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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】アクリルゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
C08F6/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021511421
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020012008
(87)【国際公開番号】W WO2020203301
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019065497
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 涼
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079786(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079787(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079785(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079784(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/079783(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00- 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体を乳化重合することにより乳化重合液を得る工程、
前記乳化重合液と凝固剤を混合して含水クラムを得る工程、
前記含水クラムを水洗する工程、及び
前記含水クラムを水洗した後の水の電気伝導率を測定する工程、
を含む、アクリルゴムの製造方法であって、
前記含水クラムを水洗する工程において、前記含水クラムを水洗後の水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となるまで、前記含水クラムを水洗する、アクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記含水クラムを水洗する工程後に、乾燥工程をさらに含む、請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアクリルゴムの製造方法により得られるアクリルゴムに、架橋剤を配合する工程をさらに含む、アクリルゴム含有組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のアクリルゴム含有組成物の製造方法により得られるアクリルゴム組成物を架橋する工程をさらに含む、アクリルゴム架橋物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリルゴムの製造方法に関し、さらに詳しくは、耐水性に優れたゴム架橋物を与えることの出来るアクリルゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムはアクリル酸エステルを主成分とする重合体であり、一般に耐熱性、耐油性及び耐オゾン性に優れたゴムとして知られており、自動車工業分野で広く使用されている。
【0003】
このようなアクリルゴムは、通常、アクリルゴムを構成する単量体混合物を乳化重合し、得られた乳化重合液に凝固剤を添加することによって得られた含水クラム(すなわち、含水アクリルゴム)を乾燥させることによって得られる。
【0004】
一方、近年、自動車用の部材、たとえば、シール材、ホース材、防振材、チューブ材、ベルト材またはブーツ材といった各部材においては、耐熱性や耐油性に加えて、耐水性に優れていることが求められている。アクリルゴム架橋物の耐水性にはアクリルゴム中の凝固剤に残留量が影響するため、これを極力除去する工程が必要となる。特許文献1と2にはアクリルゴム中の凝固剤の残留量を低減するという観点より凝固工程で得られた含水クラムの洗浄工程の記載もあるが、水洗回数以外の管理手法についての記述は無い。また、特許文献2にはアクリルゴム中の凝固剤残留量の測定値が記載されているが、微量の凝固剤の分析には時間と費用の観点から製造時の工程分析で凝固剤残留量の測定は難しい。そのため、より簡便にアクリルゴム架橋物の耐水性を損なわない範囲でアクリルゴム中の凝固剤残留量を制御する手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-213493号公報
【文献】特許6394834号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐水性に優れたゴム架橋物を与えることのできるアクリルゴムをより簡便に製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、アクリルゴムを得るための単量体を乳化重合することによって得られる乳化重合液に凝固剤を添加することで得られた含水クラムの水洗工程において、水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下になるまで含水クラムを水洗することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。従来、水洗水(通常、含水クラムの水洗前の水洗水の電気伝導率は0.1mS/cm以下)の電気伝導率がこのように低い値を示すまで含水クラムを洗浄することは行われておらず、電気伝導率が6.0mS/cm以下になるまで含水クラムを水洗することや、含水クラムの水洗水の電気伝導率を管理されてもいない。
【0008】
本発明の態様は次のとおりである。
項1. 単量体を乳化重合することにより乳化重合液を得る工程、
前記乳化重合液と凝固剤を混合して含水クラムを得る工程、及び
前記含水クラムを水洗する工程
を含む、アクリルゴムの製造方法であって、
前記含水クラムを水洗する工程において、前記含水クラムを水洗後の水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となるまで、前記含水クラムを水洗する、アクリルゴムの製造方法。
項2. 前記含水クラムを水洗する工程後に、乾燥工程をさらに含む、項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
項3. 項1又は2に記載のアクリルゴムの製造方法により得られるアクリルゴムに、架橋剤を配合する工程をさらに含む、アクリルゴム含有組成物の製造方法。
項4. 項3に記載のアクリルゴム含有組成物の製造方法により得られるアクリルゴム組成物を架橋する工程をさらに含む、アクリルゴム架橋物の製造方法。
項5. アクリルゴムの含水クラムであって、
