(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】車両の制御装置、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/0965 20060101AFI20240925BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G08G1/0965
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021172517
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 好政
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-034648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/0965
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動運転を行う制御装置であって、
周囲環境情報に基づいて、前記車両の周囲を走行する緊急車両を検知する処理と、
前記緊急車両を検知したことを受けて、前記緊急車両への対処を判断する緊急車両対応処理と、
前記緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理と、
前記緊急車両の予測走行経路の信頼度を示す予測信頼度を算出する処理と、
を実行するように構成され、
前記緊急車両対応処理は、少なくとも、前記緊急車両に対して回避対応を実施することと、前記回避対応のための予備行動を実施することとを
含み、
前記緊急車両対応処理において、前記制御装置は、
前記検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ前記予測信頼度が第2閾値以上となるとき前記緊急車両に対して前記回避対応を実施し、前記検知信頼度が前記第1閾値未満、又は前記予測信頼度が前記第2閾値未満である間は前記予備行動を実施する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
車両の自動運転を行う制御装置であって、
周囲環境情報に基づいて、前記車両の周囲を走行する緊急車両を検知する処理と、
前記緊急車両を検知したことを受けて、前記緊急車両への対処を判断する緊急車両対応処理と、
前記緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理と、
を実行するように構成され、
前記車両は、遠隔運転又は手動運転が可能に構成され、
前記緊急車両対応処理は、少なくとも、前記緊急車両に対して回避対応を実施することと、前記回避対応のための予備行動を実施することとを
含み、
前記制御装置は、前記緊急車両に対する前記回避対応の実施可能性を示す回避走行自信度を算出する処理をさらに実行するように構成され、
前記緊急車両対応処理において、前記制御装置は、
前記回避走行自信度が第3閾値以上で前記検知信頼度が第1閾値以上となるとき前記緊急車両に対して前記回避対応を実施し、前記回避走行自信度が前記第3閾値未満で前記検知信頼度が前記第1閾値以上となるとき前記遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施し、前記検知信頼度が前記第1閾値未満である間は前記予備行動を実施する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記緊急車両対応処理において、前記制御装置は、
前記検知信頼度が前記第1閾値未満である間、前記回避走行自信度が前記第3閾値以上であるときは、特定の前記予備行動に限って実施する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の制御装置であって、
前記緊急車両対応処理において、前記制御装置は、
前記検知信頼度が前記第1閾値未満である間、前記回避走行自信度が前記第3閾値未満であるときは、前記遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を前記予備行動として実施する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
車両の自動運転を行う制御方法であって、
周囲環境情報に基づいて、前記車両の周囲を走行する緊急車両を検知することと、
前記緊急車両を検知したことを受けて、前記緊急車両への対処を判断する緊急車両対応処理を実行することと、
前記緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理を実行することと、
前記緊急車両の予測走行経路の信頼度を示す予測信頼度を算出する処理を実行することと、
を含み、
前記緊急車両対応処理は、少なくとも、前記緊急車両に対して回避対応を実施することと、前記回避対応のための予備行動を実施することとを
含み、
前記緊急車両対応処理は、前記検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ前記予測信頼度が第2閾値以上となるとき前記緊急車両に対して前記回避対応を実施し、前記検知信頼度が前記第1閾値未満、又は前記予測信頼度が前記第2閾値未満である間は前記予備行動を実施することを含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
車両の自動運転を行う制御方法であって、
周囲環境情報に基づいて、前記車両の周囲を走行する緊急車両を検知することと、
前記緊急車両を検知したことを受けて、前記緊急車両への対処を判断する緊急車両対応処理を実行することと、
前記緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理を実行することと、
を含み、
