(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ハニカムコア
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20240925BHJP
E04C 2/36 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B32B3/12 B
E04C2/36 A
(21)【出願番号】P 2021039217
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-156319(JP,A)
【文献】特開平07-186311(JP,A)
【文献】特開平10-156983(JP,A)
【文献】特開平05-161933(JP,A)
【文献】特開2015-199320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B21D47/00-55/00
B64B1/00-1/70
B64C1/00-99/00
B64D1/00-47/08
B64F1/00-5/60
B64G1/00-99/00
E04B1/38-1/99
E04C2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル壁と、前記セル壁によって区画された複数のセルとからなるハニカムコアであって、当該ハニカムコアの少なくとも一部では、
前記ハニカムコアの厚さ方向一側の側面上において前記セル壁が画定する前記複数のセルの各々の輪郭形状は、六角形であり、
前記ハニカムコアの厚さ方向他側の側面上において前記セル壁が画定する前記複数のセルの各々の輪郭形状は、X角形であり、
前記セル壁は、前記六角形の頂点から前記X角形の頂点にかけて延びる直線状の稜線に沿って折り曲げられており、
前記稜線は、前記六角形の各頂点からY本ずつ延びている、ハニカムコア。
ただし、X:8n+2k、Y:2n+1(nは自然数、kは0以上3以下の整数)
【請求項2】
前記六角形は、前記ハニカムコアのリボン方向に平行な第1辺を備え、
前記セル壁は、前記厚さ方向一側の端縁において前記第1辺を画定している第1平坦部を含み、
前記第1平坦部の形状は、前記厚さ方向一側の底辺が前記厚さ方向他側の底辺よりも長い台形、または、前記厚さ方向一側に底辺を有する三角形である、請求項1に記載のハニカムコア。
【請求項3】
前記六角形は、前記ハニカムコアのリボン方向に平行でない第2辺を備え、
前記セル壁は、前記厚さ方向一側の端縁において前記第2辺を画定している第2平坦部を含み、
前記第2平坦部の形状は、前記厚さ方向一側の底辺が前記厚さ方向他側の底辺よりも長い台形、または、前記厚さ方向一側に底辺を有する三角形である、請求項2に記載のハニカムコア。
【請求項4】
前記六角形は、前記ハニカムコアのリボン方向に平行でない第2辺を備え、
前記セル壁は、前記厚さ方向一側の端縁において前記第2辺を画定している第2平坦部を含み、
前記第2平坦部の形状は、矩形である、請求項2に記載のハニカムコア。
【請求項5】
前記六角形は、前記ハニカムコアのリボン方向に平行な第1辺を備え、
前記セル壁は、前記厚さ方向一側の端縁において前記第1辺を画定している第1平坦部を含み、
前記第1平坦部の形状は、矩形である、請求項1に記載のハニカムコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムコアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、曲面ハニカムパネル用コア材を開示している。該コア材は、上底がa、下底がb(a<b)の台形により構成される凸面と、同じ形状の凹面と、前記凸面と凹面との間に位置し上底がc、下底がd(c>d)の台形により構成される中間面とが交互に連続する波状をなし、a+c=b+d,b≠dであり、前記凸面又は凹面の上縁と、前記中間面の上縁とがなす角度をθ1、前記凸面又は凹面の下縁と前記中間面の下縁とがなす角度をθ2、曲面ハニカムパネルの外面における周方向のセルピッチをW1、曲面ハニカムパネルの外面と内面との間の高さをH、内面の曲率半径をRとした場合に、θ1及びθ2は下記数式の解により与えられる。
a+c・cosθ1=b+d・cosθ2
c・sinθ1-d・sinθ2=W1×H/(R+H)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コア材は、その略半分以上が上記中間面から構成されている。そして、当該中間面を構成している台形は、上底と下底とがねじれの位置にある曲面になっている。このため、上記コア材では、曲面ハニカムパネルの強度(典型的には厚さ方向の圧縮強度や曲げ強度など)を一定以上に高めることが難しい。
【0005】
本発明の目的は、曲面ハニカムパネルの強度を向上させることが可能なハニカムコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるハニカムコアは、少なくともその一部で、厚さ方向一側の側面上においてセル壁が画定する複数のセルの各々の輪郭形状が六角形であり、厚さ方向他側の側面上においてセル壁が画定する複数のセルの各々の輪郭形状がX角形である。セル壁は、前記六角形の頂点から前記X角形の頂点にかけて延びる直線状の稜線に沿って折り曲げられている。稜線は、前記六角形の各頂点からY本ずつ延びている。ただし、X:8n+2k、Y:2n+1(nは自然数、kは0以上3以下の整数)
【発明の効果】
【0007】