前記含水クラムを水で洗浄した場合に、水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となる、アクリルゴムの含水クラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明は耐水性に優れるアクリルゴムの簡便な製造方法で、本発明のアクリルゴムを含有する組成物を用いて作製されるゴム材料(具体的には架橋してなる架橋物)は、耐水性に優れるため自動車用の部材、たとえば、シール材、ホース材、防振材、チューブ材、ベルト材またはブーツ材といった各部材用のゴム材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアクリルゴムの製造方法では、単量体を乳化重合することにより乳化重合液を得る工程、前記乳化重合液と凝固剤を混合して含水クラムを得る工程、及び前記含水クラムを水洗する工程を含む、アクリルゴムの製造方法であって、前記含水クラムを水洗する工程において、前記含水クラムの水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となるまで、前記含水クラムを水洗することを特徴とする。本発明のアクリルゴムの製造方法は、当該構成を備えることにより、耐水性に優れたアクリルゴムが得られる。以下、本発明のアクリルゴムの製造方法、当該方法によって得られる含水クラム(含水アクリルゴム)、当該方法を利用したアクリルゴム架橋物の製造方法について詳述する。
【0011】
本発明の製造方法により製造されるアクリルゴムとしては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を主成分とした重合体であり、主成分とは(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を50質量%以上含有することを指す。尚、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステル」を意味し、本願において、類する表現についても同様である。
【0012】
前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を例示することができ、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位、炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位であることが好ましく、炭素数2~6のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及び/又は炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましく、炭素数2~4のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及び/又は炭素数2~4のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルコキシアルキルエステルに由来する構成単位を有することが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、単独または2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位であってよい。
【0013】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルを例示することができ、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステルを例示することができ、(メタ)アクリル酸メトキシエチルであることが好ましい。
【0014】
本発明のアクリルゴムにおける、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、アクリルゴムの全構成単位において、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、上限は99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、97.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0015】
本発明のアクリルゴムにおいては、架橋基を有する不飽和単量体由来の構成単位を含有する。架橋基を有する不飽和単量体由来の構成単位としては、ハロゲン基(例えば、塩素基など)を有する不飽和単量体由来の構成単位、カルボキシ基を有する不飽和単量体由来の構成単位、エポキシ基を有する不飽和単量体由来の構成単位を例示することができ、ハロゲン基(特に塩素基)、カルボキシル基を有する不飽和単量体由来の構成単位が特に好ましい。
【0016】
ハロゲン基を有する不飽和単量体としては、例えば、モノクロロ酢酸ビニル、アリルクロロアセテートなどが挙げられ、モノクロロ酢酸ビニルが好ましい。
【0017】
カルボキシ基を有する不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの無水カルボン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ2-エチルヘキシル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシルなどのブテンジオン酸モノ環状アルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。この中でも、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。
【0018】
エポキシ基を有する不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
アクリルゴム中の架橋基を有する不飽和単量体由来の構成単位の含有割合は、アクリルゴムの全構成単位において、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることが特に好ましい。架橋基を有する不飽和単量体由来の構成単位が上記の範囲であることにより、強度や圧縮永久歪性等の物性、及び加工性の点で好ましい。
【0020】
さらに本発明のアクリルゴムは、上記の構成単位以外に、これらと共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位を含有してもよい。その他の構成単位としては、エチレン性不飽和ニトリルに由来する構成単位、(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構成単位、芳香族ビニル系モノマーに由来する構成単位、共役ジエン系モノマーに由来する構成単位、非共役ジエン類に由来する構成単位、その他のオレフィンに由来する構成単位等が挙げられる。
【0021】
