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特許7559679情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20240925BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240925BHJP
   B41J 2/525 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
G06F3/12 356
G06F3/12 308
G06F3/12 344
G06F3/12 355
G06F3/12 353
G06N20/00
B41J2/525
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021100657
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000061
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】田村 希志臣
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-116734(JP,A)
【文献】特開2018-174446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
G06N 20/00
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理装置であって、
ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得手段と、
前記印刷物を構成する印刷条件を指定するための指定手段と、
前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断手段と、
を備え
前記判断手段は、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記画像データは、カラー印刷データに加え、加飾画像データを含むことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記加飾画像データは、箔加飾データ、ニス加飾データの少なくともどちらかを含むことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記印刷条件は、画像材料情報、表面処理条件又は印刷機情報を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記機械学習は、学習用画像データ、及び、当該学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物を構成する複数の印刷条件候補を入力データとし、前記学習用印刷物を実現できたか否かを出力データとして機械学習を行い、学習結果に基づいて、前記判断手段における判断に使用する前記印刷条件を決定するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記機械学習は、前記印刷条件の各要素に関連付けられた物性データを入力データとし、当該物性データにより特定される印刷条件で学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物において正しく印刷できた最小画像サイズを出力データとして、機械学習モデルを構築するものであり、
前記機械学習モデルは、前記印刷条件として未知の要素を用いる場合に、当該未知の要素に関連付けられた物性データが入力されると、正しく印刷できると推測される最小画像サイズを出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判断手段により実現できないと判断された場合に、当該判断された結果を通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記通知手段は、前記判断手段により実現できないと判断された場合に、前記画像データ上の前記実現できないと判断された箇所を強調して表示させることを特徴とする請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記判断手段により実現できないと判断された場合に、ユーザーに対し前記画像データの修正又は前記印刷条件の変更を選択させる提示手段を備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記判断手段により実現できると判断された場合に、前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、ディスプレイ上に印刷イメージを表示させる印刷イメージ生成手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記印刷イメージをユーザーが確認した結果、ユーザーの想定通りでなかった場合に、ユーザーに対し前記画像データの修正又は前記印刷条件の変更を選択させる提示手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理装置のコンピューターを、
ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得手段、
前記印刷物を構成する印刷条件を指定するための指定手段、
前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記判断手段は、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とするプログラム。
【請求項13】
画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理方法であって、
ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得工程と、
前記印刷物を構成する印刷条件の指定を受け付ける指定工程と、
前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断工程と、
を含み、
