(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20240925BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20240925BHJP
B61B 13/00 20060101ALN20240925BHJP
B65G 35/00 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
B65G43/00 A
B65G47/52 101Z
B61B13/00 V
B65G35/00 B
(21)【出願番号】P 2021032746
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達朗
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-012115(JP,A)
【文献】特開2003-285905(JP,A)
【文献】特開2009-143668(JP,A)
【文献】特開平08-282849(JP,A)
【文献】特開2002-265022(JP,A)
【文献】特開2005-272107(JP,A)
【文献】特開平09-048519(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104245541(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00
B65G 47/52
B61B 13/00
B65G 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を搬送するための搬送システムであって、
前記荷物を搬送する台車と、
搬送が中止される荷物が払い出される払出部と、
前記荷物の搬送に関する動作指令に基づいて前記台車を制御し、前記台車の動作状況を表す確認情報を生成して記憶する第1コントローラと、
前記第1コントローラに前記動作指令を送信し、前記第1コントローラから前記確認情報を受信して記憶する第2コントローラと、
前記搬送システムの再起動を指令する再起動指令部と、を備え、
前記搬送システムが異常により停止した後に前記再起動指令部により前記搬送システムの再起動が指令されたときに、
前記第1コントローラは、前記確認情報を前記第2コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、前記搬送システムが正常であったときに前記第1コントローラから受信して前記第2コントローラに記憶されている前記確認情報と、前記搬送システムが異常により停止した後に前記搬送システムの再起動が指令されて前記第1コントローラから受信した前記確認情報とに基づいて整合性処理を行い、整合性処理により異常と判断された台車があれば、前記第1コントローラに対し、当該台車に関する前記確認情報を取り消す、及び/又は、当該台車が搬送のために支持している前記荷物を前記払出部に払い出すよう指令する、
搬送システム。
【請求項2】
前記台車の走行経路の第1位置に設けられ、前記第1位置に存在する前記台車が前記荷物を支持しているか否かを検出する載荷検出部をさらに備え、
前記第1コントローラは、前記再起動指令部により前記搬送システムの再起動が指令されたときに、前記台車に前記第1位置を通過させる走行制御を実行し、前記第1位置を通過した前記台車が前記荷物を支持しているか否かの検出結果を前記第2コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、前記搬送システムが正常であったときに前記第1コントローラから受信して前記第2コントローラに記憶されている前記確認情報と、前記搬送システムが異常により停止した後に前記搬送システムの再起動が指令されて前記第1コントローラから受信した前記確認情報と、前記検出結果と、に基づいて前記整合性処理を行う、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記動作指令を生成するための搬送指令を前記第2コントローラに送信する第3コントローラをさらに備え、
前記第2コントローラは、前記台車による前記荷物の搬送の進行状況に関する進行情報を前記第3コントローラに送信し、
前記第2コントローラは、前記整合性処理により異常と判断された台車があれば、前記第3コントローラに対し、当該台車の前記進行情報を取り消すよう指令する、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記第3コントローラは、第2コントローラから前記進行情報を取り消すよう指令を受けた後に、前記進行情報を取り消す前記台車が搬送のために支持している前記荷物を前記払出部に払い出すよう第2コントローラに指令をする、請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記台車は複数存在し、
複数の前記台車は、それぞれ、異なる識別情報を有し、
前記台車の走行経路の第2位置に設けられ、前記第2位置に存在する前記台車の前記識別情報を読み取る読取部をさらに備え、
前記第1コントローラは、前記再起動指令部により前記搬送システムの再起動が指令されたときに、複数の台車に前記第2位置を通過させる走行制御を実行し、前記複数の台車の前記走行経路における並び順を示す並び順情報を生成して記憶して前記第2コントローラに送信する、
請求項1~4のいずれかに記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の搬送を行う台車と、当該台車を制御するコントローラと、を備える搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の走行経路上をリニアモータの推力により走行することで荷物を搬送する台車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、荷物を搬送する台車と、この台車の制御を実行する下位コントローラと、当該下位コントローラに対して荷物の搬送に関する指令をする上位コントローラと、を備えた搬送システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の搬送システムでは、下位コントローラと上位コントローラとが適切に協働することで台車に荷物を搬送させる。そのために、下位コントローラと上位コントローラは荷物の搬送に関する情報を互いに送受信する。
具体的には、下位コントローラは、台車による荷物の搬送状況を監視しており、台車が荷物の搬送に関する動作をする毎に、上位コントローラに対して台車の動作に関する報告を送信している。これにより、上位コントローラは、現在の荷物の搬送の状況を把握して、適切な指令を下位コントローラに送信することができる。
【0005】
上記のような搬送システムにおいて異常が発生して搬送システムにおける荷物の搬送が停止した場合、下位コントローラが把握している荷物の搬送状況と、上位コントローラが把握している荷物の搬送状況との間に不整合が生じることがある。そして、そのような不整合が残ったままシステムを再起動すると搬送システムの動作が正常に行われない可能性がある。従って、搬送システムを再起動するまでには、不整合を解消しておく必要がある。
【0006】
従来は、搬送システムのメンテナンスを行う作業者が、下位コントローラ及び上位コントローラを横断的にメンテナンスして、この不整合を解消していた。この不整合を解消するまでに時間が長くなっていた。
【0007】
