(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】中継装置、通信システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/46 20060101AFI20240925BHJP
H04L 47/62 20220101ALI20240925BHJP
H04L 47/31 20220101ALI20240925BHJP
H04L 12/28 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H04L12/46 D
H04L47/62
H04L47/31
H04L12/46 100Z
H04L12/28 100A
(21)【出願番号】P 2021116631
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 和之
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】陶山 洋次郎
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105129(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/052892(WO,A1)
【文献】特開2010-245794(JP,A)
【文献】特開2021-34861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信を中継する中継装置であって、
通信装置から通信データを受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部と、
処理を実行する処理部と
を備え、
第1期間及び第2期間が交互に設定されており、
前記処理部は、
前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、
前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、
前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する
中継装置。
【請求項2】
前記処理部は、
連続する複数の所定期間の前記総数が相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、
前記複数の所定期間について、前記第1期間及び第2期間の境界の位置が相互に異なるように、各所定期間内における前記境界の位置を変更する
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記処理部は、
連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数が相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、
前記複数の所定期間を複数回繰り返す
請求項1又は請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記受信部は、前記所定期間が経過する都度、前記通信装置から通信データを受信し、
前記処理部は、
連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数は相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、
前記複数の所定期間が経過した場合に、期間に関する複数の特定結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定し、
特定した所属範囲に基づいて、前記通信装置にて通信データの送信が指示されてから前記通信判定時点までの全体期間を決定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記受信部は、中継用の中継データを受信し、
前記記憶部には、受信した前記中継データが記憶され、
前記中継データの送信が許可される許可期間と、前記中継データの送信が禁止されている禁止期間とが交互に設定されており、
前記処理部は、
前記記憶部に前記中継データが記憶されているか否かを判定し、
前記記憶部に前記中継データが記憶されていると判定した場合、前記許可期間及び禁止期間の中で、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定し、
特定した期間が前記許可期間である場合、前記中継データの送信を指示し、
決定した全体期間に基づいて、前記許可期間の開始時点又は長さを調整する
請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
データを送信する通信装置と、
前記通信装置からデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置と
を備え、
前記通信装置は、処理を実行する通信処理部を有し、
前記通信処理部は、前記中継装置への通信データの送信を指示し、
前記中継装置は、
前記通信装置から前記通信データを受信する中継受信部と、
前記中継受信部が受信した前記通信データを記憶する中継記憶部と、
処理を実行する中継処理部と
を有し、
第1期間及び第2期間が交互に設定されており、
前記中継処理部は、
前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、
前記中継記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、
前記中継記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する
通信システム。
【請求項7】
前記通信処理部は、前記所定期間が経過する都度、前記中継受信部への通信データの送信を指示し、
前記中継処理部は、連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数は相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、
前記通信処理部は、
前記複数の所定期間が経過した場合に、期間について、前記中継処理部が特定した複数の特定結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定し、
特定した所属範囲に基づいて、通信データの送信を指示してから前記通信判定時点までの全体期間を決定する
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信処理部は、中継用の中継データの前記中継受信部への送信を指示し、
前記中継記憶部には、前記中継受信部が受信した前記中継データが記憶され、
前記中継データの送信が許可される許可期間と、前記中継データの送信が禁止されている禁止期間とが交互に設定されており、
前記中継処理部は、
前記中継記憶部に前記中継データが記憶されているか否かを判定し、
前記中継記憶部に前記中継データが記憶されていると判定した場合、前記許可期間及び禁止期間の中で、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定し、
特定した期間が前記許可期間である場合、前記中継データの送信を指示し、
前記通信処理部は、決定した全体期間に基づいて、前記中継データの送信を指示する送信指示時点を決定する
請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記中継処理部は、
特定した期間が前記第1期間である場合、前記中継受信部が受信した前記通信データの前記通信装置への送信を指示し、
特定した期間が前記第2期間であると判定した場合、前記中継受信部が受信した前記通信データを破棄し、
前記通信処理部は、前記複数の所定期間が経過した場合に、前記通信データの複数の受信結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定する
請求項7又は請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
通信装置から通信データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部とを備え、通信の中継を行う中継装置の処理方法であって、
交互に設定される第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更するステップと、
前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定するステップと、
前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定するステップと
をコンピュータが実行する処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置、通信システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通信装置が中継装置を介して他の通信装置にデータを送信する通信システムが開示されている。通信装置は、短い期間で他の通信装置に到達する必要がある優先データを送信する。中継装置は、通信装置から優先データを受信した場合、受信した優先データを送信するか否かを判定する。優先データの送信が許可されている許可期間と、優先データの送信が禁止されている禁止期間とが交互に繰り返し設定されている。中継装置は、優先データを送信するか否かを判定する判定時点が許可期間に属している場合、受信した優先データを許可期間中に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信装置においてデータの送信が指示されてから、データの判定時点までの全体期間を決定することができた場合、例えば、通信装置は、優先データの判定時点が許可期間に属するように、優先データの送信が指示される時点を調整することができる。しかしながら、特許文献1には、全体期間の決定を実現することができる構成は開示されていない。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、データの送信が指示されてから、データの判定時点までの全体期間の決定を実現することができる中継装置、通信システム及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る中継装置は、通信を中継する中継装置であって、通信装置から通信データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部と、処理を実行する処理部とを備え、第1期間及び第2期間が交互に設定されており、前記処理部は、前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する。
【0007】
本開示の一態様に係る通信システムは、データを送信する通信装置と、前記通信装置からデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置とを備え、前記通信装置は、処理を実行する通信処理部を有し、前記通信処理部は、前記中継装置への通信データの送信を指示し、前記中継装置は、前記通信装置から前記通信データを受信する中継受信部と、前記中継受信部が受信した前記通信データを記憶する中継記憶部と、処理を実行する中継処理部とを有し、第1期間及び第2期間が交互に設定されており、前記中継処理部は、前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、前記中継記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、前記中継記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する。
【0008】
本開示の一態様に係る処理方法は、通信装置から通信データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部とを備え、通信の中継を行う中継装置の処理方法であって、交互に設定される第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更するステップと、前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定するステップと、前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定するステップとをコンピュータが実行する
【0009】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える中継装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする処理方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、中継装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、中継装置を含む通信システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、データの送信が指示されてから、データの判定時点までの全体期間の決定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
【
図3】送信バッファ内で行われる動作の説明図である。
【
図4】中継装置が行う中継フレームの判定方法の説明図である。
【
図5】中継フレームに関する中継判定時点及び動作の関係を示す図表である。
【
図6】中継装置が行う通信フレームの判定方法の説明図である。
【
図7】通信フレームに関する通信判定時点及び動作の関係を示す図表である。
【
図8】中継装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図11】車載機器の要部構成を示すブロック図である。
【
図12】中継装置が車載機器と行う初期設定の手順を示すフローチャートである。
【
図13】中継装置が車載機器と行う初期設定の手順を示すフローチャートである。
【
図14】車載機器の全体期間の決定方法の概要を説明するためのシーケンス図である。
【
