(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/507 20210101AFI20240925BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20240925BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20240925BHJP
H01R 9/03 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
H01M50/507
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/516
H01M50/213
H01R9/03 A
(21)【出願番号】P 2021152026
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野 等
(72)【発明者】
【氏名】張 銘渙
(72)【発明者】
【氏名】山口 直樹
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044582(WO,A1)
【文献】特開2016-72039(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058938(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/073331(WO,A1)
【文献】特開2020-17396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0102954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50 - 50/77
H01M 50/20 - 20/298
H01R 9/00 - 9/28
H01R 4/58 - 4/72
H01R 11/00 - 11/32
H05K 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックであって、
軸方向を揃えて配置された複数の電池と、
前記複数の電池に対して前記軸方向に重ねて配置され、前記複数の電池と電気的に接続されるバスバーモジュールであって、
前記複数の電池の正極とそれぞれ電気的に接続される正極バスバーと、
前記複数の電池の負極とそれぞれ電気的に接続される負極バスバーと、
前記正極バスバーと前記負極バスバーとの間に介在する絶縁体と、
を有するバスバーモジュールと、
を備え、
前記複数の電池は、それぞれ前記軸方向の端部において中心部に位置する前記正極と、前記端部において外周縁部に位置する前記負極と、を有し、
前記正極バスバーと前記負極バスバーとは、前記軸方向に互いにオーバーラップしないように、前記軸方向と直交する直交方向に予め定められた間隔を空けて配置され、
前記正極バスバーは、前記正極に対して少なくとも前記直交方向に接触し、
前記負極バスバーは、前記負極に対して前記軸方向に接触し、
前記絶縁体は、前記軸方向に前記正極バスバーに接触する第1接触部と、前記直交方向に前記正極バスバーと接触する第2接触部と、前記直交方向に前記負極バスバーと接触する第3接触部と、を有し、
前記バスバーモジュールは、前記正極バスバーと前記絶縁体とが前記軸方向に重なる第1の二層構造部と、前記第1の二層構造部に対して前記直交方向に隣接して前記軸方向に前記絶縁体のみ配置された一層構造部と、を有する、電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記絶縁体は、前記軸方向に前記負極バスバーに接触する第4接触部を、さらに有し、
前記バスバーモジュールは、前記一層構造部に対して前記直交方向に隣接する第2の二層構造部であって、前記負極バスバーと前記絶縁体とが前記軸方向に重なる第2の二層構造部を、さらに有する、電池パック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電池パックにおいて、
前記正極バスバーは、前記正極に対して、前記直交方向に加えて前記軸方向にも接触している、電池パック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電池パックにおいて、
前記正極と、前記正極バスバーとは、ワイヤーボンディングにより接続されている、電池パック。
【請求項5】
請求項3に記載の電池パックにおいて、
前記正極と、前記正極バスバーとは、前記軸方向において、溶接されている、電池パック。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電池パックにおいて、
前記負極と、前記負極バスバーとは、前記軸方向において、溶接によって電気的に接続されている、電池パック。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電池パックにおいて、
前記負極と、前記負極バスバーとは、前記軸方向において、ワイヤーボンディングによって電気的に接続されている、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の電池を備える電池パックが提案されている(特許文献1参照)。このような電池パックにおいて、複数の電池の正極同士または負極同士を電気的に接続するために導電性を有するバスバーが適用されている。例えば、特許文献1の電池パックでは、各電池が軸方向を揃えて並べて配置され、正極のバスバーと負極のバスバーとがいずれも各電池における一方の極側に集約して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように一方の極側に集約してバスバーが配置された電池パックでは、正極バスバーと、絶縁層と、負極バスバーからなる3層構造が採用される場合がある。この場合、3層分の厚みが必要となり、電池パックの体格が増大し、小型化の要請に応えられないという問題がある。