本発明の目的は、下位コントローラと上位コントローラとを備える搬送システムにおいて異常に起因して下位コントローラが把握する情報と上位コントローラが把握する情報との間に不整合が生じた場合に、その不整合により搬送システムが異常停止することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る搬送システムは、荷物を搬送するためのシステムである。搬送システムは、台車と、払出部と、第1コントローラと、第2コントローラと、再起動指令部と、を備える。
台車は、荷物を搬送する。
払出部には、搬送が中止される荷物が払い出される。
第1コントローラは、荷物の搬送に関する動作指令に基づいて台車を制御し、台車の動作状況を表す確認情報を生成し記憶する。
第2コントローラは、第1コントローラに動作指令を送信し、第1コントローラから確認情報を受信し記憶する。
再起動指令部は、搬送システムの再起動を指令する。
搬送システムが異常により停止した後に再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたとき、
第1コントローラは、確認情報を第2コントローラに送信する。
第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信して第2コントローラに記憶されている確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されて第1コントローラから受信した確認情報とに基づいて整合性処理を行い、整合性処理により異常と判断された台車があれば、第1コントローラに対し、当該台車に関する確認情報を取り消す、及び/又は、当該台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう指令する。
【0009】
上記の荷物の搬送システムでは、異常が発生することで搬送システムが停止し、その後、搬送システムを再起動する指令がなされたときに、台車を制御する第1コントローラが、搬送システムを再起動する際に記憶して保持していた確認情報を第2コントローラに送信する。
一方、第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信して搬送システムを再起動する際に記憶され保持されていた確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されて第1コントローラから受信した上記の確認情報とに基づいて、整合性処理を実行する。
【0010】
整合性処理の結果、再起動する際に第1コントローラにより把握されている台車の状態と、再起動する際に第2コントローラにより把握され搬送システムが正常であったときの台車の状態と、の間に不整合がある場合には、この台車には異常が発生していると判定される。
異常が発生している台車があれば、第2コントローラは、第1コントローラに対して、異常が発生している台車に関する確認情報を取り消す、及び/又は、異常が発生している台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう指令する。
【0011】
このように、第1コントローラと第2コントローラが把握している台車の状態の整合性が自動的に確認され、2つのコントローラで把握されている台車の状態に不整合が生じている場合には、第1コントローラが、不整合が生じている台車の確認情報を取り消す処理、及び/又は、不整合が生じている台車が搬送のために支持している荷物を払い出す(つまり、当該荷物の搬送を継続しない)制御を自動的に実行している。
これにより、搬送システムにおいて異常に起因した第1コントローラが把握する情報と第2コントローラが把握する搬送システムが正常であったときの情報との不整合が生じた際に、その不整合により搬送システムが異常停止することを防止できる。
【0012】
上記の搬送システムは、載荷検出部をさらに備えてもよい。載荷検出部は、台車の走行経路の第1位置に設けられ、第1位置に存在する台車が荷物を支持しているか否かを検出する。
この場合、第1コントローラは、再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたときに、台車に第1位置を通過させる走行制御を実行し、第1位置を通過した台車が荷物を支持しているか否かの検出結果を第2コントローラに送信してもよい。
また、第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信して第2コントローラに記憶されている確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されて第1コントローラから受信した確認情報と、上記の検出結果と、に基づいて整合性処理を行ってもよい。
これにより、実際に台車に搬送のための荷物が支持されているか否かの情報も含めて、2つのコントローラで把握されている台車の情報の整合性をより精度よく判定できる。
【0013】
上記の搬送システムは、第3コントローラをさらに備えてもよい。第3コントローラは、動作指令を生成するための搬送指令を第2コントローラに送信する。
この場合、第2コントローラは、台車による荷物の搬送の進行状況に関する進行情報を第3コントローラに送信してもよい。また、第2コントローラは、整合性処理により異常と判断された台車があれば、第3コントローラに対し、当該台車の進行情報を取り消すよう指令してもよい。
これにより、搬送システム全体における荷物の搬送を管理するさらに上位のコントローラ(つまり、第3コントローラ)における不整合も含めて解消できる。
【0014】
第3コントローラは、第2コントローラから進行情報を取り消すよう指令を受けた後に、進行情報を取り消す台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう第2コントローラに指令をしてもよい。
これにより、搬送システム全体における荷物の搬送を管理するさらに上位のコントローラにおける不整合も含めて解消できる。
【0015】
上記の搬送システムにおいて、台車は複数存在してもよい。また、複数の台車は、それぞれ、異なる識別情報を有してもよい。この場合、搬送システムは、読取部をさらに備えてもよい。読取部は、台車の走行経路の第2位置に設けられ、第2位置に存在する台車の識別情報を読み取る。
また、第1コントローラは、再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたときに、複数の台車に第2位置を通過させる走行制御を実行し、複数の台車の走行経路における並び順を示す並び順情報を生成して記憶して第2コントローラに送信してもよい。
これにより、複数の台車を有する搬送システムにおいて、複数の台車の並び順も考慮して整合性処理を実行できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る搬送システムでは、第1コントローラが把握する情報と第2コントローラが把握する情報との間に生じた不整合により搬送システムが異常停止することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】搬送システムにおける荷物の搬送動作を示すフローチャート
【
図4】通常の搬送システムの再起動動作を示すフローチャート。
【
図5】キャンセル処理を実行するときの再起動動作を示すフローチャート。
【
図6】リジェクト処理を実行するときの再起動動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
(1)搬送システムの構成
図1及び
図2を用いて、第1実施形態に係る搬送システム100の構成を説明する。
図1は、搬送システム100の構成を示す図である。
図2は、搬送システム100の制御構成を示す図である。
