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特許7559629単独運転検出装置、電力変換装置、及び、単独運転検出装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、電力変換装置、及び、単独運転検出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240925BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240925BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02M7/48 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021037964
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138212
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 愛実
(72)【発明者】
【氏名】秋田 哲男
(72)【発明者】
【氏名】奥村 俊明
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068014(JP,A)
【文献】特開2016-131441(JP,A)
【文献】特開2017-127044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統に系統連系可能な発電設備について、その単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モード、及び、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードを有する無効電力注入部と、
前記無効電力注入部の動作モードを、前記通常モードと前記待機モードとの間で遷移させる切替部と、を備え、
前記切替部は、前記待機モードのとき、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記無効電力注入部の動作モードを前記通常モードに遷移させる、単独運転検出装置。
【請求項2】
前記切替部は、前記待機モードのとき、前記交流出力の高調波電圧及び前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいて、前記商用電力系統における停電の発生と、前記フリッカの収束とを検出したことを、前記通常モードへ戻る前記条件とする請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記周波数偏差の振動を検出してから、前記周波数偏差の振幅が低下して所定値以下になった状態が一定時間継続することを検出することにより、前記フリッカの収束を検出する請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記周波数偏差の振動を検出し、かつ、以後、一定時間、前記周波数偏差が振動しない状態を検出することにより、前記フリッカの収束を検出する請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
前記切替部は、周波数偏差の第1の振動を検出した後、前記第1の振動より振幅が小さい第2の振動を検出し、かつ、前記第2の振動の振幅を超えない状態で一定時間経過したことを検出することにより、前記フリッカの収束を検出する請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項6】
前記切替部は、絶対値で所定の閾値を超える第1の極性での低振幅の前記周波数偏差を検出した後、
周波数偏差が絶対値で前記閾値以内となり、所定時間内に、検出した周波数偏差と異なる第2の極性の、前記閾値を超える周波数偏差が検出されないこと、又は、
周波数偏差が絶対値で前記閾値以内となり、絶対値で前記閾値を超えた時点の極性と同じ極性で再度、周波数偏差が前記閾値を超えること、
となった場合に、前記無効電力注入部の動作モードを前記通常モードに復帰させる、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の単独運転検出装置。
【請求項7】
直流電源と前記商用電力系統との間に設けられる電力変換部と、
前記電力変換部を制御する制御部と、を備えた電力変換装置であって、
前記制御部は、請求項1から請求項6までのいずれか1項の単独運転検出装置を含む電力変換装置。
【請求項8】
商用電力系統に系統連系可能な発電設備についての単独運転を検出する単独運転検出装置の制御方法であって、
前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モードをディフォルトの状態とし、
前記周波数偏差に基づいてフリッカの発生を検出した場合に、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードに移行し、
前記待機モードのとき、少なくとも、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記通常モードに復帰する、
