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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】検眼装置及び検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61B3/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021511432
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020012128
(87)【国際公開番号】W WO2020203323
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019067312
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085189(JP,A)
【文献】特開平09-234186(JP,A)
【文献】特開2012-217710(JP,A)
【文献】特開2018-171368(JP,A)
【文献】特開2015-112436(JP,A)
【文献】特開2004-065527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被検眼を検査する検眼装置であって、
前記被検眼を撮像するための撮像光学系を有し、前記被検眼を検査するための検査手段と、
前記検査手段に対して水平軸周りに回動可能な表示手段と、
前記被検者に対して、前記被検者毎に予め設定される個別検査条件が対応付けされた識別子の撮像を誘導するための誘導画面を、前記表示手段に表示させる誘導手段と、
前記検眼装置の検査条件を設定する設定手段と、
を備え、
前記表示手段は、前記撮像光学系の撮像方向に対し、前記誘導画面の方向が、同じ方向となるように配置され、
前記撮像光学系は、前記識別子を撮像可能であって、
前記設定手段は、前記撮像光学系によって前記識別子が撮像された場合に、前記識別子に対応付けされた前記個別検査条件に基づいて、前記検眼装置の前記検査条件を設定することを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
請求項1の検眼装置において、
前記撮像光学系は、前記被検眼の前眼部を撮像する前眼部撮像光学系であって、
前記前眼部撮像光学系は、前記識別子を撮像可能であることを特徴とする検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の検眼装置において、
前記設定手段は、前記個別検査条件に基づいて、前記被検眼に対する過去の検査条件と同一の検査条件となるように、前記検眼装置の前記検査条件を設定することを特徴とする検眼装置。
【請求項4】
被検者の被検眼を検査する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、
前記被検眼を撮像するための撮像光学系を有し、前記被検眼を検査するための検査手段と、
前記検査手段に対して水平軸周りに回動可能な表示手段であって、前記撮像光学系の撮像方向に対し、前記被検者毎に予め設定される個別検査条件が対応付けされた識別子の撮像を誘導するための誘導画面の方向が、同じ方向となるように配置される表示手段と、
を有する前記検眼装置のプロセッサに実行されることで、
前記被検者に対して前記識別子の撮像を誘導する誘導ステップと、
前記撮像光学系にて前記識別子を撮像する撮像ステップと、
前記検眼装置の検査条件を設定する設定ステップと、
前記検眼装置に実行させ、
前記設定ステップは、前記撮像ステップによって前記識別子が撮像された場合に、前記識別子に対応付けされた前記個別検査条件に基づいて、前記検眼装置の前記検査条件を設定すことを特徴とする検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する検眼装置及び検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査する検眼装置として、被検眼の眼底断層画像を撮影する眼科撮影装置(特許文献1)、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式検眼装置(特許文献2)、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置(特許文献3)、等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-110392号公報
【文献】特開平10-33479号公報
【文献】特開平5-176893号公報
【発明の概要】
【0004】
検者は、検眼装置を用いて被検眼を検査する際に、被検者に関する情報の入力や検索を行い、被検眼と装置の位置関係、過去と同一の検査条件、等を設定して、検査を開始している。検者にとって、このような操作は手間であり、検査を効率よく進めることが難しかった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼に対する検査を効率よく行うことができる検眼装置及び検眼プログラムを提供することを技術課題とする。
【0006】
本開示の第1態様に係る検眼装置は、被検者の被検眼を検査する検眼装置であって、前記被検眼を撮像するための撮像光学系を有し、前記被検眼を検査するための検査手段と、前記検査手段に対して水平軸周りに回動可能な表示手段と、前記被検者に対して、前記被検者毎に予め設定される個別検査条件が対応付けされた識別子の撮像を誘導するための誘導画面を、前記表示手段に表示させる誘導手段と、前記検眼装置の検査条件を設定する設定手段と、を備え、前記表示手段は、前記撮像光学系の撮像方向に対し、前記誘導画面の方向が、同じ方向となるように配置され、前記撮像光学系は、前記識別子を撮像可能であって、前記設定手段は、前記撮像光学系によって前記識別子が撮像された場合に、前記識別子に対応付けされた前記個別検査条件に基づいて、前記検眼装置の前記検査条件を設定する。
【0007】
