が終了していない場合は、“No”の判定からステップS140へ戻る。制御部11は、ステップS140の“No”の判定が続く状態で、第1ラベル位置が印刷位置へ到達したときに、第1搬送の終了、つまりステップS150で“Yes”と判定する。ステップS150の“Yes”からステップS170へ進む。ステップS150の“Yes”は、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置を検出できずに第1搬送が終了した場合、に該当する。
【0033】
ステップS160では、制御部11は、第1センサーと第2センサーとのうち、第1ラベル位置と第2ラベル位置とのうち印刷位置に近い方の位置を検出したセンサーを“位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサー”に決定する。以下では、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを「主センサー」と呼び、第1センサーと第2センサーとのうち主センサーではない方のセンサーを「サブセンサー」と呼ぶ。
一方、ステップS170では、制御部11は、第1センサーを主センサーに決定する。
【0034】
図3ではステップS180として簡単に記載しているが、ステップS160またはステップS170のいずれかで主センサーを決定した制御部11は、主センサーが検出するラベル毎のラベル位置に基づいて搬送部17を制御することにより、ラベル毎の位置決め処理を実行し、かつ、位置決めしたラベルを対象とした印刷を、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御することにより実行する。ステップS180は「印刷工程」を含んでいる。
【0035】
次に、
図4を参照して
図3のフローチャートを具体的に説明する。
図4では、搬送方向D1に沿って搬送される一枚のラベル紙30が、時間の進みに応じて下流へ移動する様子を示している。つまり、時刻T1,T2,T3,T4…といった各タイミングにおけるラベル紙30を示している。なお、
図4では、ラベル紙30の表面30aを示しており、ラベル紙30は余材を有さず、かつ、ラベル32毎のマーク35を有するものと仮定する。
図4では、裏面30bに形成された各マーク35を破線で示している。また、
図4において、ラベル32の領域内に括弧書きで記した数字は、ラベル紙30の先端から数えて何枚目のラベル32であるかを示している。
【0036】
符号P0は、搬送方向D1における透過型光学センサー20の位置であるギャップ検出位置P0を示している。符号P1は、搬送方向D1における反射型光学センサー21の位置であるマーク検出位置P1を示している。符号P2は、搬送方向D1における印刷ヘッド19による印刷位置P2を示している。
図4では参考までに、印刷ヘッド19および印刷ヘッド19を搭載するキャリッジ18を二点鎖線で簡単に示し、さらに、符号D2の矢印により、搬送方向D1に交差する主走査方向D2を示している。
【0037】
図4の例によれば、透過型光学センサー20は反射型光学センサー21よりも上流に配設されている。ただし、印刷装置10は、製品によっては透過型光学センサー20よりも反射型光学センサー21を上流に配設した構成であることもある。いずれにしても、制御部11にとっては、印刷装置10における位置P0,P1,P2や、これら位置P0,P1,P2間の距離は既知の情報である。
【0038】
時刻T1のラベル紙30は、ユーザーによって印刷装置10へセットされた直後の状態、つまり、ステップS100による搬送が開始される時点の印刷媒体である。
図4の例では、ラベル紙30が印刷装置10へセットされた時点で、ラベル紙30の先端はギャップ検出位置P0よりも下流に在る。
【0039】
時刻T1にラベル紙30の搬送が開始された後、時刻T2に、3枚目のラベル32の先端がギャップ検出位置P0に到達する。このとき、透過型光学センサー20が3枚目のラベル32の先端を検出する。つまり、
図4の例によれば、時刻T2に3枚目のラベル32の先端が第1ラベル位置として検出され(ステップS110において“Yes”)、この結果、第1ラベル位置を検出した透過型光学センサー20が第1センサーとなり、他方の反射型光学センサー21が第2センサーとなる。
【0040】
図4の例によれば、時刻T2から第1搬送が開始される(ステップS130)。時刻T2から3枚目のラベル32の先端が印刷位置P2に到達するまでの搬送が第1搬送である。制御部11は、搬送部17に、ギャップ検出位置P0から印刷位置P2までの距離に相当する分の搬送をさせることにより第1搬送を実行すればよい。第1搬送の開始後、時刻T3に、1枚目のラベル32の先端がマーク検出位置P1に到達する。このとき、第2センサーとしての反射型光学センサー21が1枚目のラベル32のマーク35に応じて、1枚目のラベル32の先端を検出する。つまり、