図16】所属範囲として2つの範囲が存在する場合における全体期間の決定方法の説明図である。
【
図17】送信バッファの通信キューに対応する期間変更処理の手順を示すフローチャートである。
【
図18】送信バッファの通信フレーム中継処理の手順を示すフローチャートである。
【
図19】車載機器の期間決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図20】車載機器の中継フレーム送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図21】実施形態2におけるパターンデータの内容の説明図である。
【
図22】実施形態3における送信バッファの期間通知処理の手順を示すフローチャートである。
【
図23】車載機器の期間決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図24】実施形態4において中継装置が車載機器と行う初期設定の手順を示すフローチャートである。
【
図25】車載機器の全体期間の決定方法の概要を説明するためのシーケンス図である。
【
図26】送信バッファの通信キューに対応する期間変更処理の手順を示すフローチャートである。
【
図27】車載機器の通信フレーム送信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図28】送信バッファの期間調整処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る中継装置は、通信を中継する中継装置であって、通信装置から通信データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部と、処理を実行する処理部とを備え、第1期間及び第2期間が交互に設定されており、前記処理部は、前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する
【0014】
(2)本開示の一態様に係る中継装置では、前記処理部は、連続する複数の所定期間の前記総数が相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、前記複数の所定期間について、前記第1期間及び第2期間の境界の位置が相互に異なるように、各所定期間内における前記境界の位置を変更する。
【0015】
(3)本開示の一態様に係る中継装置では、前記処理部は、連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数が相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、前記複数の所定期間を複数回繰り返す。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る中継装置では、前記受信部は、前記所定期間が経過する都度、前記通信装置から通信データを受信し、前記処理部は、連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数は相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、前記複数の所定期間が経過した場合に、期間に関する複数の特定結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定し、特定した所属範囲に基づいて、前記通信装置にて通信データの送信が指示されてから前記通信判定時点までの全体期間を決定する。
【0017】
(5)本開示の一態様に係る中継装置では、前記受信部は、中継用の中継データを受信し、前記記憶部には、受信した前記中継データが記憶され、前記中継データの送信が許可される許可期間と、前記中継データの送信が禁止されている禁止期間とが交互に設定されており、前記処理部は、前記記憶部に前記中継データが記憶されているか否かを判定し、前記記憶部に前記中継データが記憶されていると判定した場合、前記許可期間及び禁止期間の中で、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定し、特定した期間が前記許可期間である場合、前記中継データの送信を指示し、決定した全体期間に基づいて、前記許可期間の開始時点又は長さを調整する。
【0018】
(6)本開示の一態様に係る通信システムは、データを送信する通信装置と、前記通信装置からデータを受信し、受信したデータを送信する中継装置とを備え、前記通信装置は、処理を実行する通信処理部を有し、前記通信処理部は、前記中継装置への通信データの送信を指示し、前記中継装置は、前記通信装置から前記通信データを受信する中継受信部と、前記中継受信部が受信した前記通信データを記憶する中継記憶部と、処理を実行する中継処理部とを有し、第1期間及び第2期間が交互に設定されており、前記中継処理部は、前記第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更し、前記中継記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定し、前記中継記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する。
【0019】
(7)本開示の一態様に係る通信システムでは、前記通信処理部は、前記所定期間が経過する都度、前記中継受信部への通信データの送信を指示し、前記中継処理部は、連続する複数の所定期間それぞれに含まれる前記総数は相互に異なるように、各所定期間の前記総数を変更し、前記通信処理部は、前記複数の所定期間が経過した場合に、期間について、前記中継処理部が特定した複数の特定結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定し、特定した所属範囲に基づいて、通信データの送信を指示してから前記通信判定時点までの全体期間を決定する。
【0020】
(8)本開示の一態様に係る通信システムでは、前記通信処理部は、中継用の中継データの前記中継受信部への送信を指示し、前記中継記憶部には、前記中継受信部が受信した前記中継データが記憶され、前記中継データの送信が許可される許可期間と、前記中継データの送信が禁止されている禁止期間とが交互に設定されており、前記中継処理部は、前記中継記憶部に前記中継データが記憶されているか否かを判定し、前記中継記憶部に前記中継データが記憶されていると判定した場合、前記許可期間及び禁止期間の中で、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定し、特定した期間が前記許可期間である場合、前記中継データの送信を指示し、前記通信処理部は、決定した全体期間に基づいて、前記中継データの送信を指示する送信指示時点を決定する。
【0021】
(9)本開示の一態様に係る通信システムでは、前記中継処理部は、特定した期間が前記第1期間である場合、前記中継受信部が受信した前記通信データの前記通信装置への送信を指示し、特定した期間が前記第2期間であると判定した場合、前記中継受信部が受信した前記通信データを破棄し、前記通信処理部は、前記複数の所定期間が経過した場合に、前記通信データの複数の受信結果に基づいて、前記所定期間にて前記通信判定時点が属する所属範囲を特定する。
【0022】
(10)本開示の一態様に係る処理方法は、通信装置から通信データを受信する受信部と、前記受信部が受信した前記通信データを記憶する記憶部とを備え、通信の中継を行う中継装置の処理方法であって、交互に設定される第1期間及び第2期間を含む所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる前記第1期間及び第2期間の総数を変更するステップと、前記記憶部に前記通信データが記憶されているか否かを判定するステップと、前記記憶部に前記通信データが記憶されていると判定した場合、前記第1期間及び第2期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定するステップとをコンピュータが実行する。
【0023】
上記の態様にあっては、例えば、通信装置は、所定期間が経過する都度、通信データの送信を指示する。中継装置は、所定期間が経過する都度、次の所定期間に含まれる第1期間及び第2期間の総数を変更する。中継装置は、通信データの通信判定時点が属する期間を特定する。通信装置又は中継装置は、複数の通信データの特定結果に基づいて、所定期間の中で、通信データの通信判定時点が属する所属範囲を特定することができる。通信装置又は中継装置は、特定した所属範囲に基づいて、通信装置が通信データの送信を指示してから通信判定時点までの全体期間を決定することができる。
【0024】
上記の態様にあっては、例えば、通信装置は、所定期間が経過する都度、通信データの送信を指示する。連続する複数の所定期間について、第1期間及び第2期間の総数が相互に異なっている。通信装置又は中継装置は、連続する複数の所定期間が経過した後、複数の通信データの特定結果に基づいて、所定期間の中で、通信データの通信判定時点が属する所属範囲を特定する。
【0025】
連続する複数の所定期間の境界が一致している場合において、複数の通信判定時点が、一致している複数の境界近傍で変動しているとき、各所定期間において、通信判定時点が属する期間が1つの期間に固定されない。このため、通信装置又は中継装置は、正確に所属範囲を特定することができない。しかしながら、連続する複数の所定期間の境界の位置は相互に異なっている。このため、通信装置又は中継装置は、通信判定時点が変動した場合であっても、所属範囲を正確に特定することができる。
【0026】
上記の態様にあっては、例えば、通信装置は、所定期間が経過する都度、通信データの送信を指示する。通信装置又は中継装置は、連続する複数の所定期間が経過した都度、複数の通信データの特定結果に基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定する。中継装置は複数の所定期間を複数回繰り返す。このため、通信判定時点が変動する場合においては、通信装置又は中継装置は、特定した複数の所属範囲に基づいて、変動が考慮された全体期間を決定することができる。
【0027】
上記の態様にあっては、例えば、通信装置は、所定期間が経過する都度、通信データの送信を指示する。中継装置は、所定期間が経過した場合、複数の通信データの特定結果に基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定する。中継装置は、特定した所属範囲に基づいて全体期間を決定する。
【0028】
上記の態様にあっては、中継装置は、決定した全体期間に基づいて、例えば、中継データの中継判定時点が許可期間に属するように、許可期間の開始時点又は長さを調整する。
【0029】
上記の態様にあっては、例えば、通信装置は、所定期間が経過する都度、通信データの送信を指示する。通信装置は、所定期間が経過した場合、複数の通信データの特定結果に基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定する。通信装置は、特定した所属範囲に基づいて全体期間を決定する。
【0030】
上記の態様にあっては、通信装置は、決定した全体期間に基づいて、例えば、中継データの中継判定時点が許可期間に属するように、中継装置への中継データの送信を指示する送信指示時点を決定する。
【0031】
上記の態様にあっては、通信データの受信結果は、期間に関する通信データの特定結果を示す。通信装置は、受信結果に基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定し、特定した所属範囲に基づいて全体期間を決定する。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(実施形態1)
<通信システムの構成>
図1は、実施形態1における通信システム1の要部構成を示すブロック図である。通信システム1は車両Mに搭載されている。通信システム1は、中継装置2及び3つの車載機器3a,3b,3cを備える。車載機器3a,3b,3cそれぞれは、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。中継装置2には、3つの接続コネクタ2a,2b,2cが各別に接続されている。接続コネクタ2a,2b,2cそれぞれには、車載機器3a,3b,3cが着脱可能に接続される。
【0034】
車載機器3a,3b,3cそれぞれは通信装置として機能する。車載機器3a,3b,3cそれぞれは、中継用の中継フレームの送受信を行う。中継フレームは、複数のビットによって構成されるデータであり、中継データに相当する。中継装置2は、車載機器3a,3b,3cそれぞれから中継フレームを受信する。中継装置2は、車載機器3aから中継フレームを受信した場合、受信した中継フレームを車載機器3b,3cの一方に送信する。同様に、中継装置2は、車載機器3bから中継フレームを受信した場合、受信した中継フレームを車載機器3a,3cの一方に送信する。中継装置2は、車載機器3cから中継フレームを受信した場合、受信した中継フレームを車載機器3a,3bの一方に送信する。以上のように、中継装置2は、車載機器3a,3b,3c中の2つの間の通信を中継する。
【0035】
車載機器3a,3b,3cそれぞれは、センサデータ又は指示データ等を含む中継フレームを中継装置2に送信する。センサデータはセンサが検出した検出値を示す。車両Mは、例えば、乗員から指示を受け付ける受付部を有する。指示データは、例えば、受付部が受け付けた指示を示す。指示データは、例えば、ドアのロック又はアンロックの指示を示す。車載機器3a,3b,3cそれぞれは、中継装置2から中継フレームを受信した場合、受信した中継フレームに基づく動作を行う。
【0036】
車載機器3a,3b,3cそれぞれは、後述する全体期間を決定するために通信フレームの送受信を行う。通信フレームは、複数のビットによって構成されるデータであり、通信データに相当する。中継装置2は、車載機器3a,3b,3cそれぞれから通信フレームを受信する。中継装置2は、車載機器3aから通信フレームを受信した場合、受信した通信フレームを車載機器3aに送信する。同様に、中継装置2は、車載機器3bから通信フレームを受信した場合、受信した通信フレームを車載機器3bに送信する。中継装置2は、車載機器3cから通信フレームを受信した場合、受信した通信フレームを車載機器3cに送信する。
【0037】
<中継装置2の動作>
