(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】光ファイバ接続部品及び光ファイバ接続構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/40 20060101AFI20240925BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240925BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20240925BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G02B6/40
G02B6/02 461
G02B6/26 301
G02B6/36
(21)【出願番号】P 2021555978
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020039883
(87)【国際公開番号】W WO2021095490
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019206145
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 哲也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 傳
(72)【発明者】
【氏名】荒生 肇
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0094460(US,A1)
【文献】特開平10-293232(JP,A)
【文献】特開2004-258193(JP,A)
【文献】特開2004-038005(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164954(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098579(WO,A1)
【文献】特開2017-156490(JP,A)
【文献】国際公開第2016/053674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255-6/27
6/30 -6/34
6/36 -6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一貫通孔を有するガラス板と、
前記ガラス板に固定されて、前記複数の第一貫通孔のそれぞれと共軸である複数の第二貫通孔を有する樹脂フェルールと、
ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバと、を備え、
各光ファイバの先端から露出した前記ガラスファイバが各第一貫通孔内及び各第二貫通孔内に保持され、
前記樹脂フェルールを構成する材料の曲げ弾性率が200℃において5GPa以上であ
り、
各第一貫通孔は前記ガラス板の第一面に向けて拡径する第一テーパ部を有し、各第二貫通孔は前記樹脂フェルールにおける前記第一面に対向した第二面に向けて拡径する第二テーパ部を有している、光ファイバ接続部品。
【請求項2】
前記材料は、液晶ポリマーである、請求項1に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項3】
室温から200℃以上の温度へ加熱した際の前記材料の熱収縮率が0.5%以下である、請求項1または請求項2に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項4】
前記複数の第一貫通孔及び前記複数の第二貫通孔内に保持された前記複数の光ファイバの傾きのばらつきが0.5度以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項5】
前記ガラス板を200℃以上で加熱処理した時の前記ガラス板の表面のP-V値が5μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項6】
前記複数の第一貫通孔は前記ガラス板の一断面において2次元配置されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項7】
前記ガラスファイバは、前記ガラス板の端面よりも50nm~1μm突出している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項8】
前記ガラス板は、第一ガイド孔を有し、
前記樹脂フェルールは、前記第一ガイド孔と共軸である第二ガイド孔を有している、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項9】
前記ガラスファイバの外径は、100μm以下である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項10】
前記複数の光ファイバのそれぞれは、前記ガラスファイバとして、複数のコアと、前記複数のコアを覆うクラッドとを有するマルチコア光ファイバである、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品である第一の光ファイバ接続部品と、前記第一の光ファイバ接続部品における前記複数の光ファイバの配置と一致するように複数の光ファイバが固定された第二の光ファイバ接続部品とが接続された光ファイバ接続構造であって、