搬送システム100は、荷物Wの搬送を行うためのシステムである。搬送システム100は、複数の台車1と、搬送装置3a、3bと、払出部5と、載荷検出部7と、読取部9と、を備える。また、搬送システム100は、機体コントローラ10(第1コントローラの一例)と、搬送コントローラ20と、台車コントローラ30(第2コントローラの一例)と、上位コントローラ40(第3コントローラの一例)と、再起動指令部50と、を制御構成として備える。
【0019】
台車1は、リニアモータにより発生した推力で一対の走行レール1aを走行する台車である。台車1は、その上面に設けられた載置部1bに荷物Wを載置した状態で一対の走行レール1aに沿って走行することで、搬送システム100内で荷物Wを搬送する。複数の台車1は、それぞれ、異なる識別情報を有している。台車1の識別情報は、例えば、台車1の号機情報である。台車1の識別情報は、例えば、台車1に取り付けられたバーコードに示される。
【0020】
搬送装置3a、3bは、例えば、一対の走行レール1aに沿って設けられたコンベヤなどの荷物Wを搬送できる装置である。搬送装置3aは、台車1から移載された荷物Wを所定の場所に搬送する(荷卸し)。一方、搬送装置3bは、所定の場所から搬送されてきた荷物Wを台車1に移載する(荷積み)。搬送システム100における搬送装置3a及び搬送装置3bの配置及び数は、搬送システム100の規模などにより任意に変更できる。
【0021】
払出部5は、搬送が中止される荷物Wが払い出される払い出しステーションである。払出部5は、走行レール1aの近傍の所定の位置に設けられる。
「荷物Wの払い出し」とは、搬送が中止される荷物Wを支持する台車1を払出部5にて停止させ、払出部5において台車1の載置部1bから搬送が中止される荷物Wを除去することをいう。荷物Wの払い出しは、整合性処理により異常があると判定された台車1が載置部1bに載置する荷物Wの搬送を中止する際に実行される。
【0022】
なお、払出部5を搬送装置3a、3bとは別途に設けてもよいし、通常運転時に荷卸し及び/又は荷積みに使用されるステーションの一部を必要に応じて払出部5として使用してもよい。
【0023】
載荷検出部7は、一対の走行レール1a(台車の走行経路の一例)の第1位置P1の近傍に設けられ、第1位置P1に存在する台車1の載置部1bに荷物Wが載置されているか否かを検出する。載荷検出部7は、例えば、カメラ、レーザ光を発生させる発光部と当該レーザ光を受光する受光部とを有する光電センサなどである。
載荷検出部7がカメラの場合には、例えば、画像処理により第1位置P1に存在する台車1上に荷物Wの画像の存在が認められたときに、台車1の載置部1bに荷物Wが載置されていると判断できる。
【0024】
一方、載荷検出部7が光電センサの場合であり、光電センサの発光部と受光部とが一対の走行レール1aを挟んで配置される場合には、例えば、光電センサの発光部から発生されたレーザ光が荷物Wにより遮られて光電センサの受光部により受光されないときに、台車1の載置部1bに荷物Wが載置されていると判断できる。
一方、光電センサの発光部と受光部が一対の走行レール1aに対して同じ側に配置される場合には、光電センサの発光部から発生されたレーザ光が荷物Wにより反射され光電センサの受光部により受光されたときに、台車1の載置部1bに荷物Wが載置されていると判断できる。
【0025】
読取部9は、一対の走行レール1aの第2位置P2に設けられ、第2位置P2に存在する台車1の識別情報を読み取る。読取部9は、例えば、バーコードリーダであり、台車1の識別情報(例えば、台車1の号機情報)を示すバーコードを読み取ることで、複数の台車1のいずれが第2位置P2に存在するかを判定できる。
【0026】
図1に示すように、読取部9が設けられた第2位置P2は、載荷検出部7が設けられた第1位置P1と同じ位置にある。これにより、台車1が荷物Wを載置部1bに載置しているか否かと当該台車1の識別情報とを同時に取得できる。なお、第1位置P1と第2位置P2は同じ位置ではなく、第1位置P1の近傍であっても構わない。また、第2位置P2は、第1位置P1から離れた位置にあってもよい。
【0027】
(2)搬送システムの制御構成
機体コントローラ10は、CPU、記憶装置(RAM、ROMなど)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムであり、複数の台車1を制御する。
機体コントローラ10は、荷物Wの搬送のために台車1に実行させたい動作に関する動作指令(後述)に基づいて、各台車1の走行制御のための信号と、各台車1と搬送装置3a、3bとの間で荷物Wを移載する際の載置部1bの制御のための信号と、を算出し、制御対象の台車1に出力する。
【0028】
また、機体コントローラ10は、搬送システム100における各台車1の動作状況を把握する。具体的には、機体コントローラ10は、各台車1に対して各種制御を指令したときに当該指令の内容に基づいて台車1の動作状況を把握し、把握した動作状況を表す情報(確認情報)を、機体コントローラ10を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶するとともに、台車コントローラ30に送信する。
他の実施形態において、例えば、台車1にセンサが設けられている場合には、機体コントローラ10は、台車1のセンサからの情報に基づいて台車1の動作状況を把握してもよい。
【0029】
さらに、機体コントローラ10は、走行レール1a上における複数の台車1の並び順に関する情報(並び順情報)を管理する。並び順情報は、走行レール1a上における複数の台車1の並び順と、各台車1の状態に関する情報と、を含む。各台車1の状態に関する情報は、例えば、台車1が走行レール1aに導入され稼働している状態(ライン投入済み状態)であること、又は、台車1が稼働不能である状態(ダウン-ライン投入済み状態)であること、又は、走行レール1aからも取り外されている状態(ダウン-ラインアウト状態)のいずれかを示す。
【0030】
本実施形態においては、搬送システム100の再起動が指令されたときに、機体コントローラ10は、走行レール1a上における複数の台車1の並び順と各台車1の状態とを確認して並び順情報を生成する動作(号機確認動作)と、各台車1に荷物Wが載置されているか否かを検出する動作と、を実行する。
【0031】
上記動作を実行後、機体コントローラ10は、号機確認動作で生成した並び順情報を、台車コントローラ30に送信する。また、機体コントローラ10は、後述する整合性処理を実行する際に、台車1が荷物Wを載置しているか否かの検出結果(載荷情報)を、台車コントローラ30に送信する。
【0032】
搬送コントローラ20は、記憶装置(RAM、ROMなど)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムであり、台車コントローラ30からの指令に基づいて、搬送装置3a、3bを制御する。
【0033】
台車コントローラ30は、記憶装置(RAM、ROMなど)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムであり、機体コントローラ10の管理および制御を行う。具体的には、台車コントローラ30は、上位コントローラ40から受信した搬送指令(後述)に基づいて動作指令を生成し、機体コントローラ10に送信する。
動作指令は、荷物Wの搬送において台車1が実行すべき各動作を指示するための指令である。具体的には、動作指令は、例えば、台車1を走行させる指令、台車1に対して荷積み動作をさせる指令、台車1に対して荷卸し動作をさせる指令などである。
【0034】
荷積み動作をさせる指令は、例えば、目的の搬送装置3bまで台車1を移動させて、目的の搬送装置3bから台車1へ荷物Wを移載させる指令である。