前記緊急車両対応処理は、少なくとも、前記緊急車両に対して回避対応を実施することと、前記回避対応のための予備行動を実施することとを
含み、
前記制御方法は、前記緊急車両に対する前記回避対応の実施可能性を示す回避走行自信度を算出する処理を実行することをさらに含み、
前記緊急車両対応処理は、前記回避走行自信度が第3閾値以上で前記検知信頼度が第1閾値以上となるとき前記緊急車両に対して前記回避対応を実施し、前記回避走行自信度が前記第3閾値未満で前記検知信頼度が前記第1閾値以上となるとき遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施し、前記検知信頼度が前記第1閾値未満である間は前記予備行動を実施することを含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
コンピュータによって実行され、
請求項5又は請求項6に記載の制御方法を前記コンピュータに実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緊急車両に対処する車両の自動運転技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転において、周囲に緊急車両が走行しており自車両の走行経路と干渉することが予想される場合、緊急車両の走行を妨げないように回避行動を実施することが求められる。レベル3以上の自動運転においては、システムにより自律的にこのような緊急車両への対処が必要となる。このため、緊急車両に対処する車両の自動運転技術の開発が進められている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のマイクロホンを使用して緊急車両に相当するサイレン雑音を検出することで緊急車両の方位を推定し、推定された方位を地図情報と比較して緊急車両が走行している車道の一部を識別し、推定された方位及び識別された車道の一部に基づいて緊急車両にどのように対応すべきかを決定し、決定された対応に基づいて車両を自動運転モードで制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
緊急車両に対処する車両の自動運転においては、車両の周囲環境の情報に基づいて、車両の周囲を走行する緊急車両を検知することが必要となる。しかしながら、緊急車両がまだ車両の十分近くを走行していない場合等では、ノイズの影響により緊急車両を誤検知してしまうことがある。このため、緊急車両を検知したことを受けて直ちに緊急車両への対処を判断すると、不必要な回避行動を実施してしまう虞がある。延いては、円滑な自動運転が阻害されてしまう虞がある。
【0006】
一方で、十分に検知が行われるまで回避行動を実施しないこととすると、緊急車両への対処が間に合わなくなる等、緊急車両への対応性能が担保できなくなる虞がある。
【0007】
本開示の1つの目的は、上記の課題を鑑み、緊急車両の誤検知に伴う不必要な回避行動を抑制しつつ、緊急車両への対応性能を担保することが可能な車両の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の開示は、車両の自動運転を行う制御装置に関する。
第1の開示に係る制御装置は、周囲環境情報に基づいて、車両の周囲を走行する緊急車両を検知する処理と、緊急車両を検知したことを受けて、緊急車両への対処を判断する緊急車両対応処理と、を実行するように構成される。
緊急車両対応処理は、少なくとも、緊急車両に対して回避対応を実施することと、回避対応のための予備行動を実施することとを含む。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
第2の開示に係る制御装置は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理をさらに実行するように構成されている。
緊急車両対応処理において、制御装置は、検知信頼度が第1閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、検知信頼度が第1閾値未満である間は予備行動を実施する。
【0010】
第3の開示は、第1の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
第3の開示に係る制御装置は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理と、緊急車両の予測走行経路の信頼度を示す予測信頼度を算出する処理と、をさらに実行するように構成されている。
緊急車両対応処理において、制御装置は、検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ予測信頼度が第2閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、検知信頼度が第1閾値未満、又は予測信頼度が第2閾値未満である間は回避対応のための予備行動を実施する。
【0011】
第4の開示は、第1の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
車両は、遠隔運転又は手動運転が可能に構成される。
第4の開示に係る制御装置は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理と、緊急車両に対する回避対応の実施可能性を示す回避走行自信度を算出する処理と、をさらに実行するように構成されている。
緊急車両対応処理において、制御装置は、回避走行自信度が第3閾値以上で検知信頼度が第1閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値以上となるとき遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施し、検知信頼度が第1閾値未満である間は回避対応のための予備行動を実施する。
【0012】