前記第一の光ファイバ接続部品の第一の端面及び前記第二の光ファイバ接続部品の第二の端面は、前記複数の光ファイバの光軸に対して傾斜した面であり、
前記第一の端面と前記第二の端面との間に30μm以下の空隙が形成されている、光ファイバ接続構造。
【請求項12】
前記第二の光ファイバ接続部品は、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品であり、
前記第一の光ファイバ接続部品及び前記第二の光ファイバ接続部品の少なくとも一方の前記ガラス板の端面に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有する、請求項11に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項13】
前記第二の光ファイバ接続部品は、樹脂製のフェルールに前記複数の光ファイバが実装されることで構成され、
前記第二の光ファイバ接続部品の端面に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有する、請求項11に記載の光ファイバ接続構造。
【請求項14】
前記第二の光ファイバ接続部品は、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光ファイバ接続部品、または樹脂製のフェルールに前記複数の光ファイバが実装されることで構成された部品であり、
前記光ファイバ接続構造のアダプタ内に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有する、請求項11に記載の光ファイバ接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバ接続部品及び光ファイバ接続構造に関する。
【0002】
本出願は、2019年11月14日出願の日本出願第2019-206145号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、光ファイバと、相手側光コネクタと対向する平坦なフェルール端面を有し、光ファイバを保持するフェルールと、フェルール端面上に設けられて該フェルール端面と相手側光コネクタとの間隔を規定するスペーサと、を備える光コネクタが開示されている。特許文献1の光コネクタによれば、スペーサにより光コネクタ同士の間に空隙を設けることで、フェルール端面の清掃が容易であり、複数本の光ファイバを同時に接続する場合であっても接続に大きな力を必要とせず、調芯作業が容易となる。
【0004】
特許文献2には、複数の光ファイバ挿入孔を有する多芯光コネクタが開示されており、当該多芯光コネクタを形成する樹脂材料として、ポリイミド系樹脂のほかに、液晶ポリマーやポリフェニレン-サルファイド(polyphenylene sulfide:PPS)を用い得ることが示唆されている。
【0005】
特許文献3には、ファイバの位置決めを行いつつ、ファイバを曲げ固定する構造を有する樹脂製の光路変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/073408号明細書
【文献】日本国特開2004-117616号公報
【文献】日本国特開2007-147859号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の光ファイバ接続部品は、
複数の第一貫通孔を有するガラス板と、
前記ガラス板に固定されて、前記複数の第一貫通孔のそれぞれと共軸である複数の第二貫通孔を有する樹脂フェルールと、
ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバと、を備え、
各光ファイバの先端から露出した前記ガラスファイバが各第一貫通孔内及び各第二貫通孔内に保持され、
前記樹脂フェルールを構成する材料の曲げ弾性率が200℃において5GPa以上である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係る光ファイバ接続部品を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の光ファイバ接続部品の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の光ファイバ接続部品が含む複数穴ガラス板の表面を示した図である。
【
図4】
図4は、
図1の光ファイバ接続部品のIV-IV線矢視断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の光ファイバ接続部品において、ガラス板と樹脂フェルールとの間に配置されたガラスファイバを説明するための概念図である。
【
図6】
図6は、実施例に係る樹脂フェルールと比較例に係る樹脂フェルールについて、熱処理を行った時の変形を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例に係る樹脂フェルールを用いた光ファイバ接続部品を熱処理した際の複数穴ガラス板の変形を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第一変形例に係る光ファイバ接続部品の正面図である。
【
