IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7559742車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム
<>
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図1
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図2
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図3
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図4
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図5
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図6
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図7
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図8
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図9
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図10
  • 特許-車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/04 20060101AFI20240925BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240925BHJP
   B60W 40/105 20120101ALI20240925BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20240925BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/105
B60W30/14
G08G1/01 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021196840
(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公開番号】P2023082863
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳久
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187884(WO,A1)
【文献】特開2010-023803(JP,A)
【文献】特開2012-031945(JP,A)
【文献】特開2011-215058(JP,A)
【文献】特開2019-036339(JP,A)
【文献】特開2013-190965(JP,A)
【文献】米国特許第6334086(US,B1)
【文献】国際公開第2014/188586(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061619(WO,A1)
【文献】特開2010-211610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0122545(US,A1)
【文献】特開2019-191802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付ける第1処理部と、
前記入力情報を受け付ける期間のうちの前記車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた前記入力情報を用いて前記自動車専用道路を走行中の前記車両の速度を特徴量として算出する第2処理部と
前記予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の前記特徴量の分布を用いて前記自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成する第3処理部とを備える、車両情報処理装置。
【請求項2】
前記入力情報は、前記車両の左右輪の車輪速度に関する情報を含み、
前記予め定められた条件は、前記車両の速度が第1しきい値よりも大きく、かつ、前記左右輪の前記車輪速度の差の大きさが第2しきい値よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間以上継続するという条件を含む、請求項1に記載の車両情報処理装置。
【請求項3】
前記第3処理部は、前記予め定められた条件が成立する期間において複数回算出される前記車両の速度の標準偏差を算出し、前記標準偏差がしきい値よりも大きい場合に前記混雑度を、前記自動車専用道路が混雑していることを示す値に設定する、請求項に記載の車両情報処理装置。
【請求項4】
前記第3処理部は、前記予め定められた条件が成立する期間であって、かつ、クルーズコントロール中において、前記車両の速度が前記クルーズコントロールにおいて設定される目標速度を達成する割合が、しきい値よりも小さい場合に、前記混雑度を、前記自動車専用道路が混雑していることを示す値に設定する、請求項に記載の車両情報処理装置。
【請求項5】
前記車両情報処理装置は、前記混雑度に関する情報を前記車両の外部に送信する送信部をさらに備える、請求項1~4のいずれかに記載の車両情報処理装置。
【請求項6】
車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付ける第1処理部と、
前記入力情報を受け付ける期間のうちの前記車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた前記入力情報を用いて前記自動車専用道路を走行中の前記車両の速度を特徴量として算出する第2処理部とを備え、
前記入力情報は、前記車両の左右輪の車輪速度に関する情報を含み、
前記予め定められた条件は、前記車両の速度が第1しきい値よりも大きく、かつ、前記左右輪の前記車輪速度の差の大きさが第2しきい値よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間以上継続するという条件を含む、車両情報処理装置。
【請求項7】
車両情報処理装置を搭載した複数の車両と、
前記複数の車両からの情報を用いて自動車専用道路を走行する予め定められた区間における走行所要時間を予測する予測装置とを備え、
前記車両情報処理装置は、
前記車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付ける第1処理部と、
前記入力情報を受け付ける期間のうちの前記車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた前記入力情報を用いて前記自動車専用道路を走行中の前記車両の速度を特徴量として算出する第2処理部と、
前記予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の前記特徴量の分布を用いて前記自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成する第3処理部と、
前記混雑度に関する情報を前記車両の外部に送信する送信部とを備え、
前記予測装置は、前記複数の車両のうちの予め定められた混雑度となる車両の割合から前記走行所要時間を予測する、予測システム。
【請求項8】
車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付けるステップと、
前記入力情報を受け付ける期間のうちの前記車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた前記入力情報を用いて前記自動車専用道路を走行中の前記車両の速度を特徴量として算出するステップと
前記予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の前記特徴量の分布を用いて前記自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成するステップとを含む、車両情報処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付けるステップと、
前記入力情報を受け付ける期間のうちの前記車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた前記入力情報を用いて前記自動車専用道路を走行中の前記車両の速度を特徴量として算出するステップと
