(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】目標軌跡生成システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E02F9/22 E
(21)【出願番号】P 2021074398
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 将貴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 翔
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆行
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/065384(WO,A1)
【文献】特開2021-050494(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049248(WO,A1)
【文献】特開2018-150771(JP,A)
【文献】特開2020-153731(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045579(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0106767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/24
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械本体に起伏可能に取り付けられたブーム、前記ブームに回転可能に取り付けられたアーム、および、前記アームに回転可能に取り付けられるとともに掘削対象物を掘削するバケットを備えるアタッチメントと、
前記アタッチメントの姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記バケットが掘削しようとしている位置における前記掘削対象物の
表面の角度を検出する形状検出部と、
前記バケットの先端部の前記掘削対象物への接触を検出する接触検出部と、
前記アームの先端部の目標軌跡であるアーム先端目標軌
跡と前記掘削対象物の
前記表面
とがなす角度である交差角度が
予め設定され
た交差角度設定部と、
前記アーム先端目標軌跡の終端と前記掘削対象物の前記表面との距離であるオフセット量が
予め設定され
たオフセット量設定部と、
前記アーム先端目標軌跡の形状に関する情報が予め設定された目標軌跡生成部と、
を備え、
前記目標軌跡生成部は、前記アーム先端目標軌跡を生成するものであり、
前記目標軌跡生成部は、前記バケットの先端部が前記掘削対象物に接触していない状態から接触した状態に変化したことを前記接触検出部が検出したときの前記アームの先端部の位置を、前記アーム先端目標軌跡の始端に設定し
、
前記目標軌跡生成部は、
設定した前記始端の位置と、前記形状検出部に検出された前記掘削対象物の前記表面の角度と、前記交差角度設定部に設定された前記交差角度と、前記アーム先端目標軌跡の形状に関する情報と、前記オフセット量設定部に設定された前記オフセット量と、に基づいて前記終端の位置を算出する、
目標軌跡生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の目標軌跡生成システムであって、
前記アーム先端目標軌跡は、直線状である、
目標軌跡生成システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の目標軌跡生成システムであって、
前記アーム先端目標軌跡の前記終端に前記アームの先端部が配置されるときの前記バケットの姿勢である終端バケット姿勢が
予め設定され
た終端バケット姿勢設定部を備え、
前記目標軌跡生成部は、前記バケットの目標軌跡であるバケット目標軌跡を生成し、
前記アーム先端目標軌跡の前記始端に前記アームの先端部が配置されたときに前記姿勢検出部に検出された前記バケットの姿勢を始端バケット姿勢としたとき、
前記目標軌跡生成部は、前記始端バケット姿勢から、前記終端バケット姿勢設定部に設定された前記終端バケット姿勢に、前記バケットが連続的に変化するように、前記バケットの目標軌跡を設定する、
目標軌跡生成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の目標軌跡生成システムであって、
前記アーム先端目標軌跡の前記始端と前記終端との間の特定の点である中間点に前記アームの先端部が配置されるときの前記バケットの姿勢を中間点バケット姿勢としたとき、
前記始端バケット姿勢から前記終端バケット姿勢までの前記バケットの姿勢の変化量に対する、前記始端バケット姿勢から前記中間点バケット姿勢までの前記バケットの姿勢の変化量の割合であるバケット回転割合が
予め設定され
たバケット回転割合設定部を備え、
前記目標軌跡生成部は、前記バケット回転割合設定部に設定された前記バケット回転割合に基づいて、前記中間点バケット姿勢を設定する、
目標軌跡生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のアタッチメントの目標軌跡を生成する目標軌跡生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、アタッチメントの目標軌跡(特許文献1ではバケットの爪先の推奨ライン)を生成する発明が記載されている(特許文献1の[0045]、
