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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/04 20060101AFI20240925BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20240925BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240925BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20240925BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20240925BHJP
【FI】
F02N11/04 D
F02N11/04 Z
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
B60W20/15
B60W20/17
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021196180
(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公開番号】P2023082419
(43)【公開日】2023-06-14
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥村 慎
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/208028(JP,A1)
【文献】特開2014-141209(JP,A)
【文献】特開2014-140268(JP,A)
【文献】特開2017-178005(JP,A)
【文献】特開2014-051175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 1/00-99/00
B60W 10/00-20/50
B60K 6/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸としてクランクシャフトを有する内燃機関と、
前記クランクシャフトにトルクを付与可能なモータジェネレータと、
前記内燃機関を始動するためのスタータと、
前記モータジェネレータに電力を供給する第1バッテリと、
前記スタータに電力を供給する第2バッテリと、
外部の通信装置と無線通信可能な通信機と、
を備える車両に適用される制御装置であって、
始動要求を受信した場合に、前記モータジェネレータ及び前記スタータのいずれか一方を駆動することにより前記内燃機関を始動する始動処理を実行可能であり、
前記始動処理では、前記始動要求が、前記車両外の前記通信装置からの遠隔操作に基づく場合には、前記スタータを駆動することにより前記内燃機関を始動させ、
前記車両内に乗員がいる状態で前記始動要求を受信した場合には、前記モータジェネレータを駆動することにより前記内燃機関を始動させ
前記車両が予め定められた前記モータジェネレータの駆動の禁止条件を満たしているときには、前記車両内に乗員がいるか否かに拘わらず、前記スタータによって前記内燃機関を始動させ、
前記禁止条件は、前記第1バッテリの充電容量が予め定められた規定値以下であることを含む
制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記内燃機関の機関温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記禁止条件は、前記機関温度が予め定められた規定温度以下であることを含む
請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記始動要求を受信してから予め定められた規定時間経過後に、前記始動要求が前記通信装置からの遠隔操作に基づくものであるか否かを判定する判定処理を、さらに実行可能である
請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両は、内燃機関のクランクシャフトにトルクを付与できるモータジェネレータと、内燃機関を始動可能なスタータと、制御装置と、を備えている。制御装置は、内燃機関の始動要求を受信したときに内燃機関を始動する。このとき、制御装置は、モータジェネレータ及びスタータのいずれか一方を駆動することにより、内燃機関を始動する。具体的には、車両の運転者がイグニッションスイッチをオン操作したことに伴う始動要求を受信したときには、制御装置はスタータによって内燃機関を始動する。一方で、内燃機関が一時停止した後の自動始動要求を受信したときには、制御装置はモータジェネレータによって内燃機関を始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-137270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、車両内に乗員がいることを前提としている。