(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電子機器及び電子機器システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20240925BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G06F1/26
H02J1/00 308A
H02J1/00 306K
(21)【出願番号】P 2021089209
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】大竹口 裕史
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-214421(JP,A)
【文献】特表2016-532925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0052791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子機器の電源の投入を制御する制御装置からの電源制御ラインに接続されているホールド回路と、
前記制御装置によって前記電源制御ラインが第1の状態から第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると電源を投入し、かつ、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させるマイクロコンピュータと、
を備える電子機器。
【請求項2】
複数の電子機器と、
前記複数の電子機器と電源制御ラインによって接続されており、前記電源制御ラインを第1の状態から第2の状態へと移行させる制御スイッチを有する制御装置と、
を備え、
前記複数の電子機器の各電子機器は、
前記電源制御ラインに接続されているホールド回路と、
前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると電源を投入するように制御し、かつ、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させるマイクロコンピュータと、
を有する電子機器システム。
【請求項3】
前記複数の電子機器における少なくとも2つの電子機器が有する前記マイクロコンピュータは、前記第1の所定時間を互いに異なる時間に設定している請求項2に記載の電子機器システム。
【請求項4】
複数の電子機器と、
前記複数の電子機器と電源制御ラインによって接続されている制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記電源制御ラインを第1の状態から第2の状態へと移行させる制御スイッチと、
前記電源制御ラインに接続されているホールド回路と、
前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させる第1のマイクロコンピュータと、
を有し、
前記複数の電子機器の各電子機器は、
前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第1の所定時間の経過後に電源を投入するように制御する第2のマイクロコンピュータと、
を有する電子機器システム。
【請求項5】
前記複数の電子機器における少なくとも2つの電子機器が有する前記第2のマイクロコンピュータは、前記第1の所定時間を互いに異なる時間に設定している請求項4に記載の電子機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び電子機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電子機器に共通に接続されている制御装置に設けられている制御スイッチを押下することにより、全ての電子機器の電源を投入するように構成されている電子機器システムがある。この種の電子機器システムに関連する技術として、特許文献1には、1つのスイッチの押下によって複数の機器の電源を所定の順番で投入することが記載されている。
【0003】
上記の電子機器システムにおいて、各電子機器は、制御スイッチが所定時間以上押下し続けられている、いわゆる制御スイッチが長押しされていることを検出すると、自己の電子機器の電源を投入するように構成されていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各電子機器は、内蔵されている時計によって制御スイッチが所定時間以上長押しされているか否かを判定する。通常各電子機器における時計は、それぞれが同期されておらず独自で動作しているため、制御スイッチが所定時間以上押されているか否かを判定するタイミングにはばらつきがあり、ユーザが制御スイッチの押下を解除するタイミングによっては、複数の電子機器のうち一部の電子機器は電源が投入されて起動するが、他の一部の電子機器は電源が投入されず起動しないことがある。
