(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】形状可変構造体
(51)【国際特許分類】
F16F 7/00 20060101AFI20240925BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F16F7/00 C
F16F7/12
(21)【出願番号】P 2021042879
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2023-03-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 直
(72)【発明者】
【氏名】笹川 崇
(72)【発明者】
【氏名】西垣 英一
(72)【発明者】
【氏名】梅本 和彦
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074851(JP,A)
【文献】特表2004-526102(JP,A)
【文献】実開平02-139383(JP,U)
【文献】実公昭50-013640(JP,Y1)
【文献】特開2016-190529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を導入及び排出可能とされた袋体と、
前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、
を備え、
前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形
し、変形された形を保持可能とされ、
圧縮力が作用した際には、前記骨格体及び前記袋体が、保持された前記骨格体の形に応じて異なる形状に変化し、かつ、前記圧縮力が作用する方向からみた前記袋体の面積が
、保持された前記骨格体の形に応じて大きく又は小さく変化する、
形状可変構造体。
【請求項2】
気体を導入及び排出可能とされた袋体と、
前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、
を備え、
前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形可能とされ、
前記骨格体の変形に応じて、所定方向からみた前記袋体の面積が変化すると共に、
前記骨格体は、ヒンジで連結された複数の平板によって形成され、
前記平板は、少なくとも2枚が前記袋体と接合され、
前記袋体の内部に充填されている前記気体の排出に伴って、前記袋体と接合された前記少なくとも2枚の平板が相対変位して前記骨格体を変形させる、
形状可変構造体。
【請求項3】
前記骨格体は、
前記気体の体積に応じて、圧縮力が作用した際の変形特性が変化し、
前記変形特性は、
前記圧縮力が作用する方向における前記骨格体の剛性が所定値以上となる変形特性と、
前記圧縮力が作用する方向における前記骨格体の剛性が所定値未満となる変形特性と、
を含む、請求項1又は2に記載の形状可変構造体。
【請求項4】
前記骨格体が塑性変形可能とされている、
請求項1~3の何れか1項に記載の形状可変構造体。
【請求項5】
前記袋体の内部には、気体が封入されたエアバッグが配置され、
前記エアバッグに封入された気体は、所定値以上の圧縮力が作用した際に前記エアバッグから排出される、
請求項1~4の何れか1項に記載の形状可変構造体。
【請求項6】
気体を導入及び排出可能とされた袋体と、
前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、
を備え、
前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形可能とされ、
前記骨格体の変形に応じて、所定方向からみた前記袋体の面積が変化すると共に、
前記骨格体を所定の形状に変形させる変形機構を備え、
前記変形機構は、
前記骨格体が平板状に形成された初期形状から前記所定の形状に変形させて前記袋体の内部へ気体を導入する、
形状可変構造体。
【請求項7】
前記変形特性は、
圧縮力によって密集するように変形して剛性が所定値以上となる変形特性と、
圧縮力によって
圧縮方向と交わる方向における端部同士が離れるように変形して剛性が所定値以下となる変形特性である、請求項3に記載の形状可変構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状可変構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車外用エアバッグが示されている。この車外用エアバッグは、フロントピラーの下端側からフロントピラーに沿って上方に延びるように展開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1における車外用エアバッグのように、気体によって変形する展開構造体の形状は、一般的に、収容時の形状及び当該構造体の内部に気体が十分に充填された際(最大展開時)の形状のみに限定される。すなわち、形状が限定的である。
【0005】
この場合、例えば展開構造体の最大展開時の形状が小さいと、衝突物が展開構造体に衝突しないで、車に直接衝突する可能性がある。また、展開構造体の厚みが薄いと、高重量の衝突物に対する形状可変構造体の耐久性が不足する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、形状を調整できる形状可変構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の形状可変構造体は、気体を導入及び排出可能とされた袋体と、前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、を備え、前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形し、変形された形を保持可能とされ、圧縮力が作用した際には、前記骨格体及び前記袋体が、保持された前記骨格体の形に応じて異なる形状に変化し、かつ、前記圧縮力が作用する方向からみた前記袋体の面積が、保持された前記骨格体の形に応じて大きく又は小さく変化する。
