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特許7559703緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B60R11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021126625
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021638
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】武田 光正
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-147756(JP,U)
【文献】特開2000-103296(JP,A)
【文献】特開2003-231443(JP,A)
【文献】独国実用新案第09409902(DE,U1)
【文献】特開平08-156700(JP,A)
【文献】実開昭58-002150(JP,U)
【文献】特開2005-335438(JP,A)
【文献】特開平11-170920(JP,A)
【文献】特開2009-101971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される緊急保安炎筒を取付対象物に取り付けるための取付構造であって、
前記取付対象物に取り付けられており、前記緊急保安炎筒を把持する把持部材と、
前記取付対象物に取り付けられており、前記緊急保安炎筒を収容する収容部材とを備えており、
前記把持部材は、前記緊急保安炎筒の先端部分が前記取付対象物に向けて差し込まれることで前記先端部分を把持する一対の把持爪を有し、
前記収容部材は、前記緊急保安炎筒の基端部分を囲む周壁と前記緊急保安炎筒の底部に対向する対向部とを有し、
前記周壁は、前記対向部側から前記把持部材に向かうにつれて前記取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜するとともに、前記緊急保安炎筒が前記把持部材から外れた場合に前記緊急保安炎筒を支持する傾斜面を含み、
前記傾斜面は、前記傾斜面を含む仮想平面と前記取付対象物との間に前記把持爪が位置するように傾斜するとともに、前記傾斜面の上端と前記把持爪の先端との離間距離が前記把持部材の内径よりも長くなるように構成されている
緊急保安炎筒の取付構造。
【請求項2】
前記取付対象物に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記緊急保安炎筒が前記把持部材から外れて前記傾斜面によって支持される場合に、前記緊急保安炎筒が前記一対の把持爪と接触しない状態になる角度である
請求項1に記載の緊急保安炎筒の取付構造。
【請求項3】
前記周壁は、前記収容部材に収容されている前記緊急保安炎筒を前記収容部材の外部から視認可能な開口部を含む
請求項1又は請求項2に記載の緊急保安炎筒の取付構造。
【請求項4】
前記把持部材に把持されている状態の前記緊急保安炎筒の軸方向における前記傾斜面の長さは、当該軸方向における前記把持爪と前記傾斜面との間の距離よりも長い
請求項1~3のいずれか一項に記載の緊急保安炎筒の取付構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の緊急保安炎筒の取付構造に用いられる取付具であって、
前記把持部材と、
前記収容部材と、
前記車両の内装部材に固定される、前記取付対象物としての基台とを備える
緊急保安炎筒の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される緊急保安炎筒を車両の内装部材に取り付けるための取付構造が開示されている。この取付構造は、2つの把持爪を含む把持部材を有している。把持部材は、緊急保安炎筒のそれぞれの端部を把持爪によって側方から挟み込むことにより、緊急保安炎筒を把持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭50-043450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緊急保安炎筒が把持部材から外れて車両のフロアに落ちてしまっていると、緊急保安炎筒を探す時間を要するために緊急保安炎筒を用いた緊急事態発生の報知が遅れることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決する緊急保安炎筒の取付構造は、車両に搭載される緊急保安炎筒を取付対象物に取り付けるための取付構造であって、前記取付対象物に取