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特許7559726電池用セパレータの評価方法、評価システム、電池用セパレータの製造方法、電極ユニットの製造方法、および電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電池用セパレータの評価方法、評価システム、電池用セパレータの製造方法、電極ユニットの製造方法、および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/40 20210101AFI20240925BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240925BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240925BHJP
   G01N 3/40 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M50/40
H01M50/403 Z
H01M10/04 Z
G01N3/40 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021155447
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046709
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松延 広平
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-243929(JP,A)
【文献】特開2020-136074(JP,A)
【文献】特開2013-247041(JP,A)
【文献】特開2014-003071(JP,A)
【文献】特開平02-304338(JP,A)
【文献】国際公開第2021/080212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
H01M 10/04
H01M 50/403
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セパレータを基材の表面に配置することにより、試験材を準備すること、
(b)前記試験材において、前記基材の反対側から、前記セパレータの厚さ方向に沿って、前記セパレータに突刺し器具を突刺すこと、
(c)前記突刺し器具を前記セパレータに突刺しながら、前記突刺し器具と前記基材との間の電気抵抗を測定すること
(d)前記電気抵抗が所定値まで減少した時に前記突刺し器具に加わる荷重の大きさにより、前記セパレータを評価すること、および
(e)前記電気抵抗が前記所定値まで減少した時の前記突刺し器具の変位量により、前記セパレータを評価すること
を含み、
前記基材および前記突刺し器具は、それぞれ導電性を有する、
電池用セパレータの評価方法。
【請求項2】
前記基材は、電池用電極を含む、
請求項に記載の電池用セパレータの評価方法。
【請求項3】
前記基材は、電池用電極体を含み、
前記電池用電極体は、複数個の前記電池用電極を含む、
請求項に記載の電池用セパレータの評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電池用セパレータの評価方法を実施するための評価システムであって、
ステージ、
駆動装置、
抵抗測定装置、および、
荷重測定装置
を含み、
前記ステージは、前記試験材を積載するように構成されており、
前記駆動装置は、前記ステージに積載された前記試験材に向かって、前記セパレータの前記厚さ方向に沿って、前記突刺し器具を移動させるように構成されており、
前記抵抗測定装置は、前記突刺し器具と前記基材との間の前記電気抵抗を測定するように構成されており、
前記荷重測定装置は、前記突刺し器具に加わる前記荷重を測定するように構成されている、
評価システム。
【請求項5】
変位測定装置をさらに含み、
前記変位測定装置は、前記突刺し器具の変位量を測定するように構成されている、
請求項に記載の評価システム。
【請求項6】
前記ステージは導電性を有し、
前記抵抗測定装置は、前記突刺し器具と前記ステージとの間の電気抵抗を測定するように構成されている、
請求項または請求項に記載の評価システム。
【請求項7】
(A1)セパレータを製造すること、および、
(A2)請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池用セパレータの評価方法により、前記セパレータを評価すること
を含む、
電池用セパレータの製造方法。
【請求項8】
(B1)セパレータを電池用電極の表面に配置することにより、電極ユニットを製造すること、および、
(B2)前記電極ユニットを試験材として、請求項に記載の電池用セパレータの評価方法により、前記セパレータを評価すること
を含む、
電極ユニットの製造方法。
【請求項9】
前記セパレータは、前記電池用電極の前記表面に結合している、
請求項に記載の電極ユニットの製造方法。
【請求項10】
(C1)請求項または請求項に記載の電極ユニットの製造方法により、電極ユニットを製造すること、および、
(C2)前記電極ユニットを含む電池を製造すること
を含む、
電池の製造方法。
【請求項11】
(D1)請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電池用セパレータの評価方法により、セパレータを評価すること、および、
(D2)前記セパレータを含む電池を製造すること
を含む、
電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用セパレータの評価方法、評価システム、電池用セパレータの製造方法、電極ユニットの製造方法、および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-32173号公報(特許文献1)は、突刺し強度測定装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-32173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下、本明細書において「セパレータ」、「電極」および「電極体」は特に断りのない限り、「電池用セパレータ」、「電池用電極」および「電池用電極体」を示す。また「電極」は、「正極」および「負極」の総称として使用され得る。
【0005】
セパレータはフィルム状である。電池内において、セパレータは正極と負極とを電気的に絶縁する。例えば、電池の製造過程において、セパレータと電極との間に異物(金属小片等)が混入することが想定される。電池内において、異物はセパレータに局所的な荷重を印加し得る。セパレータが局所的に変形することにより、絶縁抵抗が減少し、電圧不良等が発生し得る。
