(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240925BHJP
H02K 5/04 20060101ALI20240925BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20240925BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240925BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/04
H02K5/22
H02K9/19 Z
B60L9/18 J
(21)【出願番号】P 2021513695
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2020015926
(87)【国際公開番号】W WO2020209324
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019075237
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110648
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105492(JP,A)
【文献】国際公開第2009/125625(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/030617(WO,A1)
【文献】特開2018-050417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/04
H02K 5/22
H02K 9/19
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、
前記モータに電力を供給するインバータと、
前記モータを収容するモータ収容空間および前記インバータを収容するインバータ収容空間が設けられるハウジングと、
前記モータと前記インバータとを電気的に繋ぐ第1のバスバーと、
前記第1のバスバーと前記インバータとを電気的に繋ぐ複数の第2のバスバーと、を備え、
前記ハウジングは、
前記モータ収容空間と前記インバータ収容空間とを区画し、かつ、前記モータの外周面に沿って延びる面である第1内側面と、
前記モータ収容空間と前記インバータ収容空間とを区画し、前記第1内側面と交差するとともに、軸方向に貫通する貫通孔が設けられる隔壁部と、
を有し、
前記第1のバスバーは、前記モータ収容空間において前記ステータの軸方向一方側の端部で前記ステータから延び出るコイル線に接続され、且つ前記貫通孔を通過して前記インバータ収容空間へ延び
、
複数の前記第2のバスバーは、
前記インバータに接続されるインバータ側端子接続部と、
前記第1のバスバーに接続されるモータ側端子接続部と、
前記インバータ側端子接続部が設けられ、上下方向に延びる第2のバスバー本体部と、
を有し
複数の前記第2のバスバーの少なくとも2つは、
前記第2のバスバー本体部の下端部から、前記モータ側端子接続部まで軸方向に延びる延長部と、
を有し、
複数の前記第2のバスバー本体部および複数の前記延長部は、前記ハウジングにおいて前記インバータ収容空間に面する前記第1内側面に沿って延び、
複数の前記インバータ側端子接続部は、軸方向に並んで配置され、
複数の前記第2のバスバー本体部は、軸方向に沿って並んで配置され、
複数の前記延長部は、上下方向に沿って並んで配置される、モータユニット。
【請求項2】
前記第1のバスバーを保持する第1のバスバーホルダと、シール部材と、を備え、
前記モータ収容空間には、前記モータを冷却するオイルが貯留され、
前記第1のバスバーホルダは、前記貫通孔の開口を塞ぎ、
前記シール部材は、前記貫通孔の開口周りにおいて前記隔壁部と前記第1のバスバーホルダとの間をシールする、
請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記モータを収納するハウジング本体と、
前記インバータが固定されるインバータハウジングと、を有し、
前記ハウジング本体と前記インバータハウジングとは対向して配置され、
前記インバータ収容空間は、前記ハウジング本体と前記インバータハウジングとに囲まれ、
前記隔壁部は、前記ハウジング本体の一部である、
請求項1又は2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記第1内側面は、前記ハウジング本体において前記インバータ収容空間に面する、
請求項3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記インバータハウジングには、前記インバータと前記第2のバスバーとを電気的に接続する接続部の直上に窓部が設けられる、
請求項4に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第2のバスバーを保持する第2のバスバーホルダを有し、
前記第2のバスバーホルダは、前記第1内側
面に隙間を設けた状態で固定される、
請求項
1~5の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記第2のバスバーホルダは、前記モータ側端子接続部同士の間に位置する仕切り壁部を有する、
請求項
6に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記インバータ側端子接続部同士は、前記モータ側端子接続部同士より離間して配置される、
請求項
1~7の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項9】
前記インバータは、スイッチング素子と、コンデンサと、パワー基板とを有し、
前記スイッチング素子は、一方向からみて矩形状であり、軸方向を長手方向として配置される、
請求項1~8の何れか一項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。
本願は、2019年4月11日に日本に出願された特願2019-075237号および2019年6月13日に日本に出願された特願2019-110648号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の駆動装置として、インバータを備えたモータユニットが開発されている。特許文献1には、モータと、当該モータの直上に配置されたインバータと、を有する駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のモータユニットにおいて、インバータがモータの径方向に配置される場合、モータから径方向の外側に延びる配線(例えばバスバー)によってモータとインバータとが接続される。この配線は、ハウジングの内部に位置するために、配策作業が煩雑化するという問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、モータとインバータとを繋ぐ配線の配策を容易とすることができるモータユニットの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータユニットの一つの態様は、モータ軸を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、前記モータに電力を供給するインバータと、前記モータを収容するモータ収容空間および前記インバータを収容するインバータ収容空間が設けられるハウジングと、前記モータと前記インバータとを電気的に繋ぐ第1のバスバーと、を備える。前記ハウジングは、前記モータ収容空間と前記インバータ収容空間とを区画し、軸方向に貫通する貫通孔が設けられる隔壁部を有する。前記第1のバスバーは、前記モータ収容空間において前記ステータの軸方向一方側の端部で前記ステータから延び出るコイル線に接続され、且つ前記貫通孔を通過して前記インバータ収容空間へ延びる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、モータとインバータとを繋ぐ配線の配策を容易とすることができるモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータユニットを模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のモータユニットの平面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のモータユニットの軸方向他方側から見た側面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿うモータユニットの断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態のハウジングの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、一実施形態のハウジングの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のモータユニットの軸方向一方側から見た側面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態のモータユニットの分解斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態のモータユニットにおいて、インバータ収容空間内に配置された第2のバスバーユニットの正面図である。