図5などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、アタッチメントの目標軌跡を具体的にどのように生成するかは記載されていない。また、アタッチメントの目標軌跡を生成する際に、計算負荷を抑制できることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、アタッチメントの目標軌跡の生成のための計算負荷を抑制しつつ、目標軌跡を一意に決定することができる、目標軌跡生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目標軌跡生成システムは、アタッチメントと、姿勢検出部と、形状検出部と、接触検出部と、目標軌跡生成部と、交差角度設定部と、オフセット量設定部と、を備える。前記アタッチメントは、ブーム、アーム、およびバケットを備える。前記ブームは、機械本体に起伏可能に取り付けられる。前記アームは、前記ブームに回転可能に取り付けられる。前記バケットは、前記アームに回転可能に取り付けられるとともに掘削対象物を掘削する。前記姿勢検出部は、前記アタッチメントの姿勢を検出する。前記形状検出部は、前記掘削対象物の形状に関する情報を検出する。前記接触検出部は、前記バケットの先端部の前記掘削対象物への接触を検出する。前記目標軌跡生成部は、前記アームの先端部の目標軌跡であるアーム先端目標軌跡を生成する。前記交差角度設定部には、前記アーム先端目標軌跡と前記掘削対象物の表面とがなす角度である交差角度が設定される。前記オフセット量設定部には、前記アーム先端目標軌跡の終端と前記掘削対象物の前記表面との距離であるオフセット量が設定される。前記目標軌跡生成部は、前記バケットの先端部が前記掘削対象物に接触していない状態から接触した状態に変化したことを前記接触検出部が検出したときの前記アームの先端部の位置を、前記アーム先端目標軌跡の始端に設定する。前記目標軌跡生成部には、前記アーム先端目標軌跡の形状に関する情報が予め設定される。前記目標軌跡生成部は、前記形状検出部に検出された前記掘削対象物の前記表面の角度と、前記交差角度設定部に設定された前記交差角度と、前記オフセット量設定部に設定された前記オフセット量と、前記アーム先端目標軌跡の形状に関する情報と、に基づいて前記終端の位置を算出する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、アタッチメントの目標軌跡の生成のための計算負荷を抑制しつつ、目標軌跡を一意に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】目標軌跡生成システム1の作業機械10を横から見た図である。
【
図2】
図1に示す目標軌跡生成システム1のブロック図である。
【
図3】
図1に示すバケット17およびアーム先端部15tの目標軌跡Tを横から見た図である。
【
図4】
図3に示す終端P3などを拡大した図である。
【
図5】
図3に示すアーム先端部15tが終端P3に到達した後のバケット17の回転の例を示す図である。
【
図6】
図3に示すアーム先端部15tが終端P3に到達した後の、アーム先端部15tの移動およびバケット17の回転の例を示す図である。
【
図7】
図3に示す表面A1の傾斜が
図3に示す例よりも急である場合の
図3相当図である。
【
図8】
図3に示す表面A1が平坦である場合の
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図8を参照して、目標軌跡生成システム1について説明する。
【0010】
目標軌跡生成システム1は、
図3に示すように、アタッチメント12の目標軌跡Tを生成するシステムである。目標軌跡生成システム1は、
図1に示す作業機械10と、姿勢検出部20と、形状検出部31と、
図2に示す接触検出部33と、コントローラ40と、を備える。
【0011】
作業機械10は、
図1に示すように、バケット17で掘削作業を行う機械であり、ショベルである。例えば、作業機械10は、建設作業を行う建設機械である。作業機械10は、機械本体11と、アタッチメント12と、駆動制御部19(
図2参照)と、を備える。
【0012】
機械本体11は、作業機械10の本体部分である。機械本体11は、下部走行体11aと、上部旋回体11bと、を備える。下部走行体11aは、作業機械10を走行させる。下部走行体11aは、例えばクローラを備える。上部旋回体11bは、下部走行体11aに旋回可能に搭載される。上部旋回体11bには、ブーム13(後述)が取り付けられる。
【0013】
(方向)
下部走行体11aに対する上部旋回体11bの旋回の回転軸が延びる方向を、上下方向Zとする。上下方向Zにおいて、下部走行体11aから上部旋回体11bに向かう側(向き)を上側Z1とし、その逆側を下側Z2とする。上部旋回体11bに対するブーム13(後述)の起伏の回転軸が延びる方向を、横方向Yとする。上下方向Zおよび横方向Yのそれぞれに直交する方向を、前後方向Xとする。前後方向Xにおいて、上部旋回体11bに対してアタッチメント12が突出する側を奥側X1とし、その逆側を手前側X2とする。
【0014】
アタッチメント12は、作業を行う部分であり、ブーム13と、アーム15と、バケット17と、を備える。ブーム13は、上部旋回体11bに起伏可能(上下方向Zに回転可能)に取り付けられる。アーム15は、ブーム13に回転可能に取り付けられる。アーム15の先端部(ブーム13に取り付けられる側とは反対側の端部)を、アーム先端部15t(アームトップ)とする。
【0015】
バケット17は、掘削対象物Aを掘削する。バケット17は、掘削対象物Aをすくうことが可能な形状を有する。バケット17は、アタッチメント12の先端部(上部旋回体11bに取り付けられる側とは反対側の端部)に設けられる。バケット17は、アーム15に回転可能に取り付けられる。具体的には、バケット17は、アーム先端部15tに、図示しないピン(アームトップピン)を介して取り付けられる。バケット17は、
図3に示すように、バケット開口面17aと、バケット先端17tと、を備える。バケット開口面17aは、バケット17の開口部(図示なし)と重なる面である。バケット先端17tは、バケット17の先端部(アーム15に取り付けられる側とは反対側の端部)であり、バケット17の刃先となる部分である。
【0016】
このバケット17に掘削される掘削対象物Aは、例えば土砂でもよく、土砂以外の掘削可能な物(例えば、金属、樹脂、ゴムなど)でもよい。掘削対象物Aの表面A1は、水平に延びるように設けられた面(平坦面)でもよく(
図8参照)、水平面に対して傾斜する面(傾斜面)でもよい。表面A1は、平面状でもよく、略平面状でもよく、曲面状でもよい。
【0017】
駆動制御部19は、
図1に示す作業機械10を作動させる。例えば、駆動制御部19は、作業機械10を駆動させる油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータを制御する油圧回路(図示なし)と、を備える。駆動制御部19を構成する油圧アクチュエータには、下部走行体11aに対して上部旋回体11bを旋回させる旋回モータ(図示なし)と、ブームシリンダ19aと、アームシリンダ19bと、バケットシリンダ19cと、がある。ブームシリンダ19aは、上部旋回体11bに対してブーム13を起伏させる。アームシリンダ19bは、ブーム13に対してアーム15を回転させる。バケットシリンダ19cは、アーム15に対してバケット17を回転させる。駆動制御部19は、旋回モータ、ブームシリンダ19a、アームシリンダ19b、およびバケットシリンダ19cの作動を制御することで、アタッチメント12の作動を制御する。