【0006】
従来、セパレータの評価方法として、「JIS Z 1707 食品包装用プラスチックフィルム通則」に記載される「突刺し強さ試験」が慣用されている。
【0007】
図1は、突刺し強さ試験の説明図である。
試験片1(フィルム)は穴開きステージ2上に積載される。穴開きステージ2には穴3が開いている。試験片1は穴3の上に配置される。ニードル4の先端は半球面型である。ニードル4は、1.0mmの直径と、0.5mmの先端形状半径とを有する。ニードル4が試験片1に突刺される。試験速度は、50±5mm/minである。ニードル4が試験片1を貫通するまでの最大力が測定される。該最大力(ニードル4に加わる最大の荷重)が、試験片1の突刺し強さ[単位 N]とみなされる。突刺し強さが大きい程、フィルムが局所的な変形に対して強く、破断し難いと考えられる。
【0008】
従来の突刺し強さ試験においては、ニードル4の移動方向(Z軸方向)に、試験片1が伸長し得る。そのため伸長しやすいフィルムは、突刺し強さが大きくなる傾向がある。実際の電池内においては、セパレータが伸長し得るスペースは殆どないと考えられる。したがって突刺し強さは、実際の電池内におけるセパレータの強度を表す指標としては、不適であると考えられる。
【0009】
また、例えばセパレータが電極に結合されることにより、電極ユニットが製造されることもある。例えば、絶縁材料が電極の表面に塗布されることにより、電極に結合したセパレータが形成され得る。電極ユニットに含まれるセパレータの強度評価は困難である。すなわち下地(電極)の強度と、セパレータの強度との切り分けが困難である。電極ユニットに含まれるセパレータにも適用可能な評価方法が求められている。
【0010】
本開示の目的は、電池用セパレータの評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0012】
1.電池用セパレータの評価方法は、下記(a)~(d)を含む。
(a)セパレータを基材の表面に配置することにより、試験材を準備する。
(b)試験材において、基材の反対側から、セパレータの厚さ方向に沿って、セパレータに突刺し器具を突刺す。
(c)突刺し器具をセパレータに突刺しながら、突刺し器具と基材との間の電気抵抗を測定する。
(d)電気抵抗が所定値まで減少した時に突刺し器具に加わる荷重の大きさにより、セパレータを評価する。
基材および突刺し器具は、それぞれ導電性を有する。
【0013】
本開示の試験材においては、セパレータが基材で支持されている。基材は、例えば、電極の模擬材であってもよい。基材は、例えば実際の電極であってもよい。セパレータは、例えば、基材上に単純に載せられてもよい。セパレータは、例えば、基材に接着されてもよい。
【0014】
本開示の評価方法においては、セパレータの背面が基材で支持された状態で、セパレータの正面に突刺し器具が突刺される。すなわち、セパレータが伸長し難い状態で、突刺し器具がセパレータに突刺される。したがって、実際の電池内におけるセパレータの変形挙動が模擬され得ると考えられる。
【0015】
突刺し器具は導電性を有する。突刺し器具は、例えば、金属製のニードル等であってもよい。突刺し器具は、セパレータの厚さ方向に沿って移動する。突刺し器具の移動中、突刺し器具と、基材との間の電気抵抗が監視される。電気抵抗は、セパレータと電極との間に異物が混入した際の絶縁抵抗に対応すると考えられる。突刺し器具の移動に伴って、電気抵抗は減少する。
【0016】
突刺し器具の移動に伴って、突刺し器具に加わる荷重は増大する。本開示においては、電気抵抗が所定値まで減少した時の荷重[単位 N]が測定される。以下、電気抵抗の所定値は「短絡抵抗」とも記される。短絡抵抗における荷重が「短絡荷重」とも記される。短絡抵抗は、例えば、電池内の電極間に要求される絶縁抵抗等を参考として決定され得る。短絡荷重により、例えば、電極間に異物が混入した場合に、セパレータが破断せずに絶縁を維持できるかどうかが評価され得る。短絡荷重は、セパレータの設計開発および製造において、有益な指標になり得ると考えられる。
【0017】
本開示の短絡荷重は、突刺し器具がセパレータを貫通する前に測定され得る。さらに試験材は、セパレータが電極に結合した電極ユニットに対応する。したがって、電極ユニットに含まれるセパレータの強度評価も可能である。
【0018】
2.電池用セパレータの評価方法は、例えば下記(e)をさらに含んでいてもよい。
(e)電気抵抗が所定値まで減少した時の突刺し器具の変位量により、セパレータを評価する。
【0019】
以下、該変位量が「短絡変位量」とも記される。突刺し器具の変位量と、セパレータの初期厚さとから、セパレータの潰れ量が導出され得る。短絡変位量は、電池内において、セパレータが絶縁を維持できる限界の潰れ量に対応すると考えられる。短絡変位量も、セパレータの設計開発および製造において、有益な指標になり得ると考えられる。
【0020】
3.基材は、例えば電池用電極を含んでいてもよい。
【0021】
電極の機械的性質(例えば硬さ等)により、実際の電池内で異物およびセパレータに加わる荷重が変化し得ると考えられる。基材が実際の電極であることにより、実際の電池内環境にいっそう近づくことが期待される。
【0022】
4.基材は、例えば電池用電極体を含んでいてもよい。電池用電極体は、複数個の電池用電極を含む。
【0023】
一般に電池は電極体を含む。電極体は電極の集合体である。電極体の構造および機械的性質によって、実際の電池内で異物およびセパレータに加わる荷重が変化し得ると考えられる。基材が実際の電極体であることにより、実際の電池内環境にいっそう近づくことが期待される。
【0024】
5.評価システムは、ステージ、駆動装置、抵抗測定装置および荷重測定装置を含む。
ステージは、試験材を積載するように構成されている。
駆動装置は、ステージに積載された試験材に向かって、セパレータの厚さ方向に沿って、突刺し器具を移動させるように構成されている。
抵抗測定装置は、突刺し器具と基材との間の電気抵抗を測定するように構成されている。
荷重測定装置は、突刺し器具に加わる荷重を測定するように構成されている。
【0025】
上記「5」の評価システムにおいては、上記「1」の電池用セパレータの評価方法が実施され得る。
【0026】
6.評価システムは、例えば変位測定装置をさらに含んでいてもよい。
変位測定装置は、突刺し器具の変位量を測定するように構成されている。
【0027】
上記「6」の評価システムにおいては、上記「2」の電池用セパレータの評価方法が実施され得る。
【0028】
7.ステージは導電性を有していてもよい。抵抗測定装置は、突刺し器具とステージとの間の電気抵抗を測定するように構成されていてもよい。
【0029】