【
図11】
図11は、変形例1の第2のバスバーユニットの斜視図である。
【
図12】
図12は、変形例2のモータユニットの断面模式図である。
【
図13】
図13は、変形例2のモータユニットの断面模式図である。
【
図14】
図14は、変形例3のハウジングおよびバスバーユニットの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータユニットについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両右方であり、-Y方向が車両左方である。
【0011】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
以下に説明する実施形態において、モータ軸J2は車両と平行に延びる。したがって、以下の説明において、軸方向は、車両の幅方向と平行な方向である。本明細書において、軸方向一方側は-Y側であり、軸方向他方側は+Y側である。
【0013】
また、本明細書において、所定の方向(又は平面)に「沿って延びる」とは、厳密に所定の方向に延びる場合に加えて、厳密な方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
以下、本発明の例示的な一実施形態に係るモータユニット1について説明する。本実施形態のモータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。すなわち、モータユニット1は駆動装置である。
【0015】
図1は、モータユニット1を模式的に示す概念図である。
図2は、モータユニット1の斜視図である。
図3は、モータユニット1の平面図である。
【0016】
図1に示すように、モータユニット1は、モータ(メインモータ)2と、減速装置4および差動装置5を含むギヤ部3と、ハウジング6と、ハウジング6内に収容されるオイルOと、インバータ8と、を備える。オイルOはモータ内部を循環する媒体である。
【0017】
ハウジング6の内部には、モータ2、ギヤ部3、及びインバータ8を収容する収容空間80が設けられる。ハウジング6は、収容空間80においてモータ2、ギヤ部3、及びインバータ8を保持する。収容空間80は、モータ2を収容するモータ収容空間81と、ギヤ部3を収容するギヤ収容空間82と、インバータ8の一部および接続線を収容するインバータ収容空間83とに区画される。すなわち、ハウジング6には、モータ収容空間81、ギヤ収容空間82およびインバータ収容空間83が設けられる。
【0018】
収容空間80内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。本実施形態において、モータ収容空間81の底部81aは、ギヤ収容空間82の底部82aより上側に位置する。また、モータ収容空間81とギヤ収容空間82とを区画する第1隔壁60baには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ収容空間81とギヤ収容空間82とを連通させる。隔壁開口68は、モータ収容空間81内の下部領域に溜ったオイルOをギヤ収容空間82に移動させる。したがって、本実施形態においてオイル溜りPは、ギヤ収容空間82の下部領域に位置する。
【0019】
<モータ>
モータ2は、ハウジング6のモータ収容空間81に収容される。モータ2は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、ロータ20を回転可能に支持する第1のベアリング26および第2のベアリング27と、を備える。本実施形態のモータ2は、インナーロータ型モータである。
【0020】
ロータ20は、図示略のバッテリからインバータ8を介してステータ30に交流電流が供給されることで回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、複数のロータマグネット(図示略)と、を有する。ロータ20(すなわち、シャフト21、ロータコア24およびロータマグネット)は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸J2を中心として回転する。ロータ20のトルクは、ギヤ部3に伝達される。
【0021】
シャフト21は、モータ軸J2を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J2を中心として回転する。シャフト21の内部には、軸方向に延びる空洞である中空部22が設けられる。シャフト21は、中空部22を有する中空シャフトである。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを連通させる。
【0022】
シャフト21は、ハウジング6のモータ収容空間81とギヤ収容空間82とを跨って延びる。シャフト21の一方の端部は、モータ収容空間81からギヤ収容空間82側に突出する。ギヤ収容空間82側に突出するシャフト21の端部には、ギヤ部3の第1のギヤ41が固定されている。
【0023】
シャフト21は、一対のベアリング(第1のベアリング26および第2のベアリング27)により回転可能に支持される。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、モータ収容空間81に位置する。また、第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ロータコア24を挟んでシャフト21の軸方向両側にそれぞれ位置する。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ハウジング6に保持される。より具体的には、第1のベアリング26は閉塞部61に保持され、第2のベアリング27は第1隔壁60baに保持される。
【0024】
ロータコア24は、珪素鋼板を積層して構成される。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア24には、複数のロータマグネット(図示略)が固定される。複数のロータマグネットは、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0025】
ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示略)を有する。磁極歯には、コイル線が巻かれている。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル31を構成する。すなわち、コイル31は、インシュレータを介してステータコア32に巻き付けられる。後述するように、コイル31から延び出るコイル線31bは、第1のバスバーユニット70(
図8参照)および第2のバスバーユニット77(
図9を介して)を介してインバータ8に接続される。
【0026】
コイル31は、一対のコイルエンド31aを有する。一方のコイルエンド31aは、ステータコア32の軸方向一方側に突出し、他方のコイルエンド31aは、ステータコア32の軸方向他方側に突出する。
【0027】
<ギヤ部>
ギヤ部3は、ハウジング6のギヤ収容空間82に収容される。ギヤ部3は、モータ軸J2の軸方向他方側においてシャフト21に接続される。ギヤ部3は、減速装置4と差動装置5とを有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0028】
<減速装置>
減速装置4は、モータ2のロータ20に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。
【0029】
減速装置4は、第1のギヤ(中間ドライブギヤ)41と、第2のギヤ(中間ギヤ)42と、第3のギヤ(ファイルナルドライブギヤ)43と、中間シャフト45と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ(ギヤ)51へ伝達される。
【0030】
第1のギヤ41は、モータ2のシャフト21の外周面に設けられる。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J2を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J4を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。第2のギヤ42と第3のギヤ43とは、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J4を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0031】
<差動装置>
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える機能を有する。差動装置5は、リングギヤ51と、ギヤハウジング(不図示)と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ(不図示)と、を有する。
【0032】
リングギヤ51は、モータ軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。すなわち、リングギヤ51は、他のギヤを介してモータ2に接続される。
【0033】
<各軸の配置>
図4は、軸方向他方側から見たモータユニット1の側面図である。なお、