図4の例によれば、時刻T3に1枚目のラベル32の先端が第2ラベル位置として検出され(ステップS140において“Yes”)、制御部11はステップS160に進む。
【0041】
なお、透過型光学センサー20や反射型光学センサー21は夫々に、印刷媒体が無い状態から有る状態への変化、つまり印刷媒体の先端も検出可能である。ただし、印刷媒体の先端と、ラベル32の先端とでは、各センサーの受光部が取得する受光量の変化度合が異なる。そのため、各センサーは、印刷媒体の先端とラベル32の先端とを、区別して検出可能である。
【0042】
第2ラベル位置である1枚目のラベル32の先端は、第1ラベル位置である3枚目のラベル32の先端よりも、印刷位置P2に近い。従って、ステップS160では、制御部11は、第2ラベル位置を検出した第2センサーである反射型光学センサー21を主センサーに決定する。同時に、第1センサーである透過型光学センサー20がサブセンサーとなる。
【0043】
このように、反射型光学センサー21を主センサーに決定した後のステップS180では、制御部11は、反射型光学センサー21が検出するラベル位置に基づいて位置決め処理を行う。つまり、制御部11は、反射型光学センサー21が検出するラベル位置が印刷位置P2へ到達するように、搬送部17にラベル紙30を搬送させる。なお、第2ラベル位置が印刷位置P2へ到達するように印刷媒体を搬送する処理を「第2搬送」と呼んでもよい。
図4の例では、時刻T3に1枚目のラベル32の先端が第2ラベル位置として検出され、第2ラベル位置を検出した反射型光学センサー21を主センサーに決定した時点で、時刻T2に始まった第1搬送は途中で終わり、搬送は第2搬送へ切り替わる。むろん、搬送部17は、第1搬送と第2搬送との間で一旦搬送を止めたりする必要は無い。
【0044】
図4の例によれば、時刻T3から第2搬送が開始され、1枚目のラベル32の先端が印刷位置P2へ到達した時刻T4に、第2搬送が終了する。制御部11は、搬送部17に、マーク検出位置P1から印刷位置P2までの距離に相当する分の搬送をさせることにより第2搬送を実行すればよい。このような第2搬送は、印刷媒体が印刷装置10へセットされた後の、主センサーが検出するラベル位置に基づく最初の位置決め処理と言える。制御部11は、先端が印刷位置P2に位置決めされたラベル32を対象として印刷ヘッド19による印刷を実行する。この後も、制御部11は、主センサーが検出する2枚目のラベル32の先端、3枚目のラベル32の先端、4枚目のラベル32の先端…がそれぞれ印刷位置P2へ到達するように、搬送部17を制御してラベル32毎の位置決め処理を繰り返し行う。
【0045】
図4の最も下には、透過型光学センサー20を主センサーに設定した状態で、印刷媒体セット後の最初の位置決め処理が終了した場面を想定して、時刻T5のラベル紙30を示している。透過型光学センサー20が主センサーに設定されている場合、時刻T2に透過型光学センサー20により3枚目のラベル32の先端を検出したことを契機として、この3枚目のラベル32の先端が印刷位置P2に到達するように位置決め処理を行うことになる。その結果、1枚目および2枚目のラベル32は、印刷されることなく印刷ヘッド19よりも下流へ搬送され、ラベル32の損失が発生する。
【0046】
これに対して本実施形態では、制御部11は、印刷媒体セット後、透過型光学センサー20および反射型光学センサー21がそれぞれにラベル位置を検出できた場合には、第1ラベル位置および第2ラベル位置のうち印刷位置P2により近いラベル位置を検出した方のセンサーを主センサーに決定する。この結果、
図3,4の説明から解るように、時刻T5ではなく時刻T4のラベル紙30に対して印刷を開始することが可能となり、ラベル32の損失を抑制することができる。
【0047】
ここで、仮にマーク検出位置P1が
図4に示す位置よりもギャップ検出位置P0に近い位置に配設されている場合、ステップS100による搬送開始後、透過型光学センサー20よりも反射型光学センサー21の方が先にラベル32の先端を検出する可能性がある。透過型光学センサー20よりも反射型光学センサー21の方が先にラベル32の先端を検出した場合は、反射型光学センサー21が第1センサー、透過型光学センサー20が第2センサーとなるが、この場合、反射型光学センサー21が検出したラベル位置(第1ラベル位置)の方が、その後に透過型光学センサー20が検出するラベル位置(第2ラベル位置)よりも印刷位置P2に近い。そのため、結局、反射型光学センサー21が主センサーとなり、ラベル32の損失抑制という効果が得られる。
【0048】
また、