上記ハニカムコアによれば、曲面ハニカムパネルの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るハニカムコアの斜視図である。
【
図2】
図1のハニカムコアの曲面である下面を仮想的に平面に展開した状態で示す下面図であり、セル壁の下端縁を太線で、セル壁の上端縁を細線で示した図である。
【
図3】
図1のハニカムコアの曲面である上面を仮想的に平面に展開した状態で示す上面図であり、セル壁の上端縁を太線で、セル壁の下端縁を細線で示した図である。
【
図4】
図1のハニカムコアの材料であるシート材を積層して形成したブロックの斜視図である。
【
図5】
図3のV部におけるセル壁の上端縁の拡大図である。
【
図6】第2実施形態に係るハニカムコアの斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係るハニカムコアを適用したハニカムパネルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態にかかるハニカムコア1について、図面を参照して説明する。各図におけるLは、ハニカムコア1のリボン方向を示し、Wは、ハニカムコア1の展張方向を示す。以下の説明では、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
ハニカムコア1は、例えば、その両面に表皮材(不図示)を接着されて、サンドイッチ構造の曲面ハニカムパネルを構成する。そのため、曲面ハニカムコアとも称される。リボン方向L及び展張方向Wは、それぞれ曲面ハニカムパネルの表面が形成する曲面に平行であり、かつ、互いに直交する。ハニカムコア1の厚さ方向Tは、リボン方向Lと展張方向Wとに直交する方向であり、ハニカムパネルの厚さ方向と一致する。以下、ハニカムコア1の厚さ方向一側を「下側」、他側を「上側」、厚さ方向一側の側面を「下面」、他側の側面を「上面」と称する。なお、「下」「上」などの方向を表す用語は、各要素の位置関係を説明するために便宜上定めたものであり、ハニカムコア1の実際の取り付け姿勢等を限定するものではない。
【0011】
ハニカムコア1は、例えば、
図1に示すように、セル壁2と、セル壁2によって区画された複数のセル(空間)3とから構成されている。また、ハニカムコア1の下面1
L上においてセル壁2が画定する複数のセル3の各々の輪郭形状は、六角形であり、ハニカムコア1の上面1
U上においてセル壁2が画定する複数のセル3の各々の輪郭形状は、X角形である。ここで、Xは、8n+2k(nは自然数、kは0以上3以下の整数)である。また、ハニカムコア1の下面1
Lは、セル壁2の下端縁2
Lによって張られる曲面であり、上面1
Uは、セル壁2の上端縁2
Uによって張られる曲面である。
【0012】
セル壁2は、六角形の頂点からX角形の頂点にかけて延びる直線状の稜線4に沿って折り曲げられている。稜線4は、六角形の各頂点からY本ずつ延びている。ここで、Yは、2n+1(nは自然数、kは0以上3以下の整数)である。従って、XとYは、X=4Y+2k-4(kは0以上3以下の整数)を満たす関係にある。稜線4同士は、交差しない。なお、「六角形の頂点からX角形の頂点にかけて延びる」は、六角形の頂点とX角形の頂点とが稜線4によって結ばれた状態に限らず、六角形の頂点とX角形の頂点とを結ぶ直線分に沿って稜線4が延びている状態を含む意味である。即ち、「六角形の頂点からX角形の頂点にかけて延びる」は、稜線4の端部が六角形の頂点及びX角形の頂点のいずれか一方または両方に届いていない状態を含む意味である。「六角形の各頂点から延びている」も同様である。
【0013】
ハニカムコア1の厚さは、特に限定されないが、例えば、3mm~20mm程度である。また、セル3の大きさは、特に限定されないが、例えば、最大幅が3mm~30mm程度である。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態では、
図1乃至
図3に示すように、ハニカムコア1の上面1
U上においてセル壁2の上端縁2
Uが画定する各セル3の輪郭形状が、14角形(n=1,k=3)である。また、ハニカムコア1の下面1
L上においてセル壁2の下端縁2
Lが画定する各セル3の輪郭形状は、六角形である。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から14角形の各頂点にかけて延びている。六角形の各頂点からは、各3本ずつ稜線4が延びている。
【0015】
図1及び
図2に示すように、各六角形は、リボン方向Lに平行な2つの第1辺5と、リボン方向Lに平行でない4つの第2辺6とを備えている。セル壁2は、稜線4によって第1平坦部P
1と第2平坦部P
2と第3平坦部P
3とに分割されている。第1平坦部P
1は、その下端縁において第1辺5を画定しており、第2平坦部P
2は、その下端縁において第2辺6を画定している。第3平坦部P
3は、第1平坦部P
1と第2平坦部P
2との間に介在して、それらを接続している。
【0016】
図1に示すように、第1平坦部P
1の形状は、下底B
1Lが上底B
1Uよりも長い台形であり、第2平坦部P
2の形状は、下底B
2Lが上底B
2Uよりも長い台形である。即ち、第1平坦部P
1の台形の下底B
1Lが、六角形の第1辺5をなし、第2平坦部P
2の台形の下底B
2Lが、六角形の第2辺6をなす。第1平坦部P
1の台形の上底B
1Uと第2平坦部P
2の台形の上底B
2Uは、セル壁2の上端縁2
U上に位置して、それぞれ14角形の一辺をなす。なお、図示した例では、台形を等脚台形としたが、第1平坦部P
1と第2平坦部P
