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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電源回路及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H02M3/28 W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021539842
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2020026503
(87)【国際公開番号】W WO2021029162
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2019148633
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】結城 仁
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-098465(JP,A)
【文献】特開平09-163725(JP,A)
【文献】特開平05-064441(JP,A)
【文献】特開2005-224069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1電源ユニットと第2電源ユニットとを有し、
前記第1電源ユニットは、第1入力部と、前記第1入力部に入力された入力電圧に基づいて第1交流電圧を生成する第1交流電圧生成部と、前記第1交流電圧を整流及び平滑化する第1整流・平滑化部と、前記第1交流電圧生成部と前記第1整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第1絶縁部とを有し、
前記第2電源ユニットは、第2入力部と、前記第2入力部に入力された入力電圧に基づいて第2交流電圧を生成する第2交流電圧生成部と、前記第2交流電圧を整流及び平滑化する第2整流・平滑化部と、前記第2交流電圧生成部と前記第2整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第2絶縁部とを有し、
前記第1交流電圧生成部は、第1ハイサイドスイッチと、前記第1ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第1ローサイドスイッチとを有し、
前記第2交流電圧生成部は、第2ハイサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第2ローサイドスイッチとを有し、
前記第1交流電圧生成部に供給される第1ドライブ信号と、前記第1ドライブ信号と同期し前記第2交流電圧生成部に供給される第2ドライブ信号とによって、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとが相補的に駆動され、
前記第1交流電圧生成部により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧が前記第2交流電圧生成部により生成されるように構成されている
電源回路。
【請求項2】
前記第1ドライブ信号及び前記第2ドライブ信号を出力する制御部を有する
請求項に記載の電源回路。
【請求項3】
一対の前記第1電源ユニット及び前記第2電源ユニットから成るペアユニットを複数有する
請求項に記載の電源回路。
【請求項4】
個々の前記ペアユニットに対して、前記第1ドライブ信号及び前記第2ドライブ信号を出力する制御部を有する
請求項に記載の電源回路。
【請求項5】
個々の前記ペアユニットが、前記第1ドライブ信号及び前記第2ドライブ信号を出力する制御部を有する
請求項に記載の電源回路。
【請求項6】
それぞれの前記ペアユニットの出力に応じて、スイッチング周波数がペアユニット毎に切り替えられる制御が行われる
請求項に記載の電源回路。
【請求項7】
前記第1入力部と前記第2入力部とが直列接続又は並列接続されている
請求項1に記載の電源回路。
【請求項8】
前記第1電源ユニットは、前記第1整流・平滑化部と接続された第1出力部を有し、
前記第2電源ユニットは、前記第2整流・平滑化部と接続された第2出力部を有し、
前記第1出力部と前記第2出力部とが直列接続又は並列接続されている
請求項1に記載の電源回路。
【請求項9】
