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特許7559631非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法
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  • 特許-非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法 図1
  • 特許-非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H01M10/54
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021039249
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022139040
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木田 梨歩
(72)【発明者】
【氏名】荻原 信宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広規
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-049028(JP,A)
【文献】特表2017-526108(JP,A)
【文献】特開昭61-257972(JP,A)
【文献】特開平07-294481(JP,A)
【文献】特開2012-028150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52-10/667
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系二次電池を不活性化する不活性化液であって、
ビオロゲン化合物の2電子還元体を含むレドックスシャトル剤と、
エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、
を含む、
非水系二次電池の不活性化液。
【請求項2】
前記非水系溶媒は、テトラヒドロフランである、
請求項1に記載の非水系二次電池の不活性化液。
【請求項3】
前記ビオロゲン化合物は、メチルビオロゲンである、
請求項1又は2に記載の非水系二次電池の不活性化液。
【請求項4】
前記不活性化液は、炭素電極と金属Li電極とを用いて測定した開回路電位が2.2V未満である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系二次電池の不活性化液。
【請求項5】
前記レドックスシャトル剤を1mmol/L以上含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系二次電池の不活性化液。
【請求項6】
非水系二次電池を不活性化する不活性化液の製造方法であって、
ビオロゲン化合物と、前記ビオロゲン化合物を還元する還元剤と、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、を混合して、不活性化液を調製する調製工程、
を含む、
不活性化液の製造方法。
【請求項7】
前記調製工程では、前記還元剤としてアルカリ金属を用いる、
請求項に記載の不活性化液の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の不活性化液を、前記非水系二次電池の内部に添加する添加工程、
を含む、
非水系二次電池の不活性化方法。
【請求項9】
前記添加工程は、銅を含む負極集電体を有する前記非水系二次電池に対して行う、請求項8に記載の非水系二次電池の不活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水系二次電池をリサイクル又は廃棄する際に、回収電池を不活性化させる不活性化処理が行われている。こうした処理として、例えば、回収電池を充放電装置につないで0Vまで放電させる処理が可能であるが、その場合、放電に時間がかかることがあった。また、回収電池が電流遮断機構(CID)作動後の電池である場合には、放電させること自体ができなかった。そこで、回収電池の内部にリチウムの酸化還元電位に対して3.0~4.5Vの範囲に酸化還元電位を示すレドックスシャトル剤(例えばフェロセン)を添加することが提案されている(特許文献1参照)。これにより、充放電装置を用いることなく、安全かつ迅速に非水系二次電池の電池電圧を0Vまで下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のレドックスシャトル剤を用いて非水系二次電池を不活性化した場合、不活性化後の負極電位が高いことがあった。負極電位が高いと、負極集電体の銅などが溶出して正極で析出し、不活性化後に非水系二次電池をリサイクル又は廃棄する際、析出物の正極からの除去又は回収が困難であるといった問題がある。このため、非水系二次電池を不活性化する際、負極電位を例えば3.0V未満などに低く保つことが望まれていた。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、非水系二次電池を不活性化する際、負極電位を低く保つことのできる非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、ビオロゲン化合物の2電子還元体を含むレドックスシャトル剤と、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、を含む不活性化液を非水系二次電池の内部に添加すると、非水系二次電池を不活性化させる際に負極電位が低く保たれることを見出し、本開示の発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本開示の非水系二次電池の不活性化液は、
非水系二次電池を不活性化する不活性化液であって、
ビオロゲン化合物の2電子還元体を含むレドックスシャトル剤と、
エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、
を含むものである。
【0008】
また、本開示の不活性化液の製造方法は、
非水系二次電池を不活性化する不活性化液の製造方法であって、
ビオロゲン化合物と、前記ビオロゲン化合物を還元する還元剤と、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、を混合して、不活性化液を調製する調製工程、
を含むものである。
【0009】
また、本開示の非水系二次電池の不活性化方法は、
上述した不活性化液を、前記非水系二次電池の内部に添加する添加工程、