エチレン性不飽和ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-メトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等の化合物が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシエチルアクリルアミド、N-ブトキシエチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-プロピオキシメチルアクリルアミド、N-プロピオキシメチルメタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、エタクリルアミド、クロトンアミド、ケイ皮酸アミド、マレインジアミド、イタコンジアミド、メチルマレインアミド、メチルイタコンアミド、マレインイミド、イタコンイミド等の化合物が挙げられる。
【0023】
芳香族ビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、p-エチルスチレン、α-フルオロスチレン、p-トリフルオロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-アミノスチレン、p-ジメチルアミノスチレン、p-アセトキシスチレン、スチレンスルホン酸あるいはその塩、α-ビニルナフタレン、1-ビニルナフタレン-4-スルホン酸あるいはその塩、2-ビニルフルオレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等の化合物が挙げられる。
【0024】
共役ジエン系モノマーとしては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,2-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、クロロプレン、ピぺリレン等の化合物が挙げられる。
【0025】
また、非共役ジエン類に由来する構成単位としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン類の化合物に由来する構成単位が挙げられる。
【0026】
その他のオレフィン系モノマーとしては、アクリル酸ジシクロペンタジエニル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルメタクリレート、アクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル、メタクリル酸ジシクロペンタジエニルエチル等のエステル類、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,2-ジクロロエチレン、酢酸ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、1,2-ジフルオロエチレン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、1,2-ジブロモエチレン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等の化合物が挙げられる。
【0027】
本発明のアクリルゴムにおいて、これらの共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位を含有させる場合には、全構成単位における含有量は0~45質量%、0~20質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明のアクリルゴムの製造方法は、単量体を乳化重合することにより乳化重合液を得る工程、前記乳化重合液と凝固剤を混合して含水クラムを得る工程、及び前記含水クラムを水洗する工程を含む、アクリルゴムの製造方法であって、前記含水クラムを水洗する工程において、前記含水クラムを水洗後の水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となるまで、前記含水クラムを水洗することを特徴とする。
【0029】
単量体を乳化重合することにより乳化重合液を得る工程について説明する。以下、乳化重合工程と記載することもできる。
【0030】
乳化重合工程は、アクリルゴムを構成することになる単量体を乳化重合することのより乳化重合液を得る工程である。
【0031】
乳化重合工程においては、通常の方法を用いればよく、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤等は一般的に使用される従来公知のものが使用できる。
【0032】
乳化剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性乳化剤およびアニオン性乳化剤等を使用することができる。ノニオン乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等があげられ、アニオン性乳化剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸塩等があげられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。
【0033】
乳化剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みの単量体量に対して、0.01~10質量%の範囲であり、好ましくは0.03~7質量%、更に好ましくは0.05~5質量%である。単量体成分として、反応性界面活性剤を用いる場合は、乳化剤の添加は必ずしも必要でない。
【0034】
重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される無機系重合開始剤、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等の有機過酸化物系の重合開始剤、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、4-4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、2-2'-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)2-2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロパンアミド、2-2'-アゾビス[2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン]、2-2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)および2-2'-アゾビス[2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロパンアミド]などのアゾ系開始剤等が挙げられる。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
重合開始剤の使用量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みの単量体量に対して、0.01~5質量%の範囲であり、好ましくは0.01~4質量%、更に好ましくは0.02~3質量%である。