一方で、内燃機関の始動は、通信装置からの遠隔操作によって行われる場合がある。特許文献1に記載の発明は、通信装置からの遠隔操作に応じて始動要求を受信した場合に、内燃機関をモータジェネレータ及びスタータのどちらにより始動するべきかという点について、なお検討の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、出力軸としてクランクシャフトを有する内燃機関と、前記クランクシャフトにトルクを付与可能なモータジェネレータと、前記内燃機関を始動するためのスタータと、前記モータジェネレータ及び前記スタータに電力を供給するバッテリと、外部の通信装置と無線通信可能な通信機と、を備える車両に適用される制御装置であって、始動要求を受信した場合に、前記モータジェネレータ及び前記スタータのいずれか一方を駆動することにより前記内燃機関を始動する始動処理を実行可能であり、前記始動処理では、前記始動要求が、前記車両外の前記通信装置からの遠隔操作に基づく場合には、前記スタータを駆動することにより前記内燃機関を始動させ、前記車両内に乗員がいる状態で前記始動要求を受信した場合には、前記モータジェネレータを駆動することにより前記内燃機関を始動させる制御装置である。
【0006】
上記構成では、スタータは、モータジェネレータに比べて、駆動時における静粛性が低い。また、スタータは、モータジェネレータに比べて、内燃機関の始動に要するバッテリの電力消費量が小さい。そして、遠隔操作による始動要求を受信した場合には、車両内に乗員がいない可能性が高い。車両内に乗員がいない状態では、静粛性よりもバッテリの電力消費量の低減を優先させることが好ましい。一方で、車両内に乗員がいる状態では、駆動時の静粛性が高い方が好ましい。
【0007】
上記構成によれば、制御装置は、始動要求が遠隔操作に基づくものであるときには、乗員が車両内にいないものとして、スタータで内燃機関を始動させる。すなわち、上記構成によれば、制御装置は、内燃機関の始動の手段として、乗員が車両内にいないという状況に適した、電力消費量の小さなスタータを選択する。そして、制御装置は、車両内に乗員がいる状態で始動要求を受信した場合には、モータジェネレータを駆動することにより内燃機関を始動させる。すなわち、上記構成によれば、制御装置は、内燃機関の始動の手段として、乗員が車両内にいるという状況に適した、静粛性の高いモータジェネレータを選択する。
【0008】
上記構成において、前記始動処理では、前記車両が予め定められた前記モータジェネレータの駆動の禁止条件を満たしているときには、前記車両内に乗員がいるか否かに拘わらず、前記スタータによって前記内燃機関を始動させる制御装置であってもよい。上記構成によれば、車両が禁止条件を満たしているときには、電力消費量の少ないスタータで内燃機関を始動する。したがって、より確実に内燃機関を始動できる。
【0009】
上記構成において、前記車両は、前記バッテリとして、前記モータジェネレータに電力を供給する第1バッテリと、前記スタータに電力を供給する第2バッテリと、を備えており、前記禁止条件は、前記第1バッテリの充電容量が予め定められた規定値以下であることを含む制御装置であってもよい。上記構成によれば、第1バッテリの充電容量が小さい状態で、モータジェネレータを使用することを防止できる。すなわち、第1バッテリの過放電を防止できる。
【0010】
上記構成において、前記車両は、前記内燃機関の機関温度を検出する温度センサをさらに備え、前記禁止条件は、前記機関温度が予め定められた規定温度以下であることを含む制御装置であってもよい。上記構成によれば、機関温度が低い状態、すなわち内燃機関の潤滑油の粘度が高くて、内燃機関を始動させるのに多くのエネルギーを要する場合には、スタータにより内燃機関を始動させる。したがって、機関温度が低くても、内燃機関の始動に失敗することなく確実に内燃機関を始動できる。
【0011】
上記構成において、前記始動要求を受信してから予め定められた規定時間経過後に、前記始動要求が前記通信装置からの遠隔操作に基づくものであるか否かを判定する判定処理を、さらに実行可能である制御装置であってもよい。
【0012】
上記構成において、制御装置が、通信装置からの遠隔操作に基づく始動要求を受信したとする。このとき、制御装置内での処理遅延、及び各種処理の同期ずれなどに起因して、制御装置が始動要求を受信した時点で、当該始動要求が通信装置からの遠隔操作に基づくものであるか否かが未確定であることがある。この場合、制御装置が始動要求を受信した時点で、当該始動要求が通信装置からの遠隔操作に基づくものか否かを判定すると、遠隔操作に基づくものではないと誤判定するおそれがある。この点、上記構成によれば、制御装置は、規定時間経過後に始動要求が通信装置からの遠隔操作に基づくものであるか否かを判定する。