(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20240925BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/289 101
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2021083018
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 直也
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-198214(JP,A)
【文献】特開2020-068101(JP,A)
【文献】国際公開第2021/020326(WO,A1)
【文献】特開2013-206666(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接するように配置された一対の蓄電セルと、
前記一対の蓄電セル間に配置されたスペーサと、を備え、
前記一対の蓄電セルの各蓄電セルは、互いに対向する対向面を有し、
前記スペーサは、
前記一対の蓄電セルの各前記対向面間に配置された骨格部材と、
各前記対向面間に配置されており、前記対向面同士が互いに対向する対向方向に弾性変形可能な弾性部材と、を有し、
前記骨格部材は、前記対向面の中央部と対向する位置に形成された中央対向部を含み、
前記弾性部材は、前記中央対向部の厚みよりも大きな厚みを有するとともに前記対向面に接しており、
前記弾性部材の融点は、前記中央対向部の融点よりも低
く、
前記骨格部材は、前記対向方向及び上下方向の双方と直交する幅方向に間隔を置いて並ぶように配置された複数の骨格部を有し、
前記弾性部材は、前記複数の骨格部のうち前記幅方向に互いに隣接する前記骨格部間を充填する形状を有し、
前記複数の骨格部は、前記幅方向における中央に配置された中央骨格部を含み、
前記中央骨格部は、前記中央対向部を含み、
前記骨格部材は、前記複数の骨格部同士を連結する連結部をさらに有し、
前記複数の骨格部の各骨格部は、上下方向に延びる形状を有し、
前記連結部は、各前記骨格部の上端部同士を連結している、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記幅方向に互いに隣接する前記骨格部間の空間は、下向きに開放されている、請求項
1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記骨格部材を下方から受ける受け部をさらに備え、
前記複数の骨格部は、前記幅方向における端部に配置された端部骨格部を含み、
前記受け部は、前記端部骨格部を受ける、請求項
2に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2020-68101号公報には、互いに隣接するように配置された第1蓄電セル及び第2蓄電セルと、第1蓄電セル及び第2蓄電セル間に配置された仕切板と、仕切板を貫通するように配置されたスペーサと、を備える蓄電装置が開示されている。第1蓄電セル及び第2蓄電セルには、第1蓄電セルと第2蓄電セルとが互いに接近する方向の外力が常時作用している。仕切板は、熱可塑性樹脂からなる。スペーサは、無機材からなる。スペーサの両端部は、仕切板の表面に露出しており、第1蓄電セル及び第2蓄電セルに接している。
【0003】
この蓄電装置において、過充電等によって例えば第1蓄電セルの温度が上昇すると、仕切板が溶融する。一方、スペーサは、無機材で形成されているため、溶融することなく第1蓄電セル及び第2蓄電セル間に残存する。これにより、第1蓄電セル及び第2蓄電セル間に空間が形成されるため、第1蓄電セル及び第2蓄電セル間が有効に断熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2020-68101号公報に記載される蓄電装置では、無機材からなるスペーサが第1蓄電セル及び第2蓄電セルに常に接しているため、各蓄電セルを拘束する拘束荷重を調整することが困難である。
【0006】
本開示の目的は、蓄電セル間の断熱と拘束荷重の調整との両立が可能な蓄電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に従った蓄電モジュールは、互いに隣接するように配置された一対の蓄電セルと、前記一対の蓄電セル間に配置されたスペーサと、を備え、前記一対の蓄電セルの各蓄電セルは、互いに対向する対向面を有し、前記スペーサは、前記一対の蓄電セルの各前記対向面間に配置された骨格部材と、各前記対向面間に配置されており、前記対向面同士が互いに対向する対向方向に弾性変形可能な弾性部材と、を有し、前記骨格部材は、前記対向面の中央部と対向する位置に形成された中央対向部を含み、前記弾性部材は、前記中央対向部の厚みよりも大きな厚みを有するとともに前記対向面に接しており、前記弾性部材の融点は、前記中央対向部の融点よりも低い。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蓄電セル間の断熱と拘束荷重の調整との両立が可能な蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態の蓄電モジュールの構成の一部を概略的に示す斜視図である。
【
図2】骨格部材を通る平面での蓄電モジュールの断面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線での断面図である。