【0008】
請求項1の形状可変構造体では、袋体の内部に骨格体が収容されている。骨格体は、袋体の内部に充填されている気体の体積に応じて所定の形に変形できる。この骨格体は、袋体と接合されているため、袋体も骨格体の変形に伴って変形できる。
【0009】
すなわち、袋体への気体の導入量又は排出量を調整することで、形状可変構造体の形状を調整できる。
【0010】
この形状可変構造体を、例えば被衝突物に対する衝突物の緩衝構造として用いる場合は、一例として、衝突物の衝突方向に対する面積が大きくなるように袋体を変形させる。これにより、衝突物が袋体に衝突する蓋然性が高くなるため、緩衝効果を発揮し易い。
【0011】
また、別の一例として、衝突物の衝突方向に対する厚みが大きくなるように袋体を変形させる。これにより、高重量の衝突物に対する形状可変構造体の耐久性が高くなる。
【0012】
請求項2の形状可変構造体は、気体を導入及び排出可能とされた袋体と、前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、を備え、前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形可能とされ、前記骨格体の変形に応じて、所定方向からみた前記袋体の面積が変化すると共に、前記骨格体は、ヒンジで連結された複数の平板によって形成され、前記平板は、少なくとも2枚が前記袋体と接合され、前記袋体の内部に充填されている前記気体の排出に伴って、前記袋体と接合された前記少なくとも2枚の平板が相対変位して前記骨格体を変形させる。
【0013】
請求項2の形状可変構造体では、袋体の内部に充填されている気体を排出すると、袋体と骨格体との間の気体が減少し、袋体は骨格体に密着するように変形する。このとき、平板の少なくとも2枚が袋体と接合されているため、袋体と接合された平板が袋体から引張力を受ける。このとき平板同士がヒンジを中心に相対的に回転し、袋体と接合された少なくとも2枚の平板が相対変位することで、骨格体が変形する。
【0014】
請求項3の形状可変構造体は、請求項1又は2に記載の形状可変構造体において、前記骨格体は、前記気体の体積に応じて、圧縮力が作用した際の変形特性が変化し、前記変形特性は、前記圧縮力が作用する方向における前記骨格体の剛性が所定値以上となる変形特性と、前記圧縮力が作用する方向における前記骨格体の剛性が所定値未満となる変形特性と、を含む。
【0015】
請求項3の形状可変構造体では、気体の体積によって骨格体の変形特性を変化させることができる。この変形特性は、圧縮力が作用した際に、骨格体の剛性が所定値以上となる変形特性とすることができる。このため、高重量の衝突物に対する形状可変構造体の耐久性が高くなる。
【0016】
また、この変形特性は、圧縮力が作用した際に、骨格体の剛性が所定値未満となる変形特性とすることができる。このため、軽量の衝突物に骨格体から作用する荷重を低減できる。
【0017】
このように、形状可変構造体の剛性を変化させることで、衝突物の種類に応じた様々な構造体を用いなくても、様々な物質の衝突に適応することができる。
【0018】
請求項4の形状可変構造体は、請求項1~3の何れか1項に記載の形状可変構造体において、前記骨格体が塑性変形可能とされている。
【0019】
請求項4の形状可変構造体では、骨格体が塑性変形可能とされている。これにより、形状可変構造体に衝突物が衝突した際に衝突エネルギーを吸収できる。
【0020】
請求項5の形状可変構造体は、請求項1~4の何れか1項に記載の形状可変構造体において、前記袋体の内部には、気体が封入されたエアバッグが配置され、前記エアバッグに封入された気体は、所定値以上の圧縮力が作用した際に前記エアバッグから排出される。
【0021】
請求項5の形状可変構造体では、袋体の内部に、所定値以上の圧縮力が作用した際に気体が排出されるエアバッグが配置されている。これにより、形状可変構造体に衝突物が衝突した際に衝突エネルギーを吸収できる。
【0022】
請求項6の形状可変構造体は、気体を導入及び排出可能とされた袋体と、前記袋体の内部に収容され、前記袋体と接合された骨格体と、を備え、前記骨格体は、前記袋体の内部に充填されている前記気体の体積に応じた所定の形に変形可能とされ、前記骨格体の変形に応じて、所定方向からみた前記袋体の面積が変化すると共に、前記骨格体を所定の形状に変形させる変形機構を備え、前記変形機構は、前記骨格体が平板状に形成された初期形状から前記所定の形状に変形させて前記袋体の内部へ気体を導入する。
【0023】
請求項6の形状可変構造体では、変形機構によって、骨格体が平板状に形成された初期形状から所定の形状に変形する。このため、初期状態における形状可変構造体の容積を、袋体の内部に気体が導入されている場合と比較して、少なくできる。
請求項7の形状可変構造体は、請求項3に記載の形状可変構造体において、前記変形特性は、圧縮力によって密集するように変形して剛性が所定値以上となる変形特性と、圧縮力によって圧縮方向と交わる方向における端部同士が離れるように変形して剛性が所定値以下となる変形特性である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、形状を調整できる形状可変構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る形状可変構造体の一例を示す斜視図である。