図4において、ハウジング6の一部(ギヤハウジング62)は省略されている。
【0034】
モータ軸J2、中間軸J4および差動軸J5は、水平方向に沿って互いに平行に延びる。モータ軸J2に対し中間軸J4および差動軸J5は、下側に位置する。
【0035】
モータ軸J2の軸方向から見て、モータ軸J2と中間軸J4とを仮想的に結ぶ線分を第1の線分L1とし、中間軸J4と差動軸J5とを仮想的に結ぶ線分を第2の線分L2とし、モータ軸J2と差動軸J5とを仮想的に結ぶ線分を第3の線分L3とする。
【0036】
本実施形態によれば、第2の線分L2は、略水平方向に沿って延びる。すなわち、中間軸J4と差動軸J5は、略水平方向に並んでいる。したがって減速装置4と差動装置5とを水平方向に沿って並べることができ、モータユニット1の上下方向の寸法を小さくすることができる。
【0037】
<インバータ>
インバータ8は、モータ2と電気的に接続される。インバータ8は、モータ2に供給される電流を制御する。すなわち、インバータ8は、モータ2に電力を供給する。
【0038】
図5は、
図3のV-V線に沿うモータユニット1の断面図である。
インバータ8は、ハウジング6のインバータハウジング63に固定される。より具体的には、インバータ8は、インバータハウジング63の本体収容部63aの下面に固定される。
【0039】
インバータ8は、モータ2に供給される電力を制御する制御素子を有する。制御素子は、例えばIGBTである。また、本実施形態のインバータには、ポンプ96等の補機を制御する制御部が付属する。
【0040】
インバータ8は、スイッチング素子8Aと、コンデンサ8Bと、パワー基板8Cと、インバータバスバー8dと、を有する。スイッチング素子8A、コンデンサ8Bおよびパワー基板8Cは、上側から下側に向かってこの順で積層される。本実施形態のスイッチング素子8Aは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子8Aおよびコンデンサ8Bは、それぞれパワー基板8Cに接続される。インバータ8は、車両に搭載されるバッテリ(不図示)に接続され、バッテリから供給された直流電流を交流電流に変換して、モータ2に供給する。
【0041】
スイッチング素子8Aは、一方向(本実施形態において上下方向)からみて矩形状である。また、モータ2は、径方向よりも軸方向の寸法が大きくなりやすい。このため、本実施形態に示すように、スイッチング素子8Aを、軸方向を長手方向として配置することで、モータユニット1の小型化を図ることができる。また、本実施形態に示すように、スイッチング素子8Aの軸方向位置をモータ2の軸方向位置に重ねて配置することで、モータユニット1の軸方向寸法の小型化を図ることができる。また、スイッチング素子8Aは、他の部材(コンデンサ8Bおよびパワー基板8C)と比較して、上下方向から見た場合の面積が大きくなりやすい。本実施形態に示すように、上下方向から見て、他の部材をスイッチング素子8Aに重ねて配置することで、上下方向から見てインバータ8全体を小型化できる。
【0042】
インバータバスバー8dは、スイッチング素子8Aから延び出る。インバータバスバー8dは、接続部8jにおいて、後述する第2のバスバー78に接続される。接続部8jにおいて、インバータバスバー8dおよび第2のバスバー78は、水平方向を板厚方向とする。また、接続部8jにおいて、インバータバスバー8dおよび第2のバスバー78は、上下方向に貫通する固定孔を有する。接続部8jは、インバータバスバー8dおよび第2のバスバー78の固定孔に挿入されインバータバスバー8dと第2のバスバー78とを接続する固定ネジを有する。
【0043】
図4に示すように、インバータ8は、軸方向から見て、第3の線分L3の上側に配置される。すなわち、インバータ8は、軸方向から見て、モータ軸J2、中間軸J4および差動軸J5を避けて配置される。これにより、見たモータユニット1の軸方向への投影面積を小型化することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、インバータ8は、軸方向から見てリングギヤ51の上端より上側に位置する。したがって、下側からの衝撃に対して、リングギヤ51を用いてインバータ8を保護することができ、想定外の衝突等において、インバータ8に負荷が加わることを抑制できる。加えて、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1の小型化を実現できる。
【0045】
本実施形態によれば、インバータ8は、鉛直方向から見て、モータ軸J2を挟んでクーラー97と反対側に位置する。このため、モータユニット1の水平方向に沿う寸法を小さくすることが可能となり、モータユニット1の小型化を図ることができる。
【0046】
<ハウジング>
図6および
図7は、互いに異なる方向から見たハウジング6の分解斜視図である。
ハウジング6は、ハウジング本体60、閉塞部61、ギヤハウジング62、インバータハウジング63と、を備える。閉塞部61、ギヤハウジング62およびインバータハウジング63は、ハウジング本体60に固定される。
【0047】
ハウジング本体60と閉塞部61とは、軸方向に対向して配置され、互いに固定される。ハウジング本体60と閉塞部61とは、モータ2が収容されるモータ収容空間81を囲む。ハウジング本体60と閉塞部61とは、モータ収容空間81を囲むモータ収容部6aを構成する。
すなわち、ハウジング6は、モータ収容部6aを有する。
【0048】
ハウジング本体60とギヤハウジング62とは、軸方向に対向して配置され、互いに固定される。ハウジング本体60とギヤハウジング62とに囲まれた空間は、ギヤ部3が収容されるギヤ収容空間82を構成する。ハウジング本体60とギヤハウジング62とは、ギヤ収容空間82を囲むギヤ収容部6bを構成する。すなわち、ハウジング6は、ギヤ収容部6bを有する。
【0049】
ハウジング本体60とインバータハウジング63とは、上下方向に対向して配置され、互いに固定される。ハウジング本体60とインバータハウジング63とに囲まれた空間は、インバータ8が収容されるインバータ収容空間83を構成する。ハウジング本体60とインバータハウジング63とは、インバータ収容空間83を囲むインバータ収容部6cを構成する。すなわち、ハウジング6は、インバータ収容部6cを有する。
【0050】
<ハウジング本体>
ハウジング本体60は、軸方向に延びる筒状の周壁部60aと、軸方向と直交する平面に沿って延びる板状の第1側板部60bおよび第2側板部60cと、軸方向に沿って延びる板状の第1接続板部60dおよび第2接続板部60eと、を有する。
【0051】
周壁部60aは、モータ軸J2を中心とする円筒状である。周壁部60aは、モータ2を径方向外側から囲む。
【0052】
図2に示すように、周壁部60aの外周面には、モータ軸J2に沿って延びる第1のリブ60aaと、モータ軸J2の周方向に沿って延びる第2のリブ60abと、が設けられる。
【0053】
周壁部60aの外周面のうち、上側を向く領域には、モータ収容空間81の内圧を調整するブリーザ装置を設けてもよい。ブリーザ装置9は、ハウジング6の上側に設けることが好ましい。
【0054】
図6に示すように、第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側(-Y側)の端部に位置する。第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側の端部に接続される。第1側板部60bは、周壁部60aの軸方向一方側(-Y側)の縁部から車両後方側に延びる。第1側板部60bは、インバータ8の軸方向一方側に位置する。インバータ8の軸方向一方側を覆う。
【0055】
図8は、モータユニット1の軸方向一方側から見た側面図である。なお、
図8において、閉塞部61の図示を省略する。
第1側板部60bは、閉塞部61に覆われる第1隔壁60baと、第1隔壁60baの車両後方側に位置し閉塞部61から露出する第1突出部60bbと、を有する。第1隔壁60ba(すなわち、第1側板部60bの一部)は、収容空間80をモータ収容空間81とインバータ収容空間83とに区画する。
【0056】
図6に示すように、第1突出部60bbには、インバータ収容空間83の内外を連通させる第1貫通孔60beが設けられる。すなわち、第1側板部60bには、軸方向に貫通する第1貫通孔60beが設けられる。第1貫通孔60beには、インバータ8からポンプ96に電源電圧および制御信号を供給する制御ラインが通過する。
図8に示すように、第1貫通孔60beには、第1コネクタ71が取り付けられる。第1コネクタ71は、軸方向一方側から第1貫通孔60beに挿入される。すなわち、第1コネクタ71は、インバータ収容空間83の外側から第1貫通孔60beに取り付けられる。ポンプ96の制御ラインは、第1コネクタ71を介してインバータ8に接続される。
【0057】
図6に示すように、第1隔壁60baには、モータ収容空間81とインバータ収容空間83とを連通させる第2貫通孔60bfおよび第3貫通孔60bgが設けられる。すなわち、第1側板部60bには、軸方向に貫通する第2貫通孔60bfおよび第3貫通孔60bgが設けられる。
【0058】
第2貫通孔60bfには、モータ2の回転角を検知する回転角センサ50の信号ラインが通過する。
図8に示すように、第2貫通孔60bfには、センサ用コネクタ73が取り付けられる。
【0059】
図6に示すように、第3貫通孔60bgには、インバータ8とステータ30とを繋ぎ、ステータに電源電圧を供給する電源ラインが通過する。