2の台形は、等脚台形に限らない。
【0017】
第3平坦部P3の形状は、三角形である。当該三角形は、六角形と頂点を共有し、その底辺B3は、セル壁2の上端縁2U上に位置して14角形の一辺をなしている。本実施形態では、第3平坦部P3の三角形の底辺B3以外の2辺のうち一方が、第1平坦部P1の台形の脚をなし、他方が、第2平坦部P2の台形の脚をなしている。
【0018】
一つのセル3に着目すれば、
図1に示すように、セル3の周囲を取り囲むセル壁2は、稜線4によって、2つの第1平坦部P
1と、4つの第2平坦部P
2と、8つの第3平坦部P
3とに分割されている。即ち、各14角形は、2つの第1平坦部P
1の台形の上底B
1Uと、4つの第2平坦部P
2の台形の上底B
2Uと、8つの第3平坦部P
3の三角形の底辺B
3とから構成されている。
【0019】
ハニカムコア1の材料、即ち、セル壁2の材料としては、例えば、アルミニウム等の金属箔、繊維強化プラスチック(FRP)シート、紙材等のシート材を使用することができる。シート材の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01mm~0.5mm程度である。
【0020】
FRPシートの材料としては、例えば、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等を使用することができる。マトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0021】
紙材としては、例えば、クラフト紙、混抄紙等を使用することができる。混抄紙の例としては、合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等とパルプ繊維とからなる混抄紙が挙げられる。紙材には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フエノール樹脂等の合成樹脂を塗布、含侵、ラミネート等することで、耐水性、耐熱性、難燃性、不燃性などを付与してもよい。
【0022】
ハニカムコア1は、コルゲート法、展張法、折り紙工学を利用した工法等の周知の方法により製造することができる。以下、一例として、アルミシート製のハニカムコア1を展張法により製造する方法を説明する。
【0023】
この方法では、
図4に示すようなブロック7を作成し、これを展張方向Wに展張することで、ハニカムコア1を得る。ブロック7は、アルミシートからなる帯状のシート材7aを複数積層して形成した積層体である。
【0024】
ブロック7の濃い灰色の領域と薄い灰色の領域(
図4参照)は、接着剤Adが設けられた隙間と、設けられていない隙間とが、積層方向に交互に並ぶ領域である。例えば、濃い灰色の領域では、上から数えて奇数番目の層の上面と偶数番目の層の下面とが、接着剤Adにより接着されている。一方、奇数番目の層の下面と偶数番目の層の上面とは、接着されていない。また、薄い灰色の領域では、上から数えて奇数番目の層の下面と偶数番目の層の上面とが、接着剤Adにより接着されており、奇数番目の層の上面と偶数番目の層の下面とは接着されていない。
【0025】
図4において、破線は、谷折りの折れ線、実線は、山折りの折れ線を示している。上から数えて奇数番目の層では、最上層のシート材7aと同じ位置に同じ種類の折れ線が設けられている。具体的には、濃い灰色の領域の境界線である折れ線と、そのすぐ隣に位置する折れ線とが、山折りの折れ線となる。また、薄い灰色の領域の境界線である折れ線と、そのすぐ隣に位置する折れ線とが、谷折りの折れ線となる。一方、上から数えて偶数番目の層では、最上層のシート材7aと同じ位置に異なる種類の折れ線が設けられている。具体的には、濃い灰色の領域の境界線である折れ線と、そのすぐ隣に位置する折れ線とが、谷折りの折れ線となり、薄い灰色の領域の境界線である折れ線と、そのすぐ隣に位置する折れ線とが、山折りの折れ線となる。
【0026】
各層のシート材7aの折れ線の位置には、予め折り目(折り筋ともいう)が形成されている。折り目は、ブロック7を展張したときに当該折り目に沿った折れ曲がりをシート材7aに生じさせるものであればよく、その形態は特に限定されない。例えばアルミシートからなるシート材7aであれば、当該折り目は、例えばシート材7aの表面に形成された線状の溝であってもよい。そのような溝は、例えば罫線刃等の刃先をシート材7aの表面に押し付けるなどして形成することができる。
【0027】
展張工程では、ブロック7に対してシート材7aの積層方向に引っ張り力を付与して、ブロック7を展張する。このとき引っ張り力の作用する方向が、展張方向Wに相当する。ブロック7が展張されると、各シート材7aのうち濃い灰色と薄い灰色の領域が、第1平坦部P1になり、それ以外の領域が、第2平坦部P2と第3平坦部P3とになる。そして、シート材7aに形成された折り目が、セル壁2の稜線4となる。また、積層方向に互いに隣り合うシート材7aの、互いに積層方向に対向する面のうち接着されていない領域は、展張方向Wに拡開してセル3を画成する。
【0028】
なお、得られたハニカムコア1の両面に、表皮材(不図示)を接着することで、サンドイッチ構造の曲面ハニカムパネルを得ることができる。表皮材の材料は、特に限定されず、例えばシート材7aの材料として例示したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0029】