図4とは逆に、マーク検出位置P1がギャップ検出位置P0よりも上流に配設された構成であってもよい。この場合は、マーク検出位置P1とギャップ検出位置P0との距離等に応じて、反射型光学センサー21が第1センサーとなったり、透過型光学センサー20が第1センサーとなったりし得るが、ステップS160では、相対的に下流に在る透過型光学センサー20が主センサーに決定されるため、上述の説明と同様にラベル32の損失抑制という効果が得られる。
【0049】
なお、
図4に示すラベル紙30が仮にマーク35を有さない種類であれば、ステップS100による搬送開始後、透過型光学センサー20がいずれかのラベル32の先端を第1ラベル位置として検出した後、第2センサーとしての反射型光学センサー21によりラベル32の先端が検出されないまま第1搬送が終了する。この場合、ステップS170において、第1センサーとしての透過型光学センサー20を主センサーに決定することになる。また、
図4に示すラベル紙30が仮に余材を有する種類であれば、ステップS100による搬送開始後、反射型光学センサー21がマーク35に応じていずれかのラベル32の先端を第1ラベル位置として検出した後、第2センサーとしての透過型光学センサー20によりラベル32の先端が検出されないまま第1搬送が終了する。この場合、ステップS170において、第1センサーとしての反射型光学センサー21を主センサーに決定することになる。
【0050】
ステップS170で主センサーを決定した場合は、結果的に第1搬送が、印刷媒体が印刷装置10へセットされた後の、主センサーが検出するラベル位置に基づく最初の位置決め処理となる。このように本実施形態によれば、印刷装置10へセットされたラベル紙30に応じて、そのラベル紙30からラベル位置を検出することに適したセンサーが主センサーに決定される。主センサーを決定することは、ラベルの検出方法を設定することと同義である。
【0051】
3.ラベル位置検出不能の場合の処理:
ステップS120で“Yes”と判定した場合、つまり、ステップS100の搬送開始以降、印刷媒体を所定距離搬送しても透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のいずれもラベル位置を検出できない場合の処理について、
図5または
図6を参照して説明する。
図5および
図6はいずれも、ステップS120で“Yes”と判定した後の処理をフローチャートで示している。制御部11は、
図5,6のフローチャートのどちらを実行してもよい。
【0052】
先ず、
図5を説明する。ステップS190では、制御部11は、搬送部17を制御して、印刷媒体を搬送方向D1の逆方向、つまり下流から上流に向かって所定距離搬送させる。搬送方向D1の逆方向への搬送をバックフィードと呼ぶ。ここでは、ステップS120で判定する所定距離を第1所定距離と呼び、テップS190でバックフィードする所定距離を、第2所定距離と呼ぶ。第1所定距離>第2所定距離、と解してよい。第2所定距離は、印刷媒体の先端が印刷ヘッド19と対向する位置に到達するまでに必要な距離である。印刷媒体の先端位置は、記憶部22に記憶されており、印刷媒体が搬送されるたびにその値が更新される。印刷媒体の先端の位置は、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21を用いて検出してもよいし、印刷媒体の先端を検出可能な別のセンサーを備えていてもよい。ステップS190のバックフィードの結果、印刷媒体は、その先端位置が印刷ヘッド19と対向する位置で停止する。
【0053】
ステップS200では、制御部11は、ステップS190のバックフィードが終了した時点において、印刷ヘッド19と対向している印刷媒体の位置(印刷媒体の先端)を、印刷媒体の「印刷開始位置」に決定する。この場合、印刷開始位置を決定してセンサー決定処理を終える。透過型光学センサー20および反射型光学センサー21はいずれも、印刷媒体の有無を各々検出することができる。従って、印刷媒体が無い状態からある状態に変化した位置を印刷媒体の先端として認識可能である。
【0054】
以後のステップS210では、制御部11は、印刷開始位置を基準にして搬送部17による搬送を制御するとともに、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御して印刷媒体への印刷を実行する。つまり、制御部11は、印刷媒体の先端から上流の印刷媒体の領域へ印刷データに基づく印刷をするために、以後、搬送部17による搬送やキャリッジ18および印刷ヘッド19を制御すればよい。
【0055】
次に、
図6を説明する。ステップS230では、制御部11は、搬送部17を制御して、印刷媒体のバックフィードを開始させる。バックフィードの開始後、制御部11は、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のいずれかが印刷媒体の先端を検出したか否かを判定する(ステップS240)。