図8に示すように、第3貫通孔60bgには、第1のバスバーユニット70が挿入される。第1のバスバーユニット70については、後段において詳細に説明する。第1隔壁60baにおいて、第3貫通孔の周囲には第1のバスバーユニット70を第1隔壁60baに固定するためのネジ穴が設けられる。第1のバスバーユニット70は、軸方向一方側から第3貫通孔60bgに挿入される。
【0060】
また、第1側板部60bには、閉塞部61を固定するモータ側フランジ部60bcが設けられる。モータ側フランジ部60bcには、閉塞部61をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。モータ側フランジ部60bcは、第1隔壁60baおよび第1突出部60bbの軸方向一方側を向く面から軸方向に突出する。
【0061】
本実施形態によれば、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71は、第1側板部60bに対して軸方向一方側から他方側に向かって挿入することでハウジング本体60に取り付けられる。したがって、本実施形態によれば、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71のハウジング本体60に対する組付けを一方向から行うことができ、組み立て工程を簡素化することができる。加えて、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71の組付け方向は、閉塞部61の組付け方向とも一致するため、モータユニット1の組み立て工程をさらに簡素化することができる。
【0062】
本実施形態において、センサ用コネクタ73と第1コネクタ71との間には軸方向一方側に突出するモータ側フランジ部60bcが設けられる。
【0063】
図7に示すように、第2側板部60cは、軸方向において第1側板部60bと対向する。第2側板部60cは、周壁部60aの軸方向他方側(+Y側)の端部に位置する。第2側板部60cは、インバータ8の軸方向他方側に位置する。第2側板部60cは、インバータ8の軸方向他方側を覆う。
【0064】
第2側板部60cは、周壁部60aの軸方向他方側の開口を覆う第2隔壁60caと、第2隔壁60caから車両後方側に延びる張出部60cbと、張出部60cbから上側に延びる第2突出部60ccと、を有する。第2隔壁60caおよび張出部60cbは、ギヤハウジング62に覆われる。一方で、第2突出部60ccは、ギヤハウジング62から露出する。張出部60cbには、車輪を支持するドライブシャフト(図示略)が通過する第1の車軸通過孔67aが設けられる。
【0065】
第2隔壁60caは、収容空間80をモータ収容空間81とギヤ収容空間82とに区画する。第2隔壁60caには、モータ収容空間81内のオイルをギヤ収容空間82内に誘導する隔壁開口68と、モータ2のシャフト21を挿通させる挿通孔69が設けられる。
【0066】
第2側板部60cには、ギヤハウジング62を固定するギヤ側フランジ部60cdが設けられる。ギヤ側フランジ部60cdには、ギヤハウジング62をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。ギヤ側フランジ部60cdは、第2隔壁60caおよび張出部60cbの周囲を囲む。ギヤ側フランジ部60cdは、張出部60cbおよび第2突出部60ccの軸方向他方側を向く面から軸方向に突出する。
【0067】
第1接続板部60dおよび第2接続板部60eは、第1側板部60bと第2側板部60cとを繋ぐ。第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、互いに直交する。第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、互いに接続されている。
【0068】
第1接続板部60dは、第1側板部60bおよび第2側板部60cの車両後方側の端縁同士を繋ぐ。第1接続板部60dは、周壁部60aの車両後方側に位置する。第1接続板部60dは、板厚方向が車両前後方向と一致する。第1接続板部60dは、インバータ8の車両後方側に位置する。第1接続板部60dは、インバータ8の車両後方側を覆う。
【0069】
第1接続板部60dには、上下方向に沿って延びる複数のリブ60daが設けられる。リブ60daは、第1接続板部60dの上端部に位置するインバータ側フランジ部60fから下側に向かって延びる。第1接続板部60dにリブ60daが設けられることで、ハウジング本体60の剛性を高めて、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。
【0070】
第2接続板部60eは、第1側板部60bおよび第2側板部60cの下端縁同士を繋ぐ。第2接続板部60eは、周壁部60aの車両後方側に位置する。第2接続板部60eは、板厚方向が上下方向と一致する。第2接続板部60eは、周壁部60aに接続される。第2接続板部60eは、周壁部60aから車両後方側に向かって延びる。
【0071】
第2接続板部60eは、車両後方側の端部において、第1接続板部60dに接続される。すなわち、第1接続板部60dは、第2接続板部60eの車両後方側の端部から上側に延びる。第2接続板部60eは、インバータ8の下側に位置する。第2接続板部60eは、インバータ8の下側を覆う。
【0072】
図示を省略するが、第2接続板部60eの下面には、軸方向に沿って並ぶ複数のリブが設けられる。複数のリブは、周壁部60aから車両後方側に向かって延びる。第2接続板部60eにリブが設けられることで、ハウジング本体60の剛性を高めて、モータ2の回転より生じる振動および騒音が増幅されることを抑制できる。
【0073】
第1側板部60bと第2側板部60cと周壁部60aの一部と第1接続板部60dと第2接続板部60eとは、インバータ8の周囲を囲む。すなわち、インバータ収容部6cは、周壁部60a、第1側板部60b、第2側板部60c、第1接続板部60dおよび第2接続板部60eを有する。周壁部60aの一部と、第1接続板部60d、第1側板部60bおよび第2側板部60cの上端部には、インバータハウジング63を固定するインバータ側フランジ部60fが設けられる。
【0074】
図3に示すように、インバータ側フランジ部60fには、ギヤハウジング62をハウジング本体60に固定するための複数のネジ穴が設けられる。インバータ側フランジ部60fは、車両幅方向から見て、後方に向かうに従い下側に傾斜する。すなわち、インバータ側フランジ部60fは、第2接続板部60eに対して傾斜する。
【0075】
<閉塞部>
図6に示すように、閉塞部61は、ハウジング本体60のモータ側フランジ部60bcに固定される。閉塞部61は、ハウジング本体60の周壁部60aの軸方向一方側の開口を塞ぐ。閉塞部61とモータ側フランジ部60bcとの間には、図示略のシール部材が挟み込まれる。シール部材は、モータ収容空間81内のオイルが、閉塞部61とハウジング本体60との間から漏れ出ることを抑制する。
【0076】
閉塞部61は、
図8に示すハウジング本体60の第1隔壁に固定されるセンサ用コネクタ73および第1のバスバーユニット70を覆う。閉塞部61は、磁気シールドとしての機能を有していてもよい。この時、回転角センサ50の配線や第1のバスバーユニット70で生じるノイズが、第1コネクタ71等に影響を与えることを抑制できる。
【0077】
図6に示すように、閉塞部61は、閉塞部本体61aと、カバー61bと、を有する。また、閉塞部61は、閉塞部本体61aとカバー61bとの間を封止するシール部材(図示略)を有する。
【0078】
カバー61bは、閉塞部本体61aに設けられるカバーフランジ部61abに固定される。カバー61bとカバーフランジ部61abとの間には、図示略のシール部材が挟み込まれる。シール部材は、モータ収容空間81内のオイルが、カバー61bと閉塞部本体61aとの間から漏れ出ることを抑制する。
【0079】
<ギヤハウジング>
ギヤハウジング62は、ギヤ側フランジ部60cdに固定される。ギヤハウジング62の形状は、軸方向一方側に開口する凹形状である。ギヤハウジング62の開口は、第2側板部60cに覆われる。ギヤハウジング62と第2側板部60cとで囲まれた空間は、ギヤ部3を収容するギヤ収容空間82を構成する。
【0080】
<インバータハウジング>
インバータハウジング63は、インバータ側フランジ部60fに固定される。インバータハウジング63の形状は、下側に開口する凹形状である。インバータハウジング63の開口は、ハウジング本体60に覆われる。より具体的には、インバータハウジング63の開口は、周壁部60aおよび第2接続板部60eに覆われる。
【0081】
インバータハウジング63とハウジング本体60とは対向して配置される。インバータハウジング63とハウジング本体60とで囲まれた空間は、インバータ8を収容するインバータ収容空間83を構成する。すなわち、インバータ収容空間83は、インバータハウジング63とハウジング本体60とに囲まれる。インバータハウジング63には、インバータ8およびインバータ8から延びる配線の一部が収容される。
【0082】
インバータハウジング63は、本体収容部63aと、給電線収容部63bと、を有する。本体収容部63aと給電線収容部63bとは、軸方向に沿って並ぶ。給電線収容部63bは、本体収容部63aに対して軸方向他方側(+Y側)に位置する。
【0083】