基材とステージとが導通状態にある場合、突刺し器具とステージとの間の電気抵抗は、突刺し器具と基材との間の電気抵抗を含むと考えられる。突刺し器具とステージとの間の電気抵抗が測定されることにより、突刺し器具と基材との間の電気抵抗が間接的に測定され得る。試験材(基材)の形状によっては、突刺し器具とステージとの間の電気抵抗を測定した方が、作業が簡便になり得る。
【0030】
8.電池用セパレータの製造方法は、下記(A1)および(A2)を含む。
(A1)セパレータを製造する。
(A2)電池用セパレータの評価方法により、セパレータを評価する。
【0031】
電池用セパレータの評価方法は、例えば、セパレータの設計開発に利用されてもよい。例えば、短絡荷重の大きさに基づいて、セパレータの設計が検討されてもよい。電池用セパレータの評価方法は、例えば、セパレータの品質管理に利用されてもよい。例えば、セパレータの製造工程において、電池用セパレータの評価方法により抜き取り検査が実施されてもよい。例えば短絡荷重の大小により、製造ロットの良否が判定されてもよい。
【0032】
9.電極ユニットの製造方法は、下記(B1)および(B2)を含む。
(B1)セパレータを電池用電極の表面に配置することにより、電極ユニットを製造する。
(B2)電極ユニットを試験材として、電池用セパレータの評価方法により、セパレータを評価する。
【0033】
電極ユニットにおいては、セパレータが電極に結合している。電池用セパレータの評価方法においては、電極ユニットが試験材となり得る。電池用セパレータの評価方法においては、セパレータが電極に結合している場合であっても、セパレータの強度が独立して評価され得る。
【0034】
電池用セパレータの評価方法は、例えば、電極ユニットの設計開発に利用されてもよい。例えば、短絡荷重の大きさに基づいて、セパレータの設計が検討されてもよい。例えば、短絡荷重の大きさに基づいて、電極の設計が検討されてもよい。電池用セパレータの評価方法は、例えば電極ユニットの品質管理に利用されてもよい。例えば、電極ユニットの製造工程において、電池用セパレータの評価方法により、抜き取り検査が実施されてもよい。例えば短絡荷重の大小により、製造ロットの良否が判定されてもよい。
【0035】
10.セパレータは、電池用電極の表面に結合していてもよい。
【0036】
セパレータが電極に結合している場合、セパレータを電極から分離することが困難である。またセパレータが電極から分離されることにより、セパレータが破損する可能性もある。セパレータが破損すると、セパレータの強度を適切に評価できないと考えられる。電池用セパレータの評価方法においては、セパレータが電極に結合した状態で、セパレータの評価が可能である。
【0037】
11.電池の製造方法は、下記(C1)および(C2)を含む。
(C1)電極ユニットの製造方法により、電極ユニットを製造する。
(C2)電極ユニットを含む電池を製造する。
【0038】
例えば、複数個の電極ユニットが積層されることにより、電極体が形成され得る。電極体がケースに収納されることにより、電池が製造され得る。電極ユニットの製造方法は、電池用セパレータの評価方法を含む。電池は、セパレータの短絡荷重に応じた短絡耐性を有することが期待される。
【0039】
12.電池の製造方法は、下記(D1)および(D2)を含む。
(D1)電池用セパレータの評価方法により、セパレータを評価する。
(D2)セパレータを含む電池を製造する。
【0040】
電池用セパレータの評価方法は、例えば、電池の設計開発に利用されてもよい。例えば、電池の仕様に合わせて、セパレータの短絡荷重の大きさが調整されてもよい。電池用セパレータの評価方法は、例えば、電池の品質管理に利用されてもよい。例えば、短絡荷重が基準値以上であるセパレータを用いて、電池が製造されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、突刺し強さ試験の説明図である。
図2図2は、本実施形態における評価システムを示す概念図である。
図3図3は、本実施形態における電池用セパレータの評価方法の概略フローチャートである。
図4図4は、試験材の一例を示す概念図である。
図5図5は、第1製造方法の概略フローチャートである。
図6図6は、第2製造方法の概略フローチャートである。
図7図7は、第3製造方法の概略フローチャートである。
図8図8は、第1評価例における突刺し強さとセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。
図9図9は、第2評価例を示す概念図である。
図10図10は、第3評価例を示す概念図である。
図11図11は、第4評価例における突刺し器具を示す概略図である。
図12図12は、第4評価例における短絡荷重とセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。
図13図13は、第5評価例における突刺し器具を示す概略図である。
図14図14は、第5評価例における短絡荷重とセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<用語の定義等>
以下、本開示の実施形態(「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【0043】
本明細書において、「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響しない要素の付加が許容される。
【0044】
本明細書に記載される方法において、複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0045】
本明細書において、「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならないという意味」ではなく、許容的な意味「する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0046】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0047】
本明細書において、例えば「m~n%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「m~n%」は「m%以上n%以下」の数値範囲を示す。また「m%以上n%以下」は「m%超n%未満」を含む。さらに、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値または下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0048】
