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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 23/00 20150101AFI20240925BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240925BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20240925BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240925BHJP
【FI】
F21V23/00 130
F21S2/00 612
F21V31/00 100
F21V23/00 160
F21Y115:10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021066256
(22)【出願日】2021-04-09
(65)【公開番号】P2022161430
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2023-10-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:令和3年3月9日~12日 展示会名、開催場所:第15回 国際照明総合展 ライティング・フェア2021 東京ビックサイト 西1ホール(東京都江東区有明3-11-1) [刊行物等] 販売日:令和3年3月25日 販売した場所:岩崎電気株式会社(東京都中央区東日本橋1-1-7) [刊行物等] 販売日:令和3年4月7日 販売した場所:岩崎電気株式会社(東京都中央区東日本橋1-1-7)
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130714(JP,A)
【文献】実開平05-074185(JP,U)
【文献】国際公開第2021/059466(WO,A1)
【文献】特開2012-013452(JP,A)
【文献】特開2011-034689(JP,A)
【文献】特開2006-210009(JP,A)
【文献】特開平11-330709(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1079151(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0232627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00-99/00
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を収めた第1ケースと、
接地線に電気的に接続された第2ケースと、
を備えた照明器具であって、
前記第1ケースと前記第2ケースは、電源線を通す配線孔を有し、
前記第1ケースと前記第2ケースとを導通させるとともに前記電源線が通る配線路の被水を防止する接地構造部を備え、
前記第1ケースの表面には、前記接地構造部として、前記配線孔の周囲を囲む平面視円環状の第1金属部と、前記第1金属部を外周側から囲う平面視円環状の壁部と、前記壁部の外周側で平面視円環状に凹む溝部が設けられ、
前記第2ケースの表面には、前記接地構造部として、前記第1金属部に対向する円環状の領域を前記第1金属部に向けて凸状にした第2金属部が設けられ、
前記第1ケースの前記壁部の内周側に、前記第1金属部及び前記第2金属部に挟まれて弾性変形する導電性の弾性変形部材が配置され、
前記第1ケースの前記溝部に、前記第1金属部、前記第2金属部、及び前記弾性変形部材を含む範囲を密封するように前記第1ケースと前記第2ケースの間の隙間を閉塞する環状のシール部が嵌め込まれ
前記弾性変形部材は、平面視円環状の波ワッシャであり、この波ワッシャの中央穴を前記電源線が通る
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記第1ケース、及び前記第2ケースはそれぞれ、前記第1金属部、及び第2金属部を除き絶縁層が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記第1ケース、及び前記第2ケースはいずれも金属製であり、
前記第1金属部、及び前記第2金属部はいずれも、前記第1ケース、及び前記第2ケースの金属の素地を露出させて成されている
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、表面が絶縁膜塗装によって覆われた金属製照明器具反射板と、当該金属製照明器具反射板が固定された金属製照明器具本体と、を備え、金属製照明器具本体を接地線に接続してアースを得る照明器具を開示する。
また特許文献1には、金属製照明器具反射板を金属製照明器具本体に固定する金属製ネジを介して金属製照明器具反射板のアースを取る場合、例えば歯付の特殊ネジを金属製ネジに使用すること、または、汎用の金属製ネジとの中間に歯付座金を挿入することで、金属製照明器具反射板の絶縁塗装膜を剥離し、金属製照明器具反射板と金属製照明器具本体との導通が得られることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-34689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、金属製ネジと金属製照明器具反射板との材質が異なる場合、両者の接触部分が雨水等に曝されると、両者のイオン化傾向の違いによって、両者の導通部分に電蝕が生じる。この結果、導通部分の周囲の絶縁塗装が劣化して剥がれたり、金属製照明器具反射板のネジ孔が腐蝕によって破損し、金属製ネジが脱落する虞がある。
