(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20240925BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B41J11/02
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2021018855
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 瞬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 春菜
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221724(JP,A)
【文献】特開2009-023175(JP,A)
【文献】特開2005-169788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 1/01,2/165-2/215,11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、
前記記録部に対向して配置される対向部であって、前記記録媒体を支持する支持面と、前記支持面に対して前記記録部とは反対側に設けられた負圧室と、前記支持面に設けられ前記負圧室と前記支持面の外側とを連通させる複数の吸引口と、前記負圧室に設けられ回動されることで前記負圧室を区画する仕切機構部とを有する前記対向部と、
前記対向部とは別に設けられ、前記仕切機構部を駆動する駆動部と、
を備え、
前記仕切機構部は、
前記負圧室の内側に延在し、前記負圧室の底面に沿った開状態となる場合の開位置と、前記底面から起立した閉状態となる場合の閉位置とに変位可能な隔壁と、
前記隔壁に連結され、前記負圧室の外側に延在して前記隔壁を変位させる当接部と、
前記負圧室の底部に配置され、前記隔壁と前記当接部とを連結し且つ前記仕切機構部の回動中心を有する連結部と、
を有し、
前記駆動部は、
回転を行う駆動源と、
前記駆動源の回転に伴って前記当接部を回動させることで、前記隔壁を前記開位置と前記閉位置とに変位させるカムと、
を有し、
前記連結部は、前記隔壁と前記当接部とを所定の遊び角を持って連結する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記連結部は、前記負圧室の前記底部に回転可能に支持された軸部を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の記録装置において、
前記隔壁が前記閉状態となる方向に前記当接部を回動させる力を、前記当接部に付与する付与部材を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、
前記隔壁が前記閉位置にある場合、前記付与部材は、前記当接部が前記遊び角だけ多く回動するように前記当接部に力を付与する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記隔壁が前記開状態となる方向に前記隔壁を押圧する押圧部材を有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項3を引用する請求項5、又は請求項4を引用する請求項5に記載の記録装置において、
前記付与部材が前記当接部に付与する力は、前記押圧部材が前記隔壁を押圧する力より大きい、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記カムは、前記隔壁が前記開位置にある場合に前記当接部に接触し、前記隔壁が前記閉位置にある場合に前記当接部に接触しない、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記連結部は、前記回動中心の周りに回転する回転軸である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記開位置及び前記閉位置の少なくとも一方には、前記隔壁の変位を規制する規制部が設けられる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記対向部及び前記駆動部が取り付けられるフレームを有し、
前記対向部は、前記フレームに対して装置高さ方向の位置の調整が可能に設けられる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記仕切機構部は、前記負圧室を前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に区画する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記負圧室の空気を吸引する吸引部を有し、
前記吸引部は、前記負圧室が区画される場合の第1仕事量が、前記負圧室が区画されない場合の第2仕事量より少ない、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の記録装置は、吸引ダクト内を複数の負圧室に仕切るとともに複数の負圧室を回転に伴って開閉させる複数の圧切替弁を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記録装置のように、負圧室を区画する開閉部材を駆動することで負圧室を開閉させる構成において、負圧室を有する部位に開閉部材を設け、装置本体に該開閉部材を駆動する駆動部を設けたとする。