【0018】
姿勢検出部20は、アタッチメント12の姿勢(位置、角度)を検出する。姿勢検出部20は、旋回角センサ21と、ブーム角センサ22と、アーム角センサ23と、バケット角センサ24と、を備える。旋回角センサ21は、下部走行体11aに対する上部旋回体11bの旋回角度を検出する。ブーム角センサ22は、上部旋回体11bに対するブーム13の回転角度(起伏角度)を検出する。ブーム角センサ22は、上部旋回体11bに対するブーム13の回転軸に取り付けられる角度センサを備えてもよい。角度センサを備えてもよい点は、旋回角センサ21、アーム角センサ23、およびバケット角センサ24も同様である。ブーム角センサ22は、水平面に対するブーム13の傾斜角度を検出する傾斜センサを備えてもよい(アーム角センサ23およびバケット角センサ24も同様)。ブーム角センサ22は、ブームシリンダ19aのストロークを検出するストロークセンサを備えてもよい(シリンダのストロークを検出してもよい点は、アーム角センサ23およびバケット角センサ24も同様)。ブーム角センサ22は、二次元画像または距離画像に基づいてブーム13の姿勢を検出するものでもよく、例えば形状検出部31と兼用されてもよい(旋回角センサ21、アーム角センサ23、およびバケット角センサ24も同様)。アーム角センサ23は、ブーム13に対するアーム15の回転角度を検出する。バケット角センサ24は、アーム15に対するバケット17の回転角度を検出する。バケット角センサ24は、バケット17とアーム15とに接続されるリンク部材の姿勢(例えば傾斜角度)を検出することで、アーム15に対するバケット17の回転角度を検出してもよい。
【0019】
この姿勢検出部20は、位置測位システム(例えば衛星測位システムなど)により、作業現場に対する作業機械10の位置を検出してもよい。例えば、姿勢検出部20は、作業現場に対する上部旋回体11bの位置および向きを位置測位システムにより検出し、作業現場に対するアタッチメント12の姿勢を検出してもよい。位置測位システムは、衛星測位システムでもよく、例えばGNSS(global navigation satellite system)でもよい。位置測位システムは、トータルステーションを用いたものでもよい。姿勢検出部20が衛星測位システムを備える場合は、姿勢検出部20は、衛星測位のための信号を受信するためのアンテナを備えてもよい。
【0020】
形状検出部31は、掘削対象物Aの形状に関する情報(例えば後述する表面角度α)を検出する。例えば、形状検出部31は、掘削対象物Aの位置および形状の三次元情報を検出する。形状検出部31は、距離の情報(奥行きの情報)を有する画像(距離画像)を取得する、撮像装置である。形状検出部31は、距離画像と二次元画像とに基づいて、掘削対象物Aの三次元情報を検出してもよい。
【0021】
この形状検出部31は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。形状検出部31は、作業機械10に搭載されてもよく、作業機械10の外部(例えば作業現場)に配置されてもよい(姿勢検出部20、
図2に示す接触検出部33、およびコントローラ40についても同様)。
図1に示す形状検出部31が作業機械10の外部に配置される場合は、形状検出部31が作業機械10のみに搭載された場合には検出できない位置(例えばアタッチメント12の陰になる部分など)を検出できる場合がある。また、形状検出部31が作業機械10の外部に配置される場合は、本実施形態の目標軌跡生成システム1を、形状検出部31を備えていない作業機械10に適用することができる。
【0022】
この形状検出部31は、レーザー光を用いて三次元の情報を検出する装置を備えてもよく、例えばLiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えてもよく、TOF(Time Of Flight)センサを備えてもよい。形状検出部31は、電波を用いて三次元の情報を検出する装置(例えばミリ波レーダなど)を備えてもよい。形状検出部31は、ステレオカメラを備えてもよい。形状検出部31が三次元の情報と二次元の情報とに基づいて掘削対象物Aの三次元の位置および形状を検出する場合などには、形状検出部31は、二次元の画像を検出可能なカメラを備えてもよい。
【0023】
接触検出部33(
図2参照)は、バケット先端17tの掘削対象物Aへの接触を検出する。例えば、接触検出部33は、アタッチメント12を作動させる油圧シリンダ(例えばバケットシリンダ19c)に作用する圧力を検出することで、バケット先端17tの掘削対象物Aへの接触を検出してもよい。接触検出部33は、バケット17および掘削対象物Aを含む二次元画像または距離画像に基づいて、バケット先端17tの掘削対象物Aへの接触を検出してもよい。この場合、二次元画像または距離画像は、形状検出部31と兼用されてもよい。
【0024】
コントローラ40は、
図2に示すように、信号の入出力、演算(処理)、および情報の記憶などを行う。例えば、コントローラ40は、姿勢検出部20に検出されたアタッチメント12(
図1参照)の姿勢の情報を取得する。例えば、コントローラ40は、演算結果を記憶する。コントローラ40は、作業機械10(
図1参照)を自動運転させる制御を行う、自動運転コントローラである。コントローラ40は、
図3に示す目標軌跡Tに沿ってアタッチメント12が移動するように、アタッチメント12の作動を制御する。
図2に示すように、コントローラ40は、交差角度設定部41と、オフセット量設定部42と、終端バケット姿勢設定部43と、バケット回転割合設定部44と、目標軌跡生成部45と、指令部46と、を備える。
【0025】
交差角度設定部41は、後述する交差角度β(
図3参照)が設定される部分である。オフセット量設定部42は、後述するオフセット量Oが設定される部分である。終端バケット姿勢設定部43は、後述する終端バケット姿勢Q3(
図3参照)が設定される部分である。バケット回転割合設定部44は、後述するバケット回転割合p2θ_ratioが設定される部分である。目標軌跡生成部45は、後述する目標軌跡T(