図2は中継装置2の中継方法の説明図である。中継装置2は装置記憶部22(
図8参照)を有する。装置記憶部22には、記憶領域として、
図2に示すように、3つの受信バッファRa,Rb,Rc及び3つの送信バッファTa,Tb,Tcが設けられている。中継装置2は、車載機器3a,3b,3cそれぞれから受信した中継フレームを、受信バッファRa,Rb,Rcに書き込む。同様に、中継装置2は、車載機器3a,3b,3cそれぞれから受信した通信フレームを受信バッファRa,Rb,Rcに書き込む。
【0038】
送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれには、送信先が車載機器3a,3b,3cである中継フレームが書き込まれる。同様に、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれには、送信先が車載機器3a,3b,3cである通信フレームが書き込まれる。中継フレーム及び通信フレームそれぞれは、送信先を示す。
【0039】
中継装置2は、受信バッファRb,Rcに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3aである中継フレームを送信バッファTaに移す。同様に、中継装置2は、受信バッファRa,Rcに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3bである中継フレームを送信バッファTbに移す。中継装置2は、受信バッファRa,Rbに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3cである中継フレームを送信バッファTcに移す。
【0040】
受信バッファRa,Rb,Rcそれぞれに記憶されている通信フレームの送信先は、車載機器3a,3b,3cである。従って、中継装置2は、受信バッファRa,Rb,Rcそれぞれに記憶されている通信フレームを、送信バッファTa,Tb,Tcに移す。
【0041】
中継装置2は、送信バッファTaに記憶されている中継フレーム及び通信フレームを車載機器3aに送信する。同様に、中継装置2は、送信バッファTbに記憶されている中継フレーム及び通信フレームを車載機器3bに送信する。中継装置2は、送信バッファTcに記憶されている中継フレーム及び通信フレームを車載機器3cに送信する。
【0042】
図3は、送信バッファTa内で行われる動作の説明図である。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれには、記憶領域として、第1キューQ1、第2キューQ2及び通信キューQmが設けられている。車載機器3a,3b,3cそれぞれは、2種類の中継フレームを送信する。以下では、2種類の中継フレームそれぞれを第1中継フレーム及び第2中継フレームと記載する。
【0043】
中継装置2は、送信バッファTaにおいて、送信先が車載機器3aである第1中継フレームを第1キューQ1に書き込む。更に、中継装置2は、送信バッファTbにおいて、送信先が車載機器3aである第2中継フレームを第2キューQ2に書き込む。中継装置2は、送信先が車載機器3aである通信フレームを通信キューQmに書き込む。
【0044】
送信バッファTb,Tcそれぞれにおいて中継装置2が行う書き込みは、送信バッファTaにおいて中継装置2が行う書き込みと同様である。中継装置2は、送信バッファTbの第1キューQ1、第2キューQ2及び通信キューQmそれぞれに、送信先が車載機器3bである第1中継フレーム、第2中継フレーム及び通信フレームを書き込む。中継装置2は、送信バッファTcの第1キューQ1、第2キューQ2及び通信キューQmそれぞれに、送信先が車載機器3cである第1中継フレーム、第2中継フレーム及び通信フレームを書き込む。
【0045】
送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれでは、中継装置2は、第1キューQ1に第1中継フレームが記憶されている場合、第1キューQ1に記憶されている第1中継フレームの送信又は破棄を行う。中継装置2は、第1中継フレームを送信した後、送信した第1中継フレームを破棄する。中継フレームの破棄は、中継フレームを装置記憶部22から削除することによって実現される。
【0046】
同様に、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれでは、中継装置2は、第2キューQ2に第2中継フレームが記憶されている場合、第2キューQ2に記憶されている第2中継フレームの送信又は破棄を行う。中継装置2は、第2中継フレームを送信した後、送信した第2中継フレームを破棄する。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれでは、中継装置2は、通信キューQmに通信フレームが記憶されている場合、通信キューQmに記憶されている通信フレームの送信又は破棄を行う。中継装置2は、通信フレームを送信した後、送信した通信フレームを破棄する。通信フレームの破棄は、通信フレームを装置記憶部22から削除することによって実現される。
【0047】
図4は、中継装置2が行う中継フレームの判定方法の説明図である。中継装置2は、マスターカウンタ20(
図8参照)を有する。マスターカウンタ20には、カウント値が記憶されている。
図4には、マスターカウンタ20のカウント値が示されている。一定のカウント数が予め決定されている。カウント数は2以上である。マスターカウンタ20は、一定期間が経過する都度、カウント値を1だけインクリメントする。マスターカウンタ20は、カウント値が(カウント数)-1である場合において、一定期間が経過したとき、カウント値をゼロに戻す。
図4の例では、カウント数は120である。1周期は、(カウント数)・(一定期間)で表される。「・」は積を表す。
【0048】
第1キューQ1及び第2キューQ2それぞれについて、オープン期間及びクローズ期間が交互に繰り返し設定されている。
図4の例では、第1キューQ1について、カウント値が0から74までの範囲内の値である期間がオープン期間である。カウント値が75から119までの範囲内の値である期間がクローズ期間である。第2キューQ2について、カウント値が0から74までの範囲内の値である期間がクローズ期間である。カウント値が75から119までの範囲内の値である期間がオープン期間である。
【0049】
中継装置2は、第1キューQ1に第1中継フレームが記憶されているか否かを判定する。中継装置2は、第1キューQ1に第1中継フレームが記憶されていると判定した場合、オープン期間及びクローズ期間の中から、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定する。同様に、中継装置2は、第2キューQ2に第2中継フレームが記憶されているか否かを判定する。中継装置2は、第2キューQ2に第2中継フレームが記憶されていると判定した場合、オープン期間及びクローズ期間の中から、判定を行った中継判定時点が属する期間を特定する。
【0050】
図5は中継フレームに関する中継判定時点及び動作の関係を示す図表である。
図5に示すように、中継装置2は、第1中継フレームについて、中継判定時点が属する第1キューQ1の期間がオープン期間である場合、第1中継フレームを送信する。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれに記憶されている第1中継フレームは、車載機器3a,3b,3cに送信される。中継装置2は、第1中継フレームについて、中継判定時点が属する期間がクローズ期間である場合、第1中継フレームを破棄する。
【0051】
同様に、中継装置2は、第2中継フレームについて、中継判定時点が属する第2キューQ2の期間がオープン期間である場合、第2中継フレームを送信する。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれに記憶されている第2中継フレームは、車載機器3a,3b,3cに送信される。中継装置2は、第2中継フレームについて、中継判定時点が属する期間がクローズ期間である場合、第2中継フレームを破棄する。
【0052】
第1キューQ1及び第2キューQ2のオープン期間は、中継フレームの送信が許可される許可期間に相当する。第1キューQ1及び第2キューQ2のクローズ期間は、中継フレームの送信が禁止されている禁止期間に相当する。
【0053】
図4では、送信バッファTaに記憶されている第1中継フレーム及び第2中継フレームの判定方法が示されている。
図4の1段目には、車載機器3bが中継装置2に送信した第1中継フレーム及び第2中継フレームの中継判定時点が示されている。
図4の2段目には、車載機器3cが中継装置2に送信した第1中継フレーム及び第2中継フレームの中継判定時点が示されている。
図4の3段目には、中継装置2が車載機器3aに送信した第1中継フレーム及び第2中継フレームが示されている。
【0054】
図4に示すように、送信元が車載機器3b,3c中の一方である複数の第1中継フレームの中で、中継判定時点が第1キューQ1のオープン期間に属する第1中継フレームは、中継装置2によって車載機器3aに送信される。送信元が車載機器3b,3c中の一方である複数の第1中継フレームの中で、中継判定時点が第1キューQ1のクローズ期間に属する第1中継フレームは中継装置2によって破棄される。
【0055】
同様に、送信元が車載機器3b,3c中の一方である複数の第2中継フレームの中で、中継判定時点が第2キューQ2のオープン期間に属する第2中継フレームは、中継装置2によって車載機器3aに送信される。送信元が車載機器3b,3c中の一方である複数の第2中継フレームの中で、中継判定時点が第2キューQ2のクローズ期間に属する第2中継フレームは中継装置2によって破棄される。
中継装置2は、IEEE802.1Qbv及びIEEE802.1Qciの規格に従って、前述したように、中継フレームの送信及び破棄を行う。IEEEは、登録商標であり、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略語である。
【0056】
図6は、中継装置2が行う通信フレームの判定方法の説明図である。通信キューQmについても、オープン期間及びクローズ期間が交互に繰り返し設定されている。1周期にオープン期間及びクローズ期間が含まれている。通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間それぞれは、第1期間及び第2期間に相当する。1周期は所定期間に相当する。中継装置2は、通信キューQmに通信フレームが記憶されているか否かを判定する。中継装置2は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した場合、オープン期間及びクローズ期間の中から、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する。
【0057】
図7は通信フレームに関する通信判定時点及び動作の関係を示す図表である。
図6に示すように、中継装置2は、通信フレームについて、通信判定時点が属する期間がオープン期間である場合、通信フレームを送信する。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれに記憶されている通信フレームは、車載機器3a,3b,3cに送信される。中継装置2は、通信フレームについて、通信判定時点が属する期間がクローズ期間である場合、通信フレームを破棄する。
【0058】
図6では、送信バッファTaに記憶されている通信フレームの判定方法が示されている。
図6の1段目には、車載機器3aが中継装置2に送信した通信フレームの通信判定時点が示されている。
図6の2段目には、中継装置2が車載機器3aに送信した通信フレームが示されている。
図6に示すように、通信判定時点が通信キューQmのオープン期間に属する通信フレームは、中継装置2によって車載機器3aに送信される。通信判定時点が通信キューQmのクローズ期間に属する通信フレームは中継装置2によって破棄される。
中継装置2は、IEEE802.1Qbv及びIEEE802.1Qciの規格に従って、前述したように通信フレームの送信及び破棄を行う。
【0059】
図6に示すように、中継装置2は、1周期が経過する都度、1周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数を変更することができる。
図6の例では、中継装置2は、1周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数を2から4に変更している。車載機器3aは、カウント値がゼロである時点で通信フレームの送信を繰り返し指示する。
【0060】
中継装置2は、K周期それぞれについて、通信フレームの通信判定時点が属する期間を特定する。Kは2以上の整数である。車載機器3aは、期間に関するK個の特定結果に基づいて、1周期において、通信判定時点が属する所属範囲を特定する。車載機器3aは、特定した所属範囲に基づいて、車載機器3aにおいて通信フレームの送信が指示されてから通信判定時点までの全体期間を決定する。車載機器3aは、決定した全体期間に基づいて、中継判定時点がオープン期間に属するように、第1中継フレーム及び第2中継フレームの送信を指示する。
【0061】
同様に、車載機器3b,3cそれぞれは、カウント値がゼロである時点で通信フレームの送信を繰り返し指示する。車載機器3b,3cそれぞれは、車載機器3aと同様に、所属範囲を特定する。車載機器3b,3cそれぞれは、車載機器3aと同様に、車載機器3b,3cの全体期間を決定する。車載機器3b,3cそれぞれは、車載機器3aと同様に、第1中継フレーム及び第2中継フレームの送信を指示する。
【0062】
<中継装置2の構成>
図8は中継装置2の要部構成を示すブロック図である。中継装置2は、前述したように、マスターカウンタ20及び装置記憶部22を有する。中継装置2は、更に、3つの装置通信IC21a,21b,21c及び装置制御部23を有する。ICはIntegrated Circuitの略語である。マスターカウンタ20、装置通信IC21a,21b,21c、装置記憶部22及び装置制御部23は、装置バス24に接続されている。装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは、接続コネクタ2a,2b,2cに接続されている。前述したように、接続コネクタ2a,2b,2cそれぞれには、車載機器3a,3b,3cが接続される。