図9】
図9は、第二変形例に係る光ファイバ接続部品を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9の光ファイバ接続部品が含むガラス板本体を示す模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第三変形例に係る光ファイバ接続部品を示す図である。
【
図12】
図12は、第四変形例に係る光ファイバ接続部品を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1の光コネクタでは、樹脂材料により構成されたフェルールが複数の孔を有する構造とすることで光ファイバの2次元配置が可能であるが、耐熱性に改善の余地がある。
【0010】
特許文献2では、耐熱性に優れた液晶ポリマーを光コネクタ材料として用いることが示唆されている。一般的に光コネクタに用いられるPPSに比べて、液晶ポリマーは高い成形異方性を有するため、高い成孔精度が要求される光コネクタ用のフェルールを、液晶ポリマーのみを用いて作製することは困難である。
【0011】
特許文献3では、光路変換素子が、断面L字形のブロック状をなす樹脂製の素子本体から形成されている。ファイバの先端の位置決め構造が樹脂材料で構成されていると、紫外線を透過することができないため、例えば、光路変換素子と、シリコンフォトニクス等のSi上に形成された光集積回路(Silicon-Photonic Integrated Circuit:Si-PIC)とのUV接着剤を用いた接着固定を行うことができない。
【0012】
本開示は、耐熱性を向上させるとともに、光ファイバの高精細配置が可能な光ファイバ接続部品及び光ファイバ接続構造を提供することを目的とする。
【0013】
[本開示の効果]
本開示によれば、耐熱性を向上させるとともに、光ファイバの高精細配置が可能な光ファイバ接続部品を提供することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の概要を説明する。
本開示の光ファイバ接続部品は、
(1)複数の第一貫通孔を有するガラス板と、
前記ガラス板に固定されて、前記複数の第一貫通孔のそれぞれと共軸(同軸)である複数の第二貫通孔を有する樹脂フェルールと、
ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂とを含む複数の光ファイバと、を備え、
各光ファイバの先端から露出した前記ガラスファイバが各第一貫通孔内及び各第二貫通孔内に保持され、
前記樹脂フェルールを構成する材料の曲げ弾性率が200℃において5GPa以上である。ここで、「共軸」とは対象物各々の中心軸が一致する位置関係を意味する。
【0015】
上記構成によれば、光ファイバ接続部品全体として耐熱性を有するとともに、ガラス板に第一貫通孔を高精細に形成可能であるため、例えば、シングルモード光ファイバの接続が可能な高精度な位置決めを実現することができる。加えて、ガラスファイバを固定するガラス板は、紫外線を透過可能であるため、光ファイバ接続部品を、例えば、Si-PICなどの光集積回路に接続する場合にUV接着剤を用いることが可能となる。
【0016】
(2)前記材料の一例は、液晶ポリマーである。
【0017】
樹脂フェルールを構成する樹脂材料として液晶ポリマーを用いることにより、樹脂フェルールの曲げ弾性率を200℃において5GPa以上とすることができる。
【0018】
(3)室温から200℃以上の温度へ加熱した際の前記材料の熱収縮率が0.5%以下であると良い。
【0019】
ガラス板の熱変形が大きい場合、接続される光ファイバの傾きが変化してしまい、光損失が発生する可能性がある。これに対して、上記構成によれば、熱収縮率の小さい樹脂フェルールを用いているため、樹脂フェルールの変形に起因するガラス板の変形を抑制することができる。これにより、光ファイバ接続部品に固定された複数の光ファイバを他の光ファイバ接続部品に固定された複数の光ファイバと接続する際に、接続される光ファイバの傾きに起因する光損失の発生を抑制することができる。
【0020】
(4)前記複数の第一貫通孔及び前記複数の第二貫通孔内に保持された前記複数の光ファイバの傾きのばらつき(標準偏差)が0.5度以下であると良い。
【0021】
並列された光ファイバの傾きのばらつきを上記範囲内とすることで、ガラスファイバの光軸と接続相手のファイバの光軸間の方向のずれの発生を抑制でき、接続相手(例えばSi-PICチップ)との低損失な接続が実現できる。
【0022】
(5)前記ガラス板を200℃以上で加熱処理した時の前記ガラス板の表面のP-V値(最大値と最小値の差)が5μm以下であると良い。
【0023】
ガラス板の熱変形を上記範囲内とすることで、光損失の発生を抑制することができる。
【0024】
(6)前記複数の第一貫通孔は前記ガラス板の一断面において2次元配置されていると良い。
【0025】
上記構成によれば、従来のV溝基板を用いた場合に比べて多くの光ファイバを実装でき、ファイバ実装密度が向上する。
【0026】
(7)前記ガラスファイバは、前記ガラス板の端面よりも50nm~1μm突出していると良い。
【0027】
上記構成によれば、当該ガラスファイバと接続相手のファイバとをPC(Physical Contact)接続させることができる。
【0028】
(8)前記ガラス板は、第一ガイド孔を有し、