本開示の第2態様に係る検眼プログラムは、被検者の被検眼を検査する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、前記被検眼を撮像するための撮像光学系を有し、前記被検眼を検査するための検査手段と、前記検査手段に対して水平軸周りに回動可能な表示手段であって、前記撮像光学系の撮像方向に対し、前記被検者毎に予め設定される個別検査条件が対応付けされた識別子の撮像を誘導するための誘導画面の方向が、同じ方向となるように配置される表示手段と、を有する前記検眼装置のプロセッサに実行されることで、前記被検者に対して前記識別子の撮像を誘導する誘導ステップと、前記撮像光学系にて前記識別子を撮像する撮像ステップと、前記検眼装置の検査条件を設定する設定ステップと、を前記検眼装置に実行させ、前記設定ステップは、前記撮像ステップによって前記識別子が撮像された場合に、前記識別子に対応付けされた前記個別検査条件に基づいて、前記検眼装置の前記検査条件を設定す
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】OCT装置の外観図である。
図2】測定部における内部構成の概略図である。
図3】検者が被検者に渡すカードの一例である。
図4A】被検者を誘導するための誘導画面の一例である。
図4B】撮像画像を含む撮像画面の一例である。
図5】被検者の操作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示における実施形態の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0012】
<検眼装置>
本実施形態に係る検眼装置は、被検者の被検眼を検査する装置である。
【0013】
検眼装置は、被検眼を撮影することで、被検眼を検査する装置でもよい。例えば、検眼装置は、被検眼の前眼部を撮影して、被検眼の前眼部画像データ、被検眼の角膜形状、等を取得する眼科撮影装置でもよい。また、例えば、検眼装置は、被検眼の眼底を撮影して、被検眼の眼底正面画像データ、被検眼の眼底断層画像データ、等を取得する眼科撮影装置でもよい。
【0014】
検眼装置は、被検眼を測定することで、被検眼を検査する装置でもよい。一例として、検眼装置は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式検眼装置でもよい。例えば、被検眼の光学特性として、被検眼の眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、コントラスト感度、等を他覚的に測定する他覚式検眼装置でもよい。また、一例として、検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置でもよい。例えば、被検眼の光学特性として、被検眼の眼屈折力等を自覚的に測定する自覚式検眼装置でもよい。また、一例として、検眼装置は、被検者の視認による応答を得て、被検眼の視野を測定する検眼装置でもよい。
【0015】
より詳細には、検眼装置として、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)、走査型レーザ検眼鏡、眼底カメラ、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、角膜形状測定装置、角膜曲率測定装置、超音波検眼装置、眼屈折力測定装置、フォロプタ、視野計、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0016】
なお、本実施形態では、このような検眼装置として、光干渉断層計(例えば、OCT装置100)を例に挙げて説明する。光干渉断層計は、タイムドメインOCT(Time Domain OCT:TD-OCT)であってもよいし、フーリエドメインOCT(Fourier Domain OCT:FD-OCT)であってもよい。FD-OCTは、スペクトルドメインOCT(Spectral Domain OCT:SD-OCT)や波長掃引式OCT(Swept Source OCT:SS-OCT)が代表的である。
【0017】
<検査手段>
検眼装置は、検査手段(例えば、OCT光学系40)を備えてもよい。検査手段は、被検眼を検査するための検査手段である。検査手段は、光を受光することで被検眼を検査する検査系を備えてもよい。この場合、検査系は、被検眼を撮像するための撮像光学系であってもよい。また、この場合、検査系は、被検眼を測定するための測定光学系であってもよい。検査手段は、撮像光学系と測定光学系の少なくともいずれかを備える構成としてもよい。
【0018】
検査手段は、光を受光することで被検眼を検査する検査系に限定されず、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系であってもよい。この場合、検査系は、超音波を出射してその反射波を検出することにより被検眼を測定するための超音波測定系であってもよい。
【0019】
なお、検査手段としては、光を受光することで被検眼を検査する検査系と、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系と、のいずれかを備える構成としてもよい。もちろん、光を受光することで被検眼を検査する検査系と、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系と、をどちらも備える構成としてもよい。
【0020】
<撮像光学系>
検眼装置は、撮像光学系を備える。撮像光学系は、被検眼を撮像するための撮像光学系である。例えば、撮像光学系は、左眼及び右眼のいずれかを撮像する構成としてもよい。また、例えば、撮像光学系は、左眼及び右眼をどちらも撮像する構成としてもよい。本実施形態においては、検眼装置が備える制御部(例えば、制御部107)に、撮像光学系が制御されることで、被検眼が撮像される。
【0021】
撮像光学系は、被検眼を含むように撮像するための撮像光学系であってもよい。一例として、被検者の顔を撮像するための顔撮像光学系(例えば、顔撮像光学系10)を用いてもよい。この場合、被検者の顔が、左眼及び右眼の少なくともいずれかを含むように撮像されてもよい。また、一例として、被検眼の前眼部を撮像するための前眼部撮像光学系(例えば、前眼部撮像光学系20)を用いてもよい。また、一例として、被検眼の眼底を撮像するための眼底撮像光学系を用いてもよい。
【0022】
本実施形態において、撮像光学系は、被検者毎に予め設定される個別の検査条件が対応付けされた識別子を撮像可能としてもよい。つまり、撮像光学系が、被検眼の撮像と識別子の撮像で兼用されてもよい。このような、撮像光学系を兼用して使い分ける構成とすることで、装置に新たな部材を設けることなく、識別子を容易な構成で撮像できる。