【0056】
制御部11は、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のいずれかが印刷媒体の先端を検出した時点で、ステップS240で“Yes”と判定し、ステップS250で搬送部17によるバックフィードを停止する。
【0057】
ステップS260では、制御部11は、ステップS240のタイミングで検出された印刷媒体の先端を印刷媒体の「印刷開始位置」に決定する。この場合、印刷開始位置を決定してセンサー決定処理を終える。
【0058】
ステップS270では、制御部11は、搬送部17を制御して、印刷開始位置に基づく位置決め処理を行う。つまり、ステップS240で透過型光学センサー20により印刷媒体の先端が検出された場合は、ステップS270では、制御部11は、搬送部17にギャップ検出位置P0から印刷位置P2までの距離に相当する分の搬送をさればよい。一方、ステップS240で反射型光学センサー21により印刷媒体の先端された場合は、ステップS270では、制御部11は、搬送部17にマーク検出位置P1から印刷位置P2までの距離に相当する分の搬送をさればよい。
【0059】
以後のステップS280では、制御部11は、印刷開始位置を基準にして搬送部17による搬送を制御するとともに、キャリッジ18および印刷ヘッド19を制御して印刷媒体への印刷を実行する。つまり、制御部11は、ステップS270による位置決め処理を終えた時点での印刷開始位置である印刷媒体の先端から上流の領域へ印刷データに基づく印刷をするために、以後、搬送部17による搬送やキャリッジ18および印刷ヘッド19を制御すればよい。
【0060】
4.主センサー変更に関する制御処理:
制御部11によってステップS160で自動的に第1センサーと第2センサーとのうちいずれか一方が主センサーに決定され、他方がサブセンサーに決定された後であっても、ユーザーは任意のタイミングで、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、主センサーからサブセンサーへ変更することができる。このような変更の指示を、主センサー変更指示と呼ぶ。ユーザーは、操作受付部14を操作して、主センサー変更指示を制御部11へ入力することができる。なお、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーの変更が反映されるのは、ラベル32の先端が印刷位置P2に位置するときに限定され、印刷媒体が搬送されている最中は反映されない。
【0061】
ユーザーから主センサー変更指示を受ける可能性を鑑みて、制御部11は、主センサーがラベル32毎に検出した各ラベル位置と主センサーとの搬送方向D1における相対位置の情報である「第1位置管理情報」と、サブセンサーがラベル32毎に検出した各ラベル位置とサブセンサーとの搬送方向D1における相対位置の情報である「第2位置管理情報」とのそれぞれを、印刷媒体の搬送に応じて更新しつつ記憶部22に記憶する。そして、制御部11は、主センサーを決定した後の位置決め処理では、第1位置管理情報に基づいて、印刷位置P2より上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が印刷位置P2へ到達するように搬送部17を制御する。また、制御部11は、主センサー変更指示を受けた後の位置決め処理では、第2位置管理情報に基づいて、印刷位置P2より上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が印刷位置P2へ到達するように搬送部17を制御する。
【0062】
このような主センサー変更に関する制御処理を、
図7を参照して説明する。
図7では、搬送方向D1へ搬送されるラベル紙30を側方からの視点により示している。
図2でも説明したように、ラベル紙30は、台紙31と、搬送方向D1において互いの間に隙間34を有する複数のラベル32とを有する。
図7に示すラベル紙30は、隙間34に余材を有さず、かつラベル32毎のマーク35を台紙31に有するため、透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のいずれによってもラベル32毎の先端が検出される。
【0063】
図7の例においても、
図2と同様に、ギャップ検出位置P0はマーク検出位置P1よりも上流に在る。透過型光学センサー20は、ラベル32の先端がギャップ検出位置P0を通過したときに、その先端を検出する。従って、制御部11は、透過型光学センサー20が検出した各ラベル32の先端が、現在、ギャップ検出位置P0からどれだけ下流に位置するかをラベル紙30の搬送の進行に応じて随時更新しながら記憶部22に記憶しており、このように記憶する相対位置が、位置管理情報PIGである。
