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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240925BHJP
   B62D 21/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021057930
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154749
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 丈広
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】大江 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】平松 大弥
(72)【発明者】
【氏名】福島 正信
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴生
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓允
(72)【発明者】
【氏名】馬場 寛之
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114911(JP,A)
【文献】特開平07-186734(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112498497(CN,A)
【文献】特開2011-178289(JP,A)
【文献】特開2019-167032(JP,A)
【文献】中国実用新案第211765900(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0140021(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010045997(DE,A1)
【文献】特開2019-202744(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102938450(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0338996(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017002249(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の床面を構成するフロアパネルと、走行用モータと、該走行用モータに電力を供給するバッテリとを備えた自動車の車体構造において、
前記フロアパネルの車幅方向両端部において前後方向に延びるように配設される左右一対のサイドシルと、
左右一対の前記サイドシルからそれぞれ上方に延びる左右一対のピラーと、
前記フロアパネルの下方における前記ピラー近傍の車幅方向内側に設けられ、前記バッテリが配置された第1バッテリ配置部と、
前記フロアパネルの下方の車幅方向中央部において、前記バッテリが配置された第2バッテリ配置部と
前記バッテリを収容するとともに、前記フロアパネル及び前記サイドシルの少なくとも一方に固定されるバッテリケースとを備え
前記第1バッテリ配置部は、前記第2バッテリ配置部を挟んで車幅方向両側にそれぞれ設けられるとともに、車両前後方向に互いに間隔をあけて設けられ、
前記バッテリケースは、前記車幅方向一側かつ車両前側に位置する前記第1バッテリ配置部に対応した第1収容部と、前記車幅方向他側かつ車両前側に位置する前記第1バッテリ配置部に対応した第2収容部と、前記車幅方向一側かつ車両後側に位置する前記第1バッテリ配置部に対応した第3収容部と、前記車幅方向他側かつ車両後側に位置する前記第1バッテリ配置部に対応した第4収容部とを有し、
前記第1収容部と前記第3収容部との間及び前記第2収容部と前記第4収容部との間には、それぞれ、前記フロアパネルの一部が配置され、
前記第1収容部と前記第3収容部との間に位置する前記フロアパネルの一部及び前記第2収容部と前記第4収容部との間に位置する前記フロアパネルの一部には、それぞれ、前席シートが固定されている車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体構造において、
前記フロアパネルの車幅方向中央部には、上方へ膨出するフロアトンネル部が設けられ、
前記第2バッテリ配置部は、前記フロアトンネル部の内部に設けられている車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車体構造において、
前記第1バッテリ配置部は、前記フロアトンネル部よりも車幅方向外側に設けられている車体構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1つに記載の車体構造において、
前記フロアパネルは、
前記自動車に設けられているペダルを操作するペダル操作者の踵が置かれる前部フロアパネルと、
前記前部フロアパネルの車両後方に設けられた後部フロアパネルとを備え、
前記前部フロアパネルは、前記後部フロアパネルよりも上に位置付けられ、
前記第1バッテリ配置部は、前記前部フロアパネルの下方に設けられている車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフロアパネルを備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば走行用モータを備えた自動車の場合、走行用モータに電力を供給するためのバッテリユニットが搭載されており、このバッテリユニットは走行用モータによる航続可能距離を伸ばすために大容量化されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の車体構造では、前部から後部まで水平に延びるフロアパネルの下方にバッテリユニットが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-18686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車の側方から障害物が衝突すること(側面衝突)があり、このような側面衝突時にバッテリを保護する必要がある。その一方で、航続可能距離はバッテリの容量に大きく依存しており、バッテリの搭載容量を増大させたいという要求がある。バッテリの搭載容量を増大させるということは、バッテリが大型化するということであり、特許文献1のようにフロアパネルの下方にバッテリユニットを搭載すると、サイドシルに接近した部分までバッテリユニットが配置されることが想定される。