【0036】
また、重合開始剤としての有機過酸化物および無機過酸化物は、還元剤と組み合わせることにより、レドックス系重合開始剤として使用することができる。組み合わせて用いる還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物、メタンスルホン酸ナトリウム等のメタン化合物、ジメチルアニリン等のアミン化合物、アスコルビン酸およびその塩、亜硫酸およびチオ硫酸のアルカリ金属塩などの還元性を有する無機塩などが挙げられる。これらの還元剤は単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、仕込みモノマー100質量部に対して好ましくは0.0003~10.0質量部である。
【0037】
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-メチル-2-ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100質量部に対して0~5質量部にて使用される。
【0038】
重合停止剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムおよびヒドロキノンなどのキノン化合物などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100質量部に対して、0~2質量部である。
【0039】
これ以外にも必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の重合副資材を使用することができる。
【0040】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合時間および重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は10~100℃であり、重合時間は0.5~100時間である。
【0041】
乳化重合液と凝固剤を混合して含水クラムを得る工程について説明する。以下、凝固工程と記載することもできる。
【0042】
凝固工程で用いられる凝固剤としては、特に制限はなく、無機金属塩であることが好ましく、その具体例としては硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0043】
凝固剤により凝固させる方法については、特に制限はなく、一般に行われている方法を採用することができる。その方法の一例として、乳化重合液を、凝固剤を含む水溶液に連続的または回分的に供給する方法が挙げられ、この操作によって含水クラム(含水アクリルゴム)が得られる。その際、凝固剤を含む水溶液の温度は、単量体の種類や使用量、撹拌等によるせん断力などの影響を受けるため、これを一律に規定することはできないが、一般的には50℃以上、好ましくは60℃~100℃の範囲である。
【0044】
含水クラムを水洗する工程について説明する。以下、水洗工程と記載することもできる。水洗工程においては、含水クラムを水洗した後の水洗水の電気伝導率が6.0mS/cm以下となるまで、前記含水クラムを水洗する。
【0045】
水洗工程においては、含水クラムに含まれる凝固剤を除去することを目的とする。
【0046】
含水クラムを水洗した後の水(水洗水)の電気伝導率は6.0mS/cm以下であり、4.5mS/cm以下であることが好ましく、3.0mS/cm以下であることが特に好ましい。含水クラムを水洗後の水の電気伝導率は特に限定されないが、0.1mS/cm以上であってよく、0.3mS/cm以上であってよい。前記の通り、含水クラムの水洗に用いられる、水洗前の水洗水の電気伝導率は、通常0.1mS/cm以下であり、本発明においても、含水クラムの水洗水としては、電気伝導率は0.1mS/cm以下の水を用いることが好ましい。
【0047】
含水クラムを水洗した後の水の電気伝導率は、次のようにして測定される。含水クラム中に含まれる固形分100質量部に対してイオン交換水3500質量部を加えたスラリーを所定の時間まで撹拌する。このとき、そもそも含水クラムの水洗が十分では無い場合には、イオン交換水を交換する。水洗された含水クラムを取り出した後、新たなイオン交換水3500質量部に投入し、5分間撹拌した後、撹拌を止めてクラムが沈降したことを確認し、その上澄み液を100mL採取する。採取した上澄み液の23℃での電気伝導率を、交流二電極法を用いて測定する。電気伝導率測定には株式会社堀場製作所製ポータブル型電気伝導率計ES-51と株式会社堀場製作所製防水汎用電気伝導率用セル9382-10D等を用いて測定することができる。
【0048】
水洗後の含水クラムを乾燥させる工程について説明する。以下、乾燥工程と記載することもできる。
【0049】
含水クラムから水分を除去し乾燥することでアクリルゴムを得ることができる。乾燥の方法としては特に限定されないが一般的にはフラッシュドライヤーや流動乾燥機などを用いて乾燥される。
【0050】
乾燥温度としては、特に限定されないが、50℃~250℃であることが好ましく、80~200℃であることがより好ましい。乾燥時間は乾燥温度により異なる。
【0051】
乾燥工程の前に遠心分離機等による脱水工程を経ても良い。
【0052】
本発明の製造方法においては、pH調整剤を添加する工程を含んでいてもよい。
【0053】
pH調整剤として塩基を用いることができ、塩基の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。
【0054】
このようにして製造される、本発明で用いるアクリルゴムの分子量範囲は、加工性の観点から、JIS K 6300に定めるムーニースコーチ試験での100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)表示で、10~100であることが好ましく、15~90であることがより好ましく、20~80であることが更に好ましい。
【0055】
<アクリルゴム含有組成物>
本発明のアクリルゴム含有組成物は、上記のアクリルゴム及び架橋剤を少なくとも含有する。
【0056】
架橋剤としては、多価アミン化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、アジリジン化合物、硫黄化合物、高級脂肪酸金属塩(脂肪酸金属石けん)、チオール化合物などの従来公知の架橋剤を用いることができる。
【0057】
高級脂肪酸金属塩としては、アルキル基またはアルケニル基の炭素数が8~18の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸バリウム等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。
多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン等の脂肪族多価アミン化合物や、4,4'-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミノメチル、イソフタル酸ジヒドラジド等の芳香族多価アミン化合物が挙げられる。
【0058】