【0006】
本発明は、複数の電子機器に共通に接続されている制御装置に設けられている制御スイッチを長押しして各電子機器の電源を投入するときに、電源をより確実に投入することができる電子機器、及び全ての電子機器の電源をより確実に投入することができる電子機器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の電子機器の電源の投入を制御する制御装置からの電源制御ラインに接続されているホールド回路と、前記制御装置によって前記電源制御ラインが第1の状態から第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると電源を投入し、かつ、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させるマイクロコンピュータとを備える電子機器を提供する。
【0008】
本発明は、複数の電子機器と、前記複数の電子機器と電源制御ラインによって接続されており、前記電源制御ラインを第1の状態から第2の状態へと移行させる制御スイッチを有する制御装置とを備え、前記複数の電子機器の各電子機器は、前記電源制御ラインに接続されているホールド回路と、前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると電源を投入するように制御し、かつ、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させるマイクロコンピュータとを有する電子機器システムを提供する。
【0009】
本発明は、複数の電子機器と、前記複数の電子機器と電源制御ラインによって接続されている制御装置とを備え、前記制御装置は、前記電源制御ラインを第1の状態から第2の状態へと移行させる制御スイッチと、前記電源制御ラインに接続されているホールド回路と、前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第2の状態が第1の所定時間継続すると、前記第1の所定時間経過後に第2の所定時間だけ前記電源制御ラインを前記第2の状態に維持するよう前記ホールド回路を動作させる第1のマイクロコンピュータとを有し、前記複数の電子機器の各電子機器は、前記電源制御ラインが前記第1の状態から前記第2の状態へと移行すると前記第2の状態の時間の計測を開始し、前記第1の所定時間の経過後に電源を投入するように制御する第2のマイクロコンピュータとを有する電子機器システムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子機器及び電子機器システムによれば、複数の電子機器に共通に接続されている制御装置に設けられている制御スイッチを長押しして各電子機器の電源を投入するときに、各電子機器の電源をより確実に投入することができ、全ての電子機器の電源をより確実に投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の電子機器及び電子機器システムを示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の電子機器及び電子機器システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図3】第1実施形態の電子機器が備えるマイクロコンピュータが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の電子機器及び電子機器システムを示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態の電子機器及び電子機器システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】第2実施形態の制御装置が備えるマイクロコンピュータが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態の電子機器及び電子機器システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図8】第4実施形態の電子機器及び電子機器システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施形態の電子機器及び電子機器システムについて、添付図面を参照して説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1において、制御装置10には、電子機器20
1~20
NのN個の電子機器が接続されている。電子機器20
1~20
Nのうちのいずれかを特定しない任意の電子機器を電子機器20と称することとする。制御装置10には、少なくとも2つの電子機器20が接続されていればよい。
【0014】