第5の開示は、第4の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
緊急車両対応処理において、制御装置は、検知信頼度が第1閾値未満である間、回避走行自信度が第3閾値以上であるときは、特定の予備行動に限って実施する。
【0013】
第6の開示は、第4又は第5の開示に係る制御装置に対して、さらに以下の特徴を有する制御装置に関する。
緊急車両対応処理において、制御装置は、検知信頼度が第1閾値未満である間、回避走行自信度が第3閾値未満であるときは、遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を予備行動として実施する。
【0014】
第7の開示は、車両の自動運転を行う制御方法に関する。
第7の開示に係る制御方法は、周囲環境情報に基づいて、車両の周囲を走行する緊急車両を検知することと、緊急車両を検知したことを受けて、緊急車両への対処を判断する処理を実行することと、を含む。
緊急車両対応処理は、少なくとも、緊急車両に対して回避対応を実施することと、回避対応のための予備行動を実施することとを含む。
【0015】
第8の開示は、第7の開示に係る制御方法に対して、さらに以下の特徴を有する制御方法に関する。
第8の開示に係る制御方法は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理を実行することをさらに含む。
緊急車両対応処理は、検知信頼度が第1閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、検知信頼度が第1閾値未満である間は予備行動を実施することを含む。
【0016】
第9の開示は、第7の開示に係る制御方法に対して、さらに以下の特徴を有する制御方法に関する。
第9の開示に係る制御方法は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理を実行することと、緊急車両の予測走行経路の信頼度を示す予測信頼度を算出する処理を実行することと、をさらに含む。
緊急車両対応処理は、検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ予測信頼度が第2閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、検知信頼度が第1閾値未満、又は予測信頼度が第2閾値未満である間は回避対応のための予備行動を実施することを含む。
【0017】
第10の開示は、第7の開示に係る制御方法に対して、さらに以下の特徴を有する制御方法に関する。
第10の開示に係る制御方法は、緊急車両の検知の信頼度を示す検知信頼度を算出する処理を実行することと、緊急車両に対する回避対応の実施可能性を示す回避走行自信度を算出する処理を実行することと、をさらに含む。
緊急車両対応処理は、回避走行自信度が第3閾値以上で検知信頼度が第1閾値以上となるとき緊急車両に対して回避対応を実施し、回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値以上となるとき遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施し、検知信頼度が第1閾値未満である間は回避対応のための予備行動を実施することを含む。
【0018】
第11の開示は、コンピュータによって実行され、第7乃至第10の開示のいずれか1つの開示に係る制御方法をコンピュータに実行させる制御プログラムに関する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、緊急車両に対して回避対応又は予備行動が実施される。特に、十分な検知信頼度が得られるまでは、回避対応を実施せずに予備行動を実施し、十分な検知信頼度が得られたとき、回避対応を実施する。これにより、緊急車両が誤検知であったときは、回避行動を実施することなく定常走行に戻ることができる。一方で、十分な検知信頼度が得られたときは、事前に予備行動が実施されていることにより回避対応を円滑に実施することが可能である。延いては、緊急車両への対応性能を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る制御装置による緊急車両への対処の類別を示す表である。
【
図2】第1実施形態に係る制御装置が適用された自動運転システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る自動運転システムにより実現される車両の制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る制御装置による緊急車両への対処の類別を示す表である。
【
図6】第2実施形態における緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。
【
図7】第2実施形態に係る自動運転システムにより実現される車両の制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】第3実施形態に係る制御装置による緊急車両への対処の類別を示す表である。
【
図9】第3実施形態における緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。
【
図10】第3実施形態に係る自動運転システムにより実現される制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数が特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構成等は、特に明示した場合や原理的に明らかにそれに特定される場合を除いて、本開示に係る思想に必ずしも必須のものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を附しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0022】