少なくとも、第1電源ユニットと第2電源ユニットとを有し、前記第1電源ユニットは、第1入力部と、前記第1入力部に入力された入力電圧に基づいて第1交流電圧を生成する第1交流電圧生成部と、前記第1交流電圧を整流及び平滑化する第1整流・平滑化部と、前記第1交流電圧生成部と前記第1整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第1絶縁部とを有し、前記第2電源ユニットは、第2入力部と、前記第2入力部に入力された入力電圧に基づいて第2交流電圧を生成する第2交流電圧生成部と、前記第2交流電圧を整流及び平滑化する第2整流・平滑化部と、前記第2交流電圧生成部と前記第2整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第2絶縁部とを有し、前記第1交流電圧生成部は、第1ハイサイドスイッチと、前記第1ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第1ローサイドスイッチとを有し、前記第2交流電圧生成部は、第2ハイサイドスイッチと、前記第2ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第2ローサイドスイッチとを有する電源回路における制御方法であり、
前記第1交流電圧生成部に供給される第1ドライブ信号と、前記第1ドライブ信号と同期し前記第2交流電圧生成部に供給される第2ドライブ信号とによって、前記第1ハイサイドスイッチと前記第2ハイサイドスイッチとを相補的に駆動して、前記第1交流電圧生成部により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧前記第2交流電圧生成部により生成する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源回路及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源や充電器に用いられる絶縁型スイッチング電源は一般的に絶縁トランスを用いて、その1次側コイルに交流電圧を印加し発生する磁束を介して、絶縁を保ちながら2次側コイルに電力を転送している。スイッチング電源を小型化するためには、印加する交流電圧を高周波化し、使用するコンデンサや絶縁トランスなどのサイズを小型化することで実現できるとされる。最近は高周波化による弊害である半導体のスイッチング損失の増大を改善可能なGaN(窒化ガリウム)やSiC(シリコンカーバイド)を用いた半導体素子も利用可能となってきていることから高周波化が進むと考えられる。
【0003】
絶縁トランスでは、用いるフェライトコアの断面積を高周波化により小型化することが可能となるためコアボリュームの小型化が可能である。しかしながら、コイルに流れる電流が高周波化することでコイルに発生する、表皮効果や近接効果による損失の増加に対応するためにコイル体積を小型化することが構造的に難しくなる。従って、高周波化によるトランスの小型化の効果はそれほど大きく無いと考えられている。つまり、絶縁トランスを用いたスイッチング電源では、スイッチング周波数を高周波化することで小型化を図れるが、絶縁トランスの構造上、目的とする小型化に制限が生じる。係る問題を解決する方法として、小型化の制限の元になる絶縁トランスに代えてキャパシタによる絶縁と電力転送とを行う技術が提案されている(例えば、下記特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4366713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁トランスの機能をキャパシタで置き換えたキャパシタ絶縁型スイッチング電源は、1次側から見た2次側にスイッチング周波数に同期した高周波電圧が発生する。係る高周波電圧が回路動作等に悪影響を及ぼす虞があるため、高周波電圧が極力、除去されることが望まれる。
【0006】
従って、本開示は、1次側から見た2次側に発生する、スイッチング周波数に同期した高周波電圧を極力、除去することができる電源回路及び制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、例えば、
少なくとも、第1電源ユニットと第2電源ユニットとを有し、
第1電源ユニットは、第1入力部と、第1入力部に入力された入力電圧に基づいて第1交流電圧を生成する第1交流電圧生成部と、第1交流電圧を整流及び平滑化する第1整流・平滑化部と、第1交流電圧生成部と第1整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第1絶縁部とを有し、
第2電源ユニットは、第2入力部と、第2入力部に入力された入力電圧に基づいて第2交流電圧を生成する第2交流電圧生成部と、第2交流電圧を整流及び平滑化する第2整流・平滑化部と、第2交流電圧生成部と第2整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第2絶縁部とを有し、