多価エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA 型エポキシ化合物、ビスフェノールF 型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA 型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF 型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物などのグリシジルエーテル型エポキシ化合物; 脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物などのその他の多価エポキシ化合物が挙げられる。
【0059】
多価イソシアナート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p-フェニレンジイソシアナート、m-フェニレンジイソシアナート、1,5-ナフチレンジイソシアナート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11- ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート等が挙げられる。
【0060】
アジリジン化合物としては、トリス- 2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、トリス〔1-(2-メチル)アジリジニル〕ホスフィノキシド、ヘキサ〔1-(2-メチル) アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が挙げられる。
【0061】
硫黄化合物としては、硫黄、4,4'-ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
【0062】
チオール化合物としては、例えば1,3,5-トリアジンジチオールあるいはその誘導体、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等の1,3,5-トリアジントリチオール等が挙げられる。
塩基性金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0063】
有機金属ハロゲン化物としては、ジシクロペンタジエニル金属ジハロゲン化物が例示され、金属としては、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。
【0064】
これらの架橋剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。架橋剤の量は、本発明のアクリルゴム100質量部に対してそれぞれ0.05~20質量部、好ましくは0.1~10質量部である。
【0065】
また、本発明のアクリルゴム含有組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、光安定化剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、着色剤、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、帯電防止剤、発泡剤等を任意に配合できる。
【0066】
更に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられるゴムを例示すれば、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-イソプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、また樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0067】
上記ゴム、樹脂の合計配合量は、本発明のアクリルゴム100質量部に対して、50質量部以下、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0068】
本発明のアクリルゴム含有組成物の製造方法は、前記のアクリルゴムの製造方法により得られるアクリルゴムに、架橋剤を配合する工程を含む。
【0069】
本発明のアクリルゴム含有組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0070】
その配合手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にポリマーのみを混練りし、次いで架橋剤、架橋促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作製し、その後、架橋剤、架橋促進剤を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
【0071】
アクリルゴム架橋物はアクリルゴム含有組成物を架橋することによって得られ、前記のアクリルゴム含有組成物の製造方法により得られるアクリルゴム含有組成物を架橋する工程を含む。
【0072】
アクリルゴム含有組成物を架橋する工程としては、アクリルゴム含有組成物を通常100~250℃に加熱することで架橋物とすることができる。架橋時間は温度によって異なるが、0.5~300分の間で行われるのが普通である。架橋成型は架橋と成型を一体的に行う場合や、先に成型したアクリルゴム含有組成物に改めて加熱することで架橋物とする場合のほか、先に加熱して架橋物を成型のために加工を施す場合のいずれでもよい。架橋成型の具体的な方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0073】
そのため、本発明の架橋物は、上記特性を活かして、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、メカニカルシール、ウェルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧機器用シール、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケットとして好適に用いられる。
【0074】
また、本発明における架橋物は、ゴム材料として用いることができ、自動車用途に用いられる押し出し成型製品および型架橋製品として、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ベーパーホース、オイルホース等の燃料タンクまわりの燃料油系ホース、ターボエアーホース、エミッションコントロールホース等のエアー系ホース、ラジエーターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホース等の各種ホース類に好適に使用させる。
【実施例
【0075】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例、比較例では、アクリルゴムの製造、及び得られたアクリルゴムと架橋剤を含有するアクリルゴム含有組成物、およびアクリルゴム含有組成物を用いて作製されるゴム材料(具体的には架橋してなる架橋物)の物性を評価した。