1.第1実施形態
1-1.概要
本実施形態に係る制御装置は、車両の自動運転を行う。従って、「自動運転制御装置」と呼ぶこともできる。特に本実施形態に係る制御装置は、車両の周囲を走行する緊急車両を検知し、緊急車両に対して回避対応を実施する機能を有している。緊急車両は、サイレンを鳴らす及び警告灯をつける等を実施して緊急走行する車両であり、救急車、消防車、パトロールカー等が例示される。緊急車両は、「緊急自動車」や「緊急通行車両」と言い換えることもできる。回避対応は、干渉判断と、回避行動と、が含まれる。干渉判断により、緊急車両の予測走行経路が自動運転に係る走行経路と干渉することが予想されるか否かが判断される。回避行動は、干渉判断において緊急車両の予測走行経路が自動運転に係る走行経路と干渉することが予想されるときに実施される。回避行動として、減速、待機場所(一時停車可能な路肩や路側帯の等)への移動、待機場所での一時停車及び緊急車両の通過の待機、緊急車両の通過後の通常の走行経路への復帰等が例示される。
【0023】
緊急車両の検知は、例えば、車両に備える1又は複数のマイクが検出する音情報を取得し、音情報の音響認識(サイレン音の検出等)により行われる。緊急車両は大きな音を発するサイレンを鳴らしていることから、音響認識による緊急車両の検知は、その他の検知の方法と比較して検知範囲の観点で利点がある。その他の検知の方法としては、カメラが検出する画像情報の画像認識、LiDAR(Light Detection And Ranging)又はレーダーが検出する3次元点群情報の点群認識、インフラや周辺車両から通信を介して取得する情報の利用等が挙げられる。
【0024】
ここで緊急車両の検知により、緊急車両について回避対応の実施に関わる情報が算出される。例えば、緊急車両の地図上の位置及び方向、緊急車両の予測走行経路等である。
【0025】
ところで、緊急車両がまだ車両の十分近くを走行していない場合等では、ノイズの影響により緊急車両を誤検知してしまうことがある。このため。緊急車両を検知したことを受けて直ちに回避対応を実施すると、不必要な回避行動を実施してしまう虞がある。延いては、円滑な自動運転が阻害されてしまう虞がある。一方で、十分に検知が行われるまで単に回避対応を実施しないこととすると、緊急車両への対処が間に合わなくなる等、緊急車両への対応性能を担保できなくなる虞がある。
【0026】
そこで本実施形態に係る制御装置は、緊急車両を検知したとき、検知の信頼度(以下、単に「検知信頼度」と称する。)を算出する。そして、検知信頼度が所定の閾値(第1閾値)以上となるとき回避対応を実施する一方で、検知信頼度が第1閾値未満である間は予備行動を実施する。
図1に、本実施形態に係る制御装置による緊急車両への対処の類別を示す。
【0027】
ここで予備行動は、自動運転に係る制御や走行に影響が少なく、回避対応を円滑に実施することを可能とする行動の類型である。
【0028】
走行判断又は走行制御に関する予備行動として、加速抑制又は減速、車線変更の禁止、回避行動のための走行経路の生成及び回避行動の実施可能性の判断、交差点での回避経路の探索、交差点の青信号で一時停車あるいは速やかに交差点を渡って待機、交差点の赤信号で緊急車両の走行経路と干渉しない位置で停車、インフラ又は周辺車両に対して緊急車両の情報を要求する等が例示される。
【0029】
情報処理に関する予備行動として、センサのノイズ低減(例えば音情報のノイズ低減として、車内で流れる音楽や音声案内の音量を下げる、デバイスの冷却器等の音量が大きい処理を一時的に調整する等)、センサの検知感度の増加、センサのパラメータの調整等が例示される。
【0030】
このように本実施形態に係る制御装置によれば、十分な検知信頼度が得られるまでは回避対応を実施せず、予備行動を実施する。これにより、緊急車両が誤検知であったときは、回避行動を実施することなく定常走行に戻ることができる。一方で、十分な検知信頼度が得られたときは、事前に予備行動が実施されていることにより回避対応を円滑に実施することが可能である。延いては、緊急車両への対応性能を担保することができる。
【0031】
1-2.自動運転システム
図2は、本実施形態に係る制御装置100が適用された自動運転システム10の概略構成を示すブロック図である。自動運転システム10は、制御装置100と、センサ200と、通信装置300と、HMI機器400と、走行制御装置500と、を含んでいる。
【0032】
制御装置100は、センサ200、通信装置300、HMI機器400、及び走行制御装置500と互いに情報を伝達することができるように構成されている。典型的には、ワイヤーハーネスにより電気的に接続している。その他の構成として、無線通信による接続、光通信回線による接続等が例示される。
【0033】
センサ200は、車両の運転環境に係る情報を検出し、検出情報を出力する。センサ200が出力する検出情報は、制御装置100に伝達される。センサ200は、車両の周囲環境情報を検出する周囲環境検出センサ210と、車両の走行状態情報を検出する走行状態検出センサ220と、を含んでいる。
【0034】
周囲環境検出センサ210として、マイク、カメラ、レーダー、LiDAR等が例示される。周囲環境検出センサ210により検出される検出情報として、音情報、画像情報、3次元点群情報等が例示される。走行状態検出センサ220として、車速を検出する車輪速センサ、加速度を検出するGセンサ、角速度を検出するジャイロセンサ等が例示される。
【0035】
センサ200は、その他のセンサを含んでいても良い。例えば、車内の環境(乗客の状態等)を検出するセンサを含んでいても良い。
【0036】
通信装置300は、車両の外部の装置と通信を行うことで種々の情報の送受信を行う装置を示す。通信装置300として、例えば、インフラ又は周辺車両と通信を行う無線通信装置、GPSの受信機、インターネットに接続しインターネット上のサーバと通信を行う装置等が例示される。通信装置300が受信した通信情報は、制御装置100に伝達される。制御装置100に伝達される通信情報として、地図情報、道路交通情報、GPSによる位置情報、周辺車両の運転環境情報等が例示される。