前記樹脂フェルールは、前記第一ガイド孔と共軸(同軸)である第二ガイド孔を有していると良い。
【0029】
上記構成によれば、第一ガイド孔と第二ガイド孔とを利用することで、ガラス板の第一貫通孔と樹脂フェルールの第二貫通孔との位置決めが容易になる。
【0030】
(9)前記ガラスファイバの外径は、100μm以下であると良い。
【0031】
上記構成によれば、樹脂フェルール内で光ファイバを曲げ固定した際の歪みを小さくすることができる。これにより、全高が低い省スペースな光ファイバ接続部品を提供することができる。また、ガラスファイバを曲げた際の引張歪みや圧縮歪みを抑制することができ、ガラスファイバの断線防止にも貢献できる。
【0032】
(10)前記複数の光ファイバのそれぞれは、前記ガラスファイバとして、複数のコアと、前記複数のコアを覆うクラッドとを有するマルチコア光ファイバであると良い。
【0033】
上記構成によれば、高コア密度を有する光ファイバ接続部品を実現することができる。
【0034】
本開示の光ファイバ接続構造は、
(11)項目(1)から項目(10)のいずれかに記載の光ファイバ接続部品である第一の光ファイバ接続部品と、前記第一の光ファイバ接続部品における前記複数の光ファイバの配置と一致するように複数の光ファイバが固定された第二の光ファイバ接続部品とが接続された光ファイバ接続構造であって、
前記第一の光ファイバ接続部品の第一の端面及び前記第二の光ファイバ接続部品の第二の端面は、前記複数の光ファイバの光軸に対して傾斜した面であり、
前記第一の端面と前記第二の端面との間に30μm以下の空隙が形成されている。
【0035】
上記構成によれば、良好な光接続が可能であって、且つ、ガラス板の端面からガラスファイバを突出させるための追加加工が不要となる。
【0036】
(12)前記第二の光ファイバ接続部品は、項目(1)から項目(10)のいずれかに記載の光ファイバ接続部品であり、
前記第一の光ファイバ接続部品及び前記第二の光ファイバ接続部品の少なくとも一方の前記ガラス板の端面に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有すると良い。
【0037】
(13)前記第二の光ファイバ接続部品は、樹脂製のフェルールに前記複数の光ファイバが実装されることで構成され、
前記第二の光ファイバ接続部品の端面に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有すると良い。
【0038】
(14)前記第二の光ファイバ接続部品は、項目(1)から項目(10)のいずれかに記載の光ファイバ接続部品、または樹脂製のフェルールに前記複数の光ファイバが実装されることで構成された部品であり、
前記光ファイバ接続構造のアダプタ内に、前記空隙を形成するように構成されたスペーサを有すると良い。
【0039】
第一の端面と第二の端面との間に空隙を与えるためのスペーサは、上記項目(12)から項目(14)のいずれかの構成で設けられることが好ましい。
【0040】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0041】
また、本実施形態の説明では、本実施形態の理解を容易にするために、適宜、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸について言及する。なお、これらの方向は、
図1に示す光ファイバ接続部品1に設定された相対的な方向である。従って、光ファイバ接続部品1の回転に伴いX軸、Y軸、Z軸も回転する。
【0042】
(第一実施形態)
図1~
図5を参照して第一実施形態に係る光ファイバ接続部品1について以下に説明する。
図1は、光ファイバ接続部品1を示す外観斜視図である。
図2は、
図1の光ファイバ接続部品1の分解斜視図である。
図3は、
図1の光ファイバ接続部品1が含むガラス板の表面を示した図である。
図4は、
図1の光ファイバ接続部品1のIV-IV線矢視断面図である。
図5は、
図4に関連して、
図1の光ファイバ接続部品1において、ガラス板と樹脂フェルールとの間に配置されたガラスファイバを説明するための概念図である。光ファイバ接続部品1は、例えば光集積回路チップ等を含む電子基板と、構内配線(または外部伝送路)を光学的に接続するために用いられる。
【0043】
図1に示すように、光ファイバ接続部品1は、光ファイバ10と、光ファイバ10に並べて配置される光ファイバ10aとを有する。光ファイバ10,10aは、いずれも例えば途中に屈曲部分(屈曲部13)を有しており、光ファイバ10,10aの一端がファイバ固定部品20を介して電子基板に固定され、光ファイバ10,10aの他端がコネクタ(図示省略)を介して構内配線に接続される。
【0044】
図2に示すように、光ファイバ10,10aは、図示のY方向に沿って複数本並べられたガラスファイバ11を有する。ガラスファイバ11は、石英系ガラスからなるコアと当該コアを覆うクラッドとを有している。ガラスファイバ11の外径は、例えば100μm以下である。なお、光ファイバ10,10aは、単一コアと当該単一コアを覆うクラッドとを有するガラスファイバを含むシングルコア光ファイバであってもよく、複数のコアと当該複数のコアを一括して覆うクラッドとを有するガラスファイバを含むマルチコア光ファイバであってもよい。
【0045】