このため、電池パックの大型化を抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、軸方向を揃えて配置された複数の電池と、前記複数の電池に対して前記軸方向に重ねて配置され、前記複数の電池と電気的に接続されるバスバーモジュールであって、前記複数の電池の正極とそれぞれ電気的に接続される正極バスバーと、前記複数の電池の負極とそれぞれ電気的に接続される負極バスバーと、前記正極バスバーと前記負極バスバーとの間に介在する絶縁体と、を有するバスバーモジュールと、を備え、前記複数の電池は、それぞれ前記軸方向の端部において中心部に位置する正極と、前記端部において外周縁部に位置する負極と、を有し、前記正極バスバーと前記負極バスバーとは、前記軸方向に互いにオーバーラップしないように、前記軸方向と直交する直交方向に予め定められた間隔を空けて配置され、前記正極バスバーは、前記正極に対して少なくとも前記直交方向に接触し、前記負極バスバーは、前記負極に対して前記軸方向に接触し、前記絶縁体は、前記軸方向に前記正極バスバーに接触する第1接触部と、前記直交方向に前記正極バスバーと接触する第2接触部と、前記直交方向に前記負極バスバーと接触する第3接触部と、を有し、前記バスバーモジュールは、前記正極バスバーと前記絶縁体とが前記軸方向に重なる第1の二層構造部と、前記第1の二層構造部に対して前記直交方向に隣接して前記軸方向に前記絶縁体のみ配置された一層構造部と、を有する。この形態によれば、正極バスバーと負極バスバーとは、軸方向に互いにオーバーラップしないように、軸方向と直交する直交方向に予め定められた間隔を空けて配置され、バスバーモジュールは、正極バスバーと絶縁体とが軸方向に重なる第1の二層構造部と、第1の二層構造部に対して直交方向に隣接して軸方向に絶縁体のみ配置された一層構造部と、を有するので、正極バスバーと負極バスバーと絶縁体とが軸方向に重なることを抑制でき、これにより、軸方向の厚みを抑制し、電池パックの大型化を抑制できる。
(2)上記形態の電池パックにおいて、前記絶縁体は、前記軸方向に前記負極バスバーに接触する第4接触部を、さらに有し、前記バスバーモジュールは、前記一層構造部に対して前記直交方向に隣接する第2の二層構造部であって、前記負極バスバーと前記絶縁体とが前記軸方向に重なる第2の二層構造部を、さらに有していてもよい。この形態によれば、正極バスバーと負極バスバーとの絶縁性を向上できる。
(3)上記形態の電池パックにおいて、前記正極バスバーは、前記正極に対して、前記直交方向に加えて前記軸方向にも接触していてもよい。この形態によれば、正極バスバーと正極との接触面積を増やして導電性を向上させることができる。
(4)上記形態の電池パックにおいて、前記正極と、前記正極バスバーとは、ワイヤーボンディングにより接続されていてもよい。この形態によれば、正極と正極バスバーとの強固な電気的接続を簡易な方法で実現できる。
(5)上記(3)の形態の電池パックにおいて、前記正極と、前記正極バスバーとは、前記軸方向において、溶接されていてもよい。この形態によれば、正極と正極バスバーとの接続をより簡易な構造で実現できる。
(6)上記形態の電池パックにおいて、前記負極と、前記負極バスバーとは、前記軸方向において、溶接によって電気的接続されていてもよい。この形態によれば、負極と負極バスバーとの接続をより簡易な構造で実現できる。
(7)上記(1)~(5)までのいずれかの形態の電池パックにおいて、前記負極と、前記負極バスバーとは、前記軸方向において、ワイヤーボンディングによって電気的に接続されていてもよい。この形態によれば、負極と負極バスバーとの接続をより簡易な構造で実現できる。
【0007】
本開示は、電池パック以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、電池パックの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態としての電池パックを分解して示す斜視図である。
【
図2】バスバーモジュールを分解して示す斜視図である。
【
図4】
図3のA-A線に沿った断面のうち、3つの電池のうちの1つの電池の近傍領域を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態としての電池パックを分解して示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態のバスバーモジュールを分解して示す斜視図である。
【
図7】
図5に示すバスバーモジュールの平面図である。
【
図8】
図7のG-G線に沿った断面のうち、3つの電池のうちの1つの電池の近傍領域を示す断面図に、押付板部および押付荷重調整部材を付加した断面図である。
【
図9】押付板部に取り付けられている押付荷重調整部材を説明するための模式図である。
【
図10】第3実施形態の電池パックを説明するための断面図である。
【
図11】第3実施形態の電池パックにおいて、押付板部に取り付けられている押付荷重調整部材を説明するための模式図である。
【
図12】第4実施形態の電池パックを説明するための断面図である。
【
図13】第5実施形態の電池パックを説明するための断面図である。
【
図14】他の実施形態(F2)の電池パックにおいて、押付板部に取り付けられている押付荷重調整部材を説明するための模式図である。
【
図15】他の実施形態(F3)の電池パックにおいて、押付板部に取り付けられている押付荷重調整部材を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.電池パックの概略構成:
図1は、本開示の一実施形態としての電池パック100を分解して示す斜視図である。
図1に示すように、電池パック100は、電池列群20と、バスバーモジュール10と、絶縁部材30と、ロアケース40と、アッパーケース50と、ボルトVt1~Vt4を備える。電池パック100は、バスバーモジュール10によって並列および直接に接続された複数の電池Btから、図示しない外部端子へ給電する。電池Btは、円筒形の汎用の電池であり、例えば、自動車用電源用として使用されているリチウムイオン電池を適用することができる。