【0037】
HMI機器400は、HMI機能を提供する装置である。HMI機器400として、ディスプレイ、スピーカ、タッチパネル、スイッチ、インジケータ等が例示される。HMI機器400により、ユーザによる自動運転機能に係る設定等の操作や自動運転機能に係る制御状態のユーザへの通知等が実現される。例えば、目的地の設定、各機能のオンオフ、周辺の地図の表示、手動運転への切り替え要求等が実現される。
【0038】
制御装置100は、取得する情報に基づいて、自動運転機能に係る処理を実行し制御信号を出力するコンピュータである。制御装置100は、典型的には、車両に備える1又は複数のECU(Electronic Control Unit)により実現される。その他には、通信ネットワーク(典型的には、インターネット)上に構成されたサーバにより実現されても良い。この場合、制御装置100は、通信ネットワークを介した通信により、情報を取得し、制御信号を伝達する。
【0039】
制御装置100は、1又は複数の記憶装置110と、1又は複数のプロセッサ120と、を備えている。1又は複数の記憶装置110は、1又は複数のプロセッサ120によって実行可能な制御プログラム111と、1又は複数のプロセッサ120が実行する処理に必要な制御情報112と、を格納している。記憶装置110として、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD、SSD等が例示される。制御装置100が取得する情報は、制御情報112として記憶装置110に格納される。制御情報112は、例えば、センサ200の検出情報、ユーザ設定情報、地図情報、道路交通情報、制御プログラム111に係るパラメータ情報等である。
【0040】
1又は複数のプロセッサ120は、記憶装置110から制御プログラム111及び制御情報112を読み出し、制御情報112に基づいて制御プログラム111に従う処理を実行する。これにより、自動運転機能に係る処理が実行され、制御信号が生成される。
【0041】
自動運転機能に係る処理として、車両の自己位置推定処理、周囲環境の認識処理、行動計画の生成処理、走行経路の生成処理が例示される。
【0042】
周囲環境の認識処理により、白線認識、歩行者の認識及び移動経路の予測、周辺車両の認識及び走行経路の予測、道路標識の認識、周囲の障害物の認識等が行われる。行動計画の生成処理により、車両の自己位置推定処理及び周囲環境の認識処理の結果に基づいた行動計画が生成される。行動計画は、例えば、目標車速の決定、右左折の実施、車線変更の実施、追い越しの実施等である。走行経路の生成処理により、行動計画の生成処理において生成された行動計画に従う走行経路が生成される。
【0043】
そして、1又は複数のプロセッサ120は、生成した行動計画に従うように、また生成した走行経路に追従するように制御信号を生成する。例えば、走行経路に追従するように、加速、制動、操舵に係る制御信号を生成する。車両の走行に係る制御信号は、走行制御装置500に伝達される。
【0044】
特に本実施形態では、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両への対処に係る処理として、車両の周囲を走行する緊急車両を検知する処理(緊急車両検知処理)と、検知信頼度を算出する処理(検知信頼度算出処理)と、緊急車両を検知したことを受けて、緊急車両に対する対応を判断する処理(緊急車両対応処理)と、を実行する。これらの処理については後述する。
【0045】
走行制御装置500は、車両の走行制御に係る処理を実行する装置である。走行制御装置500により、制御装置100から取得する制御信号に従う走行制御が行われることで、車両の自動運転が実現される。
【0046】
走行制御装置500は、例えば、車両に備える一群のアクチュエータと、一群のアクチュエータの動作を制御するECUと、により構成される。車両に備える一群のアクチュエータとして、動力装置(内燃機関、電気モータ等)を駆動するアクチュエータ、ブレーキ機構を駆動するアクチュエータ、ステアリング機構を駆動するアクチュエータ等が例示される。
【0047】
1-3.緊急車両への対処に係る処理
図3は、1又は複数のプロセッサ120が実行する緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。
【0048】
まず緊急車両検知処理121において、1又は複数のプロセッサ120は、検出情報に基づいて、車両の周囲を走行する緊急車両の検知を行う。検知の方法として、マイクにより検出される音情報の音響認識(大きな音の検出、機械学習モデルによるサイレン音の検出等)、カメラにより検出される画像情報の画像認識(緊急車両の認識及び分類、警告灯の認識等)、LiDAR又はレーダーにより検出される3次元点群情報の点群認識(緊急車両の認識及び分類)等が挙げられる。
【0049】
1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両検知処理121の処理結果として、検知情報を算出する。ここで、緊急車両を検知したとき、検知情報には、緊急車両について検出及び推定可能な情報が含まれる。例えば、緊急車両が存在する地図上の領域情報や緊急車両の予測走行経路等である。このような検知情報の算出のため、地図情報が利用される。検知情報の算出の方法として、複数のマイクにより検出される音情報の音響認識(例えば、マイク間の検出時間の差や音量の比率に基づく認識処理)により、車両と緊急車両の相対距離及び緊急車両の方向を算出し、それらの情報から地図情報を利用して緊急車両の地図上の位置及び方向を算出することが挙げられる。
【0050】
1又は複数のプロセッサ120は、検知情報の算出に際して、さらに通信装置300から取得する通信情報を利用しても良い。例えば、緊急車両を検知したとき、インフラとの通信により、特定の領域の緊急車両の存在情報や位置情報センサの情報を取得して利用しても良い。あるいは、周辺車両との通信により、周辺車両が有する緊急車両の検知情報や周辺車両の位置情報を取得して利用しても良い。