この場合、開閉部材の位置の誤差と、駆動部の位置の誤差とにより、駆動部から開閉部材への駆動力の伝達が不十分となり、開閉部材が負圧室の開放を十分に行えなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明に係る記録装置は、搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録部に対向して配置される対向部であって、前記記録媒体を支持する支持面と、前記支持面に対して前記記録部とは反対側に設けられた負圧室と、前記支持面に設けられ前記負圧室と前記支持面の外側とを連通させる複数の吸引口と、前記負圧室に設けられ回動されることで前記負圧室を区画する仕切機構部とを有する前記対向部と、前記対向部とは別に設けられ、前記仕切機構部を駆動する駆動部と、を備え、前記仕切機構部は、前記負圧室の内側に延在し、前記負圧室の底面に沿った開状態となる場合の開位置と、前記底面から起立した閉状態となる場合の閉位置とに変位可能な隔壁と、前記隔壁に連結され、前記負圧室の外側に延在して前記隔壁を変位させる当接部と、前記負圧室の底部に配置され、前記隔壁と前記当接部とを連結し且つ前記仕切機構部の回動中心を有する連結部と、を有し、前記駆動部は、回転を行う駆動源と、前記駆動源の回転に伴って前記当接部を回動させることで、前記隔壁を前記開位置と前記閉位置とに変位させるカムと、を有し、前記連結部は、前記隔壁と前記当接部とを所定の遊び角を持って連結することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】実施形態に係るプリンターのプラテンを概略的に示した縦断面図。
【
図3】実施形態に係るプリンターのプラテンの一部を拡大した平面図。
【
図4】実施形態に係るプリンターのシャッター部材が起立された状態におけるプラテンの一部を拡大した縦断面図。
【
図5A】実施形態に係るプリンターのプラテンの位置が基準位置より高い場合においてシャッター部材が閉位置にある状態を示す側面図。
【
図5B】実施形態に係るプリンターのプラテンの位置が基準位置より低い場合においてシャッター部材が閉位置にある状態を示す側面図。
【
図6】実施形態に係るプリンターのシャッター部材の軸部及び軸部の周辺部を拡大した斜視図。
【
図7】実施形態に係るプリンターのレバー部材の筒部及び筒部の周辺部を拡大した斜視図。
【
図8】実施形態に係るプリンターのシャッター部材とレバー部材との係合部分における遊び角を示す縦断面図。
【
図9】実施形態に係るプリンターのシャッター部材が収納された状態におけるプラテンの一部を拡大した縦断面図。
【
図10A】実施形態に係るプリンターのプラテンの位置が基準位置より高い場合においてシャッター部材が開位置にある状態を示す側面図。
【
図10B】実施形態に係るプリンターのプラテンの位置が基準位置より低い場合においてシャッター部材が開位置にある状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の第1の態様から第12の態様までについて概略的に説明する。
第1の態様に係る記録装置は、搬送される記録媒体に記録を行う記録部と、前記記録部に対向して配置される対向部であって、前記記録媒体を支持する支持面と、前記支持面に対して前記記録部とは反対側に設けられた負圧室と、前記支持面に設けられ前記負圧室と前記支持面の外側とを連通させる複数の吸引口と、前記負圧室に設けられ回動されることで前記負圧室を区画する仕切機構部とを有する前記対向部と、前記対向部とは別に設けられ、前記仕切機構部を駆動する駆動部と、を備え、前記仕切機構部は、前記負圧室の内側に延在し、前記負圧室の底面に沿った開状態となる場合の開位置と、前記底面から起立した閉状態となる場合の閉位置とに変位可能な隔壁と、前記隔壁に連結され、前記負圧室の外側に延在して前記隔壁を変位させる当接部と、前記負圧室の底部に配置され、前記隔壁と前記当接部とを連結し且つ前記仕切機構部の回動中心を有する連結部と、を有し、前記駆動部は、回転を行う駆動源と、前記駆動源の回転に伴って前記当接部を回動させることで、前記隔壁を前記開位置と前記閉位置とに変位させるカムと、を有し、前記連結部は、前記隔壁と前記当接部とを所定の遊び角を持って連結することを特徴とする。
本態様によれば、前記対向部と前記駆動部との位置関係に変化があった場合、前記当接部と前記駆動部との接触状態も変化する可能性がある。ここで、前記連結部が、前記隔壁と前記当接部とを所定の遊び角を持って連結することで、前記隔壁が、前記当接部に対して相対的に回動することが可能となるので、前記隔壁を前記開位置に配置して、前記負圧室の開放を十分に行うことができる。
【0008】
第2の態様に係る記録装置は、第1の態様において、前記連結部は、前記負圧室の前記底部に回転可能に支持された軸部を有することを特徴とする。
本態様によれば、前記連結部の前記軸部が、前記底部に留まって回転される。これにより、前記連結部が前記隔壁と前記当接部とを弾性部材を介して連結する構成に比べて、前記隔壁と前記当接部との連結状態を維持するのに必要なスペースを小さくできる。
【0009】
第3の態様に係る記録装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記隔壁が前記閉状態となる方向に前記当接部を回動させる力を、前記当接部に付与する付与部材を有することを特徴とする。
本態様によれば、組付け誤差などにより前記隔壁が前記閉位置まで到達し難い構成であっても、前記付与部材が前記当接部に回動させる力を付与することで、前記隔壁が前記閉位置まで回動されるので、前記隔壁を前記閉位置に到達させることができる。
【0010】
第4の態様に係る記録装置は、第3の態様において、前記隔壁が前記閉位置にある場合、前記付与部材は、前記当接部が前記遊び角だけ多く回動するように前記当接部に力を付与することを特徴とする。
本態様によれば、前記付与部材が前記当接部に力を付与した場合、前記当接部は、前記遊び角を超える過剰な角度で回動されることがないので、前記当接部や前記連結部に過度の負荷が作用することを抑制できる。
【0011】
第5の態様に係る記録装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか1つにおいて、前記隔壁が前記開状態となる方向に前記隔壁を押圧する押圧部材を有することを特徴とする。
本態様によれば、組付け誤差などにより前記隔壁が前記開位置まで到達し難い構成であっても、前記押圧部材が前記隔壁を押圧することで、前記隔壁が前記開位置まで回動されるので、前記隔壁を前記開位置に到達させることができる。
【0012】
第6の態様に係る記録装置は、第3の態様を引用する第5の態様、又は第4の態様を引用する第5の態様において、前記付与部材が前記当接部に付与する力は、前記押圧部材が前記隔壁を押圧する力より大きいことを特徴とする。