図2に示すように、給電線収容部63bは、給電用コネクタ8eを保持する。給電線収容部63bは、上下方向から見て、インバータ収容部6cに対し外側に位置する。給電用コネクタ8eは、車両に搭載されるバッテリ(不図示)と、インバータ8とを電気的に接続し、バッテリからの電力をインバータ8に供給する。給電用コネクタ8eは、インバータ8の側面から幅方向に突出する。給電用コネクタ8eは、コネクタ端子を有する。コネクタ端子は、給電用コネクタ8eから車両前方向へ突出する。
【0084】
図5に示すように、本体収容部63aは、下側に開口する凹形状である。本体収容部63aの開口の縁には、取り付けフランジ部63cが設けられる。取り付けフランジ部63cは、インバータ側フランジ部60fと軸方向に対向する。インバータハウジング63は、取り付けフランジ部63cにおいてインバータ側フランジ部60fに固定される。
【0085】
図8に示すように、本体収容部63aの軸方向一方側の側面には、信号用コネクタ74が設けられる。信号用コネクタ74は、外部へとつながる信号線のコネクタである。
【0086】
本体収容部63aは、水平方向に沿って延びる板状の板状部63acを有する。板状部63acには、インバータ8を冷却する冷却水が通される冷却水路8bが設けられる。
【0087】
冷却水路8bは、軸方向一方側に開口する導入口8baと排出口8bbとを有する。導入口8baおよび排出口8bbは幅方向の一方側に位置する。すなわち、冷却水路8bの導入口8baおよび排出口8bbは、本体収容部63aの軸方向一方側の側面に設けられる。すなわち、冷却水路8bの流路は、概して、重力方向上側から見てU字状である。冷却水路8bは、インバータ8よりも重力方向上側に位置する。より具体的には、冷却水路8bは、インバータ8に隣接して位置する。
【0088】
図5に示すように、冷却水路8bは冷却部8hを有する。冷却部8hは重力方向上側から見て水平方向の幅が広がっている。これにより、インバータ8の制御素子を効率的に冷却することができる。なお、冷却水路8bはインバータハウジング63と一体に設けられて、支持されていてもよい。
【0089】
本実施形態によれば、インバータ8を冷却する冷却水路8bは、インバータ8の上側に位置する。したがって、冷却水路8bは、ハウジング6と接する部位およびその近傍には配置されていない。これにより、モータ2の熱が冷却水に熱が伝わり難く、冷却水によるインバータの冷却効率を高めることができる。
【0090】
本実施形態によれば、インバータハウジング63に冷却水路8bが設けられる。
【0091】
図2に示すように、本体収容部63aの板状部63acには、上下方向に貫通する第1の窓部631および第2の窓部632が設けられる。また、板状部63acには、第1の蓋部材8caおよび第2の蓋部材8cbが固定される。第1の蓋部材8caは、第1の窓部631を覆う。第2の蓋部材8cbは、第2の窓部632を覆う。なお、冷却水路8bは、前後方向において第1の窓部631と第2の窓部632との間を延びる。
【0092】
第1の窓部631は、インバータ8と給電用コネクタ8eとが締結される部位の直上に位置する。また、第1の窓部631の一部は、給電線収容部63bを上側に開口させる。第1の作業者は、工具を第1の窓部631からインバータ収容空間83内に挿入して、インバータ8の制御素子と給電用コネクタ8eとを電気的な接続作業および給電線収容部63bに収容される給電用の配線の接続作業を行う。
【0093】
図5に示すように、第2の窓部632は、インバータバスバー8dと第2のバスバー78との接続部8jの直上に位置する。作業者は、工具を第2の窓部632からインバータ収容空間83内に挿入して、接続部8jにおいてインバータバスバー8dと第2のバスバー78とを接続する。
【0094】
インバータハウジング63とハウジング本体60とを固定する作業について説明する。
インバータ8は、予めインバータハウジング63に固定される。また、第2のバスバーユニット77は、予めハウジング本体60に固定される。さらに、第2のバスバー78と第1のバスバー75とは、予め接続される。この状態で、インバータハウジング63を、ハウジング本体60に固定する。次いで、インバータハウジング63の第2の窓部632から、工具を挿入し、第2のバスバー78とインバータバスバー8dとを接続する。次いで、第2の蓋部材8cbによって、第2の窓部632を覆う。以上の工程を経ることで、インバータハウジング63とハウジング本体60とが固定されるとともに、インバータ8とモータ2とが電気的に接続される。
【0095】
<バスバー>
図9は、モータユニット1の分解斜視図である。
モータユニット1は、モータ2とインバータ8とを電気的に繋ぐ第1のバスバー75および第2のバスバー78を備える。第1のバスバー75は、モータ2のステータ30と第2のバスバー78とを電気的に繋ぐ。第2のバスバー78は、第1のバスバー75とインバータ8とを電気的に繋ぐ。第1のバスバー75は、第1のバスバーユニット70の一部を構成する。また、第2のバスバー78は、第2のバスバーユニット77の一部を構成する。以下、第1のバスバーユニット70および第2のバスバーユニット77について具体的に説明する。
【0096】
(第1のバスバーユニット)
第1のバスバーユニット70は、複数(3個)の第1のバスバー75と、複数の第1のバスバー75を保持する第1のバスバーホルダ76と、シール部材70Aと、を有する。
【0097】
第1のバスバー75は、板状の導体からなる。3つの第1のバスバー75は、ステータ30のU相、V相およびW相のコイル31からそれぞれ延び出るコイル線31bに接続される。また、3つの第1のバスバー75は、それぞれ、第2のバスバー78を介してインバータ8に接続される。すなわち、第1のバスバー75は、モータ2とインバータ8とを電気的に繋ぐ。第1のバスバー75は、インバータ8から出力される交流電流をモータ2に供給する。第1のバスバー75は、第1のバスバーホルダ76を介してハウジング本体60の第1側板部60bに固定される。
【0098】
第1のバスバー75は、軸方向に沿って延びる第1のバスバー本体部75aと、第1のバスバー本体部75aの軸方向一方側に位置する端子接続部75bと、を有する。
【0099】
第1のバスバー本体部75aは、第1のバスバーホルダ76に設けられた保持孔76cに挿入される。第1のバスバー本体部75aの軸方向他方側の端部は、第1のバスバーホルダ76から露出する。第1のバスバー75は、第1のバスバー本体部75aの軸方向他方側の端部において、第2のバスバー78に接続される。
【0100】
端子接続部75bは、第1のバスバー本体部75aの板厚方向に折り曲げられる。端子接続部75bの板厚方向は、軸方向と一致する。端子接続部75bは、第1のバスバーホルダ76から露出する。端子接続部75bは、モータ2のコイル31に接続される。より具体的には、端子接続部75bは、コイル31から延び出て束ねられた導線に接続される。
【0101】
第1のバスバーホルダ76は、絶縁性の樹脂材料からなる。本実施形態において、第1のバスバーホルダ76は、樹脂材料からなる。第1のバスバーホルダ76は、第1のバスバー75を保持するホルダ本体部76aと、ホルダ本体部76aから突出するホルダフランジ部76bと、を有する。
【0102】
ホルダ本体部76aは、軸方向に沿って延びる四角柱形状である。ホルダ本体部76aは、第1側板部60bに設けられた第3貫通孔60bgに挿入される。ホルダ本体部76aは、軸方向直交する方向を向く外周面76abを有する。ホルダ本体部76aには、軸方向に貫通する3つの保持孔76cを有する。
【0103】
1つの保持孔76cには、1つの第1のバスバーホルダ76が挿入される。保持孔76cの内周面と第1のバスバーホルダ76との間には、例えば接着剤が注入される。接着剤は、保持孔76cの内周面と第1のバスバーホルダ76との隙間とを塞いでシールする。
【0104】
ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの軸方向一方側の端部に位置する。ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの外周面76abから軸方向と直交する平面に沿って突出する。ホルダフランジ部76bは、ホルダ本体部76aの周囲に一周に亘って延びる。
【0105】
ホルダフランジ部76bには、軸方向に貫通する固定孔76baが設けられる。固定孔76baには、第1のバスバーユニット70をハウジング本体60の第1側板部60bに固定する固定ネジが挿入される。
【0106】
ホルダフランジ部76bは、軸方向他方側を向く対向面76bbを有する。対向面76bbは、第1側板部60bの軸方向一方側を向く面とは、シール部材70Aを介して対向する。シール部材70Aは、対向面76bbと第1側板部60bの軸方向一方側を向く面とによって、軸方向に挟み込まれる。シール部材70Aは、第1のバスバーホルダ76と第1側板部60bとの間をシールする。
【0107】
本実施形態によれば、第1のバスバー75は、第1側板部60bを軸方向に貫通する第3貫通孔60bgを通過してインバータ収容空間83へ延びる。したがって、第1のバスバー75は、軸方向一方側からインバータ収容部6cに取り付けられる。インバータ収容部6cの軸方向両側には、モータ2が配置されていない。このため、本実施形態によれば、第1のバスバー75を第3貫通孔60bgに挿入して組み付ける工程が容易となる。
【0108】
本実施形態によれば、第1のバスバー75は、モータ収容空間81においてステータ30の軸方向一方側の端部でステータ30から延び出るコイル線31bに接続される。本実施形態によれば、第1のバスバー75とコイル線31bの接続工程において、インバータ8およびモータ2が接続作業を阻害することがなく、接続工程を容易とすることができる。