【
図2】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成するセルを連結した状態を示す斜視図であり、(B)はセルを分割した状態を示す斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成するセルの一例を示した斜視図であり、(B)は上面図であり、(C)は側面図であり、(D)は底面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成する骨格体を平板状に配置した例を示す斜視図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成するセルの他の例を示した斜視図であり、(B)は上面図であり、(C)は側面図であり、(D)は底面図である。
【
図6】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成するセルを連結した状態の変形例を示す斜視図であり、(B)は骨格体を一方向に連結して形成した変形例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成する骨格体を二方向に連結して形成した変形例を示す斜視図である。
【
図8】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成するセルの初期状態を示す側面図であり、(B)は袋体から気体を排出した状態を示す側面図であり、(C)は袋体から気体をさらに排出した状態を示す側面図である。
【
図9】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成する2種類の骨格体の初期状態を部分的に示す側面図であり、(B)は袋体から気体を排出した状態を示す側面図であり、(C)は袋体から気体をさらに排出した状態を示す側面図である。
【
図10】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体の袋体から気体を排出した状態の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面の模式図であり、(C)は形状可変構造体に圧縮力が作用した状態を示す断面の模式図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る形状可変構造体の変形特性を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施形態に係る形状可変構造体を構成する袋体から気体を排出した状態における骨格体の状態の一例を示す側面図である。
【
図13】(A)は本発明の実施形態に係る形状可変構造体の袋体から気体を排出した状態の別の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面の模式図であり、(C)は形状可変構造体に圧縮力が作用した状態を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る形状可変構造体について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0027】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0028】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0029】
<形状可変構造体>
図1には、本発明の実施形態に係る形状可変構造体の一例である構造物10が示されている。構造物10は、一例として車両に取り付られ、車両の外側に展開させて、衝突物と衝突させる衝突緩衝部材である。
【0030】
構造物10は、気体を導入及び排出可能とされた袋体20と、袋体20の内部に収容され、袋体20と接合された骨格体30と、を備えている。骨格体30は、袋体20の内部に充填されている気体の体積に応じて、所定の形に変形可能とされている。
【0031】
気体は、通気口12を通じて、袋体20の内部に導入され、又は、袋体20の内部から排出される。通気口12は、図示しない気体導入装置と接続されている。この気体導入装置は、袋体20の内部に導入する気体の体積及び袋体20の内部から排出する気体の体積を自由に調整できる。
【0032】
気体導入装置は、高圧ボンベ及び真空引き用のボンベを備えるものとする。このうち、高圧ボンベから、ポンプを用いて袋体20の内部に空気を導入する。また、袋体20の内部から、ポンプを用いて、真空引き用のボンベへ、空気を排出する。ポンプとしては、コンプレッサなどを用いることができる。
【0033】
なお、本発明における「気体」としては、空気の他、窒素、二酸化炭素等、各種の気体を適用できる。これらの気体は、構造物10の用途に応じて適宜選択できるが、例えば可燃性を有さない不活性ガスを用いることが好ましい。
【0034】
(セル)
構造物10は、
図2(A)に示すセル14が、複数組み合わされて形成されている。つまり、このセル14を、X方向、Y方向及びZ方向に複数個連続して配置し、かつ、互いに隣り合うセル14同士を接合することで、セル14の複合体である構造物10(
図1参照)が形成されている。
【0035】
それぞれのセル14は、
図2(B)に示すように、2つのセル14A、14Bを組み合わせて形成されている。セル14A、14Bは、例えばそれぞれのX方向における端部J同士が互いに接着、溶着等によって接合されることで、一体化されている。なお、セル14A、14Bを接合する場所は、後述するセル14A、14Bの変形に影響を与えない場所であれば、適宜選択することができる。