本明細書において、全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値であり得る。全ての数値は有効数字で表示され得る。測定値は、複数回の測定における平均値であり得る。測定回数は、3回以上であってもよいし、5回以上であってもよいし、10回以上であってもよい。一般に測定回数が多い程、平均値の信頼性が向上することが期待される。測定値は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により端数処理され得る。測定値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差等を含み得る。
【0049】
本明細書において「導電性を有する」ことは、対象物の少なくとも一部が107Ω・cm以下の電気抵抗率を有することを示す。対象物の全体が107Ω・cm以下の電気抵抗率を有していてもよいし、対象物の一部が107Ω・cm以下の電気抵抗率を有していてもよい。例えば、対象物が金属箔等の単一材料である時、対象物の全体が107Ω・cm以下の電気抵抗率を有し得る。例えば、対象物が電極、電極体等の複合材料である時、対象物の一部が107Ω・cm以下の電気抵抗率を有し得る。
【0050】
本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117 紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)ガーレー法」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定される。
【0051】
本実施形態は、任意の電池用セパレータに適用され得る。本実施形態は、例えば、リチウムイオン電池用セパレータに適用されてもよい。
【0052】
<評価システム>
図2は、本実施形態における評価システムを示す概念図である。
以下「本実施形態における評価システム」が「本評価システム」と略記され得る。
本評価システム100は、セパレータの強度評価に使用され得る。本評価システム100は、ステージ101と、駆動装置102と、抵抗測定装置103と、荷重測定装置104とを含む。本評価システム100は、例えば、変位測定装置105等をさらに含んでいてもよい。
【0053】
本評価システム100は、例えば、制御装置、演算装置、記録装置、表示装置(いずれも不図示)等をさらに含んでいてもよい。
【0054】
例えば、各装置はそれぞれ独立であってもよい。例えば、一部または全部の装置が統合されていてもよい。例えば、本評価システム100は、テクスチャアナライザー、精密万能試験(オートグラフ)等を含んでいてもよい。テクスチャアナライザーは、例えば、ステージ101と、駆動装置102と、荷重測定装置104と、変位測定装置105とを含み得る。
【0055】
《ステージ》
ステージ101は、試験材10を積載できるように構成されている。試験材10は、基材11とセパレータ12とを含む。試験材10の詳細は後述される。ステージ101は、例えば、試験材10を固定する治具等を備えていてもよい。ステージ101の表面は、例えば平坦であってもよい。平坦は、穴、凹凸等が実質的に形成されていないことを示す。ステージ101は、任意の材料により形成され得る。ステージ101は、例えば電気絶縁性であってもよい。ステージ101は、例えば樹脂板等を含んでいてもよい。ステージ101は、例えば導電性を有していてもよい。ステージ101は、例えば金属板等を含んでいてもよい。ステージ101は、例えばステンレス鋼(SUS)製、アルミニウム(Al)合金製等であってもよい。
【0056】
《駆動装置》
駆動装置102は、ステージ101に積載された試験材10に向かって、セパレータ12の厚さ方向に沿って、突刺し器具20を移動させるように構成されている。駆動装置102は、任意の駆動原理により、突刺し器具20を移動させ得る。駆動装置102は、例えば、サーボモータ、ボールねじ、クロスヘッド等を含んでいてもよい。駆動装置102は、例えば、ステージ101の表面に対して垂直な方向(図2のZ軸方向)に、突刺し器具20を移動させるように構成されていてもよい。駆動装置102は、十分に低い速度で、突刺し器具20を移動させるように構成されていてもよい。駆動装置102は、例えば0.01~100mm/minの試験速度で、突刺し器具20を移動させるように構成されていてもよい。
【0057】
《突刺し器具》
突刺し器具20は、駆動装置102に取り付けられている。突刺し器具20は、例えば付け替え可能であってもよい。突刺し器具20は、例えば、ニードル状であってもよい。突刺し器具20は導電性を有する。突刺し器具20は、例えば、鉄(Fe)製、SUS製等であってもよい。例えば、従来の突刺し強さ試験において使用されるニードルが、突刺し器具20として使用されてもよい。突刺し器具20のサイズおよび先端形状は、例えば、想定される異物、不具合モード等に応じて、適宜選択され得る。突刺し器具20は、例えば、0.1~10mmの直径を有していてもよい。直径は、胴部(先端以外の部分)の最大径を示す。突刺し器具20は、例えば、半球面型の先端形状を有していてもよい。突刺し器具20は、例えば、テーパR型の先端形状を有していてもよい。テーパの角度は、例えば30~90°であってもよい。先端形状半径は、例えば0.01~1mmであってもよい。例えば、先端形状が鋭利になる程、厳しい条件での評価になると考えられる。
【0058】
《抵抗測定装置》
抵抗測定装置103は、突刺し器具20と基材11との間の電気抵抗を測定するように構成されている。抵抗測定装置103は、例えば、市販のテスター、絶縁抵抗計等を含んでいてもよい。抵抗測定装置103の測定範囲は、例えば、想定される異物、不具合モード等に応じて、適宜選択され得る。測定範囲の上限値は、例えば0.1~100MΩであってもよいし、10~50MΩであってもよい。
【0059】
抵抗測定装置103は、例えば、リード線とクリップ等により、突刺し器具20および基材11に接続され得る。ステージ101が導電性を有し、かつステージ101と基材11とが導通状態である場合、突刺し器具20とステージ101との間の電気抵抗が測定されてもよい。試験材10(基材11)の形状によっては、突刺し器具20とステージ101との間の電気抵抗を測定した方が、作業が簡便になり得る。
【0060】
《荷重測定装置》
荷重測定装置104は、突刺し器具20に加わる荷重を測定するように構成されている。荷重測定装置104は、例えばロードセル等を含んでいてもよい。荷重測定装置104の測定範囲および測定精度は、例えば、セパレータ12の強度、厚さ等に応じて、適宜選択され得る。荷重測定装置104の測定範囲は、例えば、0.1~1000Nであってもよい。
【0061】
《変位測定装置》