【0109】
本実施形態によれば、第1のバスバーホルダ76は、第3貫通孔60bgの開口を塞ぐとともに第3貫通孔60bgに挿通される。また、シール部材70Aは、第3貫通孔60bgの開口周りにおいて第1側板部60bと第1のバスバーホルダ76との間をシールする。第1のバスバーユニット70が、シール部材70Aを有することで、モータ収容空間81とインバータ収容空間83との間で、埃等が通過することを抑制できる。また、シール部材70Aは、モータ収容空間81内に貯留されモータ2を冷却するオイルが、モータ収容空間81からインバータ収容空間83に浸入することを抑制できる。
なお、「第1のバスバーホルダ76が第3貫通孔60bgの開口を塞ぐ」とは、第1のバスバーホルダ76が第3貫通孔60bgの開口を封止可能に塞いでいることを意味する。例えば、第1のバスバーホルダ76が第3貫通孔60bgに挿入されることなく開口周りを覆っていてもよく、また、第1のバスバーホルダ76が第3貫通孔60bgに挿入されて内周面を塞いでいてもよい。
【0110】
また、本実施形態のシール部材70Aは、第3貫通孔60bg周縁の第1側板部60bと第1のバスバーホルダ76との間において、軸方向にシールする。本実施形態によれば、シール部材70Aを、第1のバスバーホルダ76とともに、第1側板部60bに軸方向から組み付けることで容易にシール性能を発揮させることができる。シール部材70Aとしては、シート状のガスケットやOリング等を採用することができる。
【0111】
本実施形態によれば、第3貫通孔60bgが設けられる第1側板部60bは、ハウジング本体60の一部である。このように、ハウジング本体60の一部によって、収容空間80をモータ収容空間81とインバータ収容空間83とを区画することで、ハウジング6を構成する部品数を少なくして、全体を簡素化できる。
【0112】
本実施形態において、第1のバスバーユニット70は、ハウジング6においてモータ収容部6aとインバータ収容部6cとを区画する第1隔壁60baに固定される。ハウジング6は、モータ2を収容および支持するハウジング本体60と、ハウジング本体60の一部に対向して包囲する空間にインバータ8を収容するインバータハウジング63と、を有する。第1のバスバーユニット70が固定される第1隔壁60baは、ハウジング本体60の第1側板部60bの一部である。
【0113】
本実施形態によれば、ハウジング本体60は、モータ収容部6aの一部およびインバータ収容部6cの一部を構成する。すなわち、本実施形態によれば、インバータ8は、モータ収容部6aの一部とインバータ収容部6cの一部とが、単一の部材により構成される。このため、モータユニット1全体を小型化および軽量化することができる。
【0114】
本実施形態によれば、ハウジング本体60によって、モータ収容部6aとインバータ収容部6cとが、構成される。ハウジング本体60の第1隔壁60baは、モータ収容空間81とインバータ収容空間83とを区画する。したがって、第1隔壁60baに第3貫通孔60bgを設け第1のバスバーユニット70を配置することで、第1のバスバー75をモータ収容空間81とインバータ収容空間83とに跨って配置できる。これにより、簡易な構成で、ステータ30とインバータ8とを第1のバスバー75によって接続できる。
【0115】
本実施形態によれば、第1のバスバーホルダ76の第1側板部60bには、第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71が配置される。第1のバスバーユニット70、センサ用コネクタ73および第1コネクタ71からそれぞれインバータ8側に延びる配線は、インバータ収容空間83内に収容される。また、第1のバスバーユニット70およびセンサ用コネクタ73からそれぞれモータ2インバータ8側に延びる配線は、モータ収容空間81内に収容される。本実施形態によれば、モータユニット1として必要な配線をハウジング6の内部に配置することができ、モータユニット1全体の配線を簡素化させることができるのみならず、全体として配線を短くすることができる。
【0116】
(第2のバスバーユニット)
第2のバスバーユニット77は、複数(3個)の第2のバスバー78と、複数の第2のバスバー78を保持する第2のバスバーホルダ79と、を有する。
【0117】
第2のバスバーホルダ79は、絶縁性の樹脂材料からなる。本実施形態において、第2のバスバーホルダ79は、第1のバスバーホルダ76と異なる樹脂材料からなる。第1のバスバーホルダ76の樹脂材料は、第2のバスバーホルダ79の樹脂材料と比較して耐油性に優れることが好ましい。第1のバスバーホルダ76は、モータ収容空間81に収容されるためオイルOに接触する。このため、第1のバスバーホルダ76の樹脂材料として耐油性に優れる材料を選定することで、第1のバスバーホルダ76の膨潤等を抑制し、第1のバスバー75と第1のバスバーホルダ76との間の隙間が広がることを抑制できる。結果的に、第1のバスバー75と第1のバスバーホルダ76との間の隙間を介するインバータ収容空間83へのオイルOの流入を抑制できる。また、第2のバスバーホルダ79は、インバータ収容空間83に配置されるため、オイルOとの接触が制限される。このため、第2のバスバーホルダ79として、耐油性と無関係に適切な樹脂材料を選定できる。
【0118】
なお、第1のバスバーホルダ76としては、ポリフタルアミド樹脂(PPA:Polyphthalamide)又はポリフェニレンスルファイド樹脂(PPS:Poly Phenylene Sulfide)を選定することができる。また、第2のバスバーホルダ79としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT:Poly Butylene Terephthalate)を選定することができる。
【0119】
なお、耐油性については、オートマチックトランスミッション用潤滑油中への浸漬試験によって評価することが考えられる。この場合は、所定時間の浸漬後の重量変化および強度変化によって耐油性の評価を行う。なお、重量変化の評価では、耐食や膨潤の観点を含むものとする。
【0120】
第2のバスバー78は、板状の導体からなる。3つの第2のバスバー78は、それぞれU相の第1のバスバー75、V相の第1のバスバー75およびW相の第1のバスバー75に接続される。すなわち、3つの第2のバスバー78は、第1のバスバー75を介してステータ30に接続される。また、第2のバスバー78は、インバータ8のインバータバスバー8dに接続される。すなわち、第2のバスバー78は、第1のバスバー75とインバータ8との間を中継して電気的に繋ぐ。第2のバスバー78は、インバータ8から出力される交流電流をモータ2に供給する。第2のバスバー78は、インバータ収容空間83内に配置される。第2のバスバー78は、第2のバスバーホルダ79を介してハウジング本体60の周壁部60aの外周面に固定される。
【0121】
ここで、
図5に示すように、第2のバスバーホルダ79が固定される周壁部60aの外周面を第1内側面83aと呼ぶ。第1内側面83aは、インバータ収容空間83に面する。また、第1内側面83aは、モータ2の外周面に沿って延びる面である。
【0122】
本実施形態において、第2のバスバーホルダ79は、第1内側面83aに隙間G1を設けた状態で固定される。第1内側面83aは、ハウジング本体60においてモータ2の外周面に沿って延びる面であるため、モータ2とともに振動しやすい。本実施形態によれば、第2のバスバーホルダ79と第1内側面83aとの間に隙間G1が設けられるため、モータ2の振動が第2のバスバー78および第2のバスバーホルダ79に伝わることを抑制できる。これにより、第2のバスバー78および第2のバスバーホルダ79の損傷および締結部の緩みなどを抑制できる。
【0123】
図9に示すように、第2のバスバー78は、インバータ8に接続されるインバータ側端子接続部78cと、第1のバスバー75に接続されるモータ側端子接続部78dと、を有する。また、第2のバスバー78は、ハウジング本体60の周壁部60aの外周面に沿って上下方向に延びる第2のバスバー本体部78aを有する。3つの第2のバスバー78の第2のバスバー本体部78aは、軸方向に沿って並ぶ。第2のバスバー本体部78aの上端部には、インバータ側端子接続部78cが設けられる。
【0124】
図5に示すように、インバータ側端子接続部78cは、第2のバスバー本体部78aの板厚方向に折り曲げられる。インバータ側端子接続部78cは、水平方向に沿って延びる。第2のバスバー78は、インバータ側端子接続部78cにおいて、インバータバスバー8dに接続される。インバータバスバー8dおよびインバータ側端子接続部78cは、インバータ8と第2のバスバーとの接続部8jを構成する。
【0125】
上述したように、インバータハウジング63には、インバータ8と第2のバスバー78とを電気的に接続する接続部8jの直上に位置し、インバータ8と第2のバスバー78との接続部8jを露出させる第2の窓部632が設けられる。第2のバスバー78は、ステータ30とインバータ8とを電気的に接続する。本実施形態によれば、第2の窓部632を介してインバータ収容空間83に工具をアクセスすることが容易となる、ステータ30とインバータ8とを電気的に接続する工程を容易に行うことができる。
【0126】