図3参照、目標パス)を生成する。指令部46は、
図3に示す目標軌跡Tに沿ってアタッチメント12が移動するようにアタッチメント12を制御する。
図2に示す指令部46は、目標軌跡Tの情報と、現在のアタッチメント12(
図1参照)の姿勢の情報と、の差異に基づいて、各アクチュエータ(例えばブームシリンダ19a(
図1参照)など)の目標速度の指令を駆動制御部19に出力する。
【0026】
(目標軌跡T)
図3に示す目標軌跡Tは、目標軌跡生成部45(
図2参照)に生成される。目標軌跡Tには、アーム先端目標軌跡Taと、バケット目標軌跡Tbと、がある。
【0027】
アーム先端目標軌跡Taは、アーム先端部15tの目標軌跡Tである。目標軌跡生成部45には、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報が予め(目標軌跡Tの生成よりも前に)設定される。「アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報」は、アーム先端目標軌跡Taがどのような形状であるかを特定する情報である。アーム先端目標軌跡Taの形状は、様々に設定可能である。
【0028】
[例A1]例えば、アーム先端目標軌跡Taは、直線状に設定される。この場合、アーム先端目標軌跡Taが直線状でない場合に比べ、目標軌跡生成部45(
図2参照)による計算負荷が抑制される。
【0029】
[例A2]例えば、アーム先端目標軌跡Taは、略直線状でもよく、曲線状でもよく、折れ線状でもよく、直線と曲線とを組み合わせた形状でもよい。上記「曲線状」の少なくとも一部は、弧状でもよく、円弧状または略円弧状でもよい。
【0030】
コントローラ40(
図2参照)は、アーム先端部15tがアーム先端目標軌跡Taに沿って移動するように、アタッチメント12を制御する。なお、アーム先端部15tの実際の移動の軌跡は、アーム先端目標軌跡Taと厳密に一致する必要はない。例えば、アーム先端目標軌跡Taが直線状の場合でも、アーム先端部15tの実際の移動の軌跡は略直線でもよい。
【0031】
横方向Yから見たとき、アーム先端目標軌跡Taは、上下方向Zに対して傾斜してもよく、上下方向Zと一致してもよく、前後方向Xと一致してもよい。例えば、アーム先端目標軌跡Taは、前後方向Xから見たとき(図示なし)、上下方向Zと一致または略一致する。この場合、アーム先端部15tがアーム先端目標軌跡Taに沿って移動するときには、
図1に示す上部旋回体11bは、下部走行体11aに対して旋回しない(または略旋回しない)。
図3に示すように、アーム先端目標軌跡Taには、始端P1と、終端P3と、中間点P2と、がある。
【0032】
始端P1は、アーム先端目標軌跡Taにおける、アーム先端部15tの移動の開始点である。終端P3は、アーム先端目標軌跡Taにおける、アーム先端部15tの移動の終了点である。中間点P2は、始端P1と終端P3との間の特定の点である。例えば、中間点P2は、始端P1と終端P3との中点でもよく、始端P1と終端P3との間の中点以外の特定の点でもよい。中間点P2は、複数設定されてもよい。
【0033】
バケット目標軌跡Tbは、バケット17の目標軌跡Tである。バケット目標軌跡Tbは、アーム先端部15tが始端P1から終端P3に移動するときの、バケット17の姿勢(位置および角度)に関する情報である。具体的には例えば、バケット目標軌跡Tbは、基準とする方向に対するバケット17の角度の情報を含んでもよい。具体的には例えば、バケット目標軌跡Tbは、水平方向Hに対するバケット開口面17aの角度(バケット回転角θ)の情報を含んでもよい。バケット目標軌跡Tbは、バケット先端17tの位置の情報を含んでもよい。以下では主に、バケット目標軌跡Tbがバケット回転角θの情報を含む場合について説明する。バケット17の姿勢には、始端バケット姿勢Q1と、終端バケット姿勢Q3と、中間点バケット姿勢Q2と、がある。
【0034】
始端バケット姿勢Q1は、アーム先端部15tが始端P1に配置されたときのバケット17の姿勢である。さらに詳しくは、始端バケット姿勢Q1は、アーム先端部15tが始端P1に配置されたときに、姿勢検出部20に検出されるバケット17の姿勢である。終端バケット姿勢Q3は、アーム先端部15tが終端P3に配置されるときのバケット17の姿勢である。中間点バケット姿勢Q2は、アーム先端部15tが中間点P2に配置されるときのバケット17の姿勢である。目標軌跡生成部45(
図2参照)は、始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3にバケット17が連続的に変化するように、バケット目標軌跡Tbを設定する。始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3にバケット17の姿勢が変化する際の、バケット17の回転の向きは、バケット17が掘削対象物Aを掘削する向き(
図3に示す例ではバケット回転角θが大きくなる向き)である。始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3にバケット17の姿勢が変化する際の、バケット17の回転速度は、一定でもよく、変化してもよい(後述するバケット回転割合p2θ_ratioの説明を参照)。
【0035】
(目標軌跡Tの生成の前に設定される情報)
上記のように、目標軌跡生成部45(
図2参照)による目標軌跡Tの生成の前に(予め)、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報が目標軌跡生成部45に設定される。また、目標軌跡生成部45による目標軌跡Tの生成の前に(予め)、コントローラ40(
図2参照)に、交差角度β、オフセット量O、終端バケット姿勢Q3、およびバケット回転割合p2θ_ratioが設定される。
【0036】
交差角度βは、アーム先端目標軌跡Taと、掘削対象物Aの表面A1と、がなす角度である。アーム先端目標軌跡Taが直線状である場合は、交差角度βは、例えば、形状検出部31(
図2参照)に検出された表面角度αと、アーム先端目標軌跡Taと、がなす角度である。アーム先端目標軌跡Taが直線状でない場合(例えば曲線状などの場合)は、交差角度βは、始端P1と終端P3とを通る直線と、掘削対象物Aの表面A1と、がなす角度でもよい。また、アーム先端目標軌跡Taが直線状でない場合は、交差角度βは、始端P1でのアーム先端目標軌跡Taが延びる方向(例えば接線)と、掘削対象物Aの表面A1と、がなす角度でもよい。交差角度βは、交差角度設定部41(