【0036】
図3(A)~(D)に示すように、セル14Aは、気体を導入及び排出可能とされた袋体22と、袋体22の内部に収容され、袋体22と接合された骨格体32と、を備えて形成されている。
【0037】
気体は、通気口12Aを通じて、袋体22の内部に導入され、又は、袋体22の内部から排出される。通気口12Aと、袋体22の集合体である袋体20の通気口12と、の接続関係については後述する。
【0038】
骨格体32は、ヒンジHで連結された複数の平板32A、32B、32Cを組み合わせて形成されている。
【0039】
具体的には、骨格体32の中央部には、一対の台形の平板32Aが配置され、それぞれの平板32Aの上底(平行な2辺のうち短い辺)を形成する辺同士が、ヒンジHで連結されている。
【0040】
また、それぞれの平板32Aにおける脚を形成する両辺には、それぞれ平行四辺形の平板32BがヒンジHで連結されている。Y方向に互いに隣り合う平板32B同士も、ヒンジHで連結されている。
【0041】
さらに、平板32Bにおいて、平板32Aと連結された辺の対辺に、台形の平板32CがヒンジHで連結されている。Y方向に互いに隣り合う平板32C同士も、ヒンジHで連結されている。
【0042】
なお、これらの平板32A、32B、32Cは、鋼、アルミ、各種合金等の金属素材や、塩化ビニルやアクリルなどの樹脂素材など、各種の材料を用いて形成できる。
【0043】
ヒンジHは、平板32A、32B、32Cを互いにバラバラに形成し、これらを丁番やテープ等で繋ぐことで構成してもよい。また、ヒンジHは、平板32A、32B、32Cを一体に形成し、これらの境界部分の厚みを薄くしたり低剛性にしたりして、弾性変形し易くすることで構成してもよい。
【0044】
このように、複数の平板32A、32B、32CをヒンジHで連結することにより、各平板32A、32B、32Cは、ヒンジHを軸として相対的に回転変位することができる。これにより、骨格体32が変形する。
【0045】
例えば、骨格体32は、
図4に示したように、各平板32A、32B、32Cを全て同一の面内に沿って配置することで、平板状に形成することができる。この状態から、ヒンジHの部分を折り曲げることで、骨格体32は、
図3(A)~(D)に示す形状となる。
【0046】
ここで、
図3(A)~(D)に示すように、骨格体32の「一方」の面は、袋体22と接合されている。具体的には、骨格体32における平板32Aの一方の面と、袋体22において当該面と面する部分とが、接着剤Gによって互いに接合されている。
【0047】
また、骨格体32の「他方」の面も、袋体22と接合されている。具体的には、骨格体32における平板32Cの一方の面(袋体22と接合された平板32AとZ方向において逆側の面)と、袋体22において当該面と面する部分とが、互いに接合されている。
【0048】
さらに、袋体22に収容された状態において、骨格体32は、ヒンジ部分が折り曲げられた状態で配置され、立体形状とされている。この立体形状の骨格体32における平板32A及び平板32Cが、袋体22と接合されているため、骨格体32は、袋体22の内部において、立体形状で保持される。
【0049】
骨格体32を、
図3(A)~(D)に示す立体形状から
図4に示したような平板状の形状とするためには、一例として、
図3(C)に示すように、X方向の両側に配置された平板32CをX方向において離れる方向に引っ張って(引張力Tによって)骨格体32を変形させる必要がある。
【0050】
しかしながら、平板32Cは接着剤Gによって袋体22に接合されているため、袋体22の張力により、変形が抑制される。これにより、骨格体32は、袋体22の内部で、立体形状で保持される。
【0051】
図5(A)~(D)に示すように、セル14Bは、気体を導入及び排出可能とされた袋体24と、袋体24の内部に収容され、袋体24と接合された骨格体34と、を備えて形成されている。
【0052】
気体は、通気口12Bを通じて、袋体24の内部に導入され、又は、袋体24の内部から排出される。通気口12Bと、袋体24の集合体である袋体20の通気口12と、の接続関係については後述する。
【0053】
骨格体34は、ヒンジHで連結された複数の平板34A、34B、34Cを組み合わせて形成されている。
【0054】
平板34A、34B、34Cは、骨格体32の平板32A、32B、32Cと同一形状とされている。なお、骨格体32においては平板32Aの上底を形成する辺同士が、ヒンジHで連結されているのに対して、骨格体34においては、平板34Aの下底(平行な2辺のうち長い辺)を形成する辺同士が、ヒンジHで連結されている。
【0055】
セル14Bのその他の構成については、セル14Aと同様であるため、説明を省略する。
【0056】
セル14Aとセル14Bとは、
図2(A)、(B)に示すように、それぞれに収容された骨格体32における平板32Cと、骨格体34における平板34Cと、が互いに接するように(袋体22、24及び接着剤Gを介して接するように)配置される。これにより、平板32Aと平板34Bとの間には、隙間が形成される。
【0057】
(通気口)
上述したように、
図1に示す構造物10は、
図2(A)に示すセル14が、複数組み合わされて形成されている。このため、構造物10を形成する各セル14における通気口12A、12Bをチューブ状に形成して束ねることで、
図1に示す通気口12を形成することができる。なお、以下の説明においては、通気口12A、12Bを総称して通気口12と称す場合がある。
【0058】
ここで、構造物10を形成するセル14の数量は任意であるが、セル14の数量が多い場合、構造物10における通気口12の数量が多くなり、製造効率が悪くなる。このため、本実施形態においては、通気口12の数量を少なくするための各種の構成を採用することができる。