単独運転検出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、単独運転検出装置、電力変換装置、及び、単独運転検出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば太陽光発電パネルは、その発電電力を電力変換装置により交流電力に変換して商用電力系統に系統連系することができる。商用電力系統の停電時には、電力変換装置から電力供給を継続する単独運転を防止すべく、電力変換装置を商用電力系統から解列しなければならない。そのため、電力変換装置には、単独運転検出装置としての機能が搭載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような単独運転検出装置は、通常モードでは、交流出力に無効電力を常時注入している。系統電圧が正常であれば、無効電力を注入しても交流の周波数は、ほとんど変化せず、安定している。停電が発生すると、交流出力における周波数の変化が顕著に表れ始め、これにより、単独運転を迅速に検出することができる。ところが、商用電力系統が停電ではない通常の状態のとき、無効電力の注入により系統電圧にフリッカが生じる場合がある。そのため、フリッカが発生しているとき、単独運転検出装置は、通常モードから待機モードに移行し、無効電力の注入を差し控える。待機モードでは、停電の予兆となる高調波電圧の急増が検出されるか、又は、移行から一定時間を経過した場合に、通常モードに戻る(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-68014号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】JEM規格1498(日本電機工業会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、待機モードから通常モードへの復帰が、不適切に行われ、そのためモード遷移が繰り返される場合があることがわかってきた。
本開示は、待機モードから通常モードへの復帰が、不適切に行われることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は特許請求の範囲によって定められるものである。
【0008】
本開示は、商用電力系統に系統連系可能な発電設備について、その単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モード、及び、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードを有する無効電力注入部と、
前記無効電力注入部の動作モードを、前記通常モードと前記待機モードとの間で遷移させる切替部と、を備え、
前記切替部は、前記待機モードのとき、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記無効電力注入部の動作モードを前記通常モードに遷移させる、単独運転検出装置である。
【0009】
電力変換装置としては、
直流電源と前記商用電力系統との間に設けられる電力変換部と、
前記電力変換部を制御する制御部と、を備えた電力変換装置であって、
前記制御部は、前記単独運転検出装置を含むものである。
【0010】
また、本開示は、商用電力系統に系統連系可能な発電設備についての単独運転を検出する単独運転検出装置の制御方法であって、
前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モードをディフォルトの状態とし、
前記周波数偏差に基づいてフリッカの発生を検出した場合に、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードに移行し、
前記待機モードのとき、少なくとも、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記通常モードに復帰する、
単独運転検出装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、待機モードから通常モードへの復帰が、不適切に行われることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、電力変換装置の一例を示す回路図である。
図2図2は、制御部の内部に機能として構成される単独運転検出装置の一例にのみ注目したブロック図を示している。
図3図3は、周波数偏差の急変を示す波形の一例である。
図4図4は、低振幅の周波数偏差が振動を継続する波形の一例を示す図である。
図5図5は、モード間遷移の第1例を示すフローチャートである。
図6図6は、モード間遷移の第2例を示すフローチャートである。
図7図7は、モード間遷移の第3例を示すフローチャートである。
図8図8は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、目標とする上げ下げを表す図である。
図9図9は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの上げ下げを表す図であるが、結果的には好ましくない参考例である。
図10図10は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第1例による上げ下げを表す図である。
図11図11は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第2例による上げ下げを表す図である。
図12図12は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第3例による上げ下げを表す図である。
図13図13は、周波数偏差の振動と、外乱検知2のフラグの上げ下げとの関係の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0014】
(1)これは、商用電力系統に系統連系可能な発電設備について、その単独運転を検出する単独運転検出装置であって、前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モード、及び、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードを有する無効電力注入部と、前記無効電力注入部の動作モードを、前記通常モードと前記待機モードとの間で遷移させる切替部と、を備え、前記切替部は、前記待機モードのとき、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記無効電力注入部の動作モードを前記通常モードに遷移させる、単独運転検出装置である。
【0015】