り付けられており、前記緊急保安炎筒を把持する把持部材と、前記取付対象物に取り付けられており、前記緊急保安炎筒を収容する収容部材とを備えており、前記把持部材は、前記緊急保安炎筒の先端部分が前記取付対象物に向けて差し込まれることで前記先端部分を把持する一対の把持爪を有し、前記収容部材は、前記緊急保安炎筒の基端部分を囲む周壁と前記緊急保安炎筒の底部に対向する対向部とを有し、前記周壁は、前記対向部側から前記把持部材に向かうにつれて前記取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜するとともに、前記緊急保安炎筒が前記把持部材から外れた場合に前記緊急保安炎筒を支持する傾斜面を含む。
【0006】
上記構成によれば、緊急保安炎筒が把持部材から外れても、緊急保安炎筒は、傾斜面に支持された状態となって収容部材に収容されるため、車両のフロアに落ちにくい。また、把持部材から外れて収容部材に収容された緊急保安炎筒は、周壁のうち傾斜面によって支持される。このため、緊急保安炎筒が把持部材から外れた場合には、緊急保安炎筒が把持部材に把持されている場合よりも、緊急保安炎筒の先端部分と取付対象物との間の距離が長くなる。よって、収容部材に収容されている緊急保安炎筒の先端部分を掴みやすくなるため、緊急保安炎筒を収容部材から取り出しやすい。したがって、緊急保安炎筒を用いて緊急事態の発生を速やかに報知することができる。
【0007】
(2)上記緊急保安炎筒の取付構造において、前記取付対象物に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記緊急保安炎筒が前記把持部材から外れて前記傾斜面によって支持される場合に、前記緊急保安炎筒が前記一対の把持爪と接触しない状態になる角度であるとよい。
【0008】
上記構成によれば、緊急保安炎筒が把持部材から外れて傾斜面によって支持される場合には、緊急保安炎筒が一対の把持爪に接触しなくなる。したがって、緊急保安炎筒を収容部材から取り出す際に、緊急保安炎筒と把持爪とが干渉しにくくなる。このため、緊急保安炎筒を収容部材から取り出しやすい。
【0009】
(3)上記緊急保安炎筒の取付構造において、前記周壁は、前記収容部材に収容されている前記緊急保安炎筒を前記収容部材の外部から視認可能な開口部を含むとよい。
把持部材から外れた緊急保安炎筒を安定して収容部材に収容する上では、収容部材の周壁の高さが長いほうが好ましい。一方で、このように収容部材の周壁の高さを長くすると、把持部材から外れた緊急保安炎筒が収容部材に収容されていることが確認しにくい。上記構成では、周壁の高さを長くした場合であっても、周壁が開口部を含んでいるため、収容部材に緊急保安炎筒が収容されていることを確認しやすい。
【0010】
(4)上記緊急保安炎筒の取付構造において、前記把持部材に把持されている状態の前記緊急保安炎筒の軸方向における前記傾斜面の長さは、当該軸方向における前記把持爪と前記傾斜面との間の距離よりも長いとよい。
【0011】
上記構成によれば、傾斜面の長さが、軸方向における把持爪と傾斜面との距離よりも短い場合よりも、緊急保安炎筒を収容部材に安定して収容することができる。したがって、把持部材から外れて収容部材に収容されている緊急保安炎筒が、例えば車両の走行に伴う振動等によって収容部材から外部に落ちるといった事態が生じにくい。
【0012】
上記課題を解決する緊急保安炎筒の取付具は、上記構成(1)~(4)のいずれか一つに記載の緊急保安炎筒の取付構造に用いられる取付具であって、前記把持部材と、前記収容部材と、前記車両の内装部材に固定される、前記取付対象物としての基台とを備える。
【0013】
上記構成によれば、構成(1)~(4)の作用効果に準じた作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、緊急保安炎筒を用いて緊急事態の発生を速やかに報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具を示す概略図である。
図2】緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具を示す斜視図である。
図3】緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具を示す断面図である。
図4図3のA視点で見たときの図である。
図5】取付具の取り付け位置の変更例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、緊急保安炎筒の取付構造、及び緊急保安炎筒の取付具を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