接着剤Adは、ハニカムコア1や表皮材の材料に応じて適宜選択することができる。典型的な例としては、酢酸ビニール系などの熱可塑性樹脂接着剤、エポキシ系やポリウレタン系の熱硬化性樹脂接着剤、ニトリルゴム系やブチルゴム系の合成ゴム接着剤等が挙げられる。なお、ハニカムコア1と表皮材とは、加熱による熱融着、或いは、溶剤により接着されてもよい。はんだ等のろう材を用いてもよい。
【0030】
以下、第1実施形態の作用効果について説明する。
【0031】
(1)本実施形態では、六角形の頂点から14角形の頂点にかけて延びる直線状の稜線4に沿って、セル壁2が折り曲げられている。稜線4は、六角形の各頂点から3本ずつ延びている。従って、
図1に示すように、セル壁2は、稜線4により、台形状の第1平坦部P
1と台形状の第2平坦部P
2との間に必ず三角形状の第3平坦部P
3が介在するように分割される。そして、第3平坦部P
3の底辺B
3は、
図5に示すように、第1平坦部P
1の上底B
1Uと第2平坦部P
2の上底B
2Uとの間に介在して、それらを接続する。
【0032】
このため、本実施形態によれば、上底B
1Uの長さL
1(
図5参照)及び上底B
2Uの長さL
2(
図5参照)を適宜調節することで、底辺B
3の長さL
3(
図5参照)及び底辺B
3と上底B
1U(または上底B
2U)との交点の位置を任意に設定することができる。また、長さL
1,L
2の調節とは別に、
図5に二点鎖線で示すように、第3平坦部P
3が第1平坦部P
1(または第2平坦部P
2)に対してなす角度を調節することで、上底B
1Uに対する上底B
2Uの相対位置を任意に設定することもできる。
【0033】
即ち、本実施形態は、上底B1U及び上底B2Uの方位角に関わらず(或いは方位角とは独立して)、上底B1Uに対する上底B2Uの相対位置を任意に調節することができる。「方位角」とは、ハニカムコア1の上面1Uを仮想的に平面に展開した展開平面上において、各辺(上底B1U、上底B2U、底辺B3等)がリボン方向Lまたは展張方向Wに対してなす角度である。
【0034】
このため、本実施形態によれば、第1平坦部P1の下底B1Lに対する上底B1Uの角度や、第2平坦部P2の下底B2Lに対する上底B2Uの角度を維持しながら、上底B1Uに対する上底B2Uの相対位置を任意に調節することができる。換言すれば、上底B1Uと下底B1L及び上底B2Uと下底B2Lがねじれの位置関係になることを抑制しつつ、上底B1Uと上底B2Uとを互いにリボン方向Lに接近離間させたり、展張方向Wに接近離間させたりすることができる。即ち、本実施形態によれば、セル壁2に大きなねじれを生じさせることなく、所望の曲率で湾曲した曲面ハニカムコア1を形成することができる。そして、ハニカムコア1によれば、セル壁2に大きくねじれた曲面が形成されないので、曲面ハニカムパネルの強度を向上させることができる。
【0035】
(2)また、本実施形態では、セル壁2が、直線状の稜線4に沿って折り曲げられている。そのため、セル壁2には、上端縁2Uから下端縁2Lにかけて稜線4に沿って延びる屈曲断面部が形成されている。屈曲断面部は、その延在方向の荷重に対して、平面部または湾曲面部よりも高い剛性を発揮する。このように、本実施形態によれば、ねじれた曲面の代わりに上端縁2Uから下端縁2Lにかけて延びる屈曲断面部をセル壁2に形成することができるので、ハニカムコア1の厚さ方向Tの荷重に対する強度及び剛性を高めることができる。
【0036】
(3)更に、本実施形態では、リボン方向Lに平行な第1平坦部P1の形状が、下底B1Lが上底B1Uよりも長い台形である。従って、14角形の周長は、六角形の周長よりも長い。このため、本実施形態によれば、所定の条件下で、ハニカムコア1の上面1U上における各セル3の上端面(14角形の開口)の面積を、ハニカムコア1の下面1L上における各セル3の下端面(六角形の開口)の面積よりも大きくすることができる。これにより、上面1Uの面積が下面1Lの面積より大きい曲面ハニカムコア1を形成することができる。
【0037】
(4)上記特許文献1のコア材では、中間面をなす台形の上底と下底とがねじれの位置関係になる。曲面である中間面上では、中間面の上底と凸面の上底との交点(以下、第1頂点)と、中間面の下底と凹面の下底との交点(以下、第2頂点)とを結ぶ対角線は、曲線になる。そのため、第1頂点と第2頂点との間の直線距離が、第1頂点と第2頂点とを結ぶ対角線の長さよりも短くなる。同様に、中間面の上底と凹面の上底との交点(以下、第3頂点)と、中間面の下底と凸面の下底との交点(以下、第4頂点)とを結ぶ対角線は、曲線になる。そのため、第3頂点と第4頂点との間の直線距離が、第3頂点と第4頂点とを結ぶ対角線の長さよりも短くなる。従って、上底の両端にある第1頂点と第3頂点との間の実際の距離は、設計上の距離(上底の長さ)より短くなる。また、下底の両端にある第2頂点と第4頂点との間の実際の距離も、設計上の距離(下底の長さ)より短くなる。実際の距離と設計上の距離との差の絶対値(端点間距離の減少量)は、より長さの長い上底の方が下底より大きい。
【0038】
このように、上記コア材は、中間面の上底及び下底の端点間距離の減少量の差によって、上縁側が下縁側より大きく収縮する。このため、上記コア材では、例えば、ハニカムパネルの外面の周方向において、内面から外面に向かう方向に凸となるような曲率を付与すると、当該周方向と直交しかつ外面に平行な方向において、外面から内面に向かう方向に凸となるような反りが生じてしまう。即ち、特許文献1のコア材によれば、鞍状の曲面ハニカムパネルしか製造できないという問題がある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、リボン方向Lに平行な第1平坦部P
1の形状が、下底B