このような単独運転検出装置では、待機モードから通常モードに復帰するべきでない場合に、不適切に復帰することを、抑制することができる。
【0016】
(2)前記(1)の単独運転検出装置において、前記切替部は、前記待機モードのとき、前記交流出力の高調波電圧及び前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいて、前記商用電力系統における停電の発生と、前記フリッカの収束とを検出したことを、前記通常モードへ戻る前記条件としてもよい。
この場合、停電と、フリッカの収束とを検出した場合に、待機モードから通常モードに復帰するので、不適切な復帰を、抑制することができる。
【0017】
(3)前記(1)の単独運転検出装置において、前記切替部は、前記周波数偏差の振動を検出してから、前記周波数偏差の振幅が低下して所定値以下になった状態が一定時間継続することを検出することにより、前記フリッカの収束を検出するようにしてもよい。
この場合、外乱検知レベルの周波数偏差の振幅が低下しない場合はフリッカの収束ではないと判定し、周波数偏差の振幅が所定値以下になった状態が一定時間継続することにより、フリッカの収束と判定する。従って、復帰すべきでない場合と、復帰してよい場合とを、正しく判定することができる。ここで、「周波数偏差の振動を検出し」とは、例えば、周波数偏差の絶対値が閾値以上になった(又は閾値を超えた)後に、周波数偏差が0又は逆極性になる(すなわち振動している。)ことを言う。閾値とは、周波数偏差の振動とみなすか否かの境界値であり、例えば0.16[Hz]である。
【0018】
(4)前記(1)の単独運転検出装置において、前記切替部は、前記周波数偏差の振動を検出し、かつ、以後、一定時間、前記周波数偏差が振動しない状態を検出することにより、前記フリッカの収束を検出するようにしてもよい。
この場合、外乱検知レベルの周波数偏差の振動が継続的に起きるとフリッカの収束ではないと判定し、最新の振動から一定時間、周波数偏差の振動を検出しない場合にはフリッカの収束と判定する。従って、復帰すべきでない場合と、復帰してよい場合とを、正しく判定することができる。
【0019】
(5)前記(1)の単独運転検出装置において、前記切替部は、周波数偏差の第1の振動を検出した後、前記第1の振動より振幅が小さい第2の振動を検出し、かつ、前記第2の振動の振幅を超えない状態で一定時間経過したことを検出することにより、前記フリッカの収束を検出するようにしてもよい。
この場合、外乱検知レベルの周波数偏差の第1の振動及びそれより振幅が小さい第2の振動のいずれかが継続的に起きるとフリッカの収束ではないと判定し、最新の第2の振動から、第2の振動の振幅を超えない状態で一定時間が経過すればフリッカの収束と判定する。従って、復帰すべきでない場合と、復帰してよい場合とを、正しく判定することができる。
【0020】
(6)前記(1)から(5)までのいずれかの単独運転検出装置において、前記切替部は、絶対値で所定の閾値を超える第1の極性での低振幅の前記周波数偏差を検出した後、
周波数偏差が絶対値で前記閾値以内となり、所定時間内に、検出した周波数偏差と異なる第2の極性の、前記閾値を超える周波数偏差が検出されないこと、又は、
周波数偏差が絶対値で前記閾値以内となり、絶対値で前記閾値を超えた時点の極性と同じ極性で再度、周波数偏差が前記閾値を超えること、
となった場合に前記無効電力注入部の動作モードを前記通常モードに復帰させるようにしてもよい。
この場合、外乱検知の第2条件である低振幅の周波数偏差の振動が収まってから通常モードに戻すことが可能となる。
なお、ここで言う「閾値」は、交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を交流出力に注入する周波数偏差閾値である。前述の(3)における閾値とは値が異なり、例えば0.01[Hz]である。
【0021】
(7)また、電力変換装置としては、直流電源と前記商用電力系統との間に設けられる電力変換部と、前記電力変換部を制御する制御部と、を備えた電力変換装置であって、前記制御部は、前記(1)から(6)までのいずれかの単独運転検出装置を含むものである。
このような電力変換装置では、待機モードから通常モードに復帰するべきでない場合に、不適切に復帰することを、抑制することができる。
【0022】
(8)方法の観点からは、商用電力系統に系統連系可能な発電設備についての単独運転を検出する単独運転検出装置の制御方法であって、前記発電設備の交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を前記交流出力に注入する通常モードをディフォルトの状態とし、前記周波数偏差に基づいてフリッカの発生を検出した場合に、前記交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードに移行し、前記待機モードのとき、少なくとも、前記周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、前記通常モードに復帰する、単独運転検出装置の制御方法である。
【0023】
このような単独運転検出装置の制御方法によれば、待機モードから通常モードに復帰するべきでない場合に、不適切に復帰することを、抑制することができる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
まず、繰り返しになるが、単独運転検出装置の機能は、商用電力系統の停電時に、電力変換装置が単独で運転している状態を検出することである。電力変換装置は、自身が系統連系して交流出力を提供しているため、停電を検出する難しさがある。そこで、単独運転検出装置は、通常モードで、交流出力に無効電力を常時注入している。系統電圧が正常であれば、無効電力を注入しても交流の周波数は、ほとんど変化せず、安定している。停電が発生すると、交流出力における周波数の変化が顕著に表れ始め、これにより、単独運転を迅速に検出することができる。ところが、商用電力系統が停電ではない通常の状態のとき、無効電力の注入により系統電圧にフリッカが生じる場合がある。この場合、単独運転検出装置は、待機モードに遷移する。