したがって、制御装置内での処理遅延などが発生しても、始動要求が通信装置からの遠隔操作に基づくものであるか否かの判定に、誤判定が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態における車両のハイブリッドシステムの概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態の制御装置が実行する機関始動制御のフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態の制御装置が実行する機関始動制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、車両500は、駆動源として、内燃機関10と、モータジェネレータ20と、を備えている。内燃機関10は、出力軸としてクランクシャフト10Aを有している。モータジェネレータ20は、出力軸20Aを有している。モータジェネレータ20は、いわゆる三相交流電動機である。
【0015】
車両500は、第1プーリ12と、第2プーリ13と、伝達ベルト14と、を備えている。第1プーリ12は、クランクシャフト10Aに連結している。第2プーリ13は、出力軸20Aに連結している。伝達ベルト14は、第1プーリ12及び第2プーリ13に掛け回されている。すなわち、モータジェネレータ20は、第2プーリ13、伝達ベルト14、及び第1プーリ12を介して、内燃機関10のクランクシャフト10Aに連結している。なお、図示は省略するが、内燃機関10のクランクシャフト10Aは、ベルト、プーリ、ギア、チェーンなどを介して、油圧を発生するための油圧ポンプやエアコンのコンプレッサなどにも連結している。
【0016】
モータジェネレータ20が、発電機として機能する場合には、内燃機関10のクランクシャフト10Aのトルクは、第1プーリ12、伝達ベルト14、及び第2プーリ13を介して、出力軸20Aに伝達する。そして、出力軸20Aの回転に応じて、モータジェネレータ20が発電する。一方で、モータジェネレータ20が、電動モータとして機能する場合には、モータジェネレータ20は、第2プーリ13にトルクを与える。そして、そのトルクは、伝達ベルト14及び第1プーリ12を介して内燃機関10のクランクシャフト10Aに伝達する。このように、モータジェネレータ20は、内燃機関10のクランクシャフト10Aにトルクを付与可能である。なお、内燃機関10が停止している際に、モータジェネレータ20を電動モータとして機能させることで、内燃機関10が始動する。
【0017】
車両500は、第1バッテリとしての高圧バッテリ22と、第2バッテリとしての低圧バッテリ24と、を備えている。また、車両500は、インバータ21、DC/DCコンバータ23、及び補機25を備えている。
【0018】
モータジェネレータ20は、インバータ21を介して高圧バッテリ22に接続している。インバータ21は、いわゆる双方向インバータである。すなわち、インバータ21は、モータジェネレータ20が発電した交流電圧を直流電圧に変換して高圧バッテリ22に出力する。さらに、インバータ21は、高圧バッテリ22が出力した直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ20に出力する。
【0019】
高圧バッテリ22は、48Vのリチウムイオン電池である。高圧バッテリ22は、モータジェネレータ20が電動モータとして機能する際には、当該モータジェネレータ20に電力を供給する。また、高圧バッテリ22は、モータジェネレータ20が発電機として機能するときには、当該モータジェネレータ20から電力の供給を受けて充電される。
【0020】
モータジェネレータ20は、インバータ21を介してDC/DCコンバータ23に接続している。また、DC/DCコンバータ23は、高圧バッテリ22にも接続している。DC/DCコンバータ23は、インバータ21及び高圧バッテリ22から出力される直流電圧を12Vから15Vの範囲内の電圧に降圧して出力する。
【0021】
低圧バッテリ24は、DC/DCコンバータ23に接続している。低圧バッテリ24は、高圧バッテリ22よりも電圧の低い12Vの鉛蓄電池である。低圧バッテリ24は、DC/DCコンバータ23の出力電圧が12Vであるときには、12Vの直流電圧を出力する。低圧バッテリ24は、DC/DCコンバータ23が駆動していないときも、12Vの直流電圧を出力する。また、低圧バッテリ24は、DC/DCコンバータ23の出力電圧が低圧バッテリ24の開回路電圧よりも大きいときには、DC/DCコンバータ23から電力の供給を受けて充電される。
【0022】
DC/DCコンバータ23及び低圧バッテリ24には、各種の補機25が接続されている。補機25は、例えば、車両500の前照灯、方向指示灯、室内灯などのライト関係、及びカーナビゲーション装置、スピーカなどの車室内装備である。補機25は、DC/DCコンバータ23が駆動していないときには、低圧バッテリ24から電力の供給を受ける。補機25は、DC/DCコンバータ23の出力電圧が低圧バッテリ24の開回路電圧よりも大きいときには、当該DC/DCコンバータ23から電力の供給を受ける。
【0023】