前記予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の前記特徴量の分布を用いて前記自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成するステップとを実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両から得られる情報を用いて自動車専用道路の混雑状況を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車専用道路等に設置される入口料金所を通過した時刻についてのデータと出口料金所を通過した時刻についてのデータとを用いて自動車専用道路における入口料金所から出口料金所までの車両の走行所要時間を予測する技術が公知である。たとえば、特開2002-298282号公報(特許文献1)には、入口料金所および出口料金所の通過時刻データを利用して走行所要時間の実績値を演算して得られる走行所要時間パターンを日毎に記憶し、予測当日の走行所要時間パターンから当日の交通状況に基づき走行所要時間を予測する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-298282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車専用道路等における走行所要時間は、道路の混雑状況等によって大きく変化するため走行所要時間を精度高く推定できない場合がある。そのため、特許文献1に記載されているような入口料金所と出口料金所との通過時刻のデータから走行所要時間を精度高く推定することができない場合がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両の走行所要時間を精度高く推定可能な車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る車両情報処理装置は、車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付ける第1処理部と、入力情報を受け付ける期間のうちの車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて自動車専用道路を走行中の車両の速度を特徴量として算出する第2処理部とを備える。
【0007】
このようにすると、自動車専用道路を走行中の車両の速度が特徴量として算出されるので、たとえば、特徴量を用いて自動車専用道路の混雑状況を推定することができる。そのため、混雑状況に応じて走行所要時間を精度高く予測することができる。
【0008】
ある実施の形態においては、入力情報は、車両の左右輪の車輪速度に関する情報を含む。予め定められた条件は、車両の速度が第1しきい値よりも大きく、かつ、左右輪の車輪速度の差の大きさが第2しきい値よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間以上継続するという条件を含む。
【0009】
このようにすると、車両の左右の車輪速度を用いて車両が自動車専用道路を走行しているか否かを精度高く判定することができる。
【0010】
さらにある実施の形態においては、車両情報処理装置は、予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の特徴量の分布を用いて自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成する第3処理部をさらに備える。
【0011】
このようにすると、車両が自動車専用道路を走行中しているときに複数の特徴量の分布を用いて自動車専用道路の混雑状況を示す混雑度を精度高く推定することができるとともに、個人を特定できないようにするための秘匿加工(たとえば、統計量化)をするなどして、自動車専用道路の混雑状況等のユーザにとって価値のある情報を生成することができる。
【0012】
さらにある実施の形態においては、第3処理部は、予め定められた条件が成立する期間において複数回算出される車両の速度の標準偏差を算出し、標準偏差がしきい値よりも大きい場合に混雑度を、自動車専用道路が混雑していることを示す値に設定する。
【0013】
このようにすると、車両の速度の標準偏差を用いて自動車専用道路の混雑状況を精度高く推定することができる。
【0014】
さらにある実施の形態においては、第3処理部は、予め定められた条件が成立する期間であって、かつ、クルーズコントロール中において、車両の速度がクルーズコントロールにおいて設定される目標速度を達成する割合が、しきい値よりも小さい場合に、混雑度を、自動車専用道路が混雑していることを示す値に設定する。
【0015】
このようにすると、車両の速度が目標速度を達成する割合を用いて自動車専用道路の混雑状況を精度高く推定することができる。
【0016】
さらにある実施の形態においては、車両情報処理装置は、混雑度に関する情報を車両の外部に送信する送信部をさらに備える。
【0017】
このようにすると、自動車専用道路の混雑度に関する情報を車両の外部に送信可能とすることにより、自動車専用道路の混雑度に関する情報の利用価値を向上させることができる。
【0018】
本開示の他の局面に係る予測システムは、車両情報処理装置を搭載した複数の車両と、複数の車両からの情報を用いて自動車専用道路を走行する予め定められた区間における走行所要時間を予測する予測装置とを備える。車両情報処理装置は、車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付ける第1処理部と、入力情報を受け付ける期間のうちの車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて自動車専用道路を走行中の車両の速度を特徴量として算出する第2処理部と、予め定められた条件が成立する期間において算出される複数の特徴量の分布を用いて自動車専用道路の混雑の程度を示す混雑度を生成する第3処理部と、混雑度に関する情報を車両の外部に送信する送信部とを備える。予測装置は、複数の車両のうちの予め定められた混雑度となる車両の割合から走行所要時間を予測する。
【0019】
このようにすると、自動車専用道路を走行する区間における走行所要時間を複数の車両からの混雑度に関する情報を用いて精度高く予測することができる。
【0020】
本開示のさらに他の局面に係る車両情報処理方法は、車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付けるステップと、入力情報を受け付ける期間のうちの車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて自動車専用道路を走行中の車両の速度を特徴量として算出するステップとを含む。
【0021】
本開示のさらに他の局面に係るプログラムは、コンピュータに、車両の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付けるステップと、入力情報を受け付ける期間のうちの車両が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて自動車専用道路を走行中の車両の速度を特徴量として算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によると、車両の走行所要時間を精度高く推定可能な車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両情報管理システムの構成の一例を説明するための図である。
図2】本実施の形態に係る車両情報処理装置の一例の構成を説明するための図である。
図3】本実施の形態において、第2処理部において実行される処理の一例を説明するための図である。
図4】本実施の形態において、第3処理部において実行される処理の一例を説明するための図である。
図5】混雑していない自動車専用道路を車両が走行する場合の車体速度の分布の一例を示す。
図6】混雑している自動車専用道路を車両が走行する場合の車体速度の分布の一例を示す。
図7】予め定められた区間における時刻に対する走行所要時間の変化の一例を示す図である。
図8】ブレーキECUの第2処理部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図9】ブレーキECUの第3処理部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図10】データセンタで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図11】変形例におけるブレーキECUの第3処理部で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0025】
図1は、車両情報管理システム1の構成の一例を説明するための図である。図1に示すように、本実施の形態において、車両情報管理システム1は、複数の車両2,3と、通信ネットワーク6と、基地局7と、データセンタ100と、ETC(Electronic Toll Collection System)通信装置110とを含む。