【0025】
本開示の実施形態の詳細を述べる前に、前述の不適切な復帰の例としては、フリッカ発生中に、高感度で停電検出(高調波電圧の急増検出)をして、通常モードに不適切に復帰する、ということがある。JEM規格1498には、これに対して、高調波電圧の急増検出の感度を自動調整して誤復帰を防止することが記載されている。自動調整は、あるルールに従い、検出閾値をオートチューニングすることにより行われる。しかしながら、このようなオートチューニングの機能を搭載すれば演算負担が大きくなる。本開示では、オートチューニングより簡単な手法で待機モードから通常モードに復帰するべきでない場合の不適切な復帰を抑制したい。
以下、本開示の単独運転検出装置及びこれを含む電力変換装置の具体例について、図面を参照して説明する。
【0026】
《電力変換装置の一例》
図1は、電力変換装置の一例を示す回路図である。図において、電力変換装置1は、直流電源100と、商用電力系統200との間に設けられている。直流電源100は、例えば、太陽光発電パネルである。電力変換装置1の交流出力は、商用電力系統200と系統連系が可能である。電力変換装置1は、直流電源100と共に、商用電力系統200と系統連系可能な発電設備を構成している。
【0027】
電力変換装置1は、電力変換部2と、これを制御する制御部3とを備えている。電力変換部2は、直流側コンデンサ4と、DC/DCコンバータ5と、中間コンデンサ6と、インバータ7と、ACフィルタ8と、連系リレー9とを備え、これらは、図示のように接続されている。
【0028】
計測及び制御用のセンサとしては、入力される直流電圧及び直流電流をそれぞれ検出する電圧センサ10及び電流センサ11が設けられている。電圧センサ12は、中間コンデンサ6の両端の電圧(DCバスの電圧)を検出する。電流センサ13及び電圧センサ14は、それぞれ、交流出力の電流及び電圧を検出する。
【0029】
DC/DCコンバータ5は、DCリアクトル51と、スイッチング素子52,53とを図示のように接続して構成される昇圧回路である。インバータ7は、ブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子71,72,73,74と、ACリアクトル75とを備えている。図示しているスイッチング素子は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、これに代えて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。
【0030】
電力変換部2は、制御部3により、制御される。制御部3は、電圧センサ10、電流センサ11、電圧センサ12、電流センサ13、及び、電圧センサ14の各出力に基づいて、DC/DCコンバータ5及びインバータ7を制御する。制御部3は、CPU、メモリ、インターフェース、ゲートドライバ等を含み、CPUがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、メモリに格納されている。
【0031】
制御方式として、スイッチング損失を抑制する最小スイッチング変換方式を採用する場合、直流電源100の出力電圧は、DC/DCコンバータ5により、交流波形のピーク値(波高値)の前後を含む一部の波形を重畳した直流電圧波形を生成する。中間コンデンサ6は、スイッチングによる高周波成分のみを平滑して取り除く。インバータ7は、DC/DCコンバータ5が生成しなかった交流波形の残りの部分を生成し、かつ、交流(1/2)サイクルごとに極性を反転させ、正弦波の原波形を生成する。ACリアクトル75及びフィルタ8により、スイッチングによる高周波成分が取り除かれ、交流出力となる。連系リレー9は、系統連系時には閉路しており、解列時に開路するよう、制御部3により制御される。
なお、制御方式は、上記の最小スイッチング変換方式に限定される訳ではない。DC/DCコンバータ5は、常時スイッチングを行い、交流波形のピーク電圧を超えるDCバス電圧を生成し、インバータ7は、常時スイッチングを行い、目標とする交流波形を生成する、という伝統的なスイッチング方式でもよい。
【0032】
図2は、制御部3の内部に機能として構成される単独運転検出装置の一例にのみ注目したブロック図を示している。
単独運転検出装置30は、A/Dコンバータ31と、電圧検出部32と、周波数偏差算出部33と、無効電力注入部34と、高調波電圧算出部35と、切替部36と、単独運転検出部37と、DC/DC制御部38と、DC/AC制御部39とを備えている。これら各部は、ソフトウェアにより実現される機能部と、ハードウェアとを含むものである。
【0033】
A/Dコンバータ31は、電圧センサ14が検出した電圧信号をディジタル信号に変換し、電圧検出部32に与える。電圧検出部32は、電圧信号を周波数偏差算出部33、高調波電圧算出部35及び単独運転検出部37に与える。周波数偏差算出部33は、電圧の周期を計測し、現時点の周波数と、所定時間前の周波数との差(周波数偏差)を求める。周波数偏差は、無効電力注入部34、切替部36及び単独運転検出部37に与えられる。
【0034】
高調波電圧算出部35は、電圧信号に含まれている高調波電圧を算出し、切替部36及び単独運転検出部37に与える。切替部36は、無効電力の注入を行う通常モードと、注入を停止する待機モードとを交互に選択する。無効電力注入部34は、DC/DC制御部38及びDC/AC制御部39に対して無効電力の指示を与える。単独運転検出部37は、単独運転の状態を検出した場合に、DC/DC制御部38及びDC/AC制御部39に対してそれぞれ、DC/DCコンバータ5及びインバータ7をゲートブロックし、スイッチングを停止させる。また、その後、単独運転検出部37は、連系リレー9を開路して電力変換部2を商用電力系統200から解列する。
【0035】
《外乱検知の概要》