一方、荷卸し動作をさせる指令は、例えば、目的の搬送装置3aまで台車1を移動させて、台車1から目的の搬送装置3aへ荷物Wを移載させる指令である。
【0035】
また、台車コントローラ30は、機体コントローラ10から送信された確認情報、並び順情報、及び載荷情報を受信し、台車コントローラ30を構成するコンピュータシステムの記憶装置に記憶する。
確認情報を受信した際、台車コントローラ30は、当該確認情報に基づいて台車1による荷物Wの搬送の進行状況を把握し、把握した進行状況を表す情報(進行情報)を生成する。進行情報は、例えば、台車1による荷積み動作が完了したことを報告する情報、台車1による荷物Wの搬送が完了したことを報告する情報である。生成した進行情報は、上位コントローラ40に送信される。
【0036】
なお、台車コントローラ30が送信する進行情報の数は、台車コントローラ30が受信する確認情報の数よりも少ない。すなわち、進行情報は、搬送システム100の動作中に逐一送信されるものではなく、搬送システム100における荷物の搬送状況がある程度定まったときに送信される。
【0037】
搬送システム100の再起動が指令されたときに、台車コントローラ30は、機体コントローラ10が有する情報と台車コントローラ30が有する情報との整合性を確認する以下の処理を実行する。
台車コントローラ30は、号機確認動作を実行後の機体コントローラ10から送信された並び順情報と台車コントローラ30が管理する並び順情報との整合性を確認する処理(号機確認処理)を実行する。並び順情報に整合性がない場合には、台車コントローラ30は、機体コントローラ10からの並び順情報と整合するよう台車コントローラ30が管理する並び順情報を更新する。
【0038】
なお、他の実施形態において、号機確認処理の結果、並び順情報に整合性がないと判定された場合に、台車コントローラ30は、台車コントローラ30が管理する並び順情報を更新することなく、並び順情報に整合性がない旨の異常を発報してもよい。
【0039】
また、台車コントローラ30は、上記の載荷情報と、再起動が指令されたタイミングにおいて機体コントローラ10が記憶している確認情報と、再起動が指令されたタイミングにおいて台車コントローラ30が記憶している確認情報、すなわち、搬送システム100が正常であったときに機体コントローラ10から受信して台車コントローラ30に記憶されている確認情報と、に基づいて整合性処理を実行する。
整合性処理は、再起動が指令された際に機体コントローラ10が把握している各台車1の状態と、台車コントローラ30が把握している各台車1の状態、すなわち、搬送システム100が正常であったときの各台車1の状態との間に矛盾(整合性)があるか否かを判定する処理である。
【0040】
上記の整合性処理の結果、機体コントローラ10が把握している各台車1の状態と台車コントローラ30が把握している各台車1の状態との間に整合性がないと判定した場合には、台車コントローラ30は、整合性がない台車1に対して異常が発生していると判定する。
【0041】
上位コントローラ40は、記憶装置(RAM、ROMなど)、各種インタフェースにより構成されるコンピュータシステムであり、搬送システム100における荷物Wの搬送を管理する。具体的には、上位コントローラ40は、搬送システム100において目的の搬送装置3a、3b間で荷物Wの搬送を実行するよう指令する搬送指令を生成し、台車コントローラ30に送信する。
【0042】
また、上位コントローラ40は、台車コントローラ30から受信した進行情報を記憶する。さらに整合性処理の結果、上位コントローラ40が記憶している進行情報を取り消す指令が台車コントローラ30からあった場合、上位コントローラ40は、その進行情報を取り消すとともに、必要に応じて、異常が発生した台車1について後述するリジェクト処理を実行するための指令を台車コントローラ30に送信する。
この場合、搬送システム100においては、後述するキャンセル処理とリジェクト処理とが両方実行される。
【0043】
再起動指令部50は、例えば、搬送システム100を再起動する指令を出力する入力インタフェース(例えば、ボタン、キーボード、マウス、タッチパネルなど)である。本実施形態では、搬送システム100が異常により停止した後に、作業者が再起動指令部50を操作することで、搬送システム100の再起動が上位コントローラ40に指令される。
この指令を受けた上位コントローラ40は、搬送システム100を再起動する指令を台車コントローラ30に送信する。その後、搬送システム100の再起動処理が開始される。
【0044】
他の実施形態において、再起動指令部50は、構成として上位コントローラ40に含まれていてもよい。この場合、上位コントローラ40が、搬送システム100にて異常が発生したことを判断し、搬送システム100の再起動が必要な場合には再起動処理を実行する。すなわち、この場合には、上位コントローラ40は、作業者からの通知がなくとも、搬送システム100の異常を検知し、自律的に再起動処理を実行できる。
【0045】
(3)搬送システムの動作
(3-1)荷物の搬送動作
以下、上記の構成を有する搬送システム100の動作を説明する。まず、
図3を用いて、搬送システム100における荷物Wの搬送動作を説明する。
図3は、搬送システム100における荷物Wの搬送動作を示すフローチャートである。
搬送システム100における荷物Wの搬送は、搬送コントローラ20が、荷物Wの搬送元となる搬送装置3bにより搬送対象の荷物Wが走行レール1aの近傍まで到達した旨の通知を台車コントローラ30に送信することで開始される。
上記の通知を受信した台車コントローラ30は、ステップS1で、上位コントローラ40に搬送指令要求を送信する。この搬送指令要求には、荷物Wの搬送元となる搬送装置3bの配置位置に関する情報が含まれる。
【0046】
搬送指令要求を受信した上位コントローラ40は、ステップS2で、受信した搬送指令要求に基づいて搬送指令を生成し、搬送指令要求を送信した台車コントローラ30に送信する。
搬送指令には、荷物Wの搬送元となる搬送装置3bの配置位置に関する情報と、当該荷物Wの搬送先となる搬送装置3aの配置位置に関する情報と、が含まれる。
【0047】
搬送指令を受信した台車コントローラ30は、ステップS3で、受信した搬送指令に基づいて、荷物Wの搬送元において搬送装置3bから台車1へ荷物Wを移載する動作(荷積み動作)を実行するための動作指令を生成して、機体コントローラ10に送信する。
ステップS3で生成される動作指令には、特定の台車1を荷物Wの搬送元の搬送装置3bの配置位置まで移動させる指令と、当該位置で搬送装置3bから台車1へ荷物を移載させる指令と、が含まれる。
【0048】
荷積み動作を実行するための動作指令を受信した機体コントローラ10は、動作指令に基づいて台車1を制御する。具体的には、機体コントローラ10は、特定の台車1を荷物Wの搬送元となる搬送装置3bの配置位置まで移動させる走行制御を実行し、その後、搬送元の搬送装置3bから台車1の載置部1bへ荷物Wを移載させる制御を実行する。
【0049】
荷積み動作の実行中に、機体コントローラ10は、ステップS4~S7で、各台車1の動作状況を把握し、把握した動作状況を表す確認情報を生成して記憶する。また、機体コントローラ10は、生成した確認情報を台車コントローラ30に送信する。台車コントローラ30は、受信した確認情報を記憶する。
【0050】
具体的には、台車1に対して荷積み移動動作を指令した機体コントローラ10が、ステップS4で、動作状況として「荷積み移動開始」を把握し、「荷積み移動開始」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