【0026】
車両2,3は、データセンタ100と通信可能であればよく、たとえば、エンジンを駆動源とする車両であってもよいし、あるいは、電動機を駆動源とする電気自動車であってもよいし、エンジンと電動機とを搭載し、少なくともいずれかを駆動源とするハイブリッド自動車であってもよい。なお、図1では、説明の便宜上、2台の車両2,3のみを示すが、車両の台数については、特に2台に限定されるものではなく、3台以上であってもよい。
【0027】
車両情報管理システム1は、データセンタ100と通信可能に構成される車両2,3から予め定められた情報を取得し、取得した情報を管理するように構成される。
【0028】
データセンタ100は、制御装置11と、記憶装置12と、通信装置13とを含む。制御装置11と記憶装置12と通信装置13とは、通信バス14によって互いに通信可能に接続される。
【0029】
制御装置11は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)など)、および、各種信号を入出力するための入出力ポート等を含んで構成されている。制御装置11により実行される各種制御は、ソフトウェア処理、すなわち、メモリに格納されたプログラムがCPUにより読み出されることにより実行される。制御装置11による各種制御は、記憶媒体に記憶されたプログラムを汎用のサーバ(図示せず)が実行することによっても実現可能である。ただし、制御装置11による各種制御は、ソフトウェア処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理してもよい。
【0030】
記憶装置12は、データセンタ100と通信可能に構成される複数の車両2,3に関する予め定められた情報を記憶する。予め定められた情報は、たとえば、後述する車両2,3の各々の特徴量に関する情報や、車両2,3を特定するための情報(以下、車両IDと記載する)を含む。車両IDは、車両毎に設定された固有の情報である。データセンタ100は、車両IDによって送信元の車両を特定することが可能となる。
【0031】
通信装置13は、制御装置11と通信ネットワーク6との間で双方向通信を実現する。データセンタ100は、通信装置13を用いて通信ネットワーク6上に設けられた基地局7を介して、車両2,3を含む複数の車両と互いに通信を可能とする。
【0032】
ETC通信装置110は、たとえば、自動車専用道路(たとえば、高速道路等の有料道路を含む)の入口と出口とに設置される通信装置を含む。より具体的には、ETC通信装置110は、たとえば、自動車専用道路と一般道路や他の自動車専用道路とを接続するインターチェンジやジャンクションに設置される料金所に併設される通信装置を含む。
【0033】
ETC通信装置110は、たとえば、自動車専用道路の入口の道路に設置される第1通信装置110aと、自動車専用道路の出口の道路に設置される第2通信装置110bとを含む。自動車専用道路には、起点、終点およびその途中の地点において複数の出入り口が設けられる。複数の出入り口の各々の道路に第1通信装置110aと第2通信装置110bとが設置されている。図1には、車両2が自動車専用道路に入る際に通過する道路に設置される第1通信装置110aと、車両2が自動車専道道路から出る際に通過する道路に設置される第2通信装置110bとが一例として示されている。ETC通信装置110は、通信ネットワーク6を経由してデータセンタ100と通信可能に構成される。なお、ETC通信装置110は、通信ネットワーク6とは別のネットワークを経由してデータセンタ100と通信可能に構成されてもよい。
【0034】
第1通信装置110aは、第1通信装置110aが設置される道路を車両2が通過する場合に、車両2のETC車載器32との通信を確立し、ETC車載器32から料金の支払に必要なETCカードの決済情報と車両2を特定可能な情報(たとえば、車載器IDや車両ID)とを取得するとともに、車両2が通過した時刻(入口通過時刻)Tinと第1通信装置110aの位置を特定可能な情報(たとえば、料金所番号等、以下、入口料金所情報とも記載する)とをETC車載器32に送信する。
【0035】
第2通信装置110bは、第2通信装置110bが設置される道路を車両2が通過する場合には、車両2のETC車載器32との通信を確立し、ETC車載器32から決済情報と車両2を特定可能な情報と、入口通過時刻Tinと、入口料金所情報とを取得するとともに、車両2が通過した時刻(出口通過時刻)Touと第2通信装置110bの位置を特定可能な情報(たとえば、料金所番号等、以下、出口料金所情報とも記載する)と、料金等についての情報をETC車載器32およびデータセンタ100に送信する。
【0036】
なお、第1通信装置110aおよび第2通信装置110bがETC車載器32から取得する情報は、特に上述した情報に限定されるものではない。また、ETC通信装置110がデータセンタ100に送信する情報についても、特に上述した情報に限定されるものではない。また、本実施の形態においてデータセンタ100は、ETCカードの決済についても行なう場合を一例として説明するが、データセンタ100とは別にETCカードの決済を行なうためのサーバが設定されてもよい。
【0037】
次に、車両2,3の具体的な構成について説明する。なお、車両2,3は基本的には共通の構成を有するため、以下では、車両2の構成について代表的に説明する。
【0038】
車両2は、駆動輪50と従動輪52とを含む。駆動源の動作により駆動輪50が回転されることによって車両2に駆動力が作用して車両2が走行する。
【0039】
車両2は、ADAS-ECU(Electronic Control Unit)10と、ブレーキECU20と、DCM(Data Communication Module)30と、セントラルECU40とをさらに含む。
【0040】
ADAS-ECU10、ブレーキECU20およびセントラルECU40は、いずれもCPUなどのプログラムを実行するプロセッサ、メモリ、および入出力インターフェースを有するコンピュータである。
【0041】
ADAS-ECU10は、車両2の運転支援に関する機能を有する運転支援システムを含む。運転支援システムは、実装されるアプリケーションを実行することにより、車両2の操舵制御、駆動制御および制動制御のうちの少なくともいずれかを含む車両2の運転を支援するための様々な機能を実現するように構成される。運転支援システムにおいて実装されるアプリケーションとしては、たとえば、自動運転システム(AD:Autonomous Driving System)の機能を実現するアプリケーション、自動駐車システムの機能を実現するアプリケーション、および、先端運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assist System)の機能を実現するアプリケーションなどを含む。
【0042】
ADASアプリケーションとしては、たとえば、前走車との車間距離を一定に保ちながら走行する先行車との車間を保つ追従走行(ACC(Adaptive Cruise Control)など)の機能を実現するアプリケーション、制限車速を認識し自車の速度上限を維持するASL(Auto Speed Limiter)の機能を実現するアプリケーション、走行する車線の維持を行なう車線維持支援(LKA(Lane Keeping Assist)あるいはLTA(Lane Tracing Assist)など)の機能を実現するアプリケーション、衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking)あるいはPCS(Pre-Crash Safety)など)の機能を実現するアプリケーション、および、車両2の走行車線の逸脱を警告する車線逸脱警報(LDW(Lane Departure Warning)あるいはLDA(Lane Departure Alert)など)の機能を実現するアプリケーションのうちの少なくともいずれかが含まれる。
【0043】
この運転支援システムの各アプリケーションは、図示しない複数のセンサから取得(入力)する車両周囲状況の情報やドライバの支援要求等に基づいて、アプリケーション単独での商品性(機能)を担保した行動計画の要求をブレーキECU20に対して出力する。複数のセンサは、たとえば、前向きカメラ等のビジョンセンサ、レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、あるいは、位置検出装置等を含む。
【0044】
各アプリケーションは、1つもしくは複数のセンサの検出結果を統合した車両周囲状況の情報を認識センサ情報として取得するとともに、スイッチ等のユーザインタフェース(図示せず)を経由したドライバの支援要求を取得する。各アプリケーションは、たとえば、複数のセンサによって取得された車両の周囲の画像や映像に対する人工知能(AI)や画像処理用プロセッサを用いた画像処理によって車両の周囲にある他の車両、障害物あるいは人を認識可能とする。