本評価システム100は、変位測定装置105をさらに含んでいてもよい。変位測定装置105は、突刺し器具20の変位量を測定するように構成されている。変位測定装置105は、任意の方法により、突刺し器具20の変位量を測定し得る。例えば、変位測定装置105は、突刺し器具20の移動速度(試験速度)と、移動時間とから、変位量を演算してもよい。
【0062】
《表示装置》
本評価システム100は、例えば表示装置(不図示)をさらに含んでいてもよい。表示装置は、例えば、液晶パネル等を含んでいてもよい。表示装置は、例えば、試験速度、荷重(試験力)、変位量、および電気抵抗からなる群より選択される少なくとも1つを表示するように構成されていてもよい。
【0063】
《記録装置》
本評価システム100は、例えば記録装置(不図示)をさらに含んでいてもよい。記録装置は、例えば、データロガー等を含んでいてもよい。記録装置は、電気抵抗、荷重および変位量からなる群より選択される少なくとも1つを記録するように構成されていてもよい。記録装置は、対象値(例えば荷重、変位量等)の時間的推移を記録してもよい。
【0064】
《制御装置》
本評価システム100は、例えば制御装置(不図示)をさらに含んでいてもよい。制御装置は、例えば、各装置の動作、各装置の連携等を制御してもよい。制御装置は、例えば演算機能を有していてもよい。制御装置は、例えば、電気抵抗および荷重の時間的推移を記録装置から取得し、指定の電気抵抗における荷重を演算するように構成されていてもよい。制御装置が突刺し器具20の変位量を演算してもよい。
【0065】
<評価方法>
図3は、本実施形態における電池用セパレータの評価方法の概略フローチャートである。以下「本実施形態における電池用セパレータの評価方法」が「本評価方法」と略記され得る。本評価方法は、本評価システム100において実施され得る。本評価方法は、「(a)試験材の準備」、「(b)突刺し」、「(c)電気抵抗の測定」および「(d)荷重の測定」を含む。本評価方法は、「(e)変位量の測定」をさらに含んでいてもよい。なお、図3における(a)~(e)の順序は便宜的なものである。例えば(b)~(e)は実質的に同時に実施されてもよい。
【0066】
《(a)試験材の準備》
本評価方法は、セパレータ12を基材11の表面に配置することにより、試験材10(テストワーク)を準備することを含む(図2参照)。
【0067】
例えば、ステージ101のサイズ等に応じて、セパレータ12が所定のサイズに切断される。例えば基材11上に、セパレータ12が単純に置かれることにより、試験材10が準備されてもよい。例えば基材11の表面にセパレータ12が接着されることにより、試験材10が準備されてもよい。
【0068】
例えば、電極ユニットが製造されてもよい。電極ユニットは、電極とセパレータ12とを含む。セパレータ12は、電極の表面に結合している。電極ユニットが所定のサイズに切断されることにより、試験材10が準備されてもよい。この場合、電極が基材11とみなされる。
【0069】
〈セパレータ〉
セパレータ12はフィルム状である。セパレータ12は、例えば10~50μmの厚さを有していてもよいし、10~20μmの厚さを有していてもよい。セパレータ12は、電気絶縁性である。セパレータ12は、例えば、樹脂、セラミックス等を含んでいてもよい。
【0070】
セパレータ12は、例えばポーラスであってもよい。セパレータ12は、例えば100~500s/mLの透気度を有していてもよい。セパレータ12は、例えば液系電池用であってもよい。液系電池は電解液を含む。電解液はセパレータ12の細孔に浸透し得る。
【0071】
セパレータ12は、例えばポリオレフィン等を含んでいてもよい。セパレータ12は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を含んでいてもよい。セパレータ12は、単層構造を有していてもよい。セパレータ12は、例えば実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ12は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ12は、例えば3層構造を含んでいてもよい。例えばPP層、PE層およびPP層がこの順に積層されることにより3層構造が形成されていてもよい。
【0072】
セパレータ12は、例えば、樹脂とセラミックスとの複合材料であってもよい。例えば、セラミックスは粒子状であってもよい。例えばセラミックス、バインダ、分散媒が混合されることにより、スラリーが調製され得る。スラリーが樹脂フィルムの表面に塗布されることにより、セラミックス層が形成されてもよい。セラミックスは、例えば、アルミナ、ベーマイト、チタニア、ジルコニア、シリカ等を含んでいてもよい。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。
【0073】
セパレータ12は、任意の方法により製造され得る。セパレータ12は、乾式法で製造されてもよいし、湿式法で製造されてもよい。セパレータ12は、例えば、延伸法、相分離法等により製造され得る。セパレータ12は、例えば「自立フィルム」であってもよい。自立フィルムは、それ自身で形状を維持し得るフィルムを示す。セパレータ12は、例えば「非自立フィルム」であってもよい。非自立フィルムは、形状の維持に支持体を必要とするフィルムを示す。例えば、電極の表面に、粒子状の樹脂、粒子状のセラミックス等が塗布されることにより、電極の表面に非自立フィルムが形成されてもよい。
【0074】
セパレータ12は、例えばノンポーラスであってもよい。セパレータ12は、例えば全固体電池用であってもよい。例えば、固体電解質は粒子状であってもよい。例えば、固体電解質、バインダおよび分散媒が混合されることにより、スラリーが調製され得る。スラリーが電極の表面に塗布されることにより、セパレータ12(固体電解質層)が形成され得る。固体電解質層が圧縮されることにより、固体電解質層が緻密化され得る。固体電解質は、例えばLi2S-P25等を含んでいてもよい。
【0075】
〈基材〉
基材11は、例えばシート状、板状等であってもよい。基材11の厚さは、例えば、セパレータ12が適度な潰れ代を有するように設定され得る。基材11は、例えば、1μm以上の厚さを有していてもよいし、10μm以上の厚さを有していてもよいし、100μm以上の厚さを有していてもよい。基材11は導電性を有する。基材11は、例えば、金属箔、金属板等を含んでいてもよい。基材11は、例えば銅(Cu)箔、Al箔等を含んでいてもよい。
【0076】
基材11は、例えば電極を含んでいてもよい。基材11が電極であることにより、実際の電池内環境にいっそう近づくことが期待される。電極は正極であってもよいし、負極であってもよい。例えばリチウムイオン電池においては、正極に比して、負極が軟らかい傾向がある。リチウムイオン電池においては、異物が混入した場合、異物は負極側に押し込まれやすい傾向がある。例えば、基材11が負極であることにより、リチウムイオン電池における異物混入が模擬されやすいと考えられる。