その他、例えば、台車1にセンサ等が設けられている場合には、機体コントローラ10は、荷積み移動動作を指令した後に台車1のセンサにて台車1の移動が検知されたときに、動作状況として「荷積み移動開始」を把握してもよい。
【0051】
台車1が搬送元の搬送装置3bに到着し、搬送装置3bから台車1への荷物Wの移載を指令した機体コントローラ10が、ステップS5で、動作状況として「荷積み開始」を把握し、「荷積み開始」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
その他、例えば、台車1にセンサ等が設けられている場合には、機体コントローラ10は、台車1のセンサにて台車1の停止が検知された後に、搬送装置3bから台車1への荷物Wの移動がセンサに検知されたタイミングで、動作状況として「荷積み開始」を把握してもよい。
【0052】
その後、搬送装置3bから台車1への荷物Wの移載を指令後(「荷積み開始」を把握後)、台車1への荷積みが完了するまでの間、機体コントローラ10が、ステップS6で、動作状況として「荷積み中」を把握し、「荷積み中」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
【0053】
さらに、台車1への荷物Wの移載が完了したことを把握した機体コントローラ10が、ステップS7で、動作状況として「荷積み完了」を把握し、「荷積み完了」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
【0054】
荷積み完了を表す確認情報を受信した台車コントローラ30は、ステップS8で、荷積み動作が完了したことを表す進行情報を生成し、上位コントローラ40に送信する。上位コントローラ40は、受信した進行情報を記憶する。
なお、上記の進行情報を上位コントローラ40に送信する際、台車コントローラ30は、荷積み動作が完了したことを表す進行情報を新たに生成することなく、機体コントローラ10から受信した荷積み完了を表す確認情報をそのまま進行情報として上位コントローラ40に送信してもよい。
【0055】
また、荷積み完了を表す確認情報を受信した台車コントローラ30は、ステップS9で、ステップS2で受信した搬送指令に基づいて、荷物Wの搬送先において台車1から搬送装置3aへ荷物Wを移載する動作(荷卸し動作)を実行するための動作指令を生成して、機体コントローラ10に送信する。
ステップS9で生成される動作指令には、荷積み動作を完了した台車1を荷物Wの搬送先の搬送装置3aの配置位置まで移動させる指令と、当該位置で台車1から搬送装置3aへ荷物Wを移載させる指令と、が含まれる。
【0056】
荷卸し動作を実行するための動作指令を受信した機体コントローラ10は、この動作指令に基づいて台車1を制御する。具体的には、機体コントローラ10は、荷積み動作を完了した台車1を荷物Wの搬送先となる搬送装置3aの配置位置まで移動させる走行制御を実行し、その後、台車1から搬送先の搬送装置3aへ荷物Wを移載させる制御を実行する。
【0057】
荷積み動作の実行中に、機体コントローラ10は、ステップS10~S13で、各台車1の動作状況を把握し、把握した動作状況を表す確認情報を生成して記憶する。また、機体コントローラ10は、生成した確認情報を台車コントローラ30に送信する。台車コントローラ30は、受信した確認情報を記憶する。
【0058】
具体的には、台車1に対して荷卸し移動動作を指令した機体コントローラ10が、ステップS10で、動作状況として「荷卸し移動開始」を把握し、「荷卸し移動開始」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
その他、例えば、台車1にセンサ等が設けられている場合には、機体コントローラ10は、荷卸し移動動作を指令した後に台車1のセンサにて台車1の移動が検知されたときに、動作状況として「荷卸し移動開始」を把握してもよい。
【0059】
台車1が搬送先の搬送装置3aに到着し、台車1から搬送装置3aへの荷物Wの移載を指令した機体コントローラ10が、ステップS11で、動作状況として「荷積み開始」を把握し、「荷卸し開始」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
その他、例えば、台車1にセンサ等が設けられている場合には、機体コントローラ10は、台車1のセンサにて台車1の停止が検知された後に、台車1から搬送装置3aへの荷物Wの移動がセンサに検知されたタイミングで、動作状況として「荷積み開始」を把握してもよい。
【0060】
その後、搬送装置3bから台車1への荷物Wの移載を指令後(「荷積み開始」を把握後)、台車1への荷積みが完了するまでの間、機体コントローラ10が、ステップS12で、動作状況として「荷卸し中」を把握し、「荷卸し中」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
【0061】
さらに、台車1から搬送先の搬送装置3aへの荷物Wの移載が完了したことを把握した機体コントローラ10が、ステップS13で、動作状況として「荷卸し完了」を把握し、「荷卸し完了」を表す確認情報を生成して記憶し台車コントローラ30に送信する。
【0062】
荷卸し完了を表す確認情報を受信した台車コントローラ30は、ステップS14で、荷物Wの搬送が完了したことを表す進行情報を生成して記憶し、上位コントローラ40に送信する。上位コントローラ40は、受信した進行情報を記憶する。
なお、上記の進行情報を上位コントローラ40に送信する際、台車コントローラ30は、荷卸し動作が完了したことを表す進行情報を新たに生成することなく、機体コントローラ10から受信した荷卸し完了を表す確認情報をそのまま進行情報として上位コントローラ40に送信してもよい。
【0063】
このように、搬送システム100においては、台車1が荷物Wの搬送に関する動作を実行中に、機体コントローラ10が台車1の動作状況を把握して確認情報を生成して記憶する。生成された確認情報は台車コントローラ30に送信され、台車コントローラ30にて記憶される。このようにして、機体コントローラ10と台車コントローラ30とで台車1の動作状況を共有できる。
【0064】
また、台車コントローラ30が受信した確認情報に基づいて荷物Wの搬送の進行に関する進行情報を記憶する。進行情報は上位コントローラ40に送信され、上位コントローラ40にて記憶される。このようにして、台車コントローラ30と上位コントローラ40とで搬送システム100における荷物Wの搬送の進行状況を共有できる。
【0065】
(3-2)搬送システムの再起動動作
図4を用いて、搬送システム100を再起動する際の動作を説明する。
図4は、通常の搬送システム100の再起動動作を示すフローチャートである。
図4に示す再起動動作は、搬送システム100が異常により停止した後に、作業者が再起動指令部50を操作することにより搬送システム100を再起動する際の動作である。
搬送システム100が停止するような異常は、例えば、停電により搬送システム100の各部への電力供給が遮断された場合、台車1と搬送装置3a、3bとが荷物Wの移載に失敗した場合、搬送システム100に設けられた侵入扉(図示せず)が開いた状態であることが検知された場合、火災報知がなされた場合、地震発生が検知された場合などに発生する。
【0066】
機体コントローラ10及び/又は台車コントローラ30は、搬送システム100における初期の並び順情報を予め記憶している。初期の並び順情報は、例えば、作業者により予め入力された情報でもよいし、基準となるデフォルトの情報を含むものであってもよいし、何も記載されていないブランクの情報であってもよい。
【0067】
再起動指令部50が操作されて再起動が指示されると、上位コントローラ40が、ステップS101で、台車コントローラ30に再起動指令を送信する。