を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の非水系二次電池の不活性化液、不活性化液の製造方法及び非水系二次電池の不活性化方法では、非水系二次電池を不活性化する際に、負極電位を低く保つことができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。例えば、充電状態の非水系二次電池に不活性化液を添加すると、レドックスシャトル剤の還元体(ビオロゲン化合物の2電子還元体)が正極に電子を与えて酸化体(ビオロゲン化合物)になる反応と、レドックスシャトル剤の酸化体が負極から電子を受け取り還元体になる反応と、が繰り返し進行することにより、電池が放電して不活性化する。これらの反応は、各電極とレドックスシャトル剤との電位差を駆動力とするため、正極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位まで下がると正極の放電が終了し、負極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位まで上がると負極の放電が終了する。本開示では、レドックスシャトル剤の酸化還元電位が低い(例えばLi基準電位で3.0V未満)ため、負極電位を低く保つことができる。また、本開示では、レドックスシャトル剤が2電子還元体であるため、正極の還元が促進され、負極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位に到達した後も正極での放電速度が低下しにくい。このため、電池電圧が0V付近に至るまで迅速に不活性化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ビオロゲン化合物の酸化還元反応の一例を示す説明図。
図2】非水系二次電池20の構成の概略を表す断面図。
図3】非水系二次電池が不活性化するメカニズムを示す説明図。
図4】実験例1の不活性化液のサイクリックボルタンメトリー測定結果。
図5】実験例2の不活性化液のサイクリックボルタンメトリー測定結果。
図6】実験例3の不活性化液のサイクリックボルタンメトリー測定結果。
図7】実験例1~3の不活性化液を添加した後の電池の放電挙動を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[不活性化液]
まず、本開示の不活性化液について説明する。本開示の非水系二次電池の不活性化液は、非水系二次電池を不活性化する不活性化液であって、ビオロゲン化合物の2電子還元体を含むレドックスシャトル剤と、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、を含む。本明細書において、レドックスシャトル剤とは、正極と負極との間で電荷を繰り返し輸送することができる、酸化及び還元可能な化合物を指す。
【0013】
(ビオロゲン化合物)
レドックスシャトル剤の説明に先立って、レドックスシャトル剤の酸化体であるビオロゲン化合物について説明する。ビオロゲン化合物は、4,4’-ビピリジン骨格の二つのピリジン環窒素原子に各々炭化水素基が結合した構造を有する化合物であり、例えば式(v1)の構造を有する。式(v1)において、R及びR’は、同じであっても異なってもよい炭化水素基である。炭化水素基としては、鎖状(直鎖でもよいし分岐鎖を有していてもよい)の炭化水素基や環状の炭化水素基が好ましい。鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基、ドデカニル基などのアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基などのアルケニル基などが挙げられる。また、環状の炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基などが挙げられる。また、これらの炭化水素基は、カルボキシル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン(F、Cl、Br等)などの置換基を有していてもよい。炭化水素基は、これらのうち、直鎖のアルキル基が好ましく、置換基を有さないものが好ましい。炭化水素基は、各々、炭素数20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。ビオロゲン化合物は、4,4’-ビピリジン骨格の炭素のうちの1以上に、炭化水素基や、カルボキシル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲンなどの置換基が導入された構造を有するものとしてもよい。炭化水素基としては、上述したRやR’の炭化水素基として例示したものなどが挙げられる。ビオロゲン化合物は、置換基を複数有する場合、置換基同士が結合して環を形成していてもよい。ビオロゲン化合物は、炭素数30以下が好ましく、20以下がより好ましく、14以下がさらに好ましい。
【0014】
【化1】
【0015】
ビオロゲン化合物としては、具体的には、式(v1)の構造として、メチルビオロゲン(式(v2))、エチルビオロゲン(式(v3))、プロピルビオロゲン(式(v4))、ブチルビオロゲン(式(v5))、ペンチルビオロゲン(式(v6))、ヘキシルビオロゲン(式(v7))、ヘプチルビオロゲン(式(v8))、オクチルビオロゲン(式(v9))などを有するものが挙げられる。また、ビオロゲン化合物としては、式(v1)の構造として、1,1’-ジメチル-3,3’-[メチレンビス(オキシ)]-4,4’-ビピリジニウム(式(v10))、フェニルビオロゲン(式(v11))、1-(4-アミノフェニル)-1’-メチル-4,4’-ビピリジニウム(式(v12))などを有するものが挙げられる。
【0016】
【化2】
【0017】
【化3】
【0018】
ビオロゲン化合物は、式(v1)のカチオンの対アニオンとして、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 -)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 -)、ペンタフルオロアルシンアニオン(AsF6 -)、パークロレートアニオン(ClO4 -)、Br-、Cl-、F-などの無機アニオンや、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン(CF3SO3 -)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(N(CF3SO22 -、TFSI)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオン(C(CF3SO23 -)、などの有機アニオンを有していてもよい。対アニオンは、不活性化の対象となる非水系二次電池の支持塩のアニオンと同種のものとしてもよい。