前記判断工程では、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界においては、インクやトナー等によるカラー印刷に加え、印刷物に高級感や上質感を付与する加飾印刷が利用されている。加飾印刷としては、箔押し、ニス加工、厚盛印刷、特色印刷、ラミネート加工、エンボス加工等が挙げられる。箔押しとは、予め金属層が蒸着されている樹脂フィルムを対象基材に押し当て、基材上の任意の場所に箔(金属層)を転写する印刷方法である。ニス加工とは、予めカラー印刷されている基材の任意の場所又は全体にニスと呼ばれる透明樹脂層を形成する印刷方法である。厚盛印刷とは、クリアインクやクリアトナーを局所的に多用することで、任意の場所を盛り上げる印刷方法である。特色印刷とは、所謂プロセスカラー(4C)では表現できない色域の顔料や染料を用いて印刷する印刷方法である。ラミネート加工とは、印刷物にフィルムを張り合わせる加工方法である。エンボス加工とは、凹状の型と凸状の型の間に紙を置き、圧を加えて絵柄を浮き上がらせる加工である。
【0003】
特に、箔押しやニス加工のような加飾印刷は、光沢や立体感等、独特の質感を有するものであり、通常のカラー印刷のようにディスプレイ上でそのイメージを再現することが困難である。そのため、現状は、実際に印刷物を出力することでしか、その加飾の状態を確認することができない。
【0004】
そこで、印刷物の仕上がり状態を事前に確認するために、質感を含めたプレビュー表示を行う技術が利用されつつある。
例えば、印刷物の光沢感を含む質感を向上させて表示するために、印刷物の原稿データと、印刷物の用紙部拡散反射データと、印刷物の用紙部正反射の質感を付与するデータと、印刷物の画像部正反射の質感を付与するデータに基づいて、3次元表示のプレビュー機能に用いる表示用のデータを算出する画像処理装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、クリアトナーで加飾した印刷物の表示を伴う印刷プレビュー機能を有する表示装置において、原稿の紙質状態の画質、クリアトナー領域の印刷状態の画質、原稿の紙質状態とクリアトナー領域の印刷状態の画質を3次元表現で表示するものが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、印刷対象物品の印刷対象物品画像と、印刷対象物品にカラー印刷する印刷デザイン画像を合成することによって、印刷対象物品に印刷デザイン画像がカラー印刷された状態のプレビュー画像を作成する印刷注文受付システムにおいて、印刷対象物品の色に影響される実際の印刷物の仕上がり状態を表示するものが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-194713号公報
【文献】特開2014-182410号公報
【文献】特開2021-6947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、箔押しやニス加工をはじめとする加飾印刷においては、ディスプレイ上にそのイメージを再現することができたとしても、それは理想状態の画像であり、実際に印刷物を出力してみないと分からない不具合が発生する場合があった。
例えば、予めカラーで印刷された文字上にニス加工を施す際に、文字の大きさによってはニスが文字からはみ出てしまう場合があった。
また、デザイン上、小さい文字を箔押しで表現する際に、実際の出力では文字がつぶれてしまう場合があった。
また、或る紙メディアでは良好な箔押し印刷(箔の転写性が良好)が実現できていたが、別の紙メディアでは同じデザインデータであるにもかかわらず、きれいな箔押しができない場合があった。
また、或る印刷方式(例えばオフセット印刷)で印刷したカラー画像上にはニスをきれいに印刷できるが、別の印刷方式のカラー画像上ではニスがはじいてしまう場合があった。
【0009】
このように、画像データに基づいて印刷物を出力する際に、データ上で指定された通りの印刷物を必ずしも実現できるとは限らない。カラー印刷時の印刷条件(メディア、インク等)によって、その後の加飾の適性が変化する場合もあるし、使用する加飾機によって、同じデザインデータでも出力結果が異なる場合もある。すなわち、印刷に用いるデザインデータ、使用する材料、使用する印刷機/加飾機によって、加飾印刷の出力結果が大きく左右される。
【0010】
本発明は、上記の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、実際に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理装置であって、ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得手段と、前記印刷物を構成する印刷条件を指定するための指定手段と、前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断手段と、を備え、前記判断手段は、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、前記画像データは、カラー印刷データに加え、加飾画像データを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置において、前記加飾画像データは、箔加飾データ、ニス加飾データの少なくともどちらかを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置において、前記印刷条件は、画像材料情報、表面処理条件又は印刷機情報を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、前記機械学習は、学習用画像データ、及び、当該学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物を構成する複数の印刷条件候補を入力データとし、前記学習用印刷物を実現できたか否かを出力データとして機械学習を行い、学習結果に基づいて、前記判断手段における判断に使用する前記印刷条件を決定するものであることを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、前記機械学習は、前記印刷条件の各要素に関連付けられた物性データを入力データとし、当該物性データにより特定される印刷条件で学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物において正しく印刷できた最小画像サイズを出力データとして、機械学習モデルを構築するものであり、前記機械学習モデルは、前記印刷条件として未知の要素を用いる場合に、当該未知の要素に関連付けられた物性データが入力されると、正しく印刷できると推測される最小画像サイズを出力することを特徴とする。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置において、前記判断手段により実現できないと判断された場合に、当該判断された結果を通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の情報処理装置において、前記通知手段は、前記判断手段により実現できないと判断された場合に、前記画像データ上の前記実現できないと判断された箇所を強調して表示させることを特徴とする。