【0005】
本発明は、接地に用いられる導通部分の電蝕を抑えることができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、光源を収めた第1ケースと、接地線に電気的に接続された第2ケースと、を備えた照明器具であって、前記第1ケースと前記第2ケースとを導通させる接地構造部を備え、前記接地構造部は、前記第1ケースの表面に設けられた第1金属部と、前記第2ケースの表面に設けられた第2金属部と、前記第1金属部及び前記第2金属部に挟まれて弾性変形する導電性の弾性変形部材と、前記第1金属部、前記第2金属部、及び前記弾性変形部材を含む範囲を密封するシール部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様は、光源を収めた第1ケースと、接地線に電気的に接続された第2ケースと、を備えた照明器具であって、前記第1ケースと前記第2ケースは、電源線を通す配線孔を有し、前記第1ケースと前記第2ケースとを導通させるとともに前記電源線が通る配線路の被水を防止する接地構造部を備え、前記第1ケースの表面には、前記接地構造部として、前記配線孔の周囲を囲む平面視円環状の第1金属部と、前記第1金属部を外周側から囲う平面視円環状の壁部と、前記壁部の外周側で平面視円環状に凹む溝部が設けられ、前記第2ケースの表面には、前記接地構造部として、前記第1金属部に対向する円環状の領域を前記第1金属部に向けて凸状にした第2金属部が設けられ、前記第1ケースの前記壁部の内周側に、前記第1金属部及び前記第2金属部に挟まれて弾性変形する導電性の弾性変形部材が配置され、前記第1ケースの前記溝部に、前記第1金属部、前記第2金属部、及び前記弾性変形部材を含む範囲を密封するように前記第1ケースと前記第2ケースの間の隙間を閉塞する環状のシール部が嵌め込まれ前記弾性変形部材は、平面視円環状の波ワッシャであり、この波ワッシャの中央穴を前記電源線が通ることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様は、上記照明器具において、前記第1ケース、及び前記第2ケースはいずれも金属製であり、前記第1金属部、及び前記第2金属部はいずれも、前記第1ケース、及び前記第2ケースの金属の素地を露出させて成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接地に用いられる導通部分の電蝕を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る投光器の正面側を視た斜視図である。
図2】投光器の背面側を視た斜視図である。
図3】投光器を図2のA-A線で切断した斜視図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5図4において矢印Xで指した範囲の拡大図である。
図6】背面の側から視た投光器の分解斜視図である。
図7】波ワッシャの斜視図である。
図8】接地線のノイズ試験の試験結果を示す図である。
図9】照明部の構成を示す平面図である。
図10図9のB-B線断面図である。
図11】通常の反射面について、設計光軸を含む断面における配光形状のシミュレーション結果を示す図である。
図12】COB型LEDの色度特性を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る反射面について、設計光軸を含む断面における配光形状のシミュレーション結果を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る反射面の反射特性の測定結果を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る投光器の放射スペクトルの測定結果を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る反射面の構成を示す斜視図である。
図17】凹状ファセットの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図18】凹状ファセットの設計の説明図である。
図19】本発明の実施形態に係る反射面の出射光の色度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態では、照明器具の一例として投光器を例示する。
【0014】
図1は本実施形態に係る投光器1の正面側を視た斜視図であり、図2は当該投光器1の背面側を視た斜視図である。
投光器1は、屋外に設置される屋外照明器具であり、建物の壁面や看板などを照明する看板照明器具、屋外駐車場などの所定エリアを照明するエリア照明器具、及び、建造物や展示物、植物などをライトアップするライトアップ照明器具として使用可能な照明器具である。
図1に示すように、投光器1は、照明光を正面から出射する器具本体3と、器具本体3を傾動自在に支持する支持アーム4と、を備え、器具本体3の傾動角度を変えることで照明光の出射方向を変更可能となっている。
【0015】
図3は投光器1を図2のA-A線で切断した斜視図であり、図4図2のA-A線断面図である。
本実施形態の器具本体3は、図3及び図4に示すように、それぞれ別体である本体ケース10と、電源ケース12と、を備えている。
【0016】
本体ケース10は、奥行きが浅い箱型のケースである。図1に示すように、本体ケース10は、正面視矩形状を成しており、照明光を出射する正面視略矩形の出射開口14が正面に開口し、出射開口14を臨む位置に照明部13が収められている。照明部13は、照明光の光源と、当該照明光を制御する光制御部材と、を備え、本実施形態では、光源には、半導体発光素子の一態様であるLED30が用いられ、光制御部材には反射鏡32が用いられている。