ガラスファイバ11の外側には個別被覆樹脂層12が施されている。加えて、ガラスファイバ11の屈曲部13よりも後方(図示のXの正方向)では、個別被覆樹脂層12の周囲が一括被覆樹脂層14で覆われている。
なお、ガラスファイバ11は、柔軟な曲げ形状に対応可能とするため、低曲げ損失ファイバであることが望ましい。低曲げ損失ファイバとするには、コアの屈折率を高くした構造や、トレンチ構造と呼ばれる屈折率構造を適用してコアへの光の閉じ込めを強くしたファイバが好適に用いられる。また、ガラスファイバ11の組成は、SiO2ガラスを用いて適宜屈折率を制御するためのドーパントを添加することで作成できる。コアは、例えば、GeO2が添加されたSiO2ガラス、あるいはGeO2とFが共添加されたSiO2ガラスで構成してもよい。クラッドは、純SiO2ガラス、ないしはフッ素が添加されたSiO2ガラスで構成してもよい。これにより、経済性と形状制御性の良い光ファイバを得ることができる。
【0046】
また、光ファイバの強度を高くするため、ガラスファイバ11の外周にカーボンコートを行う方法、また線引き時の熱履歴を調整してガラスファイバ11の外周に圧縮歪みを与える方法等を好適に組み合わせることができる。
図1に示した屈曲された光ファイバ10,10aは、予め加熱して曲げられていてもよい。この場合、屈曲部13におけるガラスファイバ11を加熱前に露出させる。加熱手段としては、バーナ、CO
2レーザ、アーク放電、ヒータ等を用いることができる。
【0047】
CO2レーザは、照射強度、照射範囲、照射時間を容易に調整することができるため、曲率分布の精緻な制御に有利な特性を有する。CO2レーザの一般的な波長である10μm付近では、ガラスは不透明であるため、CO2レーザの照射エネルギーはガラスファイバ11の表層で吸収され、再輻射と熱伝導により伝わると考えられる。CO2レーザのパワーが高すぎる場合、ガラスファイバ11の表層温度は、ガラスが蒸発する温度まで急峻に上昇し形状を維持できなくなる。このため、CO2レーザの照射パワーは、ガラスファイバ11の表層のガラスが蒸発せず、且つ加熱されるガラスファイバ11の断面が、所定の時間、作業点(104デジパスカル秒)以上の温度に上昇して歪みを除去できるように、適切に調整される。CO2レーザで曲げた場合におけるガラスファイバ11の温度の冷却速度は、104℃/s以下とし、歪みを取り除くためにゆっくり冷やすことが望ましい。
【0048】
ファイバ固定部品20は、複数穴ガラス板21(ガラス板の一例)と、複数穴樹脂フェルール31(樹脂フェルールの一例)とから構成されている。
図2に示すように、複数穴ガラス板21は、例えば直方体形状のガラス板本体22を有する。ガラス板本体22は、紫外線に対して透明である。ガラス板本体22の矩形状の表面23は、複数穴樹脂フェルール31の裏面34に対向配置される。ガラス板本体22の矩形状の裏面24は、電子基板に対向配置される。
【0049】
ガラス板本体22の表面23と裏面24との間の厚さ(図示のZ方向の長さ)は、例えば1mm程度と薄く、ガラス板本体22には、表面23と裏面24とを貫通する複数の第一貫通孔25を有している。
図3に示すように、複数の第一貫通孔25は、例えば、ガラス板本体22の幅方向(図示のY方向)及び長さ方向(図示のX方向)に沿って2次元的に配置されている。第一貫通孔25内には、ガラスファイバ11が保持される。
【0050】
第一貫通孔25は、例えば、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)等のドライエッチングを組み合わせたプロセスや、レーザを用いた孔開け技術を用いて作成することができる。例えば、第一貫通孔25の位置精度は±1μm以下であることが望ましい。なお、第一貫通孔25の位置が所定の設計位置に対し1μm以下の誤差を持ち、第一貫通孔25の内径が所定の径に対して±1μm以下を実現できるガラス孔開け技術であれば、上記の技術に限定されない。本例では、ガラス板本体22が複数の第一貫通孔25を有する例を挙げて説明したが、第一貫通孔は1個であってもよい。
【0051】
図示のY方向でみたガラス板本体22の両端近傍には、ガイド孔26を有する。
図2の破線で示すように、複数穴樹脂フェルール31は、ガラス板本体22のガイド孔26に対応する位置にガイド孔37を有している。ガイドピン45を、ガラス板本体22のガイド孔26と複数穴樹脂フェルール31のガイド孔37にそれぞれ挿通することで、第一貫通孔25と複数穴樹脂フェルール31の
図4で説明する第二貫通孔38とを容易に共軸の関係に位置合わせすることができる。
【0052】
なお、ガイドピン45は、複数穴ガラス板21と複数穴樹脂フェルール31を固定した後に、複数穴ガラス板21や複数穴樹脂フェルール31から引き抜いてもよい。ガイドピン45を引き抜かずに残したままでは、複数穴ガラス板21の熱膨張係数と複数穴樹脂フェルール31の熱膨張係数との差が大きい場合には、複数穴ガラス板21が破損するおそれがあるからである。
【0053】
複数穴樹脂フェルール31は、
図1に示すように、側面視で略L字状のフェルール本体32を有し、複数穴ガラス板21に載置される。
図2に示すように、フェルール本体32は、光ファイバ10aを載置可能な表面33と、表面33の一端側でガラス板本体22の表面23に対向配置される裏面34とを有している。フェルール本体32の表面33の一端には、光ファイバ10,10aの屈曲部13に対向する正壁面35が設けられる。また、フェルール本体32の表面33の側方には、光ファイバ10,10aの側端にそれぞれ対向する側壁面36を有している。