【0010】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸方向は、電池の列方向とも呼ぶ。Y軸方向は、列方向と直交する方向である。Z軸方向は、電池の側面と平行な方向であり、これを電池の軸方向とも呼ぶ。
【0011】
電池列群20は、軸方向を揃えて配置されている複数の電池Btの組み合わせである。
図1に示すように、電池列群20は、X方向に複数の電池Btが配列されている。ここで、図示しているように、電池列群20は、電池列が3列、配置されているとする。なお、電池列群20の電池列の数は、本実施形態の作用効果を損なわない限り、3列に限定されない。各々の電池Btは、円筒形状の電池であり、その軸方向の一端部に正極Btpが形成されている。正極Btpは、電池Btの一端部の中心部において突出して設けられている。本実施形態では、正極Btpが形成されている電池Btの一端部において、その外周縁部には、負極Btnも形成されている。より具体的には、正極Btpが形成されている一端部とは反対の他端部の全体と、かかる他端部から電池Btの側面全体と、一端部の外周縁部とを連続して覆うように負極が形成されている。なお、電池Btの側面における負極は、樹脂等の絶縁性を有する部材により被覆されている。図示されている各々の電池Btの向きは、電池列群20において全て同じである。本実施形態では、複数の電池Btは、互いに並列接続された2つの電池Btから成る複数の電池セットが直列接続された構成を有する。各電池セットは、列方向(X軸方向)に並ぶ2つの電池Btからなる。
図1では、2つの電池セットBtAおよびBtBが例示されている。
【0012】
図1に示すように、バスバーモジュール10は、複数の電池Btに対して軸方向に重ねて配置されている。バスバーモジュール10は、上述した電池セット内における2つの電池Bt同士の電気的接続(並列接続)を実現すると共に、複数の電池セットの電気的接続(直列接続)を実現する。
図2は、バスバーモジュール10を分解して示す斜視図である。
図2に示すように、バスバーモジュール10は、バスバー11と、絶縁体12を備える。バスバー11は、金属製の薄板で形成されている。バスバーモジュール10は、バスバー11を、インサート成形や後接着、後溶着、もしくは爪嵌合等により樹脂材料からなる絶縁体12に埋設することにより構成されている。なお、
図2において、図示の便宜上、バスバー11を絶縁体12の上側に示しているが、例えば、インサート成形によって、バスバーモジュール10が形成されると、バスバーモジュール10における領域の位置によって、バスバー11と絶縁体12の軸方向の上下の位置関係は異なる。
【0013】
図3は、
図2に示すバスバー11の平面図である。バスバー11は、多数の正極バスバーPBと多数の負極バスバーNBとから成る。正極バスバーPBおよび負極バスバーNBは、いずれも金属製の薄板をプレス加工して作製される。バスバー11(正極バスバーPBおよび負極バスバーNB)の厚さは、0.2~1.2mm(ミリメートル)である。なお、バスバー11の厚さは、0.2~1.2mmに限らず、本実施形態の効果を奏する厚さであれば、任意の厚さであってもよい。
【0014】
正極バスバーPBは、電池セットを構成する2本の電池Btの正極Btp同士を並列に接続する。正極バスバーPBには、2つの電池Btの正極端子が挿入される2つの開口が形成されている。そして、正極バスバーPBは、かかる2つの開口の周りをそれぞれ囲む部分と、2つの開口間を接続する部分と、隣接する電池セットの負極バスバーNBに接触するための突出した部分とを備える。本実施形態において「突出した部分」は、X-Y平面と平行に突出している。
【0015】
負極バスバーNBは、電池セットを構成する2本の電池Btの負極Btn同士を並列に接続する。負極バスバーNBは、上述の2つの開口の周りをそれぞれ囲む部分の正極バスバーPBに対して、軸方向、および、軸方向に直交する直交方向(以下、単に「直交方向」と呼ぶ)に間隔を空けて、かかる部分の正極バスバーPBを囲む部分を備える。なお、後述する総合負極電極TN1を構成する負極バスバーNBは、正極バスバーPBと同様に、突出した部分を備えている。負極バスバーNBのかかる「突出した部分」は、正極バスバーPBと同様に、X-Y平面と平行に突出している。
【0016】
隣接する2つの電池セットのうちの一方の電池セットの正極バスバーPBと、他方の電池セットの負極バスバーNBとが接触して配置されることにより、これら2つの電池セットは直列接続される。このようにして直列接続されたすべての電池セットのうち、
図3において最も右側に位置することとなる直列接続の端部の2つの電池セットには、総合電極が設けられている。具体的には、一方の端部の電池セットの正極バスバーPBには、総合正極電極TP1が設けられ、他方の端部の電池セットの負極バスバーNBには、総合負極電極TN1が設けられている。総合正極電極TP1および総合負極電極TN1は、電池パック100の電気出力を取り出すための端子として機能する。
【0017】
図2に示す絶縁体12は、正極バスバーPBおよび負極バスバーNBを樹脂材料で埋設することにより、複数のバスバーの間の電気絶縁性を確保している。絶縁体12の樹脂材料として、ポリエステル系樹脂やポリエステル系エラストマー、例えば、ポリブチレンテレフタレート[PBT]、PBTベースのポリエステルエラストマーなどを用いることができる。
【0018】
図4は、
図3のA-A線に沿った断面のうち、3つの電池Btc1~Btc3のうちの1つの電池Btc2の近傍領域R1を示す断面図である。なお、
図3においては、説明および図示の便宜上、絶縁体を省略しているが、
図4の断面図においては、絶縁体Juを示している。正極バスバーPBは、電池セットを構成する2つの電池Btの正極Btpと電気的に接続される。また、負極バスバーNBは、複数の電池Btの負極N1と電気的に接続される。
図2に示す絶縁体12は、正極バスバーPBと負極バスバーNBとの間に介在する。
【0019】
図1に示す絶縁部材30は、絶縁性材料からなる薄板状の部材であり、隣り合う電池セットの境界部分に配置されて絶縁壁として機能する。このため、電池列群20は、絶縁部材30により各電池セットに仕切られている。