1Lが上底B
1Uよりも長い台形であり、かつ、リボン方向Lに平行でない第2平坦部P
2の形状が、下底B
2Lが上底B
2Uよりも長い台形である。従って、
図1に示すように、セル壁2の上端縁2
Uのうち、上底B
1Uと上底B
2Uとを接続する部分(本実施形態では底辺B
3)の形状が、セル壁2の下端縁2
Lのうち当該部分に対応する部分E
3の形状よりも、3次元空間内でより直線に近い形状になる。即ち、本実施形態によれば、上底B
1Uと上底B
2Uとの間の距離を、下底B
1Lのうち上底B
1Uと台形の高さ方向に対向する領域E
1と、下底B
2Lのうち上底B
2Uと台形の高さ方向に対向する領域E
2との間の距離よりも大きくすることができる。
【0040】
これにより、本実施形態によれば、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wの両方において上方に凸に湾曲させたり、リボン方向L及び展張方向Wのうちいずれか一方においては湾曲させず、他方においてのみ上方に凸に湾曲させたりすることができる。即ち、球面状や円筒状のハニカムコア1を、セル壁2に大きなねじれを生じさせることなく形成することができる。なお、円筒状のハニカムコア1は、例えば周方向に連結することで、中空軸状に形成することもできる。
【0041】
以下、
図4及び
図5を参照して、上記効果を簡易計算により確認する。ここでは、第1平坦部P
1及び第2平坦部P
2の形状を等脚台形と仮定し、ハニカムコア1の下面1
L上における各セル3の形状を正六角形と仮定する。また、
図4に示すように、第1平坦部P
1の台形の脚の厚さ方向Tに対する角度をθ
1、第2平坦部P
2の台形の脚の厚さ方向Tに対する角度をθ
2、台形の高さをH、六角形の一辺の長さをAとする。本実施形態では、0<θ
1,θ
2である。
【0042】
このとき、第1平坦部P1の上底B1Uの長さL1は、
L1=A-2Htanθ1 …(1)
第2平坦部P2の上底B2Uの長さL2は、
L2=A-2Htanθ2 …(2)
第3平坦部P3の底辺B3の長さL3は、
L3=H(tanθ1+tanθ2)…(3)
と表せる。なお、本実施形態では、0<L1,L2であるから、θ1,θ2の範囲は、式(1)(2)より、0<θ1,θ2<tan-1(A/2H)<90°である。
【0043】
また、
図5において、方位角を展張方向Wに対する角度(時計回りを正)として表すと、第1平坦部P
1の上底B
1Uの方位角は90°、第2平坦部P
2の上底B
2Uの方位角は30°、第3平坦部P
3の底辺B
3の方位角はα°(0°<α<90°)である。なお、
図5中の黒丸は、第1平坦部P
1の台形の上底B
1Uの中点を示している。
【0044】
すると、第1平坦部P1の上底B1Uの中点間のリボン方向Lの距離LUは、
LU=L1+(1/2)L2+2L3sinα …(4)
第1平坦部P1の上底B1Uの中点間の展張方向Wの距離WUは、
WU=(√3/2)L2+2L3cosα …(5)
第1平坦部P1の下底B1Lの中点間のリボン方向Lの距離LLは、
LL=(3/2)A …(6)
第1平坦部P1の下底B1Lの中点間の展張方向Wの距離WLは、
WL=(√3/2)A …(7)
と表せる。
【0045】
LUとLLとの差ΔLは、
ΔL=LU-LL …(8)
式(8)は、式(1)~(4),(6)より、
ΔL=H[2tanθ1(sinα-1)+tanθ2(2sinα-1)] …(9)
と表せる。一方、WUとWLとの差ΔWは、
ΔW=WU-WL …(10)
式(10)は、式(2),(3),(5),(7)より、
ΔW=H[2tanθ1cosα+tanθ2(2cosα-√3)] …(11)
と表せる。
【0046】
第1平坦部P
1の上底B
1Uの中点と下底B
1Lの中点とを結ぶ線分を第1平坦部P
1の中心軸Axと定義し、その延長線はハニカムコア1の曲面の曲率中心を通るものとする。また、
図5の上側に描かれた第1平坦部P
1の中心軸Axと、
図5の下側に描かれた第1平坦部P
1の中心軸Axとが3次元空間内でなす角を、相対傾斜角と呼ぶこととする。
【0047】
すると、相対傾斜角のリボン方向Lの成分θL[rad]は、
θL=ΔL/H …(12)
これに、式(9)のΔLを代入すると、
θL=2tanθ1(sinα-1)+tanθ2(2sinα-1) …(13)
と表せる。
【0048】
また、相対傾斜角の展張方向Wの成分θW[rad]は、
θW=ΔW/H …(14)
これに、式(11)のΔWを代入すると、
θW=2tanθ1cosα+tanθ2(2cosα-√3) …(15)
と表せる。
【0049】
まず、ハニカムコア1のリボン方向Lの曲率がゼロになるときの、展張方向Wの曲率について調べる。式(13)から、
tanθ1=[(sinα-1/2)/(1-sinα)]tanθ2 …(16)
を満たすとき、θL=0となり、リボン方向Lの曲率がゼロになることがわかる。なお、0<θ1,θ2<90°であるため、式(16)が成立するαの範囲は、30°<α<90°に限られる。
【0050】
このとき、相対傾斜角の展張方向Wの成分θWは、式(16)を式(15)に代入し、
θW=[(2sinα-1)cosα/(1-sinα)+2cosα-√3]tanθ2 …(17)
と表せる。いま、0<θ2<90°であり、αの範囲は、30°<α<90°であるから、式(17)の右辺は常に正である。即ち、θWは正の値をとる。
【0051】
以上より、本実施形態では、式(16)の関係を満たすとき、ハニカムコア1のリボン方向Lの曲率をゼロにしつつ、ハニカムコア1を展張方向Wにおいて上方に凸に湾曲させることができる。