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項7又は8に記載の情報処理装置において、前記判断手段により実現できないと判断された場合に、ユーザーに対し前記画像データの修正又は前記印刷条件の変更を選択させる提示手段を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置において、前記判断手段により実現できると判断された場合に、前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、ディスプレイ上に印刷イメージを表示させる印刷イメージ生成手段を備えることを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の情報処理装置において、前記印刷イメージをユーザーが確認した結果、ユーザーの想定通りでなかった場合に、ユーザーに対し前記画像データの修正又は前記印刷条件の変更を選択させる提示手段を備えることを特徴とする。
【0025】
請求項12に記載の発明は、画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理装置のコンピューターを、ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得手段、前記印刷物を構成する印刷条件を指定するための指定手段、前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断手段、として機能させるためのプログラムであって、前記判断手段は、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明は、画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う情報処理方法であって、ユーザーが作成した前記画像データを取得する画像取得工程と、前記印刷物を構成する印刷条件の指定を受け付ける指定工程と、前記画像データ及び前記印刷条件に基づいて、前記印刷物を実現できるか否かを判断する判断工程と、を含み、前記判断工程では、機械学習による学習結果を用いて、前記印刷物を実現できるか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、実際に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態における情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】印刷条件情報に含まれる印刷条件の項目名及び取り得る値の例である。
図3】箔加飾の実現可否判断テーブルの例である。
図4】ニス加飾の実現可否判断テーブルの例である。
図5】情報処理装置により実行される印刷事前処理を示すフローチャートである。
図6】(a)は、4C画像データの例である。(b)は、箔加飾データの例である。(c)は、ニス加飾データの例である。
図7】箔加飾データの一部の拡大例である。
図8】ニス加飾データの一部の拡大例である。
図9】印刷条件入力画面の例である。
図10】NG箇所表示画面の例である。
図11】印刷イメージ表示画面の例である。
図12】第3の実施の形態における学習用画像データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る情報処理装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1に、第1の実施の形態における情報処理装置10の機能的構成を示す。情報処理装置10は、制御部11、表示部12、操作部13、通信部14、記憶部15等を備えて構成されており、各部はバスにより接続されている。情報処理装置10は、PC(Personal Computer)等で構成されており、印刷用の画像データを作成する際に用いられる。情報処理装置10において作成された画像データは、指定された印刷機及び加飾機に送信され、印刷物が出力される。
【0031】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、情報処理装置10の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、記憶部15に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0032】
表示部12は、LCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されており、制御部11から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0033】
操作部13は、カーソルキー、文字・数字入力キー及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部11に出力する。また、操作部13が、表示部12に積層されたタッチパネルにより構成される場合には、ユーザーの指等によるタッチ操作の位置に応じた操作信号を制御部11に出力する。
【0034】
通信部14は、ネットワークインターフェース等により構成され、LAN(Local Area Network)、インターネット等の通信ネットワークを介して接続された外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0035】
記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なデータ等を記憶している。
【0036】
記憶部15には、印刷条件情報151が記憶されている。印刷条件情報151には、印刷物を構成する印刷条件の各要素に対して、取り得る値が対応付けられている。
印刷条件は、画像材料情報、表面処理条件、印刷機情報等を含む。
画像材料情報は、印刷物の材料に関する情報であり、メディア(用紙等の記録媒体)、インク、加飾材料(箔、ニス等)等を含む。
表面処理条件は、印刷物における表面処理に関する条件であり、表面加工等を含む。
印刷機情報は、印刷物を出力する印刷機や加飾機に関する情報であり、印刷機、使用加飾機等を含む。
【0037】
図2(a)~(e)に、印刷条件情報151に含まれる印刷条件の項目名及び取り得る値の例を示す。
図2(a)に示す印刷条件「メディア」は、コート紙A、マット紙B等、印刷に用いる基材(記録媒体)の名称の値を取り得る。具体的には、OKトップコート(登録商標)(王子製紙社製)、サンマット(北越コーポレーション社製)、エスプリAP(日本製紙社製)等が挙げられる。