【0005】
バッテリがサイドシルに接近していると、側面衝突時にサイドシルが内側へ変形した時にバッテリに対する入力荷重が大きくなり、バッテリの保護性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリの搭載容量を多く確保しながら、側面衝突時におけるバッテリに入力する衝突荷重を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、車室の床面を構成するフロアパネルと、走行用モータと、該走行用モータに電力を供給するバッテリとを備えた自動車の車体構造を前提とすることができる。車体構造は、前記フロアパネルの車幅方向両端部において前後方向に延びるように配設される左右一対のサイドシルと、左右一対の前記サイドシルからそれぞれ上方に延びる左右一対のピラーと、前記フロアパネルの下方における前記ピラー近傍の車幅方向内側に設けられ、前記バッテリが配置された第1バッテリ配置部と、前記フロアパネルの下方の車幅方向中央部において、前記バッテリが配置された第2バッテリ配置部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、第1バッテリ配置部と第2バッテリ載置部の両方にバッテリを搭載することができるので、フロアパネルの下方に搭載するバッテリの搭載容量を多くすることができる。この場合に、車体の中で比較的高剛性なピラー近傍は、側面衝突時に車幅方向内側へ向けての変形量が少なくて済む部分であり、このピラー近傍の車幅方向内側に第1バッテリ配置部が設けられているので、第1バッテリ配置部に配置されているバッテリに入力する衝撃荷重が低減する。また、第2バッテリ配置部は、サイドシルから車幅方向内側に離れた車幅方向中央部にあり、第2バッテリ配置部とサイドシルとの車幅方向の距離を長く確保することができる。これにより、側面衝突時にサイドシルが車幅方向内側へ変形したとしても、第2バッテリ配置部に配置されているバッテリに入力する衝撃荷重が低減する。
【0009】
本開示の第2の側面では、前記フロアパネルの車幅方向中央部には、上方へ膨出するフロアトンネル部が設けられ、前記第2バッテリ配置部は、前記フロアトンネル部の内部に設けられている。
【0010】
すなわち、フロアトンネル部はサイドシルから離れているので、このフロアトンネル部の内部を第2バッテリ配置部とすることで、第2バッテリ配置部に配置されているバッテリに入力する衝撃荷重を確実に低減できる。
【0011】
本開示の第3の側面では、前記第1バッテリ配置部は、前記フロアトンネル部よりも車幅方向外側に設けられている。
【0012】
この構成によれば、フロアトンネル部よりも車幅方向外側の空間を利用して広い範囲に第1バッテリ載置部を設けることができ、その結果、バッテリの搭載容量をより一層増大できる。
【0013】
本開示の第4の側面では、前記第1バッテリ配置部は、前記第2バッテリ配置部を挟んで車幅方向両側にそれぞれ設けられ、前記第2バッテリ配置部及び前記車幅方向両側の第1バッテリ配置部が車幅方向に連続して設けられている。
【0014】
この構成によれば、車幅方向両側及び中央部にバッテリを配置できるので、バッテリの搭載容量をより一層増大できる。
【0015】
本開示の第5の側面では、前記バッテリを収容するとともに、前記フロアパネル及び前記サイドシルの少なくとも一方に固定されるバッテリケースを備え、単一の前記バッテリケースの内部に、車幅方向一側の前記第1バッテリ配置部、前記第2バッテリ配置部及び車幅方向他側の前記第1バッテリ配置部が設けられている。
【0016】
この構成によれば、車幅方向一側から他側に渡るバッテリケースをフロアパネル及びサイドシルの少なくとも一方に固定することで、バッテリケースを利用して車体の剛性を高めることができる。
【0017】
本開示の第6の側面では、前記フロアパネルは、前記自動車に設けられているペダルを操作するペダル操作者の踵が置かれる前部フロアパネルと、前記前部フロアパネルの車両後方に設けられた後部フロアパネルとを備えている。前記前部フロアパネルは、前記後部フロアパネルよりも上に位置付けられ、前記第1バッテリ配置部は、前記前部フロアパネルの下方に設けられている。
【0018】
この構成によれば、ペダル操作者の踵が置かれる前部フロアパネルが後部フロアパネルに比べて上に位置付けられるので、ペダル操作者の踵が高い位置に置かれることになる。これにより、ペダル操作者の下腿と前部フロアパネルとのなす角度が小さくなるので、ペダル操作時に踵から入力される上下方向の分力が小さくなり、ペダルの操作性が向上する。
【0019】
また、そのように上に配置された前部フロアパネルの下方に第1バッテリ配置部を設けることで、前部フロアパネルの下方空間をデッドスペースとすることなく、当該下方空間を有効利用することが可能になる。これにより、大容量のバッテリを搭載できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、フロアパネルの下方におけるピラー近傍の車幅方向内側に設けられた第1バッテリ配置部と、フロアパネルの下方における車幅方向中央部、かつ、第1バッテリ配置部の車幅方向外側部よりも車幅方向内側の領域に設けられた第2バッテリ配置部とを備えているので、バッテリの搭載容量を多く確保しながら、側面衝突時におけるバッテリへの衝突荷重の入力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る自動車の側面図である。