制御装置10は、電子機器201~20Nの電源を投入するための制御スイッチ12を備える。制御スイッチ12の一端には抵抗11が接続され、他端は接地されている。抵抗11には所定の電圧が供給されている。電子機器20は、電源回路21、ホールド回路22、マイクロコンピュータ23を備える。
【0015】
ホールド回路22は、npnトランジスタTr1(以下、トランジスタTr1)、抵抗R1及びR2を有する。トランジスタTr1のコレクタは、制御装置10からの電源制御ライン13及びマイクロコンピュータ23に接続され、ベースは抵抗R1を介してマイクロコンピュータ23に接続されている。トランジスタTr1のベースとエミッタとの間には、抵抗R2が接続され、エミッタは接地されている。電源制御ライン13は、制御スイッチ12の一端に接続され、マイクロコンピュータ23に接続されている。制御装置10は、電源制御ライン13に電圧を供給することで、電子機器20の電源の投入を制御する。
【0016】
図2に示すタイミングチャートを用いて、制御装置10及び電子機器20
1~20
3の動作の一例を説明する。
図2では、制御装置10に3個の電子機器20が接続されている場合を例とする。
【0017】
図2の(a)に示すように、ユーザが時刻t1で制御スイッチ12を押下したとする。電子機器20は制御スイッチ12が第1の所定時間以上長押しされると自己の電子機器20の電源を投入するように構成されているため、ユーザは、ハッチングを付している時刻t1から時刻t3までの時間、制御スイッチ12を長押しする。
【0018】
図2の(b)に示すように、ユーザが時刻t1で制御スイッチ12を押下すると、所定の電圧の供給によりハイ(以下、H)となっていた電源制御ライン13は、ロー(以下、L)となる。ユーザが制御スイッチ12を長押ししている期間、電源制御ライン13はLの状態を維持する。
【0019】
図2の(f)~(h)に示すように、電子機器20
1~20
3は電源の投入前にスタンバイ状態にある。電子機器20
1~20
3の各マイクロコンピュータ23は、制御スイッチ12の押下によって電源制御ライン13がLとなると、電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始する。各電子機器20における時計にはばらつきがあり、電子機器20
1~20
3が電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始した時刻もばらつくことがある。時計のばらつきには水晶発振器を含む各素子のばらつきが含まれる。
【0020】
ここでは、電子機器201のマイクロコンピュータ23が時刻t1の直後に電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始したとする。次に、電子機器202のマイクロコンピュータ23が電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始し、最後に、電子機器203のマイクロコンピュータ23が電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始したとする。
【0021】
電子機器201のマイクロコンピュータ23は、時刻t2で電源制御ライン13のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路21によって電源を投入するよう制御して電子機器201を起動状態に移行させる。これに併せて、電子機器201のマイクロコンピュータ23は、時刻t2で、抵抗R1を介してトランジスタTr1のベースに所定の電圧を供給してベースを第2の所定時間だけHの状態とする。第2の所定時間は、第1の所定時間よりも短い時間でよい。
【0022】
トランジスタTr1のベースがHの状態となると、コレクタ・エミッタ間が導通するので、
図2の(c)に示すように、電子機器20
1のホールド回路22は、電源制御ライン13をLの状態に維持するホールド状態となる。ホールド回路22が電源制御ライン13をLの状態に維持するホールド状態は、ホールド回路22が動作している状態である。
【0023】
電子機器20
2のマイクロコンピュータ23は、時刻t4で電源制御ライン13のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路21によって電源を投入するよう制御して電子機器20
2を起動状態に移行させる。電子機器20
2のマイクロコンピュータ23は、時刻t4で、抵抗R1を介してトランジスタTr1のベースに所定の電圧を供給してベースを第2の所定時間だけHの状態とする。すると、
図2の(d)に示すように、電子機器20
2のホールド回路22は、電源制御ライン13をLの状態に維持するホールド状態となる。
【0024】
電子機器20
3のマイクロコンピュータ23は、時刻t5で電源制御ライン13のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路21によって電源を投入するよう制御して電子機器20
3を起動状態に移行させる。電子機器20