図7によれば、位置管理情報PIGは、現在ギャップ検出位置P0よりも下流に在り、印刷ヘッド19による印刷が開始されていない4枚のラベル32それぞれに関して、相対位置「155」、「115」、「75」、「35」を記憶している。なお、相対位置の単位は、ミリメートルであってもよいし、別の単位であってもよい。
図7によれば、位置管理情報PIGの相対位置「155」は、ギャップ検出位置P0から印刷位置P2までの距離である。
【0064】
同様に、反射型光学センサー21は、ラベル32の先端がマーク検出位置P1を通過したときに、その先端を検出する。従って、制御部11は、反射型光学センサー21が検出した各ラベル32の先端が、現在、マーク検出位置P1からどれだけ下流に位置するかをラベル紙30の搬送の進行に応じて随時更新しながら記憶部22に記憶しており、このように記憶する相対位置が、位置管理情報PIMである。
図7によれば、位置管理情報PIMは、現在ギャップ検出位置P1よりも下流に在り、印刷ヘッド19による印刷が開始されていない4枚のラベル32それぞれに関して、相対位置「130」、「90」、「50」、「10」を記憶している。
図7によれば、位置管理情報PIMの相対位置「130」は、マーク検出位置P1から印刷位置P2までの距離である。
【0065】
図7の説明においては、反射型光学センサー21が主センサーであり、透過型光学センサー20がサブセンサーであると仮定する。従って、位置管理情報PIMが第1位置管理情報であり、位置管理情報PIGが第2位置管理情報である。制御部11は、第1位置管理情報としての位置管理情報PIMに基づいて、位置決め処理を行う。つまり、制御部11は、位置管理情報PIMを参照して印刷位置P2より上流に在る各ラベル32の相対位置のうち最も下流の相対位置を特定し、このラベル32の相対位置が印刷位置P2へ到達するように搬送部17を制御する。なお、位置管理情報を参照して特定できる相対位置が印刷位置P2より上流に在る各ラベル32のうち最も下流のラベル32を「位置決め対象ラベル」と呼ぶ。
【0066】
図7によれば、位置管理情報PIMが示す相対位置「130」のラベル32は、印刷位置P2に位置決めされており、直前までの位置決め対象ラベルである。従って、制御部11は、
図7に示す場面の後、この位置決めを終えたラベル32への印刷を開始する。そして、印刷が完了すると、印刷を終えたラベル32の次のラベル32、つまり位置管理情報PIMが示す相対位置「90」のラベル32を、次の位置決め対象ラベルとし、次の位置決め対象ラベルが印刷位置P2に到達するように搬送部17にラベル紙30を搬送させる。
【0067】
ここで、
図7に示す場面において、制御部11は、主センサー変更指示を受けたと仮定する。主センサー変更指示を受けた制御部11は、以後、第2位置管理情報すなわち位置管理情報PIGに基づいて、位置決め処理を行う。
図7によれば、位置管理情報PIGが示す相対位置「155」のラベル32は、印刷位置P2に位置決めされており、直前までの位置決め対象ラベルに該当する。従って、制御部11は、この位置決めを終えたラベル32への印刷を開始する。そして、印刷を終えたラベル32の次のラベル32、つまり位置管理情報PIGが示す相対位置「115」のラベル32(次の位置決め対象ラベル)が印刷位置P2に到達するように、搬送部17にラベル紙30を搬送させる。
【0068】
図7から解るように、位置管理情報PIMが示す相対位置「90」のラベル32と、位置管理情報PIGが示す相対位置「115」のラベル32とは、同じラベル32である。従って、制御部11は、主センサー変更指示を契機として、位置決め処理のために参照する位置管理情報を、位置管理情報PIMから位置管理情報PIGに切り替えたり、その逆へ切り替えたりしても、同じラベル32を位置決め対象ラベルとして、位置決め処理を行うことができる。
【0069】
図8を参照して、主センサー変更に関する制御処理を更に説明する。
図8の見方は、
図7の見方と同様である。
図8を
図7と比較すると、マーク検出位置P1がより下流に在る。そのため、ギャップ検出位置P0とマーク検出位置P1との距離が、ラベル紙30における一つのラベル32と一つの隙間34とを足した距離よりも長くなっている。このような
図8の構成においては、ラベル紙30が印刷装置10にセットされ搬送が開始された後に、反射型光学センサー21が最初に先端を検出するラベル32と、透過型光学センサー20が最初に先端を検出するラベル32とが相違する。
【0070】
図8によれば、位置管理情報PIGは、現在ギャップ検出位置P0よりも下流に在り、印刷ヘッド19による印刷が開始されていない4枚のラベル32それぞれに関して、