また、DC/DCコンバータ23及び低圧バッテリ24には、上述した補機25の1つとして、内燃機関10を始動するためのスタータ25Aが接続されている。スタータ25Aは直流電動機である。スタータ25Aの出力軸は、図示しないギアを介して内燃機関10のクランクシャフト10Aに連結している。スタータ25Aは、低圧バッテリ24及びDC/DCコンバータ23からの電力の供給を受けて駆動する。
【0024】
車両500は、内燃機関10の機関温度を検出するための温度センサ50を備えている。温度センサ50は、内燃機関10内に区画されたウォータジャケットの出口に位置している。つまり、温度センサ50は、内燃機関10のウォータジャケットから排出される冷却水の温度を、内燃機関10の機関温度として検出する。
【0025】
車両500は、通信機110、イグニッションスイッチ120、及び制御装置100を備えている。
通信機110は、車両500外部の通信装置200と無線通信可能である。通信装置200は、例えば車両500の電子キー、及びスマートフォンなどである。なお、電子キーとは、車両500のドアの施錠、開錠、ドアの開閉、内燃機関10の始動、停止などを、無線通信により指示できるデバイスである。
【0026】
通信機110は、通信装置200から、内燃機関10の始動を指示するための信号S1を受信可能である。通信機110は、信号S1を受信したことを受けて始動要求SRを発信する。始動要求SRは、内燃機関10を始動させる旨の情報を含んでいる。また、通信機110は、始動要求SRに関連付けて遠隔信号EXを発信する。遠隔信号EXは、始動要求SRが、車両500外の通信装置200からの遠隔操作に基づく信号であることを示すものである。
【0027】
通信機110は、通信装置200から、内燃機関10の停止を指示するための信号を受信可能である。通信機110は、内燃機関10の停止を指示するための信号を受信したことを受けて停止要求を発信する。停止要求は、内燃機関10を停止させる旨の情報を含んでいる。
【0028】
イグニッションスイッチ120は、車両500の車室内に搭載されている。イグニッションスイッチ120は、例えばスタートスイッチ、システムオンスイッチなどと呼称されることもある。イグニッションスイッチ120は、例えば押し釦スイッチである。内燃機関10が停止しており、且つ図示しないブレーキペダルが踏まれている状態で、イグニッションスイッチ120が操作されると、イグニッションスイッチ120は、始動要求SRを発信する。イグニッションスイッチ120が発信する始動要求SRは、通信機110が発信する始動要求SRと同種のものである。また、イグニッションスイッチ120は、始動要求SRを発信するのに伴い、当該始動要求SRに関連付けて乗員信号IPを発信する。乗員信号IPは、始動要求SRが、車両500内に乗員がいる状態で発信されたことを示すものである。
【0029】
内燃機関10が駆動している状態で、イグニッションスイッチ120が操作されると、イグニッションスイッチ120は、停止要求を発信する。停止要求は、内燃機関10を停止させる旨の情報を含んでいる。
【0030】
制御装置100は、内燃機関10、モータジェネレータ20及びスタータ25Aなどを制御する。制御装置100は、通信機110、又はイグニッションスイッチ120から発信される始動要求SRを受信する。制御装置100は、通信機110から発信される遠隔信号EXを受信する。制御装置100は、イグニッションスイッチ120から発信される乗員信号IPを受信する。制御装置100は、始動要求SRに関連付けられている信号が、遠隔信号EXであるか乗員信号IPであるかに応じて、内燃機関10の始動の手段を選択する。
【0031】
また、制御装置100は、通信機110、又はイグニッションスイッチ120から発信される停止要求を受信する。制御装置100は、停止要求の受信に応じて、内燃機関10の駆動を停止する。
【0032】
制御装置100は、高圧バッテリ22から当該高圧バッテリ22の状態情報IHを示す信号を受信する。高圧バッテリ22の状態情報IHは、高圧バッテリ22の出力電圧値、出力電流値及び温度などである。制御装置100は、高圧バッテリ22の状態情報IHに基づいて、高圧バッテリ22の充電容量を算出する。なお、この実施形態において、高圧バッテリ22の充電容量とは、状態情報IHが入力された時点で高圧バッテリ22に充電されている電力量を、当該高圧バッテリ22の満充電の電力量に対する割合として示したものであり、例えば百分率(%)で表される。なお、図示は省略するが、制御装置100は、低圧バッテリ24から当該低圧バッテリ24の状態情報を示す信号を受信する。制御装置100は、低圧バッテリ24の状態情報に基づいて、低圧バッテリ24の充電容量などを算出する。
【0033】
なお、制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。また、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROMなどのメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0034】