【0023】
例えば、撮像光学系が、被検眼の顔を撮像する顔撮像光学系である場合、顔撮像光学系が、識別子を撮像可能としてもよい。すなわち、顔撮像光学系が、被検眼の顔を撮像するための撮像光学系と、識別子を撮像するための撮像光学系と、を兼用してもよい。同様に、例えば、撮像光学系が、被検眼の前眼部を撮像する前眼部撮像光学系である場合、前眼部撮像光学系が、識別子を撮像可能としてもよい。すなわち、前眼部撮像光学系が、被検眼の前眼部を撮像するための撮像光学系と、識別子を撮像するための撮像光学系と、を兼用してもよい。同様に、例えば、撮像光学系が、被検眼の眼底を撮像する眼底撮像光学系である場合、眼底撮像光学系が、識別子を撮像可能としてもよい。すなわち、眼底撮像光学系が、被検眼の眼底を撮像するための撮像光学系と、識別子を撮像するための撮像光学系と、を兼用してもよい。
【0024】
<検査条件>
本実施形態において、被検者毎に予め設定される個別の検査条件とは、被検者の被検眼を検査するための、被検者毎に異なる検査条件である。例えば、検査条件は、被検者(被検眼)に合わせて設定される、被検眼を測定するための測定条件であってもよい。また、例えば、被検者(被検眼)に合わせて設定される、被検眼を撮影するための撮影条件であってもよい。
【0025】
例えば、検査条件は、被検者に関する情報(例えば、身長、顔の大きさ、眼の形状、左眼から右眼までの距離、等)に基づいて予め設定される条件でもよい。また、例えば、検査条件は、被検眼に対する過去の検査条件に基づいて予め設定される条件でもよい。なお、過去の検査条件とは、同一の装置を用いて過去に検査を行った際の条件としてもよいし、異なる装置を用いて過去に検査を行った際の条件としてもよい。この場合、検査条件は、識別子を更新することによって、あるいは、識別子に関連付けられたクラウドやサーバの情報を更新することによって、適宜変更されてもよい。
【0026】
検査条件は、被検者(被検眼)と装置の位置関係を設定するための条件でもよい。この場合、検査条件は、被検者に対する装置の位置を設定するための条件としてもよい。一例として、被検者の目線の高さに合わせた装置の移動位置を設定する条件であってもよい。また、この場合、検査条件は、検眼装置が備える被検者の顔の少なくとも一部を支持するための顔支持ユニットの位置を設定するための条件としてもよい。一例として、被検者の額を当接させる額当ての位置を設定する条件であってもよい。また、一例として、被検者の顎を載置する顎台の位置(顎台の高さ)を設定する条件であってもよい。
【0027】
検査条件は、被検者(被検眼)に対する検査手段の検査条件を設定するための条件でもよい。この場合、検査条件は、検査手段が備える光学系の各部について調整可能な条件であって、検査結果(例えば、信号の取得、撮像画像の取得、等)に影響する条件であってもよい。一例としては、光源の出力(光量)、光の走査位置や走査パターン、光学系における光学部材の配置、光学系における光学部材のパラメータ、撮像素子からの信号の増幅率(ゲイン)、視度の補正量(フォーカス)、等の少なくともいずれかが挙げられる。また、この場合、検査条件は、検査手段が備える光学系により得られた検査結果を解析する際の処理に関する条件であってもよい。一例としては、輝度の補正量(ブライトネス及びコントラスト等)、撮像画像における各部の位置の補正量、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0028】
なお、光干渉断層計において、被検者毎に予め設定される個別の検査条件としては、上記の条件の他、測定光と参照光の光路長差、偏光状態、等の少なくともいずれかが含まれてもよい。
【0029】
<識別子>
本実施形態において、識別子には、上記の個別の検査条件が対応付けられてもよい。例えば、識別子に情報を格納することで、識別子に個別の検査条件を対応付ける構成としてもよい。また、例えば、識別子と、予めクラウドやサーバに保存された情報と、を関連付けておくことで、識別子に個別の検査条件を対応付ける構成としてもよい。
【0030】
識別子としては、被検者の生体情報(例えば、虹彩、指紋、等)とは異なる情報であって、画像として認識することが可能な情報を用いることができる。例えば、文字列、1次元コード(例えば、バーコード等)、2次元コード(例えば、QRコード(登録商標)、カラーコード、等)等を利用してもよい。例えば、識別子として生体情報を利用する場合、虹彩パターンや指紋パターンは多様であるため、解析処理が複雑になってしまうことがある。しかし、識別子に文字列やコードを利用する場合には、これらを解析しやすく、対応付けられた検査条件を容易に取得することができる。
【0031】
なお、本実施形態における識別子には、少なくとも個別の検査条件が対応付けられていればよく、検査条件に加えて、検査条件とは異なる情報が対応付けられていてもよい。一例として、識別子には、検査条件とともに被検者情報が対応付けられていてもよい。被検者情報としては、被検者の個人情報(例えば、氏名、性別、年齢、等の少なくともいずれか)、被検者毎に付与されるID、等が挙げられる。
【0032】
このような被検者毎の識別子は、被検者が所持できるように出力されていてもよい。例えば、被検者用の表示手段(一例として、携帯端末、タブレット端末、スマートフォン、等の少なくともいずれか)へ表示されてもよい。また、例えば、プリンタ等を用いて紙等に印刷されてもよい。
【0033】
<設定手段>
検眼装置は、設定手段(例えば、制御部107)を備える。設定手段は、検眼装置の検査条件を設定する。例えば、設定手段は、撮像光学系によって識別子が撮像された場合に、識別子に対応付けられた個別の検査条件に基づいて、検眼装置の検査条件を設定する。これによって、被検者に適した検査条件が自動的に設定され、被検眼に対する検査を効率よく行うことができる。
【0034】
本実施形態において、識別子には、前述のように、情報の格納、あるいは、クラウドやサーバに保存された情報との関連付け、等によって、個別の検査条件が対応付けられている。例えば、識別子に情報が格納されている場合、設定手段は、識別子を含む画像を解析処理することで、識別子に対応付けられた個別の検査条件を直接的に読み取ってもよい。また、例えば、識別子にクラウドやサーバに保存された情報が関連付けられている場合、設定手段は、識別子を含む画像を解析処理するとともに、解析結果に基づいて該当の情報を呼び出してもよい。例えば、有線通信(例えば、光ファイバー、有線LAN、等)及び無線通信(例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、等)の少なくともいずれかによって、該当の情報を呼び出してもよい。設定手段は、識別子に対応付けられた個別の検査条件を、このように直接的あるいは間接的に取得することで、検査条件を設定してもよい。