図7と同じく相対位置「155」、「115」、「75」、「35」を記憶している。また、位置管理情報PIMは、現在ギャップ検出位置P1よりも下流に在り、印刷ヘッド19による印刷が開始されていない3枚のラベル32それぞれに関して、相対位置「100」、「60」、「20」を記憶している。なお、
図8の位置管理情報PIMの相対位置「100」は、マーク検出位置P1から印刷位置P2までの距離である。
【0071】
図8の説明においても、反射型光学センサー21が主センサーであり、透過型光学センサー20がサブセンサーであると仮定する。従って、位置管理情報PIMが第1位置管理情報であり、位置管理情報PIGが第2位置管理情報である。
図8によれば、位置管理情報PIMが示す相対位置「100」のラベル32は、印刷位置P2に位置決めされており、直前までの位置決め対象ラベルである。従って、制御部11は、
図8に示す場面の後、この位置決めを終えたラベル32への印刷を開始する。そして、印刷を終えたラベル32の次のラベル32、つまり位置管理情報PIMが示す相対位置「60」のラベル32を、次の位置決め対象ラベルとし、次の位置決め対象ラベルが印刷位置P2に到達するように搬送部17にラベル紙30を搬送させる。
【0072】
ここで、
図8に示す場面において、制御部11は、主センサー変更指示を受けたと仮定する。主センサー変更指示を受けた制御部11は、以後、第2位置管理情報すなわち位置管理情報PIGに基づいて、位置決め処理を行う。
図8によれば、位置管理情報PIGが示す相対位置「155」のラベル32は、印刷位置P2に位置決めされており、直前までの位置決め対象ラベルに該当する。従って、制御部11は、この位置決めを終えたラベル32への印刷を開始する。そして印刷を終えたラベル32の次のラベル32、つまり位置管理情報PIGが示す相対位置「115」のラベル32(次の位置決め対象ラベル)が印刷位置P2に到達するように、搬送部17にラベル紙30を搬送させる。
ただし、反射型光学センサー21が最初に検出したラベル32が印刷位置P2に位置決めされているときに、主センサー変更を反映させる場合は、位置決め対象ラベルは、
図8の場面で位置決め処理のために参照する位置管理情報を、位置管理情報PIMから位置管理情報PIGに切り替えた場合、位置管理情報PIGが示す相対位置「155」のラベル32は無く、相対位置「115」のラベル32が位置決め対象ラベルとなる。これは、反射型光学センサー21が最初に先端を検出するラベル32と、透過型光学センサー20が最初に先端を検出するラベル32とが一枚ずれているために、反射型光学センサー21が最初に検出したラベル32が印刷位置P2に位置決めされているときに、位置管理情報PIGが示す相対位置「155」の位置にラベル32が存在しないからである。従って、制御部11は、位置管理情報PIGが示す相対位置「115」のラベル32が印刷位置P2に到達するように搬送部17にラベル紙30を搬送させる。このような処理は、
図8に対する例外と言える。
【0073】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、長尺状の台紙31に複数のラベル32が間隔を空けて配置されると共にラベル32の位置を示すマーク35がラベル32毎に形成されたラベル紙30を含む複数種類の印刷媒体へ、印刷を実行可能である。そして、印刷装置10は、印刷媒体を搬送方向D1に沿って搬送する搬送部17と、搬送方向D1における所定位置で印刷媒体へ印刷する印刷ヘッド19と、搬送方向D1において印刷ヘッド19よりも上流の位置に配設されており、ラベル紙30のラベル32が配置されていない台紙31の領域からラベル32の領域へ切り替わる境界をラベル位置として検出可能な透過型の光学センサー20、および、マーク35をラベル位置として検出可能な反射型の光学センサー21と、ラベル32を搬送方向D1における印刷ヘッド19による印刷位置P2へ位置決めする印刷媒体の搬送である位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサー(主センサー)を、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のいずれかに決定するセンサー決定処理をし、センサー決定処理により決定したセンサーが検出するラベル32毎のラベル位置に基づいて搬送部17を制御してラベル32毎の位置決め処理を実行する制御部11と、を備える。