第1交流電圧生成部は、第1ハイサイドスイッチと、第1ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第1ローサイドスイッチとを有し、
第2交流電圧生成部は、第2ハイサイドスイッチと、第2ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第2ローサイドスイッチとを有し、
第1交流電圧生成部に供給される第1ドライブ信号と、第1ドライブ信号と同期し第2交流電圧生成部に供給される第2ドライブ信号とによって、第1ハイサイドスイッチと第2ハイサイドスイッチとが相補的に駆動され、
第1交流電圧生成部により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧が第2交流電圧生成部により生成されるように構成されている
電源回路である。
【0008】
本開示は、例えば、
少なくとも、第1電源ユニットと第2電源ユニットとを有し、第1電源ユニットは、第1入力部と、第1入力部に入力された入力電圧に基づいて第1交流電圧を生成する第1交流電圧生成部と、第1交流電圧を整流及び平滑化する第1整流・平滑化部と、第1交流電圧生成部と第1整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第1絶縁部とを有し、第2電源ユニットは、第2入力部と、第2入力部に入力された入力電圧に基づいて第2交流電圧を生成する第2交流電圧生成部と、第2交流電圧を整流及び平滑化する第2整流・平滑化部と、第2交流電圧生成部と第2整流・平滑化部との間に設けられ、キャパシタにより構成された第2絶縁部とを有し、第1交流電圧生成部は、第1ハイサイドスイッチと、第1ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第1ローサイドスイッチとを有し、第2交流電圧生成部は、第2ハイサイドスイッチと、第2ハイサイドスイッチと相補的にオン/オフされる第2ローサイドスイッチとを有する電源回路における制御方法であり、
第1交流電圧生成部に供給される第1ドライブ信号と、第1ドライブ信号と同期し第2交流電圧生成部に供給される第2ドライブ信号とによって、第1ハイサイドスイッチと第2ハイサイドスイッチとを相補的に駆動して、第1交流電圧生成部により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧第2交流電圧生成部により生成する
制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一般的な電源回路の回路構成例を示す図である。
図2図2は、他の一般的な電源回路の回路構成例を示す図である。
図3図3は、高周波電圧波形の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る第1電源ユニットの構成例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る第1交流電圧生成部により生成される交流電圧の波形例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る第2電源ユニットの構成例を示す図である。
図8図8は、第1交流電圧生成部により生成される交流電圧の波形と、第2交流電圧生成部により生成される交流電圧の波形とを対比的に示した図である。
図9図9A及び図9Bは、本実施形態に係る第1、第2電源ユニットの接続態様の例を説明する際に参照される図である。
図10図10A及び図10Bは、本実施形態に係る第1、第2電源ユニットの接続態様の他の例を説明する際に参照される図である。
図11図11は、変形例を説明するための図である。
図12図12は、変形例を説明するための図である。
図13図13A及び図13Bは、変形例を説明するための図である。
図14図14は、変形例を説明するための図である。
図15図15は、変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<一実施形態において考慮すべき問題>
<一実施形態>
<変形例>
以下に説明する実施形態等は本開示の好適な具体例であり、本開示の内容がこれらの実施の形態等に限定されるものではない。
【0011】
<一実施形態において考慮すべき問題>