3のマイクロコンピュータ23は、時刻t5で、抵抗R1を介してトランジスタTr1のベースに所定の電圧を供給してベースを第2の所定時間だけHの状態とする。すると、
図2の(e)に示すように、電子機器20
3のホールド回路22は、電源制御ライン13をLの状態に維持するホールド状態となる。
【0025】
仮に、電子機器20
1~20
3がホールド回路22を備えなければ、電源制御ライン13は、ユーザが時刻t3で制御スイッチ12の押下を解除した時点でHの状態となる。
図2に示す例では、時刻t3で電子機器20
2及び20
3のマイクロコンピュータ23は、電源制御ライン13のLの状態の第1の所定時間の計測を完了していないので、電子機器20
2及び20
3を起動状態に移行させないことになる。
【0026】
電子機器201~203はホールド回路22を備えるので、電源制御ライン13が最終的にHの状態となるのは、電子機器203のマイクロコンピュータ23が時刻t5でトランジスタTr1のベースをHの状態にして第2の所定時間だけ経過した時刻t6となる。電源制御ライン13は、ユーザが制御スイッチ12の押下を解除した時刻t3以降も継続してLの状態が維持される。よって、電子機器202及び203のマイクロコンピュータ23は、それぞれ時刻t4及びt5で電源制御ライン13のLの状態の第1の所定時間の計測を完了して、電子機器202及び203を起動状態に移行させることができる。
【0027】
電子機器20のマイクロコンピュータ23が第1の所定時間を計測した後にホールド回路22によって電源制御ライン13をLの状態に維持する第2の所定時間は、電子機器20における時計のばらつきを考慮した時間とすればよい。N個の電子機器20全ての時計のばらつきにおける最大のばらつき時間より多い時間を第2の所定時間とすればよい。
【0028】
図3に示すフローチャートを用いて、各電子機器20のマイクロコンピュータ23が実行する処理を説明する。
図3において、マイクロコンピュータ23は、処理を開始すると、ステップS1にて、制御スイッチ12の押下により電源制御ライン13がLの状態となったか否かを判定する。電源制御ライン13がLの状態とならなければ(NO)、マイクロコンピュータ23はステップS1の処理を繰り返す。電源制御ライン13がLの状態となれば(YES)、マイクロコンピュータ23は、ステップS2にて、第1の所定時間である時間Tの計測を開始する。
【0029】
マイクロコンピュータ23は、ステップS3にて、電源制御ライン13が継続的にLの状態であるか否かを判定する。電源制御ライン13が継続的にLの状態でなければ(NO)(即ち、Hの状態となれば)、マイクロコンピュータ23は処理をステップS1に戻す。電源制御ライン13が継続的にLの状態であれば(YES)、マイクロコンピュータ23は、ステップS4にて、時間Tの計測を完了したか否かを判定する。時間Tの計測を完了していなければ(NO)、マイクロコンピュータ23は処理をステップS3に戻す。
【0030】
ステップS4にて時間Tの計測を完了していれば(YES)、マイクロコンピュータ23は、ステップS5にて、電子機器20の電源を投入するよう制御して電子機器20を起動させて、処理をステップS10に移行させる。また、マイクロコンピュータ23は、ステップS6にて、トランジスタTr1のベースをHの状態にしてホールド回路22を導通状態に移行させる。続けて、マイクロコンピュータ23は、ステップS7にて、第2の所定時間である時間Δtmaxの計測を開始する。
【0031】
マイクロコンピュータ23は、ステップS8にて、時間Δtmaxの計測を完了したか否かを判定する。時間Δtmaxの計測を完了しなければ(NO)、マイクロコンピュータ23はステップS8の処理を繰り返す。時間Δtmaxの計測を完了すれば(YES)、マイクロコンピュータ23は、ステップS9にて、トランジスタTr1のベースをLの状態にしてホールド回路22を非導通状態に移行させて、処理をステップS10に移行させる。
【0032】
マイクロコンピュータ23は、ステップS10にて、制御スイッチ12の押下により電源制御ライン13がLの状態となったか否かを判定する。ステップS10にて、起動状態にある各電子機器20の電源を切断する指示がなされたか否かが判定される。電源制御ライン13がLの状態とならなければ(NO)、マイクロコンピュータ23はステップS10の処理を繰り返す。電源制御ライン13がLの状態とれば(YES)、マイクロコンピュータ23は、ステップS11にて、電子機器20の電源を切断して電子機器20をスタンバイ状態に設定し、処理を終了させる。
【0033】
マイクロコンピュータ23は、起動状態にある電子機器20の電源を切断する際にも、制御スイッチ12が第1の所定時間以上長押しされたら、ステップS11の処理を実行するようにしてもよい。この場合、マイクロコンピュータ23は、ステップS10に続けて、ステップS2~S4と同様の処理を実行すればよい。
【0034】