【0017】
本体ケース10の正面には出射開口14の周囲を囲む化粧枠15が取り付けられている。出射開口14は、適宜の透光性材料から形成されたカバー16によって覆われており、図3に示すように、当該カバー16が化粧枠15と本体ケース10との間に固定されている。
【0018】
図2に示すように、本体ケース10の左右の両側には支持具取付片17が設けられている。各支持具取付片17は、図1に示すように、本体ケース10の背後に向かって延び出ており、コの字状の上記支持アーム4が回動自在に取り付けられている。
【0019】
電源ケース12は、図3及び図4に示すように、点灯用の電力を照明部13に供給する電源装置19を内蔵する箱型のケースであり、図2に示すように、本体ケース10の背後において一対の支持具取付片17の間に収められている。
かかる電源ケース12は、図3及び図4に示すように、略矩形板状の底板20と、当該底板20に覆い被さる無底の略直方体形状のカバー体22と、を備え、底板20に電源装置19の回路基板19Aが固定されている。図2に示すように、電源ケース12の左右両側の側面12Aには通気キャップ部材23が取り付けられている。通気キャップ部材23は、側面12Aに開口した通気孔を覆う、通気構造、及び防水構造を有した部材である。
【0020】
かかる電源ケース12は、図4に示すように、本体ケース10の背後に、当該本体ケース10との間に隙間δをあけて固定されている。電源ケース12の固定にはネジ止めが用いられており、本体ケース10の背面10A(図6)の複数箇所に設けられたネジ孔25(図6)に、電源ケース12の底板20を貫通させた金属製のネジ24(図2)を螺合させることで、電源ケース12が固定されている。なお、ネジ24の材質は適宜であり、本実施形態ではステンレスである。後述の通り、電源ケース12及び本体ケース10の表面は、ネジ孔25を含めて絶縁層を形成する表面処理(本実施形態では絶縁塗装)が施されており、ネジ24とネジ孔25の螺合によっては電源ケース12と本体ケース10とは導通されない。
【0021】
かかる器具本体3は、それぞれが別体の本体ケース10と電源ケース12とを備え、本体ケース10が照明部13を内蔵し、電源ケース12が電源装置19を内蔵するため、照明部13に係るユニットと、当該照明部13を点灯させるための電源や各種電気回路に係るユニットと、を別々に生産することができ、生産効率の向上を図ることができる。
また、照明部13の発熱が電源装置19に直接的に伝わることがないため、電源装置19が備える電子部品の耐熱温度が、照明部13(光源の半導体発光素子)の耐熱温度よりも低い場合であっても、電子部品の耐熱温度の制限を受け難くなり、照明部13の光出力を高めることができる。
【0022】
本実施形態において、本体ケース10及び電源ケース12はそれぞれアルミダイカスト鋳造品であり、金属の一種であるアルミニウム合金から形成されている。また、本体ケース10及び電源ケース12はそれぞれ、鋳造後に、絶縁層を形成する表面処理の一例である絶縁塗装が施されることで、外部に露出する素地の表面の全体が絶縁塗装膜による絶縁層によって覆われており、耐蝕性及び絶縁性が高められている。
【0023】
次いで、投光器1の接地構造について説明する。
【0024】
図3に示すように、電源ケース12の底面12Bには、商用電力を伝送する電源線40を内部に引き込む、防水構造の電線引込部42が設けられている。電源線40は、接地線40Aを含み、この接地線40Aが電源ケース12に電気的に接続されることで、当該電源ケース12が接地される。本実施形態では、電源ケース12の内部において底板20に接地端子(図示せず)が立設されており、この接地端子に接地線40Aが接続されることで電源ケース12が接地される。
【0025】
また、本実施形態の器具本体3は、図4に示すように、本体ケース10と電源ケース12とを導通させることで、電源ケース12を通じて本体ケース10を接地する接地構造部50を備えている。
【0026】
図5は、図4において矢印Xで指した範囲であって、接地構造部50を含む範囲の拡大図である。
本実施形態において、接地構造部50は、本体ケース10の背面10Aと、上記隙間δをあけて当該背面10Aに対向する電源ケース12の対向面12Cとを、波ワッシャ56を介して導通させる構造部である。
具体的には、接地構造部50は、本体ケース10と導通し当該本体ケース10の背面10Aに設けられた第1金属部52と、電源ケース12と導通し当該電源ケース12の対向面12Cに設けられた第2金属部54と、第1金属部52、及び第2金属部54の間に介在し、これら第1金属部52及び第2金属部54によって挟み込まれる金属製の上記波ワッシャ56と、を備えている。
【0027】
本実施形態の接地構造部50は、さらに、これら第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56を含む範囲の全周を密封するシール部57を備え、当該シール部57によって、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56が雨水などで被水することが防止されている。これにより、投光器1の屋外使用時においても、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56の電蝕が防止される。
【0028】
図6は、背面の側から視た投光器1の斜視図である。
本体ケース10の背面10Aには、配線孔61が開口しており、電源ケース12から引き出された配線60が配線孔61を通じて本体ケース10に引き込まれている。配線60は例えば電源装置19から照明部13へ電力を供給する電源線である。