【0045】
また、行動計画には、たとえば、車両2に発生させる前後加速度/減速度に関する要求や、車両2の操舵角に関する要求や、車両2の停止保持に関する要求など、が含まれる。
【0046】
ブレーキECU20は、センサ類からの検出結果を用いて車両2に制動力を発生させるブレーキアクチュエータを制御する。さらにブレーキECU20は、ADAS-ECU10からの行動計画の要求を実現するための車両2の運動要求を設定する。ブレーキECU20において設定される車両2の運動要求は、車両2に設けられるアクチュエータシステム(図示せず)によって実現される。アクチュエータシステムは、たとえば、パワートレインシステム、ブレーキシステム、ステアリングシステムなどの複数種類のアクチュエータシステムを含む。
【0047】
ブレーキECU20には、たとえば、第1車輪速センサ54と、第2車輪速センサ56とが接続される。
【0048】
第1車輪速センサ54は、2つの従動輪52のうちの一方(たとえば、左側の従動輪52)の回転速度(車輪速度)Vlを検出する。第1車輪速センサ54は、検出した左側の従動輪52の回転速度Vlを示す信号をブレーキECU20に送信する。
【0049】
第2車輪速センサ56は、他方の従動輪52(たとえば、右側の従動輪52)の回転速度Vrを検出する。第2車輪速センサ56は、検出した右側の従動輪52の回転速度Vrを示す信号をブレーキECU20に送信する。
【0050】
なお、図1においては、第1車輪速センサ54と、第2車輪速センサ56とがブレーキECU20に接続され、直接ブレーキECU20に検出結果を送信する構成を一例として説明したが、いずれかのセンサが他のECUに接続され、通信バスやセントラルECU40を経由してブレーキECU20に入力されるようにしてもよい。
【0051】
さらに、ブレーキECU20は、たとえば、ADAS-ECU10から行動計画に関する情報他に、各種アプリケーションの作動状態に関する情報を受信したり、ステアリング角度、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み量、あるいは、シフトレンジなどのその他の運転操作に関する情報を受信したり、車両2の挙動に関する情報を受信したりする。
【0052】
DCM30は、データセンタ100との双方向通信が可能に構成された通信モジュールである。
【0053】
セントラルECU40は、たとえば、ブレーキECU20と通信可能に構成されるとともに、DCM30を用いてデータセンタ100と通信可能に構成される。セントラルECU40は、たとえば、ブレーキECU20から受信する情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。
【0054】
本実施の形態において、セントラルECU40は、ブレーキECU20から受信する情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信するものとして説明したが、たとえば、各種ECU間の通信を中継する等の機能(ゲートウエイ機能)を有するものであってもよいし、あるいは、データセンタ100からの更新情報を用いて記憶内容の更新が可能なメモリ(図示せず)を含み、車両2のシステム起動時に各種ECUからメモリに記憶される更新情報を含む所定の情報が読み出されるものであってもよい。
【0055】
車両2は、ETC車載器32をさらに含む。ETC車載器32は、上述のETC通信装置110の第1通信装置110aおよび第2通信装置110bと通信可能に構成される。通信時に授受される情報については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。ETC車載器32は、通信バスを介して他のECUと通信可能に構成される。そのため、ECU車載器32は、ETC通信装置110から取得した情報を他のECUに送信可能に構成される。
【0056】
以上のような構成を有する車両2において、たとえば、出発地周辺の入口から目的地周辺の出口までの区間を自動車専用道路を走行する場合において、車両の走行所要時間を精度高く予測することが求められる。しかしながら、たとえば、入口通過時刻と出口通過時刻とを用いて算出される時間を走行所要時間として算出する場合には、走行所要時間は、道路の混雑状況等によって大きく変化するため走行所要時間を精度高く推定できない場合がある。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、ブレーキECU20は、車両2の車輪速度に関する情報を含む入力情報を受け付け、入力情報を受け付ける期間のうちの車両2が自動車専用道路を走行中であることを示す予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて自動車専用道路を走行中の車両の速度を特徴量として算出するものとする。なお、予め定められた条件は、車体速度が第1しきい値よりも大きく、かつ、左右の車輪速度の速度差の大きさが第2しきい値よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間以上継続するという条件を含む。
【0058】
このようにすると、自動車専用道路を走行中の車両2の速度が特徴量として算出されるので、後述するように特徴量を用いて自動車専用道路の混雑状況を推定することができる。そのため、混雑状況に応じて走行所要時間を精度高く予測することができる。
【0059】
図2は、本実施の形態に係る車両情報処理装置の一例の構成を説明するための図である。本実施の形態に係る車両情報処理装置は、ブレーキECU20によって実現される。図2に示すように、ブレーキECU20は、第1処理部22と、第2処理部24と、第3処理部26とを含む。
【0060】
第1処理部22は、たとえば、運転支援システムの作動状態を示す運転支援状態に関する情報と、ステアリングホイール、アクセルペダルあるいはブレーキペダルなどの運転操作量に関する情報と、各種センサからの検出結果を示す車両状態量に関する情報とを受け付ける。第1処理部22は、受け付けた情報のうちの第1車輪速センサ54によって検出される左側の従動輪52の回転速度Vlと、第2車輪速センサ56によって検出される右側の従動輪52の回転速度Vrとを第2処理部24に出力する。
【0061】
第2処理部24は、入力情報を受け付ける期間のうちの予め定められた条件が成立する期間において受け付けた入力情報を用いて車両2の速度(車体速度)Vxを特徴量として算出する。
【0062】
図3は、本実施の形態において、第2処理部24において実行される処理の一例を説明するための図である。図3に示すように、第2処理部24には、第1処理部22から第1車輪速センサ54によって検出される左側の従動輪52の回転速度Vlと、第2車輪速センサ56によって検出される右側の従動輪52の回転速度Vrとが入力情報として入力される。
【0063】
第2処理部24は、これらの入力情報を用いて予め定められた条件が成立するか否かを判定する。
【0064】
具体的には、第2処理部24は、入力情報を用いて車体速度Vxを算出する。第2処理部24は、たとえば、回転速度Vlと回転速度Vrとの平均値(=(Vr+Vl)/2)とタイヤの直径等の情報とを用いて車体速度Vxを算出する。さらに、第2処理部24は、入力情報を用いて回転速度Vlと回転速度Vrとの左右速度差の大きさVd(=|Vr-Vl|)を算出する。
【0065】
予め定められた条件は、車両2が自動車専道道路の本線を走行していることを示す条件を含む。具体的には、予め定められた条件は、車体速度Vxが第1しきい値(たとえば、40km/h)よりも大きく、かつ、左右速度差の大きさVd(=|Vr-Vl|)が第2しきい値(たとえば、3km/h相当の値)よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間(たとえば、15分程度)継続するという条件を含む。第1しきい値は、自動車専用道路における上限速度や車線数等に基づいて設定される。第1しきい値は、たとえば、実験等によって適合される予め定められた値である。第2しきい値は、たとえば、自動車専用道路における車線数等に基づいて設定される。第2しきい値は、車線変更等により生じる速度差の範囲が含まれ、急峻な旋回により生じる速度差の範囲が除外されるように実験等によって適合されて設定される。第2しきい値は、たとえば、車両2のヨー方向(旋回方向)の角速度がしきい値(たとえば、30deg/secなど)以下となるように設定される。
【0066】
第2処理部24は、予め定められた条件が成立すると判定される場合にはフラグ(以下、専用道路走行中フラグFjと記載する)をオン状態に設定する。また、第2処理部24は、予め定められた条件が成立しないと判定される場合には専用道路走行中フラグFjをオフ状態に設定する。第2処理部24は、専用道路走行中フラグFjの状態を示す信号をシーン識別信号として第3処理部26に出力する。第2処理部24は、シーン識別信号とともに、車体速度Vxを特徴量として第3処理部26に出力する。