図2参照)に設定される。交差角度βは、固定値でもよく、作業者に手動で入力された値でもよく、何らかの条件に基づいてコントローラ40に自動的に算出された値でもよい(オフセット量O、終端バケット姿勢Q3、およびバケット回転割合p2θ_ratioについても同様)。
【0037】
例えば、交差角度βが大きいほど、掘削対象物Aが深く掘られ、掘削対象物Aの掘削量が多くなる。交差角度βが小さいほど、掘削対象物Aが浅く掘られ、掘削対象物Aの掘削量が少なくなる。例えば、掘削対象物Aの掘削量が多すぎる場合は、バケット17から掘削対象物Aがこぼれやすい。また、掘削対象物Aの掘削量が少なすぎる場合は、掘削の作業効率が悪い。そこで、交差角度βが適切に設定されることで、掘削対象物Aの掘削量を適切な量にすることができる。
【0038】
例えば、交差角度βが大きいほど、アタッチメント12に掛かる負荷が大きくなる。交差角度βが小さいほど、アタッチメント12に掛かる負荷が小さくなる。交差角度βが適切に設定されることで、アタッチメント12に掛かる負荷を適切な大きさにすることができる。例えば、掘削対象物Aが固いほど、アタッチメント12に掛かる負荷が大きくなる。アタッチメント12に掛かる負荷が大きすぎる場合は、交差角度βを小さく設定することで、アタッチメント12に掛かる負荷が抑制される(負荷を逃がすことができる)。
【0039】
図4に示すように、オフセット量Oは、終端P3と表面A1との距離である。オフセット量Oは、終端P3と表面A1との鉛直方向における距離(鉛直方向オフセット量O1)でもよい。オフセット量Oは、アーム先端目標軌跡Taが延びる向きにおける、終端P3と表面A1との距離(延長方向オフセット量O2)でもよい。オフセット量Oは、表面A1と直交する方向における、終端P3と表面A1との距離(図示なし)でもよい。
【0040】
オフセット量Oは、オフセット量設定部42(
図2参照)に設定される。終端P3と表面A1とは、一致してもよい。すなわち、オフセット量Oは、ゼロでもよい。終端P3は、表面A1よりも上側Z1に設定されてもよい(この場合のオフセット量Oを正の値とする)。終端P3は、表面A1よりも下側Z2に設定されてもよい(この場合のオフセット量Oを負の値とする)。オフセット量Oが小さいほど、掘削対象物Aが深く掘られる。オフセット量Oが大きいほど、掘削対象物Aが浅く掘られる。オフセット量Oが適切に設定されることで、掘削対象物Aの掘削量、および、アタッチメント12に掛かる負荷を適切な大きさに設定することができる(交差角度βと同様)。例えば、オフセット量Oは、終端P3の位置が表面A1の近傍となるように設定される。具体的には例えば、
図3に示すように横方向Yから見たとき、アーム15に対するバケット17の回転中心(
図3では始端P1の位置)から、バケット先端17tまでの直線距離を、「バケット開口面17aの長さ」とする。オフセット量Oが正の値の場合、オフセット量O(例えば鉛直方向オフセット量O1(
図4参照)、例えば延長方向オフセット量O2)の大きさは、バケット開口面17aの長さの50%以下でもよく、40%以下でもよく、30%以下でもよく、20%以下でもよく、10%以下でもよい。オフセット量Oの大きさは、バケット開口面17aの長さの0%以上でもよく、10%以上でもよく、20%以上でもよく、30%以上でもよく、40%以上でもよく、50%以上でもよい。例えば、アタッチメント12に掛かる負荷を抑制したい場合は、オフセット量Oの大きさは、バケット開口面17aの長さの30%以上であることが好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上がさらに好ましい。例えば、掘削対象物Aの掘削量をできるだけ確保したい場合は、オフセット量Oの大きさは、バケット開口面17aの長さの20%以下であることが好ましく、10%以下がさらに好ましく、0以下(すなわち終端P3は、表面A1と同じ高さまたは下側Z2であること)がさらに好ましい。
【0041】
例えば、オフセット量Oは、バケット17が終端バケット姿勢Q3のときのバケット開口面17aの全体または略全体が、掘削前の表面A1の内側(表面A1よりも奥側X1かつ下側Z2)に配置されるように設定される。例えば、終端バケット姿勢Q3のときに掘削前の表面A1の内側に配置されるバケット開口面17aの割合(上記「全体または略全体」の具体例)は、50%以上でもよく、60%以上でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上でもよく、100%でもよい。上記の割合は、90%以下でもよく、80%以下でもよく、70%以下でもよく、60%以下でもよく、50%以下でもよい。例えば、アタッチメント12に掛かる負荷を抑制したい場合は、上記の割合は、80%以下であることが好ましく、70%以下がさらに好ましく、60%以下がさらに好ましく、50%以下がさらに好ましい。例えば、掘削対象物Aの掘削量をできるだけ確保したい場合は、上記の割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%がさらに好ましい。
【0042】
終端バケット姿勢Q3は、終端バケット姿勢設定部43(
図2参照)に設定される。具体的には例えば、終端バケット姿勢Q3は、バケット開口面17aが鉛直方向(または略鉛直方向)に延びるような姿勢(バケット回転角θが90°または略90°)として設定される。なお、終端バケット姿勢Q3のバケット回転角θは、90°や略90°でなくてもよい。
【0043】
バケット回転割合p2θ_ratioは、バケット回転割合設定部44(
図2参照)に設定される。バケット回転割合p2θ_ratioは、始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3までのバケット17の姿勢の変化量に対する、始端バケット姿勢Q1から中間点バケット姿勢Q2までのバケット17の姿勢の変化量の割合である。具体的には例えば、始端P1から終端P3までにおいてバケット回転角θが45°から90°に変化し、中間点P2においてバケット回転角θが60°である場合について考える。この場合、始端P1から終端P3までのバケット回転角θの変化量は45度である。始端P1から中間点P2までのバケット回転角θの変化量は15度である。この場合、バケット回転割合p2θ_ratioは、15/45であり、約33%である。なお、上記のバケット回転角θの数値は一例であり、始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3でのバケット回転角θは様々に設定可能である。