<制御装置が実行可能な機関始動制御について>
以下、制御装置100が実行する機関始動制御について説明する。制御装置100は、車両500のシステムがオフ状態からオン状態に変更されたことに伴い、以下の機関始動制御を一度だけ実行する。なお、システムがオン状態とは、制御装置100及びそれに関連する電子機器に電力が供給されている状態のことをいう。
【0035】
図2に示すように、制御装置100は、機関始動制御を実行すると、先ず、ステップS11の処理を実行する。ステップS11では、制御装置100は、車両500外の通信装置200からの遠隔操作に基づく内燃機関10の始動要求があるか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、始動要求SRを受信したか否かを判定する。また、制御装置100は、受信された始動要求SRに関連付けられている信号が遠隔信号EXであるか否かを判定する。始動要求SRを受信しており、且つ遠隔信号EXが関連付けられている場合(S11:YES)、制御装置100の処理は、ステップS12へ移行する。
【0036】
ステップS12では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、スタータ25Aを駆動することにより内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0037】
一方、ステップS11において否定判定の場合(S11:NO)、制御装置100の処理は、ステップS13へ移行する。ステップS13では、制御装置100は、車両500内に乗員がいる状態で内燃機関10の始動要求があるか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、始動要求SRを受信したか否かを判定する。また、制御装置100は、受信された始動要求SRに関連付けられている信号が乗員信号IPであるか否かを判定する。始動要求SRを受信していない場合(S13:NO)、制御装置100の処理は、ステップS11へ移行する。一方で、始動要求SRを受信しており、且つ乗員信号IPが関連付けられている場合(S13:YES)、制御装置100の処理は、ステップS14へ移行する。
【0038】
ステップS14では、制御装置100は、予め定められた、モータジェネレータ20の駆動の禁止条件が成立しているか否かを判定する。禁止条件は、例えば、「高圧バッテリ22の充電容量が予め定められた規定値X以下」である。規定値Xは、高圧バッテリ22に不可逆な劣化を生じさせない充電容量の下限値に、モータジェネレータ20を駆動して内燃機関10を始動するのに要する充電容量を加算した値として定められている。ステップS14では、制御装置100は、高圧バッテリ22の状態情報IHに基づいて、高圧バッテリ22の充電容量を算出する。そして、制御装置100は、当該充電容量が規定値X以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ22の充電容量が規定値X以下である場合(S14:YES)、制御装置100の処理は、ステップS15へ移行する。
【0039】
ステップS15では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、スタータ25Aを駆動することにより内燃機関10を始動させる。すなわち、ステップS14において禁止条件が成立している場合、始動要求SRに乗員信号IPが関連付けられていても、スタータ25Aによって内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0040】
一方で、ステップS14において否定判定の場合(S14:NO)、制御装置100の処理は、ステップS16へ移行する。ステップS16では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動することにより内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0041】
<第1実施形態の作用>
車両500外の乗員が、通信装置200を操作して内燃機関10の始動を指示したとする。この場合、通信装置200は信号S1を発信する。通信機110は、信号S1を受信すると、始動要求SR及び遠隔信号EXを発信する。制御装置100は、始動要求SR及び遠隔信号EXを受信すると、スタータ25Aを駆動して内燃機関10を始動させる。
【0042】
一方で、乗員が車両500内に乗り込み、イグニッションスイッチ120を操作して内燃機関10の始動を指示したとする。この場合、制御装置100は、始動要求SR及び乗員信号IPを受信する。そして、上述したモータジェネレータ20の駆動の禁止条件が成立していなければ、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動して内燃機関10を始動する。
【0043】
<第1実施形態の効果>