次に、JEM規格1498(2017年12月15日改定(第3回)、以下同様。)に定められている、通常モードから待機モードへの移行の条件となる外乱検知について説明する。外乱検知には2つの事象(条件)があり、これらを「外乱検知1(外眼検知の第1条件)」、「外乱検知2(外乱検知の第2条件)」とする。
【0036】
(外乱検知1)
図3は、周波数偏差の急変を示す波形の一例である。
外乱検知1は、周波数偏差の絶対値が0.16Hz以上となり、その後、ゼロクロスに達するか又は極性が反転することにより成立する。図3において、周波数偏差の振動波形上の点P1において周波数偏差は0.16Hzに達し、点P2において、ゼロクロスに達する。従って、外乱検知1が成立する。なお、0.16Hzという数値は、JEM規格1498に基づく値である。
【0037】
(外乱検知2)
図4は、低振幅の周波数偏差が振動を継続する波形の一例を示す図である。
外乱検知2の条件は、(i)周波数偏差の絶対値が0.01Hzを超える状態の検出(カウント1)後、所定時間内(現状での目安は165m秒以内、将来的には500m秒以内)に極性が反転して絶対値で0.01Hzを超える周波数偏差を検出したことを、検出し(カウント2)、(ii)その検出回数が12回となったこと、である。なお、0.01Hz、165m秒又は500m秒、及び、12回という数値は、例示に過ぎず、これらに限定される訳ではない。0.01Hzは、交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を交流出力に注入する周波数偏差の閾値である。JEM規格1498では、単独運転検出のために「交流出力の周波数偏差に応じて無効電力を交流出力に注入する機能」があり、周波数偏差0.01[Hz]未満は0[Var],周波数偏差0.01[Hz]以上で周波数偏差に比例した無効電力を注入する。
【0038】
図4において、周波数偏差の振動波形上の点P1において第1極性(プラス)での周波数偏差は+0.01Hzに達し、点P2において、第2極性(マイナス)で-0.01Hzに達し、P1-P2間の時間は165m秒以内である。以後、点P3,P4,・・・,P11,P12まで、12回の検出回数がカウントされる。また、点P1から点P12までの所要時間が最大値の2秒以内である。従って、(c)及び(d)を満たし、外乱検知2が成立する。
【0039】
《モード間遷移の具体例》
次に、切替部36によって行われるモード間の遷移の基本コンセプトについて、フローチャートを用いて説明する。このフローチャートは、一定周期で繰り返し実行される。
【0040】
(第1例)
図5は、モード間遷移の第1例を示すフローチャートである。処理の開始により、切替部36は、通常モードか否かを判定する(ステップS1)。初期状態(ディフォルト:Default)は通常モードである。通常モードである場合、切替部36は、外乱検知1及び外乱検知2により、フリッカの検出を行う(ステップS2)。続いて、切替部36は、フリッカを検出したか否かを判定する(ステップS3)。フリッカを検出しない場合は、モードの移行をすることなく処理終了となる。フリッカを検出した場合は、切替部36は、待機モードに移行する(ステップS4)。待機モードでは、無効電力注入部34による無効電力の注入は、停止となる。
【0041】
待機モードに移行した後は、ステップS1で「NO」となり、切替部36は、停電の検出を行う(ステップS5)。停電の検出は、例えば高調波電圧の急増又は周波数偏差の変化により検出することができる。停電を検出しない場合は、ステップS6において「NO」となり、処理終了となる。停電を検出した場合は、切替部36は、フリッカの収束確認を行う(ステップS7)。次のステップS8において、フリッカが収束していない場合は、モードの移行をすることなく、処理終了となる。フリッカが収束している場合は、切替部36は、通常モードに移行(復帰)する(ステップS9)。
【0042】
(第2例)
図6は、モード間遷移の第2例を示すフローチャートである。ステップS1,S2,S3,S4については、第1例と同じであるので、説明を省略する。
【0043】
待機モードに移行した後は、ステップS1で「NO」となり、切替部36は、移行してから一定時間が経過したか否かの検出を行う(ステップS10)。続いて、切替部36は、フリッカの収束確認を行う(ステップS11)。次に切替部36は、一定時間が経過し、かつ、フリッカが収束したか否かを判定し(ステップS12)、「NO」の場合は、モードの移行をすることなく、処理終了となる。一定時間が経過し、かつ、フリッカが収束している場合は、切替部36は、通常モードに移行(復帰)する(ステップS13)。
【0044】
(第3例)
図7は、モード間遷移の第3例を示すフローチャートである。ステップS1,S2,S3,S4については、第1例と同じであるので、説明を省略する。
【0045】
待機モードに移行した後は、ステップS1で「NO」となり、切替部36は、フリッカの収束確認を行う(ステップS14)。次のステップS15において、フリッカが収束していない場合は、モードの移行をすることなく、処理終了となる。フリッカが収束している場合は、切替部36は、通常モードに移行(復帰)する(ステップS16)。
【0046】
上記の3つの例(図5図6図7)に共通しているのは、待機モードから通常モードに復帰する条件として、フリッカの収束を検出したことが含まれる点である。
復帰の条件としては、停電のみを検出するような高調波電圧の急増に関する条件設定をする考え方がある。例えば、JEM規格1498によれば、現時点及び現時点より1周期前の高調波電圧から、3~5周期前の平均の高調波電圧を引いた値が、閾値αより大きいことである。閾値αをオートチューニングすればフリッカ発生中に通常モードに戻ることを抑制できる、とされている。しかし、オートチューニングを実装することは演算処理が複雑化し、容易な手法ではない。そこで、閾値αは2[V]に固定し、フリッカの収束を別の条件により検出する。
【0047】
フリッカが収束したといえるには、外乱検知1に相当する周波数偏差急変を検出しないこと、及び、外乱検知2に相当する低振幅の周波数偏差の振動が継続していないこと、が必要である。
【0048】
《外乱検知1のフラグの下げ方》