【0035】
設定手段は、被検者の個別の検査条件に基づいて、被検眼に対する過去の検査条件と同一の検査条件となるように、検眼装置の検査条件を設定する構成としてもよい。例えば、設定手段は、被検者の個別の検査条件に基づいて、被検者(あるいは、被検眼)と装置の位置関係が、過去と同一の位置関係となるように設定してもよい。一例として、被検者(被検眼)と、額当てや顎台と、の位置関係が、過去と同一の位置関係となるように設定してもよい。被検者(あるいは、被検眼)に対する検査手段の検査条件を、過去と同一の検査条件となるように設定してもよい。一例として、被検眼を撮像するための撮像条件、被検眼を測定するための測定条件、検査結果を解析処理するための処理条件、等の少なくともいずれかの条件を、過去と同一の検査条件となるように設定してもよい。これによって、同一の被検眼に対する検査の度に、装置を同じ条件に設定する手間が省け、検査を効率的に行うことができる。
【0036】
<出力手段>
検眼装置は、出力手段(例えば、制御部107)を備える。出力手段は、検眼装置とは異なる別の検眼装置の検査条件を、被検者毎に予め設定される個別の検査条件に設定可能とする識別子を出力する。
【0037】
検眼装置とは異なる別の検眼装置は、識別子を読み取るための読取手段を備えていてもよい。この場合、検眼装置の出力手段は、別の検眼装置によって読み取られる識別子であって、別の検眼装置に読み取られることで、別の検眼装置の検査条件を個別の検査条件に設定可能とする識別子を出力してもよい。例えば、検眼装置とは異なる別の検眼装置は、読取手段として、被検眼を撮像するための撮像光学系を兼用する構成であってもよい。この場合、検眼装置の出力手段は、別の検眼装置における撮像光学系によって読み取られる識別子であって、撮像光学系に読み取られることで、別の検眼装置の検査条件を個別の検査条件に設定可能とする識別子を出力してもよい。また、例えば、検眼装置とは異なる別の検眼装置は、読取手段として、別途、スキャナやリーダーを備える構成であってもよい。この場合、検眼装置の出力手段は、別の検眼装置におけるスキャナやリーダーによって読み取られる識別子であって、スキャナやリーダーに読み取られることで、別の検眼装置の検査条件を個別の検査条件に設定可能とする識別子を出力してもよい。例えば、このような構成であれば、被検眼に対して複数の検眼装置を用いた検査を実行する場合等、次の検査装置にて検査条件を設定する必要がなくなり、検査を効率よく進めることができる。
【0038】
例えば、出力手段は、表示手段への表示、プリンタを用いた印刷、等の少なくともいずれかによって、識別子を出力してもよい。この場合、出力手段によって出力された識別子には、検査条件等の情報が格納されてもよい。検眼装置とは異なる別の検眼装置は、このような識別子を読み取り、識別子に格納された個別の検査条件に基づいて、検査条件を設定してもよい。
【0039】
なお、出力手段は、表示手段への表示やプリンタを用いた印刷等による出力のみに限定されない。例えば、出力手段は、識別子を表示や印刷により出力するとともに、クラウドやサーバ等に検査条件を出力し、識別子と検査条件とを関連付けて記憶させてもよい。この場合、検眼装置とは異なる別の検眼装置は、このような識別子を読み取り、識別子に関連付けられた個別の検査条件をクラウド(サーバ)から呼び出すことで取得し、個別の検査条件に基づいて検査条件を設定してもよい。
【0040】
なお、本開示は、本実施形態に記載した検眼装置に限定されない。例えば、上記の実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種の記憶媒体等を介して検眼装置に供給し、検眼装置の制御部(例えば、CPU)が、プログラムを読み出して実行することも可能である。
【0041】
<実施例>
典型的な実施形態の1つである実施例について説明する。
【0042】
検眼装置は、被検者の被検眼を検査するために用いる。本実施例では、検眼装置として、眼科撮影装置を例示する。眼科撮影装置は、いわゆる眼科用光干渉断層計の構成を備えたOCT装置であってもよい。以下では、検眼装置をOCT装置と称して説明する。
【0043】
<OCT装置外観>
図1は、OCT装置100の外観図である。OCT装置100は、移動台102、測定部103、顔支持ユニット104、モニタ106、制御部107、等を備える。
【0044】
顔支持ユニット104は、被検者Pの顔を支持する。顔支持ユニット104は、額当て104aと、顎台104bと、を有する。額当て104aには、被検者Pの額が当接される。顎台104bには、被検者Pの顎が載置される。顎台104bには、検出器105が設けられる。
【0045】
検出器105は、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたか否かを検出する。検出器105は、光センサ、圧力センサ、荷重センサ、超音波センサ、等の少なくともいずれかにより構成されてもよい。例えば、本実施例では、検出器105として荷重センサが用いられ、荷重センサによって、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたことによる荷重が検出される。検出器105の検出結果は、制御部107に出力される。
【0046】
モニタ106は、OCT光学系によりOCTデータを得るための設定画面(例えば、測定光の走査位置、走査パターン、深さ方向の領域、等を設定する設定画面)、OCTデータから生成される断層画像、顔撮像光学系10により撮像される顔画像、前眼部撮像光学系20により撮像される前眼部画像、前眼部撮像光学系20により撮像される後述の識別子、等を表示する。
【0047】
モニタ106はタッチパネルであってもよく、モニタ106が操作部を兼ねてもよい。例えば、モニタ106を操作することで、移動台102に設けられたX移動機構とZ移動機構が駆動し、移動台102の上部に配置された測定部103が、左右方向(X方向)及び前後方向(Z方向)に移動されてもよい。また、モニタ106を操作することで、測定部103に設けられたY移動機構が駆動し、測定部103が、上下方向(Y方向)に移動されてもよい。