本態様によれば、前記付与部材が前記当接部に付与する力と、前記押圧部材が前記隔壁を押圧する力との差分に相当する力が、前記隔壁を前記遊び角に相当する分だけ回動させる力として作用するので、前記隔壁を前記閉位置に到達させることができる。
【0013】
第7の態様に係る記録装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか1つにおいて、前記カムは、前記隔壁が前記開位置にある場合に前記当接部に接触し、前記隔壁が前記閉位置にある場合に前記当接部に接触しないことを特徴とする。
本態様によれば、前記隔壁が前記閉位置にある場合、前記カムが前記当接部に接触しないことで、前記当接部が過剰に回動されることが抑制されるので、前記隔壁が前記閉位置を過度に越えた位置に配置されることを抑制できる。
【0014】
第8の態様に係る記録装置は、第1の態様から第7の態様のいずれか1つにおいて、前記連結部は、前記回動中心の周りに回転する回転軸であることを特徴とする。
本態様によれば、前記連結部が前記回動中心を含んでスライドする構成に比べて、前記連結部の移動に必要なスペースを小さくできる。
【0015】
第9の態様に係る記録装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか1つにおいて、前記開位置及び前記閉位置の少なくとも一方には、前記隔壁の変位を規制する規制部が設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記規制部が前記隔壁の変位を規制することで、前記隔壁が前記開位置又は前記閉位置を過度に越えて位置することを抑制できる。
【0016】
第10の態様に係る記録装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか1つにおいて、前記対向部及び前記駆動部が取り付けられるフレームを有し、前記対向部は、前記フレームに対して装置高さ方向の位置の調整が可能に設けられることを特徴とする。
本態様によれば、前記フレームに対して前記対向部の前記装置高さ方向の位置の調整が行われることで、前記記録部と前記対向部との間隔を調整することができる。
【0017】
第11の態様に係る記録装置は、第1の態様から第10の態様のいずれか1つにおいて、前記仕切機構部は、前記負圧室を前記記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に区画することを特徴とする。
本態様によれば、前記記録媒体の前記幅方向の大きさが変更された場合、前記記録媒体の前記幅方向の大きさに合わせて前記負圧室の容積を変更できるので、前記記録媒体の前記幅方向の大きさに合わせて前記記録媒体を吸引することができる。
【0018】
第12の態様に係る記録装置は、第1の態様から第11の態様のいずれか1つにおいて、前記負圧室の空気を吸引する吸引部を有し、前記吸引部は、前記負圧室が区画される場合の第1仕事量が、前記負圧室が区画されない場合の第2仕事量より少ないことを特徴とする。
本態様によれば、前記負圧室が区画された場合、前記負圧室の1つ当たりの容積が減少するが、前記負圧室の容積の減少に合わせて、前記吸引部の仕事量が前記第2仕事量から前記第1仕事量に低減されるので、容積が減少した前記負圧室における過度の前記記録媒体の吸引を抑制できる。
【0019】
以下、本発明の記録装置の一例について具体的に説明する。
各図においてX軸に沿ったX方向は、後述するプリンター10の幅方向且つ記録媒体の幅方向の一例である。-X方向は装置前面をユーザーと対面させた際にユーザーから見て左方向となり、+X方向は右方向となる。
Y軸に沿ったY方向はプリンター10の装置奥行き方向の一例である。+Y方向は装置背面から前面に向かう方向であり、且つ後述する用紙Pのプラテンユニット30における搬送方向の一例である。-Y方向は装置前面から背面に向かう方向である。X方向及びY方向は、水平方向である。
Z軸に沿ったZ方向はプリンター10の装置高さ方向且つ鉛直方向であり、+Z方向は鉛直上方、-Z方向は鉛直下方である。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。
用紙Pは、記録媒体の一例である。以後の説明では、用紙Pについて、ロール状態のものをロール紙PRとし、切断されたシート状のものを単票紙PSとして区別する。
【0020】
図1には、実施形態における記録装置の一例としてのプリンター10が示される。
プリンター10に対する+Y方向には、単票紙PSが積載される不図示の積載装置が設けられる。プリンター10は、直方体形状の筐体12を有する。また、プリンター10は、一例として、A4サイズからA0サイズまでの大きさの用紙Pに印刷が可能なインクジェット方式のプリンターとして構成される。プリンター10では、普通紙も写真用紙も記録が可能である。また、プリンター10では、縁無しの画像の記録も可能である。
具体的には、プリンター10は、筐体12の内部において、本体フレーム15と、収容部14と、搬送部16と、記録部18と、切断部22と、排出ユニット24と、制御部26と、プラテンユニット30と、駆動部80(
図4)とを備える。
【0021】
筐体12は、筐体12の+Y方向の壁部を構成する側壁13を有する。側壁13には、Y方向に貫通する排出口19が形成される。
本体フレーム15は、フレームの一例であり、後述するプラテンユニット30及び駆動部80が取り付けられる部材である。なお、プラテンユニット30と駆動部80とは、本体フレーム15に対して別々に取り付けられる。
収容部14は、X方向に沿った中心軸周りに回転されるロール紙PRを収容する。
搬送部16は、複数の搬送ローラー対17を有する。また、搬送部16は、二点鎖線で示された搬送経路Kに沿って、収容部14から引き出されたロール紙PRを下流へ搬送する。
【0022】
記録部18は、搬送部16によって+Y方向に搬送されるロール紙PRに、液滴の一例としてのインクQを吐出することで記録を行う。なお、ロール紙PRは、記録部18と対向する領域において、+Y方向に搬送される。また、記録部18は、ロール紙PRに対して+Z方向に位置する。換言すると、ロール紙PRの+Z方向の上面に記録が行われる。さらに、記録部18は、既述の通り、X方向の幅が異なる複数のサイズのロール紙PRに記録が可能である。