【0052】
次に、ハニカムコア1の展張方向Wの曲率がゼロになるときの、リボン方向Lの曲率について調べる。式(15)より、
tanθ1=[(√3/2-cosα)/cosα]tanθ2 …(18)
を満たすとき、θW=0となり、展張方向Wの曲率がゼロになることがわかる。なお、0<θ1,θ2<90°であるため、式(18)が成立するαの範囲は、30°<α<90°に限られる。
【0053】
このとき、相対傾斜角のリボン方向Lの成分θLは、式(18)を式(13)に代入し、
θL=[(√3-2cosα)(sinα-1)/cosα+(2sinα-1)]tanθ2 …(19)
と表せる。いま、0<θ2<90°であり、αの範囲は、30°<α<90°であるから、式(19)の右辺は常に正である。即ち、θLは正の値をとる。
【0054】
以上より、本実施形態では、式(18)の関係を満たすとき、ハニカムコア1の展張方向Wの曲率をゼロにしつつ、ハニカムコア1をリボン方向Lにおいて上方に凸に湾曲させることができる。
【0055】
次に、ハニカムコア1のリボン方向Lの曲率と展張方向Wの曲率との両方が正になる条件について調べる。いま、式(16)の右辺のtanθ2の係数と、式(18)の右辺のtanθ2の係数とを比較すると、30°<α<90°の範囲では、
0<(√3/2-cosα)/cosα <(sinα-1/2)/(1-sinα)…(20)
が常に成立する。即ち、式(16)の右辺のtanθ2の係数の方が、式(18)の右辺のtanθ2の係数より常に大きい。
【0056】
そのため、30°<α<90°の範囲で、式(16)において、右辺より左辺の方が大きくなるように、即ち、
tanθ1>[(sinα-1/2)/(1-sinα)]tanθ2 …(21)
を満たすようにθ1,θ2を選択すれば、式(20)より、
tanθ1>[(√3/2-cosα)/cosα]tanθ2 …(22)
が常に成立する。従って、式(21)を満たすようにθ1,θ2を選択すれば、式(13)(15)より、
0<θL かつ 0<θW
が成立する。
【0057】
以上より、本実施形態では、式(21)の関係を満たすとき、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wの両方において上方に凸に湾曲させることができる。
【0058】
(5)また、本実施形態によれば、曲面ハニカムコアを製造する際に、シート材を予め曲面ハニカムパネルの曲率に合うように湾曲した形状にトリミングする必要がない。このため、従来のハニカムコアの構造と比較して、材料歩留まりを大幅に向上させることができる。
【0059】
以下、第1実施形態のいくつかの変形例について説明する。各変形例の説明では、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0060】
第1変形例では、第1平坦部P1の形状が三角形であってもよい。この場合、当該三角形の底辺は、六角形の第1辺5をなし、底辺以外の辺は、第3平坦部P3の三角形の底辺B3以外の辺をなす。また、頂点は、セル壁2の上端縁2U上に位置する。
【0061】
第2変形例では、一つのセル3の周囲を取り囲むセル壁2の4つの第2平坦部P2のうちいずれか2つの形状が、三角形であってもよい。この場合、当該三角形の底辺は、六角形の第2辺6をなし、底辺以外の辺は、第3平坦部P3の三角形の底辺B3以外の辺をなす。また、頂点は、セル壁2の上端縁2U上に位置する。
【0062】
第1及び第2変形例では、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2の上端縁2Uが画定する各セル3の輪郭形状は、12角形(n=1,k=2)となる。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から12角形の各頂点にかけて延び、六角形の各頂点からは、各3本ずつ稜線4が延びる。
【0063】
第3変形例では、一つのセル3の周囲を取り囲むセル壁2の4つの第2平坦部P2のうち4つ全ての形状が、三角形であってもよい。この場合、当該三角形の底辺は、六角形の第2辺6をなし、底辺以外の辺は、第3平坦部P3の三角形の底辺B3以外の辺をなす。また、頂点は、セル壁2の上端縁2U上に位置する。
【0064】
本変形例では、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2の上端縁2Uが画定する各セル3の輪郭形状は、10角形(n=1,k=1)である。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から10角形の各頂点にかけて延び、六角形の各頂点からは、各3本ずつ稜線4が延びる。
【0065】
第4変形例は、第1変形例と第2変形例との組み合わせであってもよい。即ち、2つの第1平坦部P1の形状と2つの第2平坦部P2の形状との両方が、三角形であってもよい。本変形例では、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2の上端縁2Uが画定する各セル3の輪郭形状は、10角形(n=1,k=1)である。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から10角形の各頂点にかけて延び、六角形の各頂点からは、各3本ずつ稜線4が延びる。
【0066】