【0019】
ビオロゲン化合物は、例えば、図1に示すような酸化還元反応を示す。ビオロゲン化合物は二価のカチオンであり、1電子還元によりカチオンラジカル、2電子還元により中性分子となる(J. Electrochem. Soc. 130(1983)1523参照)。
【0020】
(レドックスシャトル剤)
次に、レドックスシャトル剤について説明する。レドックスシャトル剤は、上述のビオロゲン化合物の2電子還元体である。ビオロゲン化合物の2電子還元体は、4,4’-ビピリジニリデン骨格の二つのピリジン環窒素原子に各々炭化水素基が結合した構造を有する化合物であってもよく、例えば式(r1)の構造を有してもよい。式(r1)においてR及びR’は、同じであっても異なってもよい炭化水素基であり、上述した式(v1)のR及びR’と同様である。例えば、メチルビオロゲン(式(v2))の2電子還元体は、1,1’-ジメチル-4,4’-ビピリジニリデン(式(r2))であってもよい。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
レドックスシャトル剤の酸化還元電位は、例えば、Li基準電位で3.0V未満であり、0.5V以上3.0V未満が好ましく、1.0V以上3.0V未満がより好ましく、1.5V以上2.9V以下がさらに好ましい。レドックスシャトル剤の酸化還元電位は、サイクリックボルタンメトリーで求めることができる。具体的には、レドックスシャトル剤の酸化還元電位は、サイクリックボルタンメトリーで求めた酸化側のピーク電位をEpa[V]、還元側のピーク電位をEpc[V]としたときに、E0=(Epa+Epc)/2で求められる値E0[V]とする。電位窓内に2つ以上の酸化還元電位がある場合には、全ての酸化還元電位が上述した範囲内であることが好ましい。サイクリックボルタンメトリーは、非水系溶媒と支持電解質とレドックスシャトル剤と含む測定溶液に対して行うことが好ましい。測定溶液の非水系溶媒としては、不活性化液の後述する非水系溶媒を用いることができる。測定溶液の支持電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4 などの無機塩や、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、などの有機塩が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。測定溶液の支持電解質は、不活性化の対象となる非水系二次電池の支持塩と同種のものとしてもよい。測定溶液中の支持電解質の濃度は、0.1mol/L以上5mol/L以下としてもよく、0.5mol/L以上2mol/L以下としてもよく、不活性化の対象となる非水系二次電池のイオン伝導媒体中の支持塩の濃度と同じとしてもよい。測定溶液中のレドックスシャトル剤の濃度は、1mmol/L以上溶解度以下としてもよく、30mmol/L以上溶解度以下としてもよく、50mmol/L以上100mmol/L以下としてもよい。測定溶液中のレドックスシャトル剤の濃度は、目的とする不活性化液のレドックスシャトル剤の濃度と同じとしてもよい。
【0024】
不活性化液に含まれるレドックスシャトル剤の濃度は、1mmol/L以上が好ましく、30mmol/L以上がより好ましく、50mmol/L以上がさらに好ましい。レドックスシャトル剤の濃度が高いほど、電気自動車(EV)用など高エネルギー密度の電池を短時間で放電させることができるからである。不活性化液に含まれるレドックスシャトル剤の濃度は、溶解度以下としてもよく、100mmol/L以下としてもよい。
【0025】
(非水系溶媒)
次に、レドックスシャトル剤を溶解させる非水系溶媒について説明する。非水系溶媒は、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方である。エーテル化合物は、環状エーテル化合物でもよいし、鎖状エーテル化合物でもよい。環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどのフラン化合物や、テトラヒドロピラン、メチルテトラヒドロピランなどのピラン化合物、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン化合物、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサンなどのジオキサン化合物が挙げられる。鎖状エーテル化合物としては、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどが挙げられる。ニトリル化合物としてアセトニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられる。これらの化合物は、置換基を有していてもよい。非水系溶媒は、これらのうち、エーテル化合物であることが好ましく、環状エーテル化合物であることが好ましく、テトラヒドロフランであることがより好ましい。エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒中では、ビオロゲン化合物の2電子還元体が安定して存在する(例えば、J. Org. Chem. 52(1987)2779-2789参照)。このため、レドックスシャトル剤としてビオロゲン化合物の2電子還元体を用いることができる。また、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒中では、ビオロゲン化合物(レドックスシャトル剤の酸化体)も比較的安定に存在するため、レドックスシャトル剤が安定した酸化還元を示すと考えられる。この非水系溶媒は、不活性化の対象となる非水系二次電池のイオン伝導媒体に含まれる溶媒と同じでもよいし、異なってもよい。
【0026】
(その他)
不活性化液は、還元前のビオロゲン化合物が有していた上述の対アニオンを含んでいてもよい。また、不活性化液は、ビオロゲン化合物を還元可能な金属の金属イオンを含んでいてもよい。金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族イオン(アルカリ金属イオン)や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどの第2族イオンが挙げられる。
【0027】