【0063】
装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは、車載機器3a,3b,3cから中継フレーム、通信フレーム、要求データ及び開始データ等を受信する。装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは受信部及び中継受信部として機能する。装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは、装置制御部23の指示に従って、車載機器3a,3b,3cに、中継フレーム、通信フレーム、応答データ、カウントデータ、パターンデータ及び目標データ等を送信する。
【0064】
要求データは、応答データの送信を要求するデータである。開始データは、通信フレームの送信の開始を示す。応答データは、要求データが受信された場合に送信される。カウントデータは、マスターカウンタ20のカウント値を示す。パターンデータは、K周期それぞれについて、オープン期間及びクローズ期間の配置を示す。目標データは目標時点を示す。目標時点は、中継フレームが記憶されているか否かの判定が行われるべき時点である。
【0065】
図9はパターンデータの内容の説明図である。
図9では、カウント数が120であり、かつ、Kが3である例が示されている。パターンデータでは、第1周期、第2周期及び第3周期それぞれについて、オープン期間及びクローズ期間の配置がマスターカウンタ20のカウント値によって示されている。例えば、第1周期のオープン期間は、カウント値が0から59までの範囲内の値である期間である。第1周期のクローズ期間は、カウント値が60から119までの範囲内の値である期間である。
図9の例では、K周期それぞれについて、オープン期間の数はクローズ期間の数と一致している。
【0066】
i番目の周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数は、2のi乗である。ここで、iは、K以下である任意の自然数であり、1,2,・・・,Kのいずれであってもよい。
図9の例では、各周期に含まれる複数の期間の長さは同じである。なお、各周期に含まれる複数の期間それぞれの長さは、他の期間中の少なくとも1つの長さと異なっていてもよい。
【0067】
中継装置2は、パターンデータに従って、第1周期から第K周期まで、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間について、総数及び境界の位置等を変更する。変更する境界は、オープン期間及びクローズ期間の境界である。中継装置2は、1周期が経過する都度、次の周期に含まれる通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の総数を変更する。中継装置2は、連続するK周期それぞれに含まれる総数が相互に異なるように、各周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数を変更する。
【0068】
図10は目標データの内容を示す図表である。前述したように、目標データは中継フレームの目標時点を示す。目標時点はマスターカウンタ20のカウント値で表される。
図10には、車載機器3aによって用いられる目標データが示されている。車載機器3aは、中継判定時点が目標時点となるように、第1中継フレーム及び第2中継フレームを装置通信IC21aに送信する。
【0069】
図10の例では、車載機器3aは、マスターカウンタ20のカウント値がゼロである時点が中継判定時点となるように、送信先が車載機器3bである第1中継フレームを送信する。車載機器3aは、マスターカウンタ20のカウント値が20である時点が中継判定時点となるように、送信先が車載機器3cである第1中継フレームを送信する。同様に、車載機器3aはマスターカウンタ20のカウント値が60である時点が中継判定時点となるように、送信先が車載機器3bである第2中継フレームを送信する。車載機器3aは、マスターカウンタ20のカウント値が100である時点が中継判定時点となるように、送信先が車載機器3cである第2中継フレームを送信する。
【0070】
車載機器3b,3cそれぞれが用いる目標データの内容は、車載機器3aが用いる目標データの内容と同様である。車載機器3bが用いる目標データでは、送信先が車載機器3a,3cの一方である中継フレームの内容が示されている。車載機器3cが用いる目標データでは、送信先が車載機器3a,3bの一方である中継フレームの内容が示されている。送信先が同じであり、かつ、送信元が相互に異なる複数の第1中継フレームの目標時点は相互に異なっていることが好ましい。同様に、送信先が同じであり、かつ、送信元が相互に異なる複数の第2中継フレームの目標時点は相互に異なっていることが好ましい。
【0071】
図8に示す装置記憶部22には、パターンデータ及び3つの目標データが記憶されている。装置制御部23は、処理を実行する処理素子、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。装置制御部23は、処理部及び中継処理部として機能する。装置記憶部22には、更に、コンピュータプログラムPrが記憶されている。コンピュータプログラムPrはプログラム製品である。装置制御部23の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPrを実行することによって、3つのデータ送信処理、3つの期間変更処理、データ移動処理、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれの通信フレーム中継処理、送信バッファTaの第1中継処理及び第2中継処理、送信バッファTbの第1中継処理及び第2中継処理、並びに、送信バッファTcの第1中継処理及び第2中継処理等を実行する。
【0072】
3つのデータ送信処理それぞれは、応答データ、カウントデータ、パターンデータ及び目標データ等を車載機器3a,3b,3cに送信する処理である。期間変更処理は、パターンデータに従って、第1周期から第K周期まで、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間について、総数及び境界の位置等を変更する処理である。3つの期間変更処理それぞれは、送信バッファTa,Tb,Tcの通信キューQmに対応する。データ移動処理は、受信バッファRa,Rb,Rc中の1つから、中継フレーム又は通信フレームを送信バッファTa,Tb,Tc中の少なくとも1つに移動させる処理である。通信フレーム中継処理は通信フレームを中継する処理である。第1中継処理は第1中継フレームを中継する処理である。第2中継処理は、第2中継フレームを中継する処理である。
【0073】
なお、コンピュータプログラムPrは、コンピュータプログラムPrを読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体Arを用いて、中継装置2に提供されてもよい。記憶媒体Arは、例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体Arが可搬型メモリである場合、装置制御部23の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体ArからコンピュータプログラムPrを読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムPrは装置記憶部22に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムPrは、中継装置2の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、中継装置2に提供されてもよい。この場合、装置制御部23の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムPrを取得する。取得したコンピュータプログラムPrは装置記憶部22に書き込まれる。
【0074】
また、装置制御部23が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。装置制御部23が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して、3つのデータ送信処理及び3つの期間変更処理等の前述した処理を実行してもよい。
【0075】
装置記憶部22は、例えば、不揮発性メモリ及び揮発性メモリによって構成される。この場合、装置記憶部22の不揮発性メモリには、例えば、コンピュータプログラムPr、パターンデータ及び目標データ等が記憶されている。装置記憶部22の揮発性メモリの記憶領域には、例えば、3つの受信バッファRa,Rb,Rc及び3つの送信バッファTa,Tb,Tcが設けられている。
【0076】
<車載機器3a,3b,3cの構成>
図11は車載機器3aの要部構成を示すブロック図である。車載機器3aは、スレーブカウンタ30、機器通信IC31、機器記憶部32及び機器制御部33を有する。これらは、機器バス34に接続されている。機器通信IC31は、更に、機器コネクタBに接続されている。接続コネクタ2aには、車載機器3aの機器コネクタBが着脱可能に接続される。
【0077】
スレーブカウンタ30には、カウント値が記憶されている。スレーブカウンタ30は、マスターカウンタ20と同様に、一定期間が経過する都度、カウント値を1ずつインクリメントする。スレーブカウンタ30の一定期間及びカウント数それぞれは、マスターカウンタ20の一定期間及びカウント数と同じである。スレーブカウンタ30は、カウント値が(カウント数)-1である場合において、一定期間が経過したとき、カウント値をゼロに戻す。機器制御部33は、スレーブカウンタ30のカウント値を、マスターカウンタ20のカウント値と同期させる。
【0078】
機器通信IC31は、中継装置2の装置通信IC21aから、中継フレーム、通信フレーム、応答データ、カウントデータ、パターンデータ及び目標データ等を受信する。機器通信IC31は、機器制御部33の指示に従って、中継フレーム、通信フレーム、要求データ及び開始データ等を送信する。
【0079】
機器記憶部32には、コンピュータプログラムPeが記憶されている。コンピュータプログラムPeはプログラム製品である。機器制御部33は、処理を実行する処理素子、例えばCPUを有する。機器制御部33は通信処理部として機能する。機器制御部33の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPeを実行することによって、調整処理、期間決定処理、書き込み処理及び中継フレーム送信処理等を実行する。
【0080】
調整処理では、機器制御部33はスレーブカウンタ30のカウント値を調整する。調整処理では、機器制御部33は、更に、パターンデータ及び目標データ等を機器記憶部32に書き込む。期間決定処理は全体期間を決定する処理である。書き込み処理は、中継フレームを機器記憶部32に書き込む処理である。中継フレーム送信処理は、中継フレームを中継装置2に送信する処理である。
【0081】
なお、コンピュータプログラムPeは、コンピュータプログラムPeを読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体Aeを用いて、車載機器3aに提供されてもよい。記憶媒体Aeは、例えば可搬型メモリである。記憶媒体Aeが可搬型メモリである場合、機器制御部33の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体AeからコンピュータプログラムPeを読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムPeは機器記憶部32に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムPeは、車載機器3aの図示しない通信部が外部装置と通信することによって、車載機器3aに提供されてもよい。この場合、機器制御部33の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムPeを取得する。取得したコンピュータプログラムPeは機器記憶部32に書き込まれる。
【0082】
また、機器制御部33が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。機器制御部33が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して、調整処理、期間決定処理、書き込み処理及び中継フレーム送信処理等を実行してもよい。
【0083】
機器記憶部32は、例えば、不揮発性メモリ及び揮発性メモリによって構成される。この場合、機器記憶部32の不揮発性メモリには、例えば、コンピュータプログラムPe及び目標データ等が記憶される。
【0084】
車載機器3b,3cは、車載機器3aと同様に構成されている。接続コネクタ2aは、接続コネクタ2b,2cに対応する。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。
【0085】
<中継装置2が行う初期設定>
図12及び
図13は、中継装置2が車載機器3aと行う初期設定の手順を示すフローチャートである。初期設定では、中継装置2の装置制御部23はデータ送信処理を実行する。車載機器3aの機器制御部33は調整処理を実行する。中継装置2の装置制御部23は、接続コネクタ2aから車載機器3aが外されている場合、データ送信処理を実行する。車載機器3aの機器制御部33は、接続コネクタ2aに車載機器3aが接続された場合、調整処理を実行する。
【0086】
データ送信処理では、装置制御部23は、接続コネクタ2aに車載機器3aが接続されたか否かを判定する(ステップS1)。装置制御部23は、接続コネクタ2aに車載機器3aが接続されていないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、接続コネクタ2aに車載機器3aが接続されるまで待機する。装置制御部23は、接続コネクタ2aに車載機器3aが接続されたと判定した場合(S1:YES)、装置通信IC21aに指示して、マスターカウンタ20のカウント値を示すカウントデータを車載機器3aの機器通信IC31へ送信させる(ステップS2)。
【0087】