【0023】
切断部22は、記録部18により記録されたロール紙PRをX方向に切断することで単票紙PSを形成する。
排出ユニット24は、切断部22より下流に配置された支持台25と、排出ローラー対28とを有する。支持台25は、単票紙PSを支持すると共に排出口19へ単票紙PSを案内する。排出ローラー対28は、切断された単票紙PSを支持台25に向けて搬送する。排出口19から排出された単票紙PSは、不図示の積載装置へ搬送される。
制御部26は、記録部18の動作及び後述する駆動部80の動作を含むプリンター10の各部の動作を制御する。
【0024】
図2に示されるように、プラテンユニット30は、記録部18(
図1)に対向して、記録部18に対する-Z方向に配置される対向部の一例である。プラテンユニット30は、本体フレーム15(
図1)に不図示のボルトを用いて取り付けられる。本体フレーム15には、Z方向に沿った不図示の高さ調整用の長孔が形成されている。ここで、プラテンユニット30は、不図示のボルトの位置が、本体フレーム15の長孔に対してZ方向に移動されることで、本体フレーム15に対してZ方向の位置の調整が可能となっている。
【0025】
プラテンユニット30は、一例として、支持面32と、負圧室34と、吸引孔部46(
図3)と、仕切機構部60(
図4)とを有する。また、プラテンユニット30は、吸引ファン29によって排気が行われる。
吸引ファン29は、吸引部の一例であり、負圧室34の空気を吸引する。また、吸引ファン29は、一例として、後述する第1負圧室39のみに接続されている。
【0026】
プラテンユニット30は、中空の角筒状に形成されており、X方向に延在される。プラテンユニット30のX方向の長さは、ロール紙PRのX方向の長さよりも長い。また、プラテンユニット30は、吸引ファン29によって排気されることで、内部が負圧室34とされる。
支持面32は、プラテンユニット30における+Z方向の端面を構成する。支持面32は、一例として、X-Y面に沿っており、ロール紙PRを支持する。
【0027】
負圧室34は、プラテンユニット30において、支持面32に対して記録部18(
図1)とは反対側に設けられる。負圧室34は、一例として、底部35と、不図示の前壁と、後壁36と、2つの側壁37と、支持壁38とから成る中空部である。また、負圧室34は、後述する仕切機構部60によって、第1負圧室39と第2負圧室41とに区画される。
支持壁38は、負圧室34の天井部を構成する壁であり、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成される。支持壁38における+Z方向の上端には、支持面32が形成される。
【0028】
図4に示されるように、支持壁38の内側の下面38Aと、前壁及び後壁36の内側の内面36Aとにおいて、後述するシャッター部材62によって区画される部位には、突出部53が形成される。
突出部53は、内面36AからY方向に突出された縦部53Aと、下面38AのY方向の端部から-Z方向に突出された横部53Bとを有するL字状に形成される。そして、突出部53は、シャッター部材62が後述する閉位置に配置された場合、+X方向から-X方向に見て、シャッター部材62と内面36A及び下面38Aとの隙間の一部を覆う。これにより、負圧室34において圧力損失が生じることを抑制できる。
【0029】
図3に示されるように、支持面32には、区画部40と窪み部42が形成される。
区画部40は、それぞれ支持面32から-Z方向に窪んだ第1区画室43、第2区画室44及び第3区画室45を有する。
第1区画室43は、Y方向に延在されており、ロール紙PRのX方向の端部と最も近い位置でZ方向に対向する。第1区画室43には、それぞれ2つの第1吸引口47と1つの第2吸引口48とが形成される。
【0030】
第2区画室44は、第1区画室43よりX方向において搬送経路Kの内側に配置され、Y方向に延在されている。第2区画室44のY方向の長さは、第1区画室43のY方向の長さとほぼ等しい。それぞれの第2区画室44には、2つの第2吸引口48が形成される。
第3区画室45は、第1区画室43及び第2区画室44に対して+Y方向に配置される。第3区画室45のY方向の長さは、第1区画室43及び第2区画室44のY方向の長さより短い。それぞれの第3区画室45には、2つの第3吸引口49が形成される。
【0031】
吸引孔部46は、第1吸引口47、第2吸引口48及び第3吸引口49から成る。第1吸引口47、第2吸引口48及び第3吸引口49は、複数の吸引口の一例であり、支持壁38をZ方向に貫通する貫通孔として形成される。このように、第1吸引口47、第2吸引口48及び第3吸引口49は、支持面32に設けられ、負圧室34(
図2)と支持面32の外側とを連通させる。
第1吸引口47と第3吸引口49とは、一例として、同程度の開口面積を有する。また、第1吸引口47の開口面積と、第3吸引口49の開口面積とは、一例として、第2吸引口48の開口面積より小さい。
【0032】
窪み部42は、支持面32における第1区画室43に対するX方向において搬送経路Kの外側に設けられる。また、窪み部42は、支持面32から-Z方向に窪んだ部位である。窪み部42は、ロール紙PRに縁無し記録が行われる場合に、インクQを受ける液滴受部の一例である。
【0033】
プラテンユニット30において、記録部18(
図1)による記録が行われるY方向の記録領域をS1とする。また、ロール紙PRの搬送方向の先端部に予め設定されるY方向の余白領域をS2とする。
ここで、プリンター10では、記録領域S1より下流の2つの第3吸引口49のうち、上流の第3吸引口49のみが、ロール紙PRで覆われ且つ余白領域S2と対向している状態のときは、リークが多くなり、ロール紙PRの先端部を吸引し難くなる。このため、プリンター10では、吸引ファン29(
図2)において負圧力を上げる動作が行われる。
【0034】
図2に示されるように、吸引ファン29は、負圧室34が第1負圧室39と第2負圧室41とに区画される場合の第1仕事量W1が、負圧室34が区画されない場合の第2仕事量W2より少ない。吸引ファン29の仕事量は、静圧に風量を乗じることで求められる。なお、第1仕事量W1及び第2仕事量W2の図示は省略されている。