まず、「フラグを上げる」とは、JEM規格1498による、外乱検知1を検知したことである。「フラグを下げる」とは、フリッカの収束を検出したことを意味する。
図8は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、目標とする上げ下げを表す図である。周波数偏差の数値の単位はHzである。
まず、図8の(a)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.16を超える振動が継続するので、フラグは上がったまま維持される。周波数偏差のゼロクロスにおける図中の黒丸は、振幅が0.16を超えたことを検出する時点を意味する(以下、図9図12でも同様。)。
【0049】
次に、図8の(b)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起きるが、その後、振幅が迅速に減少している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた(-0.16を下回った)直後のゼロクロスでもフラグが上がっているべきである。その後、数百m秒の間、振幅が0近傍に収束しているので、フラグが下がる。
【0050】
次に、図8の(c)では、振幅の若干の減少はあるが、周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっているべきである。それ以後も、0.16未満ではあるが比較的大きな振幅で振動が続くので、フラグは上がったまま維持される。
【0051】
次に、図8の(d)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起こり、その後、周波数偏差は0近傍に収束しないものの、極性反転は起きていない。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっているべきである。その後、数百m秒の間、極性反転は起きず、振動が止まっているので、フラグが下がる。
【0052】
図8に示したようなフラグの上げ下げを実現するために、具体的にどのような条件を課すかについて、以下、説明する。なお、図8の(a),(b),(c),(d)のフラグの上げ下げのうち、(a)及び(b)は、必ず実現すべきである。(c)及び(d)は、必須ではないが、実現することが、より好ましい。
【0053】
(参考例)
まず、図9は、結果的には好ましくない参考例である。外乱検知1のフラグを下げるための設定条件は、最初の外乱検知1でフラグを上げた後、一定時間が経過したことである。一定時間とは例えば数百m秒である。図中の(a),(b),(c),(d)の各々においては、周波数偏差の振動と、外乱検知1のフラグの状態と、周波数偏差状態(周波数偏差が、その時、示している状態)とを示している。周波数偏差状態における「未」は外乱検知でないことを示し、「+」はプラス側に周波数偏差が出ている状態を示し、「-」はマイナス側に周波数偏差が出ている状態を示している。
【0054】
図9の(a)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.16を超える振動が継続するが、最初にフラグが上がってから数百m秒が経過したことで一旦、フラグが下がる。その後再び、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.16を超える振動が継続するが、2度目の最初にフラグが上がってから数百m秒が経過したことで、また、フラグが下がる。このように、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続しているにも関わらずフラグが下がることがあるので、好ましくない。
【0055】
次に、図9の(b)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起きるが、その後、振幅が迅速に減少している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた(-0.16を下回った)直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。その後、最初の外乱検知から数百m秒が経過すると、フラグが下がる。結果的には図8の(b)と同様であるが、振動の継続時間によっては、フラグを下げるタイミングが不適切となる場合も十分想定される。
【0056】
次に、図9の(c)では、振幅の若干の減少はあるが、周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。それ以後も、0.16未満ではあるが明らかに振動が続くが、最初の外乱検知から数百m秒が経過すると、フラグが下がる。これは不適切に、フラグを下げたことになる。
【0057】
次に、図9の(d)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起こり、その後、周波数偏差は0近傍に収束しないものの、極性反転は起きていない。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。その後、フラグの立ち上がりから数百m秒の間、極性反転は起きず、振動が止まっているので、フラグが下がる。これは、適切に、フラグを下げたことになる。
【0058】
上記参考例に示すフラグの上げ下げは、必須の(a)、(b)が適切でないので、採用できない。
【0059】
(第1例)
図10は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第1例による上げ下げを表す図である。第1例における、外乱検知1のフラグを下げるための設定条件は、最初の外乱検知1でフラグを上げた後、周波数偏差の振幅0.08以下の状態で一定時間経過したこと、である。一定時間とは、例えば数百m秒である。振幅0.08及び一定時間としての数百秒は、例示に過ぎず、これらの数値に限定される訳ではない。
【0060】