【0044】
(目標軌跡Tの生成)
目標軌跡Tは、次のように生成される。
【0045】
(掘削対象物Aの形状の検知)
図1に示す形状検出部31が、掘削対象物Aの形状に関する情報を検出する。具体的には、形状検出部31は、表面A1の角度(表面角度α)を検出する。例えば、形状検出部31は、バケット17が掘削しようとしている位置(またはその近傍)における表面A1の表面角度αを検出する。表面角度αは、基準とする方向(例えば水平方向H)に対する表面A1の角度である。
【0046】
(始端P1、始端バケット姿勢Q1の決定)
図3に示す始端P1の位置、および始端バケット姿勢Q1が、次のように決定される。バケット先端17tが掘削対象物Aに接触していない状態から接触した状態に変化したことを、接触検出部33(
図2参照)が検出する。目標軌跡生成部45(
図2参照、以下目標軌跡生成部45について同様)は、この時のアーム先端部15tの位置を、始端P1として設定する。目標軌跡生成部45は、この時のバケット17の姿勢を、始端バケット姿勢Q1として設定する。例えば、始端P1の前後方向X方向における位置(x座標)を、p1xとする。始端P1の上下方向Zにおける位置(z座標)を、p1zとする。始端バケット姿勢Q1のときのバケット回転角θを、p1θとする。
【0047】
(アーム先端目標軌跡Taの向きおよび終端P3の算出)
目標軌跡生成部45は、表面角度αと、交差角度βと、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報と、オフセット量Oと、に基づいて、終端P3の位置を設定(算出、生成)する。
【0048】
目標軌跡生成部45は、表面角度αと交差角度βとに基づいて、アーム先端目標軌跡Taの向きを設定する。「アーム先端目標軌跡Taの向き」は、始端P1から終端P3に直線的に向かう向きである。例えば、アーム先端目標軌跡Taの向きは、水平方向Hに対するアーム先端目標軌跡Taの角度で表される。具体的には、目標軌跡生成部45は、形状検出部31(
図1参照)に検出された表面角度αと、交差角度設定部41(
図2参照)に設定された交差角度βと、の和(α+β)を、アーム先端目標軌跡Taの向きとして設定する。なお、アーム先端目標軌跡Taが直線状でない場合は、「アーム先端目標軌跡Taの向き」は、始端P1から終端P3に直線的に向かう向きでもよい。アーム先端目標軌跡Taの向きは、始端P1から終端P3に向かう向きであって始端P1でのアーム先端目標軌跡Taが延びる向き(例えば曲線状などのアーム先端目標軌跡Taの接線の向き)でもよい。以下では主に、アーム先端目標軌跡Taが直線状である場合について説明する。
【0049】
目標軌跡生成部45は、例えば次のように終端P3の位置を算出する。目標軌跡生成部45は、始端P1から終端P3までの距離(直線距離、最短距離)(長さL)に基づいて、終端P3の位置を算出する。例えば、オフセット量Oが、アーム先端目標軌跡Taが延びる向きにおける、終端P3と表面A1との距離(延長方向オフセット量O2)であるとする。このとき、長さLは、アーム先端目標軌跡Taの向きに延びる直線上の、始端P1から表面A1までの距離から、オフセット量Oを引いた値である。
【0050】
目標軌跡生成部45は、アーム先端目標軌跡Taの向き(α+β)および長さLに基づいて、終端P3の位置座標(x座標:p3x、z座標:p3z)を、例えば次の式により算出する。
p3x=p1x-Lcos(α+β)
p3z=p1z-Lsin(α+β)
【0051】
なお、終端P3の位置の算出は、様々に行われてもよい。例えば、
図4に示すように、オフセット量Oが、終端P3と表面A1との鉛直方向における距離(鉛直方向オフセット量O1)であるとする。この場合、目標軌跡生成部45は、始端P1(
図3参照)からアーム先端目標軌跡Taの向きに延びる直線と、表面A1をオフセット量Oだけ鉛直方向に平行移動した面と、の交点の位置を、終端P3の位置として算出してもよい。
【0052】
(終端バケット姿勢Q3の決定)
目標軌跡生成部45は、終端バケット姿勢設定部43(
図2参照)に設定された情報を、
図3に示す終端バケット姿勢Q3として設定する。具体的には例えば、上記のように、終端バケット姿勢Q3でのバケット回転角θ(p3θとする)は、90°などである。
【0053】
(中間点P2の算出)
目標軌跡生成部45は、始端P1および終端P3の位置に基づいて、中間点P2の位置を決定する。例えば、中間点P2の位置が、始端P1と終端P3との中点である場合は、目標軌跡生成部45は、中間点P2の位置座標(x座標:p2x、z座標:p2z)を、次の式により算出する。
p2x=(p1x+p3x)/2
p2z=(p1z+p3z)/2
【0054】
(中間点バケット姿勢Q2の算出)
目標軌跡生成部45は、始端バケット姿勢Q1と終端バケット姿勢Q3との間の姿勢を、中間点バケット姿勢Q2として設定する。中間点バケット姿勢Q2のバケット回転角θ(p2θとする)は、始端バケット姿勢Q1でのバケット回転角θ(すなわちp1θ)と終端バケット姿勢Q3でのバケット回転角θ(すなわちp3θ)との間の角度である。
【0055】
バケット17が、始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3まで一定の回転速度で回転するような、バケット目標軌跡Tbが設定されてもよい。具体的には例えば、目標軌跡生成部45は、中間点バケット姿勢Q2のバケット回転角θ(p2θ)を、次の式により算出してもよい。
p2θ=(p1θ+p3θ)/2
【0056】
始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3にバケット17の姿勢が変化する時に、バケット17の回転速度が変化するような、バケット目標軌跡Tbが設定されてもよい。例えば、始端バケット姿勢Q1から中間点バケット姿勢Q2までのバケット17の回転速度に比べ、中間点バケット姿勢Q2から終端バケット姿勢Q3までの回転速度が速く設定されてもよい。具体的には例えば、目標軌跡生成部45は、バケット回転割合設定部44(
図2参照)に設定されたバケット回転割合p2θ_ratioに基づいて、中間点バケット姿勢Q2を設定してもよい。例えば、目標軌跡生成部45は、中間点バケット姿勢Q2でのバケット回転角θ(すなわちp2θ)を、次の式により算出してもよい。