【0048】
<測定部>
図2は、測定部103における内部構成の概略図である。測定部103は、顔撮像光学系10(図1参照)、前眼部撮像光学系20、アライメント指標投影光学系30、OCT光学系40、観察光学系50、固視誘導光学系60、等を備える。
【0049】
<顔撮像光学系>
顔撮像光学系10は、被検眼E(左眼及び右眼)の少なくとも一部を含む顔を撮像する。顔撮像光学系10は、図示なき撮像素子を備えてもよい。撮像素子は、顔支持ユニット104に支持された被検者の顔を撮像する。
【0050】
<前眼部撮像光学系>
前眼部撮像光学系20は、被検眼Eの前眼部を撮像する。前眼部撮像光学系20は、撮像素子21を備えてもよい。撮像素子21は、赤外域の感度をもつ。また、撮像素子21は、アライメント指標検出用の撮像素子を兼ね、赤外光源35により照明された前眼部とアライメント指標を撮像する。
【0051】
<アライメント指標投影光学系>
アライメント指標投影光学系30は、被検眼Eの角膜に向けてアライメント指標を投影する。アライメント指標投影光学系30は、第1投影光学系30a及び第2投影光学系30bを備える。第1投影光学系30aは、被検眼Eの角膜に向けて無限遠のアライメント指標を投影する。第1投影光学系30aは、赤外光源31とコリメータレンズ32を備えてもよい。赤外光源31は、光軸を中心としてリング状に配置され、近赤外光を発する。コリメータレンズ32は、赤外光源31から発せられた光を平行光束にする。第2投影光学系30bは、被検眼Eの角膜に向けて有限遠のアライメント指標を投影する。第2投影光学系30bは、赤外光源35を備えてもよい。赤外光源35は、光軸を中心として赤外光源31とは異なる位置でリング状に配置され、近赤外光を発する。なお、第2投影光学系30bによる光は、アライメント光として用いられるとともに、前眼部撮像光学系20による前眼部撮像光としても用いられる。
【0052】
<OCT光学系>
OCT光学系40は、被検眼Eに照射された測定光と参照光による干渉信号を検出する。OCT光学系40は、光源41、カップラー(光分割器)42、走査部(例えば、光スキャナ)43、測定光学系44、検出器45、参照光学系46、等を備える。光源41、測定光学系44、検出器45、及び参照光学系46は、光ファイバでカップラー42に繋がれている。
【0053】
OCT光学系40は、光源41から出射した光を、カップラー42によって測定光と参照光に分割する。測定光は、光ファイバを通過した後に空気中へ出射され、走査部43及び測定光学系44を介して、眼底に導かれる。参照光は、光ファイバを通過して、参照光学系46に導かれる。眼底にて反射された測定光と、参照光学系46が備える図示なき反射光学系(例えば、参照ミラー)に反射された参照光と、は同様の経路を経て光ファイバに戻される。OCT光学系40は、測定光と参照光の合成による干渉信号(干渉光)を、検出器45に受光させる。検出器45が検出した干渉信号は、制御部107に出力される。
【0054】
<観察光学系>
観察光学系50は、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:SLO)の構成をもち、被検眼Eの眼底を撮影して、そのSLO正面画像を取得する。観察光学系200は、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、観察光学系200は、赤外光を用いて被検眼を撮影する赤外撮影光学系であってもよい。
【0055】
<固視誘導光学系>
固視誘導光学系60は、被検眼Eの視線方向を誘導する。固視誘導光学系60は、被検眼Eに呈示する固視灯を有し、固視灯の呈示位置を二次元的に変更させてもよい。これによって、被検眼Eの視線が複数の方向に誘導され、結果的に撮影部位が変更される。
【0056】
<制御部>
制御部107は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。CPUは、OCT装置100の制御を司る。RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。ROMには、OCT装置100の動作を制御するためのプログラム等が記憶される。制御部107には、移動機構(X移動機構、Y移動機構、Z移動機構)の駆動部、検出器105、モニタ106、各光学系が備える光源や撮像素子、記憶部(メモリ)108、等が電気的に接続される。
【0057】
記憶部108は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部108は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ、等でもよい。記憶部108は、OCTデータを得るための設定に係る情報、OCTデータ、等を記憶してもよい。
【0058】
<制御動作>
上記の構成を備えるOCT装置100の制御動作を説明する。例えば、OCT装置100を用いた被検眼Eの検査(撮影)では、被検眼Eの経過を観察する場合等、同一の被検眼に対する検査を、過去の検査と同一の条件にて実行することも多い。本実施例では、一例としてこのような状況を挙げ、後述の識別子を利用して検査条件を設定し、被検眼Eに対する検査を行う場合を説明する。
【0059】
例えば、検者は、対象の検眼装置(ここでは、OCT装置100)を用いた検査を行うように指示する際、被検者にカードを渡す。一例として、検者は、被検眼Eに対する過去の検査時の検査条件を電子カルテ等から読み出し、過去の検査条件を情報化することで作成される後述の識別子を印刷したカードを発行して、これを被検者に渡す。被検者は、検者の指示に従い、カードをもってOCT装置100へと向かう。
【0060】
図3は、検者が被検者に渡すカード70の一例である。検者が被検者に渡すカード70には、識別子75が印刷されている。識別子75には、被検者毎に予め設定された、被検眼Eに対する検査を行うための検査条件が対応付けられている。例えば、顎台104bの高さ、測定部103の移動位置(言い換えると、測定部103に設けられたX移動機構、Y移動機構、及びZ移動機構の移動量)、OCTデータ取得のための撮影条件(例えば、測定光の走査位置、測定光の走査パターン、等)、等の少なくともいずれかが対応付けられていてもよい。
【0061】