図2】自動車のダッシュパネル及びフロアパネルの部分断面であり、ブレーキペダルの位置を示す図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
図4】車室の前側部分を後方から見た斜視図である。
図5】自動車のダッシュパネル及びフロアパネルの部分断面であり、アクセルペダルの位置を示す図である。
図6】フロアパネルの構造例を示す断面図である。
図7】バッテリケースの平面図である。
図8】ペダル操作時を説明する図である。
図9】実施形態の変形例1に係る図8相当図である。
図10】実施形態の変形例2に係る図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の左側面図である。自動車1は、いわゆる乗用自動車である。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。車両の左右方向が車幅方向である。
【0024】
自動車1の前部には、動力室Sが設けられている。動力室Sには、走行用モータM等からなるパワートレイン(図示せず)が格納されている。従って、動力室Sは、例えばパワートレイン格納室、モータルーム等と呼ぶこともできる。自動車1は電気自動車であってもよいし、ハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド自動車も含む)であってもよい。自動車1が電気自動車である場合には、動力室Sに走行用モータMが搭載される。自動車1がハイブリッド自動車の場合には、動力室Sに走行用モータMと、図示しないが内燃機関(エンジン)が搭載される。また、図示しないが、走行用モータは自動車1の後部に搭載されていてもよいし、車輪(ホイール)の内側に搭載されたインホイールモータであってもよい。
【0025】
動力室Sの上部には、ボンネットフード2が設けられている。自動車1は、動力室Sに搭載されたエンジンや走行用モータM等で後輪を駆動するフロントエンジンリヤドライブ車(以下、FR車という)であってもよいし、動力室Sに搭載されたエンジンや走行用モータM等で前輪を駆動するフロントエンジンフロントドライブ車(以下、FF車という)であってもよい。自動車は、FR車とFF車以外にも、4輪を駆動する4輪駆動車であってもよい。
【0026】
図2に示すように、自動車1には、動力室Sの後方に車室Rが設けられている。車室Rの底面は、フロアパネル3で構成されており、従って、このフロアパネル3の上方空間が車室Rとなる。車室Rの上部にはルーフ4が設けられている。また、図1に示すように、自動車1の左側部には、フロントドア5と、リヤドア6とが開閉自在に配設されている。尚、図示しないが、自動車1の右側にもフロントドアと、リヤドアとが開閉自在に配設されている。
【0027】
図2に示すように、自動車1は、本発明に係る車体構造1Aを備えている。車体構造1Aは、フロアパネル3とダッシュパネル7を備えているが、ダッシュパネル7は、本発明の車体構造1Aを構成しない部材としてもよい。車室Rと動力室Sとを前後方向に仕切っている部材がダッシュパネル7である。ダッシュパネル7は、例えば鋼板等で構成されており、左右方向に延びるとともに上下方向にも延びている。ダッシュパネル7の下側部分は、下端部へ近づくほど後に位置するように傾斜ないし湾曲しており、ダッシュパネル7の下端部がフロアパネル3の前端部に接続されている。したがって、フロアパネル3は、ダッシュパネル7の下端部から後方へ延びるように設けられる。
【0028】
この実施形態では、車室Rの右側が運転席側であり、車室Rの左側が助手席側である。図2は、自動車1の運転席側の断面であり、フロアパネル3及びダッシュパネル7の断面と、フロアパネル3に取り付けられている運転席シート8及び後席シート10、ダッシュパネル7に取り付けられているブレーキペダルBの概略構造を示している。運転席シート8は、車室Rの左右方向中央部よりも右側に設けられる一方、車室Rの左右方向中央部よりも左側には助手席シート9(図1に示す)が設けられている。尚、これに限らず、車室Rの左側が運転席側、車室Rの右側が助手席側であってもよい。また、車室Rの後席が2列以上設けられていてもよい。
【0029】
自動車1の車体構造1Aについてさらに具体的に説明すると、図1に破線で示すように、自動車1の左側部及び右側部には、それぞれ、フロントドア5によって開閉される前部ドア開口部40と、リヤドア6によって開閉される後部ドア開口部41とが形成されている。図3に示すように、車体構造1Aは、フロアパネル3の左右方向両端部において前後方向に延びるように配設される左右一対のサイドシル42を備えている。また、図4に示すように、車体構造1Aは、フロアパネル3の前部を構成している前部フロアパネル30の左右方向両端部において上下方向に延びるように配設される左右一対のヒンジピラー43(左側のもののみ示す)も備えている。このヒンジピラー43の下部は、サイドシル42の前部近傍に接続されており、ヒンジピラー43はそこから上方へ延びている。ヒンジピラー43の後部は、該ヒンジピラー43の下部へ行くほど後方に位置するように形成されている。つまり、ヒンジピラー43の前後方向の寸法は、該ヒンジピラー43の下部へ行くほど長くなるように設定されている。ヒンジピラー43の下端部は、後述する前部フロアパネル30の下面よりも下方まで延びている。
【0030】
図4に示すように、ヒンジピラー43の上部にはフロントピラー44の下部が接続されている。フロントピラー44は、上側へ行くほど後に位置するように傾斜しながら延びており、ルーフ4の前部と接続されている。さらに、図1に示すように、車体構造1Aは、サイドシル42の前後方向中間部から上方へ延びるセンターピラー45を備えている。前部ドア開口部40は、ヒンジピラー43の後縁部、フロントピラー44の下縁部、サイドシル42の上縁部、センターピラー45の前縁部及びルーフ4によって形成されている。フロントドア5はヒンジピラー43に支持され、リヤドア6はセンターピラー45に支持されている。
【0031】
また、車体構造1Aは、センターピラー45から後方に離れた部分において上方方向に延びるリヤピラー(図示せず)を備えていてもよい。後部ドア開口部41は、センターピラー45とリヤピラーとの間に形成されることになる。また、リヤドア6は省略される場合もあり、この場合は後部ドア開口部41も省略される。