調整処理では、車載機器3aの機器制御部33は、機器通信IC31がカウントデータを受信したか否かを判定する(ステップS11)。機器制御部33は、機器通信IC31がカウントデータを受信していないと判定した場合(S11:NO)、ステップS11を再び実行し、機器通信IC31がカウントデータを受信するまで待機する。機器制御部33は、機器通信IC31がカウントデータを受信したと判定した場合(S11:YES)、スレーブカウンタ30のカウント値を、機器通信IC31が受信したカウントデータが示すカウント値に調整する(ステップS12)。
【0088】
次に、機器制御部33は、機器通信IC31に指示して、要求データを中継装置2の装置通信IC21aへ送信させる(ステップS13)。要求データには、要求データを送信した時点のスレーブカウンタ30のカウント値を示す機器送信カウント情報が含まれている。以下では、要求データを送信した時点のスレーブカウンタ30のカウント値を機器送信カウント値と記載する。
【0089】
中継装置2の装置制御部23は、ステップS2を実行した後、装置通信IC21aが要求データを受信したか否かを判定する(ステップS3)。装置制御部23は、装置通信IC21aが要求データを受信していないと判定した場合(S3:NO)、ステップS3を再び実行し、装置通信IC21aが要求データを受信するまで待機する。装置制御部23は、装置通信IC21aが要求データを受信したと判定した場合(S3:YES)、装置通信IC21aに指示して、応答データを車載機器3aの機器通信IC31へ送信させる(ステップS4)。
【0090】
応答データには、要求データに含まれる機器送信カウント情報と、装置受信カウント情報と、装置送信カウント情報とが含まれている。装置受信カウント情報は、装置通信IC21aが要求データを受信した時点のマスターカウンタ20のカウント値を示す。装置送信カウント情報は、装置通信IC21aが応答データを送信した時点のマスターカウンタ20のカウント値を示す。以下では、装置通信IC21aが要求データを受信した時点のマスターカウンタ20のカウント値を装置受信カウント値と記載する。装置通信IC21aが応答データを送信した時点のマスターカウンタ20のカウント値を装置送信カウント値と記載する。
【0091】
車載機器3aの機器制御部33は、ステップS13を実行した後、機器通信IC31が中継装置2の装置通信IC21aから応答データが受信したか否かを判定する(ステップS14)。機器制御部33は、機器通信IC31が応答データを受信していないと判定した場合(S14:NO)、ステップS14を再び実行し、機器通信IC31が応答データを受信するまで待機する。
【0092】
以下では、機器通信IC31が応答データを受信した時点のスレーブカウンタ30のカウント値を機器受信カウント値と記載する。前述したように、応答データは、機器送信カウント情報、装置受信カウント情報及び装置送信カウント情報を含む。
【0093】
機器送信カウント値、装置受信カウント値、装置送信カウント値及び機器受信カウント値それぞれを、Het、Hrr、Hrt及びHerで表す。要求データ及び応答データの伝播時間は一致するとみなす。この場合、マスターカウンタ20及びスレーブカウンタ30のカウント値の差分Hdは、下記の(1)式で表される。
Hd=((Hrr-Het)-(Her-Hrt))/2・・・(1)
【0094】
機器制御部33は、機器通信IC31が応答データを受信したと判定した場合(S14:YES)、差分Hdに基づいて、スレーブカウンタ30のカウント値の微調整を実行する(ステップS15)。前述したように、車載機器3aの機器通信IC31が、中継装置2の装置通信IC21aからカウントデータを受信した場合、機器制御部33は、スレーブカウンタ30のカウント値を、機器通信IC31が受信したカウントデータが示すカウント値に調整する。このため、スレーブカウンタ30のカウント値は、マスターカウンタ20の実際のカウント値よりも小さい。
【0095】
ステップS15では、機器制御部33は、スレーブカウンタ30のカウント値を、差分Hdの絶対値だけ増加させる。これにより、スレーブカウンタ30のカウント値は、マスターカウンタ20のカウント値と実質的に一致する。
【0096】
なお、(1)式に関して、HrrがHetよりも小さい場合、(Hrr-Het)として、カウント値がHetからHrrに到達するために必要な数値が用いられる。HrtがHerよりも小さい場合、(Her-Hrt)として、カウント値がHrtからHerに到達するために必要な数値が用いられる。
また、差分Hdを算出する方法は(1)式を用いた方法に限定されない。
【0097】
中継装置2の装置制御部23は、ステップS4を実行した後、装置通信IC21aに指示して、パターンデータを車載機器3aの機器通信IC31へ送信させる(ステップS5)。車載機器3aの機器制御部33は、ステップS15を実行した後、機器通信IC31が装置通信IC21aからパターンデータを受信したか否かを判定する(ステップS16)。機器制御部33は、機器通信IC31がパターンデータを受信していないと判定した場合(S16:NO)、ステップS16を再び実行し、機器通信IC31がパターンデータを受信するまで待機する。
【0098】
機器制御部33は、機器通信IC31がパターンデータを受信したと判定した場合(S16:YES)、機器通信IC31が受信したパターンデータを機器記憶部32に書き込む(ステップS17)。
【0099】
中継装置2の装置制御部23は、ステップS5を実行した後、装置通信IC21aに指示して、車載機器3a用の目標データを車載機器3aの機器通信IC31へ送信させる(ステップS6)。装置制御部23は、ステップS6を実行した後、データ送信処理を終了する。車載機器3aが接続コネクタ2aから外された場合、装置制御部23は再びデータ送信処理を実行する。
【0100】
車載機器3aの機器制御部33は、ステップS17を実行した後、機器通信IC31が装置通信IC21aから車載機器3aの目標データを受信したか否かを判定する(ステップS18)。機器制御部33は、機器通信IC31が目標データを受信していないと判定した場合(S18:NO)、ステップS18を再び実行し、機器通信IC31が目標データを受信するまで待機する。
【0101】
機器制御部33は、機器通信IC31が車載機器3a用の目標データを受信したと判定した場合(S18:YES)、機器通信IC31が受信した車載機器3a用の目標データを機器記憶部32に書き込む(ステップS19)。機器制御部33は、ステップS19を実行した後、調整処理を終了する。車載機器3aが接続コネクタ2aから外された後において、車載機器3aが接続コネクタ2aに再び接続された場合、機器制御部33は再び調整処理を実行する。
【0102】
以上のように、装置制御部23及び機器制御部33それぞれがデータ送信処理及び調整処理を実行した場合、マスターカウンタ20及びスレーブカウンタ30のカウント値が実質的に一致する。また、車載機器3aの機器記憶部32には、パターンデータ及び車載機器3a用の目標データが記憶される。
【0103】
なお、スレーブカウンタ30のカウント数及び一定期間がマスターカウンタ20のカウント数及び一定期間と一致していない場合、中継装置2の装置通信IC21aは、ステップS2では、マスターカウンタ20のカウント値、カウント数及び一定期間を示すカウントデータを、車載機器3aの機器通信IC31に送信する。機器通信IC31がカウントデータを受信した場合、機器制御部33は、スレーブカウンタ30のカウント値、カウント数及び一定期間それぞれを、カウントデータが示すカウント値、カウント数及び一定期間に調整する。
【0104】
中継装置2が車載機器3b,3cそれぞれと行う初期設定は、中継装置2が車載機器3aと行う初期設定と同様である。接続コネクタ2aは、接続コネクタ2b,2cに対応する。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。
【0105】
<全体期間の決定方法の概要>
図14は、車載機器3aの全体期間の決定方法の概要を説明するためのシーケンス図である。マスターカウンタ20のカウント値がスレーブカウンタ30のカウント値と同期した後、車載機器3aは、車載機器3aの全体期間を決定する。車載機器3aは、まず、開始データを中継装置2に送信する。中継装置2は、開始データを受信した場合、マスターカウンタ20のカウント値がゼロになるまで待機する。
【0106】
中継装置2は、カウント値がゼロとなった場合、パターンデータに沿った期間の変更を開始する。前述したように、中継装置2は、パターンデータに従って、第1周期から第K周期まで、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間について、総数及び境界の位置等を変更する。変更する境界は、オープン期間及びクローズ期間の境界である。中継装置2は、パターンデータに沿った期間の変更をN回繰り返す。ここで、Nは2以上の整数である。
【0107】
車載機器3aは、開始データを送信した後、スレーブカウンタ30のカウント値がゼロになるまで待機する。車載機器3aは、カウント値がゼロとなった場合、通信フレームを中継装置2に送信する。中継装置2は、通信フレームを受信した場合、受信した通信フレームを受信バッファRaに書き込む。次に、中継装置2は、受信バッファRaに記憶されている通信フレームを送信バッファTaに移す。次に、中継装置2は、送信バッファTaに通信フレームが記憶されているか否かを判定する。
【0108】
中継装置2は、送信バッファTaに通信フレームが記憶されていると判定した場合、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の中で、判定を行った通信判定時点が属する期間を特定する。中継装置2は、特定した期間がオープン期間である場合、通信フレームを車載機器3aに送信する。中継装置2は、特定した期間がクローズ期間である場合、通信フレームを破棄する。従って、車載機器3aにとって、通信フレームの受信は、中継装置2が特定した期間がオープン期間であることを意味する。車載機器3aにとって、通信フレームの受信なしは、中継装置2が特定した期間がクローズ期間であることを意味する。受信結果は、期間に関する特定結果に相当する。
【0109】
車載機器3aは、カウント値がゼロになる都度、通信フレームを中継装置2に送信する。車載機器3aは、(K・N)回、通信フレームを中継装置2に送信する。(K・N)個の受信結果に基づいて、通信判定時点が属するN個の所属範囲を特定する。
【0110】
図15は所属範囲の決定方法の説明図である。
図15では、
図9に示すパターンデータが用いられた例が示されている。
図9の例ではKは3である。車載機器3aは、K個の受信結果に基づいて所属範囲を特定する。
図15では、中継装置2が車載機器3aから受信したK個の通信判定時点が67である例が示されている。車載機器3aは、通信判定時点が67であることを認識していない。このため、車載機器3aは、通信判定時点が属する所属範囲も認識していない。車載機器3aは、中継装置2からパターンデータを受信している。
【0111】
通信判定時点が67である場合、中継装置2は、第1周期中に車載機器3aから送信された通信フレームを破棄する。中継装置2は、第2周期中に車載機器3aから送信された通信フレームを車載機器3aに送信する。中継装置2は、第3周期中に車載機器3aから送信された通信フレームを車載機器3aに送信する。車載機器3aは、3個の受信結果に基づいて、第1周期、第2周期及び第3周期において中継装置2が特定した3つの期間それぞれは、クローズ期間、オープン期間及びオープン期間であることを認識する。
【0112】
3つの期間それぞれがクローズ期間、オープン期間及びオープン期間である範囲が所属範囲である場合、
図15の例では、所属範囲は60から74までの範囲である。このように、車載機器3aは、K個の受信結果に基づいて所属範囲を特定する。
【0113】
なお、パターンデータのオープン期間及びクローズ期間は、3周期に対応する3つの期間それぞれがクローズ期間、オープン期間及びオープン期間である範囲の数が1となるように配置される。具体的には、パターンデータのi番目の周期では、1番目から(i-1)番目までの周期の共通範囲内に存在するオープン期間及びクローズ期間それぞれの数が1以下となるようにオープン期間及びクローズ期間が配置されている。
【0114】
図15では、第1周期の共通範囲の数は2である。1つ目の共通範囲は第1周期のオープン期間である。2つ目の共通範囲は、第1周期のクローズ期間である。第2周期に関して、各共通範囲内に属するオープン期間及びクローズ期間それぞれの数は1である。
【0115】
第1周期及び第2周期の共通範囲の数は4である。1つ目の共通範囲は、第1周期及び第2周期それぞれに対応する期間がオープン期間及びオープン期間である範囲である。2つ目の共通範囲は、第1周期及び第2周期それぞれに対応する期間がオープン期間及びクローズ期間である範囲である。3つ目の共通範囲は、第1周期及び第2周期それぞれに対応する期間がクローズ期間及びオープン期間である範囲である。4つ目の共通範囲は、第1周期及び第2周期それぞれに対応する期間がクローズ期間及びクローズ期間である範囲である。第3周期に関して、第1周期及び第2周期の各共通範囲内に属するオープン期間及びクローズ期間それぞれの数は1である。共通範囲内において、オープン期間のみ又はクローズ期間のみが配置されてもよい。
【0116】
図14に示すように、車載機器3aは、N個の所属範囲を特定した後、特定したN個の所属範囲に基づいて車載機器3aの全体期間を決定する。全体期間は、通信フレームの送信が指示された送信指示値から通信判定時点までのカウント値の幅によって示される。送信指示値はカウント値である。前述したように、一定期間が経過する都度、カウント値が1だけインクリメントされる。このため、全体期間は、カウント値の幅及び一定期間の積である。前述したように、車載機器3aは、カウント値がゼロである場合、通信フレームの送信を指示する。このため、通信判定時点のカウント値は全体期間を示す。
【0117】
車載機器3aは、車載機器3aの全体期間を決定するために、まず、全体期間を算出するための算出値を決定する。車載機器3aは、特定したN個の所属範囲が同一である場合、算出値を、特定した所属範囲の中央値に決定する。車載機器3aは、全体期間を、決定した算出値から通信フレームの送信指示値(=0)を減算することによって得られる値と、一定期間との積に決定する。決定した全体期間は、算出値から送信指示値を減算することによって得られる値によって示される。車載機器3aが特定したN個の所属範囲に2つの範囲が含まれる可能性がある。即ち、所属範囲として範囲E1,E2が存在する可能性がある。