第1実施形態の電子機器20及び電子機器システムによれば、複数の電子機器20に共通に接続されている制御装置10に設けられている制御スイッチ12を長押することにより、各電子機器20の電源をより確実に投入することができる。よって、第1実施形態の電子機器20及び電子機器システムによれば、全ての電子機器20の電源をより確実に投入することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4において、制御装置30には、電子機器40
1~40
NのN個の電子機器が接続されている。電子機器40
1~40
Nのうちのいずれかを特定しない任意の電子機器を電子機器40と称することとする。制御装置30には、少なくとも2つの電子機器40が接続されていればよい。
【0036】
制御装置30は、電子機器401~40Nの電源を投入するための制御スイッチ32を備える。制御スイッチ32の一端には抵抗31が接続され、他端は接地されている。抵抗31には所定の電圧が供給されている。また、制御装置30は、マイクロコンピュータ34(第1のマイクロコンピュータ)及びホールド回路35を備える。
【0037】
ホールド回路35は、npnトランジスタTr2(以下、トランジスタTr2)、抵抗R11及びR12を有する。トランジスタTr2のコレクタは、制御スイッチ32の一端、電源制御ライン33、マイクロコンピュータ34に接続され、ベースは抵抗R11を介してマイクロコンピュータ34に接続されている。トランジスタTr2のベースとエミッタとの間には、抵抗R12が接続され、エミッタは接地されている。電源制御ライン33は、制御スイッチ32の一端に接続され、マイクロコンピュータ34に接続されている。
【0038】
電子機器40は、電源回路41及びマイクロコンピュータ43(第2のマイクロコンピュータ)を備える。電子機器40は、ホールド回路を備えなくてよい。
【0039】
図5に示すタイミングチャートを用いて、制御装置30及び電子機器40
1~40
3の動作の一例を説明する。
図5では、制御装置30に3個の電子機器40が接続されている場合を例とする。
【0040】
図5の(a)に示すように、ユーザが時刻t11で制御スイッチ32を押下したとする。電子機器40は制御スイッチ32が第1の所定時間以上長押しされると自己の電子機器40の電源を投入するように構成されているため、ユーザは、ハッチングを付している時刻t11から時刻t13までの時間、制御スイッチ32を長押しする。
【0041】
図5の(b)に示すように、ユーザが時刻t11で制御スイッチ32を押下すると、所定の電圧の供給によりHとなっていた電源制御ライン33はLとなる。ユーザが制御スイッチ32を長押ししている期間、電源制御ライン33はLの状態を維持する。
【0042】
図5の(d)に示すように、マイクロコンピュータ34は、制御スイッチ32の押下によって電源制御ライン33がLとなると、時刻t11の直後に、電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始する。制御スイッチ32が継続的に押下されることにより、マイクロコンピュータ34は、時刻t12で、電源制御ライン33のLの状態を第1の所定時間(時間T)計測する。
【0043】
すると、マイクロコンピュータ34は、抵抗R11を介してトランジスタTr2のベースに所定の電圧を供給してベースを第2の所定時間(時間Δtmax)だけHの状態とする。トランジスタTr2のベースがHの状態となると、コレクタ・エミッタ間が導通するので、
図5の(c)に示すように、ホールド回路35は、電源制御ライン33をLの状態に維持するホールド状態となる。ホールド回路35が電源制御ライン33をLの状態に維持するホールド状態は、ホールド回路35が動作している状態である。
【0044】
図5の(d)に示すように、マイクロコンピュータ34は、時刻t12から時刻t17までの第2の所定時間だけホールド回路35を導通状態に維持する。
図5の(c)に示すように、ホールド回路35は、第2の所定時間だけホールド状態となる。
図5の(b)に示すように、電源制御ライン33は、ユーザが制御スイッチ32の押下を解除した時刻t13以降も時刻t17まで、ホールド回路35によるホールド動作によってLの状態を維持する。
【0045】
図5の(e)~(g)に示すように、電子機器40
1~40
3は電源の投入前にスタンバイ状態にある。電子機器40
1~40
3の各マイクロコンピュータ43は、制御スイッチ32の押下によって電源制御ライン33がLとなると、電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始する。ここでも、電子機器40
1~40
3が電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始した時刻がばらついているとする。
【0046】