【0077】
電極は、例えば活物質層と集電体とを含んでいてもよい。活物質層は集電体の表面に配置されている。活物質層は集電体の片面のみに配置されていてもよいし、集電体の表裏両面に配置されていてもよい。
【0078】
集電体は、例えば5~50μmの厚さを有していてもよいし、5~20μmの厚さを有していてもよい。集電体は、例えば金属箔等を含んでいてもよい。集電体は、例えば、Cu箔、Cu合金箔、Al箔、Al合金箔、ニッケル(Ni)箔、Ni合金箔、チタン(Ti)箔、Ti合金箔等を含んでいてもよい。
【0079】
活物質層は、例えば10~200μmの厚さを有していてもよい。活物質層は正極活物質または負極活物質を含む。正極活物質は、例えばニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、リン酸鉄リチウム等を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば黒鉛、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫、チタン酸リチウム、金属リチウム等を含んでいてもよい。活物質層は、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は、例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。バインダは、例えば、PVdF、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1~10質量部であってもよい。
【0080】
図4は、試験材の一例を示す概念図である。
基材11は、例えば、電極体13を含んでいてもよい。電極体13は、複数個の電極を含む。電極体13は任意の形態を有し得る。電極体13は、例えば巻回型であってもよいし、積層型であってもよい。基材11が電極体13であることにより、実際の電池内環境にいっそう近づくことが期待される。
【0081】
《(b)突刺し》
本評価方法は、試験材10において、基材11の反対側から、セパレータ12の厚さ方向に沿って、セパレータ12に突刺し器具20を突刺すことを含む。
【0082】
例えば、本評価システム100および突刺し器具20が準備される(図2参照)。本評価システム100および突刺し器具20の詳細は、前述のとおりである。突刺し器具20が、駆動装置102に取り付けられる。突刺し器具20に抵抗測定装置103が接続される。基材11(またはステージ101)に抵抗測定装置103が接続される。突刺し器具20と基材11との間の電気抵抗が測定される。この時点において、電気抵抗は、抵抗測定装置103の測定範囲の上限値を超えていてもよい。すなわち電気抵抗の表示値は、例えば、無限大であってもよい。
【0083】
例えば、任意の試験速度により、突刺し器具20がセパレータ12の直前まで降下し得る。突刺し器具20がセパレータ12に接触しないうちは、試験速度が評価結果に影響しないと考えられる。突刺し器具20がセパレータ12の直前まで、比較的高い試験速度で移動することにより、試験時間が短縮され得る。
【0084】
次いで試験速度(突刺し速度)が設定される。突刺し器具20は、実質的に一定の試験速度で、セパレータ12に刺し込まれる。試験速度は、セパレータ12の厚さ、ならびに荷重および電気抵抗のサンプリング周波数等に応じて、適宜調整され得る。例えば、セパレータ12の厚さ、およびサンプリング周波数に対して、試験速度が速すぎると、短絡発生時点の荷重が取得され難いと考えられる。試験速度は、例えば、0.001~10mm/minであってもよいし、0.01~1mm/minであってもよいし、0.1~0.5mm/minであってもよい。
【0085】
突刺し器具20の移動方向(突刺し方向)は、セパレータ12の厚さ方向と平行であってもよい。本評価方法においては、セパレータ12が突刺し方向に伸長し難いと考えられる。セパレータ12の背面が基材11で支持されているためである。セパレータ12が伸長し難いことにより、実際の電池内環境に近づくことが期待される。
【0086】
《(c)電気抵抗の測定》
本評価方法は、突刺し器具20をセパレータ12に突刺しながら、突刺し器具20と基材11との間の電気抵抗を測定することを含む。電気抵抗は、例えば抵抗測定装置103により測定され得る(図2参照)。
【0087】
《(d)荷重の測定》
本評価方法は、電気抵抗が所定値(短絡抵抗)まで減少した時に突刺し器具20に加わる荷重(短絡荷重)の大きさにより、セパレータ12を評価することを含む。
【0088】
突刺し器具20に加わる荷重は、例えば荷重測定装置104により測定され得る(図2参照)。短絡抵抗は、例えば、電池内の電極間に要求される絶縁抵抗等を参考として決定され得る。短絡抵抗は、例えば、抵抗測定装置103の測定範囲の上限値であってもよい。例えば、抵抗測定装置103の表示値が無限大(∞)から、数値に変化した時点で、電気抵抗が短絡抵抗に達したと判断されてもよい。抵抗測定装置103に数値が表示されたことは、突刺し器具20と基材11との間に微小電流が流れたことを示すと考えられる。すなわち抵抗測定装置103に数値が表示されたことは、微小短絡の発生を示すと考えられる。短絡抵抗は、例えば、0.1~100MΩに設定されてもよいし、1~100MΩに設定されてもよいし、5~50MΩに設定されてもよいし、30~50MΩに設定されてもよい。
【0089】
本評価方法においては、電気抵抗が短絡抵抗に達した時点の荷重(短絡荷重)が測定される。電気抵抗が短絡抵抗に達した時点で、突刺し器具20が停止されてもよい。突刺し器具20の停止後、短絡荷重が測定されてもよい。電気抵抗が短絡抵抗に達した後も、突刺し器具20の移動が継続されてもよい。例えば、電気抵抗および荷重の時間的推移から、短絡抵抗時の荷重が特定されてもよい。電気抵抗および荷重の時間的推移は、例えば記録装置に蓄積され得る。
【0090】
短絡荷重により、例えば、電極間に異物が混入した場合に、セパレータが破断せずに絶縁を維持できるかどうかが評価され得る。例えば、短絡荷重の大小により、セパレータ12が評価され得る。例えば、短絡荷重が大きい程、セパレータ12の短絡耐性が良好であると評価されてもよい。
【0091】
短絡荷重の測定後、突刺し器具20の移動、ならびに電気抵抗および荷重の測定が続行されてもよいし、停止されてもよい。突刺し器具20は、セパレータ12を貫通した時点で停止されてもよいし、セパレータ12を貫通する前に停止されてもよい。
【0092】
《(e)変位量の測定》