【
図4】蓄電セルが発熱した状態を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態の蓄電モジュールの構成の一部を概略的に示す斜視図である。この蓄電モジュール1は、例えば、車両に搭載される。
【0012】
図1に示されるように、蓄電モジュール1は、一対の蓄電セル100を含む複数の蓄電セル100と、少なくとも一つのスペーサ200と、一対のサイドバンド300と、を備えている。なお、蓄電セル100及びスペーサ200の数は、特に限定されない。
【0013】
一対の蓄電セル100は、互いに対向するように配置されている。各蓄電セル100として、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。各蓄電セル100は、ケース110と、一対の外部端子120と、を有している。
【0014】
ケース110は、電極等(図示略)を収容している。ケース110は、直方体形状に形成されている。ケース110は、扁平に形成されている。ケース110は、隣接する蓄電セル100のケース110と対向する対向面112を有している。対向面112は、平坦に形成されている。本実施形態では、対向面112は、ケース110の4つの側面のうち相対的に大きな面積を有する側面で構成されている。つまり、一対の蓄電セル100は、各ケース110の厚み方向に並ぶように配置されている。
【0015】
各外部端子120は、ケース110の外側面(本実施形態では上面)から突出している。一対の外部端子120の一方は、正極端子であり、他方は、負極端子である。
【0016】
スペーサ200は、一対の蓄電セル100間に配置されている。より詳細には、スペーサ200は、各ケース110の対向面112間に配置されている。
図2及び
図3に示されるように、スペーサ200、骨格部材210と、弾性部材220と、を有している。
【0017】
骨格部材210は、各対向面112間に配置されている。骨格部材210は、熱可塑性樹脂(フェノール樹脂等)からなる。骨格部材210は、複数の骨格部212と、連結部216と、を有している。
【0018】
複数の骨格部212は、対向面112同士が互いに対向する対向方向(ケース110の厚み方向)及び上下方向の双方と直交する幅方向に間隔を置いて並ぶように配置されている。本実施形態では、複数の骨格部212は、幅方向に等間隔に並ぶように配置されている。
図2に示されるように、各骨格部212は、上下方向に延びる形状を有している。幅方向に互いに隣接する骨格部212間の空間は、下向きに開放されている。なお、
図2では、5本の骨格部212が示されているが、骨格部212の数はこれに限られない。
【0019】
複数の骨格部212は、中央骨格部213と、端部骨格部214と、を含んでいる。
中央骨格部213は、幅方向における中央に配置されている。中央骨格部213は、対向面112の中央部と対向する位置に形成された中央対向部213aを含む。なお、対向面112の中央部は、対向面112のうち上下方向の中央でかつ幅方向の中央に位置する部位を意味する。
【0020】
端部骨格部214は、幅方向における端部に配置されている。端部骨格部214は、幅方向における対向面112の端部と対向している。
【0021】
連結部216は、複数の骨格部212同士を連結している。本実施形態では、連結部216各骨格部212の上端部同士を連結している。連結部216の上端部は、ケース110の上面よりも低い位置に配置されている。上下方向における連結部216の寸法は、幅方向における骨格部212の寸法と同じに設定されてもよい。
【0022】
弾性部材220は、各対向面112間に配置されており、対向方向に弾性変形可能である。弾性部材220は、互いに対向する対向面112に接している。弾性部材220は、幅方向に互いに隣接する骨格部212間を充填する形状を有している。弾性部材220は、骨格部材210に接着されてもよいし、インサート成形等によって骨格部材210と一体的に形成されてもよい。弾性部材220は、骨格部材210の融点よりも低い融点を有する材料からなる。弾性部材220は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)や発泡ウレタン等からなる。弾性部材220の表面は、平坦に形成されている。
【0023】
図3は、複数の蓄電セル100が対向方向の両側から図示略の拘束部材によって拘束(圧縮)された状態を示している。複数の蓄電セル100及びスペーサ200が拘束された状態において、弾性部材220は、各骨格部212の厚みよりも大きな厚みを有している。
【0024】
サイドバンド300は、幅方向における複数の蓄電セル100の両側に配置されている。サイドバンド300は、幅方向における両側から複数の蓄電セル100を挟持している。サイドバンド300は、側壁310と、受け部320と、上壁330と、を有している。なお、
図1では、幅方向における一方側に配置されたサイドバンド300のみが表示されている。
【0025】
側壁310は、対向方向に延びる形状を有している。側壁310は、平板状に形成されている。
図1及び
図2に示されるように、側壁310は、ケース110の下端部から上端部に至るように延びている。
【0026】
受け部320は、側壁310の下端部から幅方向における内側に向かって突出する形状を有している。受け部320は、骨格部材210を下方から受けている。より詳細には、受け部320は、端部骨格部214を受けている。
【0027】