【0051】
次に検知信頼度算出処理122において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、検知信頼度を算出する。緊急車両を検知したことは、緊急車両検知処理121において算出した検知情報から判断される。検知信頼度の算出は、緊急車両が検知されたときの検出情報の特徴量に基づいて算出される。ここで、検出情報の特徴量は、例えば、音響認識におけるサイレン音の検出頻度、サイレン音の音響方向の変化量、変化頻度、及び変化程度(ランダム性)、サイレン音の音量、車両認識性能(検知頻度)等である。なお、検知信頼度の算出に際して、複数の特徴量が考慮されて良い。
【0052】
例えば、緊急車両が検知されたときの検出情報の特徴量がSi(i=1,2,・・・N)であるとき、検知信頼度を以下の式のConfidenceで算出することが考えられる。
【0053】
【0054】
ここで、wi(i=1,2,・・・,N)は、検出情報の重みである。重みwiは、各検出情報についての検知信頼度への影響の程度を示す。例えば、重みwiは、サイレン音の認識率、緊急車両の認識精度又は分類精度(再現率、適合率)に基づいて与えられる。さらに、事前に検知信頼度が低いことが予想される情報(画像情報や3次元点群情報による車両検知等)についての重みwiは、検知信頼度が高いことが予想される情報(10SNR以上の音響認識、インフラや周辺車両から取得する検知情報)についての1つ以上の情報がなければ検知信頼度が上がらないように与えられても良い。
【0055】
また、ni(i=1,2,・・・,N)は、ノイズ予測による補正値である。補正値niは、各検出情報について周辺ノイズ等に影響される程度を示す。例えば、補正値niは、周辺ノイズレベル、周辺音の特徴(検知されたサイレン音と同じ周波数が検出されるか等)、SNR,周囲の建物による遮蔽度、他のセンサ情報、車両外の情報等に基づいて与えられる。さらに、誤検知の可能性をノイズ予測に基づいて補正し、検知信頼度が高いことが予想される情報であってもノイズに弱い条件であれば、検知信頼度が下がるように補正値niを与えても良い。
【0056】
次に緊急車両対応処理123において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、検知信頼度に基づいて緊急車両に対して回避対応を実施するか予備行動を実施するかを判断する。緊急車両を検知したことは、緊急車両検知処理121において算出した検知情報から判断される。そして、検知信頼度が第1閾値以上であるとき回避対応を実施すると判断し、検知信頼度が第1閾値未満である間は予備行動を実施すると判断する。ここで、第1閾値は、自動運転システム10が適用される環境に応じて好適に定められて良く、制御プログラム111又は制御情報112としてあらかじめ与えられていて良い。
【0057】
1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両対応処理123の処理結果として、回避対応又は予備行動を実施するための制御信号を生成する。例えば、回避対応又は予備行動に対応した行動計画を生成し、行動計画に従う制御信号を生成する。これにより、検知信頼度に応じて緊急車両に対する回避対応又は予備行動が実現される。
【0058】
1-4.制御方法
以下、本実施形態に係る自動運転システム10により実現される車両の制御方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る自動運転システム10により実現される車両の制御方法を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0059】
まず検出情報及び地図情報を取得し(ステップS100)、緊急車両検知処理を実行する(ステップS110)。緊急車両を検知しないとき(ステップS120;No)、今回実行時の処理は終了する。
【0060】
緊急車両を検知したとき(ステップS120;Yes)、検知信頼度算出処理を実行し(ステップS130)、検知信頼度を算出する。そして、検知信頼度が第1閾値以上となるとき(ステップS140;Yes)、回避対応を実施し(ステップS150)、検知信頼度が第1閾値未満である間(ステップS140;No)、予備行動を実施する(ステップS160)。
【0061】
1-5.効果
以上に説明されたように、本実施形態によれば、緊急車両が検知されたとき、検知信頼度を算出する。そして、検知信頼度が第1閾値以上となるときは回避対応を実施する一方で、検知信頼度が第1閾値未満である間は予備行動を実施する。これにより、緊急車両が誤検知であったときは、回避行動を実施することなく定常走行に戻ることができる。また、十分な検知信頼度が得られたときは、事前に予備行動が実施されていることにより回避対応を円滑に実施することが可能である。延いては、緊急車両への対応性能を担保することができる。
【0062】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した内容と重複する説明は適宜省略する。
【0063】
第2実施形態に係る制御装置100は、緊急車両を検知したとき、緊急車両の予測走行経路の予測信頼度を算出する処理(予測信頼度算出処理)をさらに実行するように構成される。ここで、予測信頼度は、緊急車両が予測走行経路に沿って走行する可能性を示す。
【0064】
そして、第2実施形態に係る制御装置100は、検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ予測信頼度が第2閾値以上となるとき、緊急車両に対して回避対応を実施し、検知信頼度が第1閾値未満、又は予測信頼度が第2閾値未満である間は、緊急車両に対して予備行動を実施するように構成される。
図5に、第2実施形態に係る制御装置100による緊急車両への対処の類別を示す。