(1-1)上記第1実施形態において、制御装置100が受信した始動要求SRに遠隔信号EXが関連付けられている場合には、車両500内に乗員がいない可能性が高い。車両500内に乗員がいない状態では、静粛性よりも電力消費量を節約することを優先させることが好ましい。そして、スタータ25Aは、モータジェネレータ20に比べて、駆動時における静粛性が低い。その一方で、スタータ25Aは、モータジェネレータ20に比べて、内燃機関10の始動に要する電力消費量が小さい。上記第1実施形態によれば、始動要求SRが遠隔操作に基づくものであるときには、乗員が車両500内にいないものとして、制御装置100は、スタータ25Aで内燃機関10を始動する。すなわち、制御装置100は、内燃機関10の始動の手段として、乗員が車両500内にいないという状況に適した、電力消費量の小さいスタータ25Aを選択する。
【0044】
(1-2)上記第1実施形態構成において、制御装置100が受信した始動要求SRに乗員信号IPが関連付けられている場合には、車両500内に乗員がいる可能性が高い。車両500内に乗員がいる状態では、電力消費量を節約することよりも静粛性を優先させることが好ましい。そして、モータジェネレータ20は、スタータ25Aに比べて、内燃機関10の始動に要する電力消費量が大きい。その一方で、モータジェネレータ20は、スタータ25Aに比べて、駆動時における静粛性が高い。上記第1実施形態によれば、始動要求SRを、車両500内に乗員がいる状態で受信した場合には、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動することにより内燃機関10を始動させる。すなわち、制御装置100は、内燃機関10の始動の手段として、乗員が車両500内にいるという状況に適した、静粛性の高いモータジェネレータ20を選択する。
【0045】
(1-3)上記第1実施形態において、制御装置100は、車両500が禁止条件を満たしているときには、始動要求SRに乗員信号IPが関連付けられていても、スタータ25Aによって内燃機関10を始動させる。つまり、制御装置100は、車両500内に乗員がいるか否かに拘わらず、スタータ25Aによって内燃機関10を始動させる。この構成によれば、車両500が禁止条件を満たしているときには、電力消費量が少なく、且つ内燃機関10の始動成功の信頼性の高いスタータ25Aで内燃機関10を始動する。したがって、第1実施形態では、より確実に内燃機関10を始動できる。
【0046】
(1-4)上記第1実施形態において、禁止条件は、高圧バッテリ22の充電容量が予め定められた規定値X以下であることを含んでいる。この構成によれば、高圧バッテリ22の充電容量が小さい状態で、モータジェネレータ20を使用することを防止できる。すなわち、高圧バッテリ22の過放電により高圧バッテリ22に不可逆的な劣化を生じさせることを防止できる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、制御装置100の第2実施形態について説明する。以下では、第1実施形態と同様の構成については、説明を簡略化、または省略する。
【0048】
第2実施形態において、制御装置100は、内燃機関10、モータジェネレータ20、及びスタータ25Aなどを制御する。制御装置100は、通信機110又はイグニッションスイッチ120から発信される始動要求SRを受信する。制御装置100は、通信機110から発信される遠隔信号EXを受信する。一方で、第2実施形態において、イグニッションスイッチ120は、乗員信号IPを発信しない。すなわち、制御装置100は、イグニッションスイッチ120から発信される乗員信号IPを受信しない。制御装置100は、始動要求SRに遠隔信号EXが関連付けられているか否かに応じて、内燃機関10の始動の手段を選択する。
【0049】
以下、制御装置100が実行する機関始動制御について説明する。制御装置100は、車両500のシステムがオフ状態からオン状態に変更されたことに伴い、以下の機関始動制御を一度だけ実行する。
【0050】
図3に示すように、制御装置100は、機関始動制御を実行すると、先ず、ステップS21の処理を実行する。ステップS21では、制御装置100は、内燃機関10の始動要求があるか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、始動要求SRを受信したか否かを判定する。ステップS21において否定判定の場合(S21:NO)、制御装置100は、再びステップS21の処理を実行する。ステップS21において肯定判定の場合(S21:YES)、制御装置100の処理は、ステップS22へ移行する。
【0051】
ステップS22では、制御装置100は、予め定められた規定時間待機する。規定時間は、制御装置100内での処理遅延及び各種処理の同期ずれなどが解消されるまでの時間として予め定められている。例えば、規定時間は、数ミリ秒から数十ミリ秒である。規定時間経過後、制御装置100の処理は、ステップS23へ移行する。
【0052】