再起動指令を受信した台車コントローラ30は、搬送システム100を再起動させるための動作を開始する。まず、台車コントローラ30は、ステップS102で、機体コントローラ10に対して号機確認動作を実行するよう指令する。
【0068】
号機確認動作を実行するよう指令された機体コントローラ10は、まず、台車1に載荷検出部7と読取部9とを通過させるために、台車1に対して走行レール1aを一周させる走行制御を行う。
台車1が走行レール1aを一周する間に、第2位置P2に設けられた読取部9が、第2位置P2を通過した各台車1の識別番号を読み取る。機体コントローラ10は、各台車1の識別番号を読取部9で読み取った順番に並べて並び順情報を生成する。
【0069】
また、全ての台車1が走行レール1aを一周する間に、第1位置P1に設けられた載荷検出部7が、第1位置P1を通過した各台車1に荷物Wが載置されているか否かを検出する。機体コントローラ10は、台車1に荷物Wが載置されているか否かの検出結果と読取部9にて読み取った台車1の識別番号と関連付けて載荷情報を生成する。
上記のように、載荷検出部7と読取部9とは近い距離にあるので、台車1に荷物Wが載置されているか否かの検出結果と台車1の識別番号とはほぼ同時に取得される。従って、機体コントローラ10は、同時又はわずかな時間ずれで取得された荷物Wの検出結果と台車1の識別番号とを関連付けて載荷情報を生成する。
【0070】
上記のように、号機確認動作は、走行レール1aの近傍に設けられた載荷検出部7及び読取部9にて取得された情報に基づいて実行される。これにより、号機確認動作を行うための情報を取得するセンサなどを台車1ごとに設ける必要がなくなるので、搬送システム100のコストダウンを図ることができる。
【0071】
並び順情報と載荷情報とを生成後、機体コントローラ10は、ステップS103で、並び順情報を台車コントローラ30に送信する。
並び順情報を受信した台車コントローラ30は、機体コントローラ10から受信した並び順情報と台車コントローラ30が管理する並び順情報との間の整合性を確認する号機確認処理を実行する。これら2つの並び順情報に整合性がないと判定した場合、台車コントローラ30は、台車コントローラ30が管理する並び順情報を、受信した並び順情報と整合性がとれるよう更新する。
【0072】
号機確認処理を実行後、台車コントローラ30は、ステップS104で、更新後の並び順情報を、号機確認処理の結果として機体コントローラ10に送信する。
なお、機体コントローラ10は、台車コントローラ30から受信した更新後の並び順情報と自身が管理する並び順情報との間に整合性がない場合、再起動動作を中止する。上記の処理は、例えば、台車コントローラ30のみが機能拡張されるなどした場合に実行される。
【0073】
なお、台車コントローラ30は、2つの並び順情報に整合性がないと判定した場合、台車コントローラ30が管理する並び順情報を、受信した並び順情報と整合性がとれるよう更新しなくてもよい。この場合、台車コントローラ30は、整合性がないと判定した段階で再起動動作を中止してもよい。
【0074】
台車コントローラ30から受信した更新後の並び順情報と機体コントローラ10が管理する並び順情報との間に整合性がない場合としては、例えば、機体コントローラ10が管理する並び順情報において稼働可能とされている台車1が、台車コントローラ30の並び順情報においては稼働不可とされている場合、機体コントローラ10が管理する並び順情報において稼働可能とされている台車1に関する情報が、台車コントローラ30の並び順情報に含まれていない場合などがある。
【0075】
号機確認処理を実行後、台車コントローラ30は、整合性処理を実行する。整合性処理を実行するに際し、台車コントローラ30は、ステップS105で、確認情報要求を機体コントローラ10に送信する。確認情報要求は、機体コントローラ10が記憶している確認情報及び載荷情報を台車コントローラ30に送信するよう要求する指令である。
確認情報要求を受信した機体コントローラ10は、ステップS106で、確認情報要求があったタイミングで記憶している確認情報及び載荷情報を台車コントローラ30に送信する。
【0076】
機体コントローラ10から確認情報を受信後、台車コントローラ30は、搬送システム100が正常であったときに機体コントローラ10から受信して台車コントローラ30に記憶されており確認情報、搬送システム100が異常により停止した後に再起動指令がされて機体コントローラ10から受信した確認情報、上記の載荷情報に基づいて、並び順情報において稼働可能となっている全ての台車1について整合性処理を実行する。
【0077】
機体コントローラ10が把握している台車1の状態と台車コントローラ30が把握している台車1の状態との間に整合性があると整合性処理により判定されていれば、台車コントローラ30は、ステップS107で、機体コントローラ10に起動指令を送信する。
上記の起動指令は、台車1(及び搬送装置3a、3b)などを動作可能な状態にして、搬送システム100を稼働可能な状態にする指令である。
【0078】
起動指令を受信した機体コントローラ10は、台車1などを動作可能な状態にして、搬送システム100を稼働可能な状態にする。搬送システム100が稼働可能な状態になったときに、機体コントローラ10は、ステップS108で、搬送システム100が稼働可能な状態になった旨(起動報告)を台車コントローラ30に送信する。
その後、台車コントローラ30が、ステップS109で、搬送システム100が稼働可能になった旨を上位コントローラ40にさらに送信して、搬送システム100の再起動が完了する。
【0079】
なお、機体コントローラ10が把握している台車1の状態と台車コントローラ30が把握している台車1の状態とが大きく矛盾していないものの整合性がないと整合性処理により判定されていれば、台車コントローラ30は、2つのコントローラにより把握されている状態に不整合がある台車1に異常が発生していると判定する。
異常が発生している台車1が存在する場合、搬送システム100において、異常が発生している台車1に関する確認情報を取り消す処理(キャンセル処理)、及び/又は、当該台車1が搬送のために載置部1bに載置している荷物Wを払出部5に払い出す処理(リジェクト処理)が実行される。
【0080】
異常が発生している台車1が存在する場合に、キャンセル処理が実行されるか、リジェクト処理が実行されるか、又は、これら2つの処理が両方実行されるかは、2つのコントローラが把握している台車1の状態に発生している不整合の種類に応じて決定される。
【0081】
例えば、機体コントローラ10には何らかの確認情報が記憶されている一方で台車コントローラ30には確認情報が記憶されていない場合には、機体コントローラ10と台車コントローラ30との間で記憶されている確認情報が一致していないとの不整合が発生したとして、機体コントローラ10の確認情報を取り消すキャンセル処理が実行される。
その他、例えば、異常が発生している台車1には荷物Wが載置されていない一方で、荷積み完了を示す確認情報、又は、荷卸し動作に関する確認情報(荷卸し開始、荷卸し中)が機体コントローラ10及び台車コントローラ30に記憶されている場合には、何らかの理由により台車1から荷物Wが取り去られたことにより不整合が発生したとして、記憶されている確認情報を取り消すキャンセル処理が実行される。
【0082】
例えば、異常が発生している台車1に荷物Wが載置されている一方で、確認情報が機体コントローラ10及び台車コントローラ30のいずれにも記憶されていない場合には、台車1に荷物Wが勝手に配置されたことにより不整合が発生したとして、異常が発生した台車1に載置されている荷物Wを払い出すリジェクト処理が実行される。