【0076】
<含水クラムの水洗方法>
実施例、比較例においては、乳化重合液を凝固させ、得られた含水クラムを水洗する。水洗方法は、凝固後の含水クラム中に含まれる固形分100質量部に対してイオン交換水3500質量部を加えたスラリーを所定の時間まで撹拌して、含水クラムの洗浄を行う。
【0077】
<水洗水の電気伝導率測定>
実施例、比較例における水洗水の電気伝導率測定は、水洗された含水クラムを取り出した後、新たなイオン交換水(電気伝導率0.1mS/cm以下)3500質量部に投入し、5分間撹拌した後、撹拌を止めてクラムが沈降したことを確認し、その上澄み液を100mL採取した。採取した上澄み液を110mLのサンプル缶瓶に入れた。110mLサンプル缶瓶に採取した上澄み液の23℃での電気伝導率を、交流二電極法を用いて測定する。電気伝導率測定には株式会社堀場製作所製ポータブル型電気伝導率計ES-51と株式会社堀場製作所製防水形汎用電気伝導率用セル9382-10Dを用いた。
【0078】
[実施例1]
(アクリルゴムAの製造)
温度計、攪拌装置、窒素導入管及び減圧装置を備えた重合反応器に、水200質量部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル1.7質量部、モノマーとしてアクリル酸エチル49.0質量部、アクリル酸n-ブチル25.0質量部、アクリル酸2-メトキシエチル24.8質量部、及び2-クロロ酢酸ビニル1.2質量部を仕込み、減圧による脱気および窒素置換を繰り返して酸素を十分除去した後、アスコルビン酸ナトリウム0.1質量部および過硫酸カリウム0.1質量部を加えて常圧、常温下で乳化重合反応を開始させ、重合転化率が95%に達するまで反応を継続し、0.0075質量部のハイドロキノンを添加して重合を停止した。得られた乳化重合液を硫酸アルミニウム水溶液で凝固させ、含水クラムを水洗後の水洗水の電気伝導率が1.7mS/cmに達するまで水洗を行った。水洗後の含水クラムを乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0079】
[実施例2]
(アクリルゴムBの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が1.9mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムBを得た。
【0080】
[実施例3]
(アクリルゴムCの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が4.3mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムCを得た。
【0081】
[実施例4]
(アクリルゴムDの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が0.4mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムDを得た。
【0082】
[比較例1]
(アクリルゴムEの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が7.1mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムEを得た。
【0083】
[比較例2]
(アクリルゴムFの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が26.9mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムFを得た。
【0084】
[比較例3]
(アクリルゴムGの製造)
実施例1より、含水クラムの水洗をその水洗水の電気伝導率が63.8mS/cmに達するまで行った以外は、実施例1と同様に行い、アクリルゴムGを得た。
【0085】
<ムーニー粘度(ML1+4、100℃)>
アクリルゴムA~Fについては、JIS K6300の未架橋ゴム物理試験方法のムーニー粘度試験に従って、東洋精機社製 Mooney Viscometer AM-3を用いて、測定温度100℃においてムーニー粘度(ML1+4)を測定した。その結果を表1に示す
【0086】
(アクリルゴム含有組成物の製造)
まず、表2、3に示す各配合で120℃のニーダーにて混練りし、A練りコンパウンドを作製した。このA練りコンパウンドを室温にてオープンロールにて架橋剤及び架橋促進剤を分散させてB練りコンパウンドを得た。得られたB練コンパウンドをオープンロールで分出しを行い、厚み2~2.5mmの未架橋シートを得た。表2、3の配合剤に関する単位は質量部とする。
【0087】
上記で得られた未架橋シートを、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、3時間の条件で加熱して二次架橋を行うことにより、シート状の架橋物を得た。得られた架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。次にこの試験片を用いて、JIS K6251に従い島津製作所社製 AGS‐5KNYを用いて引張強度および伸びを測定した。結果を表4、5に示す。
【0088】
[耐水性]
未架橋シートを、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、180℃で10分間プレスすることにより一次架橋し、次いで、得られた一次架橋物を、ギヤー式オーブンにて、さらに180℃、3時間の条件で加熱して二次架橋を行うことにより、シート状の架橋物を得た。そして、得られた架橋物のシートから、3cm×2cm×0.2cmの試験片に切り取り、JIS K6258に準拠して、得られた試験片を温度100℃に調整した蒸留水(100ml)中に70時間浸漬させる浸漬試験を行い、浸漬前後の試験片の体積変化率を下記式にしたがって、測定した。結果を表4、5に示す。
浸漬前後の体積変化率が小さいほど、水に対する膨潤が抑制されており、耐水性に優れる
と判断できる。
浸漬前後の体積変化率(%)=(浸漬後の試験片の体積-浸漬前の試験片の体積)÷
浸漬前の試験片の体積×100
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
表4、5で示すように、本発明の製造方法により得られたアクリルゴムを用いた組成物を架橋してなる架橋物である実施例4~9は、耐水試験において、比較例と比較して耐水試験後の体積変化率が小さい結果となった。この結果から、本発明では水洗後の水の電気伝導率を管理するという簡便な手法で耐水性に優れた架橋物を形成するアクリルゴムを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は耐水性に優れるアクリルゴムの簡便な製造方法を提供することができる。当該方法で得られるアクリルゴムを含有する組成物を用いて作製されるゴム材料(具体的には架橋してなる架橋物)は、耐水性に優れるため自動車用の部材、たとえば、シール材、ホース材、防振材、チューブ材、ベルト材またはブーツ材といった各部材用のゴム材料として好適である。