【0054】
図4に示すように、フェルール本体32の表面33から裏面34までの厚さ(図示のZ方向の長さ)は、ガラス板本体22の表面23から裏面24までの厚さ(1mm)よりも大きい。フェルール本体32は、表面33と裏面34とを貫通する複数の第二貫通孔38を有している。第二貫通孔38は、第一貫通孔25と同様に、フェルール本体32の幅方向(図示のY方向)及び長さ方向(図示のX方向)に沿って2次元で配置されている。各第二貫通孔38内には、各第一貫通孔25内と同様に、ガラスファイバ11が保持される。
【0055】
第二貫通孔38は、フェルール本体32の表面33近傍に、光ファイバの個別被覆樹脂層12を遊嵌可能なファイバ保持孔39を有している。なお、第一貫通孔25や第二貫通孔38の外径は、光ファイバの先端から露出したガラスファイバ11の外径よりも大きい。
【0056】
本実施形態では、略L字状のフェルール本体32を有した複数穴樹脂フェルール31の例を挙げて説明したが、ガラス板本体22の表面23に対向配置される裏面34以外の部分については、様々な形状を採用することができる。複数穴樹脂フェルールは、例えば
図1に示した屈曲光ファイバに適用可能な形状に限定されず、屈曲してない直線状の光ファイバに適用可能な形状であってもよい。
【0057】
図4に示すように、フェルール本体32は、その裏面34の外周部に、ガラス板本体22側へ突出する突起部40を有する。この突起部40が、複数穴ガラス板21の表面23に接触して固定されることで、複数穴ガラス板21の表面23に位置する第一貫通孔25の開口と、複数穴樹脂フェルール31の裏面34に位置する第二貫通孔38の開口とが、所定の間隔(
図4中のHで示す)で離隔される。複数穴ガラス板21の表面23と複数穴樹脂フェルール31の裏面34との間に位置するガラスファイバ11の周囲や、隣接するガラスファイバ11の間であって、ガラスファイバ11の周囲を除いた領域には、例えば空気層42が存在する。なお、隣接するガラスファイバ11の間であって、ガラスファイバ11の周囲を除いた領域については、ヤング率が100MPa以下の樹脂を充填してもよい。
【0058】
ところで、仮に、複数穴ガラス板の表面と複数穴樹脂フェルールの裏面とを隙間なく接触させた場合には、複数穴ガラス板の熱膨張係数と複数穴樹脂フェルールの熱膨張係数との差により、温度変化に伴ってガラスファイバにせん断力が掛かり、ガラスファイバが断線する場合がある。
これに対して、本実施形態では、複数穴ガラス板21の表面23と複数穴樹脂フェルール31の裏面34を所定の間隔Hで離隔させることで、ガラスファイバ11が曲がる余裕を設けている。従って、
図5に示すように、温度変化に伴って、複数穴ガラス板21の第一貫通孔25と当該第一貫通孔25に対応する複数穴樹脂フェルール31の第二貫通孔38との位置がずれた場合であっても、ガラスファイバ11にせん断力が掛かり難くなる。そのため、第一貫通孔25と第二貫通孔38との間におけるガラスファイバ11の断線を防止することができる。加えて、第一貫通孔25及び第二貫通孔38の外径をガラスファイバ11の外径よりも大きくしているため、光ファイバ接続部品1が通常使用される-40℃~85℃の範囲での温度変化があっても、第一貫通孔25及び第二貫通孔38とガラスファイバ11との接触を容易に回避でき、この点もガラスファイバ11の断線防止に貢献する。
【0059】
なお、ガラス板本体22に設けられた第一貫通孔25は、ガラスファイバ11を保持するストレート部25aと、ガラス板本体22の表面23に向けて拡径するテーパ部25bとを有している。同様に、フェルール本体32に設けられた第二貫通孔38は、ガラスファイバ11を保持するストレート部38aと、フェルール本体32の裏面34に向けて拡径するテーパ部38bとを有している。このように、テーパ部25b,38bを設けることで、
図5に示すように、第一貫通孔25の開口と第二貫通孔38の開口との間隔は、ガラス板本体22の表面23からフェルール本体32の裏面34までの間隔Hよりも、テーパ部25b,38bだけさらに大きくなる。そのため、ガラスファイバ11に掛かるせん断力をより小さくすることができる。
【0060】
複数穴樹脂フェルール31を構成する樹脂材料としては、例えば、液晶ポリマーを用いることが好ましい。液晶ポリマーとして、以下の例を挙げることができる。
(1)エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、
【化1】
(2)フェノール及びフタル酸(例えば4,4-ジヒドロキシビフェノールとテレフタル酸)とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、
【化2】
(3)ポリアリレート、例えば2,6-ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、
【化3】
液晶ポリマーには、異方性やウエルド強度の低さを改良するために、無機フィラーが混錬されていることが望ましい。無機フィラーとしては球状、または繊維状のガラスフィラーを好適に用いることができる。
【0061】
液晶ポリマーは、ガラス転移点が90℃以上であるため、光ファイバ接続部品1が通常使用される-40℃~+85℃の領域において変性せず、湿度に対しても高い耐久性を有する。加えて、複数穴樹脂フェルール31の樹脂材料として、上記のような液晶ポリマーを用いることで、複数穴樹脂フェルール31の曲げ弾性率が200℃において5GPa以上、さらに好ましくは、260℃において5GPa以上を達成できる。