第5変形例は、第1変形例と第3変形例との組み合わせであってもよい。即ち、2つの第1平坦部P1の形状と4つの第2平坦部P2の形状との両方が、三角形であってもよい。本変形例では、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2の上端縁2Uが画定する各セル3の輪郭形状は、8角形(n=1,k=0)である。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から8角形の各頂点にかけて延び、六角形の各頂点からは、各3本ずつ稜線4が延びる。
【0067】
以上の通り、第1乃至第5変形例は、第1平坦部P1の形状及び第2平坦部P2の形状の一方または両方を、三角形にしたものである。三角形状の第1平坦部P1(または第2平坦部P2)は、上底B1Uの長さ(または上底B2Uの長さ)を限りなくゼロに近づけた台形状の第1実施形態の第1平坦部P1(または第2平坦部P2)と実質的に等しい。従って、第1乃至第5変形例によれば、第1実施形態と同様の理由により、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第1乃至第5変形例における第1平坦部P1と第2平坦部P2の三角形は、二等辺三角形に限定されない。
【0068】
上記第1実施形態及び第1乃至第5変形例では、n=1であったが、第6変形例では、nが2以上の整数であってもよい。例えば、第1実施形態及び第1乃至第5変形例における第3平坦部P3は、第3平坦部P3の三角形の頂点と底辺B3上の(n-1)個の点とを結ぶ(n-1)本の稜線4によって、n個の第4平坦部に分割されてもよい。n個の第4平坦部の形状は、いずれも三角形である。各三角形は、六角形と頂点を共有し、その底辺は、セル壁2の上端縁2U上に位置する。
【0069】
第6変形例では、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2の上端縁2Uが画定する各セル3の輪郭形状は、(8n+2k)角形である。セル壁2の各稜線4は、六角形の頂点から(8n+2k)角形の各頂点にかけて延び、六角形の各頂点からは、各(2n+1)本ずつ稜線4が延びる。
【0070】
第1実施形態及び第1乃至第5変形例において、第3平坦部P3がn個の第4平坦部に分割されても、上底B1U及び上底B2Uの方位角と独立して、上底B1Uに対する上底B2Uの相対位置を任意に調節できることに変わりはない。また、第6変形例でも、(8n+2k)角形の周長は、六角形の周長よりも長い。さらに、セル壁2の上端縁2Uのうち、上底B1Uと上底B2Uとを接続する部分の形状は、依然、セル壁2の下端縁2Lのうち当該部分に対応する部分E3の形状よりも、3次元空間内でより直線に近い。従って、第6変形例によれば、第1実施形態及び第1乃至第5変形例と同様の理由により、それらと同様の効果を得ることができる。
【0071】
次に、第2及び第3実施形態、並びに、他の実施形態にかかるハニカムコア1について説明する。なお、以下の各実施形態の説明では、先行する実施形態及び変形例(以下、先行実施形態等)と異なる構成についてのみ説明することとし、先行実施形態等において既に説明した要素と同じ機能を有する要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0072】
<第2実施形態>
第2実施形態は、
図6に示すように、
図1乃至
図5に示した第1実施形態において第1平坦部P
1の形状を矩形にしたものである。
【0073】
第2実施形態は、少なくとも上記(1)(2)(5)に記載した構成を備えているため、上記(1)(2)(5)に記載した効果を得ることができる。
【0074】
(6)また、第2実施形態によれば、セル壁2のうちリボン方向Lに平行な第1平坦部P1の形状を矩形とすることで、14角形の周長を六角形の周長と等しくすることができる。そのため、所定の条件下において、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wのうちいずれか一方において上方に凸に湾曲させつつ、他方において下方に凸に湾曲させることができる。即ち、第2実施形態によれば、ハニカムコア1を、セル壁2に大きなねじれを生じさせることなく、鞍状に形成することができる。
【0075】
上記(6)の効果を、上述の簡易計算式を用いて確認する。いま、第1平坦部P1の形状は矩形であるから、θ1=0である。このとき、式(13)(15)は、
θL=tanθ2(2sinα-1) …(23)
θW=tanθ2(2cosα-√3) …(24)
となる。式(23)(24)の両辺をかけ合わせると、
θLθW=(2sinα-1)(2cosα-√3)tan2θ2 …(25)
【0076】
式(25)の右辺の符号について調べると、まず、0<θ2であるから、
0<tan2θ2 …(26)
また、0°<α<90°の範囲では、次の関係が成り立つ。
(2sinα-1)(2cosα-√3)≦0 (等号は、α=30°で成立) …(27)
従って、式(25)(26)(27)より、
θLθW≦0(等号は、α=30°で成立) …(28)
が成立する。
【0077】
即ち、第2実施形態(θ1=0,0<θ2)では、0°<α<90°の範囲(α=30°を除く)において、相対傾斜角のリボン方向Lの成分θLの符号と展張方向Wの成分θWの符号が、常に逆になる。従って、第2実施形態では、上記(6)に記載したように、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wのうちいずれか一方において上方に凸に湾曲させつつ、他方において下方に凸に湾曲させることができる。
【0078】