【0059】
一例として、セル14Aの通気口12Aと、セル14Bの通気口12Bとは、
図6(A)に示す通気口12Cのように、1つにまとめて形成してもよい。この場合、セル14Aにおける袋体22の内部と、セル14Bにおける袋体24の内部とを連通する連通孔12Dを設けて、袋体22と袋体24との間で気体を流通可能とする。
【0060】
さらに、袋体22の内部と袋体24の内部とを連通したセル14を、Z軸方向に隣接して配置した場合に、これらの隣接するセル14の内部同士を連通してもよい。このように、Z軸方向に連続して配置されるセル14(セル14における袋体22、24)の内部を適宜連通することで、通気口12の数量を減らすことができる。
【0061】
別の一例として、
図6(B)に示すセル14Cのように、X軸方向に長尺に形成した骨格体36を用いてもよい。骨格体36は、
図3(A)に示す骨格体32をX方向に繋げた形状の骨格体である。骨格体36を収容する袋体26は、袋体22よりX方向に長尺である。このため、セル14Cは、セル14AよりX方向に長尺である。
【0062】
なお、図示は省略するが、
図5(A)に示す骨格体34をX方向に繋げた形状の骨格体及びこの骨格体を収容した袋体を形成してもよい。このように、骨格体及び袋体をX方向に長尺とすることで、通気口12の数量を減らすことができる。すなわち、X方向に連続して配置されるセル14の数量を減らして、通気口12の数量を減らすことができる。
【0063】
さらに別の一例として、
図7に示すセル14Dのように、X軸及びY方向に長尺に形成した骨格体38を用いてもよい。骨格体38は、
図3(A)に示す骨格体32をX方向及びY方向に繋げた形状の骨格体である。骨格体38を収容する袋体28は、袋体22よりX方向及びY方向に長尺である。このため、セル14Dは、セル14AよりX方向及びY方向に長尺である。
【0064】
また、図示は省略するが、
図5(A)に示す骨格体34をX方向及びY方向に繋げた形状の骨格体及びこの骨格体を収容した袋体を形成してもよい。このように、骨格体及び袋体をX方向及びY方向に長尺とすることで、通気口12の数量を減らすことができる。
【0065】
なお、図示は省略するが、
図3(A)、
図5(A)に示す骨格体32、34をY方向に繋げた形状の骨格体及びこの骨格体を収容した袋体を形成してもよい。このように、骨格体及び袋体をY方向に長尺とすることで、通気口12の数量を減らすことができる。
【0066】
また、骨格体32、34を適宜繋げて形成することにより、骨格体の製造、袋体の製造及びセルの製造が容易になる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態における骨格体の形状は、骨格体32、34、36、38のように適宜自由な大きさを採用することができる。同様に、本実施形態における袋体も、これらの骨格体が収容される大きさの範囲内で、適宜自由な大きさを採用することができる。
図1における骨格体30及び袋体20は、これらの様々な実施形態に係る骨格体及び袋体を総称するものである。
【0068】
(気体の体積に応じた骨格体の変形)
図8(A)~(C)には、袋体22に封入された気体を排出して骨格体32を変形させる様子が示されている。骨格体32は、袋体22の内部に充填されている気体の体積に応じて、所定の形に変形して保持される。
【0069】
具体的には、
図8(A)に示された初期状態(初期形状)において、通気口12Aを通じて袋体22の内部の気体を排出すると、
図8(B)に示すように、袋体22が骨格体32に近づくように変形する。このとき、袋体22においてX方向の両側に配置された平板32Cの間の部分が、矢印N1で示すように、平板32Aへ向かって移動する。
【0070】
袋体22の移動に伴って、矢印N2で示すように、X方向における両側の平板32Cが、X方向において近づく方向に引っ張られて移動する。これにより、骨格体32が変形する。
【0071】
図8(B)に示された状態では、骨格体32における平板32Cの内側の端部(X方向における平板32A寄りの端部)32CEは、平板32Aの上底の端部32AEより外側に配置されている。
【0072】
さらに気体の排出を続けると、
図8(C)に示すように、骨格体32がさらに変形する。この図に示された状態では、平板32Cの内側の端部32CEは、平板32Aの上底の端部32AEより内側に配置されている。
【0073】
図8(B)、(C)に示された各状態で気体の排出を停止して、袋体22の内部の気体の出入りが無い状態を保持すると、骨格体32の形状は、これらの形状で保持される。
【0074】
なお、
図8(A)~(C)に示された状態変化は不可逆的ではない。つまり、
図8(C)に示された状態から、袋体22に空気を導入すれば、
図8(B)及び
図8(A)の状態とすることもできる。
【0075】
図5に示された袋体24に封入された気体を吸引して骨格体34を変形させる場合も、骨格体34は、袋体24の内部に充填されている気体の体積に応じて、所定の形に変形して保持される。変形の原理は骨格体32及び袋体22と同様であり、説明は省略する。
【0076】
なお、骨格体32及び骨格体34の形状は、本発明における骨格体の形状の一例であり、袋体の内部に充填される気体の体積に応じて変形できる構造であれば、各種の展開形状を採用することができる。
【0077】
図3(A)及び
図5(A)に示された初期状態において、袋体22及び袋体24に充填された気体の体積は略同一である。また、単位時間あたりに袋体22及び袋体24から排出される気体の体積も略同一である。さらに、単位時間あたりに袋体22及び袋体24に導入される気体の体積も略同一である。つまり、袋体22及び袋体24には、常に略等しい体積の気体が存在する。