本実施例では、検者が被検者に渡すカード70に、識別子75としてQRコード(登録商標)が印刷され、QRコードに、顎台104bの高さ、測定部103の移動位置、及び撮影条件が対応付けられている場合を例に挙げる。なお、識別子75には、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の情報を基にして、これらの検査条件が予め対応付けられていてもよい。
【0062】
<検査条件の取得>
図4A及び図4Bは、モニタ106の画面を示す図である。図4Aは、被検者を誘導するための誘導画面80の一例である。図4Bは、後述の撮像画像を含む撮像画面90の一例である。制御部107は、モニタ106に、被検者を誘導するための誘導画面80を表示する。誘導画面80には、被検者への指示内容を示すためのメッセージ81、被検者の操作を補助するための操作図82、撮影開始スイッチ83、等が表示されてもよい。なお、本実施例では、被検者への指示内容をメッセージ81として表示する場合を例示するが、検者への指示内容を図示なきスピーカから音声ガイドとして発するようにしてもよい。また、本実施例では、操作図82として、後述するカメラの位置を示す図を表示する場合を例示するが、被検者の一連の操作をアニメーション等で表示するようにしてもよい。
【0063】
被検者は、誘導画面80を確認すると、指示に従って撮影開始ボタン83を押す。制御部107は、スイッチから入力された開始信号に応じて前眼部撮像光学系20を制御し、撮像素子21による撮像を開始する。例えば、制御部107は、開始信号に応じて、前眼部撮像光学系20のフォーカスが所定の位置(一例として、顎台104bの位置)となるように、測定部103をZ方向に移動させる。また、制御部107は、撮像素子21から出力される信号を逐次処理して撮像画像(ライブ画像)を生成し、モニタ106に撮像画面90を表示する。撮像画面90には、被検者への指示内容を示すためのメッセージ91、生成された撮像画像92、識別子75の位置を合わせるためのガイドマーク93、等が表示されてもよい。
【0064】
なお、上記では、制御部107が、撮影開始スイッチ83から入力された開始信号に応じて、前眼部撮像光学系20を制御する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、制御部107は、誘導画面80を表示してから一定時間が経過した後に、前眼部撮像光学系20を制御する構成としてもよい。すなわち、誘導画面80を表示してから一定時間が経過すると、自動的に撮像素子21による撮像が開始される構成としてもよい。
【0065】
図5は、被検者の操作を示す図である。被検者は、カード70を前眼部撮像光学系20(撮像素子21)の前に位置させる。例えば、被検者は、カード70を顎台104b付近に位置させる。被検者は、撮像画面90を確認しながら、前眼部撮像光学系20のフォーカスがカード70に合う状態を探し、ガイドマーク93内に識別子75がおさまるように、識別子75を写す。
【0066】
制御部107は、ライブ画像を解析処理して、ガイドマーク93内に識別子75が入ったことを検出し、自動的にライブ画像をキャプチャする。例えば、制御部107は、ライブ画像からQRコードの切り出しシンボルを検索してQRコードの位置を認識し、QRコードの位置座標(ピクセル座標)と、ガイドマーク93に対応する位置座標(ピクセル座標)と、を比較することで、ガイドマーク93内にQRコードが入ったことを検出し、自動的にライブ画像をキャプチャしてもよい。
【0067】
また、制御部107は、キャプチャしたライブ画像を解析処理して識別子75を読み取り、識別子75に対応付けられた前述の検査条件を取得する。例えば、制御部107は、キャプチャしたライブ画像において、QRコードの切り出しシンボルで囲まれた領域をスキャンし、読み取ったコードを解読することで、QRコードに対応付けられた検査条件を取得してもよい。
【0068】
<検査条件に基づく設定>
制御部107は、識別子75から取得した検査条件に基づいて、顔支持ユニット104に設けられた図示なきY移動機構を駆動し、顎台104bを上下方向に移動させて、その高さを調節する。例えば、制御部107は、測定部103の測定光軸から顎台104bまでの高さH(図1参照)が、被検者毎に設定された所定の高さとなるように、顎台104bを上下方向に移動させる。これによって、顎台104bは、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の顎台104bの高さと同一の高さに調節される。
【0069】
また、制御部107は、識別子75から取得した検査条件に基づいて、測定部103に設けられた図示なきX移動機構、Y移動機構、及びZ移動機構を駆動し、測定部103を左右方向、上下方向、及びZ方向に移動させて、その位置を調節する。例えば、制御部107は、測定部103と顎台104bとの間の距離D(図1参照)が、被検者毎に設定された所定の距離となるように、測定部103を移動させる。例えば、所定の距離は、被検眼Eに対して後述のアライメントを行い、測定部103の測定光軸に対して被検眼Eの角膜頂点位置を一致させたときの距離であってもよい。これによって、測定部103は、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の測定部103の位置と同一の位置に調節される。
【0070】
また、制御部107は、識別子75から取得した検査条件に基づいて、被検眼Eを撮影してOCTデータを取得するための撮影条件を設定する。例えば、制御部107は、被検眼Eの眼底に対する測定光の走査位置を、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の走査位置と同一の位置に設定する。また、例えば、制御部107は、被検眼Eの眼底に対する測定光の走査パターン(例えば、ラインスキャン、ラスタースキャン、サークルスキャン、ラジアルスキャン、等)を、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の走査パターンと同一のパターンに設定する。つまり、制御部107は、同一の被検眼Eを、過去に実行した撮影条件と同一の撮影条件で撮影するための条件(いわゆるフォローアップ撮影のための条件)を設定する。
【0071】
<被検眼に対する検査(撮影)の開始>