本評価方法は、電気抵抗が所定値(短絡抵抗)まで減少した時の突刺し器具20の変位量(短絡変位量)により、セパレータ12を評価することを含んでいてもよい。突刺し器具20の変位量は、変位測定装置105により測定され得る(図2参照)。例えば、突刺し器具20の変位量と、セパレータ12の初期厚さとから、セパレータ12の潰れ量が導出されてもよい。これにより、例えば、電池内においてセパレータ12がどの程度潰されると、短絡が発生し得るかが評価され得る。
【0093】
<第1製造方法>
図5は、第1製造方法の概略フローチャートである。
第1製造方法は、セパレータの製造方法である。第1製造方法は「(A1)セパレータの製造」および「(A2)セパレータの評価」を含む。
【0094】
《(A1)セパレータの製造》
第1製造方法は、セパレータ12を製造することを含む。第1製造方法において、セパレータ12は自立フィルムである。セパレータ12は任意の方法により製造され得る。例えば、量産品が製造されてもよい。例えば、試作品が製造されてもよい。
【0095】
《(A2)セパレータの評価》
第1製造方法は、本評価方法によりセパレータを評価することを含む。
本評価方法は、例えば、セパレータ12の設計開発に利用されてもよい。例えばセパレータ12の試作品の短絡荷重が測定されてもよい。短絡荷重が大きくなるように、セパレータ12が改良されてもよい。
【0096】
本評価方法は、例えば、セパレータ12の品質管理に利用されてもよい。例えば、セパレータ12の製造工程において、抜き取り検査が実施されてもよい。短絡荷重の大小により、製造ロットの良否が判定されてもよい。
【0097】
<第2製造方法>
図6は、第2製造方法の概略フローチャートである。
第2製造方法は、電極ユニットの製造方法を含む。第2製造方法は「(B1)電極ユニットの製造」および「(B2)セパレータの評価」を含む。第2製造方法は、電池の製造方法も含む。すなわち第2製造方法は、「(C1)電極ユニットの製造」および「(C2)電池の製造」を含んでいてもよい。
【0098】
《(B1)電極ユニットの製造》
第2製造方法は、セパレータ12を電極の表面に配置することにより、電極ユニットを製造することを含む。
【0099】
電極ユニットは電池用部品である。例えば、電極ユニットが積層されることにより、電極体が形成されてもよい。電極ユニットにおいては、セパレータ12が電極に結合している。
【0100】
電極ユニットは、任意の方法で製造され得る。例えば、活物質が準備される。活物質は、例えば粒子状であってもよい。集電体が準備される。集電体は、例えば金属箔等を含んでいてもよい。例えば、活物質、バインダおよび分散媒が混合されることにより、スラリーが調製されてもよい。スラリーが集電体の表面に塗布されることにより、活物質層が形成され得る。活物質層が圧縮されることにより、電極が製造され得る。
【0101】
例えば電極の表面に、例えば高分子溶液が塗布されることにより、電極の表面に高分子フィルムが形成されてもよい。例えば相分離法により、高分子フィルムに開気孔が形成されてもよい。これにより、電極に結合したセパレータ12が形成され得る。すなわち電極ユニットが製造され得る。
【0102】
例えば電極の表面に、セパレータ12(自立フィルム)が接着されることにより、電極ユニットが製造されてもよい。例えば接着剤により、セパレータ12が電極に接着されてもよい。接着剤は、例えばPVdF等を含んでいてもよい。例えばセパレータ12および電極の積層体に対して、熱および圧力の少なくとも一方が付与されることにより、セパレータ12が電極に付着してもよい。セパレータ12は、全面的に電極に結合していてもよし、部分的に電極に結合していてもよい。
【0103】
《(B2)セパレータの評価》
第2製造方法は、電極ユニットを試験材10として、本評価方法により、セパレータ12を評価することを含む。例えば、電極ユニットが所定のサイズに切断されることにより、試験材10が作製され得る。本評価方法においては、セパレータ12が電極に結合した状態で、セパレータ12が評価され得る。本評価方法は、電極ユニットに含まれるセパレータ12の評価に好適である。
【0104】
本評価方法は、例えば電極ユニットの設計開発に利用されてもよい。例えば電極ユニットの試作品において、セパレータ12の短絡荷重が測定されてもよい。短絡荷重が大きくなるように、電極ユニットが改良されてもよい。
【0105】
本評価方法は、例えば電極ユニットの品質管理に利用されてもよい。例えば、電極ユニットの製造工程において、抜き取り検査が実施されてもよい。短絡荷重の大小により、製造ロットの良否が判定されてもよい。
【0106】
《(C1)電極ユニットの製造》
「(C1)電極ユニットの製造」においては、前述の「(B1)電極ユニットの製造」および「(B2)セパレータの評価」により、電極ユニットが製造され、かつセパレータ12が評価される。
【0107】
《(C2)電池の製造》
第2製造方法は、電極ユニットを含む電池を製造することを含む。電池は、任意の方法により製造され得る。例えば、電極ユニットが積層されることにより、電極体が形成され得る。電極体および電解液がケースに封入されることにより、電池が製造され得る。ケースは、例えば、金属製の容器等であってもよいし、金属箔ラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0108】
電池は、短絡荷重が評価されたセパレータ12を含む。電池は、セパレータ12の短絡荷重に応じた短絡耐性を有し得る。
【0109】
<第3製造方法>
図7は、第3製造方法の概略フローチャートである。
第3製造方法は、電池の製造方法である。第3製造方法は、「(D1)セパレータの評価」および「(D2)電池の製造」を含む。
【0110】
《(D1)セパレータの評価》
第3製造方法は、本評価方法によりセパレータ12を評価することを含む。セパレータ12は、任意の方法により準備され得る。例えば、市場からセパレータ12の既製品が入手されてもよい。例えば、セパレータ12が製造されてもよい。本評価方法により、セパレータ12が評価される。例えば、短絡荷重の大小により、セパレータ12の良否が判定されてもよい。
【0111】
《(D2)電池の製造》
第3製造方法は、セパレータ12を含む電池を製造することを含む。
例えば、正極、セパレータ12、および負極が準備される。例えば、正極、セパレータ12、および負極は、いずれも帯状のシートであってもよい。例えば、正極と、セパレータ12と、負極とが積層されることにより、積層体が形成されてもよい。セパレータ12は、正極と負極との間に配置される。積層体が渦巻き状に巻回されることにより、巻回型の電極体が形成されてもよい。電極体は、扁平状に成形されてもよい。
【0112】
例えば、正極、セパレータ12、および負極は、いずれも枚葉紙状のシートであってもよい。例えば、セパレータ12を間に挟んで、正極と負極とが交互に積層されることにより、積層型の電極体が形成されてもよい。
【0113】