ここでは、電子機器401のマイクロコンピュータ43が最初に電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始したとする。次に、電子機器402のマイクロコンピュータ43が電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始し、最後に、電子機器403のマイクロコンピュータ43が電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始したとする。
【0047】
電子機器401のマイクロコンピュータ43は、時刻t14で電源制御ライン33のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路41によって電源を投入するよう制御して電子機器401を起動状態に移行させる。電子機器402のマイクロコンピュータ43は、時刻t15で電源制御ライン33のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路41によって電源を投入するよう制御して電子機器402を起動状態に移行させる。電子機器403のマイクロコンピュータ43は、時刻t16で電源制御ライン33のLの状態を第1の所定時間計測し、電源回路41によって電源を投入するよう制御して電子機器403を起動状態に移行させる。
【0048】
仮に、制御装置30がホールド回路35を備えなければ、電源制御ライン33は、ユーザが時刻t13で制御スイッチ32の押下を解除した時点でHの状態となる。
図5に示す例では、時刻t13で電子機器40
1~40
3のマイクロコンピュータ43は、電源制御ライン33のLの状態の第1の所定時間の計測を完了していないので、電子機器40
1~40
3を起動状態に移行させないことになる。
【0049】
制御装置30はホールド回路35を備えるので、電源制御ライン33が最終的にHの状態となるのは、マイクロコンピュータ34がホールド回路35の導通状態を解除した(非導通状態に移行させた)時刻t17となる。よって、電子機器401~403のマイクロコンピュータ43は、それぞれ時刻t14~t16で、電子機器401~403を起動状態に移行させることができる。
【0050】
マイクロコンピュータ34が第1の所定時間を計測した後にホールド回路35によって電源制御ライン33をLの状態に維持する第2の所定時間は、電子機器40における時計のばらつきを考慮した時間とすればよい。N個の電子機器40全ての時計のばらつきにおける最大のばらつき時間より多い時間を第2の所定時間とすればよい。
【0051】
図6に示すフローチャートを用いて、制御装置30のマイクロコンピュータ34が実行する処理を説明する。
図6において、マイクロコンピュータ34は、処理を開始すると、ステップS21にて、制御スイッチ32の押下により電源制御ライン33がLの状態となったか否かを判定する。電源制御ライン33がLの状態とならなければ(NO)、マイクロコンピュータ34はステップS21の処理を繰り返す。電源制御ライン33がLの状態となれば(YES)、マイクロコンピュータ34は、ステップS22にて、第1の所定時間である時間Tの計測を開始する。
【0052】
マイクロコンピュータ34は、ステップS23にて、電源制御ライン33が継続的にLの状態であるか否かを判定する。電源制御ライン33が継続的にLの状態でなければ(NO)(即ち、Hの状態となれば)、マイクロコンピュータ34は処理をステップS21に戻す。電源制御ライン33が継続的にLの状態であれば(YES)、マイクロコンピュータ34は、ステップS24にて、時間Tの計測を完了したか否かを判定する。時間Tの計測を完了していなければ(NO)、マイクロコンピュータ34は処理をステップS23に戻す。
【0053】
ステップS24にて時間Tの計測を完了していれば(YES)、マイクロコンピュータ34は、ステップS25にて、トランジスタTr2のベースをHの状態にしてホールド回路35を導通状態に移行させる。続けて、マイクロコンピュータ34は、ステップS26にて、第2の所定時間である時間Δtmaxの計測を開始する。
【0054】
マイクロコンピュータ34は、ステップS27にて、時間Δtmaxの計測を完了したか否かを判定する。時間Δtmaxの計測を完了しなければ(NO)、マイクロコンピュータ34はステップS27の処理を繰り返す。時間Δtmaxの計測を完了すれば(YES)、マイクロコンピュータ34は、ステップS28にて、トランジスタTr2のベースをLの状態にしてホールド回路35を非導通状態に移行させて、処理をステップS29に移行させる。
【0055】
マイクロコンピュータ34は、ステップS29にて、制御スイッチ32の押下により電源制御ライン33がLの状態となったか否かを判定する。ステップS29にて、起動状態にある各電子機器40の電源を切断する指示がなされたか否かが判定される。電源制御ライン33がLの状態とならなければ(NO)、マイクロコンピュータ34はステップS29の処理を繰り返す。電源制御ライン33がLの状態となれば(YES)、マイクロコンピュータ34は処理を終了させる。
【0056】