[車両に対する緊急保安炎筒の取付位置]
図1に示すように、緊急保安炎筒100は、車両101に搭載されている。緊急保安炎筒100は、発火式の緊急保安炎筒であってもよいし、LED等を用いた電灯式の緊急保安炎筒であってもよい。以下の説明において、車両101の前方向をFdとし、車両101の後方向をBdとする。以下の説明において、車両101の左方向をLdとし、車両101の右方向をRdとする。また、鉛直方向をVdとする。
【0017】
前方向Fd、後方向Bd、左方向Ld、及び右方向Rdそれぞれと鉛直方向Vdとは直交している。なお、車両101は、例えば、空港内を走行するトーイングトラクターである。トーイングトラクターは、運転席を基準として左方向Ld側及び右方向Rd側にドアを有するキャビン仕様の車両と、当該ドアがないキャビンレス仕様の車両が存在する。本実施形態は、キャビンレス仕様のトーイングトラクターであるため、車両101の幅方向における両側が常に開放されている。
【0018】
緊急保安炎筒100は、取付具10によりロアパネル102に取り付けられている。ロアパネル102は、インストルメントパネル103と連続している。ロアパネル102は、インストルメントパネル103よりも鉛直方向Vdの下側に位置している。ロアパネル102は、車両101の内装部材の一例である。
【0019】
ロアパネル102は、インストルメントパネル103との境界Pから鉛直方向Vdの下側に向かうにつれて前方向Fdに延びる斜面102aを有している。斜面102aは、左方向Ld及び右方向Rdにも延びている。斜面102aは、ロアパネル102における後方向Bd側に位置する面である。斜面102aは、車両101の車室内に位置する面である。取付具10は、ロアパネル102の斜面102aに取り付けられている。なお、説明の便宜上、図1に記載のロアパネル102及びインストルメントパネル103は簡易的に記載している。
【0020】
[取付具]
図2に示すように、取付具10は、取付板部20と、把持部材30と、ポケット部40と、スペーサ50と、2つの固定部60とを備えている。
【0021】
<取付板部>
図2に示すように、取付板部20は、長板状の基台21と、基台21に連続する板状の支持部22とを有している。
【0022】
基台21は、第1面21aと、基台21の厚さ方向において第1面21aとは反対側に位置する第2面21bを有している。基台21は、第1端211と、基台21の長手方向において第1端211とは反対側に位置する第2端212を有している。基台21の長手方向及び基台21の厚さ方向の双方に直交する方向を第1方向とする。支持部22は、基台21の第2端212に連続している。支持部22は基台21から離れるようにして基台21の厚さ方向に延びている。なお、取付板部20は、金属製である。
【0023】
<把持部材>
図2に示すように、把持部材30は、本体部31と、本体部31から延びる一対の把持爪32とを有している。本体部31は、基台21の第1面21aに取り付けられている。本体部31は、曲面31aを有している。曲面31aは、本体部31における、第1面21aとの対向面の反対側に位置している。曲面31aは、第1面21aに向けて凹むように湾曲している。
【0024】
一対の把持爪32は、第1方向において、本体部31の曲面31aを挟み込む位置に設けられている。一対の把持爪32は、本体部31から離れるようにして基台21の厚さ方向に延びている。一対の把持爪32は、互いに対称的な形状を有している。一対の把持爪32は、基台21から離れるにつれてそれぞれの先端32aが近接するように湾曲している。一対の把持爪32の先端32aは、互いに接触していない。
【0025】
一対の把持爪32は、互いに対向する内面32bを有している。2つの内面32bと、本体部31の曲面31aとは互いに滑らかに連続している。2つの内面32b及び曲面31aは、C字状に湾曲した湾曲面をなしている。一対の把持爪32の先端32aは、内面32bと滑らかに連続する曲面32cを有している。曲面32cは、U字形状に湾曲している。
【0026】
2つの先端32aの間の距離は、緊急保安炎筒100の直径よりも小さい。2つの内面32b及び曲面31aにより構成された湾曲面に沿った円弧の曲率半径の2倍の値は、緊急保安炎筒100の直径よりも小さい。なお、把持部材30は、樹脂製である。
【0027】
<ポケット部>
図2に示すように、ポケット部40は、基台21の第1面21aに取り付けられている。ポケット部40は、基台21の長手方向において、把持部材30と直線状に並んでいる。
【0028】
ポケット部40は、四角板状の第1板部41と、四角板状の第2板部42と、四角板状の傾斜板43とを有している。