3つの第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dの軸方向位置は互いに一致する。3つの第2のバスバー78のうち2つの第2のバスバー78は、第2のバスバー本体部78aの下端部から、残る1つの第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dの軸方向位置まで軸方向に延びる延長部78bを有する。
図5に示すように、3つの第2のバスバー78は、第2のバスバー本体部78aおよび延長部78bにおいて、第1内側面83aに沿って延びる。
【0127】
図10は、インバータ収容空間83内に配置された第2のバスバーユニット77の正面図である。
上述したように、第1のバスバー75の軸方向他方側(+Y側)の端部は、第3貫通孔60bgを通ってインバータ収容空間83の内部に配置される。第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dは、インバータ収容空間83の内部で、第1のバスバー75の軸方向他方側の端部に接続される。
より具体的には、第1のバスバー75の軸方向他方側の端部と第2のバスバー78のモータ側端子接続部78dとは、板厚方向において互いに積層される。また、第1のバスバー75および第2のバスバー78の互いに積層された端部には、互いに重なり合う貫通孔がそれぞれ設けられる。貫通孔には、接続ネジ78fが挿入される。第1のバスバー75と第2のバスバー78とは、接続ネジ78fとナット(図示略)によって、互いに締結されて接続される。
【0128】
図5に示すように、第2のバスバーホルダ79は、ベース部材79bおよびカバー部材79aを有する。ベース部材79bおよびカバー部材79aは、絶縁性の材料からなる。本実施形態において、ベース部材79bおよびカバー部材79aは、樹脂材料からなる。
【0129】
ベース部材79bは、周壁部60aの外周面に沿って延びる板状である。ベース部材79bは、インバータ収容空間83の内部において周壁部60aの外周面に固定される。カバー部材79aは、ベース部材79bの上面を覆う板状である。カバー部材79aは、ベース部材79bに固定される。また、カバー部材79aとベース部材79bとの間には、第2のバスバー78の第2のバスバー本体部78aおよび延長部78bが挟み込まれる。すなわち、第2のバスバーホルダ79は、ベース部材79bとカバー部材79aとの間に第2のバスバー78を挟み込んで第2のバスバー78を支持する。
【0130】
本実施形態によれば、インバータ収容空間83の内部に、ステータ30からインバータ8に至る配線の一部を担う第2のバスバー78が配置される。また、第2のバスバー78は、モータ側接続端子79dから第2の窓部632の直下に位置するインバータ側接続端子79cまで延びてインバータ8に接続される。本実施形態によれば、インバータ収容空間83の内部に、第2のバスバー78が設けられることで、ステータ30とインバータ8との配線の接続を容易とすることができる。
【0131】
本実施形態によれば、第2のバスバー78がインバータ収容空間83の第1内側面83aに沿って延びる。これにより、第2のバスバー78がインバータ収容空間83の容積を圧迫することを抑制することができ、インバータ収容空間83の容積を効率的に利用できる。
なお、本実施形態において、第2のバスバー78を沿わせる内側面は、モータ2の外周面に沿って延びる第1内側面83aであるが、インバータ収容空間83に面する面であれば他の内側面であってもよい。ただし、本実施形態に示すように、第2のバスバー78を第1内側面83aに沿わせる場合、第2のバスバー78の全長を短くし易く、第2のバスバー78の電気抵抗を抑制できる。特に本実施形態においては、インバータ8のスイッチング素子8Aの長手方向が軸方向であるため、第2のバスバー78とインバータバスバー8dとの3つの接続部8jが軸方向に並んで配置される。このような構造においては、第2のバスバー78をモータ2の外周面に沿って配置することで第2のバスバー78の全長を短くしやすい。
【0132】
(第2のバスバーユニットの変形例1)
図11は、本実施形態に採用可能な変形例1の第2のバスバーユニット177の斜視図である。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
第2のバスバーユニット177は、3個の第2のバスバー78と、3個の第2のバスバー78を保持する第2のバスバーホルダ179と、を有する。第2のバスバーホルダ179は、絶縁性の樹脂材料からなる。本変形例において、3個の第2のバスバー78は、インサート成形によって第2のバスバーホルダ179に埋め込まれる。
【0134】
第2のバスバー78は、第2のバスバー本体部78aおよび延長部78bにおいて、第2のバスバーホルダ179に埋め込まれる。また、第2のバスバー78は、モータ側端子接続部78dおよびインバータ側端子接続部78cにおいて、第2のバスバーホルダ179から露出する。
【0135】
3つのモータ側端子接続部78dの軸方向位置は、互いに一致する。また、3つのモータ側端子接続部78dは、並んで配置される。
【0136】
第2のバスバーホルダ179は、モータ側端子接続部78d同士の間に位置する仕切り壁部179wを有する。仕切り壁部179wは、一対のモータ側端子接続部78dの間に配置される。本変形例の第2のバスバーユニット177には、3つのモータ側端子接続部78dが設けられるため、第2のバスバーホルダ179はこれらの間に位置する2つの仕切り壁部179wを有する。
【0137】
仕切り壁部179wは、第2のバスバー78の板厚方向に突出する。本変形例によれば、互いに隣接するモータ側端子接続部78dの間の沿面距離を長くすることができる。これにより、モータ側端子接続部78d同士を近づけて第2のバスバーユニット177を小型化しつつ、第2のバスバーユニット177の絶縁性能を確保できる。
【0138】
3つのインバータ側端子接続部78cの上下方向位置は、互いに一致する。また、3つのインバータ側端子接続部78cは、並んで配置される。インバータ側端子接続部78c同士は、モータ側端子接続部78d同士より離間して配置される。
図5に示す上述の実施形態と同様に、本変形例においても、インバータ側端子接続部78cは、インバータハウジング63の第2の窓部632(
図5参照)から工具を挿入して、インバータ8に接続される。このため、インバータ側端子接続部78c同士が互いに近くに配置されている場合、インバータ側端子接続部78cの接続工程が煩雑になる虞がある。本実施形態によれば、インバータ側端子接続部78c同士を十分に離間して配置されるため、インバータ側端子接続部78cとインバータ8との接続工程を容易とすることができる。また、インバータ側端子接続部78cを十分に離間して配置することで、仕切り壁部などを設けることなく、インバータ側端子接続部78cの間の絶縁性能を十分に確保することができる。
【0139】
(第2のバスバーユニットの変形例2)
図12および
図13は、本実施形態に採用可能な変形例2の第2のバスバーユニット277および当該第2のバスバーユニット277を備えるモータユニット201の断面模式図である。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0140】
上述の実施形態と同様に、モータユニット201のハウジング206は、ハウジング本体260とインバータハウジング263とを備える。ハウジング本体260の内部には、モータ収容空間281が設けられる。また、ハウジング本体260とインバータハウジング263とは、インバータ収容空間283を囲む。インバータ収容空間283は、インバータ208および第2のバスバーユニット277を収容する。
【0141】
第2のバスバーユニット277は、第2のバスバー278と、第2のバスバー278を保持する第2のバスバーホルダ279と、を有する。第2のバスバーホルダ279は、絶縁性の樹脂材料からなる。なお、第2のバスバーユニット277は、複数(例えば3つ)の第2のバスバー278を有するが、
図12および
図13では簡略化のため1つのみを図示する。
【0142】
第2のバスバー278は、第1のバスバー275を介してモータ2に接続される。また、第2のバスバー278は、接続部208jにおいてインバータ208に接続される。すなわち、第2のバスバー278は、第1のバスバー275とともに、モータ2とインバータ208とを電気的に接続する。なお、接続部208jは、インバータハウジング263に設けられた窓部263wの直下に位置する。
【0143】
インバータ208および第2のバスバーユニット277は、インバータハウジング263の下面に固定される。ここで、インバータ208および第2のバスバーユニット277が固定されるインバータハウジング263の下面を、第2内側面283bと呼ぶ。第2内側面283bは、インバータ収容空間283に面する。
【0144】
第2のバスバー278は、インバータ収容空間283の第2内側面283bに沿って延びる。これにより、第2のバスバー278がインバータ収容空間283の容積を圧迫することを抑制することができ、インバータ収容空間283の容積を効率的に利用できる。
【0145】
上述の実施形態および本変形例に示すように、第2のバスバー78、278は、ハウジング本体260においてインバータ収容空間83に面する第1内側面83a(
図5参照)、および、インバータハウジング263においてインバータ収容空間283に面する第2内側面283b(
図12)のうち、少なくとも一方に沿って延びていれば、このような効果を得ることができる。なお、本変形例の第2内側面283bは、インバータ収容空間283に面する面であればいずれの面であってもよい。
【0146】