図1に示すように、ロアケース40は、バスバーモジュール10と絶縁部材30が組み付けられた電池列群20を+Z方向の底部で保持する。また、アッパーケース50は、バスバーモジュール10と絶縁部材30が組み付けられた電池列群20を-Z方向から覆う。ボルトVt1~Vt4は、ロアケース40に設けられた4つの孔に取り付けられて、ロアケース40をアッパーケース50に固定する。
【0020】
図4に示すように、正極バスバーPBは、正極Btpに対して軸方向ADに直交する直交方向CDに接触する位置に配置されている。なお、直交方向は、平面視した電池Btの外縁からなる円の径方向ともいえる。正極バスバーPBと電池Btc2との軸方向の間には、絶縁体Juが配置されている。
図4に示すように、絶縁体Juは、軸方向に正極バスバーPBに接触する第1接触部Rc1を有している。バスバーモジュール10は、正極バスバーPBと絶縁体Juとが軸方向に重なる第1の二層構造部21Sを有している。正極Btpにおいて、正極バスバーPBと接する面は傾斜面を成している。かかる傾斜面と、正極Btpの軸方向の端面とは、
図4に示すように、鈍角を成している。
【0021】
正極バスバーPBと負極バスバーNBとは、軸方向に互いにオーバーラップしないように、直交方向に予め定められた間隔dwを空けて配置されている。本実施形態において、直交方向に予め定められた間隔dwは、2mmである。なお、かかる予め定められた間隔dwは2mmに限らず、本実施形態の作用効果を奏する間隔であれば、任意の間隔であってもよい。かかる予め定められた間隔dwにおいて、軸方向ADに絶縁体Juが配置されている。かかる絶縁体Juは、直交方向に正極バスバーPBと接触する第2接触部Rc2と、直交方向に負極バスバーNBと接触する第3接触部Rc3を有する。バスバーモジュール10は、上述した第1の二層構造部21Sに対して直交方向に隣接して軸方向に絶縁体Juのみ配置された第1の一層構造部11Sを有する。
【0022】
図4に示すように、負極バスバーNBは、負極N1に対して軸方向に接触する位置に配置されている。本実施形態において、負極バスバーNBの軸方向の厚みは、0.8mmである。負極バスバーNBは、負極N1に対向する面とは反対側の面の一部に、絶縁体Juと接する。本実施形態において、かかる絶縁体Juの軸方向の厚みは0.2mmである。かかる絶縁体Juは、軸方向に負極バスバーNBに接触する第4接触部Rc4を有する。バスバーモジュール10は、かかる絶縁体Juと負極バスバーNBとが軸方向に重なる第2の二層構造部22Sを有する。かかる第2の二層構造部22Sは、上述した第1の一層構造部11Sに対して直交方向CDに隣接している。また、バスバーモジュール10は、上述した第2の二層構造部22Sに対して直交方向に隣接して軸方向に負極バスバーNBのみ配置された第2の一層構造部12Sを有する。なお、負極バスバーNBの軸方向の厚みと、負極バスバーNBと軸方向に接する絶縁体Juの軸方向の厚みは、それぞれ、0.8mm、0.2mmに限らず、本実施形態の作用効果を奏すれば、任意の厚みであってもよい。
【0023】
正極バスバーPBと負極バスバーNBとは、軸方向にオーバーラップしていないので、バスバーモジュール10の軸方向の厚みの増大が抑制され、電池パック100の大型化が抑制される。なお、負極バスバーNBのうち、負極N1と対抗する面とは反対側の面の一部は絶縁体Juと接している。他方、かかる面におけるその他の部分は、上述した第2の一層構造部12Sにおける負極バスバーNBの端面に相当し、剥き出し状態である。このため、電池の熱の放熱面積が増大し、放熱性能が向上する。
【0024】
図4に示すように、正極Btpと正極バスバーPBとは、配線WBを用いて、ワイヤーボンディングにより接続されている。これにより、正極Btpと正極バスバーPBとの強固な電気的接続を簡易な方法で実現できる。
【0025】
以上説明した第1実施形態の電池パック100によれば、正極バスバーPBと負極バスバーNBとは、直交方向CDに予め定められた間隔dwを空けて配置され、正極バスバーPBと負極バスバーNBとは、軸方向ADに接する絶縁体Juを有する。正極バスバーPBと負極バスバーNBとは、軸方向ADにオーバーラップしていないので、バスバーモジュール10の軸方向ADの厚みの増大を抑制でき、電池パック100の大型化を抑制できる。
【0026】
また、正極バスバーPBは、正極Btpと直交方向CDに接する位置に配置され、電池Btとの間に軸方向ADに接する絶縁体Juを有しているので、正極バスバーPBと負極N1との短絡を防止できる。
【0027】
また、負極バスバーNBは、負極N1と軸方向ADに接する位置に配置され、負極N1に対抗する面とは反対側の面の一部に、軸方向ADに接する絶縁体Juを有している。このため、正極バスバーPBと負極バスバーNBとの短絡をより防止できる。また、負極バスバーNBのうち、負極N1と対抗する面とは反対側の面の一部は絶縁体Juと接しているが、かかる面におけるその他の部分は、剥き出し状態である。このため、電池の熱を放熱する面積が増大し、放熱性能が向上する。
【0028】
また、正極Btpと、正極バスバーPBとは、ワイヤーボンディングによる配線WBを介して接続されている。このため、正極P1と正極バスバーPBとの強固な電気的接続を簡易な方法で実現できる。
【0029】
B.第2実施形態:
B1.電池パックの概略構成:
図5は、第2実施形態としての電池パック100Aを分解して示す斜視図である。
図5に示すように、第2実施形態の電池パック100Aは、押付板部Ueと、押付荷重調整部材Puと、バスバーモジュール10に代えてバスバーモジュール10Aとを備える点で、第1実施形態の電池パック100と異なる。これ以外の第2実施形態の電池パック100Aの構成は、第1実施形態の電池パック100の構成と同一であるので、同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
押付板部Ueは、バスバーモジュール10Aを電池列群20に押圧する役割を担う。