第1板部41は、基台21の第1面21aに直交している。第1板部41は、基台21の第1面21aに取り付けられる第1端411と、基台21の第1面21aと直交する方向において第1端411とは反対側に位置する第2端412とを有している。第1板部41は、第1端411から第2端412に向けて切り欠かれた開口部413を有している。開口部413は、第1板部41を厚さ方向に貫通している。なお、第1端411は、溶接等により基台21に取り付けられている。
【0029】
第2板部42は、基台21の第1面21aに直交している。第2板部42は、第1方向において第1板部41と離れている。第2板部42は、基台21の第1面21aに取り付けられる第1端421と、基台21の第1面21aと直交する方向において第1端421とは反対側に位置する第2端422とを有している。第1端421は、溶接等により基台21に取り付けられている。第2板部42は、第1端421から第2端422に向けて切り欠かれた開口部423を有している。開口部423は、第2板部42を厚さ方向に貫通している。開口部423は、開口部413と同じ形状である。開口部423は、基台21の長手方向において開口部413と同じ位置に配置されている。なお、第1板部41と第2板部42との間の第1方向における距離は、緊急保安炎筒100の直径よりも長い。
【0030】
傾斜板43は、第1板部41の第2端412に連続している。傾斜板43は、第1板部41に直交している。傾斜板43は、基台21の第1面21aに対向している。傾斜板43は、第2板部42に溶接等により取り付けられている。
【0031】
図3に示すように、把持部材30に把持されている状態の緊急保安炎筒100の軸線が延びる方向を軸方向Adとする。基台21の厚さ方向における、基台21と傾斜板43との間の距離は、軸方向Adにおけるいずれの位置においても、緊急保安炎筒100の直径より長い。
【0032】
傾斜板43は、基台21に対向する平面である第1面43aと、傾斜板43の厚さ方向において第1面43aとは反対側に位置する平面である第2面43bとを有している。傾斜板43は、第1面43aと第2面43bとが平行に延びる厚さが一定の板部材である。
【0033】
第1面43aは、基台21の第1面21aに対向している。第1面43aは、軸方向Adにおける支持部22寄りの第1端43cと、軸方向Adにおける把持部材30寄りの第2端43dとを有している。第1面43aは、基台21の第1面21aに対して傾斜している。第1面43aは、第1端43cから第2端43dに向かうにつれて、基台21の第1面21aに直交する方向において、基台21の第1面21aとの間の距離が長くなるように傾斜している。換言すると、第1面43aは、支持部22側から把持部材30に向かうにつれて、基台21との間の距離が長くなるように傾斜している。第1面43aの延長上には、一対の把持爪32の先端32aが対向している。
【0034】
軸方向Adにおける、傾斜板43の第1面43aの長さL1は、軸方向Adにおける、把持爪32と傾斜板43の第1面43aとの間の距離L2よりも長い。
第1面43aと平行に延びる平面を仮想平面V1とする。鉛直方向Vdに延び且つ仮想平面V1との交線Lが水平方向に延びる平面を仮想平面V2とする。水平方向とは、鉛直方向Vdに直交する方向である。交線Lは、左方向Ld及び右方向Rdに一致する水平方向に延びている。仮想平面V1と仮想平面V2とのなす2つの角度のうち小さいほうの角度θ2は、60°である。角度θ2は、20°以上であり70°以内の範囲であることが好ましい。この範囲は、車両101の走行に伴う振動が緊急保安炎筒100に伝わる場合でも、緊急保安炎筒100が取付具10から落ちにくくなることを予め確認した角度θ2の範囲である。
【0035】
ポケット部40は、基台21の長手方向において把持部材30に対向する第1開口部40aと、基台21の長手方向において支持部22に対向する第2開口部40bとを有している。支持部22は、第2開口部40bを覆うように配置されている。ポケット部40と支持部22とによって、緊急保安炎筒100を収容する収容部材44が構成されている。
【0036】
把持部材30における本体部31と一対の把持爪32とにより囲まれる空間をSPとする。把持部材30を正面にしつつ把持部材30とポケット部40とを重ねて見たとき、空間SPは、第1開口部40aの範囲内に位置している。なお、ポケット部40は、金属製である。
【0037】
<スペーサ及び固定部>
図2に示すように、2つの固定部60は、例えばボルトである。2つの固定部60は、基台21に取り付けられている。2つの固定部60は、第1方向においてポケット部40と並んでいる。スペーサ50は、基台21の第2面21b上に配置されている。スペーサ50は、基台21の第2面21bとロアパネル102の斜面102aとの間に介在されている。