【0078】
このため、
図9(A)~(C)に示すように、袋体22に収容された骨格体32及び袋体24に収容された骨格体34は、同じタイミングで、同様に変形する。
【0079】
なお、
図9(A)~(C)においては、骨格体32及び骨格体34の構成を分かりやすくするため、袋体22及び袋体24の図示は省略されている。また、
図9(A)~(C)に示された骨格体32は、それぞれ、
図8(A)~(C)に示された骨格体32と同形状とされている。
【0080】
このため、
図9(B)に示された状態では、骨格体34における平板34Cの内側の端部(X方向における平板34A寄りの端部)34CEは、平板34Aの上底の端部34AEより外側に配置されている。
【0081】
同様に、
図9(C)に示された状態では、平板34Cの内側の端部34CEは、平板34Aの上底の端部34AEより内側に配置されている。
【0082】
(骨格体の変形特性)
図10(A)には、
図9(B)に示された状態の骨格体32及び骨格体34を組み合わせて形成された骨格体30が示されている。なお、
図10(A)には、袋体22、袋体24及びこれらの複合体である袋体20の図示は省略されている。
【0083】
図10(B)には、
図10(A)に示された骨格体30の断面図が模式的に示されている。骨格体30の点Pを、Z方向に沿って圧縮力C(N)で押圧すると、骨格体30は
図10(C)に示すように変形し、点Pは、Z方向に沿ってM1(m)移動する。
【0084】
このとき、
図9(B)に示された骨格体32は、端部32CEがX方向において離れるように変形する。同様に、骨格体34は、端部34CEがX方向において離れるように変形する。このため、
図10(C)に示すように、骨格体30は、Z方向における厚みが薄くなるように変形すると共に、X方向及びY方向における長さが大きくなるように(Z方向からみた面積が大きくなるように)矢印N3で示した方向へ変形する。
【0085】
この変形における骨格体30の変形特性が、
図11の直線L1に示されている。直線L1によって示される骨格体30の変形特性は、圧縮力が作用する方向(Z方向)における剛性が所定値未満となる変形特性である。
【0086】
「圧縮力が作用する方向(Z方向)における剛性」とは、Z方向において骨格体30を単位長さ変位させるために必要な荷重(圧縮力)であり、剛性K1=(C/M1)で示される。
【0087】
また、「剛性が所定値未満」とは、剛性K1が、直線L3で示される剛性K3より小さいことを示している。直線L3で示される剛性K3とは、骨格体32及び骨格体34が、
図12に示された状態のときの骨格体30の剛性である。
【0088】
図12に示された状態では、骨格体32における平板32Cの内側の端部(X方向における平板32A寄りの端部)32CEは、平板32Aの上底の端部32AEと、X方向において等しい位置に配置されている。
【0089】
同様に、骨格体34における平板34Cの内側の端部(X方向における平板34A寄りの端部)34CEは、平板34Aの上底の端部34AEと、X方向において等しい位置に配置されている。
【0090】
なお、
図10(C)において、骨格体30はZ方向に対して一様に変形しているが、押圧力を作用させる押圧体(衝突物)の形状、大きさ及び剛性によって、骨格体30の変形形状は適宜変化する。
【0091】
同様に、
図13(A)には、
図9(C)に示された状態の骨格体32及び骨格体34を組み合わせて形成された骨格体30が示されている。なお、
図13(A)には、袋体22、袋体24及びこれらの複合体である袋体20の図示は省略されている。
【0092】
図13(B)には、
図13(A)に示された骨格体30の断面図が模式的に示されている。骨格体30の点Pを、Z方向に沿って圧縮力C(N)で押圧すると、骨格体30は
図13(C)に示すように変形し、点Pは、Z方向に沿ってM2(m)移動する。
【0093】
このとき、
図9(C)に示された骨格体32は、X方向における両側の端部32CE同士が近づくように変形する。同様に、骨格体34は、X方向における両側の端部34CE同士が近づくように変形する。
【0094】
このため、
図13(C)に示すように、骨格体30は、Z方向における厚みが薄くなるように変形すると共に、X方向及びY方向における長さが小さくなるように(Z方向からみた面積が小さくなるように)矢印N4で示した方向へ変形する。
【0095】
つまり、この変形においては、圧縮力C(N)によって骨格体30が密集するように変形し、圧縮力C(N)の作用する方向に対して束状(圧縮ストラット状)に変形する。このため、衝突物の衝突荷重に対して安定した反力を発揮することができる。
【0096】
この変形における骨格体30の変形特性が、
図11の直線L2に示されている。直線L2によって示される骨格体30の変形特性は、圧縮力が作用する方向(Z方向)における剛性が所定値以上となる変形特性であり、剛性K2=(C/M2)で示される。
【0097】
「剛性が所定値以上」とは、剛性K2が、直線L3で示される剛性K3以上であることを示している。
【0098】
また、骨格体30は、塑性変形(弾性変形限界を超えた不可逆的な変形)可能とされている。つまり、例えば
図9(C)に示す骨格体32、34がZ方向にさらに圧縮されることによりZ方向に変形できなくなる。このき、平板32B、34Bが座屈して、
図13(C)に示す骨格体30が圧壊される。この座屈及び圧壊により、衝突エネルギーが吸収され、緩衝効果を発揮する。
【0099】
(袋体の構成材料)