本開示の理解を容易とするために、始めに一般的な技術に関する説明を行う。図1は、一般的なLLC共振回路により構成された電源回路の回路構成例を示す図である。図1に示す電源回路1は、入力部1A、交流電圧生成部1B、絶縁部1C、整流・平滑化部1D、及び、制御回路1Eを有している。交流電圧生成部1Bは、直列に接続されMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されるスイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を有している。スイッチング素子Q1、Q2は、制御回路1Eによりオン/オフが制御される。具体的には、スイッチング素子Q1、Q2は、制御回路1Eにより相補的、すなわち、一方のスイッチング素子がオンになるときに他方のスイッチング素子がオフとなるようにオン/オフが制御される。
【0012】
絶縁部1Cは、トランスにより構成されている。交流電圧生成部1Bにより生成された交流電圧が絶縁部1Cを介して整流・平滑化部1Dに伝送される。そして、整流・平滑化部1Dにより交流電圧が直流電圧に変換されて所定の負荷に出力される。図1に示す絶縁トランスを用いた構成では、上述したように、構造的な小型化に制限が生じる。
【0013】
図2は、絶縁トランスに代えてキャパシタを用いて絶縁、電力伝送する電源回路の回路構成例を示す図である。図2に示す電源回路2は、入力部2A、交流電圧生成部2B、絶縁部2C、整流・平滑化部2D、及び、制御回路2Eを有している。交流電圧生成部2Bは、直列に接続されMOSFETにより構成されるスイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4を有している。絶縁部2Cがトランスではなくキャパシタにより構成される他は、電源回路2の動作は電源回路1の動作と同一である。
【0014】
トランスではなくキャパシタにより構成された絶縁部2Cによっても直流絶縁は実現できる。しかしながら、キャパシタは高い周波数でインピーダンスとなるため、1次側と2次側が回路的にインピーダンスで接続され、高いスイッチング周波数(例えば、数百kHz)に同期した交流電圧(変動した電圧)が絶縁キャパシタを介して伝送されるため高周波電圧の絶縁は実現できていない。係る高周波電圧は、2次側に整流・平滑化部を設けてもあらわれる。例えば、高周波電圧は、電源回路2の1次側から見た出力負荷端に、換言すれば、1次側のグランド(GND)(例えば、ニュートラル端子)と出力端(Vout)とを抵抗を介して接続するとあらわれる。図3は、電源回路2の1次側から見た出力負荷端にあらわれた高周波電圧波形を示している。なお、図3に示す波形は、シミュレーション結果により得られた波形である。係る高周波電圧が回路動作等に悪影響を及ぼす虞があるため、高周波電圧を極力、小さくすることが望まれる。
【0015】
上述した、1次側から見た負荷端に発生する高周波電圧を小さくするために、フィルターを設ける構成も考えられる。しかしながら、フィルターの構成要素(例えば、LやC)の値を設定する上で特定の条件が必要となってしまい、条件に応じたフィルターをその都度、設計する必要が生じてしまう。以上の点を踏まえつつ、本開示の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において高周波電圧と称する場合には、特に断らない限り、1次側から見た負荷端に発生する高周波電圧を意味する。
【0016】
<一実施形態>
[電源システムの構成例]
図4は、本実施形態に係る電源システム(電源システム5)の構成例を示す図である。電源システム5は、例えば、本実施形態に係る電源回路(電源回路10)と、電源回路10に接続される負荷20を有している。電源回路10は、少なくとも、第1電源ユニット100と第2電源ユニット200とを有している。一対の第1電源ユニット100及び第2電源ユニット200によりペアユニット30が構成される。電源回路10は、複数のペアユニット30を有していても良い。
【0017】
第1電源ユニット100と第2電源ユニット200とが接続されることで、それぞれの出力が合成される。合成された出力、すなわち、電源回路10からの出力(直流電圧)が負荷20に対して供給される。なお、第1電源ユニット100及び第2電源ユニット200の接続態様例については後述する。
【0018】
負荷20としては、テレビジョン受信機、プリンタ等の電子機器を例示することができるが、特定の電子機器に限定されるものではない。また、電源回路10は、アダプタやUSB(Universal Serial Bus)ACアダプタに内蔵されていても良い。
【0019】
[電源回路の構成例]
(第1電源ユニットの構成例)
次に、電源回路10の構成例、具体的には、電源回路10を構成する第1電源ユニット100の構成例についての説明がなされる。
【0020】