【0038】
2つの固定部60は、スペーサ50を貫通している。2つの固定部60は、スペーサ50を貫通した後、ロアパネル102の斜面102aに固定される。2つの固定部60により取付具10が斜面102aに固定される。
【0039】
斜面102aに取付具10が固定された状態で、基台21の第1端211が取付具10の中で鉛直方向Vdにおける最も上側に位置している。斜面102aに取付具10が固定された状態で、支持部22における基台21から最も離れた部位が取付具10の中で鉛直方向Vdにおける最も下側に位置している。
【0040】
斜面102aに取付具10が固定された状態で、開口部413が車両101の右方向Rdを向いている。斜面102aに取付具10が固定された状態で、開口部423が車両101の左方向Ldを向いている。
【0041】
<緊急保安炎筒と取付具との関係性>
図3に示すように、緊急保安炎筒100の全長は、支持部22と把持部材30との間の距離よりも長い。
【0042】
緊急保安炎筒100が把持部材30に把持されている場合を考える。
緊急保安炎筒100の先端部分104は、一対の把持爪32により把持されている。緊急保安炎筒100の基端部分105は、ポケット部40の内部に収容されている。緊急保安炎筒100の基端部分105は、第1板部41と、第2板部42と、傾斜板43とにより囲まれる。緊急保安炎筒100の底部106は、支持部22に対向している。緊急保安炎筒100の底部106は、支持部22に支持されている。
【0043】
緊急保安炎筒100の先端部分104とは、緊急保安炎筒100の底部106が支持部22に当接し、且つ緊急保安炎筒100が把持部材30によって把持される状態においてポケット部40から鉛直方向Vdの上側に突出する部分である。緊急保安炎筒100の基端部分105とは、先端部分104よりも鉛直方向Vdの下側の部分である。緊急保安炎筒100の底部106は、緊急保安炎筒100の基端部分105の下端である。
【0044】
図1及び図3に示すように、緊急保安炎筒100が把持部材30に把持されている状態でポケット部40の外部から緊急保安炎筒100を車両101の幅方向から見たとき、開口部413,423から緊急保安炎筒100が視認できる。
【0045】
図3の二点鎖線で示すように、緊急保安炎筒100を把持部材30から外すとき、緊急保安炎筒100の底部106が支持部22に支持された状態で、先端部分104を基台21から離すように移動させる。すなわち、支持部22を支点として緊急保安炎筒100の先端部分104を基台21から離れるように回動させる。
【0046】
緊急保安炎筒100が把持部材30から外れた場合、緊急保安炎筒100は、底部106が支持部22に支持されつつ傾斜板43の第1面43aによって支持される。このように緊急保安炎筒100が収容部材44によって支持された状態であるとき、把持部材30から外れた緊急保安炎筒100は、一対の把持爪32に接触していない。緊急保安炎筒100が第1面43aによって支持された状態とは、車両101の外部から振動等の外力が入力されていない状況において、緊急保安炎筒100が第1面43aに接触して緊急保安炎筒100の位置が固定された状態である。
【0047】
基台21の第1面21aに対する傾斜板43の第1面43aの傾斜角度θ1は、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れて第1面43aによって支持される場合に、緊急保安炎筒100が一対の把持爪32と接触しない状態になる角度である。
【0048】
図4に示すように、緊急保安炎筒100の先端部分104が把持部材30に把持された状態から緊急保安炎筒100の先端部分104が基台21から離れていくにつれ、一対の把持爪32の2つの先端32aの間の距離は、緊急保安炎筒100の直径に達した後、当該距離が緊急保安炎筒100の直径よりも小さくなった状態となる。緊急保安炎筒100が把持部材30から外れているとは、この状態になったことを示している。なお、説明の便宜上、図4に記載の緊急保安炎筒100は簡易的に記載している。また、2つの先端32aの間の距離が緊急保安炎筒100の直径に達したときの状況を、図4の二点鎖線で示している。
【0049】
図3に示すように、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れた状態でポケット部40の外部から緊急保安炎筒100を車両101の車幅方向から見たとき、開口部413から緊急保安炎筒100が視認できる。開口部413,423は、ポケット部40に収容されている状態の緊急保安炎筒100をポケット部40の外部から視認可能である。