なお、第1実施形態の第6変形例、並びに、第1実施形態の第2乃至第3変形例及びこれらの第6変形例において、第1平坦部P1の形状を矩形にしたものであっても、上記と同様の理由により、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
<第3実施形態>
第3実施形態は、
図1乃至
図5に示した第1実施形態において第2平坦部P
2の形状を矩形にしたものである。
【0080】
第3実施形態は、少なくとも上記(1)(2)(3)(5)に記載した構成を備えているため、上記(1)(2)(3)(5)に記載した効果を得ることができる。
【0081】
(7)また、第3実施形態によれば、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wのうちいずれか一方において上方に凸に湾曲させつつ、他方において下方に凸に湾曲させることができる。即ち、第3実施形態によれば、ハニカムコア1を、セル壁2に大きなねじれを生じさせることなく、鞍状に形成することができる。
【0082】
(8)さらに、第3実施形態によれば、相対変位角の展張方向Wの成分θWに対するリボン方向Lの成分θLの比の絶対値が、第2実施形態のそれよりも小さい鞍状のハニカムコア1を形成することができる。換言すれば、第3実施形態によれば、第2実施形態と比較して、リボン方向Lの曲率が同じ場合に、より大きな曲率を展張方向Wに有する鞍状のハニカムコア1を形成することができる。或いは、展張方向Wの曲率が同じ場合に、より小さな曲率をリボン方向Lに有する鞍状のハニカムコア1を形成することができる。
【0083】
上記(7)(8)の効果を、上述の簡易計算式を用いて確認する。いま、第2平坦部P2の形状は矩形であるから、θ2=0である。このとき、式(13)(15)は、
θL=2tanθ1(sinα-1) …(29)
θW=2tanθ1cosα …(30)
となる。式(29)(30)の両辺をかけ合わせると、
θLθW=4cosα(sinα-1)tan2θ1 …(31)
【0084】
式(31)の右辺の符号について調べると、まず、0<θ1なので、
0<tan2θ1 …(32)
また、0°<α<90°の範囲では、次の関係が成り立つ。
cosα(sinα-1)<0 …(33)
従って、式(31)(32)(33)より、
θLθW<0 …(34)
が成立する。
【0085】
即ち、第3実施形態(0<θ1,θ2=0)では、0°<α<90°の範囲において、相対傾斜角のリボン方向Lの成分θLの符号と展張方向Wの成分θWの符号が、常に逆になる。従って、第3実施形態では、上記(7)に記載したように、ハニカムコア1をリボン方向L及び展張方向Wのうちいずれか一方において上方に凸に湾曲させつつ、他方において下方に凸に湾曲させることができる。
【0086】
次に、相対傾斜角のリボン方向Lの成分θLと展張方向Wの成分θWの比について調べる。第3実施形態における当該比R3は、式(29)(30)より、
R3=θL/θW=(sinα-1)/cosα …(35)
一方、第2実施形態における当該比R2は、式(23)(24)より、
R2=θL/θW=(2sinα-1)/(2cosα-√3) …(36)
と表せる。
R2とR3の大きさを、0°<α<90°の範囲(α=30°を除く)で比較すると、式(35)(36)より、R2<R3<0である。
【0087】
従って、第3実施形態によれば、上記(8)に記載したように、相対変位角の展張方向Wの成分θWに対するリボン方向Lの成分θLの比の絶対値が、第2実施形態のそれよりも小さい鞍状のハニカムコア1を形成することができる。
【0088】
なお、第1実施形態の第6変形例、並びに、第1実施形態の第1変形例及びその第6変形例において、第2平坦部P2の形状を矩形にしたものであっても、上記と同様の理由により、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
<他の実施形態>
他の実施形態にかかるハニカムコア1としては、先行実施形態等のなかから選択される2以上の実施形態を組み合わせたものがある。
【0090】
また、別の他の実施形態にかかるハニカムコア1では、従来の平面状のハニカムコア1の一部に先行実施形態等を含んだものがある。例えば、
図7に示すように、ハニカムパネル10において、筒状の形状を有する領域11に第1実施形態またはその変形例を適用し、球面状の形状を有する領域12に第1実施形態またはその変形例を適用してもよい。また、鞍状の形状を有する領域13に第2実施形態、第3実施形態、またはそれらの変形例を適用してもよい。
【0091】
上記実施形態及び変形例において、ハニカムコア1の下面1Lにおいてセル壁2によって画定される複数の六角形は、必ずしも合同でなくてもよい。また、ハニカムコア1の上面1Uにおいてセル壁2によって画定される複数のX角形も、必ずしも合同でなくてもよい。さらに、六角形は、正六角形でなくてもよい。
【0092】
上記実施形態及び変形例は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態及び変形例で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【符号の説明】
【0093】
1 ハニカムコア、1L 下面(厚さ方向一側の側面)、1U 上面(厚さ方向他側の側面)
2 セル壁、2L 下端縁(厚さ方向一側の端縁)、3 セル、4 稜線、5 第1辺
P1 第1平坦部、B1L 下底(厚さ方向一側の底辺)、B1U 上底(厚さ方向他側の底辺)
P2 第2平坦部、B2L 下底(厚さ方向一側の底辺)、B2U 上底(厚さ方向他側の底辺)
L リボン方向、T 厚さ方向