図5は、第1電源ユニット100の構成例を示す回路図である。第1電源ユニット100は、例えば、第1入力部101と、第1入力部101に入力された入力電圧に基づいて第1交流電圧を生成する第1交流電圧生成部102と、第1交流電圧を整流及び平滑化する第1整流・平滑化部103と、第1交流電圧生成部102と第1整流・平滑化部103との間に設けられ、キャパシタにより構成された第1絶縁部104と、第1整流・平滑化部103により生成された直流電圧を出力する第1出力部105を有している。
【0021】
第1入力部101には、入力端子Vin1が接続されたラインL11及びグランドラインL12を介して直流電圧が入力される。第1入力部101に入力される直流電圧は、交流電圧を整流、平滑した直流電圧でも良いし、力率改善回路を経由した直流電圧であっても良い。
【0022】
第1交流電圧生成部102が、第1入力部101を介して入力される直流電圧に基づいて交流電圧を生成する。本実施形態に係る第1交流電圧生成部102は、ラインL11とグランドラインL12との間に接続された第1ハイサイドスイッチ102Aと第1ローサイドスイッチ102Bとを有している。第1ハイサイドスイッチ102A及び第1ローサイドスイッチ102Bは、例えば、N型のMOSFETにより構成されている。第1ハイサイドスイッチ102A及び第1ローサイドスイッチ102Bは、制御部50から供給される第1ドライブ信号DS1により、相補的、すなわち、上下のスイッチング素子が同時にオンすることがないように所定の周波数で交互にオンするように制御される。第1交流電圧生成部102で生成された交流電圧波形は、図6に示すように、1サイクルで入力電圧の1/2を中心に上下の振幅と時間が対称になる波形となる。
【0023】
第1交流電圧生成部102により生成された交流電圧は、第1ハイサイドスイッチ102A及び第1ローサイドスイッチ102Bの間の接続点P1からLC共振回路102Cを経由し取り出される。第1交流電圧生成部102により生成された交流電圧は、第1絶縁部104を経由して第1整流・平滑化部103に供給される。
【0024】
なお、第1交流電圧生成部102は、接続点P1に接続されるラインL13に設けられたコイルと、ラインL13とグランドラインL12との設けられたキャパシタにより構成されるLC共振回路102Cを有している。LC共振回路102Cにより、スイッチング損失を低減され、ゼロ電圧スイッチングが実現される。但し、LC共振回路102Cはなくても良い。
【0025】
なお、第1交流電圧生成部102のスイッチング素子の構成は、上下に2個のスイッチング素子の構成を1組としてこれを2組で構成してもよく、その場合、第1交流電圧生成部102により生成された交流電圧はそれぞれの組の上下のスイッチング素子の中点から出力される。
【0026】
第1整流・平滑化部103は、4個のダイオードがブリッジ接続された整流回路103Aと、2個のコイル(ラインL13に接続されるコイルとグランドラインL12に接続されるコイル)と1個のキャパシタ(ラインL13とグランドラインL12との間に接続されるキャパシタ)とにより構成される平滑回路103Bを有している。第1整流・平滑化部103により、第1交流電圧生成部102により生成された交流電圧が直流電圧に変換されて、直流電圧が第1出力部105を介して出力される。
【0027】
第1絶縁部104は、ラインL13に接続されるキャパシタ104Aと、グランドラインL12に接続されたキャパシタ104Bとを有している。第1絶縁部104は、1次側と2次側とをキャパシタを使用して絶縁する。
【0028】
(第2電源ユニットの構成例)
図7は、第2電源ユニット200の構成例を示す回路図である。本実施形態に係る第2電源ユニット200は、第1電源ユニット100と同一の構成とされている。なお、第1電源ユニット100と第2電源ユニット200との間に構成上の差異があっても構わない。
【0029】
第2電源ユニット200は、例えば、第2入力部201と、第2入力部201に入力された入力電圧に基づいて第2交流電圧を生成する第2交流電圧生成部202と、第2交流電圧を整流及び平滑化する第2整流・平滑化部203と、第2交流電圧生成部202と第2整流・平滑化部203との間に設けられ、キャパシタにより構成された第2絶縁部204と、第2整流・平滑化部203により生成された直流電圧を出力する第2出力部205を有している。
【0030】
第2入力部201には、入力端子Vin2が接続されたラインL21及びグランドラインL22を介して直流電圧が入力される。第2入力部201に入力される直流電圧は、交流電圧を整流、平滑した直流電圧でも良いし、力率改善回路を経由した直流電圧であっても良い。
【0031】