【0062】
液晶ポリマーは、流動性も良く、比較的成形しやすい。液晶ポリマーを用いた複数穴樹脂フェルール31は種々な形状で成形できるので、光路方向を変える、光ファイバ接続部品1の低背化を図る等の光ファイバ接続部品1に対する要求に容易に応えることができる。
【0063】
図6は、液晶ポリマー(LCP)で作成された実施例に係る複数穴樹脂フェルールと、従来材料であるポリフェニレン-サルファイド(polyphenylene sulfide:PPS)で作成された比較例に係る複数穴樹脂フェルールを、それぞれ260℃で5分間の熱処理を行った時の変形を示すグラフである。
図6では、実施例及び比較例に係る樹脂フェルールの端面の凹凸をグラフ化して示している。
【0064】
図6に示すように、PPSを用いた比較例では、複数穴樹脂フェルール端面の凹凸がP-V(Peak-Valley)値で12μm以上となった。既存の樹脂フェルール材料であるPPSは、ガラス転移点が90℃付近であるため、熱処理後の変形が大きくなる。このような熱変形の大きい樹脂材料に複数穴ガラス板を張り付けて熱処理を行うと、熱処理後の複数穴ガラス板にも大きな変形が与えられる。
【0065】
一方、液晶ポリマーを用いた実施例では、複数穴樹脂フェルール端面の凹凸がP-V値で5μm以下となった。耐熱性に優れた液晶ポリマーを樹脂フェルール材料として用いることで、一般的なリフロー温度である260℃で熱処理をした場合にも、PPSと比べて熱変形を大幅に抑制できることが確認できた。具体的には、液晶ポリマーを用いることで、室温(例えば、20℃)から200℃以上、好ましくは室温から260℃以上の温度へ加熱した際の複数穴樹脂フェルールの熱収縮率を0.5%以下に抑えることが可能となる。
【0066】
図7は、実施例に係る液晶ポリマーを用いた複数穴樹脂フェルールと複数穴ガラス板を含む光ファイバ接続部品を260℃で5分間の熱処理を行った時の複数穴ガラス板の変形を示すグラフである。
図7に示すように、熱処理後の複数穴ガラス板の端面の凹凸はP-V値で0.5μm程度となり、ファイバの位置精度を確保するために十分に許容できる変形量であるP-V値で5μm、好ましくはP-V値で1μmを達成できた。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバ接続部品1は、複数の第一貫通孔25を有する複数穴ガラス板21と、複数穴ガラス板21に固定されて、複数の第一貫通孔25のそれぞれと共軸である複数の第二貫通孔38を有する複数穴樹脂フェルール31と、第一貫通孔25内及び第二貫通孔38内に保持されるガラスファイバ11を含む複数の光ファイバ10,10aと、を備えている。そして、複数穴樹脂フェルール31は、曲げ弾性率が200℃において5GPa以上である樹脂材料から構成されている。曲げ弾性率が200℃において5GPa以上となることを実現するために、複数穴樹脂フェルール31を構成する樹脂材料として液晶ポリマーが用いられる。これにより、光ファイバ接続部品1全体として耐熱性を向上させることができる。加えて、柔軟な形状を持つことが可能な複数穴樹脂フェルール31を用いることで光ファイバ10,10aの保護や、曲げ形状の固定を可能とする。
【0068】
さらに、光集積回路への位置決め構造を複数穴ガラス板21で形成しているため、長い貫通孔の位置や径を高精度に形成できる。そのため、複数穴ガラス板21に対して第一貫通孔25を2次元に配置することができ、高ch密度の光ファイバ接続部品1を得ることができる。具体的には、複数穴ガラス板21の面積をS、実装されたファイバ数がnとしたときに、n/Sが10/mm2を超える高ch密度の光ファイバ接続部品1を得ることができる。加えて、上述のように、複数穴ガラス板21が紫外線に対して透明であるため、複数穴ガラス板21を、UV接着剤を用いて電子基板、例えば、Si-PIC等の光集積回路に固定することができる。
【0069】
ところで、複数穴ガラス板の熱変形が大きい場合、光ファイバ接続部品が備えるガラスファイバとシリコンフォトニクスチップ(SiPHチップ)との結合において、光損失が発生するおそれがある。複数穴ガラス板の変形は、特に複数穴ガラス板のサイズを大きくする必要のある100ch以上の多chの光ファイバ接続部品を実現する際に顕著な問題となる。ただし、複数穴ガラス板の熱変形はガラス板そのものに由来するのではなく、複数穴樹脂フェルールが熱変形することで主に発生する。
これに対して、本実施形態に係る光ファイバ接続部品1では、室温から200℃以上、好ましくは室温から260℃以上に加熱した際の熱収縮が0.5%以下となる樹脂材料である液晶ポリマーから構成された複数穴樹脂フェルール31を用いている。そのため、PPSを用いた既存の複数穴樹脂フェルールと比べて、熱変形を大幅に抑制することができる。複数穴樹脂フェルール31の熱変形が抑制されることにより、熱処理後の複数穴ガラス板21の変形量もP-V値で5μm以下、好ましくは1μm以下に抑えられる。そのため、ガラスファイバ11の光軸と接続相手のファイバの光軸との間の方向のずれ、すなわち、ch間の結合角度差を実質的に無視できる水準に維持することができる。
【0070】