【0118】
図16は、所属範囲として2つの範囲E1,E2が存在する場合における全体期間の決定方法の説明図である。車載機器3aが複数の通信フレームを送信した場合、これらの通信フレームの通信判定時点は一致していない可能性がある。即ち、通信判定時点は変動する可能性がある。
【0119】
図16の例では、通信判定時点が75近傍で変動している。範囲E1は、60から74までの範囲である。範囲E2は75から89までの範囲である。所属範囲として2つの範囲E1,E2が存在する場合、車載機器3aは、全体期間の算出値を、範囲E1,E2の中で数が多い多数範囲内の値に決定する。車載機器3aは、範囲E1,E2の中で数が少ない少数範囲の数が多い程、全体期間の算出値を、少数範囲に近い値に決定する。
【0120】
例えば、範囲E2の数が範囲E1の数よりも多い場合、車載機器3aは、算出値を、範囲E2内の値に決定する。車載機器3aは、範囲E1の数が多い程、算出値を、範囲E2内において範囲E1に近い値に決定する。これにより、通信判定時点の変動が考慮された全体期間が決定される。
なお、全体期間の決定方法は、前述した決定方法に限定されない。全体期間は、特定したN個の所属範囲に基づいて決定されていれば問題はない。
【0121】
車載機器3b,3cそれぞれの全体期間の決定方法は、車載機器3aの全体期間の決定方法と同様である。
以下では、全体期間の決定方法に関して、中継装置2の装置制御部23及び車載機器3a,3b,3cが行う具体的な処理を説明する。
【0122】
<パターンデータに沿った期間の変更>
図17は、送信バッファTaの通信キューQmに対応する期間変更処理の手順を示すフローチャートである。期間変更処理は、初期設定が行われた後において、中継装置2の装置制御部23によって実行される。中継装置2の装置記憶部22には、変数Uの値が記憶されている。装置制御部23は変数Uの値を変更する。期間変更処理では、装置制御部23は、まず、装置通信IC21aが車載機器3aから開始データを受信したか否かを判定する(ステップS21)。装置制御部23は、装置通信IC21aが開始データを受信していないと判定した場合(S21:NO)、ステップS21を再び実行し、装置通信IC21aが開始データを受信するまで待機する。
【0123】
装置制御部23は、装置通信IC21aが開始データを受信したと判定した場合(S21:YES)、変数Uの値をゼロに設定し(ステップS22)、マスターカウンタ20のカウント値がゼロであるか否かを判定する(ステップS23)。装置制御部23は、カウント値がゼロではないと判定した場合(S23:NO)、ステップS23を再び実行し、カウント値がゼロとなるまで待機する。
【0124】
装置制御部23は、カウント値がゼロであると判定した場合(S23:YES)、パターンデータに沿って期間を変更する(ステップS24)。前述したように、装置制御部23は、パターンデータに従って、1周期が経過する都度、次の周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数を変更する。装置制御部23は、連続するK周期それぞれに含まれる総数が相互に異なるように、各周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数を変更する。次に、装置制御部23は、変数Uの値を1だけインクリメントする(ステップS25)。
【0125】
装置制御部23は、ステップS25を実行した後、変数Uの値がNであるか否かを判定する(ステップS26)。装置制御部23は、変数Uの値がNではないと判定した場合(S26:NO)、ステップS23を実行し、パターンデータに沿った期間の変更を再び実行する。装置制御部23は、変数Uの値がNであると判定した場合(S26:YES)、期間変更処理を終了する。装置制御部23は、期間変更処理を終了した後、期間変更処理を再び実行する。
【0126】
以上のように、期間変更処理では、装置制御部23は、パターンデータに沿った期間の変更をN回繰り返す。
送信バッファTb,Tcの通信キューQmに対応する期間変更処理は、送信バッファTaの通信キューQmに対応する期間変更処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。車載機器3aは、車載機器3b,3cに対応する。
【0127】
<中継装置2が行う通信フレーム及び中継フレームの移動>
前述したように、中継装置2の装置制御部23はデータ移動処理を実行する。データ移動処理では、装置制御部23は、装置通信IC21a,21b,21cそれぞれが受信した通信フレームを、装置記憶部22の受信バッファRa,Rb,Rcに書き込む。装置制御部23は、受信バッファRa,Rb,Rcそれぞれに記憶されている通信フレームを送信バッファTa,Tb,Tcの通信キューQmに移す。装置記憶部22は中継記憶部として機能する。
【0128】
装置制御部23は、装置通信IC21a,21b,21cそれぞれ受信した中継フレームを受信バッファRa,Rb,Rcに書き込む。装置制御部23は、受信バッファRb,Rcに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3aである中継フレームを送信バッファTaに移す。ここで、装置制御部23は、第1中継フレームを送信バッファTaの第1キューQ1に移す。装置制御部23は、第2中継フレームを送信バッファTaの第2キューQ2に移す。
【0129】
同様に、装置制御部23は、受信バッファRa,Rcに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3bである中継フレームを送信バッファTbに移す。ここで、装置制御部23は、第1中継フレームを送信バッファTbの第1キューQ1に移す。装置制御部23は、第2中継フレームを送信バッファTbの第2キューQ2に移す。装置制御部23は、受信バッファRa,Rbに記憶されている中継フレームの中で、送信先が車載機器3cである中継フレームを送信バッファTcに移す。ここで、装置制御部23は、第1中継フレームを送信バッファTcの第1キューQ1に移す。装置制御部23は、第2中継フレームを送信バッファTcの第2キューQ2に移す。
【0130】
<中継装置2が行う通信フレームの中継>
図18は、送信バッファTaの通信フレーム中継処理の手順を示すフローチャートである。送信バッファTaの通信フレーム中継処理では、中継装置2の装置制御部23は、送信バッファTaの通信キューQmに通信フレームが記憶されているか否かを判定する(ステップS31)。装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行し、通信キューQmに通信フレームが書き込まれるまで待機する。
【0131】
装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した場合(S31:YES)、マスターカウンタ20のカウント値を読み出す(ステップS32)。ステップS32で読み出されたカウント値は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した通信判定時点に相当する。次に、装置制御部23は、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の中で、ステップS32で読み出したカウント値が属する期間を特定する(ステップS33)。
【0132】
次に、装置制御部23は、ステップS33で特定した期間がオープン期間であるか否かを判定する(ステップS34)。特定した期間がオープン期間ではないことは、特定した期間がクローズ期間であることを意味する。装置制御部23は、特定した期間がオープン期間であると判定した場合(S34:YES)、装置通信IC21aに、通信キューQmに記憶されている通信フレームの送信を指示する(ステップS35)。これにより、装置通信IC21aは、通信フレームを車載機器3aの機器通信IC31に送信する。送信された通信フレームは破棄される。
【0133】
装置制御部23は、特定した期間がオープン期間ではないと判定した場合(S34:NO)、通信キューQmに記憶されている通信フレームを破棄する(ステップS36)。装置制御部23は、ステップS35,S36の一方を実行した後、送信バッファTaの通信フレーム中継処理を終了する。その後、装置制御部23は、送信バッファTaの通信フレーム中継処理を再び実行する。
【0134】
以上のように、通信フレーム中継処理では、装置制御部23は、装置通信IC21aに指示して、通信判定時点がオープン期間に属する通信フレームを車載機器3aに送信させる。
送信バッファTb,Tcそれぞれの通信フレーム中継処理は、送信バッファTaの通信フレーム中継処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。車載機器3aは、車載機器3b,3cに対応する。
【0135】
<全体期間の決定>
図19は、車載機器3aの期間決定処理の手順を示すフローチャートである。車載機器3aの期間変更処理は、初期設定が行われた後において、機器制御部33によって実行される。車載機器3aの機器記憶部32には、変数X,Yの値が記憶されている。機器制御部33は、変数X,Yそれぞれの値を変更する。
【0136】
車載機器3aの機器制御部33は、期間決定処理では、まず、変数X,Yの値をゼロに設定する(ステップS41)。次に、機器制御部33は、機器通信IC31に指示して、開始データを中継装置2の装置通信IC21aに送信させる(ステップS42)。機器制御部33は、ステップS42を実行した後、スレーブカウンタ30のカウント値がゼロであるか否かを判定する(ステップS43)。ここで、ゼロは、予め決定されている通信フレームの送信指示値である。機器制御部33は、カウント値がゼロ(通信フレームの送信指示値)ではないと判定した場合(S43:NO)、ステップS43を再び実行し、カウント値がゼロとなるまで待機する。
【0137】
機器制御部33は、カウント値がゼロ(通信フレームの送信指示値)であると判定した場合(S43:YES)、中継装置2の装置通信IC21aへの通信フレームの送信を機器通信IC31に指示する(ステップS44)。ここで、通信フレームの送信先は車載機器3aである。ステップS44が実行された場合、機器通信IC31は、通信フレームを中継装置2の装置通信IC21aに送信する。前述したように、中継装置2の装置通信IC21aは、通信判定時点がオープン期間に属する場合、通信フレームを機器通信IC31に送信する。中継装置2の装置通信IC21aは、通信判定時点がクローズ期間に属する場合、通信フレームを破棄する。
【0138】
機器制御部33は、ステップS44を実行した後、通信フレームに関する機器通信IC31の受信結果を示す受信結果データを機器記憶部32に書き込む(ステップS45)。次に、機器制御部33は、変数Xの値を1だけインクリメントする(ステップS46)。機器制御部33は、ステップS46を実行した後、変数Xの値がKであるか否かを判定する(ステップS47)。機器制御部33は、変数Xの値がKではないと判定した場合(S47:NO)、ステップS43を再び実行する。機器制御部33は、カウント値がゼロとなった場合、即ち、次の周期が到来した場合、装置通信IC21aに通信フレームの送信を指示する。以上のように、機器制御部33は、1周期が経過する都度、装置通信IC21aへの通信フレームの送信を指示する。装置通信IC21aは、1周期が経過する都度、車載機器3aの機器通信IC31から通信フレームを受信する。
【0139】
機器制御部33は、変数Xの値がKであると判定した場合(S47:YES)、
図15を用いて説明したように、K個の受信結果に基づいて、1周期において通信判定時点が属する所属範囲を特定する(ステップS48)。次に、機器制御部33は、変数Xの値をゼロに設定し(ステップS49)、変数Yの値を1だけインクリメントする(ステップS50)。機器制御部33は、ステップS50を実行した後、変数Yの値がNであるか否かを判定する(ステップS51)。
【0140】
機器制御部33は、変数Yの値がNではないと判定した場合(S51:NO)、ステップS43を再び実行し、通信フレームの送信をK回指示する。以上のように、機器制御部33は、所属範囲をN回特定する。機器制御部33は、変数Yの値がNであると判定した場合(S51:YES)、前述したように、車載機器3aの全体期間を決定する(ステップS52)。次に、機器制御部33は、ステップS52で決定した全体期間を示す全体期間データを機器記憶部32に書き込む(ステップS53)。機器制御部33は、ステップS53を実行した後、期間決定処理を終了する。
【0141】
以上のように、機器制御部33は、K個の受信結果に基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定する。機器制御部33は、特定したN個の所属範囲に基づいて、通信判定時点の変動が考慮された全体期間を決定する。
車載機器3b,3cそれぞれの期間決定処理は、車載機器3aの期間決定処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。
【0142】
<中継装置2が行う中継フレームの中継>
中継装置2の装置制御部23は、送信バッファTaの通信フレーム中継処理と同様に、送信バッファTaの第1中継処理及び第2中継処理を実行する。送信バッファTaの通信フレーム中継処理の説明において、通信フレーム、通信判定時点及び通信キューQmそれぞれを、第1中継フレーム、中継判定時点及び第1キューQ1に置き換える。これにより、送信バッファTaの第1中継処理を説明することができる。送信バッファTaの通信フレーム中継処理の説明において、通信フレーム、通信判定時点及び通信キューQmそれぞれを、第2中継フレーム、中継判定時点及び第2キューQ2に置き換える。これにより、送信バッファTaの第2中継処理を説明することができる。
【0143】
中継装置2の装置制御部23は、送信バッファTb,Tcそれぞれの第1中継処理を、送信バッファTaの第1中継処理と同様に実行する。中継装置2の装置制御部23は、送信バッファTb,Tcそれぞれの第2中継処理を、送信バッファTaの第2中継処理と同様に実行する。送信バッファTaは、送信バッファTb,Tcに対応する。
【0144】
<車載機器3a,3b,3cそれぞれが行うデータフレームの書き込み>