マイクロコンピュータ34は、起動状態にある電子機器40の電源を切断する際に、制御スイッチ32が第1の所定時間以上長押しされたら処理を終了させてもよい。マイクロコンピュータ43は、電源制御ライン33が第1の所定時間以上、Lの状態であれば、電子機器40の電源を切断してスタンバイ状態に移行させてもよい。
【0057】
第2実施形態の電子機器40及び電子機器システムによれば、複数の電子機器40に共通に接続されている制御装置30に設けられている制御スイッチ32を長押することにより、各電子機器40の電源をより確実に投入することができる。よって、第2実施形態の電子機器40及び電子機器システムによれば、全ての電子機器40の電源をより確実に投入することができる。第2実施形態の電子機器40及び電子機器システムによれば、制御装置30のみにホールド回路35を設ければよいので、電子機器40は既存の電子機器をそのまま用いることができる。
【0058】
<第3実施形態>
第3実施形態の電子機器及び電子機器システムは、
図1に示す電子機器20及び電子機器システムと同様の構成である。よって、第3実施形態の電子機器を電子機器20と称することとする。第3実施形態の電子機器20及び電子機器システムにおいて、第1実施形態の電子機器20及び電子機器システムと共通部分の説明を省略する。
【0059】
第1実施形態において、各電子機器20においてマイクロコンピュータ23は、電源制御ライン13のLの状態を第1の所定時間計測すると、電源回路21によって電源を投入するよう制御して各電子機器20を起動状態に移行させる。
図2に示す例では、(f)~(h)に示すように電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始する時点を異ならせた状態を示している。
【0060】
仮に全ての電子機器20においてマイクロコンピュータ23が電源制御ライン13のLの状態の時間の計測を開始する時点がほぼ同じであると、全ての電子機器20の電源がほぼ同時に投入されてしまう。すると、全ての電子機器20においてほぼ同時刻に突入電流が発生することになる。第3実施形態は、ほぼ同時刻に突入電流が発生することを防止する構成としている。
【0061】
図7に示すタイミングチャートを用いて、制御装置10及び電子機器20
1~20
3の動作の一例を説明する。
図7では、制御装置10に3個の電子機器20が接続されている場合を例とする。
【0062】
図7の(a)に示すように、ユーザが時刻t21で制御スイッチ12を押下して、時刻t23まで長押ししたとする。
図7に示す例では、(c)、(e)、(g)に示すように、電子機器20
1~20
3のマイクロコンピュータ23は互いにほぼ同時の時刻t21に時間Tの計測を開始したとする。
【0063】
電子機器201のマイクロコンピュータ23は、時間Tが経過した時刻t22以降、時間Tに時刻t24までの時間Δaだけ加えた時間(T+Δa)なる時間を計測する。電子機器202のマイクロコンピュータ23は、時間Tに時刻t25までの時間Δbだけ加えた時間(T+Δb)なる時間を計測する。電子機器203のマイクロコンピュータ23は、時間Tに時刻t26までの時間Δcだけ加えた時間(T+Δc)なる時間を計測する。時間Δa~Δcは互いに異なる時間である。時間Δaを0とし、時間Δb及びΔcを、0を超える時間としてもよい。この場合、時間Δb及びΔcは互いに異なる時間である。
【0064】
このように、N個の電子機器20は全て共通の第1の所定時間を計測するのではなく、N個の電子機器20で互いに異なる第1の所定時間を計測する。第3実施形態において、第1の所定時間は時間(T+Δa)であることがあり、時間(T+Δb)であることがあり、時間(T+Δc)であることがある。第3実施形態において、第1の所定時間はさらに他の時間であることがある。
【0065】
なお、N個の電子機器20の全てで互いに異なる第1の所定時間を計測するのがよいが、一部、共通の第1の所定時間を計測してもよい。N個の電子機器20における少なくとも2つの電子機器20が有する各マイクロコンピュータ23は、第1の所定時間を互いに異なる時間に設定すればよい。好ましくは、N個の電子機器20が有する各マイクロコンピュータ23は、第1の所定時間を互いに異なる時間に設定する。
【0066】
図7の(d)、(f)、(h)に示すように、電子機器20
1~20
3のマイクロコンピュータ23は、それぞれ、時刻t24~t26から第2の所定時間である時間Δtmaxだけホールド回路22を動作させる。
図7の(b)に示すように、電源制御ライン13は時刻t
27までローの状態を維持して、その後、Hの状態となる。
【0067】
第3実施形態によれば、第1実施形態が奏する効果に加えて、複数の電子機器20における電源投入時に突入電流が発生するタイミングをずらすことができる。これにより、複数の電子機器20の突入電流に起因する故障等の発生のおそれを低減させることができる。
【0068】
<第4実施形態>
第4実施形態の電子機器及び電子機器システムは、