まず、図10の(a)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.08を超える振動が継続するので、フラグは上がったまま維持される。
【0061】
次に、図10の(b)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起きるが、その後、振幅が迅速に減少している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。ここから時間のカウントが開始される。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスで時間がリセットされ、ここから新たに時間のカウントが開始される。そして、以後のゼロクロスで振幅が0.08以内に収束していることが確認され続けて数百m秒が経過した時点で、フラグが下がる。
【0062】
次に、図10の(c)では、振幅の若干の減少はあるが、周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。それ以後も、振幅が0.08以内にならないので、フラグは上がったまま維持される。
【0063】
次に、図10の(d)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起こり、その後、周波数偏差は0近傍に収束しないものの、極性反転は起きていない。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。その後、振幅は0.08以上となり、また、振動していないのでゼロクロスが表れず、フラグは上がったままになる。
【0064】
上記第1例に示すフラグの上げ下げは、(a)、(b)、(c)が図8と同様の結果であり、適切である。(d)は、図8とは異なる結果であるが、全体として、必須の(a)及び(b)を満足し、(c)も満たすので、良好な結果である。
【0065】
(第2例)
図11は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第2例による上げ下げを表す図である。第2例における、外乱検知1のフラグを下げるための設定条件は、最新(最後)の外乱検知1でフラグを上げている後、一定時間経過したことである。一定時間とは、例えば数百m秒である。
【0066】
まず、図11の(a)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.16を超える振動が継続するので、フラグは上がったまま維持される。
【0067】
次に、図11の(b)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起きるが、その後、振幅が迅速に減少している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後にゼロクロスとなった時、再び外乱検知1となり、この時点が最新(最後)の外乱検知1となる。その後のゼロクロスでは振幅が0.16を超えなかったことが確認され続け、結局、最新の外乱検知からカウントされた時間が、数百m秒を経過した時点で、フラグが下がる。
【0068】
次に、図11の(c)では、振幅の若干の減少はあるが、周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後にゼロクロスとなった時、再び外乱検知1となり、この時点が最新(最後)の外乱検知1となる。その後のゼロクロスでは振幅が0.16以内であったことが確認され続け、結局、最新の外乱検知1からカウントされた時間が、数百m秒を経過した時点で、フラグを上げた状態が維持できず、フラグが下がる。
【0069】
次に、図11の(d)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起こり、その後、周波数偏差は0近傍に収束しないものの、極性反転は起きていない。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後にゼロクロスとなった時、再び外乱検知1となり、この時点が最新(最後)の外乱検知1となる。その後、振幅が0.16以内になるが、ゼロクロスは無く、結局、最新の外乱検知1から数百m秒経過した時点で、フラグが下がる。
【0070】
上記第2例に示すフラグの上げ下げは、(a)、(b)、(d)が図8と同様の結果であり、適切である。(c)は、図8とは異なる結果であるが、全体として、必須の(a)及び(b)を満足し、(d)も満たすので、良好な結果である。
【0071】
(第3例)
図12は、周波数偏差の経時変化パターンに基づく、外乱検知1のフラグの、第3例による上げ下げを表す図である。第3例における、外乱検知1のフラグを下げるための設定条件は、周波数偏差の振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスで最新(最後)の外乱検知1としてフラグを上げたか又は上げている後、振幅が0.16未満の例えば0.08以上となって、外乱収束開始の状態から一定時間経過したこと、である。一定時間とは、例えば数百m秒である。外乱収束開始の状態とは、振幅が0.08以上であったが0.16未満であったことを直後のゼロクロスで検出した時であり、そこから一定時間経過すると、外乱収束となる。
【0072】
まず、図12の(a)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。それ以後も、振幅0.16を超える振動が継続するので、外乱検知1が続き、フラグは上がったまま維持される。
【0073】
次に、図12の(b)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起きるが、その後、振幅が迅速に減少している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスで外乱検知1となり、フラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた後のゼロクロスでも外乱検知1が続く。さらに、次に極性がプラス側になり、振幅が0.08を超えるが0.16未満となった後のゼロクロスで外乱収束開始の状態となる。この時から後は、振幅が0.08以内に収まるので、外乱収束開始からカウントされた時間が数百m秒に達した時点で、フラグが下がる。