【0067】
第3処理部26は、データセンタ100にて、特徴量を用いて車両2が走行する自動車専用道路が混雑しているか否かを示す情報を出力する。より具体的には、第3処理部26は、第2処理部24から出力される情報を用いて車両2が走行する自動車専用道路の混雑の程度を示す値(以下、混雑度Cgと記載する)を設定する。第3処理部26は、たとえば、シーン識別信号に含まれる専用道路走行中フラグFjの状態がオン状態である場合に第2処理部24から出力される情報を用いて混雑度Cgを設定する。
【0068】
図4は、本実施の形態において、第3処理部26において実行される処理の一例を説明するための図である。図4に示すように、第3処理部26には、第2処理部24からシーン識別信号と、特徴量と、時間とを示す情報が入力される。なお、第3処理部26に入力された情報は、たとえば、メモリ等の記憶装置に記憶される。
【0069】
第3処理部26は、予め定められた条件が成立している期間中に第2処理部24から入力される複数の車体速度Vxを用いて車体速度Vxの平均値Avxを算出する。さらに、第3処理部26は、予め定められた条件が成立している期間中に第2処理部24から入力される複数の車体速度Vxを用いて車体速度Vxの標準偏差σを算出する。平均値Avxの算出方法および標準偏差σの算出方法については公知の技術を用いればよくその詳細な説明は行なわない。
【0070】
第3処理部26は、算出された標準偏差σと平均値Avxとを用いて混雑度Cgを設定する。第3処理部26は、たとえば、平均値Avxから標準偏差σ分だけ低い値(Avx-σ)が自動車専用道路を走行中の車両を運転している運転者が渋滞していると感じする速度(たとえば、60km/h)よりも低い場合に(すなわち、Avx-σ<60[km/h]の大小関係が成立する場合に)、混雑度Cgの値を、自動車専用道路が混雑していることを示す値(たとえば、1)に設定する。
【0071】
一方、第3処理部26は、上述の大小関係が成立しない場合には、混雑度Cgの値を、自動車専用道路が混雑していないことを示す値(たとえば、2)に設定する。第3処理部26は、設定した混雑度Cgに関する情報をセントラルECU40に出力する。第3処理部26は、予め定め定められた条件が成立している期間中においては、予め定められた時間が経過する毎に算出される平均値Avxおよび標準偏差σを用いて混雑度Cgを設定し、設定された混雑度CgをセントラルECU40に出力する。
【0072】
図5は、混雑していない自動車専用道路を車両2が走行する場合の車体速度Vxの分布の一例を示す。図6は、混雑している自動車専用道路を車両2が走行する場合の車体速度Vxの分布の一例を示す。図5および図6の縦軸は、頻度(個数)を示す。図5および図6の横軸は、車体速度Vxを示す。図5および図6の分布図は、たとえば、速度域を連続する複数の区間に分割し、取得された車体速度Vxが複数の区間のいずれの区間に対応するかを判定し、判定された区間の頻度を1ずつ増加させる処理を繰り返すことにより作成される。たとえば、図5に示すように、車体速度の平均値Avx1に対して車体速度の標準偏差σ1が算出された場合においてAvx1-σ1の値が60km/hよりも高いという大小関係(σ1<Avx1-60の大小関係に相当)が成立する場合には、混雑度Cgの値としては、自動車専用道路が混雑していないことを示す値に設定される。
【0073】
一方、図6に示すように、車体速度の平均値Avx2に対して車体速度の標準偏差σ2が算出された場合においてAvx2-σ2の値が60km/h以下という大小関係(σ2≧Avx2-60の大小関係に相当)が成立する場合には、混雑度Cgの値としては、自動車専用道路が混雑していることを示す値に設定される。
【0074】
セントラルECU40は、第3処理部26から入力された情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。セントラルECU40は、所定の送信タイミングにおいて第3処理部26から入力される混雑度Cgのうちの直近の値をDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。
【0075】
なお、第3処理部26は、たとえば、予め定められた条件が成立している期間に対応する自動車専用道路の入口通過時刻Tinと入口料金所情報とをETC車載器32から取得して、上述の混雑度CgとともにセントラルECU40に出力してもよい。あるいは、セントラルECU40は、たとえば、第3処理部26から混雑度Cgに関する情報が入力される場合に、予め定められた条件が成立している期間に対応する自動車専用道路の入口通過時刻Tinと入口料金所情報とをETC車載器32から取得して、第3処理部26から入力された情報とともに取得した情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信してもよい。
【0076】
データセンタ100は、車両2から混雑度Cgと入口通過時刻Tinと入口料金所情報とが入力され、かつ、ETC通信装置110から車両2の出口通過時刻Toutと出口料金所情報とが入力される場合に、実績値に基づく混雑時期の時刻に対する走行所要時間の変化と、実績値に基づく通常時期(非混雑時期)の時刻に対する走行所要時間の変化と、入力された混雑度Cgと入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとを用いて現在時刻以降の時刻に対する車両2が通過した入口料金所から出口料金所までの走行所要時間の変化を推定する。
【0077】
以下、図7を参照しつつ、現在時刻以降の時刻に対する走行所要時間の変化の推定方法の一例について説明する。図7は、予め定められた区間(車両2が通過する自動車専用道路の入口料金所から出口料金所までの区間)における時刻に対する走行所要時間の変化の一例を示す図である。
【0078】
図7の横軸は、出口通過時刻Toutを示す。図7の縦軸は、走行所要時間の変化を示す。走行所要時間は、出口通過時刻Toutから入口通過時刻Tinを減算して得られる値である。図7のLN1(一点鎖線)は、混雑時期において過去に蓄積された実績データから予測される時刻に対する走行所要時間の変化を示す。図7のLN2(細実線)は、通常時期において過去に蓄積された実績データから予測される時刻に対する走行所要時間の変化を示す。図7のLN3(破線)は、現在時刻に対する走行所要時間の変化の予測を示す。図7のLN4(太実線)は、現在時刻までの他の車両からの入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとを用いて得られる時刻に対する走行所要時間の変化を示す。
【0079】
データセンタ100は、たとえば、車両2から受信した入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとから現在時刻に対する走行所要時間がA点に相当する時間である場合には、A点からB点(図7の四角点)へのベクトルと、A点からC点(図7の三角点)へのベクトルとを用いてA点からD点(図7の丸点)へのベクトルを算出することで、その日の走行所要時間のピーク値と、ピーク値を迎える時刻とを推定し、推定されたピーク点を通過するようにして図7のLN3に示すような変化の予測を行なう。
【0080】
より具体的には、B点における走行所要時間は、混雑時期において過去に蓄積された実績データから予測される時刻に対する走行所要時間の変化のうちの走行所要時間のピーク値に相当する。また、C点における走行所要時間は、通常時期において過去に蓄積された実績データから予測される時刻に対する走行所要時間の変化のうちの走行所要時間のピーク値に相当する。
【0081】
データセンタ100は、A点からB点への第1ベクトルに対する係数aと、A点からC点への第2ベクトルに対する係数bとを混雑度Cgを用いて設定する。データセンタ100は、たとえば、車両2を含む直近の予め定められた期間において自動車専用道路の車両2が通過した入口から出口までの区間を通過する複数の車両から混雑度Cgを取得し、混雑度Cgが自動車専用道路が混雑していることを示す値となる車両の割合Rcrと、単位時間当たりの割合Rcrの変化量dRcrとを算出する。データセンタ100は、割合Rcrと変化量dRcrとを入力パラメータとする第1関数f(Rcr,dRcr)を用いて係数aを設定し、割合Rcrと変化量dRcrとを入力パラメータとする第2関数g(Rcr,dRcr)を用いて係数bをそれぞれ設定する。
【0082】
データセンタ100は、第1ベクトルに係数aを乗算した長さのベクトルと、第2ベクトルに係数bを乗算した長さのベクトルとの和をA点からD点へのベクトルとして、D点を特定する。データセンタ100は、D点をピーク値とする時刻に対する走行所要時間の変化を示す曲線を設定する。データセンタ100は、たとえば、図7のLN1で示す曲線を、ピーク点がD点に移動するように縮小および移動させることによって現在時刻以降の図7のLN3を設定してもよい。あるいは、データセンタ100は、たとえば、図7のLN2に示す曲線を、ピーク点がD点に移動するように拡大および移動させることによって現在時刻以降の図7のLN3に示す曲線を設定してもよい。