図5に示すように、押付板部Ueは、直方体形状の金属製の薄板で形成されている。かかる金属は、例えばアルミニウムである。なお、押付板部Ueは、本実施形態の作用効果を奏するならば、アルミニウムに限らず、他の金属で形成されていてもよい。押付板部Ueの四隅には、4つの孔が設けられている。かかる4つの孔に、ボルトVt5~Vt8が取り付けられ、押付板部Ueがアッパーケース50に取り付けられる。なお、押付板部Ueは、本実施形態の作用効果を奏するならば、樹脂で形成されていてもよい。
【0031】
押付荷重調整部材Puは、バスバーモジュール10Aを電池列群20に押圧する荷重を調整する。押付荷重調整部材Puは、押付板部Ueにおけるバスバーモジュール10Aと対向する面に取り付けられている。
図9は、押付板部Ueに取り付けられている押付荷重調整部材Puを説明するための模式図である。押付荷重調整部材Puは、弾性体から成り、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴムで形成されている。押付荷重調整部材Puは弾性体なので、電池Btの高さのバラツキやバスバー11の厚みのバラツキがあっても、かかるバラツキを吸収して、各バスバーモジュール10を適切な力で電池Btに押しつけることができる。なお、押付荷重調整部材Puは、EPDM等のゴムに限らず、ポリプロピレンとEPDMとを組み合わせた熱可塑性エラストマーなどであってもよいし、本実施形態の作用効果を奏するならば、他の任意の種類の材料の弾性体で形成されていてもよい。
図9に示すように、押付荷重調整部材Puは、押付板部Ueのうちアッパーケース50に取り付けられる端面に形成された穴Uhに圧入されている。
【0032】
図6は、第2実施形態のバスバーモジュール10Aを分解して示す斜視図である。
図6に示すように、バスバーモジュール10Aは、バスバー11と、絶縁体12Aを備える。
図7は、
図5に示すバスバーモジュール10Aの平面図である。
図7においては、負極バスバーNBは、絶縁体12Aによって覆われているので、図示されていない。
【0033】
図8は、
図7のG-G線に沿った断面のうち、3つの電池Btc1A~Btc3Aのうちの1つの電池Btc2Aの近傍領域R2を示す断面図に、押付板部Ueおよび押付荷重調整部材Puを付加した断面図である。まず、バスバーモジュール10Aのバスバーモジュール10に対する相違点を説明する。バスバーモジュール10Aは、
図8に示すように、負極バスバーNBのうちの負極N1に対向する面とは反対側の面の全部において絶縁体Juと接する点と、正極Btpと正極バスバーPBには、ワイヤーボンディングによる接続のための配線WBが設けられていない点で、バスバーモジュール10と異なる。バスバーモジュール10Aは、第2の二層構造部22Sに代えて、絶縁体Juと負極バスバーNBとが軸方向に重なる第3の二層構造部23Sを有する。バスバーモジュール10Aは、負極バスバーNBの端面全体に亘って接する絶縁体Juを有している。第3の二層構造部23Sは、第1の一層構造部11Sに対して直交方向CDに隣接している。第2実施形態の電池パック100Aでは、第2の二層構造部22Sに代えて、負極バスバーNBの端面全体に亘って絶縁体Juと接する第3の二層構造部23Sを有するので、絶縁性が向上する。なお、負極バスバーNBと負極N1とは、軸方向ADにおいて、溶接または、ワイヤーボンディングによって電気的接続がされていてもよい。
【0034】
また、上述したように、電池パック100Aは、押付板部Ueおよび多数の押付荷重調整部材Puを備えている点で、電池パック100と異なる。
図8に示すように、押付板部Ueは、バスバーモジュール10Aに対して軸方向ADに離れて配置されている。なお、
図8では、各押付荷重調整部材Puが、押付板部Ueに設けられた穴に圧入されている点は省略されている。また、
図8と
図9の押付荷重調整部材Puは同じであるが、
図8の方が、台形形状を180度反転させた形状がより強調して示されている。本実施形態では、
図8および
図9に示すように、かかる略台形形状によって、押付荷重調整部材Puのうち、バスバーモジュール10A側接地部の接触面積を小さくし、押付圧力を付加する局部箇所への圧力値を増大させている。
【0035】
以上説明した第2実施形態の電池パック100Aによれば、第1実施形態の電池パック100と同様の効果を有する。また、第2実施形態の電池パック100Aにおいては、負極N1に対抗する面とは反対側の面の全部に、軸方向に接する絶縁体Juを有しているので、正極バスバーPBと負極バスバーNBとの短絡防止を強化できる。
【0036】
また、第2実施形態の電池パック100Aは、押付板部Ueおよび押付荷重調整部材Puを備えるので、バスバーモジュール10Aを電池Btへ押圧できる。このため、ワイヤーボンディングによる電気接続加工が不要となり、第1実施形態の電池パック100よりも生産効率を向上できる。
【0037】
C.第3実施形態:
C1.電池パックの概略構成:
図10は、第3実施形態の電池パック100Bを説明するための断面図である。
図11は、第3実施形態の電池パック100Bにおいて、押付板部Ueに取り付けられている押付荷重調整部材PuBを説明するための模式図である。第3実施形態の電池パック100Bにおいて、第2実施形態の電池パック100Aと異なる点は、
図10および
図11に示すように、多数の押付荷重調整部材PuB同士が直交方向CDに繋がっている点と、正極バスバーPBは、正極Btpの端面と軸方向に接する位置にさらに配置されている点である。これ以外の第3実施形態の電池パック100Bの構成は、第2実施形態の電池パック100Aの構成と同一であるので、同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。第3実施形態の電池パック100Bは、第2実施形態の電池パック100Aと同様の効果を有する。
【0038】
さらに、第3実施形態の電池パック100Bは、第2実施形態の電池パック100Aの押付荷重調整部材Puに加えて、多数の押付荷重調整部材PuB同士の間が樹脂材料で互いに接合されている。このため、多数の押付荷重調整部材PuBの押付板部Ueへの組み付けが容易となる。また、押付荷重調整部材PuBと押付板部Ueとの接触面積が拡大して、両者の接合強度が向上する。また、正極バスバーPBと正極Btpとは、ワイヤーボンディングによる配線WBを介しての接合に代えて、溶接によって接合できる。このため、正極バスバーPBと正極Btpとの接続をより簡易な構造で実現できる。なお、