図2(b)に示す印刷条件「インク」は、インクC、インクD、インクE、インクF、インク層なし等、カラー印刷を実行する際に用いるインク(又はトナー)の名称の値を取り得る。具体的には、フュージョン(登録商標)G NEO(DIC社製)、NEX(登録商標) NV(東洋インキ社製)、AccurioJet(登録商標) KM-1用HSインク(コニカミノルタ社製)、AccurioPress(登録商標) C12000/C14000用トナー(コニカミノルタ社製)等が挙げられる。
図2(c)に示す印刷条件「表面加工」は、表面加工なし、ラミネート加工、コロナ放電等の値を取り得る。
図2(d)に示す印刷条件「使用加飾機」は、加飾機G、加飾機H、ニスコーター、ホットスタンプ箔押し機等の値を取り得る。加飾機G及び加飾機Hは、箔押し及びニス加工が可能な加飾機である。加飾機としては、JETVernish 3D(MGI社製)、Scodix Ultra Pro+Foil(スコディックス社製)、ニスコーターとしては、KDC-17KB(ビーエヌテクノロジー社製)、ホットスタンプ箔押し機としては、OPM-HL450S(恩田製作所社製)等が挙げられる。
図2(e)に示す印刷条件「加飾材料」は、ニス、箔等の値を取り得る。
【0038】
また、記憶部15には、印刷物を構成する印刷条件が取り得る値ごとに予め用意された実現可否判断テーブル152が記憶されている。なお、1種類の印刷条件を用いる場合には、この印刷条件が取り得る値ごとに、実現可否判断テーブル152が用意されている。複数の種類の印刷条件を用いる場合には、各印刷条件が取り得る値の組み合わせごとに、実現可否判断テーブル152が用意されている。
【0039】
図3に、箔加飾の実現可否判断テーブル152の例を示す。この実現可否判断テーブル152では、加飾材料「箔」について、メディア「コート紙A」、インク「インクC」、表面加工「表面加工なし」、使用加飾機「加飾機G」という条件で、箔により形成される画像の最小長のそれぞれの値に対して、「実現可否」が定められている。つまり、実現可否判断テーブル152は、印刷条件の値(箔、コート紙A、インクC、表面加工なし、加飾機G)、画像データ(箔加飾データ)に係る画像の最小長、及び、印刷物を実現できるか否かを示す情報(実現可否)で構成されている。画像データに係る画像は、インク、箔、ニス等が載る部分である。最小長は、画像データに係る画像の長さの最小値である。図3によれば、箔加飾データに係る箔画像の最小長が0.25mm以下の場合に「NG(実現不可能)」、最小長が0.30mm以上の場合に「OK(実現可能)」となっている。
【0040】
図4に、ニス加飾の実現可否判断テーブル152の例を示す。この実現可否判断テーブル152は、加飾材料「ニス」について、メディア「コート紙A」、インク「インクC」、表面加工「表面加工なし」、使用加飾機「加飾機G」という条件で、ニスにより形成される画像の最小長のそれぞれの値に対して、「実現可否」が定められている。つまり、実現可否判断テーブル152は、印刷条件の値(ニス、コート紙A、インクC、表面加工なし、加飾機G)、画像データ(ニス加飾データ)に係る画像の最小長、及び、印刷物を実現できるか否かを示す情報(実現可否)で構成されている。図4によれば、ニス加飾データに係るニス画像の最小長が0.10mm以下の場合に「NG」、最小長が0.15mm以上の場合に「OK」となっている。
【0041】
実現可否判断テーブル152は、当該テーブルに対応する条件で、実現可否の判断対象とする画像データに係る画像の長さ(幅)を変えてそれぞれ印刷物を実際に出力し、印刷物を目視又は測定器によりチェックし、実現可否結果(OK/NG)を与えることで、生成されたものである。
【0042】
また、記憶部15には、印刷条件が取り得る値ごとに予め用意された質感情報153が記憶されている。質感情報153は、印刷物を構成する材料に起因する光沢や立体感等の質感を示す情報である。本実施形態では、メディア、インク、加飾材料が「印刷物を構成する材料」に該当する。質感情報153には、反射特性のデータが含まれる。反射特性として、画像に対する光の入射・反射の角度によって変化する、反射光の明度の角度に対する分布及び分光反射率を用いることができる。反射光の明度の角度に対する分布として、双方向反射率分布関数(Bidirectional Reflectance Distribution Function:BRDF)、双方向テクスチャ関数(Bidirectional Texture Function:BTF)、双方向散乱面反射率分布関数(Bidirectional Scattering Surface Reflectance Distribution Function:BSSRDF)等のいかなる変角特性を用いてもよい。本実施形態では、反射光の明度の分布であるBRDF(分光反射率R(λ)の角度分布)で表される反射特性のデータを、質感情報153として用いる。
【0043】
質感情報153は、加飾材料、メディア、インク等の印刷条件が取り得る値ごとに、印刷物を実際に出力し、印刷物に対する光の入射・反射の角度を変えながら、反射光の強度を測定することで、生成されたものである。
【0044】
制御部11は、画像データに基づいて印刷物を出力する印刷に対する事前処理を行う。
制御部11は、ユーザーが作成した画像データを取得する。すなわち、制御部11は、画像取得手段として機能する。画像データは、カラー印刷データに加え、加飾画像データを含む。
カラー印刷データは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等のインクやトナーにより形成される通常のカラー画像のデータ(4C画像データ)である。
加飾画像データは、箔加飾データ、ニス加飾データ、盛り上げ印刷データ、特色印刷データの少なくとも一つを含む。
箔加飾データは、金色、銀色等の金属箔や、ホログラム箔等をメディア上に形成するための画像データである。
ニス加飾データは、ニスをメディア上に塗布するための画像データである。
盛り上げ印刷データは、印刷物の任意の場所を盛り上げるために、クリアインクやクリアトナーを印刷するための画像データである。
特色印刷データは、プロセスカラー(4C)では表現できない色域の顔料や染料を用いて印刷するための画像データである。
本実施形態では、加飾画像データとして箔加飾データ及びニス加飾データを用いる。
【0045】
制御部11は、操作部13からの操作により、印刷物を構成する印刷条件の指定を受け付ける。すなわち、操作部13は、印刷条件を指定するための指定手段である。
【0046】
制御部11は、画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷物を実現できるか否かを判断する。すなわち、制御部11は、判断手段として機能する。
制御部11は、実現可否判断テーブル152に基づいて、印刷物を実現できるか否かを判断する。
【0047】
制御部11は、印刷物を実現できないと判断された場合に、当該判断された結果を通知する。すなわち、制御部11は、通知手段として機能する。