【0083】
データセンタ100は、図7のLN3に示す曲線が設定されると、設定された曲線あるいは時刻に対応する走行所要時間を公開してもよい。
【0084】
なお、データセンタ100は、たとえば、車両2から混雑度Cgと入口通過時刻Tinと入口料金所情報とが入力される場合に、ETC通信装置110に対して車両2の出口通過時刻Toutを要求してもよい。ETC通信装置110は、当該要求を受けた場合には、車両2の出口通過時刻Toutを取得したときに出口料金所情報とともにデータセンタ100に送信してもよい。あるいは、車両2は、ETC車載器32から入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとを取得し、直近の混雑度Cgの値を取得した場合に、これらの情報を入口料金所情報と出口料金所情報とともにデータセンタ100に送信してもよい。
【0085】
次に、図8を参照して、車両2のブレーキECU20の第2処理部24で実行される処理の一例について説明する。図8は、ブレーキECU20の第2処理部24で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、ブレーキECU20の第2処理部24により、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0086】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ブレーキECU20(具体的には、第2処理部24)は、入力情報に対応するデータを取得する。具体的には、ブレーキECU20は、たとえば、左側の従動輪52の回転速度Vlについての情報と、右側の従動輪52の回転速度Vrについての情報とを含む入力情報に対応するデータを取得する。
【0087】
S102にて、ブレーキECU20は、車体速度Vxを算出する。具体的には、ブレーキECU20は、回転速度Vlと回転速度Vrとの平均値を用いて車体速度Vxを算出する。ブレーキECU20は、たとえば、算出した車体速度Vxを後述する専用道路走行中フラグFjの値と対応づけてメモリ等に記憶する。
【0088】
S104にて、ブレーキECU20は、回転速度Vlと回転速度Vrとの左右速度差の大きさVd(=|Vr-Vl|)を算出する。
【0089】
S106にて、ブレーキECU20は、時間カウンタCnの値を算出する。具体的には、ブレーキECU20は、前回の時間カウンタCn-1の値に所定値(たとえば、1)を加算し、加算した値を今回の時間カウンタCnの値として算出する。
【0090】
S108にて、ブレーキECU20は、予め定められた条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、ブレーキECU20は、車体速度Vxが第1しきい値よりも大きく、左右速度差の大きさVdが第2しきい値よりも小さく、かつ、時間カウンタCnが第3の値(たとえば、15分に相当する値)よりも大きい場合に、予め定められた条件が成立していると判定する。予め定められた条件が成立していると判定される場合(S108にてYES)、処理はS110に移される。
【0091】
S110にて、ブレーキECU20は、専用道路走行中フラグFjをオン状態に設定する。ブレーキECU20は、たとえば、専用道路走行中フラグFjの値を、オン状態を示す値(たとえば、1)に設定する。
【0092】
S112にて、ブレーキECU20は、今回の時間カウンタCnを示す値を前回の時間カウンタCn-1を示す値として設定する。その後、処理は終了される。なお、予め定められた条件が成立していないと判定される場合(S108にてNO)、処理はS114に移される。
【0093】
S114にて、ブレーキECU20は、専用道路走行中フラグFjをオフ状態に設定する。ブレーキECU20は、たとえば、専用道路走行中フラグFjの値を、オフ状態を示す値(たとえば、ゼロ)に設定する。
【0094】
S116にて、ブレーキECU20は、今回の時間カウンタCnを示す値を初期値(たとえば、ゼロ)にリセットする。その後、処理は終了される。
【0095】
次に、図9を参照して、車両2のブレーキECU20の第3処理部26で実行される処理の一例について説明する。図9は、ブレーキECU20の第3処理部26で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、ブレーキECU20の第3処理部26により、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。第3処理部26は、たとえば、車両2の走行が開始する場合や車両2のシステムが起動する場合に、図9のフローチャートに示す処理を実行する。
【0096】
S200にて、ブレーキECU20(具体的には、第3処理部26)は、混雑度Cgを示す値と、車体速度Vxの標準偏差σを示す値と、車体速度Vxの平均値Avxを示す値と、カウンタnを示す値とをそれぞれ初期値にリセットする。具体的には、ブレーキECU20は、たとえば、上述の各値をゼロに設定する。
【0097】
S202にて、ブレーキECU20は、車体速度Vxと、専用道路走行中フラグFjとを取得する。ブレーキECU20は、たとえば、上述の図8に示す処理において算出された車体速度Vxと専用道路走行中フラグFjとを取得する。
【0098】
S204にて、ブレーキECU20は、専用道路走行中フラグFjがオン状態であるか否かを判定する。ブレーキECU20は、たとえば、専用道路走行中フラグFjを示す値が1である場合に、専用道路走行中フラグFjがオン状態であると判定する。専用道路走行中フラグFjがオン状態であると判定される場合(S204にてYES)、処理はS206に移される。なお、専用道路走行中フラグFjがオフ状態であると判定される場合(S204にてNO)、処理はS220に移される。
【0099】
S206にて、ブレーキECU20は、カウンタnをカウントアップする。具体的には、ブレーキECU20は、カウンタnの前回値に所定値(たとえば、1)を加算した値をカウンタnの今回値として算出する。
【0100】
S208にて、ブレーキECU20は、S202にて取得した車体速度VxをVx(n)の今回値として前回値まで記憶された車体速度Vxに継ぎ足して記憶する。
【0101】
S210にて、ブレーキECU20は、Vx(1)からVx(n)までのn個の車体速度Vxを用いて車体速度Vxの平均値Avxを算出する。
【0102】
S212にて、ブレーキECU20は、Vx(1)からVx(n)までのn個の車体速度Vxを用いて車体速度Vxの標準偏差σを算出する。
【0103】
S214にて、ブレーキECU20は、標準偏差σが平均値Avxから予め定められた値(本実施の形態においては、たとえば、60km/h)を減算した値よりも大きいか否かを判定する。標準偏差σが平均値Avxから60km/hを減算した値よりも大きいと判定される場合(S214にてYES)、処理はS216に移される。
【0104】
S216にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgの値を自動車専用道路が混雑状態であることを示す値として1に設定する。標準偏差σが平均値Avxから60km/hを減算した値の大きさ以下であると判定される場合(S214にてNO)、処理はS218に移される。
【0105】
S218にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgの値を自動車専用道路が混雑状態でない(順調に流れている状態である)ことを示す値として2に設定する。
【0106】
S220にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgを示す値をセントラルECU40に出力する。セントラルECU40は、入力される情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。
【0107】
次に、図10を参照して、データセンタ100で実行される処理の一例について説明する。図10は、データセンタ100で実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、データセンタ100により、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0108】