不活性化液は、炭素電極と金属Li電極とを用いて測定した開回路電位(Li基準の開回路電位とも称する)が2.2V未満であることが好ましく、2.1V以下であることがより好ましい。不活性化液は、この開回路電位が1.9V以上であるものとしてもよい。この開回路電位の測定には、不活性化液と、必要に応じて支持電解質と、を含む測定溶液を用いることができる。測定溶液の支持電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4 などの無機塩や、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、などの有機塩が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。測定溶液の支持電解質は、不活性化の対象となる非水系二次電池の支持塩(後述)と同種のものとしてもよい。測定溶液中の支持電解質の濃度は、0.1mol/L以上5mol/L以下としてもよく、0.5mol/L以上2mol/L以下としてもよく、不活性化の対象となる非水系二次電池のイオン伝導媒体中の支持塩の濃度と同じとしてもよい。測定溶液は、レドックスシャトル剤の酸化還元電位の測定に用いる測定溶液と同じでもよい。
【0028】
[不活性化液の製造方法]
次に、本開示の不活性化液の製造方法を説明する。この不活性化液の製造方法は、非水系二次電池を不活性化する不活性化液の製造方法であって、ビオロゲン化合物と、ビオロゲン化合物を還元する還元剤と、エーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方の非水系溶媒と、を混合して、不活性化液を調製する調製工程を含む。調製工程では、例えば上述した不活性化液を調製してもよい。
【0029】
ビオロゲン化合物としては、上述したビオロゲン化合物を用いることができる。ビオロゲン化合物を還元する還元剤としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの第1族金属(アルカリ金属)や、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどの第2族金属のような、金属還元剤が挙げられる。還元剤は、不活性化の対象となる非水系二次電池のキャリアイオンの金属としてもよい。例えば、不活性化の対象となる非水系二次電池のキャリアイオンがリチウムイオンの場合、還元剤として金属リチウムを用いてもよい。還元剤としては、アルカリ金属が好ましく、金属リチウムがより好ましい。非水系溶媒としては、上述した非水系溶媒を用いることができる。非水系溶媒がエーテル化合物及びニトリル化合物のうちの少なくとも一方であれば、ビオロゲン化合物に還元剤とともに作用させることで、ビオロゲン化合物の2電子還元体が得られる。
【0030】
調製工程では、非水系溶媒に、ビオロゲン化合物と還元剤とを投入して不活性化液を調製してもよい。ビオロゲン化合物の投入量は、1mmol/L以上としてもよく、30mmol/L以上溶解度以下としてもよく、50mmol/L以上100mmol/L以下としてもよい。還元剤の投入量は、ビオロゲン化合物を無駄なく2電子還元体にできる量であることが好ましい。例えば、還元剤が第1族金属の場合には、還元剤の投入量はビオロゲン化合物の投入量に対して2当量以上としてもよく、具体的には、2mol/L以上としてもよく、60mol/L以上溶解度以下としてもよく、100mmol/L以上200mmol/L以下としてもよい。還元剤が第2族金属の場合には、還元剤の投入量はビオロゲン化合物の投入量に対して1当量以上としてもよく、具体的には、1mmol/L以上としてもよく、30mmol/L以上溶解度以下としてもよく、50mmol/L以上100mmol/L以下としてもよい。調製工程では、非水系溶媒に、ビオロゲン化合物と還元剤とを投入し、撹拌してもよい。撹拌時間は特に限定されないが、例えば1時間以上300時間以下としてもよいし、12時間以上200時間以下としてもよいし、24時間以上100時間以下としてもよい。調製工程は、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0031】
調製工程では、例えば、以下の反応式(1)でビオロゲン化合物を2電子還元体まで還元してもよい。より具体的には以下の反応式(2)に示すように、メチルビオロゲンのカチオン部分に対して2当量のヘキサフルオロホスフェートアニオンを有するメチルビオロゲンと、メチルビオロゲンのカチオン部分に対して2当量の金属リチウムとを、テトラヒドロフランの存在下で反応させて、メチルビオロゲンを2電子還元体まで還元してもよい。なお、式(1)及び式(2)では、ビオロゲン化合物が有していた対アニオンと金属還元剤の金属イオンとが、反応後に塩を形成しているものとしたが、これらはどのように存在していてもよく、電離していても会合していてもよい。
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
[不活性化方法]
次に、本開示の非水系二次電池の不活性化方法について説明する。本開示の非水系二次電池の不活性化方法は、不活性化液を非水系二次電池の内部に添加する添加工程、を含む。不活性化液は、上述した不活性化液としてもよいし、上述した不活性化液の製造方法で製造したものとしてもよい。
【0035】
(非水系二次電池)
まず、不活性化の対象となる非水系二次電池について説明する。非水系二次電池は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しキャリアイオンを伝導する非水系のイオン伝導媒体と、を備えている。キャリアイオンとしては、例えば、第1族元素イオンや第2族元素イオンが挙げられる。第1族元素イオンとしては、例えば、リチウムイオンやナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。第2族元素イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが挙げられる。以下では、説明の便宜のため、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について主に説明する。
【0036】
正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質は、Li基準の酸化還元電位が不活性化液に含まれるレドックスシャトル剤よりも高いものであればよいが、酸化還元電位がLi基準電位で3.0V超過のものとしてもよく、3.5V以上のものが好ましく、3.8V以上のものがより好ましく、4.0V以上のものがさらに好ましい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)、Li(1-x)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-x)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、Li(1-x)NiaMnb2(a+b=1)やLi(1-x)NiaMnb4(a+b=2)などのリチウムニッケルマンガン複合酸化物、Li(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。また、Li(1-x)MnPO4などのオリビン型リチウムリン酸マンガン系化合物、Li(1-x)CoPO4などのオリビン型リチウムリン酸コバルト系化合物、Li(1-x)NiPO4などのオリビン型リチウムリン酸ニッケル系化合物などを用いることができる。また、Li(1-x)MnVO4などの逆スピネル型リチウムバナジン酸マンガン系化合物、Li(1-x)CoPO4などの逆スピネル型リチウムバナジン酸コバルト系化合物、Li(1-x)NiPO4などの逆スピネル型リチウムバナジン酸ニッケル系化合物などを用いることができる。正極活物質は、ニッケル、マンガン、コバルトのうちの1以上を含む酸化物であることが好ましく、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32などが好ましい。