【0083】
例えば、異常が発生している台車1に荷物Wが載置され、機体コントローラ10に何らかの確認情報が記憶されている一方で、台車コントローラ30には確認情報が記憶されていない場合には、機体コントローラ10と台車コントローラ30との間で記憶されている確認情報が一致していないとの不整合が発生したとして、機体コントローラ10の確認情報を取り消すキャンセル処理と、異常が発生している台車1に載置されている荷物Wを払い出すリジェクト処理が実行される。
【0084】
(3-3)キャンセル処理
以下、上記のキャンセル処理及びリジェクト処理における搬送システム100の具体的動作を説明する。まず、
図5を用いて、搬送システム100におけるキャンセル処理の具体的な動作を説明する。
図5は、キャンセル処理を実行するときの再起動動作を示すフローチャートである。なお、
図5に示す再起動動作のフローチャートのうち、破線で囲んだ領域に含まれる処理(ステップS201~S203)により、キャンセル処理が実現される。
【0085】
ステップS201~S203の処理は、ステップS106で確認情報及び載荷情報が機体コントローラ10から台車コントローラ30に送信された後、台車コントローラ30により整合性処理が実行されキャンセル処理を実行することが決定された場合に実行される。
【0086】
整合性処理の結果キャンセル処理を実行すると決定したとき、台車コントローラ30は、ステップS201で、機体コントローラ10に記憶されている確認情報のうち、整合性処理により異常と判断された台車1の確認情報であって取り消すと決定した確認情報を削除する指令(キャンセル動作指令)を、機体コントローラ10に送信する。
【0087】
キャンセル動作指令を受信した機体コントローラ10は、受信したキャンセル動作指令において取り消すよう指令された確認情報を機体コントローラ10から削除する。
その後、機体コントローラ10は、ステップS202で、取り消すべき確認情報を削除してキャンセル動作が完了した旨(キャンセル動作完了報告)を、台車コントローラ30に送信する。
【0088】
キャンセル動作完了報告を受信すると、台車コントローラ30は、自身が記憶している確認情報のうち取り消すべき確認情報があれば削除する。その後、台車コントローラ30は、ステップS203で、取り消すべき確認情報を削除してキャンセル処理が終了した旨(キャンセル報告)を、上位コントローラ40に送信する。
キャンセル報告を受信した上位コントローラ40は、必要に応じて、キャンセル処理により取り消した確認情報に対応する進行情報を取り消す。
【0089】
なお、他の実施形態において、キャンセル動作完了報告を受信した台車コントローラ30は、取り消すべき確認情報を削除してキャンセル処理が終了した旨(キャンセル報告)を、上位コントローラ40に送信しなくてもよい。
【0090】
キャンセル処理(ステップS201~S203)を実行後、上記にて説明したステップS107~S109が実行されることで、搬送システム100が起動する。
【0091】
(3-4)リジェクト処理
次に、
図6を用いて、搬送システム100におけるリジェクト処理の具体的な動作を説明する。
図6は、リジェクト処理を実行するときの再起動動作を示すフローチャートである。なお、
図6に示す再起動動作のフローチャートのうち、一点鎖線で囲んだ領域に含まれる処理(ステップS301~S303)により、リジェクト処理が実現される。
【0092】
ステップS301~S303の処理は、ステップS106で確認情報及び載荷情報が機体コントローラ10から台車コントローラ30に送信された後、台車コントローラ30により整合性処理が実行されリジェクト処理を実行することが決定された場合に実行される。
【0093】
整合性処理の結果リジェクト処理を実行すると決定したとき、台車コントローラ30は、ステップS301で、リジェクト処理を実行する指令の要求(リジェクト指令要求)を上位コントローラ40に送信する。リジェクト指令要求には、払出部5に払い出す荷物Wを載置している台車1に関する情報(例えば、識別情報)が含まれている。
【0094】
リジェクト指令要求を受信した上位コントローラ40は、ステップS302で、払出部5に払い出す荷物Wを載置している台車1に対してリジェクト処理を実行させる指令(リジェクト指令)を生成して台車コントローラ30に送信する。
リジェクト指令を受信した台車コントローラ30は、ステップS303で、受信したリジェクト指令に基づいて、払出部5に払い出す荷物Wを載置している台車1を払出部5の配置位置まで移動させ、当該位置において荷物Wを台車1から払出部5へ移載させる動作を指令するリジェクト動作指令を生成して機体コントローラ10に送信する。
【0095】
リジェクト動作指令を受信した機体コントローラ10は、搬送を中止させるために払出部5に払い出す荷物Wを載置している台車1(すなわち、異常が発生している台車1)を払出部5まで移動させる走行制御と、当該位置において搬送を中止させる荷物Wを台車1から払出部5に移載させて制御と、を実行してリジェクト処理を実行する。
【0096】
リジェクト処理(ステップS301~S303)を実行後、上記にて説明したステップS107~S109が実行されることで、搬送システム100が起動する。
【0097】
リジェクト処理により払出部5に払い出された荷物Wは、再度搬送される。具体的には、例えば、払出部5に払い出された荷物Wの情報とそれを搬送する指令が、作業者等により台車コントローラ30及び/又は上位コントローラ40に入力される。その後、上位コントローラ40が当該荷物Wの搬送指令を台車コントローラ30に送信することで、払い出された荷物Wの搬送が実行される。
【0098】
なお、リジェクト処理とキャンセル処理とが両方実行される場合には、整合性処理の後に上記のステップS201~S203のキャンセル処理が実行されて、整合性処理により異常と判断された台車1の確認情報及び進行情報が取り消される。
【0099】
その後、キャンセル処理により取り消された確認情報及び進行情報のキャンセル報告がなされ、さらに上記のステップS301~S303のリジェクト処理が実行される。これにより、上記のキャンセル処理により確認情報及び進行情報が取り消された台車1に載置されている荷物Wの払い出しを指令するリジェクト指令が上位コントローラ40から台車コントローラ30になされる。その後、キャンセル処理により確認情報及び進行情報が取り消された台車1から荷物Wを払出部5に払い出すリジェクト処理が実行される。
【0100】
(4)まとめ
上記の搬送システムは、下記の構成及び機能を有している。
搬送システム(例えば、搬送システム100)は、台車(例えば、台車1)と、払出部(例えば、払出部5)と、第1コントローラ(例えば、機体コントローラ10)と、第2コントローラ(例えば、台車コントローラ30)と、再起動指令部(例えば、再起動指令部50)と、を備える。
台車は、荷物(例えば、荷物W)を搬送する。払出部には、搬送が中止される荷物が払い出される。第1コントローラは、荷物の搬送に関する動作指令に基づいて台車を制御し、台車の動作状況を表す確認情報を生成し記憶する。
第2コントローラは、第1コントローラに動作指令を送信し、第1コントローラから確認情報を受信し記憶する。
再起動指令部は、搬送システムの再起動を指令する。
搬送システムが異常により停止した後に再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたとき、
第1コントローラは、確認情報を第2コントローラに送信する。