なお、袋体20を形成する材料としては、樹脂製の基布が挙げられる。基布の素材となる樹脂材料は特に制限はなく、どのようなものを用いてもよい。具体的には、汎用プラスチック、汎用エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチック等の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることができ、各種用途に応じて適宜選択することができる。このような熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0100】
このうち、汎用プラスチックとしては、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(MAS樹脂)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(MABS樹脂)及びスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS樹脂)といった芳香族ビニル系樹脂を用いることができる。
【0101】
また、汎用プラスチックとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメタクリル酸、これらの共重合体及びアクリルゴムといったアクリル系樹脂を用いることができる。
【0102】
さらに、汎用プラスチックとしては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体といったシアン化ビニル系樹脂を用いることができる。
【0103】
またさらに、汎用プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、エチレン-プロピレンゴムといったポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0104】
またさらに、汎用プラスチックとしては、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンといったポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール並びにポリエチレンテレフタレートなどを用いることができる。
【0105】
一方、汎用エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン12といったポリアミド、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート並びに超高分子量ポリエチレンなどを用いることができる。
【0106】
また、スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイドといったポリアリーレンスルフィド、ポリアリレート、非晶ポリアリレート、熱可塑性ポリイミド及び液晶ポリエステルといった液晶ポリマーを用いることができる。
【0107】
さらに、スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリテトラフロロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニルといったフッ素樹脂などを用いることができる。
【0108】
また、その他の熱可塑性樹脂として、耐衝繋性ポリスチレン(HIPS)、酸または酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン、酸または酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、イミド基含有ビニル系樹脂、ポリ1, 4-シクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエーテルケトン及びポリエーテルアミドなどを用いてもよい。
【0109】
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂などを用いることができる。
【0110】
なお、袋体20を形成する材料としては、上記で例示した樹脂製の基布の他、合成繊維、天然繊維や鉱物およびカオリン鉱物を用いてもよい。
【0111】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る構造物10では、
図1に示すように、袋体20の内部に骨格体30が収容されている。
【0112】
骨格体30は、
図2(A)、(B)に示す骨格体32、34の集合体であり、これらの骨格体32、34は、袋体22、24の内部に充填される気体の体積に応じて変形し、所定の形に保持される。
【0113】
具体的には、
図8(A)~(C)に示すように、袋体22の内部に充填されている気体を排出すると、袋体22と骨格体32との間の気体が減少し、袋体22は骨格体32に密着するように変形する(矢印N1)。
【0114】
このとき、骨格体32を構成する平板32A、32Cが袋体22と接合されているため、袋体22と接合された平板32Cが袋体22から引張力を受ける。このとき平板32C同士がヒンジHを中心に相対的に回転することで、骨格体32が変形する(矢印N2)。
図5(A)~(D)に示す骨格体34も、同様に変形する。
【0115】
すなわち、袋体22、24への気体の導入量又は排出量を調整することで、構造物10の展開時の形状を調整できる。
【0116】
また、本発明の実施形態に係る構造物10では、
図10~
図13を用いて説明したように、気体の体積によって骨格体30の変形特性を変化させることができる。
【0117】
骨格体30の変形特性としては、
図11の直線L2、
図13(B)、(C)に示すように、圧縮力C(N)が作用した際に、骨格体30の剛性K2=(C/M2)が所定値K3以上となる変形特性とすることができる。このため、高重量の衝突物に対する構造物10の耐久性が高くなる。