【0037】
正極の導電材としては、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などを用いることができる。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。
【0038】
負極は、例えば、負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよいし、負極活物質と集電体とを密着させて形成したものとしてもよい。負極活物質は、Li基準の酸化還元電位が不活性化液に含まれるレドックスシャトル剤よりも低いものであればよいが、酸化還元電位がLi基準電位で1.5V未満のものが好ましく、1.0V以下のものがより好ましく、0.5V以下のものがさらに好ましい。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、複数の元素を含む複合酸化物、導電性ポリマーなどが挙げられる。炭素質材料は、例えば、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、Li4Ti512などのリチウムチタン複合酸化物やLiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物が挙げられる。負極活物質としては、このうち、グラファイト類などの炭素質材料が好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。負極の集電体は、これらのうち、銅を含むものであることが好ましい。銅は、酸化還元電位がLi基準電位で約3.0~3.5Vであるため(J. Electrochem. Soc. 144 (1997) 3476-3483、J. Mater. Chem. 21 (2011) 9891-9911等参照)、不活性化の際、負極電位を3.0V未満に保てば銅の溶出が抑制されると考えられ、本開示の不活性化液及び不活性化方法を適用する意義が特に高いからである。負極からの銅の溶出が抑制されると、正極での銅の析出も抑制されるため、不活性化後に非水系二次電池をリサイクル又は廃棄する際に、析出物を正極から除去又は回収する必要がなく、効率よくリサイクル又は廃棄できるため好ましい。
【0039】
イオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水系電解液の溶媒としては、例えば、カーボネート化合物、エステル化合物、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、フラン化合物、スルホラン化合物及びジオキソラン化合物などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート化合物としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物や、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート化合物などが挙げられる。また、エステル化合物としてγ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル化合物、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル化合物などが挙げられる。また、エーテル化合物としてジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどが挙げられ、ニトリル化合物としてアセトニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられ、アミド化合物としてジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミドなどが挙げられ、フラン化合物としてテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなどが挙げられ、スルホラン化合物としてスルホラン、テトラメチルスルホランなどが挙げられ、オキソラン化合物として1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどが挙げられる。これらは単独又は混合して用いることができる。このうち、非水系電解液の溶媒としては、例えば、DMC-ECや、DEC-EC、DMC-EMC-ECなど、環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物との混合液が好ましい。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4 などの無機塩や、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、などの有機塩が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。支持塩は、電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。また、イオン伝導媒体としては、液状のイオン伝導媒体の代わりに、イオン伝導性ポリマー、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
【0040】
この非水系二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータは、非水系二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0041】