第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信し第2コントローラが記憶している確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されたときに第1コントローラから受信した確認情報とに基づいて整合性処理を行い、整合性処理により異常と判断された台車があれば、第1コントローラに対し、当該台車に関する確認情報を取り消す、及び/又は、当該台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう指令する。
【0101】
搬送システムでは、異常が発生することで搬送システムが停止し、その後、搬送システムを再起動する指令がなされたときに、台車を制御する第1コントローラが、搬送システムを再起動する際に記憶して保持していた確認情報を第2コントローラに送信する。
一方、第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信され搬送システムを再起動する際に記憶して保持していた確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されたときに第1コントローラから受信した上記の確認情報とに基づいて、整合性処理を実行する。
【0102】
整合性処理の結果、再起動する際に第1コントローラにより把握されている台車の状態と、再起動する際に第2コントローラにより把握され搬送システムが正常であったときの台車の状態と、の間に不整合がある場合には、この台車に異常が発生していると判定される。
異常が発生している台車があれば、第2コントローラは、第1コントローラに対して、異常が発生している台車に関する確認情報を取り消す、及び/又は、異常が発生している台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう指令する。
【0103】
このように、第1コントローラと第2コントローラが把握している台車の状態の整合性が自動的に確認され、2つのコントローラで把握されている台車の状態に不整合が生じている場合には、第1コントローラが、不整合が生じている台車の確認情報を取り消す処理、及び/又は、不整合が生じている台車が搬送のために支持している荷物を払い出す制御を自動的に実行している。
これにより、搬送システムにおいて異常に起因した第1コントローラが把握する情報と第2コントローラが把握する搬送システムが正常であったときの情報との不整合が生じた際に、その不整合により搬送システムが異常停止することを防止できる。
【0104】
上記の搬送システムは、さらに、台車の走行経路(例えば、走行レール1a)の第1位置(例えば、第1位置P1)に設けられ、第1位置に存在する台車が荷物を支持しているか否かを検出する載荷検出部(例えば、載荷検出部7)を備える。
この場合、第1コントローラは、再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたときに、台車に第1位置を通過させる走行制御を実行し、第1位置を通過した台車が荷物を支持しているか否かの検出結果を第2コントローラに送信している。
【0105】
また、第2コントローラは、搬送システムが正常であったときに第1コントローラから受信し第2コントローラが記憶している確認情報と、搬送システムが異常により停止した後に搬送システムの再起動が指令されたとき第1コントローラから受信した確認情報と、上記の検出結果と、に基づいて整合性処理を行う。
これにより、実際に台車に搬送のための荷物が支持されているか否かの情報も含めて、2つのコントローラで把握されている台車の情報の整合性をより精度よく判定できる。
【0106】
上記の搬送システムは、第3コントローラ(例えば、上位コントローラ40)をさらに備えている。第3コントローラは、動作指令を生成するための搬送指令を第2コントローラに送信する。
この場合、第2コントローラは、台車による荷物の搬送の進行状況に関する進行情報を第3コントローラに送信する。また、第2コントローラは、整合性処理により異常と判断された台車があれば、第3コントローラに対し、当該台車の進行情報を取り消すよう指令している。
これにより、搬送システム全体における荷物の搬送を管理するさらに上位のコントローラ(つまり、第3コントローラ)における不整合も含めて解消できる。
【0107】
第3コントローラは、第2コントローラから進行情報を取り消すよう指令を受けた後に、進行情報を取り消す台車が搬送のために支持している荷物を払出部に払い出すよう第2コントローラに指令をしている。
これにより、搬送システム全体における荷物の搬送を管理するさらに上位のコントローラにおける不整合も含めて解消できる。
【0108】
上記の搬送システムにおいて、台車は複数存在している。また、複数の台車は、それぞれ、異なる識別情報を有している。この場合、搬送システムは、読取部をさらに備える。読取部は、台車の走行経路の第2位置に設けられ、第2位置に存在する台車の識別情報を読み取る。
また、第1コントローラは、再起動指令部により搬送システムの再起動が指令されたときに、複数の台車に第2位置を通過させる走行制御を実行し、複数の台車の走行経路における並び順を示す並び順情報を生成して記憶して第2コントローラに送信する。
これにより、複数の台車を有する搬送システムにおいて、複数の台車の並び順も考慮して整合性処理を実行できる。
【0109】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)
図3~
図6に示すフローチャートで説明した各ステップの実行順、及び、各ステップの処理内容は、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更できる。
【0110】
(B)再起動指令部50の操作がなされることなく、上位コントローラ40が所定の条件を満たしたときに自動的に再起動指令を台車コントローラ30に送信してもよい。例えば、上位コントローラ40は、搬送システム100において異常が発生して停止してから所定の時間が経過後に、台車コントローラ30に対して再起動指令をすることもできる。
【0111】
(C)上記の第1実施形態において、各台車1は自身の制御部を有しておらず、各台車1の制御は外部の機体コントローラ10によりなされていた。しかし、これに限られず、各台車1が制御部を有している搬送システムに対しても、上記で説明した技術を適用できる。
【0112】
(D)上記の第1実施形態において、台車1はリニアモータにより発生した推力で一対の走行レール1aを走行する台車であった。しかし、これに限られず、スタッカクレーンなど他の台車を有する搬送システムにおいても、上記で説明した技術を適用できる。
【0113】
(E)上記の第1実施形態においてキャンセル処理とリジェクト処理が両方実行される場合、キャンセル処理が実行された後にリジェクト処理が個別に実行されていた。しかし、これに限られず、キャンセル処理とリジェクト処理とを同時に実行してもよい。
【0114】
(F)払出部5の配置位置は、走行レール1aの近傍に限られない。例えば、払出部5を、走行レール1aから外れた位置に設けてもよい。この場合、一対の走行レール1aから払出部5に延びるリジェクトラインが設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、荷物の搬送を行う台車と、当該台車を制御するコントローラと、を備える搬送システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0116】
100 搬送システム
1 台車
1a 走行レール
1b 載置部
3a、3b 搬送装置
5 払出部
7 載荷検出部
9 読取部
10 機体コントローラ
20 搬送コントローラ
30 台車コントローラ
40 上位コントローラ
50 再起動指令部
P1 第1位置
P2 第2位置
W 荷物