第2交流電圧生成部202が、第2入力部201を介して入力される直流電圧に基づいて交流電圧を生成する。本実施形態に係る第2交流電圧生成部202は、ラインL21とグランドラインL22との間に接続された第2ハイサイドスイッチ202Aと第2ローサイドスイッチ202Bとを有している。第2ハイサイドスイッチ202A及び第2ローサイドスイッチ202Bは、例えば、N型のMOSFETにより構成されている。第2ハイサイドスイッチ202A及び第2ローサイドスイッチ202Bは、制御部50から供給される第2ドライブ信号DS2により、相補的、すなわち、上下のスイッチング素子が同時にオンすることがないように交互に所定の周波数でオンするように制御される。
【0032】
第2交流電圧生成部202により生成された交流電圧は、第2ハイサイドスイッチ202A及び第2ローサイドスイッチ202Bの間の接続点P2からLC共振回路202Cを経由し取り出される。第2交流電圧生成部202により生成された交流電圧は、第2絶縁部204を経由して第2整流・平滑化部203に供給される。
【0033】
なお、第2交流電圧生成部202は、接続点P2に接続されるラインL23に設けられたコイルと、ラインL23とグランドラインL22との設けられたキャパシタにより構成されるLC共振回路202Cを有している。LC共振回路202Cにより、スイッチング損失を低減され、ゼロ電圧スイッチングが実現される。但し、LC共振回路202Cはなくても良い。
【0034】
なお、第2交流電圧生成部202のスイッチング素子の構成は、上下に2個のスイッチング素子の構成を1組としてこれを2組で構成してもよく、その場合、第2交流電圧生成部202により生成された交流電圧はそれぞれの組の上下のスイッチング素子の中点から出力される。
【0035】
第2整流・平滑化部203は、4個のダイオードがブリッジ接続された整流回路203Aと、2個のコイル(ラインL23に接続されるコイルとグランドラインL22に接続されるコイル)と1個のキャパシタ(ラインL23とグランドラインL22との間に接続されるキャパシタ)とにより構成される平滑回路203Bを有している。第2整流・平滑化部203により、第2交流電圧生成部202により生成された交流電圧が直流電圧に変換されて、直流電圧が第2出力部205を介して出力される。
【0036】
第2絶縁部204は、ラインL23に接続されるキャパシタ204Aと、グランドラインL22に接続されたキャパシタ204Bを有している。第2絶縁部204は、1次側と2次側とをキャパシタを使用して絶縁する。
【0037】
なお、制御部50は、出力電圧もしくは電流を検出しそれを用いて設定された出力電圧もしくは電流に制御するために第1、第2ドライブ信号DS1、DS2を生成し出力する。制御部50は、電源ユニット毎に設けられても良いし、各電源ユニットに共通する制御部として設けられても良い。
【0038】
(電源回路の動作例)
続いて、電源回路10の動作例に関する説明がなされる。電源回路10は、第1交流電圧生成部102により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧が第2交流電圧生成部202により生成されるように構成されている。換言すれば、電源回路10は、第1交流電圧生成部102により生成される交流電圧に対して位相が反転した交流電圧が第2交流電圧生成部202により生成されるように、それぞれの交流電圧生成部が有するスイッチング素子のオン/オフが制御される。
【0039】
具体的には、第1ドライブ信号DS1と、第1ドライブ信号DS1と同期する第2ドライブ信号DS2とによって、第1ハイサイドスイッチ102Aと第2ハイサイドスイッチ202Aとが相補的に駆動される。
【0040】
より具体的には、所定のスイッチング周期における第1ドライブ信号DS1により、第1ハイサイドスイッチ102Aがオンされ、第1ローサイドスイッチ102Bがオフされる。また、同じスイッチング周期で、第1ドライブ信号DS1と同期する第2ドライブ信号DS2により、第2ハイサイドスイッチ202Aがオフされ、第2ローサイドスイッチ202Bがオンされる。次のスイッチング周期における第1ドライブ信号DS1により、第1ハイサイドスイッチ102Aがオフされ、第1ローサイドスイッチ102Bがオンされる。また、同じスイッチング周期(上述した「次のスイッチング周期」)で、第1ドライブ信号DS1と同期する第2ドライブ信号DS2により、第2ハイサイドスイッチ202Aがオンされ、第2ローサイドスイッチ202Bがオフされる。なお、1個のペアユニット30におけるスイッチング周波数は同じ周波数に設定される。
【0041】