制御部107は、検査条件を設定すると、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「顎を顎台の上に置いてください。」等)を発し、被検者Pを誘導する。被検者Pは指示に従い、OCT装置100の前へ座り、顎を顎台104bに載置する。顎台104bに設けられた検出器105は、外部からの荷重を検知した際に、この荷重を電気信号に変換して、制御部107に出力する。制御部107は、検出器105から電気信号が入力されたときに、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたと検出する。
【0072】
なお、制御部107は、検出器105による電気信号が所定の時間以上で連続的に入力されたときに、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたと検出してもよい。例えば、所定の時間は、被検者Pが顎を顎台104bに置きなおした場合等と区別できる時間であればよい。一例として、5秒間以上であってもよい。これによって、制御部107は、被検者Pの顎が顎台104bに載置され、被検眼Eの検査を開始できる状態になったと検出することができる。
【0073】
制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「視標を観察してください。」等)を発し、被検者Pに固視標を観察させる。被検者Pは指示に従い、測定部103が備える図示なきモニタに表示された固視標を注視する。また、OCT装置100の制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「検査を開始します。開始スイッチを押してください。」等)を発し、被検者Pに検査を開始するための図示なきスイッチを操作させる。被検者Pは指示に従い、スイッチを操作する。
【0074】
制御部107は、スイッチから入力された開始信号に応じて前眼部撮像光学系20を制御し、撮像素子21による撮像を開始する。また、制御部107は、スイッチから入力された開始信号に応じてアライメント指標投影光学系30を制御し、赤外光源31及び赤外光源35を点灯させ、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影する。制御部107は、撮像素子21から出力される信号に基づく撮像画像(前眼部画像)を生成し、アライメント指標像を利用して、測定部103の測定光軸に対する被検眼Eの角膜頂点位置(略角膜頂点位置)の位置ずれを検出し、自動アライメントを行う。なお、本実施例では、識別子75から取得した検査条件に基づいて予め測定部103が移動されているので、測定部103と被検眼Eの位置ずれが少なく、測定部103の移動位置を微調整する程度に抑えることができる。
【0075】
制御部107は、OCT装置100と被検眼Eのアライメントが完了すると、検者が所望する被検眼Eの眼底部位を高感度・高解像度で観察するための最適化制御(例えば、光路長の調整、フォーカスの調整、偏光状態の調整、等)を実行し、識別子75を利用して設定した検査条件にてOCTデータの取得を実行する。
【0076】
以上説明したように、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼を撮像するための撮像光学系と、装置の検査条件を設定する設定手段と、を備えており、撮像光学系によって被検者毎に予め設定される個別検査条件が対応付けされた識別子が撮像された場合に、個別検査条件に基づく装置の検査条件が設定される。これによって、被検者に適した検査条件が自動的に設定されるため、従来のような被検者毎に検査条件を設定する手間がなく、被検眼に対する検査を効率よく行うことができる。また、撮像光学系が、被検眼の撮像と、識別子の撮像と、を兼用するため、装置に新たな部材を設ける必要がなく、装置を容易な構成とすることができる。例えば、本実施例では、前眼部撮像光学系20が、被検眼を撮像してアライメントを行うための光学系と、識別子75を撮像するための光学系と、を兼ねることで、装置を容易な構成とすることができる。
【0077】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼の前眼部を撮像する前眼部撮像光学系を利用して、識別子を撮像する。すなわち、前眼部撮像光学系が、識別子を撮像するための光学系を兼用する。これによって、識別子を容易な構成で撮像できる。
【0078】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、識別子として2次元コードを撮像する。これによって、例えば、1次元コードを用いる場合に比べて検査条件に関わる情報を多く対応付けられるため、事前に設定可能な項目が増え、被検眼に対する検査がより効率的になる。
【0079】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、識別子に対応付けられた個別検査条件に基づいて、被検眼に対する過去の検査条件と同一の検査条件となるように、検眼装置の検査条件を設定する。これによって、同一の被検眼に対する検査の度に装置を同じ条件に設定する手間が省け、検査を効率的に行うことができる。
【0080】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検者の顔の少なくとも一部を支持するための顔支持ユニットを備え、識別子に対応付けられた個別検査条件に基づいて、顔支持ユニットの位置を設定する。例えば、被検者の額を当接させる額当て、被検者の顎を載置する顎台、等の位置が設定される。これによって、被検眼に対する検査を開始する際に、被検眼と装置の位置関係が一定に保たれるので、被検者が顔を額当てや顎台に置きなおして再調節する必要がなく、検査を効率よく進めることができる。
【0081】
<変容例>
なお、本実施例では、被検眼Eの前眼部を撮像する前眼部撮像光学系20を用いて、被検者毎に予め設定される検査条件が対応付けられた識別子75を撮像する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。本実施例では、被検眼Eの顔を撮像する顔撮像光学系10を用いて、被検者毎に予め設定される検査条件が対応付けられた識別子75を撮像する構成とすることも可能である。例えば、このような構成であれば、制御部107が顔撮像光学系10を制御して識別子75を撮像した場合に、識別子75に対応付けされた検査条件に基づく設定がなされるようにしてもよい。
【0082】