【0050】
図3の二点鎖線で示すように、緊急保安炎筒100の底部106を支持部22で支持しつつ緊急保安炎筒100が第1面43aに支持された状態で、緊急保安炎筒100を2つの把持爪32の先端32aの間に差し込む。この際、把持爪32は弾性変形する。緊急保安炎筒100は、2つの先端32aの間に基台21に向けて差し込まれることで一対の把持爪32の曲面32cにより把持部材30の空間SPに案内される。本体部31の曲面31a及び2つの内面32bに緊急保安炎筒100が接触したとき、緊急保安炎筒100が把持部材30に取り付けられる。
【0051】
緊急保安炎筒100を把持部材30に取り付けたとき、2つの内面32bと曲面31aとにより構成される湾曲面の直径が大きくなる。一対の把持爪32は、緊急保安炎筒100が把持される前の状態に戻ろうとする弾性復元力により緊急保安炎筒100の周面を押圧する。一対の把持爪32は、自身の弾性復元力を緊急保安炎筒100を把持する把持力としている。一対の把持爪32は、緊急保安炎筒100の先端部分104が基台21に向けて差し込まれることで先端部分104を把持している。そして、緊急保安炎筒100が基台21に取り付けられる。
【0052】
基台21は、緊急保安炎筒100を取り付ける取付対象物の一例である。ポケット部40は、緊急保安炎筒100の基端部分105を囲む周壁の一例である。支持部22は、緊急保安炎筒100の底部106と対向する対向部の一例である。傾斜板43の第1面43aは、ポケット部40に含まれる傾斜面の一例である。把持部材30と、ポケット部40と、支持部22とにより緊急保安炎筒100を基台21に取り付けるための取付構造が構成されている。取付具10は、緊急保安炎筒100の当該取付構造に用いられる。
【0053】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
緊急保安炎筒100が把持部材30から外れても、緊急保安炎筒100は、傾斜板43の第1面43aに支持された状態となる。緊急保安炎筒100が収容部材44に収容されるため、緊急保安炎筒100が車両101のフロアに落ちにくい。また、把持部材30から外れて収容部材44に収容された緊急保安炎筒100は、ポケット部40のうち第1面43aによって支持される。このため、図3に示すように、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れた場合には、緊急保安炎筒100が把持部材30に把持されている場合よりも、緊急保安炎筒100の先端部分104と基台21との間の距離が長くなる。よって、収容部材44に収容されている緊急保安炎筒100の先端部分104を掴みやすくなるため、緊急保安炎筒100を収容部材44から取り出しやすい。
【0054】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)緊急保安炎筒100が把持部材30から外れた場合でも、緊急保安炎筒100を用いて緊急事態の発生を速やかに報知することができる。
【0055】
(2)基台21に対する傾斜板43の第1面43aの傾斜角度が傾斜角度θ1である。このため、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れて第1面43aによって支持される場合には、緊急保安炎筒100が一対の把持爪32に接触しなくなる。したがって、緊急保安炎筒100を収容部材44から取り出す際に、緊急保安炎筒100と把持爪32とが干渉しにくくなる。このため、緊急保安炎筒100を収容部材44から取り出しやすい。
【0056】
(3)把持部材30から外れた緊急保安炎筒100を安定して収容する上では、ポケット部40の高さが長い方が好ましい。一方で、ポケット部40の高さを長くすると、把持部材30から外れた緊急保安炎筒100が収容部材44に収容されていることが確認しにくい。本実施形態では、ポケット部40の高さを長くした場合であっても、ポケット部40が開口部413,423を含んでいるため、収容部材44に緊急保安炎筒100が収容されていることを確認しやすい。
【0057】
(4)傾斜板43の第1面43aの長さL1が、軸方向Adにおける把持爪32と第1面43aとの距離L2よりも長い。このため、長さL1が距離L2よりも短い場合よりも、緊急保安炎筒100を収容部材44に安定して収容することができる。したがって、把持部材30から外れて収容部材44に収容されている緊急保安炎筒100が、例えば車両101の走行に伴う振動等によって収容部材44から外部に落ちるといった事態が生じにくい。
【0058】