例えば、電極体および電解液がケースに封入されることにより、電池が製造され得る。電池は、短絡荷重が評価されたセパレータ12を含む。電池は、セパレータ12の短絡荷重に応じた短絡耐性を有し得る。例えば、電池の短絡試験の結果と、セパレータ12の短絡荷重とが対照されることにより、電池の設計が検討されてもよい。
【実施例
【0114】
第1~第5評価例により、セパレータが評価された。本実施例は、第4、5評価例を含む。本実施例は、第1~3評価例を含まない。
【0115】
《試験材の準備》
セパレータが準備された。セパレータはポリオレフィン製のポーラスフィルムであった。セパレータは乾式法(延伸法)により製造された。
【0116】
電極(負極)が準備された。電極は66μmの厚さを有していた。電極は活物質層と集電体とを含んでいた。活物質層は集電体の表裏両面に配置されていた。活物質層は、片面あたり、3.30mg/cm2の目付量を有していた。活物質層は黒鉛、CMCおよびSBRを含んでいた。集電体はCu箔を含んでいた。
【0117】
第1評価例においては、セパレータ単体が試験材とされた。第2~5評価例においては、電極(活物質層)の表面にセパレータが載せられることにより、試験材が作製された。
【0118】
《第1評価例》
第1評価例においては、「JIS Z 1707 食品包装用プラスチックフィルム通則」に準拠して、セパレータ単体の突刺し強さ(最大力)が測定された。
【0119】
図8は、第1評価例における突刺し強さとセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。第1評価例においては、セパレータの厚さと、突刺し強さとの相関が弱い傾向がみられる。第1評価例においては、セパレータが突刺し方向に伸長し得る。伸長しやすいセパレータは、突刺し強さが大きくなると考えられる。そのため、セパレータの厚さと、突刺し強さとの相関が弱まると考えられる。
【0120】
実際の電池内においては、セパレータが伸長し得るスペースは殆どないと考えられる。第1評価例における突刺し強さは、実際の電池内におけるセパレータの強度を表す指標としては、不適であると考えられる。
【0121】
《第2評価例》
図9は、第2評価例を示す概念図である。
試験材10(セパレータ12)に対して、突刺し器具20が突刺された。突刺し中、突刺し器具20の変位量と、荷重とが測定された。これにより応力-ひずみ曲線が取得された。
【0122】
試験材10の応力-ひずみ曲線から、セパレータ12のピークを抽出することが検討された。セパレータ12は、基材11に比して相対的に低い強度を有する。そのため、基材11のピークに、セパレータ12のピークが埋没し、セパレータ12のピークを抽出することは困難であった。すなわち、第2評価例においては、セパレータ12の強度を評価することが困難であった。
【0123】
《第3評価例》
図10は、第3評価例を示す概念図である。
模擬異物30が準備された。模擬異物30はCuワイヤー(直径 100μm)であった。セパレータ12の表面に模擬異物30が配置された。押込み治具35により模擬異物30がセパレータ12に押し込まれた。押込み中、押込み治具35の変位量と、荷重とが測定された。これにより応力-ひずみ曲線が取得された。
【0124】
第3評価例においては、測定結果のばらつきが大きかった。ばらつきの要因として、模擬異物30の表面性状(バリ等)、模擬異物30と試験材10との当たり方が安定しないこと等が考えられる。
【0125】
《第4評価例》
図11は、第4評価例における突刺し器具を示す概略図である。
突刺し器具として、半球面型の先端形状を有するニードルが準備された。ニードルの先端形状半径(SR)は0.5mmであった。ニードルの直径(φ)は1mmであった。
【0126】
第4評価例は、本評価システムにより実施された(図2参照)。
ステージ101に試験材10(セパレータ12、基材11)が配置された。ステージ101は導電性であった。突刺し器具20が駆動装置102に取り付けられた。抵抗測定装置103として、テスターが準備された。テスターの測定範囲は、419.9Ω~41.99MΩであった。抵抗測定装置103がステージ101および突刺し器具20に接続された。この時点でテスターの表示値は無限大であった。
【0127】
突刺し器具20がセパレータ12の直前まで降下した時点で、一旦、突刺し器具20が停止した。次いで、0.5mm/minの試験速度で、突刺し器具20が降下し、突刺し器具20がセパレータ12に突刺さった。
【0128】
テスターの表示値が無限大から40MΩに変化した時点で(すなわち電気抵抗が短絡抵抗まで減少した時点で)、突刺し器具20が停止された。この時点の荷重(短絡荷重)が荷重測定装置104により測定された。
【0129】
図12は、第4評価例における短絡荷重とセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。短絡荷重はセパレータの厚さと相関している。セパレータが突刺し方向に伸長し難いためと考えられる。短絡荷重は、電池内において、電極間に異物が混入した場合のセパレータの強度をよく表していると考えられる。
【0130】
《第5評価例》
図13は、第5評価例における突刺し器具を示す概略図である。
突刺し器具として、テーパR型の先端形状を有するニードルが準備された。ニードルの先端形状半径(SR)は0.1mmであった。ニードルの直径(φ)は1mmであった。テーパの角度(θ)は60°であった。図13の突刺し器具が使用されることを除いては、第4評価例と同様に、セパレータが評価された。
【0131】
図14は、第5評価例における短絡荷重とセパレータの厚さとの関係を示すグラフである。第5評価例(図14)においては、第4評価例(図12)に比して、短絡荷重の絶対値が小さくなっている。第5評価例は、第4評価例に比して厳しい条件での評価であると考えられる。第5評価例においては、第4評価例に比して、鋭利な先端を有する突刺し器具が使用されている(図11、13参照)。本評価方法においては、突刺し器具の形状が調整されることにより、電池内における各種の不具合モードが模擬され得ると考えられる。
【0132】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0133】
1 試験片、2 穴開きステージ、3 穴、4 ニードル、10 試験材、11 基材、12 セパレータ、13 電極体、20 突刺し器具、30 模擬異物、35 押込み治具、100 評価システム、101 ステージ、102 駆動装置、103 抵抗測定装置、104 荷重測定装置、105 変位測定装置。
図1
図2
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図10
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図12
図13
図14