S300にて、データセンタ100は、混雑度Cgと入口通過時刻Tinと入口料金所情報とを車両から受信するか否かを判定する。データセンタ100は、たとえば、車両2や車両3などのデータセンタ100と通信が可能な車両から混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを含む情報を受信する場合に、混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを車両から受信したと判定する。混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを車両から受信したと判定される場合(S300にてYES)、処理はS302に移される。
【0109】
S302にて、データセンタ100は、混雑度Cgと入口通過時刻とを受信した車両の出口通過時刻Toutと出口料金所情報とをETC通信装置110から受信したか否かを判定する。出口通過時刻Toutを受信したと判定される場合(S302にてYES)、処理はS304に移される。なお、混雑度Cgと入口通過時刻とを車両から受信しないと判定される場合や(S300にてNO)、出口通過時刻Toutを受信しないと判定される場合には(S302にてNO)、処理はS300に戻される。
【0110】
S304にて、データセンタ100は、自動車専用道路における混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを受信した車両と同じ区間を通過した複数の車両のうちの混雑度Cgが混雑を示す値(=1)となる車両の割合Rcrと、Rcrの単位時間当たりの変化量dRcrとを算出する。
【0111】
S306にて、データセンタ100は、割合Rcrと、変化量dRcrと、過去に蓄積された実績データとから時刻に対する走行所要時間の変化の予測曲線を設定する。予測曲線の設定方法については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0112】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両情報処理装置であるブレーキECU20の動作について説明する。
【0113】
たとえば、車両2が走行を開始すると、第2処理部24において、左右の従動輪52の回転速度Vr,Vlが取得されるとともに(S100)、取得された回転速度Vr,Vlを用いて車体速度Vxが算出される(S102)。そして、回転速度Vr,Vlの左右速度差の大きさVdが算出されるとともに(S104)、時間カウンタCnがカウントアップされ(S106)、予め定められた条件が成立するか否かが判定される(S108)。
【0114】
車体速度Vxがしきい値である第1しきい値よりも大きく、かつ、左右速度差の大きさVdが第2しきい値よりも小さい状態が予め定められた時間を超えて継続する場合には専用道路走行中フラグFjがオン状態に設定されるとともに(S110)、時間カウンタCnが前回値として置き換えられる(S112)。
【0115】
一方、予め定められた条件が成立しない場合には(S108にてNO)、専用道路走行中フラグFjがオフ状態に設定されるとともに(S114)、時間カウンタCnの値が初期値にリセットされる(S116)。
【0116】
第3処理部26においては、車両2が走行を開始すると、混雑度Cgと、車体速度Vxの標準偏差σと、車体速度Vxの平均値Avxと、カウンタnとが初期値にリセットされる(S200)。
【0117】
そして、車体速度Vxと専用道路走行中フラグFjとが第2処理部24から取得され(S202)、専用道路走行中フラグFjがオン状態であると(S204にてYES)、カウンタnの値がカウントアップされるとともに(S206)、取得された車体速度Vxがカウントアップされたカウンタnに対応する車体速度Vx(n)として継ぎ足して記憶される(S208)。そして、Vx(1)からVx(n)までの車体速度を用いて平均値Avxが算出される(S210)。さらに、Vx(1)からVx(n)までの車体速度を用いて標準偏差σが算出される(S212)。
【0118】
算出された標準偏差σが平均値Avxから60km/hを減算した値よりも大きい場合(S214にてYES)、混雑度Cgが混雑している状態を示す値である1に設定され(S216)、セントラルECU40に混雑度Cgが出力される(S220)。車両2の走行が継続する限り、上述の処理が繰り返される。セントラルECU40は、たとえば、車両2が自動車専用道路の入口を通過したときの入口通過時刻TinをETC車載器32から取得する。セントラルECU40は、混雑度Cgと入口通過時刻TinとをDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。
【0119】
データセンタ100において、車両2から混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを受信する(S300にてYES)。車両2が自動車専用道路の出口を通過するまでの間に、15分ごとに混雑度Cgが生成され、生成された混雑度Cgと入口通過時刻TinとがセントラルECU40およびDCM30を経由してデータセンタ100に送信される。
【0120】
車両2が自動車専用道路の出口を通過するときに、ETC通信装置110から車両2の出口通過時刻Toutが取得される(S302にてYES)。そのため、出口通過時刻Toutを取得した時点の混雑度Cgと、入口通過時刻Tinと、出口通過時刻Toutとを用いて割合Rcrと変化量dRcrとが算出される(S304)。そして、算出された割合Rcrと変化量dRcrとを入力パラメータとして、第1関数f(Rcr,dRcr)を用いて係数aが算出されるとともに、第2関数g(Rcr,dRcr)を用いて係数bが算出される。これにより、図7におけるD点を特定され、図7の破線に示すような現在時刻以降の予測曲線が設定される。設定された予測曲線を用いて時刻における走行所要時間を予測することが可能となる。
【0121】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両情報処理装置によると、自動車専用道路を走行中の車両2の車体速度Vxが特徴量として算出されるので、複数の特徴量の分布を用いて自動車専用道路の混雑状況を示す混雑度を精度高く設定することができる。そのため、混雑状況に応じて走行所要時間を精度高く予測することができる。したがって、車両の走行所要時間を精度高く推定可能な車両情報処理装置、予測システム、車両情報処理方法およびプログラムを提供することができる。なお、本実施の形態において、予測システムは、車両2,3と、「予測装置」に対応するデータセンタ100と、ETC通信装置110とによって構成される。
【0122】
さらに、予め定められた条件として、車体速度Vxが第1しきい値よりも大きく、かつ、左右速度差の大きさVdが第2しきい値よりも小さくなる走行状態が予め定められた時間以上継続するという条件を含むようにすることで、回転速度Vl,Vrを用いて車両2が自動車専用道路を走行しているか否かを精度高く判定することができる。さらに、従動輪52の回転速度を用いて車体速度Vxを算出することによって駆動輪50の回転速度よりも精度高く車体速度Vxを算出することができる。
【0123】
さらに、車両2が自動車専用道路を走行中しているときに複数の特徴量の分布を用いて標準偏差を算出するなどして自動車専用道路の混雑状況を示す混雑度を精度高く設定することができる。さらに、個人を特定できないようにするための秘匿加工(たとえば、統計量化)をするなどして、自動車専用道路の混雑状況等のユーザにとって価値のある情報を生成することができる。
【0124】
さらに、車両2が自動車専用道路の混雑度に関する情報を車両2の外部(データセンタ100)に送信可能とすることにより、自動車専用道路の混雑度に関する情報の利用価値を向上させることができる。
【0125】
さらに、第2処理部24と、第3処理部26とで、特徴量の算出と、特徴量の統計化処理とを分けて行なうことによって、たとえば、第3処理部26での特徴量の統計化処理のみを変更して、他の変化についての情報の生成に利用することができる。なお、このような変更は、たとえば、データセンタ100から受信し、セントラルECU40のメモリに記憶された更新情報をブレーキECU20が読み込むことにより実現することができる。
【0126】
さらに、車両2が通過した入口料金所から出口料金所までの区間を通過した複数の車両から上述の混雑度Cgを受信することにより精度の高い予測曲線を設定することができる。
【0127】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、ブレーキECU20に入力された入力情報は、ブレーキECU20の内部で、図8および図9のフローチャートに示される処理が実行されることによって特徴量の算出と、特徴量の統計化処理とが行なわれる場合を一例として説明したが、データセンタ100においてこれらの処理が実行されてもよい。
【0128】