【0032】
図2に示すように、ダッシュパネル7には、ブレーキペダルBが揺動自在に設けられている。すなわち、ダッシュパネル7の右側における車室R内側には、運転席シート8と対向する部分に、ペダルブラケット11が取り付けられている。ペダルブラケット11は、フロアパネル3の上面から上方へ離れて設けられている。ペダルブラケット11には、左右方向に延びる支軸11aが設けられている。この支軸11aには、ブレーキペダルBの上端部が軸支されている。
【0033】
ブレーキペダルBは、支軸11aに支持された部分から下方へ延びている。ブレーキペダルBの下端部が乗員によって踏み込まれる部分である。ブレーキペダルBには、ロッドB1の後端部が連結されている。ロッドB1の前端部は、ブレーキ倍力装置12の入力部に接続されている。尚、ブレーキ倍力装置12以外のブレーキ力発生装置にロッドB1の前端部を連結してもよい。
【0034】
尚、ブレーキペダルBの支持構造は上述した構造に限られるものではなく、図示しないが、いわゆるオルガンペダルタイプのブレーキペダルであってもよい。この場合、ブレーキペダルの下部が左右方向に延びる支軸を介してフロアパネル3に対して揺動自在に支持されることになる。
【0035】
図5は、アクセルペダルAの位置を示すダッシュパネル7及びフロアパネル3の断面図である。アクセルペダルAは、いわゆるオルガンペダルタイプであり、当該アクセルペダルAの下部が左右方向に延びる支軸A1を介してフロアパネル3に対して揺動自在に支持されている。尚、アクセルペダルAは、図示しないが吊り下げタイプであってもよい。この場合、アクセルペダルAの上部が左右方向に延びる支軸を介してダッシュパネル7に揺動自在に支持される。走行用モータで走行する自動車1の場合も加速時に操作するペダルを備えており、本明細書では、このペダルもアクセルペダルと呼ぶことにする。
【0036】
また、図示しないが、車室Rに設けられた操作レバー(図示せず)によって乗員がギヤ比を変更するマニュアルトランスミッションを搭載している場合、クラッチを操作するためのペダルが車室Rに設けられる。通常、アクセルペダルAが一番右、ブレーキペダルBがアクセルペダルAの左側方、クラッチペダルがブレーキペダルBの左側方に位置している。
【0037】
また、図示しないが、例えば自動車の運転教習等に使用される教習車では、助手席側にもアクセルペダル及びブレーキペダルが運転席側と同様に設けられている。この教習車にも本発明を適用することができる。
【0038】
(フロアパネルの構成)
図6に示すように、フロアパネル3は、前部フロアパネル30と、シート載置フロアパネル34とを備えている。前部フロアパネル30及びシート載置フロアパネル34は、別部材で構成されており、互いに接合されて1つのフロアパネル3を構成している。さらに、シート載置フロアパネル34は、当該シート載置フロアパネル34の前側部分を構成する第1フロアパネル(後部フロアパネル)31と、当該シート載置フロアパネル34の後側部分を構成する第2フロアパネル(後席側フロアパネル)32とを備えている。第1フロアパネル31及び第2フロアパネル32は、別部材で構成されており、互いに接合されることによってシート載置フロアパネル34が構成されている。
【0039】
図3及び図4に示すように、前部フロアパネル30と第1フロアパネル31には、フロアトンネル部30cが形成されていてもよい。フロアトンネル部30cは、前部フロアパネル30と第1フロアパネル31の左右方向中央部を上方へ膨出させることによって形成することができ、例えば前部フロアパネル30の前部から第1フロアパネル31の後部まで前後方向に連続して延びる形状とすることができる。
【0040】
前部フロアパネル30は、ダッシュパネル7の下端部から後方へ延びるとともに左右方向に延びている。前部フロアパネル30には、ブレーキペダルB及びアクセルペダルAを操作するペダル操作者の踵が置かれる踵載置部30aが設けられている。踵載置部30aは、アクセルペダルAやブレーキペダルBを操作する際に、乗員の踵が自然に置かれる部分であり、乗員の体格や運転姿勢等によって多少異なるが、概ね図6に示す範囲(領域)である。すなわち、踵載置部30aは、前部フロアパネル30における前端部から後方に離れた部分から前部フロアパネル30における後端部から前方に離れた部分までの連続した領域と定義することができ、前部フロアパネル30の前後方向中間部ということもできる。
【0041】
図2に示すように、第2フロアパネル32は、前部フロアパネル30から後方に離れて設けられ、後席シート10が固定される部材である。後席シート10は、座面を構成する後席シートクッション部10aと、背もたれ部を構成する後席シートバック部10bとを備えている。後席シートクッション部10aは、第2フロアパネル32の上面に固定されている。
【0042】
第2フロアパネル32は、少なくとも、後席シートクッション部10aの前端部に対応する部分から後端部に対応するまで連続しているが、後席シートクッション部10aの後端部よりも後方まで延長されていてもよい。この場合、後席シート10の後方に2列目となる後席シートを設置することや、荷物を載置する荷室を設けることが可能になる。
【0043】
また、第1フロアパネル31は、前部フロアパネル30の後部から第2フロアパネル32の前部まで延びている。そして、第1フロアパネル31は、前部フロアパネル30よりも下に位置付けられている。すなわち、例えば前部フロアパネル30が略水平に前後方向に延びるとともに、第1フロアパネル31も略水平に前後方向に延びる形状とすることができ、この場合、前部フロアパネル30が第1フロアパネル31よりも上に位置していることで、前部フロアパネル30の後部から第1フロアパネル31の前部まで上下方向に延びる前部板部3Aをフロアパネル3が備えている。前部板部3Aを介して前部フロアパネル30と第1フロアパネル31とが接続されることになるので、前部フロアパネル30と第1フロアパネル31との間には段差が形成されることになる。
【0044】