ステップS23において、制御装置100は判定処理を実行する。具体的には、制御装置100は、受信された始動要求SRに遠隔信号EXが関連付けられているか否かを判定する。始動要求SRを受信しており、且つ遠隔信号EXが関連付けられている場合(S23:YES)、制御装置100の処理は、ステップS24へ移行する。
【0053】
ステップS24では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、スタータ25Aを駆動することにより内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0054】
一方、ステップS23において否定判定の場合(S23:NO)、制御装置100の処理は、ステップS25へ移行する。ステップS25において、制御装置100は、遠隔信号EXを受信しなかったことから、始動要求SRは、車両500内の乗員がいる状態で行われたものと判定する。そして、制御装置100は、予め定められた、モータジェネレータ20の駆動の禁止条件が成立しているか否かを判定する。禁止条件は、第1実施形態と同じである。つまり、ステップS25では、制御装置100は、高圧バッテリ22の状態情報IHに基づいて、高圧バッテリ22の充電容量を算出する。そして、制御装置100は、当該充電容量が規定値X以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ22の充電容量が規定値X以下である場合(S25:YES)、制御装置100の処理は、ステップS26へ移行する。
【0055】
ステップS26では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、スタータ25Aを駆動することにより内燃機関10を始動させる。すなわち、ステップS25において禁止条件が成立している場合、車両500内に乗員がいるか否かに拘わらず、スタータ25Aによって内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0056】
一方で、ステップS25において否定判定の場合(S25:NO)、制御装置100の処理は、ステップS27へ移行する。ステップS27では、制御装置100は、始動処理を実行する。具体的には、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動することにより内燃機関10を始動させる。その後、制御装置100は、機関始動制御を終了する。
【0057】
<第2実施形態の効果>
次に、第2実施形態の効果を説明する。第2実施形態の制御装置100は、第1実施形態の(1-1)、(1-3)、(1-4)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0058】
(2-1)上記第2実施形態において、制御装置100が受信した始動要求SRに遠隔信号EXが関連付けられていない場合には、車両500内に乗員がいる可能性が高い。この場合、上記第2実施形態によれば、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動することにより内燃機関10を始動させる。すなわち、制御装置100は、内燃機関10の始動の手段として、乗員が車両500内にいるという状況に適した、静粛性の高いモータジェネレータ20を選択する。
【0059】
(2-2)上記第2実施形態において、制御装置100は、処理遅延及び各種処理の同期ずれなどに起因して、制御装置100が始動要求SRを受信した時点で遠隔信号EXを受信できないことがある。この場合、制御装置100は、始動要求SRを受信した時点で、当該始動要求SRが通信装置200からの遠隔操作に基づくものか否かを判定すると、遠隔操作に基づくものではないと判定するおそれがある。すなわち、制御装置100は、当該始動要求SRを、車両500内に乗員がいる状態での始動要求SRであると誤判定するおそれがある。
【0060】
上記第2実施形態において、制御装置100は、始動要求SRを受信してから規定時間経過後に、遠隔信号EXを受信したか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、規定時間経過後に始動要求SRが通信装置200からの遠隔操作に基づくものであるか否かを判定する。したがって、制御装置100内での処理遅延などが発生しても、始動要求SRが通信装置200からの遠隔操作に基づくものであるか否かの判定に、誤判定が生じにくい。
【0061】
<変更例>
上記各実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0062】
・内燃機関10とモータジェネレータ20との連結の態様は、上記実施形態に限らない。例えば、内燃機関10とモータジェネレータ20との間に、第1プーリ12、伝達ベルト14、及び第2プーリ13に加えて、複数のギアなどで構成される減速機構や、駆動力伝達経路の断接を行うクラッチなどが介在されていてもよい。また、内燃機関10とモータジェネレータ20との連結の様態は、複数のギアのみで構成されていてもよい。
【0063】