【0118】
また、骨格体30は、塑性変形可能とされている。これにより、構造物10に衝突物が衝突した際に、衝突エネルギーを吸収できる。
【0119】
また、骨格体30の変形特性としては、
図11の直線L1、
図10(B)、(C)に示すように、圧縮力C(N)が作用した際に、骨格体30の剛性K1=(C/M1)が剛性の所定値K3未満となる変形特性とすることができる。このため、軽量の衝突物に骨格体30から作用する荷重を抑制できる。
【0120】
また、
図10(B)、(C)に示す変形では、骨格体30は、衝突物の衝突方向(Z方向)に対する面積が大きくなるように袋体20(
図1参照)を変形させる。これにより、衝突物が袋体20に衝突する蓋然性が高くなるため、緩衝効果を発揮し易い。
【0121】
<その他の実施形態>
本発明の実施形態に係る構造物10においては、例えば
図8(A)~(C)に示すセル14Aは、袋体22の内部に骨格体32が収容されて形成されている。この袋体22の内部には、骨格体32以外の物を収容することができる。
【0122】
例えば
図8(A)に二点鎖線で示すように、袋体22の内部には、気体が封入されたエアバッグ40を配置してもよい。エアバッグ40に封入された気体は、所定値以上の圧縮力が作用した際に、エアバッグ40から排出される。
【0123】
エアバッグ40から気体を排出する構成としては、所定値以上の内圧によってエアバッグ40そのものが破裂することにより気体が排出されるものとすることができる。
【0124】
または、エアバッグ40に、エアバッグ40から気体を排出するためのベントホールを設け、所定値以上の内圧によって、このベントホールから気体が排出される機構としてもよい。
【0125】
さらに、ベントホールには、気体が排出される内圧を調整するために、開口径を調整できる機構を適用することもできる。
【0126】
このようなエアバッグ40を適用することにより、構造物10に衝突物が衝突した際に衝突エネルギーを吸収できる。エアバッグ40は、
図10(A)~(C)に示したような骨格体30の剛性が低い場合の変形において、衝突した軽量物を保護する観点から、特に有効である。
【0127】
また、本発明の実施形態において、骨格体32の初期状態は、
図3(A)~(D)に示すように、ヒンジHの部分で平板32A、32B及び32Cが折り曲げられた状態で配置されている。このため、骨格体32は、初期状態において立体形状とされている。
【0128】
しかし、本発明の実施形態においては、骨格体32は、
図4に示すように、初期状態において平板状に配置してもよい。この場合、衝突物の衝突前に、骨格体32を所定の形状、つまり、
図3(A)~(D)に示す立体形状に変形させる変形機構を設けるものとする。
【0129】
変形機構は、骨格体32が平板状に形成された初期形状から所定の形状に変形させて、袋体22の内部へ気体を導入する。変形機構の一例としては、袋体22を、伸縮可能な可撓性の材料を用いて形成する実施形態が挙げられる。つまり、骨格体32が平板状に配置された状態においては、平板32C間の袋体22が引き延ばされた状態で保持される。
【0130】
この状態を維持するために、セル14Aには、Z軸方向の両側から押圧力を作用させる。そして、衝突物の衝突前に、押圧力を開放して、骨格体32を、
図3(A)~(D)に示す立体形状に変形させる。同時に、袋体22の内部へ、気体を導入する。
【0131】
なお、骨格体32を立体形状に変形させるために、例えばX方向における両側の平板32C同士を、バネなどの弾性部材で連結してもよい。弾性部材には、骨格体32が平板状に配置された状態において、平板32C同士を互いに近づける方向の付勢力を付与する。
【0132】
または、ヒンジHを形成する部材を弾性部材で形成し、この弾性部材に対して、骨格体32が平板状に配置された状態において、
図3(A)~(D)に示す立体形状に変形するように付勢力を付与してもよい。
【0133】
さらに、骨格体32を立体形状に変形させるために、骨格体32における平板32A、32B、32C及びヒンジHを、形状記憶合金を用いて一体的に形成してもよい。
【0134】
同様の構成は、骨格体34及び袋体24に適用することができる。また、これらの構成は、各種の変形例(骨格体36、38等)に適用することもできる。
【0135】
このように、骨格体32、34を初期状態において平板状に形成することで、初期状態における構造物10の容積を、袋体20の内部に気体が導入されている場合と比較して、少なくできる。これにより、構造物10の収容スペースを小さくすることができる。
【0136】
また、本発明の実施形態においては、骨格体30の変形特性として、圧縮力C(N)が作用した際に、骨格体30の剛性が所定値K3未満となる変形特性と、所定値K3以上となる変形特性と、の双方を備えているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0137】
例えば骨格体30の変形特性は、骨格体30の剛性が所定値K3未満となる変形特性のみを備えるものしてもよいし、所定値K3以上となる変形特性のみを備えるものしてもよい。
【0138】
すなわち、骨格体30の変形特性は、想定される衝突物に応じて、適宜使い分けることができる。例えば車両の内部において、搭乗者の保護を目的とする場合は、骨格体30の剛性が所定値K3未満となる変形特性のみを備えるものとすることが好適である。
【符号の説明】
【0139】
20 袋体
22 袋体
24 袋体
26 袋体
28 袋体
30 骨格体
32 骨格体
32A 平板
32B 平板
32C 平板
34 骨格体
34A 平板
34B 平板
34C 平板
36 骨格体
38 骨格体
40 エアバッグ
H ヒンジ