この非水系二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものとしてもよい。非水系二次電池の一例を図2に示す。図2は、コイン型の非水系二次電池20の構成の概略を表す断面図である。図2に示すように、非水系二次電池20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この非水系二次電池20は、正極22と負極23との間の空間にリチウム塩を溶解したイオン伝導媒体27を備えている。
【0042】
(添加工程)
次に、添加工程について説明する。添加工程では、非水系二次電池の内部に不活性化液を添加する。具体的には、非水系二次電池の正極及び負極と不活性化液とが接触するように、不活性化液を添加する。不活性化液の添加方法は、特に限定されないが、電池容器を一旦開封して不活性化液を注入した後再び封止してもよいし、電池容器の外部から注射器等で注入しその後封止してもよい。添加工程は、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0043】
不活性化液の添加量は、例えば、0.1mL以上10mL未満としてもよく、0.5mL以上5.0mL以下としてもよい。不活性化液の添加量は、例えば、不活性化の対象となる非水系二次電池に含まれるイオン伝導媒体の体積[mL]に対して、0.1%以上500%以下としてもよく、10%以上300%以下としてもよい。不活性化液の添加によって非水系二次電池に添加されるレドックスシャトル剤の量(以下レドックスシャトル剤の添加量とも称する)は、例えば、不活性化の対象となる非水系二次電池の満充電時の電池容量[Ah]あたり、0.0001mol/Ah以上0.1mol/Ah以下としてもよく、0.001mol/Ah以上0.01mol/Ah以下としてもよい。
【0044】
この添加工程は、銅を含む負極集電体を有する非水系二次電池に対して行うことが好ましい。銅は、上述した通り酸化還元電位がLi基準電位で約3.0~3.5Vであるため、不活性化の際、負極電位を3.0V未満に保てば銅の溶出が抑制されると考えられ、本開示の不活性化液を添加する意義が特に高いからである。
【0045】
添加工程後の非水系二次電池は、例えば、静置して保持してもよいし、加振しながら保持してもよい。保持時間は、不活性化が完了するまでの時間として経験的に定められる時間とすればよいが、例えば、6時間以上500時間以下としてもよく、30時間以上300時間以下としてもよく、50時間以上200時間以下としてもよい。
【0046】
この不活性化方法で非水系二次電池が不活性化するメカニズムは、以下のように推察される。図3は、非水系二次電池が不活性化するメカニズムを示す説明図である。レドックスシャトル剤(図中のRS)を電池に添加すると、正極あるいは負極とレドックスシャトル剤の電位差を駆動力として、負極からレドックスシャトル剤およびレドックスシャトル剤から正極への電子移動が進行し、電池が放電する。具体的には、レドックスシャトル剤の還元体(ビオロゲン化合物の2電子還元体、図中のRS(red))が正極に電子を与えて酸化体(ビオロゲン化合物、図中のRS(ox))となり、レドックスシャトル剤の酸化体が負極から電子を受け取って還元体となる、という動作が繰り返し進行し、電池が放電する。正極電位あるいは負極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位に等しくなると、その電極の放電はそれ以上進行しなくなる。従って、正極電位と負極電位は、最終的にはレドックスシャトル剤の電位に等しくなり、不活性化が完了する。なお、「不活性化が完了」とは、少なくとも非水系二次電池のSOC(State of charge)が0%になるまで放電されていることをいうものとしてもよい。SOCが0%になるまで放電されていれば、負極電位が低すぎない(例えばLi基準電位で1.5V超過3.0V未満)ため、イオン伝導媒体(電解液等)の分解によるガス発生が生じにくく、電極自体の安全性も高い。したがって、不活性化後のリサイクルや廃棄を安全に行うことができる。不活性化後の電池電圧は低いほどスパークが起こりにくいため好ましく、例えば、3.0V以下としてもよく、1.2V以下や、1.0V以下、0.5V以下などとすることがより好ましい。
【0047】
以上説明した不活性化液及び不活性化方法では、非水系二次電池を不活性化する際に、負極電位を低く保つことができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。例えば、充電状態の非水系二次電池に不活性化液を添加すると、レドックスシャトル剤の還元体が正極に電子を与えて酸化体になる反応と、レドックスシャトル剤の酸化体が負極から電子を受け取り還元体になる反応と、が繰り返し進行することにより、電池が放電して不活性化する。これらの反応は、各電極とレドックスシャトル剤との電位差を駆動力とするため、正極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位まで下がると正極の放電が終了し、負極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位まで上がると負極の放電が終了する。本開示では、レドックスシャトル剤が酸化還元電位の低いビオロゲン化合物の2電子還元体であるため、負極電位を低く(例えばLi基準電位で3.0V未満)保つことができる。また、銅を負極集電体として備えた非水系二次電池にこの不活性化液及び不活性化方法を適用すると、負極集電体からの銅の溶出を抑制できる。負極集電体からの銅の溶出が抑制されると、正極での銅の析出も抑制されるため、不活性化後に非水系二次電池をリサイクル又は廃棄する際に、析出物を正極から除去又は回収する必要がなく、効率よくリサイクル又は廃棄できる。さらに、本開示では、レドックスシャトル剤が2電子還元体であるため、正極の還元が促進され、負極電位がレドックスシャトル剤の酸化還元電位に到達した後も正極での放電速度が低下しにくく、電池電圧が0V付近に至るまで迅速に不活性化できるという効果も得られる。
【0048】
なお、本開示は、上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例
【0049】
以下には、不活性化液を調製し、非水系二次電池を不活性化した例を、実験例として説明する。なお、実験例1が本開示の実施例に相当し、実験例2,3は本開示の参考例に相当する。
【0050】
[実験例1]
(不活性化液の調製)
まず、アルゴン雰囲気下で、メチルビオロゲンヘキサフルオロホスフェート(化学式:(C121422+(PF6 -2、以下、単にメチルビオロゲンと呼ぶ)と、メチルビオロゲンに対して2当量の金属リチウムと、をテトラヒドロフラン(THF)溶媒に入れて常温で数日間攪拌した。このとき、メチルビオロゲンの濃度が0.05mol/Lになるようにした。こうして、実験例1の不活性化液を得た。以下、この不活性化液を「溶液A」とも称する。
【0051】