【0035】
図4に示されるように、底部35は、一例として、底壁52と、被連結部54と、収納部56と、引掛部58と、ストッパー部59とを含んで構成される。
底壁52は、支持壁38に対する-Z方向に配置され、Z方向に所定の厚さを有する板状に形成される。底壁52において、シャッター部材62によって区画される部位には、規制部55が形成される。換言すると、底壁52におけるシャッター部材62の閉位置には、シャッター部材62の+X方向の変位を規制する規制部55が設けられている。
【0036】
規制部55は、一例として、底壁52の+Z方向の端面である底面52Aにおいて、Y方向の両端部から+Z方向に突出される。また、規制部55は、Y方向に延びる直方体状に形成される。規制部55は、シャッター部材62が閉位置にある状態において、シャッター部材62に対して+X方向に位置する。これにより、規制部55は、シャッター部材62が閉位置からさらに+X方向に移動することを規制する。
【0037】
被連結部54は、壁部の一例であり、底壁52の一部から-Z方向に突出された側壁を有する部位である。また、被連結部54は、底壁52と一体化されている。
収納部56は、底壁52のX方向の一部に形成され、-Z方向に窪んだ部位である。換言すると、収納部56は、底面56Aを有し、+Z方向に開口された部位であり、シャッター部材62の後述する蓋部66を収納可能な大きさを有する。なお、底面56Aは、規制部の一例であり、開位置にあるシャッター部材62の-Z方向の変位を規制する。
【0038】
引掛部58は、収納部56から-Z方向に延びる縦壁58Aと、縦壁58Aの-Z方向の端部から+Y方向に突出された突出部58Bとから成る。
ストッパー部59は、被連結部54に形成される。また、ストッパー部59は、+Y方向から-Y方向に見て、L字状に形成される。ストッパー部59は、後述するレバー部材82の回動を規制する。
【0039】
仕切機構部60は、負圧室34に設けられ、後述する駆動部80によって回動されることで、負圧室34を第1負圧室39と第2負圧室41とに区画する。具体的には、仕切機構部60は、負圧室34をロール紙PRの搬送方向である+Y方向と交差するX方向に区画する。仕切機構部60は、一例として、シャッター部材62と、レバー部材82と、連結部102と、捩りばね104と、引張ばね108とを有する。なお、レバー部材82、連結部102及び引張ばね108は、底部35におけるY方向の両端部に設けられる。
【0040】
シャッター部材62は、隔壁の一例であり、負圧室34の内側においてY方向に延在する部材である。また、シャッター部材62は、底面52Aに沿った開状態となる場合の開位置と、底面52Aから起立した閉状態となる場合の閉位置とに変位可能に設けられる。
【0041】
図4、
図5A及び
図5Bに示されるように、シャッター部材62は、板状に形成された基部64と、基部64の一部から突出された蓋部66と、基部64の一部からY方向に延び且つ被連結部54に連結される軸部68とを有する。
基部64は、Y方向の中央部において、後述する捩りばね104のアーム107の端部が取り付けられている。基部64は、シャッター部材62の閉状態において、Z方向に起立する。軸部68は、後述する連結部102の一部としても機能する。軸部68の詳細については後述する。
【0042】
図5A及び
図5Bにおいて、捩りばね104は、Y方向に透過された状態で示されている。また、
図5A及び
図5Bには、プラテンユニット30のZ方向の基準位置P1と、基準位置P1に対してZ方向に高い位置P2と、基準位置P1に対してZ方向に低い位置P3とが示される。
【0043】
図4に示されるように、蓋部66は、負圧室34を区画可能となる大きさを有し、Y方向に延びる部位である。蓋部66は、収納部56に収納される。また、蓋部66は、シャッター部材62が閉位置に変位された場合に、第1負圧室39に向けて配置される壁面67を有する。
壁面67は、一例として、平面である。また、壁面67は、シャッター部材62が閉位置にある場合、Y-Z面に沿って配置される。さらに、壁面67は、シャッター部材62が開位置にある場合、X-Y面に沿って配置され、且つZ方向の高さ位置が底面52Aとほぼ同じ高さに揃えられる。換言すると、シャッター部材62が開位置にある場合、負圧室34の底部を構成する底面52A及び壁面67は、ほぼフラットな状態となる。
【0044】
図6に示されるように、シャッター部材62の閉状態において、軸部68は、基部64の-Z方向の端部におけるY方向の両端部から、Y方向の両外側へ向けて延びる。なお、
図6では、+Y方向の軸部68が示される。-Y方向の軸部68は、同様の構成であるため、図示が省略されている。
軸部68は、一例として、軸本体71と、2つの窪み部72と、2つの凹部74と、2つの区画部76とを有する。なお、凹部74及び区画部76は、-X方向のみ図示されており、+X方向の図示は省略されている。軸本体71は、Y方向を軸方向とする円柱状に形成され、外周面71Aを有する。
【0045】
2つの窪み部72は、外周面71Aにおいて中心角が180°となる周方向の2箇所の部位から、それぞれ径方向の内側へ窪んだ部位である。
2つの凹部74は、外周面71Aにおいて2つの窪み部72に対するY方向の内側に形成され、それぞれ径方向の内側へ窪んだ部位である。
2つの区画部76は、それぞれ窪み部72と凹部74とをY方向に区画する部位である。
【0046】
外周面71AにおけるY方向の中央部から軸部68のY方向の内側の端部までの部分には、2つの係合部78が形成されている。
2つの係合部78は、軸本体71の径方向の外側へ張り出された板状に形成される。また、2つの係合部78は、軸本体71の周方向において、2つの区画部76に対して90°ずれた位置にある。また、係合部78のY方向の長さは、区画部76のY方向の長さより長い。
外周面71Aの周方向において、係合部78の一方の面を側面78Aとし、係合部78の他方の面を側面78Bとする。
【0047】