図10における押付荷重調整部材PuBのうち、正極バスバーPBを押圧する領域は、正極Btpと軸方向にオーバーラップする領域であってもよい。こうすることにより、押付板部Ueは、正極バスバーPBのうち、正極Btpと軸方向に対向している部分を押しつけているので、正極バスバーPBと正極Btpとをより強固に接触できる。
【0039】
D.第4実施形態:
D1.電池パックの概略構成:
図12は、第4実施形態の電池パック100Eを説明するための断面図である。
図12に示すように、第4実施形態の電池パック100Eは、導電性弾性部材CM1を備える点で、
図8に示す第2実施形態の電池パック100Aと異なる。これ以外の第4実施形態の電池パック100Eの構成は、第2実施形態の電池パック100Aの構成と同一であるので、同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
導電性弾性部材CM1は、
図1および
図5に示す電池列群20における電池Btの位置や寸法のバラツキを吸収する役割を担う。
図12に示すように、導電性弾性部材CM1は、断面視において、L字の一方の直線部を正極Btp側へ屈曲させた形状で形成されている。導電性弾性部材CM1は、金属製の多孔質弾性部材で形成されている。かかる金属は、例えば、アルミニウムである。なお、導電性弾性部材CM1は、本実施形態の作用効果を奏するならば、アルミニウムに限らず、他の任意の導電性弾性部材で形成されていてもよい。また、導電性弾性部材CM1は、正極バスバーPBよりも圧縮率の大きな部材である。本実施形態において、導電性弾性部材CM1の圧縮率は50%以上である。なお、導電性弾性部材CM1の圧縮率は、本実施形態の作用効果を奏するならば、50%以上に限らず、任意の圧縮率であってもよい。また、導電性弾性部材CM1の形状は、断面視において、L字の一方の直線部を正極Btp側へ屈曲させた形状に限らず、L字形状であってもよいし、本実施形態の作用効果を奏するならば、任意の形状であってもよい。また、導電性弾性部材CM1は、弾性および導電性を有し、正極バスバーPBよりも圧縮率が大きければ、多孔質で形成されていなくてもよい。
【0041】
図12に示すように、導電性弾性部材CM1は、正極Btpとバスバーモジュール10Eとの直交方向CDにおける間に配置されている。導電性弾性部材CM1は、直交方向CDに正極Btpに接触する第5接触部Rc5を有する。また、導電性弾性部材CM1は、直交方向CDに正極バスバーPBと接触する第6接触部Rc6を有する。導電性弾性部材CM1は、絶縁体Juと直交方向CDに接触している。また、導電性弾性部材CM1は、軸方向ADに電池Btc2Aと接触する第7接触部Rc7を有している。さらに導電性弾性部材CM1は、軸方向ADに正極バスバーPBと接触する第8接触部Rc8を有している。
図12に示すように、絶縁体Juのうち、直交方向CDの正極Btp側の端部は、負極N1側に退いている。かかる退いた領域は、第7接触部Rc7と第8接触部Rc8で挟まれる領域である。また、導電性弾性部材CM1の軸方向ADの端部は、バスバーモジュール10Eの軸方向ADの端面から飛び出ていない。導電性弾性部材CM1の軸方向ADの高さと、バスバーモジュール10Eの軸方向ADの高さは同じである。正極バスバーPBと、絶縁体Juと、導電性弾性部材CM1とにおいて、軸方向ADに3層となる領域は存在しない。このため、導電性弾性部材CM1が配置されても、電池パック100Eの軸方向ADの厚みは、第2実施形態の電池パック100Aと変わらず、電池パック100Eの大型化を抑制できる。
【0042】
また、電池Bt間の位置および寸法のバラツキが存在しても、正極バスバーPBと正極Btpとの直交方向CDの間に介在する弾性を有する導電性弾性部材CM1が、正極Btp側の形状に追従して変形するので、かかるバラツキが吸収される。言い換えると、導電性弾性部材CM1がスポンジやクッションのような機能を果たす。このため、電池Btの位置や寸法のバラツキが吸収されて導電性の低下が抑制される。
【0043】
さらに、第4実施形態の電池パック100Eにおいては、導電性弾性部材CM1は、軸方向ADに電池Btc2Aと接触する第7接触部と、軸方向ADに正極バスバーPBと接触する第8接触部と、をさらに有するので、導電性弾性部材CM1と正極バスバーPBとの接触断面積を大きくして、導電性を向上できる。また、導電性弾性部材CM1は、第7接触部Rc7と第8接触部Rc8に挟まれた形状を有するので形状として座りが良く、製造の観点からも造りやすい。
【0044】
第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1の厚み、導電性弾性部材CM1の多孔質材質、多孔質繊維径、多孔質比率、正極バスバーPBと正極Btpの間の距離等を用いた最適化が図られることによって、電池Bt間の位置および寸法のバラツキがより吸収される。正極バスバーPBおよび負極バスバーNBが絶縁体Juと一体化される樹脂成形の過程で、同時に導電性弾性部材CM1は、インサート成形によってバスバーモジュール10Eと一体化される。かかるインサート成形においては、絶縁体Juの溶融樹脂が導電性弾性部材CM1の孔に入り込み、アンカー効果で一体化する。かかる一体化によって、外部から電池パック100Eに対して振動などの荷重が加わった際等に、正極バスバーPBと導電性弾性部材CM1との位置ズレ防止が可能となる。
【0045】
また、導電性弾性部材CM1と正極バスバーPBとの間、および、負極バスバーNBと負極N1との間は、導電性接着剤でコーティングされる。これにより、接触抵抗が抑制され、導電性弾性部材CM1の外面やバスバー接触面における酸化被膜の形成が防止される。このため、長期にわたって電気抵抗不変で安定的な電流が流れることが可能となる。
【0046】