また、第2フロアパネル32も略水平に前後方向に延びる形状とすることができる。第2フロアパネル32は第1フロアパネル31よりも上に位置している。このことで、第2フロアパネル32の前部から第1フロアパネル31の後部まで上下方向に延びる後部板部3Bをフロアパネル3が備えている。後部板部3Bを介して第2フロアパネル32と第1フロアパネル31とが接続されることになるので、第2フロアパネル32と第1フロアパネル31との間にも段差が形成されることになる。これにより、第1フロアパネル31が前部フロアパネル30及び第2フロアパネル32に比べて一段下に位置することになる。前部フロアパネル30及び第2フロアパネル32と、第1フロアパネル31との高さの差は、例えば5cm以上または10cm以上に設定することができ、また15cm以上に設定してもよい。前部フロアパネル30と第2フロアパネル32とは、同じ高さであってもよいし、前部フロアパネル30が第2フロアパネル32より低くてもよいし、高くてもよい。また、前部フロアパネル30、第1フロアパネル31及び第2フロアパネル32は、厳密に水平でなくてもよく、後側へ行くほど下に位置するように傾斜していてもよい。また、前部フロアパネル30、第1フロアパネル31及び第2フロアパネル32の一部のみ傾斜し、他の部分が略水平であってもよい。さらに、第2フロアパネル32は第1フロアパネル31と同じ高さであってもよい。
【0045】
上記前部板部3Aは、前部フロアパネル30に一体成形されていてもよいし、第1フロアパネル31に一体成形されていてもよいし、これらフロアパネル30、31とは別体に成形されていてもよい。上記後部板部3Bについても、第2フロアパネル32に一体成形されていてもよいし、第1フロアパネル31に一体成形されていてもよいし、これらフロアパネル31、32とは別体に成形されていてもよい。また、前部板部3A及び後部板部3Bは略鉛直に延びていてもよいし、傾斜ないし湾曲していてもよい。例えば、前部板部3Aは、下へ行くほど後に位置するように傾斜ないし湾曲させることができ、また後部板部3Bは、下へ行くほど前に位置するように傾斜ないし湾曲させることができる。
【0046】
図2に示すように、第1フロアパネル31には、前席シート8を固定するための第1前席シート固定部(前部シート固定部)31a及び第2前席シート固定部(後部シート固定部)31bが設けられている。第1前席シート固定部31aは、第1フロアパネル31の前後方向中央部よりも前に設けられており、例えば第1フロアパネル31に固定された左右方向に長いメンバ等で構成されている。第2前席シート固定部31bも同様に、左右方向に長いメンバ等で構成されており、第1前席シート固定部31aから後方に所定距離だけ離れて設けられている。第1前席シート固定部31a及び第2前席シート固定部31bの構成は、メンバに限られるものではなく、板材等で構成された各種形状のものを用いることができる。尚、この実施形態では、第1前席シート固定部31aの方が第2前席シート固定部31bに比べて高く形成されているが、第1前席シート固定部31a及び第2前席シート固定部31bの高さは同じであってもよい。
【0047】
第2フロアパネル32の少なくとも前部には、後席シート10を固定するための後席用シート固定部32aが設けられている。この後席用シート固定部32aは、前席シート固定部31a、31bと同様に構成されていてもよいし、別構造であってもよい。第2フロアパネル32と第1フロアパネル31とが同じ高さに配置されている場合には、前席シート8と後席シート10とを同じ高さに配置することができる。
【0048】
(前席シート)
前席シート8は、前席シートクッション部8aと、前席シートバック部8bと、前席シートクッション部8aの前後方向の位置調整を行うシートスライド機構8cとを備えている。前席シートクッション部8aは、前席乗員の座面を構成する部分であり、図示しないが、例えばシートフレームとクッション材と表皮材等で構成されている。また、前席シートバック部8bは、前席乗員の背もたれ部を構成する部分であり、図示しないが、シートフレームと、クッション材、表皮材等で構成されている。
【0049】
前席シートバック部8bの下部は、前席シートクッション部8aの後部に対してリクライニング機構8dを介して取り付けられている。リクライニング機構8dは、従来から周知のものであり、前席シートバック部8bを任意の傾斜角度にして固定状態にするための機構である。
【0050】
シートスライド機構8cは、従来から周知の機構を用いることができ、例えば、前席シートクッション部8aの下部に固定される可動部材8eと、第1フロアパネル31の第1前席シート固定部31a及び第2前席シート固定部31bに固定されるレール8fとを備えている。レール8fは前席シートクッション部8aを前後方向に案内するための部材であり、前後方向に延びている。レール8fの前部が第1前席シート固定部31aに固定され、後部が第2前席シート固定部31bに固定されている。第1前席シート固定部31aが第2前席シート固定部31bに比べて高いので、レール8fは前へ行くほど上に位置するように傾斜している。レール8fは略水平であってもよい。
【0051】
可動部材8eは、レール8fに係合した状態で当該レール8fに対して前後方向に相対移動可能な部材である。可動部材8eのレール8fに対する前後方向の位置は、所定範囲内であれば任意の位置にすることができ、その位置で可動部材8eをレール8fにロックすることができる。このようなロック機構も従来から周知であり、例えばレバー操作等によってロックを解除することができる。尚、シートスライド機構8c及びリクライニング機構8dは、電動モータを使用した電動式であってもよい。
【0052】
また、シートスライド機構8cの高さは、第1フロアパネル31の高さ、第1前席シート固定部31a及び第2前席シート固定部31bの高さによって設定することができる。この実施形態では、前部フロアパネル30と比較した時、前部フロアパネル30がシートスライド機構8cよりも上に位置付けられているように、シートスライド機構8cの高さが設定されている。
【0053】
(バッテリ)
図2に示すように、この自動車1には、走行用モータMに電力を供給するための複数のバッテリ50が搭載されている。この実施形態では、バッテリ50は、いわゆるバッテリセルであり、例えばリチウムイオン電池、全固体電池等であってもよいし、他の二次電池であってもよい。また、バッテリ50は、二次電池を収容したバッテリパックであってもよい。