図2に示されるように、幅方向における受け部320の内側の端部320aは、幅方向における端部骨格部214の内側の端部214aと上下方向に重なるかそれよりも幅方向における外側に位置することが好ましい。このようにすれば、幅方向に互いに隣接する骨格部212間の空間と受け部320とが上下方向に重なることが抑制される。
【0028】
上壁330は、側壁310の上端部から幅方向における内側に向かって突出する形状を有している。上壁330は、ケース110の上面に係合している。
【0029】
以上に説明したように、本実施形態の蓄電モジュール1では、中央対向部213aの厚みよりも大きな厚みを有する弾性部材220が蓄電セル100の対向面112に接しているため、対向方向における両側から複数の蓄電セル100をまとめて拘束する拘束荷重の調整が可能となる。さらに、弾性部材220の融点が骨格部212の融点よりも低いため、過充電等に起因して特定の蓄電セル100の温度が弾性部材220の溶融温度まで上昇すると、弾性部材220は溶融する一方で各骨格部212は残存する。よって、
図4に示されるように、各蓄電セル100の対向面112同士が互いに近づくようにケース110が膨張した場合においても、一対の蓄電セル100間に空間が確保されるため、蓄電セル100間が有効に断熱される。したがって、この蓄電モジュール1では、蓄電セル100間の断熱と拘束荷重の調整とが両立される。なお、
図4では、膨張前のケース110の対向面112が二点鎖線で示されている。
【0030】
なお、上記実施形態において、各骨格部212は、上下方向に間隔を置いて配置されるとともに、幅方向に延びる形状を有していてもよい。あるいは、各骨格部212は、上下方向及び幅方向の双方と交差するように傾斜していてもよい。これらの場合においても、複数の骨格部の一の骨格部212は、対向面112の中央部と対向する位置に形成された中央対向部213aを含む。
【0031】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0032】
上記実施形態における蓄電モジュールは、互いに隣接するように配置された一対の蓄電セルと、前記一対の蓄電セル間に配置されたスペーサと、を備え、前記一対の蓄電セルの各蓄電セルは、互いに対向する対向面を有し、前記スペーサは、前記一対の蓄電セルの各前記対向面間に配置された骨格部材と、各前記対向面間に配置されており、前記対向面同士が互いに対向する対向方向に弾性変形可能な弾性部材と、を有し、前記骨格部材は、前記対向面の中央部と対向する位置に形成された中央対向部を含み、前記弾性部材は、前記中央対向部の厚みよりも大きな厚みを有するとともに前記対向面に接しており、前記弾性部材の融点は、前記中央対向部の融点よりも低い。
【0033】
この蓄電モジュールでは、中央対向部の厚みよりも大きな厚みを有する弾性部材が蓄電セルの対向面に接しているため、一対の蓄電セルを拘束する拘束荷重の調整が可能となる。さらに、弾性部材の融点が中央対向部の融点よりも低いため、過充電等に起因して特定の蓄電セルの温度が弾性部材の溶融温度まで上昇すると、弾性部材は溶融する一方で中央対向部は残存する。よって、各蓄電セルの対向面同士が互いに近づくように蓄電セルが膨張した場合においても、一対の蓄電セル間に空間が確保されるため、蓄電セル間が有効に断熱される。したがって、この蓄電モジュールでは、蓄電セル間の断熱と拘束荷重の調整とが両立される。
【0034】
また、前記骨格部材は、前記対向方向及び上下方向の双方と直交する幅方向に間隔を置いて並ぶように配置された複数の骨格部を有し、前記弾性部材は、前記複数の骨格部のうち前記幅方向に互いに隣接する前記骨格部間を充填する形状を有し、前記複数の骨格部は、前記幅方向における中央に配置された中央骨格部を含み、前記中央骨格部は、前記中央対向部を含むことが好ましい。
【0035】
このようにすれば、幅方向に隣接する骨格部間に弾性部が配置されるため、幅方向にわたって拘束荷重が均一化される。
【0036】
この場合において、前記骨格部材は、前記複数の骨格部同士を連結する連結部をさらに有することが好ましい。
【0037】
このようにすれば、骨格部材の取り扱いが容易になる。
さらに、前記複数の骨格部の各骨格部は、上下方向に延びる形状を有し、前記連結部は、各前記骨格部の上端部同士を連結していることが好ましい。
【0038】
このようにすれば、蓄電セルの発熱時に溶融した弾性部材が連結部上に堆積することが抑制される。
【0039】
また、前記幅方向に互いに隣接する前記骨格部間の空間は、下向きに開放されていることが好ましい。
【0040】
このようにすれば、溶融した弾性部材が骨格部材の下方に排出されるため、溶融した弾性部材を介して互いに対向する対向面同士が接触した状態に保持されることが抑制される。
【0041】
また、前記蓄電モジュールにおいて、前記骨格部材を下方から受ける受け部をさらに備えていてもよい。この場合において、前記複数の骨格部は、前記幅方向における端部に配置された端部骨格部を含み、前記受け部は、前記端部骨格部を受けることが好ましい。
【0042】
この態様では、受け部が端部骨格部を受けるため、一対の蓄電セル間からの骨格部材の落下が抑制される。
【0043】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 蓄電モジュール、100 蓄電セル、110 ケース、112 対向面、120 外部端子、200 スペーサ、210 骨格部材、212 骨格部、213 中央骨格部、213a 中央対向部、214 端部骨格部、216 連結部、220 弾性部材、300 サイドバンド、310 側壁、320 受け部、330 上壁。