本変形例において、第2のバスバーホルダ279は、第2内側面283bに隙間G2を設けた状態で固定される。本変形例によれば、第2のバスバーホルダ279と第2内側面283bとの間に隙間G2が設けられるため、インバータ208の振動が第2のバスバー278および第2のバスバーホルダ279に伝わることを抑制できる。これにより、第2のバスバー278および第2のバスバーホルダ279の損傷および締結部の緩みなどを抑制できる。
上述の実施形態および本変形例に示すように、第2のバスバーホルダ79、279は、第1内側面83a、および、第2内側面283bのうち、少なくとも一方に隙間を設けた状態で固定されていれば、振動に対する上述の効果を得ることができる。
【0147】
<オイル>
図1に示すように、オイルOは、ハウジング6に設けられた油路90内を循環する。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。油路90は、オイルOを循環させモータ2を冷却する。
【0148】
オイルOは、減速装置4、差動装置5および各ベアリングの潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤ収容空間82内の下部領域、すなわちオイル溜りPに溜る。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0149】
<油路>
図1に示すように、油路90は、ハウジング6に設けられる。油路90は、ハウジング6内の収容空間80に位置する。油路90は、収容空間80のモータ収容空間81とギヤ収容空間82とに跨って構成される。油路90は、オイルOをモータ2の下側のオイル溜りP(すなわち、収容空間80内の下部領域)からモータ2を経て、再びモータ2の下側のオイル溜りPに導くオイルOの経路である。
【0150】
なお、本明細書において、「油路」とは、収容空間80を循環するオイルOの経路を意味する概念である。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルが流れる「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路(例えばリザーバ)およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0151】
油路90は、モータ2の内部を通る第1の油路91と、モータ2の外部を通る第2の油路(油路)92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。オイルOは、第1の油路91および第2の油路92において、モータ2を内部および外部から冷却する。
【0152】
(第1の油路)
第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ収容空間82に設けられている。
【0153】
(第2の油路)
第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路92dを有する。第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、第2のリザーバ98と、が設けられる。
【0154】
第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dは、収容空間80を囲むハウジング6の壁部を通過する。
【0155】
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92d、および第2のリザーバ98を介してモータ2にオイルOを供給する。すなわち、ポンプ96は、第2の油路92中でオイルOを循環させるために設けられる。
【0156】
ポンプ96の吸入口96aは、第1の流路92aに繋がる。また、ポンプ96の吐出口96bは、第2の流路92bに繋がる。
【0157】
ポンプ96は配線の一部である第2コネクタ72を有する。ポンプ96の配線は、第2コネクタ72からハウジング本体外部の配線を通り、第1コネクタ71に繋がる。そして、第1コネクタ71からインバータ収容部6cの内部の配線を経て、インバータ8へと接続される。
【0158】
クーラー97は、モータ収容部6aの外周面と接触する接触面97aを有する。第2の流路92bは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第3の流路92cは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第4の流路92dは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。
【0159】
<変形例3>
図14に、上述の実施形態に採用可能な変形例のハウジング106およびバスバーユニット170を示す。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0160】
上述の実施形態と同様に、ハウジング106は、内部にモータ収容空間81が設けられるモータ収容部106aと、内部にインバータ収容空間83が設けられるインバータ収容部106cと、を有する。また、インバータ収容部106cは、インバータ8(
図14において省略)の軸方向一方側(-Y側)に位置し、軸方向に貫通する第3貫通孔160bgが設けられる第1側板部160bを有する。
【0161】
バスバーユニット170は、第1ユニット170Aと第2ユニット170Bとを有する。第1ユニット170Aは、ステータ30(
図14において省略)から延び出るコイル線31bに取り付けられる。一方で、第2ユニット170Bは、ハウジング本体160の第1側板部160bに固定される。第1ユニット170Aは、ステータ30とともにハウジング本体160に組付けられる。また、第1ユニット170Aは、第2ユニット170Bの軸方向一方側(-Y側)に配置され、第2ユニット170Bに接続される。
【0162】
第1ユニット170Aは、3つのモータ側バスバー175と、3つのモータ側バスバー175を支持する第1のバスバーホルダ176と、を有する。第2ユニット170Bは、3つのインバータ側バスバー178と、3つのインバータ側バスバー178を支持する第2のバスバーホルダ179と、を有する。
【0163】
モータ側バスバー175は、第1のバスバーホルダ176に埋め込まれる。モータ側バスバー175の両端部は、第1のバスバーホルダ176から露出する。モータ側バスバー175の一方の端部は、ステータ30から延び出るコイル線31bに接続される。モータ側バスバー175の他方の端部は、インバータ側バスバー178に接続される。第1のバスバーホルダ176は、絶縁性の材料からなる。第1のバスバーホルダ176は、第2のバスバーホルダ179に固定される。
【0164】
インバータ側バスバー178は、第2のバスバーホルダ179に埋め込まれる。インバータ側バスバー178の両端部は、第2のバスバーホルダ179から露出する。インバータ側バスバー178の一方の端部は、モータ側バスバー175に接続される。また、インバータ側バスバー178の他方の端部は、第3貫通孔160bgを通過してインバータ収容部106cの内部に導入され、インバータ8(
図14において省略)に接続される。インバータ側バスバー178に接続される。第1のバスバーホルダ176は、絶縁性の材料からなる。第1のバスバーホルダ176は、第1側板部160bに固定される。また、第1のバスバーホルダ176と第3貫通孔160bgとは、図示略のシール部材によってシールされる。
【0165】
本変形例のモータ側バスバー175とインバータ側バスバー178と互いに接続されて、上述の実施形態における第1のバスバー75として機能する。本変形例によれば、モータ側バスバー175とインバータ側バスバー178とが別部材であるために、一方を予めステータ30に取りつけ、他方を予めハウジング本体160に取り付けて組み立てを行うことができる。このため、最終的な組付け工程を簡素化することができる。
【0166】
図14に示すように、ハウジング本体160のインバータ収容部106cには、冷却水路108bが設けられる。また、冷却水路108bは、軸方向一方側に開口する導入口108baと排出口108bbとを有する。上述の実施形態において、冷却水路8bはインバータハウジング63に設けられていた。しかしながら、本変形例に示すように、冷却水路108bは、ハウジング本体160に設けられていてもよい。
【0167】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0168】
1,201…モータユニット、2…モータ、6,106,206…ハウジング、6a,106a…モータ収容部、6c,106c…インバータ収容部、8,208…インバータ、8A…スイッチング素子、8B…コンデンサ、8C…パワー基板、8j,208j…接続部、20…ロータ、30…ステータ、31…コイル、31b…コイル線、60,160,260…ハウジング本体、60b、160b…第1側板部(隔壁部)、60bg、160bg…第3貫通孔(貫通孔)、63,263…インバータハウジング、70A…シール部材、75,275…第1のバスバー、76,176…第1のバスバーホルダ、78,278…第2のバスバー、78c…インバータ側端子接続部、78d…モータ側端子接続部、79,179,279…第2のバスバーホルダ、81,281…モータ収容空間、83,283…インバータ収容空間、83a…第1内側面、179w…仕切り壁部、632,263w…窓部、283b…第2内側面、G1,G2…隙間、J2…モータ軸、O…オイル