・高圧バッテリ22及び低圧バッテリ24の出力電圧は、問わない。高圧バッテリ22として、48Vよりも低い出力電圧のバッテリを採用してもよいし、48Vよりも高い出力電圧のバッテリを採用してもよい。また、必ずしも、低圧バッテリ24の出力電圧が高圧バッテリ22の出力電圧よりも低くなくてもよく、両者の出力電圧が同じであってもよい。
【0064】
・高圧バッテリ22及び低圧バッテリ24の種類は、上記実施形態の例に限らない。例えば、高圧バッテリ22及び低圧バッテリ24として、リチウムイオン電池、及び鉛蓄電池以外に、ニッケル水素電池、NAS電池、又は全固定電池を採用してもよい。
【0065】
・主として内燃機関10の走行トルクをアシストするモータジェネレータと、主として内燃機関10からのトルクにより発電するモータジェネレータとを別々に備えていてもよい。この場合、内燃機関10の走行トルクをアシストするモータジェネレータを使用して内燃機関10の始動を行えばよい。
【0066】
・車両500は、低圧バッテリ24を備えていなくてもよい。その場合、スタータ25Aは、高圧バッテリ22から電力を得るものとする。
・インバータ21は、モータジェネレータ20の筐体内に内蔵されていてもよい。
【0067】
・禁止条件は、上記実施形態以外の例を含んでいてもよい。例えば、禁止条件は、「内燃機関10の機関温度が予め定められた規定温度以下」という条件を含んでいてもよい。内燃機関10の機関温度が低い場合、内燃機関10の潤滑油の粘度が高くなる。それに伴い、内燃機関10を構成する各部品の摺動抵抗が高くなる。したがって、内燃機関10の機関温度が低い場合、内燃機関10を始動させるのに多くのエネルギーを要する。そして、このような状況下では、モータジェネレータ20が出力できるトルクによっては、内燃機関10の摺動抵抗が高すぎて、モータジェネレータ20では内燃機関10の始動ができないこともあり得る。この変更例によれば、機関温度が低い状況下では、モータジェネレータ20ではなくスタータ25Aで内燃機関10を始動させる。したがって、機関温度が低くても、内燃機関10の始動に失敗することなく確実に内燃機関10を始動できる。
【0068】
・第1実施形態の制御装置100は、機関始動制御のステップS14の処理を省略してもよい。すなわち、禁止条件の成立の有無に拘わらず、始動処理を実行してもよい。その場合の始動処理では、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動して内燃機関10を始動させる。この点、第2実施形態も同様に変更してもよい。
【0069】
・第1実施形態の制御装置100は、機関始動制御のステップS12の処理を実行する前に、スタータ25Aの駆動を禁止する禁止条件があるか否かを判定してもよい。スタータ25Aの駆動を禁止する禁止条件は、例えば、「スタータ25Aが故障している」などの条件である。スタータ25Aの駆動を禁止する禁止条件が成立した場合、制御装置100は、モータジェネレータ20を駆動して内燃機関10を始動してもよい。この点、第2実施形態も同様に変更してもよい。
【0070】
・第1実施形態の制御装置100は、車両500内で通信装置200が操作されたことを検知した場合には、始動要求SR及び遠隔信号EXを受信した場合でもステップS11の判定を否定判定としてもよい。また、その場合、制御装置100は、ステップS13の判定を肯定判定とする。車両500内で通信装置200が操作されたか否かの判定は、例えば、以下のように行う。
【0071】
制御装置100は、車両500の位置情報及び、通信装置200の位置情報を取得可能であるとする。そして、制御装置100は、車両500の位置情報に対して、通信装置200の位置情報が所定の範囲内に位置する状態で、始動要求SR及び遠隔信号EXを受信したとする。この場合、制御装置100は、車両500内で通信装置200が操作されたとみなす。
【0072】
また、車両500がシートに重量センサ有しており、当該センサが一定以上の重量を検知した状態で、制御装置100は、始動要求SR及び遠隔信号EXを受信したとする。この場合、制御装置100は、車両500内で通信装置200が操作されたとみなす。これらの判定方法以外でも、車両500内で通信装置200が操作されたことを制御装置100が検知した場合、ステップS11の判定を否定判定としてもよい。この点、第2実施形態の機関始動制御のステップS23においても同様に変更してもよい。
【0073】
・第2実施形態において、遠隔信号EXを省略し、イグニッションスイッチ120が始動要求SRに関連付けて乗員信号IPを発信してもよい。この場合、制御装置100は、始動要求SRに乗員信号IPが関連付けられていない場合に、始動要求SRが通信装置200からの遠隔操作に基づくものであると取り扱えばよい。
【符号の説明】
【0074】
SR…始動要求
10…内燃機関
10A…クランクシャフト
20…モータジェネレータ
20A…出力軸
22…高圧バッテリ
24…低圧バッテリ
25A…スタータ
100…制御装置
110…通信機
200…通信装置
500…車両
図1
図2
図3