(不活性化液の電気化学測定)
溶液Aに対して、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を濃度1mol/Lになるように溶解させ、サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定溶液とした。CV測定には三極式H型セルを使用し、作用極としてグラッシーカーボン、対極として金属リチウム、参照電極としてニッケル線に金属リチウムを圧着したものを用いた。まず、電圧および電流を印加しない状態で参照電極に対する作用極の電位を測定した。これを、不活性化液の開回路電位とした。その後、開回路電位から3.5V(vs.Li/Li+)まで電位を上昇させ、電位掃引方向を転換し、1.5V(vs.Li/Li+)まで低下させ、再度掃引方向を転換し、開回路電位まで掃引させた。なお、測定温度は20 ℃、電位掃引速度は50mV/sとした。そして、酸化側のピーク電位Epa[V]と、還元側のピーク電位をEpc[V]を調べ、E0=(Epa+Epc)/2で求められる値E0[V]を導出した。これを、レドックスシャトル剤の酸化還元電位とした。
【0052】
(非水系二次電池の不活性化)
溶液Aを用いて非水系二次電池の不活性化挙動を評価した。非水系二次電池としては、以下のように作製したリチウムイオン電池を用いた。LiNi1/3Co1/3Mn1/32を93重量部、アセチレンブラックを4重量部、ポリフッ化ビニリデンを3重量部の比率で混合した正極合材を、アルミニウム箔に塗工して正極を作製した。負極合材として黒鉛を98重量部、カルボキシメチルセルロースを1重量部、スチレンブタジエンゴムを1重量部の比率で混合した負極合材を銅箔に塗工して負極を作製した。エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を、EC/DMC/EMC=3/4/3の体積比で混合した混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lの濃度となるように溶解させて電解液を調製した。セパレータとしては、ポリエチレン単層微多孔膜を用いた。正極と負極を、電解液を浸み込ませたセパレータを介して対向させ、ラミネートフィルム内に封入してリチウムイオン電池を作製した。このリチウムイオン電池に対し、電圧範囲3.0Vから4.1Vで充放電を2サイクル実施した後、4.1Vまで充電し、満充電状態とした。そして、アルゴン雰囲気下で満充電状態の電池を開封して溶液Aを1.268mL(非水系二次電池の電解液の体積[mL]に対して不活性化剤が280%、非水系二次電池の満充電時の電池容量[Ah]あたりレドックスシャトル剤が0.004mol/Ah)注入し、電池を再度封じて、温度20℃で電圧変化を測定した。また、不活性化後のリチウムイオン電池をアルゴン雰囲気下で解体し、負極を取り出した。リチウムイオン電池の電解液と同様に調製した電解液を入れたビーカー内に負極と金属リチウムとを静置し、負極と金属リチウムとの間の電圧をテスターで測定し、それをLi基準の負極電位とした。
【0053】
[実験例2]
(不活性化液の調製)
ECとDMCとEMCとをEC/DMC/EMC=3/4/3の体積比で混合した混合溶媒に、メチルビオロゲンを0.05mol/Lの濃度となるように溶解させた。こうして、実験例2の不活性化液を得た。以下、この不活性化液を「溶液B」とも称する。
【0054】
(不活性化液の電気化学測定)
溶液Bに対してLiPF6を濃度1mol/Lになるように溶解させ、CVの測定溶液とした。CV測定には実験例1と同様の三極式H型セルを使用し、不活性化液の開回路電位と、レドックスシャトル剤の酸化還元電位を求めた。測定温度、電位掃引速度、電位範囲は実験例1と同様とし、電位掃引方向のみ逆にした。すなわち、開回路電位から1.5V(vs.Li/Li+)まで電位を低下させ、電位掃引方向を転換し、3.5V(vs.Li/Li+)まで電位を上昇させ、再度掃引方向を転換し、開回路電位まで掃引させた。
【0055】
(非水系二次電池の不活性化)
溶液Aではなく溶液Bを用いた以外は、実験例1と同様に非水系二次電池の不活性化挙動を評価し、不活性化後の負極電位を求めた。
【0056】
[実験例3]
(不活性化液の調製)
不活性化液の調製に、THFではなく、ECとDMCとEMCとをEC/DMC/EMC=3/4/3の体積比で混合した混合溶媒を用いた以外は、実験例1と同様に不活性化液を得た。以下、この不活性化液を「溶液C」とも称する。
【0057】
(不活性化液の電気化学測定)
溶液Aではなく溶液Cを用いた以外は、実験例1と同様にして、不活性化液の開回路電位と、レドックスシャトル剤の酸化還元電位を求めた。
【0058】
(非水系二次電池の不活性化)
溶液Aではなく溶液Cを用いた以外は実験例1と同様に非水系二次電池の不活性化挙動を評価した。
【0059】
[実験結果]
実験例1,2の不活性化後の電池について、負極電位を確認したところ、実験例1ではLi基準電位で約2.4V、実験例2ではLi基準電位で約2.7Vであり、理論通り負極電位が3.0V未満となることが確認された。このことから、実験例3でも負極電位が3.0V未満となると推察され、実験例1~3の溶液A~Cは、電池の不活性化液として用いた場合に負極集電箔の銅の溶出を抑制することができると推察された。
【0060】
図4~6に、実験例1~3の不活性化液(溶液A、B、C)のCV測定結果を示した。図5に示すように、還元状態でないメチルビオロゲン(溶液B)を用いた実験例2の不活性化液では、開回路電位が3.3V(vs.Li/Li+)付近であり、2.1V(vs.Li/Li+)付近および2.6V(vs.Li/Li+)付近で2段階の酸化反応を示す二つのピークが確認された。
【0061】
図4に示すように、実験例1の不活性化液である溶液Aの開回路電位は2.0V(vs.Li/Li+)であり、溶液Bの開回路電位に比べて低い値を示した。また、溶液Aにおいて開回路電位から電位を徐々に高くすると、2.1V(vs.Li/Li+)付近および2.6V(vs.Li/Li+)付近で、メチルビオロゲンの二段階の酸化反応に対応する二つのピークが確認された。溶液Bに比べて開回路電位が低下したことと、開回路電位から電位を上げた時に二段階の酸化反応が進行したことから、開回路状態の溶液A中にはメチルビオロゲンが2電子還元体として存在すると推察された。また、電位を3.5V(vs.Li/Li+)まで上昇させた後、電位掃引方向を転換して電位を徐々に低下させると、2.5V(vs.Li/Li+)および2V(vs.Li/Li+)付近でメチルビオロゲンの二段階の還元反応に対応する二つのピークを示した。従って、ビオロゲン化合物の2電子還元体の酸化還元電位は、(酸化状態の)ビオロゲン化合物の酸化還元電位と等しいと推察された。
【0062】