【0054】
上記バッテリ50の搭載にあたり、車体構造1Aには、バッテリ50を配置するスペース(バッテリ配置用空間)として、フロアパネル3の下方に、第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52が設けられている。第1バッテリ配置部51は、複数のバッテリ50のうち、一部が配置される部分であり、また、第2バッテリ配置部52は、バッテリ50のうちの残りが配置される部分である。
【0055】
図3及び図4に基づいて、第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52について具体的に説明する。図3及び図4では、第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52の大きさ及び形状の概略を仮想線で示しており、図示した形状よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。第1バッテリ配置部51は、前部フロアパネル30の運転席側(車幅方向一側)の下方及び助手席側(車幅方向他側)の下方にそれぞれ設けられている。運転席側の第1バッテリ配置部51は、右側のヒンジピラー43近傍の車幅方向内側に設けられており、右側のヒンジピラー43近傍からフロアトンネル部30cの真下には達しないように、当該第1バッテリ配置部51の左右方向の寸法が設定されている。図2に示すように、側面視で、ヒンジピラー43の下部と、第1バッテリ配置部51の少なくとも一部とが重複する位置関係にある。
【0056】
助手席側の第1バッテリ配置部51は、左側のヒンジピラー43近傍の車幅方向内側に設けられており、左側のヒンジピラー43近傍からフロアトンネル部30cの真下には達しないように、当該第1バッテリ配置部51の左右方向の寸法が設定されている。助手席側の第1バッテリ配置部51も、その少なくとも一部が、側面視でヒンジピラー43の下部と重複している。
【0057】
ここで、ヒンジピラー43はフロントドア5を開閉可能に支持する部材であることから高剛性である。このヒンジピラー43の下端部は前部フロアパネル30近傍に位置している。例えば自動車1の側方から衝撃荷重が作用した時(側面衝突時等)には、その荷重が高剛性なヒンジピラー43を介して車体に伝達されることになる。この時、側面視でヒンジピラー43と、第1バッテリ配置部51に配置されているバッテリ50とが重複していることで、当該バッテリ50をヒンジピラー43によって保護することができ、当該バッテリ50への入力荷重を低減できる。
【0058】
第1バッテリ配置部51の前部は、前部フロアパネル30の前部と同じ位置か、ダッシュパネル7の直下方に位置付けられている。第1バッテリ配置部51の後部は、前部フロアパネル30の後部と同じ位置か、前部板部3Aの近傍に位置付けられている。
【0059】
第2バッテリ配置部52は、運転席側の第1バッテリ配置部51と助手席側の第1バッテリ配置部51との間、即ち、フロアパネル3の下方における車幅方向中央部に設けられている。フロアパネル3の車幅方向中央部にはフロアトンネル部30cが形成されているので、車幅方向の位置がフロアトンネル部30cに対応するように第2バッテリ配置部52が位置付けられる。また、フロアパネル3の下方におけるフロアトンネル部30cに対応する領域は、第1バッテリ配置部51の車幅方向外側部よりも車幅方向内側の領域となる。言い換えると、第1バッテリ配置部51は、フロアトンネル部30cよりも車幅方向外側に設けられることになる。
【0060】
また、この実施形態では、第1バッテリ配置部51の下部と、第2バッテリ配置部52の下部とは同じ高さに設定されているが、異なっていてもよい。第2バッテリ配置部52は、フロアトンネル部30cの内部にも設けられており、第2バッテリ配置部52の上部は、フロアトンネル部30cの上部近傍に位置付けられている。これにより、第2バッテリ配置部52の上部は、第1バッテリ配置部51の上部よりも上に位置することになるので、第2バッテリ配置部52の上下方向の寸法は、第1バッテリ配置部51の上下方向の寸法よりも長くなる。また、車幅方向の寸法を比較した時には、第1バッテリ配置部51の方が第2バッテリ配置部52よりも長くなっている。
【0061】
第1バッテリ配置部51と第2バッテリ配置部52との相対的な位置関係を別の表現で説明すると、第1バッテリ配置部51が第2バッテリ配置部52を挟んで車幅方向両側にそれぞれ設けられることになる。そして、運転席側の前記第1バッテリ配置部51、第2バッテリ配置部52及び助手側の第1バッテリ配置部51が車幅方向に連続している。
【0062】
図2に示すように、第2フロアパネル32の下方にも運転席側と助手席側にそれぞれ第1バッテリ配置部51が設けられている。この後側の第1バッテリ配置部51も前側の第1バッテリ配置部51と同様である。第2バッテリ配置部52は、フロアトンネル部30c内をその後部まで延びるように設けられている。当該第2バッテリ配置部52の後部は、第2フロアパネル32の下方に達しており、後側の第1バッテリ配置部51の間に位置付けられている。尚、後側の第1バッテリ配置部51は必要に応じて設ければよく、省略してもよい。
【0063】
上述した第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52は、バッテリ50の配置スペースであり、これら配置スペースにバッテリ50を配置するためには、バッテリ50を所定位置から動かないようにするためのバッテリ保持手段が必要になる。このバッテリ保持手段と一例として、バッテリ50を収容するバッテリケース53を用いている。したがって、車体構造1Aは、図7に示すような形状のバッテリケース53を備えている。バッテリケース53は、例えばフロアパネル3及びサイドシル42の少なくとも一方に固定されて車体と一体化されている。バッテリケース53を構成する部材としては、例えば鋼板や押出材等を挙げることができ、これら部材によって単一のバッテリケース53が構成されている。「単一」とは、車体へ固定する前の構造体として見たときに1つとなっているということであり、バッテリケース53が複数の部材で分離可能に構成されていたとしても、例えば自動車1の製造ラインにおいて車体へ固定する直前の状態で部材同士が分離しないように一体になっているということである。バッテリ50とバッテリケース53とを合わせてバッテリユニット等と呼ぶことができる。