図4に示されるように、レバー部材82は、当接部の一例であり、シャッター部材62に連結される。また、レバー部材82は、負圧室34の外側に延在しており、シャッター部材62を変位させる機能を有する。
【0048】
図7に示されるように、レバー部材82は、レバー本体83と、筒部87とを有する。
レバー本体83は、Y方向に所定の厚さを有する円板部84と、円板部84の外周の一部から外側へ一方向に延びる延在部85と、延在部85の一部から+Y方向に突出された引掛部86(
図5A)とを有する。円板部84には、不図示の貫通孔が形成される。
【0049】
筒部87は、円板部84から-Y方向に延びる円筒状に形成されており、外周面87Aと、内周面87Bとを有する。筒部87における円板部84とは反対側の端部には、Y方向の内側へ向けて切り欠かれた被係合部88が形成されている。
被係合部88は、外周面87Aから内周面87Bまで貫通している。また、被係合部88は、筒部87の周方向において180°間隔で配置された第1被係合部89及び第2被係合部91から成る。
【0050】
第1被係合部89及び第2被係合部91は、筒部87の径方向に見て、それぞれ-Y方向に開口するU字状に形成される。
第1被係合部89は、X方向に対向する2つの端面89Aを有する。
第2被係合部91は、X方向に対向する2つの端面91Aを有する。
第1被係合部89及び第2被係合部91は、それぞれ、係合部78(
図6)を挿通し且つ係合可能な大きさを有する。
【0051】
内周面87Bにおける-Y方向の端部には、内周面87Bから径方向の内側へ突出する2つの突起92が設けられている。2つの突起92は、筒部87の周方向に180°ずれて配置されており、径方向に対向する。2つの突起92は、軸部68の2つの凹部74(
図6)に、それぞれ1つずつ挿入される。
【0052】
図4に示されるように、連結部102は、負圧室34の底部35に配置され、一部が被連結部54に連結される。連結部102は、Y方向に沿った中心軸の周りに回転可能である。また、連結部102は、シャッター部材62とレバー部材82とを連結し且つ仕切機構部60の回動中心Cを有する。
本実施形態において、連結部102は、軸部68と、筒部87とを有する。換言すると、連結部102は、シャッター部材62の一部、及びレバー部材82の一部とそれぞれ一体に形成されている。なお、連結部102は、シャッター部材62及びレバー部材82とは別体として設けられていてもよい。このように、連結部102は、負圧室34の底部35に回転可能に支持された軸部68を有する。また、連結部102は、回動中心Cの周りに回転する回転軸である。
【0053】
図6、
図7及び
図8に示されるように、軸部68は、筒部87と係合可能な状態となる。具体的には、軸部68が筒部87に挿入され、2つの突起92が2つの凹部74に挿入される。2つの突起92は、2つの区画部76によってY方向に抜け止めされる。係合部78と、第1被係合部89及び第2被係合部91とが係合されることで、シャッター部材62に対するレバー部材82の回動が停止される。なお、本実施形態において、係合とは、2つの部材の単なる接触も含む概念である。
【0054】
筒部87の周方向において、係合部78の幅は、2つの端面89Aの間隔より狭く、2つの端面91Aの間隔より狭い。これにより、一例として、側面78Aと端面91Aとの間、及び側面78Bと端面89Aとの間には、回動中心Cの周りの中心角で表される遊び角θ〔°〕が存在する。換言すると、連結部102は、シャッター部材62とレバー部材82とを所定の遊び角θを持って連結する。
【0055】
図4に示されるように、駆動部80は、プラテンユニット30とは別に設けられる。また、駆動部80は、本体フレーム15に取り付けられ、仕切機構部60を駆動する。駆動部80は、回転を行う駆動源の一例としてのモーター94と、モーター94の回転に伴ってレバー部材82を回動させることで、シャッター部材62を開位置と閉位置とに変位させるカム95とを有する。
モーター94の動作は、制御部26(
図1)によって制御される。モーター94の駆動力は、不図示の伝達ギヤを介してカム95に伝達される。
【0056】
カム95は、Y方向に沿って延びる円柱状の回転軸部96と、Y方向から見て回転軸部96を中心とするほぼ半円状に形成されたカム本体部97とを備える。
回転軸部96は、本体フレーム15の一部に回転可能に支持される。なお、回転軸部96の回転の中心を中心Gとする。
カム本体部97は、外周面であるカム面97Aを有する。カム本体部97におけるカム面97Aよりも径方向の内側で且つ周方向の一端に位置する部位は、周方向に切り欠かれている。この切り欠かれた部位を退避部98とする。
退避部98におけるカム面97Aと隣り合う部位は、R面状に切り欠かれている。
シャッター部材62が閉位置にある場合、レバー部材82の先端部は、退避部98が形成されていることで、カム95とは非接触状態とされる。
【0057】
カム95は、レバー部材82に対して非接触であり且つシャッター部材62が閉位置にある場合、+Y方向から-Y方向を見て中心Gに対して時計回り方向に回転されることで、レバー部材82と接触し、レバー部材82を反時計回り方向に回転させる。これにより、シャッター部材62が閉位置から開位置へ向けて移動される。
また、カム95は、レバー部材82とカム面97Aとが接触し且つシャッター部材62が開位置にある場合(
図9の状態)、中心Gに対して、さらに時計回り方向に回転されることで、レバー部材82から離れる。これにより、レバー部材82が時計回り方向に回転され、シャッター部材62が開位置から閉位置へ向けて移動される。
このように、カム95は、シャッター部材62が開位置にある場合にレバー部材82に接触し、シャッター部材62が閉位置にある場合にレバー部材82に接触しない。
【0058】
図4に示されるように、シャッター部材62は、制御部26(
図1)による回転制御が行われることで、蓋部66が収納部56に収納されるときの開位置と、蓋部66が+Z方向に沿って直立され負圧室34を第1負圧室39と第2負圧室41とに区画するときの閉位置とに切り換わる。
【0059】