(5)緊急保安炎筒100を取付具10に取り付ける場合、基端部分105の全体が収容部材44に収容された状態で先端部分104が一対の把持爪32の間に差し込まれる。よって、緊急保安炎筒100を把持部材30に取り付けるときに緊急保安炎筒100が収容部材44から落ちにくくなる。
【0059】
また、収容部材44に緊急保安炎筒100の基端部分105の全体を収容した状態で一対の把持爪32の間に緊急保安炎筒100を差し込むことができる。このため、緊急保安炎筒100を取付具10に取り付けやすい。
【0060】
(6)取付具10が運転席の車両101の車幅方向における両側が開放されているキャビンレス仕様のトーイングトラクターに搭載されているため、取付具10に取り付けられた緊急保安炎筒100は、開口部413,423を通じてトーイングトラクターの外部からでも視認できる。
【0061】
(7)取付具10により緊急保安炎筒100が車両101のフロアに落ちにくくなっている。このため、キャビンレス仕様のトーイングトラクターにおいては緊急保安炎筒100が車両101の外部に落ちることにより緊急保安炎筒100を空港内で紛失してしまうといった状況が生じにくい。
【0062】
[変更例]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0063】
○ 取付具10の取り付け位置を次のように変更してもよい。
図5に示すように、取付具10は、ロアパネル102に取り付けられたドキュメントボックス200に取り付けられていてもよい。ドキュメントボックス200は、鉛直方向Vd、前方向Fd、及び後方向Bdに延びる側面201を有している。取付具10は、側面201に取り付けられる。取付具10の支持部22は、ドキュメントボックス200の下部よりも鉛直方向Vdの下側に位置している。緊急保安炎筒100の底部106もドキュメントボックス200の下部よりも鉛直方向Vdの下側に位置している。
【0064】
このように構成しても、緊急保安炎筒100の底部106に向けて搭乗者の足が伸びたとしても、ポケット部40により緊急保安炎筒100を保護することができる。なお、図5に示すドキュメントボックス200は、説明の便宜上、ドキュメントボックス200の存在を明記するために斜線を付している。
【0065】
○ 基台21は、スナップフィット構造により斜面102aに固定されてもよい。
○ ロアパネル102の斜面102aに基台21を嵌め込むための嵌め込み溝を設けてもよい。このように変更しても取付具10を斜面102aに固定することができる。
【0066】
○ 取付板部20を基台21により構成し、且つ支持部22をポケット部40と一体的に設けるように変更してもよい。
○ 取付対象物をロアパネル102としてもよい。この場合、把持部材30と、ポケット部40と、支持部22は、ロアパネル102の斜面102aに固定されるように変更する。把持部材30と、ポケット部40と、支持部22とにより緊急保安炎筒100をロアパネル102に取り付けるための取付構造が構成される。把持部材30を斜面102aに取り付ける場合、例えばスナップフィット構造やボルトにより斜面102aに把持部材30が固定される構造としてもよい。把持部材30を斜面102aに取り付ける場合、ロアパネル102に設けた嵌め込み溝に把持部材30を嵌め込むことで斜面102aに把持部材30が固定される構造としてもよい。
【0067】
ポケット部40及び支持部22を斜面102aに取り付ける場合、スナップフィット構造や、ボルト、嵌め込み溝により斜面102aにポケット部40及び支持部22が固定される構造としてもよい。なお、取付対象物は、ロアパネル102に限らず、ドキュメントボックス200でもよい。
【0068】
○ 角度θ2は、例えば、70°よりも大きく90°未満であってもよい。ただし、角度θ2は、緊急保安炎筒100のポケット部40から突出している部分の先端に位置する先端面が、鉛直方向Vdの下側に向かないことを予め確認した角度に設定するとよい。なお、当該先端面は、緊急保安炎筒100の軸線が延びる方向において、底部106とは反対側に位置する部分である。
【0069】
○ 軸方向Adにおける傾斜板43の第1面43aの長さL1は、軸方向Adにおける把持爪32と傾斜板43の第1面43aとの間の距離L2よりも短くてもよい。なお、長さL1を距離L2よりも短くする場合、角度θ2は可能な限り小さくすることが好ましい。長さL1を距離L2よりも短くする場合でも、角度θ2は、緊急保安炎筒100のポケット部40から突出している部分の先端に位置する先端面が、鉛直方向Vdの下側に向かないことを予め確認した角度に設定するとよい。
【0070】
○ 第1板部41の開口部413を割愛し、第2板部42の開口部423を残してもよい。第2板部42の開口部423を割愛し、第1板部41の開口部413を残してもよい。なお、開口部413,423の双方を割愛してもよい。