前述したように、車載機器3a,3b,3cそれぞれの機器制御部33は書き込み処理を実行する。車載機器3a,3b,3cそれぞれがセンサを有する場合においては、センサからセンサデータが入力されたとき、書き込み処理では、機器制御部33は、入力されたセンサデータを含む中継フレームを生成する。指示を受け付ける受付部を車載機器3a,3b,3cそれぞれが有する場合において、受付部が指示を受け付けたとき、書き込み処理では、機器制御部33は、受け付けた指示を示す指示データを含む中継フレームを生成する。機器制御部33は、生成した中継フレームを機器記憶部32に書き込む。機器制御部33が生成する中継フレームは、第1中継フレーム又は第2中継フレームである。
【0145】
<車載機器3a,3b,3cが行う中継フレームの送信>
図20は、車載機器3aの中継フレーム送信処理の手順を示すフローチャートである。車載機器3aの機器制御部33は、期間決定処理を実行した後において、機器記憶部32に中継フレームが書き込まれた場合、機器制御部33は中継フレーム送信処理を実行する。機器記憶部32には、期間決定処理において決定された全体期間を示す全体期間データが記憶されている。
【0146】
中継フレーム送信処理では、機器制御部33は、目標データが示す目標時点と、全体期間データが示す全体期間とに基づいて中継フレームの送信指示値を決定する(ステップS61)。中継フレームの送信指示値は、機器制御部33が中継フレームの送信を指示するスレーブカウンタ30のカウント値(時点)である。中継フレームの送信指示値は、送信指示時点に相当する。
【0147】
機器記憶部32に記憶されている中継フレームは、送信先が車載機器3bである第2中継フレームであると仮定する。この場合、
図10に示すように、第2中継フレームの目標時点は60である。全体期間に対応するカウント値の幅が30であると仮定する。この場合、中継フレームの送信指示値は30(=60-30)である。機器記憶部32に記憶されている中継フレームは、送信先が車載機器3bである第1中継フレームであると仮定する。この場合、第1中継フレームの目標時点はゼロである。カウント数が120である場合、中継フレームの送信指示値は90(=0-30+120)である。
【0148】
次に、機器制御部33は、スレーブカウンタ30のカウント値が、ステップS61で決定した中継フレームの送信指示値であるか否かを判定する(ステップS62)。機器制御部33は、カウント値が中継フレームの送信指示値ではないと判定した場合(S62:NO)、ステップS62を再び実行し、カウント値が、ステップS61で決定した送信指示値となるまで待機する。
【0149】
機器制御部33は、カウント値が中継フレームの送信指示値であると判定した場合(S62:YES)、機器記憶部32に記憶されている中継フレームの中継装置2への送信を機器通信IC31に指示する(ステップS63)。機器制御部33は、ステップS63を実行した後、フレーム送信処理を終了する。
【0150】
以上のように、車載機器3aの機器通信IC31は、決定した全体期間に基づいて、中継フレームの中継判定時点がオープン期間に属するように、中継装置2への中継フレームの送信を指示する送信指示値を決定する。
車載機器3b,3cそれぞれの中継フレーム送信処理は、車載機器3a中継フレーム送信処理と同様である。
【0151】
(実施形態2)
実施形態1におけるパターンデータでは、i番目の周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数は、2のi乗である。前述したように、iは、K以下である任意の自然数である。しかしながら、パターンデータでは、i番目の周期に含まれるオープン期間及びクローズ期間の総数は2のi乗に限定されない。
以下では、実施形態2について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通しているため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0152】
<パターンデータの内容>
図21は、実施形態2におけるパターンデータの内容の説明図である。
図21では、カウント数が210であり、かつ、Kが4である例が示されている。実施形態2におけるパターンデータでは、各周期におけるオープン期間及びクローズ期間の総数は素数である。
図21の例では、第1周期、第2周期、第3周期及び第4周期それぞれの総数は、2、3、5及び7である。K周期について、オープン期間及びクローズ期間の境界の位置は相互に異なっている。
【0153】
パターンデータのi番目の周期では、1番目から(i-1)番目までの周期の共通範囲内に存在するオープン期間及びクローズ期間それぞれの数が1以下となるようにオープン期間及びクローズ期間が配置されている。
図21の例では、各周期に含まれる複数の期間の長さは同じである。
【0154】
<パターンデータに沿った期間の変更>
期間変更処理のステップS24では、中継装置2の装置制御部23は、実施形態1と同様に、パターンデータに沿って期間を変更する。従って、装置制御部23は、K周期について、オープン期間及びクローズ期間の境界の位置が相互に異なるように、各周期内の境界の位置を変更する。
【0155】
実施形態1におけるパターンデータでは、
図16に示すように、3つの周期の境界が60(カウント値)で一致している。従って、通信判定時点が60近傍で変動している場合、第1周期、第2周期及び第3周期それぞれにおいて、通信判定時点が属する期間は1つの期間に固定されない。このため、装置制御部23は、K周期において特定したK個の期間に基づいて、通信判定時点が属する所属範囲を正確に特定することができない。しかしながら、実施形態2では、K周期について、オープン期間及びクローズ期間の境界の位置が相互に異なっている。このため、通信判定時点が変動した場合であっても、装置制御部23は、所属範囲を正確に特定することができる。
【0156】
なお、実施形態1と同様に、各周期に含まれる複数の期間それぞれの長さは、他の期間中の少なくとも1つの長さと異なっていてもよい。このため、パターンデータでは、K周期に関する全ての共通範囲の長さが一致するように、K周期に含まれる複数のオープン期間及び複数のクローズ期間の長さが調整されてもよい。また、各周期におけるオープン期間及びクローズ期間の総数は素数ではなくてもよい。
【0157】
<通信システム1の効果>
実施形態2における通信システム1は、実施形態1における通信システム1が奏する効果を同様に奏する。
【0158】
(実施形態3)
実施形態1では、中継装置2の装置制御部23が送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれの通信フレーム中継処理を実行することによって、車載機器3a,3b,3cそれぞれの機器制御部33に、通信判定時点が属する期間を通知する。しかしながら、通信判定時点が属する期間の通知方法はこの方法に限定されない。
以下では、実施形態3について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通しているため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0159】
<中継装置2の構成>
実施形態2における装置制御部23の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPrを実行することによって、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれの通信フレーム中継処理の代わりに、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれの期間通知処理を実行する。3つの期間通知処理それぞれでは、装置制御部23は、車載機器3a,3b,3cに、通信判定時点が属する期間を通知する。
【0160】
<期間通知処理>
図22は、実施形態3における送信バッファTaの期間通知処理の手順を示すフローチャートである。送信バッファTaの期間通知処理では、中継装置2の装置制御部23は、送信バッファTaの通信キューQmに通信フレームが記憶されているか否かを判定する(ステップS71)。装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていないと判定した場合(S71:NO)、ステップS71を再び実行し、通信キューQmに通信フレームが書き込まれるまで待機する。
【0161】
装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した場合(S71:YES)、マスターカウンタ20のカウント値を読み出す(ステップS72)。ステップS72で読み出されたカウント値は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した通信判定時点に相当する。次に、装置制御部23は、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の中で、ステップS72で読み出したカウント値が属する期間を特定する(ステップS73)。
【0162】
次に、装置制御部23は、装置通信IC21aに指示して、ステップS33で特定した期間を示す期間データを送信させる(ステップS74)。期間データは、例えば、装置制御部23がオープン期間(又はクローズ期間)を特定した回数を示す。車載機器3aの機器制御部33は、期間データが示す回数が増加しているか否かに基づいて、装置制御部23が特定した期間を認識することができる。装置制御部23は、ステップS74を実行した後、送信バッファTaの期間通知処理を終了する。その後、装置制御部23は、送信バッファTaの期間通知処理を再び実行する。
【0163】
以上のように、装置通信IC21aは、車載機器3aの機器通信IC31から通信フレームを受信する都度、期間データを機器通信IC31に送信する。これにより、装置制御部23が特定した期間が車載機器3aに通知される。
送信バッファTb,Tcそれぞれの期間通知処理は、送信バッファTaの期間通知処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。車載機器3aは、車載機器3b,3cに対応する。実施形態3においては、中継装置2が通信フレームを車載機器3a,3b,3cに送信する必要はない。
【0164】
<全体期間の決定>
図23は、車載機器3aの期間決定処理の手順を示すフローチャートである。実施形態3を実施形態1と比較した場合、期間決定処理の内容が異なる。実施形態3における車載機器3aの期間決定処理では、機器制御部33は、実施形態1と同様に、ステップS41~S44,S46~S53を実行する。従って、これらの詳細な説明を省略する。
【0165】
車載機器3aの期間決定処理では、機器制御部33は、ステップS44を実行した後、機器通信IC31が、中継装置2の装置通信IC21aから期間データを受信したか否かを判定する(ステップS81)。機器制御部33は、機器通信IC31が期間データを受信していないと判定した場合(S81:NO)、ステップS81を実行し、機器通信IC31が期間データを受信するまで待機する。
【0166】
機器制御部33は、機器通信IC31が期間データを受信したと判定した場合(S81:YES)、機器通信IC31が受信した期間データを機器記憶部32に書き込む(ステップS82)。機器制御部33は、ステップS82を実行した後、ステップS46を実行する。ステップS48では、機器記憶部32に記憶されているK個の期間データが示すK個の期間に基づいて、通信判定時点が属する所属範囲を特定する。
【0167】
以上のように、機器制御部33は、K個の期間データに基づいて、通信判定時点の所属範囲を特定する。
実施形態3においても、車載機器3b,3cそれぞれの期間決定処理は、車載機器3aの期間決定処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。
【0168】
<通信システム1の効果及びなお書き>
実施形態3における通信システム1は、実施形態1における通信システム1が奏する効果を同様に奏する。
なお、実施形態3において、実施形態2におけるパターンデータが用いられてもよい。
【0169】
(実施形態4)
実施形態1では、全体期間に基づいて、中継フレームの送信指示値が決定される。しかしながら、全体期間に基づいて決定される対象は、中継フレームの送信指示値とは異なっていてもよい。
以下では、実施形態4について、実施形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施形態1と共通しているため、実施形態1と共通する構成部には実施形態1と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0170】
<初期設定>
図24は、実施形態4において中継装置2が車載機器3aと行う初期設定の手順を示すフローチャートである。実施形態4を実施形態1と比較した場合、データ送信処理及び調整処理の内容は異なる。データ送信処理では、中継装置2の装置制御部23は、実施形態1と同様に、ステップS1~S4を同様に実行する。調整処理では、車載機器3aの機器制御部33は、実施形態1と同様に、ステップS11~S15を同様に実行する。このため、ステップS1~S4,S11~S15の詳細な説明を省略する。
【0171】
調整処理では、機器制御部33は、ステップS15を実行した後、機器通信IC31に指示して、車載機器3aの送信指示値データを中継装置2の装置通信IC21aへ送信させる(ステップS101)。車載機器3aの送信指示値データは、車載機器3aが送信する中継フレームの送信指示値を示す。機器制御部33は、ステップS101を実行した後、調整処理を終了する。中継フレームの送信指示値は予め決定されている。送信指示値データは機器記憶部32に予め記憶されている。
【0172】
データ送信処理では、装置制御部23は、ステップS4を実行した後、装置通信IC21aが車載機器3aの機器通信IC31から車載機器3aの送信指示値データを受信したか否かを判定する(ステップS91)。装置制御部23は、装置通信IC21aが車載機器3aの送信指示値データを受信していないと判定した場合(S91:NO)、ステップS91を再び実行し、装置通信IC21aが車載機器3aの送信指示値データを受信するまで待機する。
【0173】
装置制御部23は、装置通信IC21aが車載機器3aの送信指示値データを受信したと判定した場合(S91:YES)、装置通信IC21aが受信した車載機器3aの送信指示値データを装置記憶部22に書き込む(ステップS92)。機器制御部33は、ステップS92を実行した後、調整処理を終了する。