p2θ=p1θ+(p3θ-p1θ)×p2θ_ratio
【0057】
なお、中間点P2は、複数設定されてもよい。この場合、複数の中間点P2ごとに、バケット回転割合p2θ_ratioが設定されてもよい。
【0058】
(終端P3到達後)
アーム先端部15tが終端P3に到達した後の、アーム先端部15tおよびバケット17の目標とする軌跡は、様々に設定可能である。
【0059】
[例B1]
図5に示すように、アーム先端部15tが終端P3に到達した後、アーム先端部15tの位置が固定されたまま、バケット17が回転してもよい。このとき、バケット回転角θが大きくなる向きに(掘削対象物Aをすくう向きに)、バケット17が回転してもよい。このようにバケット17が回転することで、バケット17が掘削対象物Aをすくうことができる。バケット17が所定の角度まで回転した後、アーム先端部15tが上側Z1に移動してもよい。
【0060】
[例B2]
図6に示すように、アーム先端部15tが終端P3に到達した後、アーム先端部15tが奥側X1(アーム15押し側)に移動しながら、バケット回転角θが大きくなる向きに、バケット17が回転してもよい。この場合、アーム先端部15tが奥側X1に移動するので、バケット17よりも手前側X2の掘削対象物Aが手前側X2に崩れることが抑制される。表面角度αが大きいほど、掘削対象物Aが手前側X2に崩れることを抑制することが有効になる。なお、例えば表面A1が平坦である場合(
図8参照)に、アーム15が奥側X1に移動しながら、バケット回転角θが大きくなる向きにバケット17が回転してもよい。また、アーム15が奥側X1に移動しながら、バケット回転角θが大きくなる向きにバケット17が回転することで、掘削対象物Aの掘削量が多くなりすぎることが抑制され、バケット17から掘削対象物Aがこぼれ落ちることが抑制される。アーム15が奥側X1に所定の距離だけ移動し、バケット17が所定の角度まで回転した後、アーム先端部15tが上側Z1に移動してもよい。
【0061】
(様々な表面角度α)
上記のように、目標軌跡生成部45は、
図3に示すように、検出された始端P1の位置および表面角度α、ならびに、予め設定されたアーム先端目標軌跡Taの形状、交差角度βおよびオフセット量Oに基づいて、終端P3の位置を算出する。そして、目標軌跡生成部45は、始端P1と、終端P3と、アーム先端目標軌跡Taの形状と、に基づいてアーム先端目標軌跡Taを生成する。例えば、アーム先端目標軌跡Taが直線状の場合は、始端P1と終端P3とを結ぶ直線を、アーム先端目標軌跡Taとする。目標軌跡生成部45は、表面角度αがどのような大きさでも、始端P1、表面角度α、交差角度β、アーム先端目標軌跡Taの形状、およびオフセット量Oに基づいて、終端P3の位置を算出することができる。よって、目標軌跡生成部45は、様々な表面角度αで、アーム先端目標軌跡Taを一意に決めることができる。例えば、
図3に示すように表面A1の傾斜が緩やか(例えば表面角度αが約0°より大きく、45°未満)でも、
図7に示すように表面A1の傾斜が急(例えば表面角度αが45°以上)でも、アーム先端目標軌跡Taが、一意に決まる。例えば、
図8に示すように、表面A1が平坦(例えば表面角度α(
図7参照)が約0°)でも、アーム先端目標軌跡Taが、一意に決まる。また、交差角度βおよびオフセット量Oが変えられることで、掘削の深さ、およびアタッチメント12に掛かる負荷が変えられる。表面角度αが変わっても、交差角度βおよびオフセット量Oが適切に設定されることで、掘削対象物Aの掘削量を確保しつつ、アタッチメント12に負荷が掛かりすぎることを抑制することができる(負荷を逃がすことができる)。
【0062】
また、目標軌跡生成部45は、
図3に示す始端バケット姿勢Q1と、終端バケット姿勢設定部43(
図2参照)に設定された終端バケット姿勢Q3と、一意に決めたアーム先端目標軌跡Taと、に基づいてバケット目標軌跡Tbを設定する。よって、目標軌跡生成部45は、様々な表面角度αで、バケット目標軌跡Tbを一意に決めることができる。
【0063】
(第1の発明の効果)
図1に示す目標軌跡生成システム1による効果は、次の通りである。目標軌跡生成システム1は、アタッチメント12と、姿勢検出部20と、形状検出部31と、
図2に示す接触検出部33と、目標軌跡生成部45と、交差角度設定部41と、オフセット量設定部42と、を備える。
図1に示すように、アタッチメント12は、ブーム13と、アーム15と、バケット17と、を備える。ブーム13は、機械本体11に起伏可能に取り付けられる。アーム15は、ブーム13に回転可能に取り付けられる。バケット17は、アーム15に回転可能に取り付けられるとともに掘削対象物Aを掘削する。姿勢検出部20は、アタッチメント12の姿勢を検出する。形状検出部31は、掘削対象物Aの形状に関する情報を検出する。接触検出部33(
図2参照)は、バケット17の先端部(バケット先端17t)の掘削対象物Aへの接触を検出する。目標軌跡生成部45(
図2参照)は、
図3に示すアーム15の先端部(アーム先端部15t)の目標軌跡Tであるアーム先端目標軌跡Taを生成する。交差角度設定部41(
図2参照)には、掘削対象物Aの表面A1と、アーム先端目標軌跡Taと、がなす角度である交差角度βが設定される。オフセット量設定部42(
図2参照)には、
図4に示すアーム先端目標軌跡Taの終端P3と、掘削対象物Aの表面A1と、の距離であるオフセット量Oが設定される。
【0064】
[構成1-1]目標軌跡生成部45(
図2参照)は、
図3に示すバケット先端17tが掘削対象物Aに接触していない状態から接触した状態に変化したことを接触検出部33(
図2参照)が検出したときのアーム先端部15tの位置を、アーム先端目標軌跡Taの始端P1に設定する。
【0065】
[構成1-2]目標軌跡生成部45(
図2参照)には、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報が予め設定される。
【0066】
[構成1-3]目標軌跡生成部45(
図2参照)は、掘削対象物Aの表面A1の角度(表面角度α)と、交差角度設定部41(
図2参照)に設定された交差角度βと、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報と、オフセット量設定部42(
図2参照)に設定されたオフセット量Oと、に基づいて終端P3の位置を算出する。