本実施形態の第1金属部52は、配線孔61の周囲を囲む平面視略円環状を成し、本体ケース10の金属の素地を露出させて形成された平らな金属面となっている。かかる第1金属部52は、本体ケース10の表面処理(本実施形態では絶縁塗装)時に、当該第1金属部52の形成領域をマスキングした状態で表面処理することで形成される。
【0029】
第1金属部52の外周側には、当該第1金属部52を囲む壁部58が形成されており、壁部58の内側であって第1金属部52の表面上に波ワッシャ56が当該壁部58によって位置決めされた状態で収められる。
【0030】
壁部58の外周側には、平面視円環状の溝部59が形成されており、図5に示すように、上記シール部57の構成要素であるパッキン55が溝部59に嵌め込まれている。本実施形態ではパッキン55にOリングが用いられている。かかるパッキン55が背面10Aと電源ケース12の対向面12Cとの間で押し潰されることで、パッキン55の内側(すなわち、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56を含む範囲)が密封される。
【0031】
図7は、波ワッシャ56の斜視図である。
波ワッシャ56は、ウェーブワッシャとも言われ金属製の平面視円環状の板状部材である。かかる波ワッシャ56は、平らな第1金属部52の面に対して凸方向に折れ曲がった複数の第1部位56A、及び、凹方向に折れ曲がった複数の第2部位56Bを面内に含み、第1部位56A及び第2部位56Bの凹凸方向に弾性変形する弾性変形部材である。
【0032】
電源ケース12に設けられた第2金属部54は、図5に示すように、電源ケース12の対向面12Cの一部が本体ケース10に向けて凸状に変形した部位であり、上記第1金属部52と略同径の平面視円環状に形成されている。第2金属部54の先端部54Aは、第1金属部52と同様に、表面処理(本実施形態では絶縁塗装)時にマスキングされることで、電源ケース12の金属の素地を露出しており、かかる先端部54Aが上記金属製の波ワッシャ56を第1金属部52の側へ押圧することで当該波ワッシャ56を弾性変形させている。すなわち、波ワッシャ56は、第1金属部52の押圧によって、それぞれが金属の素地を露出した第1金属部52と第2金属部54とで挟み込まれており、当該波ワッシャ56を通じて第1金属部52及び第2金属部54が導通している。
【0033】
ここで、本体ケース10側への第2金属部54の突出量は、電源ケース12の対向面12Cと本体ケース10の背面10Aとの間の上記隙間δよりも若干小さくなっている。これにより、部品の寸法公差等によって第2金属部54の突出量が多少大きくなったとしても上記隙間δが拡がることがなく、また、隙間δが拡がることでシール部57のシール性が低下する、といったことも防止される。
さらに、第1金属部52と第2金属部54との間には、上記波ワッシャ56が介在するため、第1金属部52と第2金属部54との間に若干の隙間があっても、波ワッシャ56を通じて第1金属部52と第2金属部54とを確実に導通させることができる。
【0034】
また、本実施形態の接地構造部50は、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56のいずれも配線孔61を囲む環形状に形成されることで、図5に示すように、シール部57の内側に配線路62が形成され、この配線路62を通って電源ケース12から本体ケース10の内部へ配線60が延びている。これにより、当該配線60のための防水構造を別途に設けることがなく低コスト化を図ることができる。
【0035】
ところで、電源ケース12の内部から配線路62を通して、接地のためのアース線を本体ケース10の内部に導入し、当該アース線を通じて電源ケース12と本体ケース10とを導通させる構成も考え得る。
しかしながら、この構成においては、電源ケース12と本体ケース10とのそれぞれの内部でアース線を結線する必要があるため、組立作業性が悪く、製造コストがアップするという問題がある。
これに加え、電源ケース12の内部をアース線が延びるため、当該アース線が電源装置19の電子部品(特にコイル部品)から影響を受けて、ノイズを増大させるといった問題もある。
これに対し、本実施形態の接地構造部50では、アース線ではなく波ワッシャ56を用いて電源ケース12と本体ケース10とを導通させるため、組立作業性を高め、また、コスト及びノイズの増大を招くこともない。
【0036】
図8は、本実施形態の投光器1について行った、接地線のノイズ試験の試験結果を示す図である。同図において、ラインLは、電気照明及び類似機器の無線妨害波特性の許容値についてCISPR(国際無線障害特別委員会)が定めた値(すなわち、CISPR15)を示している。
同図に示されるように、本実施形態の接地構造部50において、第1金属部52と第2金属部54との間に波ワッシャ56を設けない場合には、矢印NAで示す周波数範囲でラインLXを超えるノイズが生じている。これに対し、波ワッシャ56を設けた場合には当該周波数範囲のノイズが抑えられ、ノイズの抑制効果を奏することが分かる。
【0037】
本実施形態の投光器1は、電源ケース12の底板20とカバー体22は別部品になっており,この部品間も導通させる必要がある。そのため、両方の部品の係合部にも上記波ワッシャ56が設けられており、これら底板20とカバー体22とが波ワッシャ56を挟み込むことで、互いが確実に導通するようになっている。これにより、電源ケース12と本体ケース10との導通と同様に、底板20とカバー体22との間をアース線で接続する必要がなく、組立作業性を高めることができる。
【0038】