係るスイッチング制御が行われることにより、図8に示すように、第1交流電圧生成部102の動作により得られる交流電圧波形の位相と、第2交流電圧生成部202の動作により得られる交流電圧波形の位相とが反転したものになる。個々の電源ユニットで生成される交流電圧の位相が反転したものになることから、個々の電源ユニットで発生する高周波電圧の波形の位相も反転したものになる。第1電源ユニット100と第2電源ユニット200が接続されていることから、位相が反転した高周波電圧同士が加算されることにより高周波電圧が相殺される。従って、高周波電圧に起因する電源回路の誤動作等を、フィルター等を用いることなく抑制することができる。
【0042】
(電源ユニットの接続態様の例)
続いて、図9及び図10が参照されつつ、第1電源ユニット100と第2電源ユニット200との接続態様の例についての説明がなされる。上述したように、第1電源ユニット100と第2電源ユニット200とが接続されることにより1個のペアユニット30が構成される。
【0043】
図9Aに示される例は、第1電源ユニット100の入力側と第2電源ユニット200の入力側とが直列接続され、第1電源ユニット100の出力側と第2電源ユニット200の出力側とが並列接続されている例である。
【0044】
図9Bに示される例は、第1電源ユニット100の入力側と第2電源ユニット200の入力側とが並列接続され、第1電源ユニット100の出力側と第2電源ユニット200の出力側とが並列接続されている例である。
【0045】
図10Aに示される例は、第1電源ユニット100の入力側と第2電源ユニット200の入力側とが直列接続され、第1電源ユニット100の出力側と第2電源ユニット200の出力側とが直列接続されている例である。
【0046】
図10Bに示される例は、第1電源ユニット100の入力側と第2電源ユニット200の入力側とが並列接続され、第1電源ユニット100の出力側と第2電源ユニット200の出力側とが直列接続されている例である。
【0047】
例えば、入力が400Vのとき、入力側が直列接続であると個々の電源ユニットに200Vが振り分けられるので耐圧の低いスイッチング素子を使用できるメリットがある。また、出力側を直列接続することにより、1個の電源ユニットの出力を直列接続した電源ユニット数分、積み上げることができる。また、入力側及び出力側を並列接続することにより、入力及び出力が変化しないので2個の電源ユニットをそのまま接続することができる。但し、上述した接続態様のうちどの接続態様を採用するかは、電源回路10の適用分野等に応じて適宜、変更することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、位相が反転した高周波電圧が生成されるような制御が行われる。そして、位相が反転した高周波電圧が加算される。従って、高周波電圧が相殺されるので、高周波電圧に起因する回路の誤動作等を抑制することができる。
【0049】
<変形例>
以上、本開示の一実施形態について具体的に説明したが、本開示の内容は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0050】
上述した一実施形態では、電源回路が1個のペアユニット30を有する構成について説明したが、図11に示すように、電源回路が複数のペアユニットを有する構成でも良い。ペアユニットの個数は奇数でも良いし、偶数でも良い(但し、電源ユニット数は偶数になる)。各ペアユニットの接続態様は、直列接続でも良いし、並列接続でも良いし、直列・並列接続が混合された接続態様でも良い。図11では、各ペアユニットの入力側が直列接続され、出力側が並列接続された例が示されている。入力側が直列接続されているので、入力電圧がペアユニットに振り分けられるので、各電源ユニットで耐圧の低いスイッチング素子を使用することができる。
【0051】
図12に示すように、電源回路が複数のペアユニットを有する構成において、各ペアユニットにおける各電源ユニットに対してドライブ信号を構成する制御部50Aが設けられていても良い。制御部50Aは、電源回路が有していても良いし、電源回路とは異なる装置が有していても良い。また、図12に示す電源回路の構成例において、制御部50Aにより電源回路の出力が検出され、電源回路の出力に応じた公知のフィードバック制御が制御部50Aにより行われても良い。
【0052】
図12では、説明の便宜を考慮して、各ペアユニット及び各ペアユニットの電源ユニットに対して通し番号が割り当てられている。具体的には、ペアユニット1、ペアユニット2・・・ペアユニットN、及び、電源ユニット1、電源ユニット2・・・電源ユニット(2N-1)、電源ユニット(2N)のように、通し番号が割り当てられている。
【0053】