図5に示すように、第2実施形態によれば、検知信頼度が第1閾値以上であっても、予測信頼度が第2閾値未満である間は、予備行動が実施される。
【0065】
第2実施形態によれば、予測走行経路に基づいて回避対応を実施した後、緊急車両が予測走行経路に沿って走行しなかったために円滑な回避対応が阻害されることを抑制することができる。
【0066】
第2実施形態に係る自動運転システム10の構成は、
図2において説明した第1実施形態に係る自動運転システム10の構成と同等であって良い。
図6は、第2実施形態において、1又は複数のプロセッサ120が実行する緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。第2実施形態において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両への対処に係る処理として、緊急車両検知処理121と、検知信頼度算出処理122と、緊急車両対応処理123と、予測信頼度算出処理124と、を実行する。ここで、緊急車両検知処理121及び検知信頼度算出処理122は、
図3において説明した処理と同等であって良い。
【0067】
予測信頼度算出処理124において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、緊急車両の予測走行経路について予測信頼度を算出する。緊急車両の予測走行経路は、緊急車両検知処理121において算出され、検知情報として取得される。予測信頼度の算出は、地図情報と検知情報に基づいて算出される。例えば、緊急車両が走行可能な経路の数と、緊急車両の位置から自車に至るまでの信号機の数と、分岐の数と、をかけて得られる値が高くなるほど予測信頼度を小さいとする。
【0068】
次に緊急車両対応処理123において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、検知信頼度及び予測信頼度に基づいて緊急車両に対して回避対応を実施するか予備対応を実施するかを判断する。検知信頼度が第1閾値以上であり、かつ予測信頼度が第2閾値以上であるとき、回避対応を実施すると判断し、検知信頼度が第1閾値未満、又は予測信頼度が第2閾値未満である間は、予備行動を実施すると判断する。ここで、第1閾値及び第2閾値は、自動運転システム10が適用される環境に応じて好適に定められて良く、制御プログラム111又は制御情報112としてあらかじめ与えられていて良い。
【0069】
1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両対応処理123の処理結果として、回避対応又は予備行動を実施するための制御信号を生成する。これにより、検知信頼度及び予測信頼度に応じて緊急車両に対する回避対応又は予備行動が実現される。
【0070】
以下、第2実施形態に係る自動運転システム10により実現される車両の制御方法について説明する。
図7は、第2実施形態に係る自動運転システム10により実現される制御方法を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0071】
まず検出情報及び地図情報を取得し(ステップS200)、緊急車両検知処理を実行する(ステップS210)。緊急車両を検知しないとき(ステップS220;No)、今回実行時の処理は終了する。
【0072】
緊急車両を検知したとき(ステップS220;Yes)、検知信頼度算出処理(ステップS230)、及び予測信頼度算出処理(ステップS240)を実行し、検知信頼度及び予測信頼度を算出する。そして、検知信頼度が第1閾値以上(ステップS250;Yes)、かつ予測信頼度が第2閾値以上(ステップS260;Yes)となるとき、回避対応を実施し(ステップS270)、検知信頼度が第1閾値未満(ステップS250;No)、又は予測信頼度が第2閾値未満(ステップS260;No)である間は、予備行動を実施する(ステップS280)。
【0073】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した内容と重複する説明は適宜省略する。
【0074】
第3実施形態に係る制御装置100は、緊急車両を検知したとき、回避走行自信度を算出する処理(回避走行自信度算出処理)をさらに実行するように構成される。ここで、回避走行は回避対応における走行(例えば、路肩や空いているスペースに移動する走行)であり、回避走行自信度は、回避走行の実施可能性を示す。
【0075】
そして、第3実施形態に係る制御装置100は、回避走行自信度が第3閾値以上で検知信頼度が第1閾値以上となるときは、緊急車両に対して回避対応を実施し、回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値以上となるときは、遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施するように構成される。また、回避走行自信度が第3閾値以上で検知信頼度が第1閾値未満である間は、特定の予備行動に限って実施し、回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値未満である間は、可能なすべての予備行動を実施するように構成される。特に回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値未満である間は、遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を予備行動として実施するように構成される。ここで、特定の予備行動とは、例えば、減速制御、インフラ又は周辺車両から緊急車両の情報を取得する等の走行判断及び走行制御に関する予備行動である。
図8は、第3実施形態に係る制御装置100による緊急車両への対処の類別を示す。
【0076】