なお、本実施形態の接地構造部50については、次のような変形が可能である。
例えば、配線60を接地構造部50の内部に通す必要がない場合、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56はいずれも平面視円環状形状でなくてもよい。
また、本実施形態の接地構造部50において、電源ケース12及び本体ケース10のそれぞれに設けられた構成が入れ替わってもよい。
また、第1金属部52及び第2金属部54は、電源ケース12及び本体ケース10を導通する適宜の導電性の部材であればよく、電源ケース12及び本体ケース10の素地でなくてもよい。
また、電源ケース12及び本体ケース10の表面処理は、絶縁塗装に限らず、表面に絶縁層を形成する任意の表面処理でもよい。
【0039】
次いで、照明部13の構成について詳述する。
【0040】
図9は照明部13の構成を示す平面図であり、図10図9のB-B線断面図である。
照明部13は、上述の通り、光源であるLED30と、光制御部材としての反射鏡32とを備え、反射鏡32には、LED30の配光を制御する反射面34が形成されている。本実施形態の照明部13は、1つの反射鏡32に対して4つのLED30を備え、反射鏡32には、LED30ごとに反射面34が設けられている。各反射面34は出射光を所定の配光角に制御する放物面であり、図9に示すように、隣接する反射面34の出射側開口端35同士が概ね接する程度まで近接して配置されることで、反射鏡32の平面視寸法の小型化が図られている。
【0041】
本実施形態のLED30は、多数の半導体発光素子を密集配置して平面視略円形状の発光面36が形成されたCOB型LED(COB:Chip On Board)であり、かかるCOB型LEDが光源に用いられることで、照明部13の高出力化が図られている。
【0042】
ここで、本実施形態の反射鏡32は、図10に示すように、各反射面34の設計光軸KAの方向の長さLAが、かかる発光面36を有したLED30の配光制御に用いられる通常の反射面に比べて短くなることで、反射鏡32の厚み寸法が抑えられている。
これにより、平面視寸法、及び、厚み寸法の両方を抑えたコンパクトな照明部13が実現されている。また、照明部13の厚み寸法が抑えられることで、本体ケース10の奥行き寸法も抑えられる。したがって、本体ケース10と、電源ケース12と、を備えた器具本体3において、電源ケース12を本体ケース10の背後に配置した場合でも、本体ケース10の奥行き寸法が抑えられることで、器具本体3の全体の奥行き寸法が抑えられ、投光器1の小型化、軽量化、及び低コスト化を図ることができる。
【0043】
ただし、何ら対策を施さなければ、反射面34の長さLAが短くなるほど、照度ムラや色ムラが目立つようになって照明品質が低下し、特に、看板照明においては、看板の表示面の色合いが変わるなどの悪影響を生じる。
【0044】
照度ムラの発生について説明すると、LED30の発光面36が点光源と見做せる程度に長くした反射面34の長さLAを基準とした場合、反射面34の長さLAが基準よりも短くなると、設計光軸KAに非平行な出射光成分が増える。このため、設計光軸KAを含む断面における配光形状は、図11に示すように、当該設計光軸KAの両側にピークを有する、いわゆる“ピーク割れ”の形状となり、中心光度(軸光度)が低下する。この結果、照射面において中心部の照度が低下した照度ムラを生じることになる。
【0045】
次に色ムラの発生について説明すると、本実施形態のLED30に用いられているCOB型LEDは、各半導体発光素子を覆い、これらの半導体発光素子の放射光によって励起されて蛍光を発する蛍光層を備え、各半導体発光素子が青色光を放射し、蛍光層が青色光によって励起されて黄色の蛍光を放射し、これら青色光と、蛍光による黄色光との混合によって白色光を放射している。
照射面の色見は白色光と黄色光との混合によるものであり、反射面34の長さLAが短い場合には、非平行光の成分が多くなることで白色光を多く含む成分が設計光軸KAから離間した位置に配置され、上述のピーク割れを生じる。これにより、照射面において、設計光軸KAに対応する箇所は相対的に黄色味を帯びる。
【0046】
また、一般に、かかる構成のCOB型LEDの放射光は、当該COB型LEDの光軸KBに対する放射角αによって、色度が変化する特性を有している。具体的には、図12に示すように、放射角αが大きくなるほど、色度ΔCCYが大きくなっている。色度ΔCCYは、xy色度図において白色点を基準に考えると、yが増加するほど黄色味が強くなり、yが減少するほど赤味が強くなるため、色度ΔCCYが増加するほど黄色味が強くなるといえる。したがって、比較的大きな放射角αの放射光を遮蔽する等して反射面34に入射させなければ、黄色の色ムラの発生が抑えられる。しかしながら、COB型LEDの放射光の一部が照明に利用されないため光学効率は低下してしまう。
また、COB型LEDにおいては、色偏差(Duv)を上昇させることで、発光効率を高めることができる。しかしながら、色偏差(Duv)を上昇させると発光色が黄色味を増し、色ムラの原因となる。なお、色偏差(Duv)とは、黒体放射軌跡からの偏差(ズレ)を表す値である。
このように、COB型LEDにおいては、効率を高めると色ムラの問題が顕著となる。
【0047】
そこで、本実施形態の反射面34は、短い長さLAでありながらも、効率を高めることが可能であり、なおかつ、照度ムラ及び色ムラの発生を抑えられるように構成されている。
具体的には、反射面34の配置を通常の設計とは異ならせ、さらに、反射膜70及び凹状ファセット80を反射面34に設けることで、上記の効果が得られるようになっている。
以下、かかる構成について詳述する。
【0048】