【0074】
次に、図12の(c)では、振幅の若干の減少はあるが、周波数偏差の振動が継続している。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.08を超えた直後のゼロクロスでもフラグが上がっている。それ以後も、振幅が0.08以内にならずに振動するので、フラグは上がったまま維持される。
【0075】
次に、図8の(d)では、振幅0.16を超える周波数偏差の振動が起こり、その後、周波数偏差は0近傍に収束しないものの、極性反転は起きていない。この場合、最初に振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスで外乱検知1となりフラグが上がる。次に極性がマイナス側になり、振幅が0.16を超えた直後のゼロクロスでも外乱検知1となりフラグが上がっている。その後、振幅が0.08を超えるが0.16未満になった直後のゼロクロスで外乱収束開始の状態となる。ここから後、振幅は0.16を超えず、かつ、振動しないので、数百m秒が経過した時点でフラグが下がる。
【0076】
上記第3例に示すフラグの上げ下げは、(a)、(b)、(c)、(d)の全てにおいて、図8と同様の結果であり、最も適切である。
【0077】
《ここまでのまとめ》
以上のように、単独運転検出装置30は、交流出力の周波数偏差に応じて、無効電力を交流出力に注入する通常モード、及び、交流出力への無効電力の注入を停止する待機モードを有する無効電力注入部34と、無効電力注入部34の動作モードを、通常モードと待機モードとの間で遷移させる切替部36と、を備えている。切替部36は、待機モードのとき、周波数偏差の経時変化パターンに基づいてフリッカの収束を検出したことを条件として、無効電力注入部34の動作モードを通常モードに遷移させる。
このような単独運転検出装置では、待機モードから通常モードに復帰するべきでない場合に、不適切に復帰することを、抑制することができる。
【0078】
《外乱検知2のフラグの下げ方》
外乱検知2は、低振幅周波数振動継続検知である。
外乱検知2の条件は、前述のように、
周波数偏差の絶対値が所定の閾値(例えば0.01Hz)を超える状態の検出後、所定時間内(例えば165m秒以内)に極性が異なる前記閾値を超える周波数偏差を検出したことをカウントし続け、
その検出回数が例えば12回となったこと、である。
【0079】
外乱検知2のフラグの下げ方の条件は、
周波数偏差が絶対値で前記閾値(0.01Hz)以内となり、所定時間(165m秒)内に、検出した周波数偏差と異なる極性の、前記閾値(0.01Hz)を超える周波数偏差が検出されないこと、又は、
周波数偏差が絶対値で前記閾値(0.01Hz)以内となり、絶対値で前記閾値(0.01Hz)を超えた時点の極性と同じ極性で再度、周波数偏差が前記閾値(0.01Hz)を超えること、
である。
【0080】
図13は、周波数偏差の振動と、外乱検知2のフラグの上げ下げとの関係の一例を示す波形図である。なお、この図の一部は、JEM規格1498より引用したものである。全体的には、フリッカ波形から大きな周波数振動に変わり、その後低周波の揺れを生じた後、揺れが収束する。
【0081】
具体的には、まず、低振幅周波数偏差の検出回数が12回となったとき、低振幅周波数偏差の検出回数は、リセットされ、0になる。この時点でフラグが上がる。その後、絶対値で0.01Hzを超える周波数偏差が3回検出された後、+0.01Hzを超える時点で上記(c)の条件が成立し、外乱検知フラグ2は下がる。低振幅周波数偏差の検出回数は1に戻り、マイナス側に振れないで次に同極性で+0.01Hzを超える。ここで、低振幅周波数偏差の検出回数は再び1になり、以後、低周波の揺れが続く。
【0082】
低周波の揺れの範囲内で、+0.01Hz以下になってから165m秒経過すると、低振幅周波数偏差の検出回数はリセットされ、0になる。以後、一旦は絶対値で0.01Hzを超えるが、その後、絶対値で0.01Hzの範囲内に入ると、165m秒経過すると、低振幅周波数偏差の検出回数はリセットされ、0になる。こうして、揺れは収束する。
【0083】
図13において、特徴的なのは以下の点である。
0.01Hzを超える第1の極性(プラス)での低振幅の周波数偏差を最初に検出した後、低振幅周波数偏差の検出回数が12に達するとき、フラグが上がる。そして、(b)周波数偏差が0.01Hz以内となり、所定時間内に、第2の極性(マイナス)で0.01Hzを超える周波数偏差が検出されない状態となり、また、(c)周波数偏差がマイナス側に0.01Hz以内となり、その後、第1の極性(プラス)で再度、周波数偏差が0.01Hzを超える状態、となった場合に、フラグを下げる。このようなフラグの下げ方により、フリッカ発生中に待機モードから通常モードへ戻ることを、抑制することができる。
【0084】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 電力変換装置
2 電力変換部
3 制御部
4 直流側コンデンサ
5 DC/DCコンバータ
6 中間コンデンサ
7 インバータ
8 フィルタ
9 連系リレー
10 電圧センサ
11 電流センサ
12 電圧センサ
13 電流センサ
14 電圧センサ
30 単独運転検出装置
31 A/Dコンバータ
32 電圧検出部
33 周波数偏差算出部
34 無効電力注入部
35 高調波電圧算出部
36 切替部
37 単独運転検出部
38 DC/DC制御部
39 DC/AC制御部
51 DCリアクトル
52,53 スイッチング素子
71,72,73,74 スイッチング素子
75 ACリアクトル
100 直流電源
200 商用電力系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13