【0174】
以上のように、装置制御部23が車載機器3aと初期設定を行った場合、車載機器3aの送信指示値データが装置記憶部22に記憶される。スレーブカウンタ30のカウント値はマスターカウンタ20のカウント値と同期する。
中継装置2が車載機器3b,3cそれぞれと行う初期設定は、中継装置2が車載機器3aと行う初期設定と同様である。車載機器3aの接続コネクタ2a及び装置通信IC21aそれぞれは、車載機器3bの接続コネクタ2b及び装置通信IC21bに対応する。更に、車載機器3aの接続コネクタ2a及び装置通信IC21aそれぞれは、車載機器3cの接続コネクタ2c及び装置通信IC21cに対応する。
【0175】
<全体期間の決定方法の概要>
図25は、車載機器3aの全体期間の決定方法の概要を説明するためのシーケンス図である。実施形態4では、初期設定が行われた後、車載機器3aではなく、中継装置2が開始データを送信する。車載機器3aは、開始データを受信した場合、スレーブカウンタ30のカウント値がゼロになるまで待機する。車載機器3aは、カウント値がゼロになった場合、通信フレームを中継装置2に送信する。その後、車載機器3aは、カウント値がゼロになる都度、通信フレームを中継装置2に送信する。
【0176】
中継装置2は、開始データを送信した後、マスターカウンタ20のカウント値がゼロになるまで待機する。中継装置2は、カウント値がゼロとなった場合、パターンデータに沿った期間の変更を開始する。中継装置2はパターンデータに沿った期間の変更をN回実行する。中継装置2は、車載機器3aから通信フレームを受信する都度、送信バッファTaの通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の中で、受信した通信フレームの通信判定時点(カウント値)が属する期間を特定する。
【0177】
車載機器3aは、(K・N)回、通信フレームを中継装置2に送信する。中継装置2は、(K・N)個の特定結果に基づいて、通信判定時点が属するN個の所属範囲を特定する。中継装置2は、特定したN個の所属範囲に基づいて、車載機器3aの全体期間を決定する。中継装置2が行う所属範囲の特定は、実施形態1における車載機器3aが行う所属範囲の特定と同様である。中継装置2が行う全体期間の決定は、実施形態1における車載機器3aが行う全体期間の決定と同様である。
【0178】
車載機器3b,3cそれぞれの全体期間の決定方法は、車載機器3aの全体期間の決定方法と同様である。
以下では、全体期間の決定方法に関して、中継装置2の装置制御部23及び車載機器3a,3b,3cが行う具体的な処理を説明する。
【0179】
<パターンデータに沿った期間の変更>
図26は、送信バッファTaの通信キューQmに対応する期間変更処理の手順を示すフローチャートである。実施形態4を実施形態1と比較した場合、期間変更処理の内容が異なる。実施形態4における期間変更処理では、中継装置2の装置制御部23は、実施形態1と同様に、ステップS22~S26を同様に実行する。このため、これらの詳細な説明を省略する。
【0180】
期間変更処理では、まず、装置制御部23は、装置通信IC21aに指示して、開始データを車載機器3aの機器通信IC31へ送信させる(ステップS111)。装置制御部23は、ステップS111を実行した後、ステップS22を実行する。
【0181】
送信バッファTb,Tcの通信キューQmに対応する期間変更処理は、送信バッファTaの通信キューQmに対応する期間変更処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。車載機器3aは、車載機器3b,3cに対応する。
【0182】
<車載機器3a,3b,3cの構成>
実施形態4における機器制御部33の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPeを実行することによって、期間決定処理の代わりに、通信フレームを送信する通信フレーム送信処理を実行する。
【0183】
<通信フレーム送信処理>
図27は、車載機器3aの通信フレーム送信処理の手順を示すフローチャートである。車載機器3aの通信フレーム送信処理は、初期設定が行われた後において、機器制御部33によって実行される。実施形態1と同様に、車載機器3aの機器記憶部32には、変数X,Yの値が記憶されている。車載機器3aの通信フレーム送信処理では、機器制御部33は、実施形態1における期間決定処理のステップS41,S43,S44,S46~S51を実行する。このため、これらの詳細な説明を省略する。
【0184】
車載機器3aの通信フレーム送信処理では、機器制御部33は、まず、機器通信IC31が開始データを受信したか否かを判定する(ステップS121)。機器制御部33は、機器通信IC31が開始データを受信していないと判定した場合(S121:NO)、ステップS121を再び実行し、機器通信IC31が開始データを受信するまで待機する。機器制御部33は、機器通信IC31が開始データを受信したと判定した場合(S121:YES)、ステップS41を実行する。
【0185】
機器制御部33は、ステップS41を実行した後、ステップS43を実行する。機器制御部33は、ステップS44を実行した後、ステップS46を実行する。機器制御部33は、変数Yの値がNであると判定した場合(S51:YES)、通信フレーム送信処理を終了する。
車載機器3b,3cそれぞれの通信フレーム送信処理は、車載機器3aの通信フレーム送信処理と同様である。装置通信IC21aは、装置通信IC21b,21cに対応する。
【0186】
<車載機器3a,3b,3cが行う中継フレームの送信>
車載機器3a,3b,3cそれぞれの中継フレーム送信処理(
図20参照)では、機器制御部33は、ステップS61を実行せず、ステップS62,S63を実行する。ステップS62の送信指示値は、送信指示値データが示す送信指示値である。車載機器3a,3b,3cそれぞれの機器通信IC31は、カウント値が、送信指示値データが示す送信指示値となった場合に中継フレームを送信する。実施形態4では、目標データが用いられることはない。
【0187】
<中継装置2の構成>
実施形態4における装置制御部23の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムPrを実行することによって、送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれの期間調整処理を更に実行する。期間調整処理は、第1キューQ1及び第2キューQ2それぞれのオープン期間の開始時点又は長さを調整する処理である。装置記憶部22には、3つの期間調整処理で用いられる変数Fa,Ga,Fb,Gb,Fc,Gcの値が記憶されている。これらの値は、装置制御部23によって変更される。
【0188】
<期間調整処理>
図28は、送信バッファTaの期間調整処理の手順を示すフローチャートである。送信バッファTaの期間調整処理は、初期設定が行われた後において、車載機器3aの通信フレーム送信処理と並行して、装置制御部23によって実行される。送信バッファTaの期間調整処理では、装置制御部23は、まず、変数Fa,Gaの値をゼロに設定する(ステップS131)。次に、装置制御部23は、送信バッファTaの通信キューQmに通信フレームが記憶されているか否かを判定する(ステップS132)。装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていないと判定した場合(S132:NO)、通信キューQmに通信フレームが記憶されるまで待機する。
【0189】
装置制御部23は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した場合(S132:YES)、マスターカウンタ20のカウント値を読み出す(ステップS133)。ステップS133で読み出されたカウント値は、通信キューQmに通信フレームが記憶されていると判定した通信判定時点に相当する。次に、装置制御部23、通信キューQmのオープン期間及びクローズ期間の中で、ステップS133で読み出したカウント値が属する期間を特定する(ステップS134)。装置制御部23は、ステップS134を実行した後、変数Faの値を1だけインクリメントし(ステップS135)、変数Faの値がKであるか否かを判定する(ステップS136)。
【0190】
装置制御部23は、変数Faの値がKではないと判定した場合(S136:NO)、ステップS132を再び実行し、次に受信された通信フレームの通信判定時点が属する期間を特定する。以上のように、K個の通信フレームの通信判定時点が属するK個の期間を特定する。
【0191】
装置制御部23は、変数Faの値がKであると判定した場合(S136:YES)、特定したK個の期間に基づいて、1周期において通信判定時点が属する所属範囲を特定する(ステップS137)。装置制御部23が行う所属範囲の特定は、車載機器3aの機器制御部33が行う所属範囲の特定と同様である。次に、装置制御部23は、変数Faの値をゼロに設定し(ステップS138)、変数Gaの値を1だけインクリメントする(ステップS139)。装置制御部23は、ステップS139を実行した後、変数Gaの値がNであるか否かを判定する(ステップS140)。
【0192】
装置制御部23は、変数Gaの値がNではないと判定した場合(S140:NO)、ステップS132を再び実行する。装置制御部23は、通信判定時点が属するK個の期間を新たに特定し、特定したK個の期間に基づいて所属範囲を新たに特定する。以上のように、装置制御部23は、所属範囲をN回特定する。装置制御部23は、変数Gaの値がNであると判定した場合(S140:YES)、特定したN個の所属範囲に基づいて、車載機器3aの全体期間を決定する(ステップS141)。装置制御部23が行う全体期間の特定は、車載機器3aの機器制御部33が行う全体期間の特定と同様である。
【0193】
次に、装置制御部23は、ステップS141で決定した全体期間に基づいて、送信バッファTaの第1キューQ1及び第2キューQ2それぞれのオープン期間を調整する(ステップS142)。オープン期間の調整は、オープン期間の開始時点又は長さの調整である。1周期において、オープン期間以外の期間はクローズ期間である。このため、オープン期間の開始時点及び長さが決まった場合、クローズ期間の開始時点及び長さは自動的に決まる。車載機器3a,3b,3cそれぞれは、スレーブカウンタ30のカウント値が、送信指示値データが示す送信指示値である場合に、第1中継フレーム又は第2中継フレームを送信する。
【0194】
ステップS142では、装置制御部23は、送信バッファTaついて、送信先が車載機器3aである全ての第1中継フレームの中継判定時点が第1キューQ1のオープン期間に属するように、第1キューQ1のオープン期間の開始時点又は長さを調整する。また、装置制御部23は、送信バッファTaついて、送信先が車載機器3aである全ての第2中継フレームの中継判定時点が第2キューQ2のオープン期間に属するように、第2キューQ2のオープン期間の開始時点又は長さを調整する。装置制御部23は、ステップS142を実行した後、期間調整処理を終了する。
【0195】
送信バッファTb,Tcそれぞれの期間調整処理は、送信バッファTaの期間調整処理と同様である。車載機器3aは、車載機器3b,3cに対応する。変数Faは変数Fb,Fcに対応する。変数Gaは変数Gb,Gcに対応する。
【0196】
<通信システム1の効果及びなお書き>
実施形態4における通信システム1は、実施形態1における通信システム1が奏する効果の中で、中継フレームの送信指示値を調整することによって得られる効果を除く他の効果を同様に奏する。
なお、実施形態4において、実施形態2におけるパターンデータが用いられてもよい。
【0197】
<実施形態1~4の変形例>
実施形態1~4において、装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは、処理を実行する処理素子を有する。装置通信IC21a,21b,21cそれぞれは、装置制御部23が実行する前述した処理の一部を、装置制御部23の代わりに実行してもよい。この場合、装置通信IC21a,21b,21c及び装置制御部23の全体、又は、装置通信IC21a,21b,21c中の1つが処理部又は中継処理部として機能する。同様に、機器通信IC31は、処理を実行する処理素子を有する。機器通信IC31は、機器制御部33が実行する前述した処理の一部又は全部を、機器制御部33の代わりに実行してもよい。この場合、機器通信IC31及び機器制御部33の両方又は機器通信IC31が通信処理部として機能する。
【0198】
通信フレームの送信指示値はゼロ以外の値であってもよい。また、通信判定時点の変動幅が小さい場合、Nは1であってもよい。この場合、全体期間の算出値は、例えば、特定された所属範囲の中央値に決定される。更に、車載機器3a,3b,3cそれぞれは、第1キューQ1のオープン期間に複数の第1中継フレームを送信してもよい。同様に、車載機器3a,3b,3cそれぞれは、第2キューQ2のオープン期間に複数の第2中継フレームを送信してもよい。
【0199】
中継判定時点がクローズ期間に属する場合に行う処理は、中継レームの破棄に限定されず、中継フレームの送信の保留であってもよい。この場合、例えば、次のオープン期間が到来するまで中継フレームは送信されない。次のオープン期間が到来した場合、送信が保留されていた中継フレームが送信される。送信バッファTa,Tb,Tcそれぞれに設けられている中継フレーム用のキューの数は、2に限定されず、3以上であってもよい。中継装置2に接続される車載機器の数は、3に限定されず、4以上であってもよい。
【0200】
開示された実施形態1~4はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0201】
1 通信システム
2 中継装置
2a,2b,2c 接続コネクタ
3a,3b,3c 車載機器(通信装置)
20 マスターカウンタ
21a,21b,21c 装置通信IC(受信部、中継受信部)
22 装置記憶部(記憶部、中継記憶部)
23 装置制御部(処理部、中継処理部)
24 装置バス
30 スレーブカウンタ
31 機器通信IC
32 機器記憶部
33 機器制御部(通信処理部)
34 機器バス
Ae,Ar 記憶媒体
B 機器コネクタ
E1,E2 範囲
M 車両
Pe,Pr コンピュータプログラム
Q1 第1キュー
Q2 第2キュー
Qm 通信キュー
Ra,Rb,Rc 受信バッファ
Ta,Tb,Tc 送信バッファ