図13A及び図13Bは、各電源ユニットの交流電圧生成部に供給されるドライブ信号の一例を示している。図13Aは、奇数番号の電源ユニット1、3・・・(2N-1)のハイサイドスイッチに供給されるドライブ信号、及び、奇数番号の電源ユニット1、3・・・(2N-1)のローサイドスイッチに供給されるドライブ信号の一例を示している。図13Bは、偶数番号の電源ユニット2、4・・・(2N)のハイサイドスイッチに供給されるドライブ信号、及び、偶数番号の電源ユニット2、4・・・(2N)のローサイドスイッチに供給されるドライブ信号の一例を示している。
【0054】
なお、1個のペアユニットの中で、位相が反転した高周波電圧となる制御がなされれば、異なるペアユニット間において、スイッチング周波数やドライブ信号が供給されるタイミングが異なっていても良い。
【0055】
また、図14に示すように、電源回路が、ペアユニット30と制御部50とを含むブロック(ブロック70)を有する構成であっても良い。また、図15に示すように、電源回路が複数のブロック70を有する構成であっても良い。各ブロック70が有する制御部50により同期した制御が行われる。各制御部50は、同じブロック内における電源ユニットに対して第1、第2ドライブ信号DS1、DS2を供給する。複数のブロックにおける入力部は、直列接続又は並列接続、若しくは、並列、直列混合の接続構成でも良い。また、出力部も、直列接続又は並列接続、若しくは、並列、直列混合の接続構成でも良い。
【0056】
図15に示す構成において、ブロック70の制御部50が同じブロック内のペアユニット30の出力を検出するようにしても良い。また、各ペアユニット30の出力に応じた処理が行われても良い。例えば、各ペアユニット30の出力バランスをとる処理が行われても良い。例えば、各ブロック70の制御部50間でペアユニット30の出力を示す情報の送受信が行われる。通信の結果、自身と同じブロック70のペアユニット30の出力が他のペアユニット30の出力に比して小さい場合には、スイッチング周波数を下げるドライブ信号が制御部50から供給され、ペアユニット30の出力を大きくする制御がなされる。反対に、通信の結果、自身と同じブロック70のペアユニット30の出力が他のペアユニット30の出力に比して大きい場合には、スイッチング周波数を上げるドライブ信号が制御部50から供給され、ペアユニット30の出力を大きくする制御がなされる。なお、通信を行うことなく、上述した出力バランスを調整する公知の制御が行われても良い。また、周波数を上下させる方法以外の公知の方法により、出力を調整する制御が行われても良い。
【0057】
電源回路の回路構成は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば、フルブリッジ型の回路構成であっても良い。また、スイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の素子が使用されてもよい。
【0058】
上述の一実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて一実施形態と異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などが含まれてもよい。また、実施の形態および変形例で説明した事項は、技術的な矛盾が生じない限り相互に組み合わせることができる。また、本開示は、電源回路を用いた応用機器(充電器、テレビジョン受信機、プロジェクタ、スピーカ、車載機器、等)、任意の形態によって実現することができる。また、本開示は、制御方法として実現することもできる。
【符号の説明】
【0060】
10:電源回路、30:ペアユニット、50,50A:制御部、100:第1電源ユニット、101:第1入力部、102:第1交流電圧生成部、102A:第1ハイサイドスイッチ、102B:第1ローサイドスイッチ、103:第1整流・平滑化部、104:第1絶縁部、104A,104B:キャパシタ、105:第1出力部、200:第2電源ユニット、201:第2入力部、202:第2交流電圧生成部、202A:第2ハイサイドスイッチ、202B:第2ローサイドスイッチ、203:第2整流・平滑化部、204:第2絶縁部、204A,204B:キャパシタ、205:第2出力部、DS1:第1ドライブ信号、DS2:第2ドライブ信号
図1
図2
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図8
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図10
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図15