制御部11は、印刷物を実現できないと判断された場合に、画像データ上の実現できないと判断された箇所(NG箇所)を強調して表示させる。例えば、制御部11は、NG箇所を四角形や丸等の図形で囲ったり、NG箇所を所定の色に変更したりする。
制御部11は、印刷物を実現できないと判断された場合に、ユーザーに対し画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させる。すなわち、制御部11は、提示手段として機能する。
【0048】
制御部11は、印刷物を実現できると判断された場合に、画像データ及び印刷条件に基づいて、ディスプレイ(表示部12)上に印刷イメージを表示させる。すなわち、制御部11は、印刷イメージ生成手段として機能する。制御部11は、印刷条件の値に対応する質感情報153を用いて、印刷イメージを生成する。
【0049】
印刷イメージとは、画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷機(加飾印刷が行われる場合には加飾機も含む。)により出力される印刷物の見え方を表現した画像である。特に、箔押しやニス加工等の加飾が施される場合、印刷イメージは、加飾画像データ(箔加飾データ、ニス加飾データ)による影響が大きく、光沢等の質感を伴うものとなる。
印刷イメージとして、例えば、印刷物に対する視点(印刷物の角度)を変えていくような3次元表示を用いる。また、静止画であっても質感が分かるような、印刷物を斜めから見た表示方法を用いてもよい。
【0050】
印刷イメージは、以下の方法で生成する。まず、制御部11は、印刷イメージの生成時に用いる光源の分光スペクトルS(λ)、等色関数、分光反射率R(λ)から、以下の式(1)により、画像の見栄えを表す刺激値(本実施形態ではXYZ刺激値)を求める。なお、光源の分光スペクトルS(λ)、等色関数、分光反射率R(λ)は、波長λの関数である。分光反射率R(λ)は、質感情報153に含まれており、ディスプレイに表示する印刷物の角度に応じて変わる。
【0051】
【数1】
【0052】
なお、式(1)のKは、以下の式(2)で与えられる。
【0053】
【数2】
【0054】
次に、制御部11は、以下の式(3)、(4)により、XYZ刺激値を、ディスプレイに表示するためのsRGB信号値に変換する。
【0055】
【数3】
【0056】
次に、制御部11は、このようにして得られたsRGB信号値をディスプレイ(表示部12)に出力し、表示部12に印刷イメージを表示させる。角度に応じた分光反射率R(λ)を用いることで、見た目に近い質感を表現できる。なお、3次元表示を用いて印刷イメージを表示する場合には、印刷物の角度を変えながら上記の処理を連続的に繰り返せばよい。
【0057】
印刷イメージをユーザーが確認した結果、ユーザーの想定通りでなかった場合に、制御部11は、ユーザーに対し画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させる。すなわち、制御部11は、提示手段として機能する。
【0058】
次に、第1の実施の形態の情報処理装置10における動作について説明する。
図5は、情報処理装置10により実行される印刷事前処理を示すフローチャートである。印刷事前処理は、印刷前に行われる処理であり、制御部11と記憶部15に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0059】
まず、ユーザーは、操作部13からの操作により、画像データを作成する(ステップS1)。画像データには、カラー印刷データ(4C画像データ)、箔加飾データ、ニス加飾データの各レイヤーが含まれる。各レイヤーは、2値の画像データにより構成される。
【0060】
なお、ユーザーとしては、パッケージやグラフィックを制作するデザイナーや、加飾機を所有している企業(コンバーター)でDTPや印刷作業を行うオペレータ―等が挙げられるが、これらに限定されることはなく、印刷物の制作に関わる人間を意味する。
【0061】
ユーザーは、表示部12に表示された操作画面において、操作部13からの操作により、4C画像データ、箔加飾データ、ニス加飾データを作成する。
図6(a)は、4C画像データの例である。4C画像データは、実際は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色ごとの画像データに分かれている。
図6(b)は、箔加飾データの例である。加飾印刷時、メディア上の、箔加飾データにおいて黒色で示されている領域に対応する部分に、箔が付加される。
図6(c)は、ニス加飾データの例である。加飾印刷時、メディア上の、ニス加飾データにおいて黒色で示されている領域に対応する部分に、ニスが塗布される。
【0062】
次に、制御部11は、作成された画像データから、レイヤー(4C画像データ、箔加飾データ、ニス加飾データ)ごとの2値画像データ(bmp、tiff等)を取得する(ステップS2)。
【0063】
次に、制御部11は、4C画像データの画素ごとに、インク層の有無を判断する(ステップS3)。具体的には、制御部11は、4C画像データの各画素に対して、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのいずれかの色のインクが載る場合には「インク層あり」、いずれの色のインクも載らない場合には「インク層なし」と判断する。すなわち、制御部11は、加飾画像データ(箔加飾データ、ニス加飾データ)に係る加飾印刷が施される前の状態を想定して、印刷物の最表面の状態(メディアのみか、メディア上にインクが載った状態か)を把握する。
【0064】
次に、制御部11は、加飾画像データ(箔加飾データ、ニス加飾データ)及び加飾画像データの解像度から、加飾画像の最小長を算出する(ステップS4)。
【0065】
図7は、箔加飾データ(2値画像)の一部の拡大例である。黒い画素(図7においては、斜線パターンで黒を表している。)が「箔あり」を示し、白い画素が「箔なし」を示している。箔加飾データに対して、縦方向・横方向それぞれにおける「箔あり」領域の連続画素の最小値を求め、縦方向における最小値、横方向における最小値のうち、より小さい方を箔加飾データの連続画素の最小値とする。図7では、部分21において、縦方向における連続画素が「1ピクセル」で最小となっている。箔加飾データの解像度を「150dpi」とすると、「1ピクセル」は「0.17mm」に相当し、この「0.17mm」が箔加飾データに係る箔画像の最小長となる。
【0066】