制御部11は、センサー決定処理では、搬送部17に印刷媒体を搬送させながら、透過型光学センサー20と反射型光学センサー21とのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が印刷位置P2へ到達するように印刷媒体を搬送する第1搬送を搬送部17に実行させ、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置を検出することなく第1搬送が終了した場合は、第1センサーを、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、第1センサーと第2センサーとのうち、第1ラベル位置と第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち印刷位置P2に近い方の位置を検出したセンサーを、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する。
【0074】
前記構成によれば、印刷に使用されるラベル紙30に応じて、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のうち、ラベル紙30からラベル位置を検出することに適したセンサーが自動的に主センサーに決定される。そのため、ラベルの検出方法や検出に用いるセンサーの設定と、使用する印刷媒体の種類とが合っていない場合に、位置決め処理のためのラベル検出ができない、といった従来の弊害を無くすことができる。また、前記構成によれば、第1ラベル位置および第2ラベル位置と、印刷位置P2との関係性に応じて主センサーが決定されるため、位置決め処理の過程でラベル32が必要以上に搬送されることをできるだけ減らす、つまりラベル32の損失を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、制御部11は、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置の検出に成功し、第1センサーと第2センサーとのうち、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定した方のセンサーを主センサーとし、他方のセンサーをサブセンサーとしたとき、主センサーがラベル32毎に検出した各ラベル位置と主センサーとの搬送方向D1における相対位置の情報である第1位置管理情報を、印刷媒体の搬送に応じて更新しつつ記憶し、かつ、サブセンサーがラベル32毎に検出した各ラベル位置とサブセンサーとの搬送方向D1における相対位置の情報である第2位置管理情報を、印刷媒体の搬送に応じて更新しつつ記憶する。そして、制御部11は、位置決め処理では、第1位置管理情報に基づいて、印刷位置P2より搬送方向上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が印刷位置P2へ到達するように搬送部17を制御する。制御部11は、位置決め処理のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、主センサーからサブセンサーへ変更する旨の指示を受けた場合、位置決め処理では、第2位置管理情報に基づいて、印刷位置P2より搬送方向上流のラベル位置のうち最も下流のラベル位置が印刷位置P2へ到達するように搬送部17を制御する。
【0076】
前記構成によれば、制御部11は、第1位置管理情報と第2位置管理情報とを記憶することにより、主センサー変更指示を受けた場合に、第1位置管理情報に基づく位置決め処理を、第2位置管理情報に基づく位置決め処理に切り替えて処理の無駄を無くすことができる。効果を具体的に説明する。従来、ラベルの検出方法の変更がユーザーにより指示された場合は、変更後のラベル検出方法に使用するセンサーによるラベル位置の検出が改めて行われていた。例えば、
図7に示す状態でマーク検出方法からギャップ検出方法への変更が指示された場合、従来は、ギャップ検出位置P0より上流に在るラベル32の先端を、搬送に応じて透過型光学センサー20に検出させ、この検出を基準にして改めて最初の位置決め処理を実行していた。そのため、マーク検出方法からギャップ検出方法への変更が指示された時点でギャップ検出位置P0よりも下流のラベル32は、全て印刷されずに搬送され、ラベル32の損失が多かった。これに対して、本実施形態では、第1位置管理情報と第2位置管理情報とのいずれを参照しても、例外を除き同じ各ラベル32について位置決め処理することができ、前記損失を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、制御部11は、センサー決定処理では、搬送部17に印刷媒体を所定距離搬送させても透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のいずれもラベル位置を検出できない場合は、搬送部17に印刷媒体を搬送方向D1の逆方向へ第2所定距離搬送させ、逆方向への搬送が終了した時点で印刷ヘッド19と対向している印刷媒体の位置を印刷開始位置に決定してセンサー決定処理を終える。そして、制御部11は、以後の印刷では印刷開始位置を基準にして搬送部17による搬送を制御すればよい。第2所定距離は、印刷媒体の先端が印刷ヘッド19と対向する位置まで到達するために必要な距離である。