先ず、反射面34の配置について説明する。
本実施形態の反射面34は、図10に示すように、焦点FAを有した放物面であり、通常の設計においては、この焦点FAが発光面36に位置するようにLED30の上に配置される。これに対して本実施形態の反射面34は、焦点FAが発光面36から設計光軸KAに沿って上方に所定距離LC(本実施形態では0.5mm)だけ離間するように配置されている。
この配置により、図13に示すように、設計光軸KAを含む断面における配光形状が設計光軸KAにピークを有する形状となり、図11に示した“ピーク割れ”が解消される。これにより、中心光度(軸光度)が最大となり、照射面における照度ムラや色ムラの発生が抑えられる。
なお、図13のグラフは、後述する反射膜70及び凹状ファセット80を備えていない反射面34についてシミュレーションすることで得られたものである。
【0049】
次いで、反射面34の反射膜70について説明する。
反射膜70は、当該反射膜70を設けない場合に比べ、青色光の反射率を増大し、かつ、黄色光の反射率を低下させる膜であり、反射面34の表面全体に形成されている。
本実施形態の反射面34は、反射鏡32の基材の表面に適宜の塗料(本実施形態では、東洋工業塗料株式会社 製品名:UV-542)であるアンダーコート層が形成され、その上にアルミ蒸着層が形成されたものである。本実施形態の基材にはアルミニウム合金であるADC12が用いられており、基材には、この他にも例えば、純アルミニウムや樹脂材などの適宜の材料を用いることができる。
【0050】
本実施形態の反射膜70は、図10に示すように、反射膜層71と、互いに屈折率が異なる低屈折率材料層72、及び、高屈折率材料層74と、を反射面34の表面に積層形成したものである。本実施形態では、反射膜層71の材料には純度99.99%のアルミニウム材が用いられ、低屈折率材料層72の材料にはSiO(屈折率:1.46)が用いられ、高屈折率材料層74の材料には、低屈折率材料層72の材料よりも屈折率が大きいTiO(屈折率:2.5)が用いられている。
低屈折率材料層72、及び、高屈折率材料層74には、これらの材料の他にも、例えば、Ta(屈折率:2.16)、ZrO(屈折率:2.00から2.05)、MgF(屈折率:1.38から1.4)、Al(屈折率:1.63)などの公知又は周知の反射膜材料を用いることができる。
なお、材料名に併記した屈折率は、約550nmの波長に対する値である。
【0051】
かかる構成の反射膜70は、低屈折率材料層72、及び、高屈折率材料層74の膜厚を数nm単位で可変することで反射特性におけるピーク波長が変化する。
【0052】
図14は、本実施形態の反射面34の反射特性の測定結果を示す図である。
なお、同図には、反射面サンプルSA1と反射面サンプルSA2との2つの反射面34についての測定結果を示している。反射面サンプルSA1は、ピーク波長が425nmとなるように設計された反射膜70を有する反射面34である。反射面サンプルSA2は、ピーク波長が550nmとなるように設計された反射膜70を有する反射面34である。
同図に示されるように、反射面サンプルSA1は、反射面サンプルSA2に比べ、青色光の波長範囲R1で反射率が高く、かつ、黄色光の波長範囲R2で反射率が低くなる反射特性を有するものとなっていることが分かる。
【0053】
図15は、投光器1の放射スペクトルの測定結果を示す図である。
なお、この測定結果は、反射面34の反射面サンプルSA3、SA4、SA5について、投光器1から3メートル離れた地点で放射照度計を用いて測定して得られた結果である。反射面サンプルSA3は、ピーク波長が300nmとなるように設計された反射膜70を有する反射面34であり、反射面サンプルSA4は、ピーク波長が450nmとなるように設計された反射膜70を有する反射面34である。また反射面サンプルSA5は、ピーク波長が500nmとなるように設計された反射膜70を有する反射面34である。
同図に示されるように、ピーク波長が低くなるほど、黄色光の波長範囲R2の放射強度が低下することが分かる。
【0054】
これら図14及び図15の測定結果によれば、反射特性におけるピーク波長が青色光の波長範囲R1に近い450nm以下であり、黄色の補色となる青色光の反射率を高める反射膜70を反射面34に設けることで黄色光の反射率が低下し、かつ、青色光が増加することが分かる。したがって、かかる反射膜70を有した反射面34の出射光を照明光に用いることで、照射面における黄色の色ムラを目立ち難くできる。
【0055】
次に凹状ファセット80について説明する。
図16は、反射面34の構成を示す斜視図である。なお、前掲図9及び図10では、図面が煩雑になるのを避けるために、凹状ファセット80の図示を省略している。
図16に示すように、本実施形態の反射面34には、凹状のファセットである凹状ファセット80が隙間無く連続して設けられている。
【0056】
図17は凹状ファセット80の構成を示す図であり、図17(A)は平面図、図17(B)は断面図である。
凹状ファセット80は、色ムラを抑えるものであり、凹の開口側から視た平面視形状が、図17(A)に示すように、六角形となっている。出射光の拡散は、かかる凹状ファセット80の平面視形状の寸法及び凹量Qを可変することで調整することができ、拡散を大きくすることで色ムラを抑えることができる。しかしながら、拡散が大きいほど配光角も拡がるため、本実施形態では、色ムラを抑えつつ、配光角の増加が約6度以下に抑えられるように、凹状ファセット80が設計されている。
【0057】
かかる凹状ファセット80の設計は次の通りである。
【0058】
なお、以下の説明において、反射面34の設計光軸KAの方向を上下方向と定義し、当該反射面34の出射側開口端35(図5)を上方向と定義する。