図8は、ニス加飾データ(2値画像)の一部の拡大例である。黒い画素(図8においては、斜線パターンで黒を表している。)が「ニスあり」を示し、白い画素が「ニスなし」を示している。ニス加飾データに対して、縦方向・横方向それぞれにおける「ニスあり」領域の連続画素の最小値を求め、縦方向における最小値、横方向における最小値のうち、より小さい方をニス加飾データの連続画素の最小値とする。図8では、部分22において、縦方向における連続画素が「3ピクセル」で最小となっている。ニス加飾データの解像度を「360dpi」とすると、「3ピクセル」は「0.21mm」に相当し、この「0.21mm」がニス加飾データに係るニス画像の最小長となる。
【0067】
次に、制御部11は、印刷物を構成する印刷条件を取得する(ステップS5)。具体的には、制御部11は、各種印刷条件を入力するための入力画面を表示部12に表示させる。ユーザーは、表示部12に表示された入力画面において、操作部13からの操作により、各種印刷条件を入力する。
【0068】
図9に、表示部12に表示される印刷条件入力画面121の例を示す。印刷条件入力画面121には、メディア選択領域31、インク選択領域32、表面加工選択領域33、加飾機選択領域34、加飾材料選択領域35が含まれる。
メディア選択領域31は、印刷に使用するメディアを選択するための領域である。メディア選択領域31には、図2(a)に示す印刷条件「メディア」が取り得る値(コート紙A、マット紙B等)が選択候補として表示される。
インク選択領域32は、印刷に使用するインクを選択するための領域である。インク選択領域32には、図2(b)に示す印刷条件「インク」が取り得る値が選択候補として表示される。
表面加工選択領域33は、印刷物に対する表面加工を選択するための領域である。表面加工選択領域33には、図2(c)に示す印刷条件「表面加工」が取り得る値が選択候補として表示される。
加飾機選択領域34は、加飾印刷に用いる加飾機を選択するための領域である。加飾機選択領域34には、図2(d)に示す印刷条件「使用加飾機」が取り得る値が選択候補として表示される。
加飾材料選択領域35は、加飾材料を選択するための領域である。加飾材料選択領域35には、図2(e)に示す印刷条件「加飾材料」が取り得る値、及び、それらの組み合わせ(ニス+箔等)が選択候補として表示される。
【0069】
次に、制御部11は、入力(選択)された印刷条件の組み合わせに対応する実現可否判断テーブル152を記憶部15から読み出す(ステップS6)。具体的には、制御部11は、箔、コート紙A、インクC、表面加工なし、加飾機Gに対応する実現可否判断テーブル152(図3参照)、及び、ニス、コート紙A、インクC、表面加工なし、加飾機Gに対応する実現可否判断テーブル152(図4参照)を記憶部15から読み出す。
【0070】
次に、制御部11は、読み出した実現可否判断テーブル152を参照して、画像データ及び印刷条件に基づいて、加飾印刷物を実現できるか否かを判断する(ステップS7)。
【0071】
図7に示した箔加飾データの例では、「箔あり」領域の最小長が「0.17mm」であるから、図3に示す箔加飾の実現可否判断テーブル152を参照すると、箔加飾を実現不可能(NG)という判断結果となる。
【0072】
図8に示したニス加飾データの例では、「ニスあり」領域の最小長が「0.21mm」であるから、図4に示すニス加飾の実現可否判断テーブル152を参照すると、ニス加飾を実現可能(OK)という判断結果となる。
【0073】
なお、図3及び図4に示した実現可否判断テーブル152は、「インクC」を用いて4C画像データに基づく印刷を行った表面状態で加飾印刷を実現できるか否かを判断する際に使用するテーブルであるが、ステップS3で「インク層なし」と判断された画素においては、インクの条件(印刷条件)が「インク層なし」の実現可否判断テーブル152を用いればよい。
【0074】
ステップS7において、加飾印刷物を実現できないと判断された場合には(ステップS7;NO)、制御部11は、表示部12において、画像データ上の実現できないと判断された箇所(NG箇所)を強調して表示し(ステップS8)、加飾印刷物を実現できないことを通知する。
【0075】
図10に、表示部12に表示されるNG箇所表示画面122の例を示す。NG箇所表示画面122には、4C画像データ表示領域41、箔加飾データ表示領域42、ニス加飾データ表示領域43が含まれる。箔加飾データ表示領域42では、箔加飾データ上のNG箇所(不具合が発生するおそれがある箇所)が四角形42A,42B,42Cで囲まれることで、NG箇所が強調されている。
ユーザーは、NG箇所を確認する。
【0076】
次に、制御部11は、ユーザーに対し、画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させる(ステップS9)。具体的には、制御部11は、画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させるための選択画面を表示部12に表示させ、ユーザーによる操作部13からの選択を受け付ける。
【0077】
ユーザーにより画像データの修正が選択された場合には(ステップS9;YES)、ステップS1に戻り、制御部11は、画像データの修正を受け付け、修正された画像データに基づいて、処理が繰り返される。例えば、ステップS8において、NG箇所として、箔が細い部分が指摘された場合、ユーザーは、細い箔を付加できるような4C画像データに変更したり、箔加飾データの文字を太くしたりする。
【0078】
ステップS9において、ユーザーにより印刷条件の変更が選択された場合には(ステップS9;NO)、ステップS5に戻り、制御部11は、印刷条件の変更を受け付け、変更された印刷条件に基づいて、処理が繰り返される。例えば、ステップS8において、NG箇所として、箔が細い部分が指摘された場合、ユーザーは、箔が載りやすいように表面加工を行う設定に変更する。
【0079】
ステップS7において、加飾印刷物を実現できると判断された場合には(ステップS7;YES)、制御部11は、画像データ及び印刷条件に基づいて、表示部12上に印刷イメージを表示させる。具体的には、制御部11は、記憶部15に記憶されている質感情報153を利用して印刷イメージを生成する。
【0080】
図11に、表示部12に表示される印刷イメージ表示画面123の例を示す。印刷イメージ表示画面123には、印刷イメージ51が含まれる。印刷イメージ51は、4C画像データ、箔加飾データ、ニス加飾データに基づく合成画像に対して、印刷条件に対応する質感情報153に基づいて、光沢等の質感が付与されたものである。印刷イメージ51は、仮想的な3次元空間において、時間の経過に沿って、画像面の角度が変化するように表示される。
ユーザーは、印刷イメージを確認する。
【0081】
次に、制御部11は、ユーザーが印刷イメージを確認した結果、印刷イメージがユーザーの想定通りであったか否かをユーザーに選択させる(ステップS11)。具体的には、制御部11は、印刷イメージがユーザーの想定通りであったか否かを選択させるための選択画面を表示部12に表示させ、ユーザーによる操作部13からの選択を受け付ける。
【0082】