図4に示す電子機器40及び電子機器システムと同様の構成である。よって、第4実施形態の電子機器を電子機器40と称することとする。第4実施形態の電子機器24及び電子機器システムにおいて、第2実施形態の電子機器40及び電子機器システムと共通部分の説明を省略する。
【0069】
第2実施形態において、各電子機器40においてマイクロコンピュータ43は、電源制御ライン33のLの状態を第1の所定時間計測すると、電源回路41によって電源を投入するよう制御して各電子機器40を起動状態に移行させる。
図5に示す例では、(e)~(g)に示すように電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始する時点が異なる状態を示している。
【0070】
図4においても、仮に全ての電子機器40においてマイクロコンピュータ43が電源制御ライン33のLの状態の時間の計測を開始する時点がほぼ同じであると、全ての電子機器40の電源がほぼ同時に投入されてしまう。すると、全ての電子機器40においてほぼ同時刻に突入電流が発生することになる。第4実施形態は、ほぼ同時刻に突入電流が発生することを防止する構成としている。
【0071】
図8に示すタイミングチャートを用いて、制御装置30及び電子機器40
1~40
3の動作の一例を説明する。
図8では、制御装置30に3個の電子機器40が接続されている場合を例とする。
【0072】
図8の(a)に示すように、ユーザが時刻t31で制御スイッチ32を押下して、時刻t33まで長押ししたとする。
図8に示す例では、(d)~(f)に示すように、電子機器40
1~40
3のマイクロコンピュータ43は互いにほぼ同時の時刻t31に時間Tの計測を開始したとする。
【0073】
電子機器401のマイクロコンピュータ43は、時間Tが経過した時刻t32以降、時間Tに時刻t34までの時間Δaだけ加えた時間(T+Δa)なる時間を計測する。電子機器402のマイクロコンピュータ43は、時間Tに時刻t35までの時間Δbだけ加えた時間(T+Δb)なる時間を計測する。電子機器403のマイクロコンピュータ43は、時間Tに時刻t36までの時間Δcだけ加えた時間(T+Δc)なる時間を計測する。時間Δa~Δcは第3実施形態におけるそれと同様である。
【0074】
このように、N個の電子機器40は全て共通の第1の所定時間を計測するのではなく、N個の電子機器40で互いに異なる第1の所定時間を計測する。第4実施形態において、第1の所定時間は時間(T+Δa)であることがあり、時間(T+Δb)であることがあり、時間(T+Δc)であることがある。第4実施形態において、第1の所定時間はさらに他の時間であることがある。
【0075】
第4実施形態においても、N個の電子機器40の全てで互いに異なる第1の所定時間を計測するのがよいが、一部、共通の第1の所定時間を計測してもよい。N個の電子機器40における少なくとも2つの電子機器40が有する各マイクロコンピュータ43は、第1の所定時間を互いに異なる時間に設定すればよい。好ましくは、N個の電子機器40が有する各マイクロコンピュータ43は、第1の所定時間を互いに異なる時間に設定する。
【0076】
図8の(c)に示すように、制御装置30のマイクロコンピュータ34は、時刻t32から時刻t37まで第2の所定時間である時間Δtmaxだけホールド回路22を動作させる。
図8の(b)に示すように、電源制御ライン33は時刻t37までローの状態を維持して、その後、Hの状態となる。
【0077】
第4実施形態によれば、第2実施形態が奏する効果に加えて、複数の電子機器40において電源投入時に突入電流が発生するタイミングをずらすことができる。これにより、複数の電子機器40の突入電流に起因する故障等の発生のおそれを低減させることができる。
【0078】
本発明は以上説明した第1~第4実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。第1~第4実施形態においては、制御スイッチ12または32が押下されると電源制御ライン13または33がハイの状態(第1の状態)からローの状態(第2の状態)へと移行する。マイクロコンピュータ23または34は、第1の所定時間経過後にローの状態となっている電源制御ライン13または33を第2の所定時間だけローの状態に維持するようホールド回路22または35を動作させている。
【0079】
電子機器及び電子機器システムは、制御スイッチ12または32が押下されると電源制御ライン13または33がローの状態(第1の状態)からハイの状態(第2の状態)へと移行するように構成されていてもよい。この場合、マイクロコンピュータ23または34は、第1の所定時間経過後にハイの状態となっている電源制御ライン13または33を第2の所定時間だけハイの状態に維持するようホールド回路22または35を動作させればよい。
【符号の説明】
【0080】
10,30 制御装置
11,31 抵抗
12,32 制御スイッチ
13,33 電源制御ライン
201~20N,401~40N 電子機器
21 電源回路
22,35 ホールド回路
23,34,43 マイクロコンピュータ