図2に示されるように、シャッター部材62は、ロール紙PRのX方向の幅に相当する長さが、第1負圧室39のX方向の幅に相当する長さL1以下の場合、閉位置へ回転されることで、負圧室34を第1負圧室39と第2負圧室41とに区画する。また、シャッター部材62は、ロール紙PRのX方向の幅に相当する長さが、長さL1より大きい場合、開位置へ回転されることで、第1負圧室39と第2負圧室41との区画を解除する。
なお、
図2には、長さL1と、第2負圧室41のX方向の幅に相当する長さL2と、負圧室34のX方向の幅に相当する長さL3とが示される。L3=L1+L2である。
【0060】
図5Aに示されるように、捩りばね104は、巻部105と、巻部105から一方に延びるアーム106と、巻部105から他方に延びるアーム107とを有する。また、捩りばね104は、シャッター部材62におけるY方向の中央部に位置する。
巻部105は、中心軸がY方向に沿うように配置される。また、巻部105は、底部35(
図4)の一部に支持される。アーム106の端部は、底部35の一部に係合される。アーム107の端部は、基部64における-X方向の端部に係合される。
【0061】
捩りばね104は、一例として、外力が作用していない自然状態において、アーム106とアーム107がほぼ180°に配置される捩りばねである。このため、捩りばね104は、シャッター部材62が閉位置に向けて移動される場合、シャッター部材62が開状態となる方向にシャッター部材62を押圧する。つまり、捩りばね104は、押圧部材の一例である。
【0062】
なお、捩りばね104は、シャッター部材62が開状態のとき、シャッター部材62を重力方向に押圧する、-Z方向の力F1(
図10A、
図10B)を作用させる。換言すると、捩りばね104は、開位置にあるシャッター部材62を確実に収納部56に収めるように作用する。
また、捩りばね104は、シャッター部材62が閉状態のときにおいても、シャッター部材62に対して、収納部56に向かう力F1(
図5A、
図5B)が作用する。
【0063】
引張ばね108は、一端がレバー部材82の引掛部86に引っ掛けられ、他端が底部35の引掛部58に引っ掛けられることで、レバー部材82に力を付与する。つまり、引張ばね108は、付与部材の一例であり、シャッター部材62が閉状態となる方向にレバー部材82を回動させる力F2(
図5A、
図5B)を、レバー部材82に付与する。
引張ばね108がレバー部材82に力を付与することで、シャッター部材62が閉位置に回動して規制部55に当接した状態にある場合、レバー部材82が遊び角θ(
図8)だけ多く回動させる。このことにより、閉状態において、F1方向に押圧されたシャッター部材を確実に閉位置に移動させることができる。
引張ばね108がレバー部材82に付与する力F2は、捩りばね104がシャッター部材62を押圧する力より大きい。
【0064】
次に、実施形態のプリンター10の作用について説明する。なお、プリンター10の各構成については、
図1から
図8までを参照するものとして、個別の図番の記載を省略する。
図9に示されるように、レバー部材82は、延在部85がカム95によって+Z方向に押し上げられることによって、引張ばね108の引張力に抵抗しながら傾倒される。これにより、シャッター部材62は、収納部56に収納された開状態となり、第1負圧室39と第2負圧室41とを連通させて負圧室34とする。
また、壁面67と底面52Aは、Z方向のほぼ同じ高さに揃えられる。これにより負圧室34の底面に相当する面が、フラットな状態となる。
【0065】
図10Aに示されるように、シャッター部材62の開状態において、プラテンユニット30が、位置Z2(
図5A)に高さ調整された場合、カム95とシャッター部材62とのZ方向の間隔が広がる。ここで、シャッター部材62は、遊び角θの範囲内において、レバー部材82に対して相対的に回動が可能となっているので、捩りばね104の力によって、F1の方向に押圧される。これにより、シャッター部材62が確実に収納部56に収納されて、壁面67と底面52Aは、Z方向のほぼ同じ高さに揃えられる。
【0066】
図10Bに示されるように、シャッター部材62の開状態において、プラテンユニット30が、位置Z3(
図5B)に高さ調整された場合、カム95とシャッター部材62とのZ方向の間隔が狭くなる。ここで、レバー部材82は、遊び角θの範囲内において、シャッター部材62に対して相対的に回動が可能となっているので、シャッター部材62が底面56Aに接触してカム95がレバー部材82を必要以上に+Z方向に押し上げたとしても、シャッター部材62に影響を与えずに、シャッター部材62、レバー部材82が破損することを防止できる。
【0067】
図4に示されるように、レバー部材82は、カム95が回転されることで、延在部85がカム95から離れた状態において、引張ばね108の引張力によって回転される。なお、引張ばね108の引張力は、捩りばね104がシャッター部材62を開位置へ移動させようとする力より大きい。これにより、シャッター部材62は、Z方向に起立する閉状態となり、第1負圧室39と第2負圧室41とを区画する。
起立されたシャッター部材62は、規制部55と接触することで、+X方向への過剰な回動が規制される。
【0068】
図4、
図5A及び
図5Bに示されるように、シャッター部材62の閉状態において、カム95とレバー部材82とは離れている。このため、プラテンユニット30が、位置Z2又は位置Z3に高さ調整されても、カム95によってレバー部材82が回動され難いので、シャッター部材62の閉状態を維持することができる。
【0069】
以上、説明した通り、プリンター10によれば、プラテンユニット30と駆動部80との位置関係に変化があった場合、レバー部材82と駆動部80との接触状態も変化する可能性がある。ここで、連結部102が、シャッター部材62とレバー部材82とを所定の遊び角θを持って連結することで、シャッター部材62が、レバー部材82に対して相対的に回動することが可能となるので、シャッター部材62を開位置に配置して、負圧室34の開放を十分に行うことができる。
【0070】
プリンター10によれば、連結部102の軸部68が、底部35に留まって回転される。これにより、連結部102がシャッター部材62とレバー部材82とを弾性部材を介して連結する構成に比べて、シャッター部材62とレバー部材82との連結状態を維持するのに必要なスペースを小さくできる。