印刷イメージがユーザーの想定通りでなかった場合には(ステップS11;NO)、制御部11は、ユーザーに対し、画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させる(ステップS9)。ステップS9以降の処理については、前述した内容と同様である。
【0083】
ステップS11において、印刷イメージがユーザーの想定通りであった場合には(ステップS11;YES)、印刷事前処理が終了する。
【0084】
印刷事前処理の後、情報処理装置10の制御部11は、通信部14を介して印刷機に画像データ及び各種印刷条件を送信し、印刷を行わせる。
【0085】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、画像データ及び印刷条件から印刷物の実現可否を判断するので、実際に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認することができる。したがって、実際に印刷を繰り返しながら、印刷物の仕上がりを確認する必要がなく、印刷時の手間や時間を少なくすることができる。
特に、カラー印刷データに加え、箔加飾データ又はニス加飾データに基づく加飾印刷を行う前に、意図した加飾印刷物を実現できるか否かを確認することができる。
【0086】
また、印刷物を構成する印刷条件として、画像材料情報(メディア、インク、加飾材料等)、表面処理条件(表面加工等)、印刷機情報(使用加飾機等)等の条件に応じて、印刷物を実現できるか否かを判断することができる。
【0087】
また、印刷条件が取り得る値ごとに予め用意された実現可否判断テーブル152を用いることで、印刷物を実現できるか否かの判断を容易に行うことができる。
特に、実現可否判断テーブル152において、印刷条件の値及び画像データに係る画像の最小長に対する実現可否を得られるので、不具合が生じやすい画像の細部(最小長)を基準にして、印刷物を実現できるか否かを判断することができる。
【0088】
また、印刷物を実現できないと判断された場合に、判断された結果を通知するので(アラート機能)、ユーザーに実現不可能であることを警告し、注意を喚起することができる。
例えば、画像データ上の実現できないと判断された箇所を強調して表示させることで、ユーザーに問題となる箇所を指摘することができる。
【0089】
なお、印刷事前処理(図5参照)のステップS8では、NG箇所を強調して表示することで、ユーザーに警告することとしたが、警告音や音声出力により、実現不可能であることを通知することとしてもよい。
【0090】
また、印刷物を実現できないと判断された場合に、ユーザーに対し画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させることで、印刷上の不具合を回避することができる。
【0091】
また、印刷物を実現できると判断された場合に、画像データ及び印刷条件に基づいて、ディスプレイ(表示部12)上に質感を含む印刷イメージを表示させるので(プレビュー機能)、ユーザーは実際に印刷することなく、仕上がり状態を確認することができる。これにより、実際に印刷物を出力した際に、意図したものと異なるといった状況を回避することができる。
【0092】
また、印刷イメージをユーザーが確認した結果、ユーザーの想定通りでなかった場合に、ユーザーに対し画像データの修正又は印刷条件の変更を選択させることで、実際に印刷物を出力した際に、ユーザーが想定したものと異なるといった状況を回避することができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
次に、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態における情報処理装置は、第1の実施の形態に示した情報処理装置10と同様の構成であるため、図1を援用し、その構成については図示及び説明を省略する。以下、第2の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0094】
第2の実施の形態では、制御部11が、画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷物を実現できるか否かを判断する際に、機械学習(ディープラーニング等)による学習結果を用いる。具体的には、印刷物を実現できるか否かの判断に用いる実現可否判断テーブル152は、機械学習による学習結果から得られたものである。
【0095】
ここで、機械学習は、学習用画像データ、及び、学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物を構成する複数の印刷条件候補を入力データとし、学習用印刷物を実現できたか否かを出力データとして機械学習を行い、学習結果に基づいて、印刷物を実現できるか否かの判断に使用する印刷条件を決定するものである。「複数の印刷条件候補」として、学習用印刷物を構成する要素に関する様々な情報(印刷条件)を用いることができる。機械学習により、印刷物の実現可否の判断に効果的な印刷条件、すなわち、データ上で指定された通りの印刷物を実現できるか否かに影響が大きい印刷条件を自動的に決定し、実現可否判断テーブル152を作成する。実現可否判断テーブル152は、情報処理装置10で作成してもよいし、情報処理装置10とは異なる装置で作成してもよい。
【0096】
第2の実施の形態の情報処理装置10における動作については、印刷事前処理(図5参照)と同様である。ただし、ステップS6で読み出される実現可否判断テーブル152として、機械学習による学習結果に基づいて作成されたものを用いる。
【0097】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、画像データ及び印刷条件から印刷物の実現可否を判断するので、実際に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認することができる。
【0098】
また、機械学習による学習結果を用いて、印刷物を実現できるか否かを判断することができる。具体的には、機械学習を利用して、印刷物を実現できるか否かの判断に使用する印刷条件を決定するので、効率良く実現可否判断テーブル152を作成することができるとともに、実現可否判断の精度を向上させることができる。
【0099】
[第3の実施の形態]
次に、本発明を適用した第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態における情報処理装置は、第1の実施の形態に示した情報処理装置10と同様の構成であるため、図1を援用し、その構成については図示及び説明を省略する。以下、第3の実施の形態に特徴的な構成及び処理について説明する。
【0100】