【0067】
上記[構成1-1]により、アーム先端目標軌跡Taの始端P1の位置が決まり、上記[構成1-3]によりアーム先端目標軌跡Taの終端P3の位置が決まる。また、上記[構成1-2]では、アーム先端目標軌跡Taの形状に関する情報が目標軌跡生成部45に設定(予め設定)されている。したがって、目標軌跡生成システム1により、アーム先端目標軌跡Taを一意に決定することができる。
【0068】
上記[構成1-3]では、表面角度α、交差角度β、アーム先端目標軌跡Taの形状(形状に関する情報)、およびオフセット量Oに基づいて、アーム先端目標軌跡Taが生成される。アーム先端目標軌跡Taは、目標軌跡生成部45(
図2参照)に設定された値であり(上記[構成1-2])、交差角度βは、交差角度設定部41(
図2参照)に設定された値であり、オフセット量Oは、オフセット量設定部42(
図2参照)に設定された値である。予め設定されたアーム先端目標軌跡Taの形状、交差角度β、およびオフセット量Oが用いられるので、簡易な計算によりアーム先端目標軌跡Taを生成することができる。よって、目標軌跡生成部45の計算負荷を抑制することができる。具体的には例えば、アタッチメント12に作用する負荷の大きさに基づいてアーム先端目標軌跡Taが生成される場合や、バケット17が行う仕事量に基づいてアーム先端目標軌跡Taが生成される場合などに比べ、計算負荷を抑制することができる。
【0069】
したがって、上記[構成1-1]、[構成1-2]、および[構成1-3]により、アタッチメント12の目標軌跡T(具体的にはアーム先端目標軌跡Ta)の生成のための計算負荷を抑制しつつ、目標軌跡Tを一意に決定することができる。
【0070】
交差角度βおよびオフセット量Oが適切に設定された場合は、バケット17による掘削対象物Aの掘削量を確保しつつ、アタッチメント12に掛かる負荷を抑制することができる。
【0071】
(第2の発明の効果)
[構成2]アーム先端目標軌跡Taは、直線状である。
【0072】
上記[構成2]により、アーム先端目標軌跡Taが直線状でない場合に比べ、目標軌跡生成部45の計算負荷をより抑制することができる。
【0073】
(第3の発明の効果)
図2に示すように、目標軌跡生成システム1は、
図3に示す終端バケット姿勢Q3が設定される終端バケット姿勢設定部43を備える。終端バケット姿勢Q3は、アーム先端目標軌跡Taの終端P3にアーム先端部15tが配置されるときのバケット17の姿勢である。目標軌跡生成部45(
図2参照)は、バケット17の目標軌跡Tであるバケット目標軌跡Tbを生成する。
【0074】
[構成3]アーム先端目標軌跡Taの始端P1にアーム先端部15tが配置されたときに姿勢検出部20に検出されたバケット17の姿勢を、始端バケット姿勢Q1とする。目標軌跡生成部45(
図2参照)は、始端バケット姿勢Q1から、終端バケット姿勢設定部43に設定された終端バケット姿勢Q3に、バケット17が連続的に変化するように、バケット目標軌跡Tbを設定する。
【0075】
上記[構成3]のように、始端バケット姿勢Q1は、アーム先端部15tが始端P1に配置されたときに姿勢検出部20に検出されたバケット17の姿勢である。また、終端バケット姿勢Q3は、終端バケット姿勢設定部43(
図2参照)に設定された姿勢である。よって、目標軌跡生成部45(
図2参照)は、始端バケット姿勢Q1および終端バケット姿勢Q3を生成する必要はない。よって、始端バケット姿勢Q1および終端バケット姿勢Q3を生成する必要がある場合に比べ、目標軌跡生成部45(
図2参照)の計算負荷を抑制することができる。したがって、アタッチメント12の目標軌跡T(具体的にはバケット目標軌跡Tb)の生成のための計算負荷を抑制しつつ、バケット目標軌跡Tbを一意に決定することができる。
【0076】
(第4の発明の効果)
アーム先端目標軌跡Taの始端P1と終端P3との間の特定の点である中間点P2にアーム先端部15tが配置されるときのバケット17の姿勢を、中間点バケット姿勢Q2とする。
図2に示すように、目標軌跡生成システム1は、バケット回転割合設定部44を備える。
【0077】
[構成4]バケット回転割合設定部44には、バケット回転割合p2θ_ratioが設定される。バケット回転割合p2θ_ratioは、
図3に示す始端バケット姿勢Q1から終端バケット姿勢Q3までのバケット17の姿勢の変化量に対する、始端バケット姿勢Q1から中間点バケット姿勢Q2までのバケット17の姿勢の変化量の割合である。
図2に示す目標軌跡生成部45は、バケット回転割合設定部44に設定されたバケット回転割合p2θ_ratioに基づいて、
図3に示す中間点バケット姿勢Q2を設定する。
【0078】
上記[構成4]では、中間点バケット姿勢Q2は、バケット回転割合p2θ_ratioに基づいて決定される。よって、バケット回転割合p2θ_ratioの設定に応じて、中間点P2の前後でバケット17の回転速度を変化させるようなバケット目標軌跡Tbを生成することができる。バケット回転割合p2θ_ratioが適切に設定された場合は、バケット17に掘削対象物Aを効率良く掘削させることができる。
【0079】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、
図2に示す構成要素どうしの接続は変更されてもよい。例えば、
図3に示す目標軌跡Tに関する算出の手順や数式などは変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。具体的には例えば、
図2に示す姿勢検出部20、形状検出部31、および接触検出部33が兼用されてもよい。またコントローラ40の構成要素(交差角度設定部41、オフセット量設定部42など)は、1つのコントローラ40にまとめて設けられてもよく、複数に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 目標軌跡生成システム
11 機械本体
12 アタッチメント
13 ブーム
15 アーム
17 バケット
20 姿勢検出部
31 形状検出部
33 接触検出部
41 交差角度設定部
42 オフセット量設定部
43 終端バケット姿勢設定部
44 バケット回転割合設定部
45 目標軌跡生成部
A 掘削対象物
O オフセット量
P1 始端
P2 中間点
P3 終端
Q1 始端バケット姿勢
Q2 中間点バケット姿勢
Q3 終端バケット姿勢
Ta アーム先端目標軌跡
β 交差角度