【0071】
○ 傾斜角度θ1は、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れて第1面43aによって支持される場合に、緊急保安炎筒100が一対の把持爪32と接触する状態になる角度であってもよい。
【0072】
○ 傾斜板43の第2面43bは、基台21の第1面21aと平行に延びる平面であってもよい。すなわち、傾斜板43は、支持部22から把持部材30に向かうにつれて厚さが徐々に薄くなる壁としてもよい。
【0073】
○ 傾斜板43の基台21に対向する面は、例えば、支持部22寄りの部分に第1面21aと平行に延びる面と、当該面と連続する傾斜面とを有していてもよい。当該傾斜面は、軸方向Adにおける支持部22寄りの第1端から軸方向Adにおける把持部材30寄りの第2端に向かうにつれて、取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜している面である。当該傾斜面は、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れたときに緊急保安炎筒100を支持する面である。すなわち、傾斜板43の基台21に対向する面は、上記傾斜面を含んでいれば、その他の面を含んでいてもよい。
【0074】
○ 第1面43aは、支持部22側から把持部材30に向かうにつれて、基台21やロアパネル102といった取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜している湾曲面としてもよい。換言すると、第1面43aは、第1端43cから第2端43dに向かうにつれて、当該取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜している湾曲面としてもよい。第1面43aの曲率半径の2倍の値は、緊急保安炎筒100の直径よりも大きいことが好ましい。
【0075】
○ ポケット部40は、支持部22側から把持部材30に向かうにつれて、取付対象物との間の距離が長くなるように傾斜している傾斜面を含んでいれば、形状は任意である。当該傾斜面は、緊急保安炎筒100が把持部材30から外れたときに緊急保安炎筒100を支持する面である。
【0076】
○ 把持部材30は、本体部31を割愛し、且つ一対の把持爪32により構成されていてもよい。
○ 緊急保安炎筒100の底部106は、支持部22に接触していなくてもよい。支持部22は、緊急保安炎筒100の底部106と対向していればよい。このように変更する場合、緊急保安炎筒100のガタつきを抑制するために、一対の把持爪32による緊急保安炎筒100の把持力を強くするとよい。なお、このように変更する場合、緊急保安炎筒100の先端部分104は、緊急保安炎筒100が把持部材30によって把持される状態においてポケット部40から鉛直方向Vdの上側に突出する部分である。
【0077】
○ ロアパネル102の斜面102aは、左方向Ld及び右方向Rdにも延びていたが、左方向Ld及び右方向Rdに対して傾いた方向に延びていてもよい。
○ 斜面102aに取付具10が固定された状態における取付具10の姿勢は、適宜変更してもよい。例えば、斜面102aに取付具10が固定された状態で、基台21の第1端211が鉛直方向Vdに対して傾斜した方向に向いていてもよい。このように変更する場合、基台21の第1端211が鉛直方向Vdの下側に向かないように取付具10の姿勢を変更するとよい。また、角度θ2が、90°を上回る角度とならないように取付具10の姿勢を変更するとよい。
【0078】
○ 車両101は、フォークリフト等の産業車両であってもよい。車両101は、乗用車であってもよい。例えば、車両101が乗用車であった場合、取付具10は、ドアの車室内側の部品に取り付けてもよい。このとき、ドアの車室内側の部品が、車両101の内装部材の一例である。
【符号の説明】
【0079】
10…取付具、20…取付板部、21…基台、22…支持部、30…把持部材、31…本体部、32…把持爪、40…ポケット部、43…傾斜板、43a…第1面、43c…第1面の第1端、43d…第1面の第2端、44…収容部材、100…緊急保安炎筒、101…車両、102…ロアパネル、104…緊急保安炎筒の先端部分、105…緊急保安炎筒の基端部分、106…緊急保安炎筒の底部、413,423…開口部、θ1…傾斜角度、Vd…鉛直方向、Ad…軸方向、Fd…車両の前方向、Bd…車両の後方向、Ld…車両の左方向、Rd…車両の右方向、L1…傾斜板の第1面の長さ、L2…把持部材と傾斜板の第1面との間の距離、L…交線、V1,V2…仮想平面、θ2…角度。
図1
図2
図3
図4
図5