さらに上述の実施の形態では、データセンタ100は、車両2から混雑度Cgと入口通過時刻Tinとを受信し、ETC通信装置110から車両2の出口通過時刻Toutを受信するものとして説明したが、たとえば、車両2から混雑度Cgと入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとを受信するようにしてもよいし、あるいは、ETC通信装置110から車両2の混雑度Cgと入口通過時刻Tinと出口通過時刻Toutとを受信してもよい。なお、車両2は、自動車専用道路の出口を通過する際に第2通信装置110bを経由して混雑度Cgと入口通過時刻TinとをETC通信装置110に送信してもよい。
【0129】
さらに上述の実施の形態では、車両2を通過した入口料金所から出口料金所までの区間の走行所要時間を推定する動作を一例として説明したが、他の車両が通過する入口料金所から出口料金所までの区間の走行所要時間についても同様に推定することができる。そのため、様々な入口料金所と出口料金所との組み合わせの区間の走行所要時間を上述のように推定することにより、ユーザの要求に応じて走行所要時間の推定値を提供することができる。
【0130】
さらに上述の実施の形態では、特徴量である車体速度Vxの標準偏差σと車体速度Vxの平均値Avxとを用いて混雑度Cgを設定するものとして説明したが、たとえば、クルーズコントロール中の複数の車両のうちの特徴量である車体速度Vxと、クルーズコントロールにおける目標速度とが一致しない車両の割合を用いて混雑度Cgを設定してもよい。
【0131】
以下、図11を参照して、この変形例における車両2のブレーキECU20(具体的には第3処理部26)で実行される処理の一例について説明する。図11は、変形例におけるブレーキECU20の第3処理部26で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0132】
S400にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgを示す値と、順調走行カウンタCjを示す値と、カウンタnを示す値とをそれぞれ初期値(たとえば、ゼロ)にリセットする。
【0133】
S402にて、ブレーキECU20は、車体速度Vxと、目標速度Vtxと、専用道路走行中フラグFjとを取得する。ブレーキECU20は、たとえば、上述の図8に示す処理において算出された車体速度Vxと専用道路走行中フラグFjとを取得する。さらに、ブレーキECU20は、たとえば、ACCの機能を実現するアプリケーション等の運転支援システムを有するADAS-ECU10からクルーズコントロール中における目標速度Vtxを取得する。
【0134】
S404にて、ブレーキECU20は、専用道路走行中フラグFjがオン状態であるか否かを判定する。専用道路走行中フラグFjがオン状態であると判定される場合(S404にてYES)、処理はS406に移される。なお、専用道路走行中フラグFjがオフ状態であると判定される場合(S404にてNO)、処理はS418に移される。
【0135】
S406にて、ブレーキECU20は、カウンタnをカウントアップする。具体的には、ブレーキECU20は、カウンタnの前回値に所定値(たとえば、1)を加算した値をカウンタnの今回値として算出する。
【0136】
S408にて、ブレーキECU20は、車体速度Vxが目標速度Vtxから所定値αを減算した値以上であるか否かを判定する。所定値αは、たとえば、車体速度Vxが目標速度Vtx周辺の速度であることを判定するための値である。所定値αは、たとえば、予め定められた値であってもよいし、あるいは、自動車専用道路の制限速度や車線数等を用いて設定されてもよい。車体速度Vxが目標速度Vtxから所定値αを減算した値以上であると判定される場合(S408にてYES)、処理はS410に移される。
【0137】
S410にて、ブレーキECU20は、順調走行カウンタCjをカウントアップする。具体的には、ブレーキECU20は、順調走行カウンタCjの前回値に所定値(たとえば、1)を加算した値を順調走行カウンタCjの今回値として算出する。
【0138】
S412にて、ブレーキECU20は、順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値が第3しきい値(たとえば、0.7)よりも小さいか否かを判定する。第3しきい値は、車両2が走行する自動車専用道路が混雑しているか否かを判定するためのしきい値である。第3しきい値は、予め定められた値であってもよいし、あるいは、自動車専用道路の制限速度や車線数等を用いて設定されてもよい。順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値が第3しきい値よりも小さいと判定される場合(S412にてYES)、処理はS414に移される。
【0139】
S414にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgの値を自動車専用道路が混雑状態であることを示す値として1に設定する。順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値が第3しきい値以上であると判定される場合(S412にてNO)、処理はS416に移される。
【0140】
S416にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgの値を自動車専用道路が混雑状態でない(順調に流れている状態である)ことを示す値として2に設定する。
【0141】
S418にて、ブレーキECU20は、混雑度Cgを示す値をセントラルECU40に出力する。セントラルECU40は、入力される情報をDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。
【0142】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本変形例における車両情報処理装置であるブレーキECU20の動作について説明する。なお、第2処理部24における動作については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0143】
車両2が走行を開始すると、第3処理部26においては、混雑度Cgと、順調走行カウンタCjと、カウンタnとが初期値にリセットされる(S400)。
【0144】
そして、車体速度Vxと目標速度Vtxと専用道路走行中フラグFjとが第2処理部24から取得され(S402)、専用道路走行中フラグFjがオン状態であると(S404にてYES)、カウンタnの値がカウントアップされるとともに(S406)、取得された車体速度Vxが目標速度Vtxから所定値αだけ減算した値以上である場合には、順調走行カウンタCjがカウントアップされる。このような状態が継続すると、順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値は、0.7以上の値になるため(S412にてNO)、混雑度Cgが混雑していない状態を示す値である2に設定されることとなる。
【0145】
一方、自動車専用道路が混雑することによって、車体速度Vxが目標速度Vtxから所定値αを減算した値よりも低くなる場合には(S408にてNO)、カウンタnの値がカウントアップされるものの順調走行カウンタCjがカウントアップされないため、順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値は、低下していくこととなる。このような状態が継続して、順調走行カウンタCjをカウンタnで除算した値が0.7よりも小さくなる場合には(S412にてYES)、混雑度Cgが混雑している状態を示す値である1に設定されることとなる(S414)。設定された混雑度CgはセントラルECU40に出力される(S418)。車両2の走行が継続する限り、上述の処理が繰り返される。セントラルECU40は、混雑度Cgと入口通過時刻TinをDCM30を経由してデータセンタ100に送信する。なお、データセンタ100の動作については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0146】
以上のようにして、本変形例に係る車両情報処理装置によると、車体速度Vxが目標速度Vtxを達成する割合を用いて自動車専用道路の混雑状況を精度高く推定することができる。そのため、混雑状況に応じて走行所要時間を精度高く予測することができる。
【0147】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0148】
1 車両情報管理システム、2,3 車両、6 通信ネットワーク、7 基地局、10 ADAS-ECU、11 制御装置、12 記憶装置、13 通信装置、14 通信バス、20 ブレーキECU、22 第1処理部、24 第2処理部、26 第3処理部、30 DCM、32 ETC車載器、40 セントラルECU、50 駆動輪、52 従動輪、54 第1車輪速センサ、56 第2車輪速センサ、100 データセンタ、110 ETC通信装置、110a 第1通信装置、110b 第2通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11