【0064】
バッテリケース53の内部や外部には補強用のメンバ等が設けられている。このようにしてバッテリケース53の剛性を高めることができる。剛性の高いバッテリケース53を図3図4等に示すフロアパネル3やサイドシル42に固定することで、バッテリケース53の剛性を利用して車体剛性を高めることができる。バッテリケース53の固定構造は、特に限定されるものではないが、例えばボルト、ナット、ネジ等の締結部材を使用した固定構造を挙げることができる。
【0065】
図7に示すように、バッテリケース53は、運転席側かつ前側の第1バッテリ配置部51に対応した右前収容部53aと、助手席側かつ前側の第1バッテリ配置部51に対応した左前収容部53bと、第2バッテリ配置部52に対応した中央収容部53cと、運転席側かつ後側の第1バッテリ配置部51に対応した右後収容部53dと、助手席側かつ後側の第1バッテリ配置部51に対応した左後収容部53eとを備えている。第1バッテリ配置部51内に各収容部53a、53b、53d、53eが収まっていてもよいし、第1バッテリ配置部51と各収容部53a、53b、53d、53eとが同じ形状であってもよい。また、第2バッテリ配置部52内に収容部53cが収まっていてもよいし、第2バッテリ配置部52と収容部53cとが同じ形状であってもよい。
【0066】
右前収容部53aと右後収容部53dとの間、及び左前収容部53bと左後収容部53eとの間に、それぞれ、第1フロアパネル31(図2に示す)が位置することになる。右後収容部53d及び左後収容部53eは省略してもよい。
【0067】
右前収容部53aは、中央収容部53cの右側部から右へ向けて突出するように形成されている。これにより、右前収容部53aの右側部は、右側のヒンジピラー43の下部近傍に位置付けられることになる。また、左前収容部53bは、中央収容部53cの左側部から左へ向けて突出するように形成されている。これにより、左前収容部53bの左側部は、左側のヒンジピラー43の下部近傍に位置付けられることになる。
【0068】
また、中央収容部53cの上部は、右前収容部53a、左前収容部53b、右後収容部53d及び左後収容部53eの上部よりも上に位置している。中央収容部53cが高く形成されているので、中央収容部53cには上下方向に複数段を形成するようにバッテリ50を収容することができる。
【0069】
各収容部53a~53eには、同様にバッテリ50が収容されており、これにより、前部フロアパネル30の下方空間、第2フロアパネル32の下方空間、フロアトンネル部30cの内部空間をバッテリ50の収容空間として有効利用することができ、バッテリ50の搭載容量を高めることができる。
【0070】
右前収容部53aが第1バッテリ配置部51に位置しているので、右前収容部53aの内部空間は第1バッテリ配置部51である。また、左前収容部53bも第1バッテリ配置部51に位置しているので、左前収容部53bの内部空間も第1バッテリ配置部51である。さらに、中央収容部53cは第2バッテリ配置部52に位置しているので、中央収容部53cの内部空間は第2バッテリ配置部52である。このように、単一のバッテリケース53の内部に、運転席側の第1バッテリ配置部51、第2バッテリ配置部52及び助手席側の第1バッテリ配置部51が設けられている。
【0071】
右前収容部53aと右後収容部53dとが前後方向に離れているので、右前収容部53aと右後収容部53dとの間には、バッテリ50が配置されない空間ができる。この空間を利用して前席シート8の位置を低くすることができる。
【0072】
尚、図示しないが、第1バッテリ配置部51は、フロアパネル30の下方におけるセンターピラー45(図1に示す)近傍の車幅方向内側に設けられていてもよい。また、図示しないが、第1バッテリ配置部51は、フロアパネル30の下方におけるリヤピラー近傍の車幅方向内側に設けられていてもよい。
【0073】
また、バッテリ50の種類に応じて、バッテリケース53の構造や形状等を変更することができる。バッテリケース53の内部には、バッテリ50の温度調節を行うための冷却部や加温部等(共に図示せず)を設けることができる。
【0074】
第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52の下部は、自動車1の最低地上高が低くならないように、第1フロアパネル31の下面と略同じ高さにしてもよいし、第1フロアパネル31の下面よりも高くしてもよい。また、第1バッテリ配置部51及び第2バッテリ配置部52の下部は、第1フロアパネル31の下面よりも低くしてもよい。これにより、バッテリ50の搭載容量をより一層高めることができる。
【0075】
(前席乗員の姿勢及びペダル操作)
図8は、前席シート8に着座している前席乗員(ペダル操作者)の下肢100とフロアパネル3及びダッシュパネル7、ブレーキペダルBと、その近傍を示す図である。この実施形態では、前席シート8のシートフレーム8gの下側かつ後部が前部フロアパネル30の上面よりも下に位置付けられているので、ペダル操作者のヒップポイントを低くすることができる。ペダル操作者のヒップポイントが低くなるということは、ペダル操作者の着座位置が下がるということであり、これにより、乗車状態における車両の重心高が下がる。
【0076】
そして、ペダル操作者の踵101が置かれる前部フロアパネル30が第1フロアパネル31に比べて上に位置付けられるので、ペダル操作者の踵101が、一般的な操作姿勢に比べて高い位置に置かれることになる。このようなレイアウトにより、ペダル操作者の上腿102と下腿103とが大きく開いた姿勢となる。図8における符号200は、ペダル操作者の上腿102の中心線を示し、符号201は、下腿103の中心線を示しており、中心線200と、中心線201とのなす角度(上腿102と下腿103との開角α)が125゜~150゜の範囲となるように、前部フロアパネル30と第1フロアパネル31との高さの差を設定している。