以上説明した第4実施形態の電池パック100Eによれば、第2実施形態の電池パック100Aと同様の効果を有する。また、第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1は、正極Btpとバスバーモジュール10Eとの直交方向CDにおける間に配置されている。また、導電性弾性部材CM1は、直交方向CDに正極Btpに接触する第5接触部と、直交方向CDに前記正極バスバーと接触する第6接触部と、を有する。電池Bt間の位置および寸法のバラツキが存在しても、正極バスバーPBと正極Btpとの直交方向CDの間に介在する導電性弾性部材CM1によって、正極Btp側の形状に追従して、かかるバラツキが吸収される。言い換えると、導電性弾性部材CM1がスポンジやクッションのような機能を果たす。このため、電池Btの位置や寸法のバラツキが吸収されて導電性の低下が抑制される。
【0047】
また、第4実施形態の電池パック100Eにおいては、導電性弾性部材CM1は、絶縁体Juと直交方向CDに接触し、軸方向ADに電池Btc2Aと接触する第7接触部と、軸方向ADに正極バスバーPBと接触する第8接触部と、をさらに有する。このため、導電性弾性部材CM1と正極バスバーPBとの接触断面積を大きくして、導電性をさらに向上できる。また、かかる導電性弾性部材CM1は、形状として座りが良く、製造の観点からも造りやすい。
【0048】
E.第5実施形態:
E1.電池パックの概略構成:
図13は、第5実施形態の電池パック100Fを説明するための断面図である。
図13に示すように、第5実施形態の電池パック100Fは、導電性弾性部材CM2を備える点で、第3実施形態の電池パック100Bと異なる。これ以外の第5実施形態の電池パック100Fの構成は、第3実施形態の電池パック100Bの構成と同一であるので、同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図13に示すように、導電性弾性部材CM2は、正極Btpに対して、軸方向ADに接触する第9接触部Rc9を有している。導電性弾性部材CM2は、軸方向において正極バスバーPBと正極Btpに挟まれているが、薄い円盤状の外観形状を有する。正極バスバーPBは、正極Btpに対して直交方向CDに接触している。また、正極バスバーPBは、導電性弾性部材CM2に対して軸方向ADおよび直交方向CDに接触している。上述したように、導電性弾性部材CM2は、正極Btpに対して、軸方向ADに接触する第9接触部Rc9を有しているので、電池Btc2Aの位置や寸法のバラツキが存在しても、導電性弾性部材CM2によって軸方向ADのバラツキが吸収されて導電性の低下が抑制される。また、正極バスバーPBのうち、正極Btpと軸方向ADに対向する領域は、第3実施形態の電池パック100Bよりも軸方向ADに薄くなっている。この薄くなったことにより生じた隙間領域に導電性弾性部材CM2が配置されているので、バスバーモジュール10Fの軸方向ADの高さは、第3実施形態におけるバスバーモジュール10Bの軸方向ADの高さと同じである。このため、導電性弾性部材CM2が正極Btpの軸方向に配置されても、バスバーモジュール10Fの厚みは、第3実施形態のバスバーモジュール10Bと変わらず、電池パック100Fの大型化が抑制される。
【0050】
さらに、正極バスバーPBの軸方向ADの端面のうち、導電性弾性部材CM2および正極Btpと対向する領域に対して、押付板部Ueが正極バスバーPBと導電性弾性部材CM2を正極Btpへ押し当てるので、上述の軸方向ADのバラツキが吸収されるとともに、正極バスバーPBと正極Btpとの導電性がさらに向上される。
【0051】
以上説明した第5実施形態の電池パック100Fによれば、第3実施形態の電池パック100Bと同様の効果を有する。また、第5実施形態の電池パック100Fにおいては、導電性弾性部材CM2は、正極Btpに対して、軸方向ADに接触する第9接触部Rc9を有している。また、正極バスバーPBは、正極Btpに対して直交方向CDに接触し、導電性弾性部材CM2に対して軸方向ADおよび直交方向CDに接触している。上述したように、導電性弾性部材CM2は、正極Btpに対して、軸方向ADに接触する第9接触部Rc9を有するので、電池Btc2Aの位置や寸法のバラツキが存在しても、導電性弾性部材CM2によって軸方向ADのバラツキが吸収されて導電性の低下が抑制される。また、導電性弾性部材CM2が正極Btpの軸方向に配置されても、かかる配置領域において、正極バスバーPBが軸方向ADに薄くなっているので、バスバーモジュール10Fの厚みは、第3実施形態のバスバーモジュール10Bの厚みと変わらない。このため、電池パック100Fの大型化が抑制される。
【0052】
F.他の実施形態:
(F1)上記実施形態において、負極バスバーNBは、軸方向に接する絶縁体Juを有していたが、本開示はこれに限定されない。負極バスバーNBは、軸方向に接する絶縁体Juを有していていなくてもよい。言い換えると、バスバーモジュール10は、絶縁体Juと負極バスバーとが軸方向に隣接する第2の二層構造部22Sまたは第3の二層構造部23Sを有していなくてもよい。すなわち、負極バスバーNBは直交方向の全体に亘って一層構造であってもよい。
【0053】
(F2)
図14は、他の実施形態(F2)の電池パック100Cにおいて、押付板部Ue2に取り付けられている押付荷重調整部材Puを説明するための模式図である。他の実施形態(F2)の電池パック100Cにおいて押付板部Ue2は、二層構造になっている点において、第3実施形態の電池パック100Bと異なる。
図14に示すように、押付板部Ue2は、軸方向において、第一層Ue1と第二層UeAの二層構造になっている。第一層Ue1は、アルミニウムの板で形成されている。なお、第一層Ue1は、本実施形態の作用効果を奏するならば、アルミニウムに限らず、他の任意の種類の金属板で形成されていてもよい。第二層UeAは、ガラス繊維入りPBT(ポリブチレンテレフタレート)の板で形成されている。なお、第二層UeAは、本実施形態の作用効果を奏するならば、ガラス繊維入りPBTに限らず、他の任意の種類の樹脂板で形成されていてもよい。第一層Ue1と第二層UeAとは、インサート成形によって一体化している。多数の押付荷重調整部材Puは、第二層UeAに設けられた穴に圧入されている。