あるいは、制御部11は、センサー決定処理では、搬送部17に印刷媒体を所定距離搬送させても透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のいずれもラベル位置を検出できない場合は、搬送部17に印刷媒体を搬送方向D1の逆方向へ搬送させ、透過型光学センサー20または反射型光学センサー21のいずれかが印刷媒体の先端を検出したとき、この先端を印刷媒体の印刷開始位置に決定してセンサー決定処理を終える。そして、制御部11は、印刷開始位置が印刷位置P2へ到達するまで搬送部17に印刷媒体を搬送させると共に、以後の印刷では印刷開始位置を基準にして搬送部17による搬送を制御する、としてもよい。
これら構成によれば、透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のいずれによってもラベル位置を検出できない印刷媒体が使用されている場合であっても、ラベル検出のエラーとせずに、搬送や印刷を行うことができる。
【0078】
本実施形態は、印刷装置、印刷システムを開示する。さらに、本実施形態は、これら装置やシステムが実行する方法や、これら方法をプロセッサーに実行させるプログラム12の発明を開示する。
長尺状の台紙31に複数のラベル32が間隔を空けて配置されると共にラベル32の位置を示すマーク35がラベル32毎に形成されたラベル紙30を含む複数種類の印刷媒体へ印刷するための印刷制御方法は、印刷媒体を搬送方向D1に沿って搬送する搬送工程と、ラベル32を搬送方向D1における所定位置に配設された印刷ヘッド19による印刷位置P2へ位置決めする印刷媒体の搬送である位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーを、透過型光学センサー20および反射型光学センサー21のうちのいずれかに決定するセンサー決定工程と、センサー決定工程により決定したセンサーが検出するラベル32毎のラベル位置に基づいて搬送を制御してラベル毎の位置決めを行う位置決め工程と、印刷ヘッド19により印刷媒体へ印刷する印刷工程と、を備える。そして、センサー決定工程では、印刷媒体を搬送しながら、透過型光学センサー20と反射型光学センサー21とのそれぞれにラベル位置の検出をさせ、先にラベル位置の検出に成功した方のセンサーを第1センサーとし、他方のセンサーを第2センサーとし、第1センサーにより検出されたラベル位置である第1ラベル位置が印刷位置P2へ到達するように印刷媒体を搬送する第1搬送を実行し、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置を検出することなく第1搬送が終了した場合は、第1センサーを、位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定し、第1搬送の期間中に第2センサーがラベル位置の検出に成功した場合は、第1センサーと第2センサーとのうち、第1ラベル位置と第2センサーにより検出されたラベル位置である第2ラベル位置とのうち印刷位置P2に近い方の位置を検出したセンサーを、位置決め工程のためにラベル位置の検出に用いるセンサーに決定する。
【0079】
印刷装置10は、これまでに説明したような主走査方向D2へ移動するキャリッジ18に印刷ヘッド19を搭載した、いわゆるシリアル型のインクジェットプリンターでなくてもよい。
搬送方向D1に交差する主走査方向D2に延在して、印刷媒体の幅をカバー可能な長さのノズル列をインク色毎に有する印刷ヘッド19により、インク吐出を行ういわゆるライン型のインクジェットプリンターを想定してもよい。ライン型のインクジェットプリンターでは、キャリッジ18は不要である。
また、印刷ヘッド19が採用する印刷方式は、インクジェット方式に限らず、例えば、電子写真方式やサーマル方式等であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…印刷装置(印刷システム)、11…制御部、11a…CPU、11b…ROM、11c…RAM、12…プログラム、16…印刷部、17…搬送部、18…キャリッジ、19…印刷ヘッド、20…透過型光学センサー、21…反射型光学センサー、22…記憶部、30…ラベル紙、30a…表面、30b…裏面、31…台紙、32…ラベル、34…隙間、35…マーク、P0…ギャップ検出位置、P1…マーク検出位置、P2…印刷位置、PIG,PIM…位置管理情報