【0077】
このように高さの差を設定することで、下腿100と前部フロアパネル30とのなす角度(中心線201と前部フロアパネル30とのなす角度β)が小さくなるので、ペダル操作時に踵101に入力される上下方向の分力が小さくなり、ブレーキペダルBの操作性が向上する。具体的に説明すると、ペダル操作者がブレーキペダルBを踏み込むときには、斜め下向きの力Fを踵101が前部フロアパネル30に対して作用させることになる。この力Fを鉛直方向の力と水平方向の力とに分けると、それぞれ力F1と力F2となる。上述したように、角度βが小さくなっているので、踵101から入力される上下方向の分力F1が小さくなる。このことで、例えばブレーキペダルBからアクセルペダルAへの踏み替え操作やその反対の踏み替え操作等が素早く、かつ、正確に行えるようになり、その結果、ペダルA、Bの操作性が向上する。
【0078】
(後席乗員の居住性)
尚、この実施形態では後席乗員の居住性を向上させることができる。図2に示すように、後席シート10が取り付けられる第2フロアパネル32は、第1フロアパネル31よりも上に位置付けられるので、後席シート10の乗員は比較的高いところに着座することになり、視界が良好になる。その後席乗員は足を第1フロアパネル31に置くことになるが、この第1フロアパネル31が第2フロアパネル32よりも下に位置付けられるので、後席乗員の足元空間は特に高さ方向に広く確保される。
【0079】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、フロアパネル3の下方におけるヒンジピラー43近傍の車幅方向内側に設けられた第1バッテリ配置部51と、フロアパネル3の下方における車幅方向中央部、かつ、第1バッテリ配置部51の車幅方向外側部よりも車幅方向内側の領域に設けられた第2バッテリ配置部52とを備えているので、フロアパネル3の下方に搭載するバッテリ50の搭載容量を多くすることができる。
【0080】
そして、車体の中で比較的高剛性なヒンジピラー43近傍は、側面衝突時に車幅方向内側へ向けての変形量が少なくて済む部分であり、このヒンジピラー43近傍の車幅方向内側に第1バッテリ配置部51が設けられているので、第1バッテリ配置部51に配置されているバッテリ50に入力する衝撃荷重が低減する。また、第2バッテリ配置部52は、第1バッテリ配置部51の車幅方向外側部よりも車幅方向内側の領域に設けられていて、サイドシル42から車幅方向内側に離れているので、第2バッテリ配置部52とサイドシル42との車幅方向の距離を長く確保することができる。これにより、側面衝突時にサイドシル42が車幅方向内側へ変形したとしても、第2バッテリ配置部52に配置されているバッテリ50に入力する衝撃荷重が低減する。
【0081】
(他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0082】
例えば図9に示す実施形態の変形例1では、前部フロアパネル30に、ブレーキペダルBに対応する部分にペダル操作者の踵101を置くための凹部30bが形成されている。凹部30bの深さは、靴の踵部分の少なくとも一部を収容可能に設定されていればよく、例えば2cm以上または3cm以上とすることができる。凹部30bの深さが深すぎるとペダルの操作性が悪化する場合があるので、例えば7cm以下の深さとすることができる。凹部30bの幅(左右方向の寸法)は、例えば5cm以上または7cm以上とすることができる。
【0083】
凹部30bを形成することで、踵101が左右方向にずれにくくなるので、例えばブレーキペダルBを踏んだ後、アクセルペダルAを踏む場合のように、踵101近傍を軸にして足先を左右方向に回動させる際に足を安定させることができる。その結果、上述したペダル操作者の下腿103と前部フロアパネル30とのなす角度βが小さくなることによる利点との相乗的な効果によってペダル操作性をより一層向上させることができる。
【0084】
また、例えば図10に示す実施形態の変形例2のように、フロアパネル3が前部から後部まで一体のものであってもよい。具体的には、変形例2のフロアパネル3は、ペダル操作者の踵が置かれる前部パネル部300と、シート載置パネル部340とを備えている。シート載置パネル部340は、前部パネル部300の後方に設けられ、少なくとも前席シート8が取り付けられる第1パネル部(後部パネル部)310と、第2パネル部(後席側パネル部)320とを備えている。
【0085】
前部パネル部300の下方に第1バッテリ配置部51を設けることができ、また、第2パネル部320の下方にも第1バッテリ配置部51を設けることができる。前部パネル部300は上記前部フロアパネル30に相当し、第1パネル部310は上記第1フロアパネル31に相当し、第2パネル部320は上記第2フロアパネル32に相当している。この変形例2においても、上記実施形態と同様な作用効果を奏することができる。また、前部パネル部300と第1パネル部310とが一体成形され、第2パネル部320が別体とされていてもよいし、第2パネル部320と第1パネル部310とが一体成形され、前部パネル部300が別体とされていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明に係る車体構造は、例えばフロアパネルを備えた自動車で利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1A 車体構造
3 フロアパネル
8a 前席シートクッション部
8b 前席シートバック部
8c シートスライド機構
30 前部フロアパネル
30b 凹部
30c フロアトンネル部
31 第1フロアパネル(後部フロアパネル)
31a 第1前席シート固定部(前部シート固定部)
31b 第2前席シート固定部(後部シート固定部)
32 第2フロアパネル(後席側フロアパネル)
42 サイドシル
43 ヒンジピラー
50 バッテリ
51 第1バッテリ配置部
52 第2バッテリ配置部
53 バッテリケース
B ブレーキペダル
M 走行用モータ
R 車室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10