プリンター10によれば、組付け誤差などによりシャッター部材62が閉位置まで到達し難い構成であっても、引張ばね108がレバー部材82に回動させる力を付与することで、シャッター部材62が閉位置まで回動されるので、シャッター部材62を閉位置に到達させることができる。
【0071】
プリンター10によれば、引張ばね108がレバー部材82に力を付与した場合、レバー部材82は、遊び角θを超える過剰な角度で回動されることがないので、レバー部材82や連結部102に過度の負荷が作用することを抑制できる。
プリンター10によれば、組付け誤差などによりシャッター部材62が開位置まで到達し難い構成であっても、捩りばね104がシャッター部材62を押圧することで、シャッター部材62が開位置まで回動されるので、シャッター部材62を開位置に到達させることができる。
【0072】
プリンター10によれば、引張ばね108がレバー部材82に付与する力と、捩りばね104がシャッター部材62を押圧する力との差分に相当する力が、シャッター部材62を遊び角θに相当する分だけ回動させる力として作用するので、シャッター部材62を閉位置に到達させることができる。
プリンター10によれば、シャッター部材62が閉位置にある場合、カム95がレバー部材82に接触しないことで、レバー部材82が過剰に回動されることが抑制されるので、シャッター部材62が閉位置を過度に越えた位置に配置されることを抑制できる。
【0073】
プリンター10によれば、連結部102が回動中心Cを含んでスライドする構成に比べて、連結部102の移動に必要なスペースを小さくできる。
プリンター10によれば、規制部55及び底面56Aがシャッター部材62の変位を規制することで、シャッター部材62が開位置又は閉位置を過度に越えて位置することを抑制できる。
プリンター10によれば、本体フレーム15に対してプラテンユニット30のZ方向の位置の調整が行われることで、記録部18とプラテンユニット30とのZ方向の間隔を調整することができる。
【0074】
プリンター10によれば、用紙PのX方向の大きさが変更された場合、シャッター部材62を駆動することで、用紙PのX方向の大きさに合わせて負圧室34の容積を変更できるので、用紙PのX方向の大きさに合わせて用紙Pを吸引することができる。
プリンター10によれば、負圧室34がシャッター部材62によって区画された場合、負圧室34の1つ当たりの容積が減少するが、負圧室34の容積の減少に合わせて、吸引ファン29の仕事量が第2仕事量W2から第1仕事量W1に低減されるので、容積が減少した負圧室34における過度の用紙Pの吸引を抑制できる。
【0075】
本発明の実施形態に係るプリンター10は、以上のべたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0076】
プリンター10において、連結部102は、被連結部54に対して変位可能に設けられてもよい。また、連結部102は、回動中心Cを有さない弾性部材で構成されてもよい。
レバー部材82にカム95を連結させることで、引張ばね108を設けなくてもよい。引張ばね108は、レバー部材82が遊び角θだけ多く回動するようにレバー部材82に力を付与しなくてもよい。シャッター部材62は、捩りばね104を設けずに、一部に錘部を設けることで、自重により開位置へ回動させてもよい。
【0077】
プリンター10において、引張ばね108がレバー部材82に付与する力は、捩りばね104がシャッター部材62を押圧する力と等しくてもよい。カム95は、シャッター部材62が開位置にある場合にレバー部材82に接触してもよい。
シャッター部材62の変位を規制する規制部は、開位置のみ又は閉位置のみに設けられてもよい。プラテンユニット30は、本体フレーム15とは別の部材に対してZ方向の位置の調整が可能とされてもよい。
【0078】
プリンター10において、仕切機構部60は、負圧室34を用紙Pの搬送方向に区画してもよい。また、負圧室34は、3つ以上に区画されてもよい。換言すると、仕切機構部60は2つ以上設けられてもよい。吸引ファン29は、負圧室34が区画される場合の第1仕事量W1が、負圧室34が区画されない場合の第2仕事量W2と等しくてもよい。
記録部18は、シリアル方式の記録ヘッド、ラインヘッドのどちらであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…プリンター、12…筐体、13…側壁、14…収容部、15…本体フレーム、
16…搬送部、17…搬送ローラー対、18…記録部、19…排出口、22…切断部、
24…排出ユニット、25…支持台、26…制御部、28…排出ローラー対、
29…吸引ファン、30…プラテンユニット、32…支持面、34…負圧室、35…底部、
36…後壁、36A…内面、37…側壁、38…支持壁、38A…下面、
39…第1負圧室、40…区画部、41…第2負圧室、42…窪み部、43…第1区画室、
44…第2区画室、45…第3区画室、46…吸引孔部、47…第1吸引口、
48…第2吸引口、49…第3吸引口、52…底壁、52A…底面、53…突出部、
53A…縦部、53B…横部、54…被連結部、55…規制部、56…収納部、
56A…底面、58…引掛部、58A…縦壁、58B…突出部、59…ストッパー部、
60…仕切機構部、62…シャッター部材、64…基部、66…蓋部、67…壁面、
68…軸部、71…軸本体、71A…外周面、72…窪み部、74…凹部、76…区画部、
78…係合部、78A…側面、78B…側面、80…駆動部、82…レバー部材、
83…レバー本体、84…円板部、85…延在部、86…引掛部、87…筒部、
87A…外周面、87B…内周面、88…被係合部、89…第1被係合部、
89A…端面、91…第2被係合部、91A…端面、92…突起、94…モーター、
95…カム、96…回転軸部、97…カム本体部、97A…カム面、98…退避部、
102…連結部、104…捩りばね、105…巻部、106…アーム、107…アーム、
108…引張ばね、C…回動中心、F1…力、F2…力、G…中心、K…搬送経路、
L1…長さ、L2…長さ、L3…長さ、P…用紙、PR…ロール紙、PS…単票紙、
Q…インク、S1…記録領域、S2…余白領域、Z1…基準位置、Z2…位置、
Z3…位置