また本実施形態の凹状ファセット80は、図16に示すように、六辺のうちの一対の辺が反射面34の周方向DAに平行になる姿勢で並べられている。そして、図17に示すように、凹状ファセット80の六辺のうち、最下端に位置し、かつ周方向DAに平行な辺を下辺80Dと言い、当該下辺80Dに対向し、かつ平行な辺を上辺80Uと言う。
また上辺80Uから下辺80Dまでの最短距離を高さHFと言い、周方向DAにおける凹状ファセット80の最大幅を幅WFと言い、この幅WFを示す線分MFから上辺80Uまでの最短距離を上方長さHUFと言う。凹状ファセット80の凹量Qは、当該凹状ファセット80の開口面80Pから最も凹んだ位置までの最短距離である。
【0059】
凹状ファセット80の設計を説明すると、先ず、出射側開口端35に周方向DAに並ぶ第1凹状ファセット80-1(図16)の寸法が決定される。
次いで、第1凹状ファセット80-1の寸法を基準に、当該第1凹状ファセット80-1の下方で接する第2凹状ファセット80-2の寸法が決定される。同様にして、第N凹状ファセット80-Nの寸法を基準に、当該第N凹状ファセット80-Nの下方で接する第N+1凹状ファセット80-N+1の寸法が決定される。
【0060】
第1凹状ファセット80-1の寸法は次のように決定される。
先ず、図16に示すように、放物面である反射面34を規定する放物線MAを特定し、図18に示すように、放物線MAを角度θだけ設計光軸KAを中心に回転させて得られる放物面85を求める。角度θは、第1凹状ファセット80-1の形成個数Zで360度を割った値(=360/Z)であり、形成個数Zは任意である。
そして、この放物面85において、第1凹状ファセット80-1の線分MFに対応する位置での周方向DAの長さに基づき幅WFを特定する。
【0061】
次いで、幅WFを2分した長さを下辺80Dの長さとする。
次に、次式(1)に基づき、凹量Qを決定する。
凹量Q=[(幅WF+下辺80Dの長さ)/2]×係数E (1)
ただし、係数Eは、配光角の許容値に応じて決まる値である。
【0062】
式(1)において、係数Eが大きくなるほど凹量Qが大きくなり、より大きな拡散が得られ、また配光角も大きくなるため、当該係数Eは、配光角が許容値を超えない範囲で設定される。例えば、係数Eが「0.1」程度あれば、1/10ビーム角が50度以内に収まり、また、「0.0008」であれば1/10ビーム角(配光角)の増大が約6度以下に収えられる。
【0063】
また、幅WF及び凹量Qが決まることで、図17(A)に示すように、当該WFで離間した凹状ファセット80上の2点PF1、PF2が定まり、これら2点PF1、PF2の中点PF3を凹量Qでませた点PF4(図17(B))が定まる。そして、凹状ファセット80の湾曲面として、これら点PF1、PF2、PF4のそれぞれを通る湾曲面が特定される。
【0064】
次いで、放物面85における上辺MAUの長さを高さHFに決定する。この上辺MAUは、放物面85において、反射面34の出射側開口端35に対応する位置を延びる辺である。
そして、高さHFを2分した長さを上方長さHUFとする。
これにより、第1凹状ファセット80-1について、平面視六角形状の寸法、及び凹量Q(湾曲面の形状)が決定される。
【0065】
第N+1凹状ファセット80-N+1(N=1以上の整数)は次のように設計される。
すなわち、幅WF、下辺80Dの長さ、及び凹量Qはそれぞれ、第1凹状ファセット80-1と同様の手順で設定される。一方、高さHFについては、第N凹状ファセット80-Nの下辺80Dを2倍した長さに設定される。
これにより、第N+1凹状ファセット80-N+1について平面視六角形状の寸法、及び凹量Q(湾曲面の形状)が決定される。
【0066】
図19は、本実施形態の反射面34の出射光の色度分布をシミュレーションした結果を示す図である。なお、同図のシミュレーションは、設計光軸KAを壁面上に配置した状態で当該壁面を反射面34の出射光で照射したときの色度分布を求めたものである。このシミュレーションは、発光面36からの焦点FAの所定距離LCが約0.5mmであり、上記反射膜70が設けられていない反射面34を対象に行われている。
同図に示すように、凹状ファセット80が反射面34に設けられていない場合、設計光軸KAの近傍範囲Tと、その周辺とで色温度の差が顕著となっており、当該近傍範囲Tで色温度が高くなっている。このような近傍範囲Tと、その周辺との色温度の差によって、比較的大きな色ムラが生じていることが分かる。
一方、凹状ファセット80が反射面34に設けられている場合、1/10ビーム角が約6度だけ拡がるものの、色温度の差は緩和され、色ムラが解消されていることが分かる。
【0067】
このように、本実施形態の反射面34は、長さLAが基準よりも短いながらも、焦点FAを発光面36から設計光軸KAに沿って離間するように配置されることで、照度ムラ及び色ムラが改善されている。
さらに、本実施形態の反射面34は、青色光の反射率を高める反射膜70が設けられることで色ムラが改善され、加えて、凹状ファセット80が設けられることで、配光角の拡がりを抑えつつ、色ムラをより一層抑えることができる。
【0068】
なお、反射面34などの寸法は、発光面36の最大径によって変わる。
本実施形態では、発光面36は、直径が5.5mmの平面視円形であり、これに対する反射面34は、長さLAが22.8mmとなっている。この場合において、発光面36から焦点FAまでの所定距離LCが0.5mm、反射膜70の反射特性におけるピーク波長が425nm、凹状ファセット80の各々の寸法の基準となる第1凹状ファセット80-1の寸法が次の値に設定されることで、配光角の増加が約6度以下に抑えられ、また色ムラも抑えられる。