第3の実施の形態では、制御部11が、画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷物を実現できるか否かを判断する際に、機械学習による学習結果を用いる。具体的には、印刷物を実現できるか否かの判断に用いる実現可否判断テーブル152は、機械学習による学習結果から得られたものである。
【0101】
ここで、機械学習は、図2に示す印刷条件の各要素に関連付けられた物性データを入力データとし、物性データにより特定される印刷条件で学習用画像データに基づいて出力された学習用印刷物において正しく印刷できた最小画像サイズを出力データとして、機械学習モデルを構築するものである。
【0102】
「印刷条件の各要素に関連付けられた物性データ」とは、例えば、「メディア」については表面エネルギーであり、「インク」については表面張力であり、「表面加工」については画像の加工後の表面エネルギーであり、「使用加飾機」については加飾材料の塗布膜厚である。なお、物性データは、これらの例に限定されず、印刷条件の各要素に特徴的な物性を示す情報(インクや加飾材料の載りやすさ、摩擦、粘着性を示す指標等)であればよい。
【0103】
「正しく印刷できた」とは、データ上で指定された通りに印刷ができたことをいい、画像データに係る画像の太さ・幅・長さが計算上の値と比較して所定の範囲内であること、かすれ・むら等がないことを含む。
「最小画像サイズ」とは、同一の物性データの条件において、正しく印刷できた画像のサイズの最小値をいう。
【0104】
機械学習モデルに学習させた後、印刷条件として未知の要素を用いる場合に、未知の要素に関連付けられた物性データを取得し、この物性データを学習済みの機械学習モデルに入力すると、機械学習モデルは、正しく印刷できると推測される最小画像サイズを出力する。すなわち、機械学習モデルは、既知の要素における最小画像サイズに基づいて作成されたものであり、未知の要素における最小画像サイズを推測するためのものである。
【0105】
図12に、学習用画像データの例を示す。図12に示す学習用画像データには、1px×1pxから5px×5pxまでの正方形及び1pxから5pxの幅を有する線状の図形が描画されている。なお、学習用印刷物において正しく印刷できたか否かについては、以下のような判定を行う。図12に示す学習用画像データを印刷し、画像データの解像度及び画像データのピクセル数から算出される計算上の図形部の大きさ(長さ)と印刷物における図形部の大きさ(長さ)の実測値との差が30%未満の場合に正しく印刷できたと判定し、30%以上の場合に正しく印刷できなかったと判定する。また、箔の場合は、前述の判定に加え、箔の転写率が80%以上の場合に正しく印刷できたと判定し、80%未満の場合に印刷できなかったと判定する。これらの一連の結果より、学習用印刷物において正しく印刷できた最小画像サイズを特定する。
学習用印刷物において正しく印刷できたか否かについての判定は、学習用印刷物をスキャナー等で読み取って得られた画像データに基づいて、自動で行われてもよいし、目視によるものであってもよい。
【0106】
制御部11は、印刷条件として未知の要素を用いる場合に、未知の要素に関連付けられた物性データを取得し、この物性データを学習済みの機械学習モデルに入力し、正しく印刷できると推測される最小画像サイズを得る。制御部11は、この最小画像サイズに基づいて、未知の要素を含む印刷条件の組み合わせに対して、実現可否判断テーブル152を作成する。
【0107】
第3の実施の形態の情報処理装置10における動作については、印刷事前処理(図5参照)と同様である。ただし、ステップS6で読み出される実現可否判断テーブル152として、機械学習による学習結果に基づいて作成されたものを用いる。
【0108】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、画像データ及び印刷条件から印刷物の実現可否を判断するので、実際に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認することができる。
【0109】
また、印刷条件の各要素に関連付けられた物性データを用いて最小画像サイズを出力するように機械学習させることで、未知の要素が含まれる印刷条件においても、事前に印刷物を出力することなく、意図した印刷物を実現できるか否かを確認することができる。
【0110】
なお、上記各実施の形態における記述は、本発明に係る情報処理装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0111】
例えば、印刷物を構成する印刷条件の一つとして、ニスの塗布量等の加飾処理条件(印刷物における加飾処理に関する条件)を用いることとしてもよい。ニスの塗布量によっては、カラー印刷(小さい文字等)の上にニス加工を施す際にニスのはみ出しが発生するか否かの結果が異なる場合があるため、ニスの塗布量に応じて、実現可否判断テーブル152を変えてもよい。
【0112】
また、どのような条件(印刷条件の組み合わせ)で実現可否判断テーブル152を予め用意しておくかについては、上記の例に限定されない。例えば、「印刷機・加飾機」を指定することで、使用する「インク」が自動的に決まる場合、又は、「インク」を指定することで、使用する「印刷機・加飾機」が自動的に決まる場合には、「印刷機・加飾機」と「インク」のいずれか一方のみを、実現可否判断テーブル152を作成する際の条件に加えればよい。
【0113】
また、上記各実施の形態では、実現可否判断テーブル152において、画像データに係る画像の「最小長」ごとに「実現可否(OK/NG)」が定められている場合について説明したが、印刷条件が取り得る値ごとに、印刷物を実現可能な画像の長さ(幅)の下限値(閾値)を記憶しておくこととしてもよい。この場合、画像データに係る画像の最小長がこの下限値以上であれば、印刷物を実現できると判断し、画像データに係る画像の最小長がこの下限値未満であれば、印刷物を実現できないと判断する。
【0114】
また、情報処理装置10において行われる各処理を、複数の装置が分担して行うこととしてもよい。
【0115】
各処理を実行するためのプログラムを格納するコンピューター読み取り可能な媒体としては、上記の例に限定されず、可搬型記録媒体を適用することも可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)を適用することとしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
10 情報処理装置
11 制御部
12 表示部
13 操作部
15 記憶部
121 印刷条件入力画面
122 NG箇所表示画面
123 印刷イメージ表示画面
151 印刷条件情報
152 実現可否判断テーブル
153 質感情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12