図6に示すように、実験例3の不活性化液である溶液Cの開回路電位は2.5V(vs.Li/Li+)であり、溶液Bに比べて低下したものの、溶液Aよりは高い値を示した。また、溶液Cにおいて開回路電位から電位を徐々に高くしたとき、メチルビオロゲンの酸化反応に対応するピークは確認されなかった。さらに、電位が3.5V(vs.Li/Li+)に到達した後、電位を徐々に低下させると、2.5V(vs.Li/Li+)および2.0V(vs.Li/Li+)付近でメチルビオロゲンの還元反応に対応する二つのピークが確認された。以上より、溶液Cでは、メチルビオロゲンは部分的に一電子還元されているものの、多くは酸化状態として存在すると推察された。
【0063】
上述の通り、THF(エーテル化合物)を溶媒に用いた実験例1と、ECとDMCとEMCとの混合溶媒(いずれもカーボネート化合物)を用いた実験例3とで、メチルビオロゲンの還元生成物が異なるものとなった。この理由は、溶媒とメチルビオロゲンやメチルビオロゲンの還元体との相互作用の違い等に起因して、メチルビオロゲンやメチルビオロゲンの還元体の安定性が異なるためであると推察された。なお、J. Org. Chem. 52(1987)2779-2789 によれば、エーテル化合物のほか、ニトリル化合物を溶媒に用いても、ビオロゲン化合物の2電子還元体が安定に存在すると推察された。
【0064】
図7に、実験例1~3の不活性化液(溶液A、B、C)による電池の放電挙動を示した。溶液Aを用いた実験例1では、添加後に電池の放電が進行して44時間後にはSOC(State of charge)は0%となり、さらに57時間後には電池電圧が0Vになった。一方、溶液B及び溶液Cを用いた実験例2及び実験例3では、溶液Aと同様に放電が進行したものの電池電圧が1Vを境に放電速度が急激に低下した。以上より、溶液A~Cは電池の不活性化液として機能するが、溶液B、Cに比べて溶液Aを用いた場合、放電末期の放電速度が大きく、電池を0V付近まで迅速に放電させることができることがわかった。
【0065】
溶液Aを用いた場合の放電末期における放電速度の増大は、放電末期における電池電圧の低下が、主に正極の放電による正極電位の低下によることと関係すると推察された。下記の反応式(3)に示すように、正極の放電反応では還元状態のレドックスシャトル剤が反応物となるため、メチルビオロゲンの2電子還元体を含む溶液Aを不活性化液として用いることで、正極の放電速度が増大し、放電末期における放電速度が増大したと推察された。
【0066】
【化8】
【0067】
溶液Cを用いた実験例3では、溶液Bを用いた実験例2と同様に放電末期に放電速度が低下した。これは、溶液Cにおいてメチルビオロゲンは部分的に還元されているものの多くは酸化状態のままであるためであると推察された。
【0068】
表1に、実験例1~3の溶液A~Bについて、メチルビオロゲンの状態、酸化還元電位、開回路電位、不活性化液としての性能、不活性化後の負極電位をまとめた。いずれも、負極電位が低く保たれるが、放電末期の放電速度を大きくして迅速に0Vまで放電させる観点からは、不活性化液に含まれるメチルビオロゲンが2電子還元されていることが望ましいことがわかった。なお、不活性化液に含まれるメチルビオロゲンの酸化還元状態は、不活性化液の開回路電位から評価可能であると推察された。そして、不活性化液の開回路電位が2.0V(vs.Li/Li+)付近の場合、溶液中にメチルビオロゲンの二電子還元体が存在するため、電池の不活性化液として用いた場合に迅速に0Vまで放電可能であると推察された。
【0069】
【表1】
【0070】
また、CV測定により示されたように、溶液Aは3.0V(vs.Li/Li+)以下の酸化還元電位を示すため、不活性化液として用いた場合に負極集電箔の銅の溶出を抑制することができることがわかった。以上より、メチルビオロゲンの二電子還元体を含む溶液Aは、不活性化液として用いた場合に電池を0Vまで迅速に放電させると同時に、不活性化時の銅の溶出を抑制することができることがわかった。
【0071】
なお、ビオロゲン化合物としては、実験例1~3で用いたメチルビオロゲンの他に、式(v1)のRやR’として様々な炭化水素基を持つ誘導体が存在する。それらはいずれも、メチルビオロゲンと同様に二段階の還元により中性状態の分子となる。以下の参考例1では、ビオロゲン化合物は、式(v1)のRやR’の構造によらず2.5V(vs.Li/Li+)および2.0V(vs.Li/Li+)付近の酸化還元電位を示すことを確認した。また、上述の通り、ビオロゲン化合物の2電子還元体の酸化還元電位は、ビオロゲン化合物の酸化還元電位と一致すると推察された。従って、ビオロゲン化合物の2電子還元体は、RやR’の構造によらず、メチルビオロゲンの2電子還元体と同様の効果を示すと推察された。
【0072】
[参考例1]
種々のビオロゲン化合物(カチオン)に関し、密度汎関数法により酸化還元電位を計算した。酸化体のギブズ自由エネルギー(ΔGOX)と還元体のギブズ自由エネルギー(ΔGRED)をそれぞれ計算し、一電子還元を想定して下記数式(1)から対象の酸化還元電位Eabsを絶対電位として算出した。
abs=(ΔGOX-ΔGRED)/F ・・・数式(1)
数式(1)中、Fはファラデー定数96485C/molである。
【0073】
得られた絶対電位から下記数式(2)を用いてリチウム電極基準の酸化還元電位ERedOxを計算した。
RedOx[V vs.Li+/Li]=Eabs-1.4 ・・・数式(2)
【0074】
自由エネルギーは密度汎関数法を用いて計算した。Gaussian09 Revision Eパッケージで汎関数及び基底関数にB3LYP及び6-311++GG(d,p)を用い、連続分極モデルにより溶媒の誘電率を29.11として溶媒和効果を取り入れた。
【0075】
表2に、参考例1のLi基準電位での酸化還元電位の計算結果を示した。なお、表2では、2段階目(低電位側)の酸化還元電位のみを示した。メチルビオロゲンの酸化還元電位の計算結果は、実験例2の実験結果(図5)に概ね一致した。参考例1の計算結果から、RやR’の構造によらず、酸化還元電位が同程度の値を示すと推察された。表3に、J. Mater. Chem. A, 7 (2019) 23337-23360に開示されたビオロゲン化合物の酸化還元電位を示した。表3の酸化還元電位は、いずれもLi基準電位に換算すると3.0V未満であった。以上より、ビオロゲン化合物やその2電子還元体であれば、RやR’の構造によらず、酸化還元電位が3.0V未満であると推察された。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電池産業の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
20 非水系二次電池、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7