このように変形した態様を採用することにより、回避走行自信度が低く、自動運転によって緊急車両への対処が困難であるときは、遠隔運転又は手動運転に切り替えを行うことができる。さらに、回避走行自信度が低く検知信頼度が低い間に、遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を実施することで、遠隔運転又は手動運転への切り替えを円滑に実施することができる。また、回避走行自信度が高く検知信頼度が低い間は、特定の予備行動に限って実施することにより、不必要な予備行動を実施することを抑止することができる。延いては、円滑な自動運転が阻害されることを抑止することができる。
【0077】
第3実施形態に係る自動運転システム10の構成は、
図2において説明した第1実施形態に係る自動運転システム10の構成と同等であって良い。ただし、車両は、遠隔運転又は手動運転が可能なように構成される。例えば、車両は遠隔運転可能なように、通信装置300を介して遠隔運転を管轄する遠隔運転センターと通信可能なように構成され、走行制御装置500は遠隔運転センターから取得する運転操作情報に従って走行制御を実行するように構成される。あるいは、車両は手動運転可能なように、運転操作装置(アクセルペダル、ステアリングホイール等)を備えている。
【0078】
図9は、第3実施形態において、1又は複数のプロセッサ120が実行する緊急車両への対処に係る処理について説明するためのブロック図である。第3実施形態において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両への対処に係る処理として、緊急車両検知処理121と、検知信頼度算出処理122と、緊急車両対応処理123と、回避走行自信度算出処理125と、を実行する。ここで、緊急車両検知処理121及び検知信頼度算出処理122は、
図3において説明した処理と同等であって良い。
【0079】
回避走行自信度算出処理125において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、回避走行自信度を算出する。回避走行自信度の算出は、地図情報、検出情報、又は検知情報に基づいて算出される。例えば、道路が狭い、周辺の車両又は歩行者が混雑している等を検出したときは、回避走行自信度を低く算出する。
【0080】
次に緊急車両対応処理123において、1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両を検知したとき、検知信頼度及び回避走行自信度に基づいて緊急車両の対処を判断する。回避走行自信度が第3閾値以上で検知信頼度が第1閾値以上となるときは、回避対応を実施すると判断し、回避走行自信度が第3閾値未満で検知信頼度が第1閾値以上となるときは、遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施すると判断し、検知信頼度が第1閾値未満である間は、予備行動を実施すると判断する。ここで、検知信頼度が第1閾値未満である間、回避走行自信度が第3閾値以上であるときは、特定の予備行動に限って実施し、回避走行自信度が第3閾値未満であるときは、可能なすべての予備行動を実施すると判断する。特に、避走行自信度が第3閾値未満であるときは、遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を予備行動として実施すると判断する。なお、第1閾値及び第3閾値は、自動運転システム10が適用される環境に応じて好適に定められて良く、制御プログラム111又は制御情報112としてあらかじめ与えられていて良い。
【0081】
1又は複数のプロセッサ120は、緊急車両対応処理123の処理結果として、判断された緊急車両への対処に応じた制御信号を生成する。これにより、検知信頼度及び回避走行自信度に応じた緊急車両への対処が実現される。
【0082】
以下、第3実施形態に係る自動運転システム10により実現される車両の制御方法について説明する。
図10は、第3実施形態に係る自動運転システム10により実現される制御方法を示すフローチャートである。
図10に示す処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0083】
まず検出情報及び地図情報を取得し(ステップ300)、緊急車両検知処理を実行する(ステップS310)。緊急車両を検知しないとき(ステップS320;No)、今回実行時の処理は終了する。
【0084】
緊急車両を検知したとき(ステップS320;Yes)、検知信頼度算出処理(ステップS330)、及び回避走行自信度算出処理(ステップS340)を実行し、検知信頼度及び回避走行自信度を算出する。
【0085】
検知信頼度が第1閾値以上(ステップS350;Yes)、かつ回避走行自信度が第3閾値以上(ステップS360;Yes)となるとき、回避対応を実施する(ステップS370)。検知信頼度が第1閾値以上(ステップS350;Yes)、かつ回避走行自信度が第3閾値未満(ステップS360;No)となるとき、遠隔運転又は手動運転への切り替えを実施する(ステップS380)。検知信頼度が第1閾値未満である間は(ステップS350;No)、回避走行自信度に応じた予備行動を実施する(ステップS390)。ここでステップS390において、回避走行自信度が第3閾値以上であるときは、特定の予備行動に限って実施し、回避走行自信度が第3閾値未満であるときは、可能なすべての予備行動を実施する。特に、避走行自信度が第3閾値未満であるときは、遠隔運転又は手動運転への切り替えが実施される見込みがあることを通知するアラームの発出を予備行動として実施する。
【符号の説明】
【0086】
10 自動運転システム,100 制御装置,110 記憶装置,111 制御プログラム,112 制御情報,120 プロセッサ,121 緊急車両検知処理,122 検知信頼度算出処理,123 緊急車両対応処理,124 予測信頼度算出処理,125 回避走行自信度算出処理,200 センサ,210 周囲環境検出センサ,220 走行状態検出センサ,300 通信装置,400 HMI機器,500 走行制御装置