すなわち、第1凹状ファセット80-1の寸法は、幅WFが5.7mm、凹量Qが0.0062mm(係数E=0.0008)、高さHFが約5.65mmである。
また反射膜70は、アルミニウムから成る反射膜層71の厚みが100nmから200nm、SiOから成る低屈折率材料層72の厚みが60nmから70nm、TiOから成る高屈折率材料層74の厚みが40nmから50nmである。
【0069】
なお、本実施形態の反射面34において、次のような変形が可能である。
例えば、凹状ファセット80は、必ずしも隙間無く設けられる必要はなく、色ムラ及び照度ムラが生じない範囲で減らしてもよい。
【0070】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0071】
本実施形態の投光器1は、LED30を収めた本体ケース10と、接地線40Aに電気的に接続された電源ケース12と、を備えた照明器具である。また投光器1は、本体ケース10と電源ケース12とを導通させる接地構造部50を備えている。この接地構造部50は、本体ケース10の背面10Aに設けられた第1金属部52と、電源ケース12の対向面12Cに設けられた第2金属部54と、第1金属部52及び第2金属部54に挟まれて弾性変形する導電性の波ワッシャ56と、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56を含む範囲を密封するシール部57と、を備えている。
【0072】
この構成によれば、第1金属部52と第2金属部54とが波ワッシャ56を介して導通するので、第1金属部52と第2金属部54との間に隙間があっても、波ワッシャ56を通じて第1金属部52と第2金属部54とを確実に導通させることができる。
さらに、シール部57によって、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56の被水が防止され、投光器1の屋外使用時においても、第1金属部52、第2金属部54、及び波ワッシャ56の電蝕が防止される。
【0073】
本実施形態において、本体ケース10、及び電源ケース12はそれぞれ、第1金属部52、及び第2金属部54を除き絶縁層が形成されている。
これにより、本体ケース10、及び電源ケース12の耐蝕性を高めつつ、接地構造部50によって、互いを確実に導通させることができる。また、接地構造部50の電蝕が防止されているため、当該電蝕による絶縁層の剥がれを防止できる。
【0074】
本実施形態において、本体ケース10、及び電源ケース12はいずれも金属製であり、第1金属部52、及び第2金属部54はいずれも、本体ケース10、及び電源ケース12の金属の素地を露出させて形成されている。
これにより、第1金属部52、及び第2金属部54の形成範囲を表面処理(本実施形態では絶縁塗装)時にマスキングするだけで、これら第1金属部52、及び第2金属部54を簡単に設けることができる。
【0075】
本実施形態において、接地構造部50は、シール部57によって密封された範囲に、本体ケース10と電源ケース12の間を延びる配線60を通す配線路62を有する。
これにより、配線路62を防水するための防水構造を接地構造部50と別途に設ける必要がなく、低コスト化が図られる。
【0076】
本実施形態の投光器1は、光を放射する面状の発光面36を有したLED30と、発光面36の光を制御する放物面の反射面34と、を備えた照明器具である。この反射面34は、放物面の焦点FAが発光面36から設計光軸KAに沿って離間した位置に配置されており、青色光の反射率を高める反射膜70が表面に設けられており、なおかつ、複数の凹状ファセット80が表面に設けられている。
【0077】
この構成によれば、焦点FAが発光面36から設計光軸KAに沿って離間した位置に配置されることで、照度ムラ及び色ムラが改善され、さらに反射膜70によって色ムラが改善され、加えて、凹状ファセット80によって配光角の拡がりを抑えつつ、色ムラがより一層抑えられる。
これにより、反射面34の長さLAを基準よりも短くした場合でも、照度ムラ及び色ムラの発生を抑え、照明品質を高めることができる。
また、LED30の色偏差(Duv)を上昇させ、または、大きな放射角αの範囲のLED30の放射光を反射面34に入射させることで、色ムラの発生を抑えつつ、効率を高めることができる。
【0078】
本実施形態において、反射膜70は、色ムラの対象の色(本実施形態では黄色)の光の反射率よりも当該色ムラの対象の色の補色(本実施形態では青色)の光の反射率を高める。
これにより、反射面34から出射される光が白色光である場合に、色ムラの対象の色を補色によって確実に打ち消して、色ムラを抑えることができる。
【0079】
本実施形態において、凹状ファセット80は、凹量Qによる配光角の増加が約6度以下であるため、出射光の拡がりを抑えつつ、色ムラを改善することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0081】
例えば、本発明は、投光器1に限らず、任意の用途の照明器具に適用できる。
【0082】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0083】
1 投光器(照明器具)
3 器具本体
10 本体ケース(第1ケース)
12 電源ケース(第2ケース)
12C 対向面
13 照明部
19 電源装置
20 底板
22 カバー体
30 LED(光源)
40A 接地線
50 接地構造部
52 第1金属部
54 第2金属部
55 パッキン
56 波ワッシャ(弾性変形部材)
57 シール部
61 配線孔
62 配線路
δ 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19