なお、本実施例では、前眼部撮像光学系20により識別子75を撮像する際、前眼部撮像光学系20のフォーカスが所定の位置(顎台104bの位置)にくるように、予め測定部103をZ方向に移動させておく構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、前眼部撮像光学系20により識別子75を撮像する際、被検者Pが提示した識別子75に対して、測定部103をZ方向へ移動させることで、自動的にフォーカスを調整する構成としてもよい。
【0083】
なお、本実施例では、前眼部撮像光学系20が赤外域の感度をもつ撮像素子21を備えることで、識別子75がモノクロームで撮像される構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、前眼部撮像光学系20は、可視域に感度をもつ撮像素子を備え、識別子75をカラーで撮像可能としてもよい。この場合には、識別子75として、色の配列で情報を表現することができるカラーコードを利用し、識別子75により多くの情報を対応付けてもよい。
【0084】
なお、本実施例では、識別子75に、被検眼Eに対する各々の検査条件を対応付けておく構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、識別子75に、被検眼Eに対する所定の検査条件を対応付けておく構成としてもよい。一例として、識別子75に顎台104bの高さを対応付けておく構成としてもよい。この場合、制御部107は、顎台104bを上下方向に移動させてもよい。また、この場合、制御部107は、顎台104bを上下方向に移動させるとともに、顎台104bの移動量に基づいて測定部103の移動位置を調整してもよい。つまり、識別子75に対応付けられた所定の検査条件に基づいて、顎台104bを直接的に制御するとともに、顎台104bの制御に連動させて測定部103を間接的に制御してもよい。
【0085】
なお、本実施例では、識別子75に、被検眼Eが過去にOCT装置100を用いて検査を行った際の検査条件を対応付けておく構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、識別子75に、被検眼EがOCT装置100とは異なる装置を用いて検査を行った際の検査条件を対応付けておく構成としてもよい。一例として、OCT装置100とは異なる装置を用いて検査を行った際の顎台の位置等を対応付けておいてもよい。これによって、被検眼Eに対してOCT装置100を初めて使用する場合等であっても、検査条件を設定する手間が減り、検査を効率的に行うことができる。
【0086】
なお、本実施例では、識別子75に、OCT装置100における測定光の走査に係る撮影条件を対応付けておく構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、識別子75に、測定光の走査とは異なる撮影条件(例えば、光路長差、フォーカス、偏光状態、等の少なくともいずれか)を対応付けておく構成としてもよい。このような場合には、被検眼Eの検査における前述の最適化制御を省略でき、検査をより効率的に進めることができる。もちろん、識別子75には、測定光の走査に係る撮影条件と、測定光の走査とは異なる撮影条件と、をどちらも対応付けてもよい。
【0087】
なお、本実施例におけるOCT装置100は、OCT装置100にて被検眼を検査した検査条件を対応付けた新たな識別子であって、OCT装置100とは別の装置によって読み取り可能な識別子を出力してもよい。これによって、OCT装置100とは別の装置の検査条件が、新たな識別子に対応付けられた検査条件に基づいて設定され、別の装置の検査条件とOCT装置100の検査条件とが同一に設定されてもよい。
【0088】
一例として、OCT装置100の制御部107は、新たな識別子を図示なきプリンタ等で紙に印刷させてもよい。また、一例として、OCT装置100の制御部107は、新たな識別子をモニタ106に表示させてもよい。被検者Pは、新たな識別子が印刷された紙(あるいは、端末装置等で撮像した識別子の画像)を取得して、別の装置へと向かい、別の装置にて識別子を読み取らせる。別の装置の制御部は、識別子に対応付けられた検査条件に基づいて、OCT装置100とは別の装置の検査条件を、OCT装置100を用いた際と同一の検査条件に設定してもよい。一例として、OCT装置100とは異なる装置の顎台の高さが、OCT装置100を用いた際の顎台の高さと同一の高さに設定されてもよい。これによって、OCT装置100の次に用いる装置で検査条件を設定する必要がなく、被検眼に対する検査を効率よく進めることができる。
【0089】
なお、上記では、OCT装置100にて被検眼を検査した検査条件が新たな識別子に対応付けられる場合を例示したがこれに限定されない。例えば、OCT装置100にて被検眼を検査した検査条件と、その検査結果と、が新たな識別子に対応付けられてもよい。一例として、この場合には、検査条件を格納した識別子として出力するとともに、検査結果をクラウド(サーバ)に出力し、電子カルテ等の記録を更新してもよい。
【0090】
なお、本実施例におけるOCT装置100は、被検眼Eに対する検査を実行していないときに、その動作の少なくとも一部が制限される構成としてもよい。一例として、OCT装置100は、被検眼Eに対する検査を実行せずに動作を待機させる待機モード時に、被検眼Eと装置のアライメントに係る動作、被検眼Eの撮影に係る動作、等の実行が制限されてもよい。この場合には、制御部107が前眼部撮像光学系20を制御して識別子75を撮像し、識別子75から検査条件を読み取った際に、装置の動作の制限が解除され、被検眼Eに対する検査を開始できる構成としてもよい。
【0091】
なお、本実施例におけるOCT装置100は、前眼部撮像光学系20を用いた識別子75の撮像に加えて、被検者を認証するための認証情報を入力する構成としてもよい。例えば、認証情報は、被検者毎に付与されるID、暗証番号、パスワード、等であってもよい。もちろん、認証情報は、画像として認識することが可能な識別子として、前眼部撮像光学系20を用いて撮像するようにしてもよい。これらのような場合、制御部107は、被検者毎の検査条件を対応付けた識別子75と、被検者毎に与えられた認証情報と、が一致するか否かを判定し、一致した際に、識別子75に対応付けされた検査条件を設定して、被検眼Eに対する検査を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 顔撮像光学系
20 前眼部撮像光学系
40 OCT光学系
100 OCT装置
107 制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5