図14に示すように、多数の押付荷重調整部材Puは、互いに独立している。第2実施形態の電池パック100Aと同様に、押付荷重調整部材Puは、弾性体から成り、例えばEPDM等のゴムで形成されている。なお、押付荷重調整部材Puは、EPDM等のゴムに限らず、本実施形態の作用効果を奏するならば、他の任意の種類の材料の弾性体で形成されていてもよい。第一層Ue1は、金属板で形成されているので剛性が確保され、第二層UeAは、樹脂板で形成されているので絶縁性が確保される。また、第二層UeAと押付荷重調整部材Puは共に樹脂で形成されているので、馴染みが良く、材料の相違による変形が抑制される。
【0054】
(F3)
図15は、他の実施形態(F3)の電池パック100Dにおいて、押付板部Ue2に取り付けられている押付荷重調整部材PuBを説明するための模式図である。他の実施形態(F3)の電池パック100Dにおいて、多数の押付荷重調整部材PuBが互いに繋がっている点で、他の実施形態(F2)の電池パック100Cと異なる。他の実施形態(F3)の電池パック100Dにおいて、他の実施形態(F2)の電池パック100Cと同様の効果を奏する。これに加えて、
図15に示すように、電池パック100Dの多数の押付荷重調整部材PuBが互いに繋がっている。かかる互いに繋がっている領域において、押付荷重調整部材PuBと、第二層UeAの端面とが、軸方向に接している。このため、押付荷重調整部材PuBと押付板部Ue2との直交方向CDでの接触面積が拡大して、両者の接合強度が向上する。
【0055】
(F4)上記実施形態において、押付荷重調整部材Pu,PuBは、押付板部Ue,Ue2に圧入されていたが、押付荷重調整部材Pu,PuBと押付板部Ue,Ue2は、インサート成形により形成されていてもよい。
【0056】
(F5)上記第4および第5実施形態において、導電性弾性部材CM1,CM2は、正極バスバーPBと接する位置のみに配置されていたが、本開示はこれに限られない。正極バスバーPBと接する位置に配置されいている導電性弾性部材CM1,CM2のみでは、電池Btの位置や寸法のバラツキの吸収が不十分の場合には、負極バスバーNBと接する位置にも導電性弾性部材が配置されていてもよい。言い換えると、導電性弾性部材CM1CM2は、正極バスバーPBに接する位置に加えて、負極バスバーNBに接する位置にも配置されていてもよい。また、導電性弾性部材CM1,CM2は、負極バスバーNBと接する位置のみに配置されていてもよい。
【0057】
(F6)上記第4実施形態の電池パック100Eにおいて、押付板部Ueと押付荷重調整部材Puが備えられていたが、無くてもよい。正極Btpと正極バスバーPBとは、配線を用いて、ワイヤーボンディングにより接続されていてもよい。
【0058】
(F7)上記第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1は、第5接触部Rc5と、第6接触部Rc6と、第7接触部Rc7と、第8接触部Rc8を有していたが、第7接触部Rc7と、第8接触部Rc8を有していなくてもよい。言い換えると、導電性弾性部材CM1のうち、正極バスバーPBと直交方向CDに平行な部分は無くてもよい。
【0059】
(F8)上記第5実施形態の電池パック100Fにおいて、正極Btpの軸方向ADに接する導電性弾性部材CM2のみが配置されていたが、
図12に示す導電性弾性部材CM1がさらに配置されていてもよい。言い換えると、導電性弾性部材は、第5接触部Rc5と、第6接触部Rc6と、第7接触部Rc7と、第8接触部Rc8と、第9接触部Rc9とを有していてもよい。また、導電性弾性部材は、第5接触部Rc5と、第6接触部Rc6と、第9接触部Rc9とを有していてもよい。
【0060】
(F9)上記第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1は、バスバーモジュール10Eとインサート成形により一体化していたが、インサート成形に限らず、溶接など他の任意の手法によって一体化していてもよい。
【0061】
(F10)上記第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1は、金属製の多孔質弾性部材で形成されていたが、これに限らず、導電性フィラーを含有する多孔質の樹脂材料により形成されていてもよい。
【0062】
(F11)上記第4実施形態の電池パック100Eにおいて、導電性弾性部材CM1は、正極バスバーPBよりも圧縮率の大きな部材であったが、本開示はこれに限定されない。導電性弾性部材CM1は、負極バスバーNBよりも圧縮率の大きな部材であってもよい。また、導電性弾性部材CM1は、正極バスバーPBおよび負極バスバーNBよりも圧縮率の大きな部材であってもよい。言い換えると、導電性弾性部材CM1は、少なくとも一方のバスバーよりも圧縮率の大きな部材であればよい。
【0063】
本開示は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
10,10A,10B,10E,10F…バスバーモジュール、11…バスバー、11S…第1の一層構造部、12,12A,Ju…絶縁体、12S…第2の一層構造部、20…電池列群、21S…第1の二層構造部、22S…第2の二層構造部、23S…第3の二層構造部、30…絶縁部材、40…ロアケース、50…アッパーケース、100,100A,100B,100C,100D,100E,100F…電池パック、AD…軸方向、Bt,Btc1,Btc1A,Btc2,Btc2A…電池、BtA…電池セット、Btn…負極、Btp、P1…正極、CD…直交方向、CM1,CM2…導電性弾性部材、N1…負極、NB…負極バスバー、PB…正極バスバー、Pu,PuB…押付荷重調整部材、R1,R2…近傍領域、Rc1…第1接触部、Rc2…第2接触部、Rc3…第3接触部、Rc4…第4接触部、Rc5…第5接触部、Rc6…第6接触部、Rc7…第7接触部、Rc8…第8接触部、Rc9…第9接触部、TN1…総合負極電極、TP1…総合正極電極、Ue, Ue2…押付板部、Ue1…第一層、UeA…第二層、Uh…穴、Vt1,Vt2,Vt3,Vt4,Vt5,Vt6,Vt7,Vt8…ボルト、WB…配線、dw…間隔