なお、本実施形態によれば、熱処理後の複数穴ガラス板21の変形量が少ないため、複数穴ガラス板21に固定されたガラスファイバ11の傾きのばらつき(角度ばらつき)が0.5度以下となる。これにより、ガラスファイバ11とSiPhチップとの結合角度差が抑制され、光損失の発生を抑えることができる。これにより、SiPhチップの表面結合方法として一般的に用いられるグレーティングカプラと光ファイバ10,10aとの結合効率の低下を抑制することができる。
【0071】
本実施形態において、光ファイバ10,10aは、複数のコアと当該複数のコアを覆うクラッドとを有するガラスファイバ11を有するマルチコア光ファイバであってもよい。マルチコア光ファイバを適用することで、例えば、1つのSi-PICから100chを超えるような高密度な光の入出力を必要とする形態にも対応することができる。
【0072】
(第一変形例)
図8は、第一変形例に係る光ファイバ接続部品1Aの正面図である。
図8に示す光ファイバ接続部品1Aのように、複数穴ガラス板21の第一貫通孔25内に保持されたガラスファイバ11は、複数穴ガラス板21の裏面24よりも突出していてもよい。この場合、複数穴ガラス板21の裏面24からのガラスファイバ11の突出量は、例えば、50nm~1μm程度である。このように、ガラスファイバ11が複数穴ガラス板21の裏面24よりも突出していることで、当該ガラスファイバ11の端面を、接続相手側の光コネクタから突出したガラスファイバと、PC(Physical Contact)接続させることができる。ただし、本実施形態で用いられる複数穴ガラス板21は、ガラスファイバ11と組成が略同一となるため、従来の樹脂フェルールで用いられる通常の研磨工程では複数穴ガラス板21からガラスファイバ11を突出させることが困難である。そのため、ガラスファイバ11を突出させるためには、複数穴ガラス板21の裏面24のレーザ加工やエッチング加工等の追加加工が必要となる。
【0073】
(第二変形例)
上記の第一実施形態では、ガラス板本体22の裏面24(及び表面23)に対して垂直方向(図示のZ方向)に第一貫通孔25が延びた状態の例を説明したが、この例に限られない。
図9は、第二変形例に係る光ファイバ接続部品を示す概念図である。
図9では、光ファイバ接続部品1Bと、当該光ファイバ接続部品1Bの接続相手である光ファイバ接続部品1Cとが図示されている。
図9では、説明のため、ガラス板本体22B,22Cと、当該ガラス板本体22B,22Cに保持された部分のガラスファイバ11のみを断面図として表現している。
【0074】
図9に示す光ファイバ接続部品1Bにおいては、複数穴ガラス板21Bの裏面24B(第一の端面の一例)が、ガラスファイバ11の光軸に対して垂直ではない傾斜面である。具体的には、ガラスファイバ11の光軸と複数穴ガラス板21Bの裏面24Bとのなす角θを75度以上85度以下とすることが好ましい。複数穴ガラス板21Bは、例えば、
図10に示すように、ガラス板本体22Bの裏面24Bに垂直な線に対して一定の角度で傾いた状態で第一貫通孔25のストレート部25aを有する。具体的には、ガラス板本体22Bの裏面24Bに垂直な線と第一貫通孔25のストレート部25aとのなす角φを8度とすることが好ましい。
【0075】
光ファイバ接続部品1Bと同様に、接続相手の光ファイバ接続部品1Cが備える複数穴ガラス板21Cの裏面24C(第二の端面の一例)は、ガラスファイバ11の光軸に対して垂直ではない傾斜面である。光ファイバ接続部品1Cは、光ファイバ接続部品1Bと同一構成の部品であり、光ファイバ接続部品1Bの複数穴ガラス板21Bの裏面24Bと、光ファイバ接続部品1Cの複数穴ガラス板21Cの裏面24Cとが平行となった状態で、両光ファイバ接続部品1B,1C同士が固定される。
【0076】
加えて、光ファイバ接続部品1Bの裏面24Bと光ファイバ接続部品1Cの裏面24Cとの間に空隙を与えるため、
図9に示すように、光ファイバ接続部品1B,1Cのうち一方の光ファイバ接続部品1Bの裏面24Bはスペーサ50を有する。光ファイバ接続部品1Bと光ファイバ接続部品1Cとが固定された状態において、光ファイバ接続部品1Bのガラスファイバ11の端面と光ファイバ接続部品1Cのガラスファイバ11の端面との間に形成される空隙は、スペーサ50の膜厚によって規定される。スペーサ50の膜厚は、例えば、30μm以下、好ましくは、20μm以下である。このように、光ファイバ接続部品1B,1C間に形成された空隙を介して、光ファイバ接続部品1Bのガラスファイバ11と光ファイバ接続部品1Cのガラスファイバ11とが対向配置されることで、ガラスファイバ11同士が光学的に接続される。
【0077】
なお、複数穴ガラス板21Bのガラス板本体22Bと同様に、スペーサ50も耐熱性を有することが好ましい。そのため、スペーサ50は、例えば、液晶ポリマーやテフロン(登録商標)で形成された薄膜をガラス板本体22B上に溶着することで形成され得る。あるいは、スペーサ50は、複数穴ガラス板21Bのうちガラスファイバ11を含む部位を選択的にエッチングして部分的に凹型とすることで形成され得る。
【0078】
以上説明したように、第二変形例に係る光ファイバ接続部品1B,1Cは、複数穴ガラス板21B,21Cの裏面24B,24Cがガラスファイバ11の光軸に対して垂直ではない傾斜面であり、且つ、光ファイバ接続部品1Bの裏面24Bと光ファイバ接続部品1Cの裏面24Cとの間に30μm以下の空隙を与えて近接させるように構成されている。これにより、PC接続をすることなくガラスファイバ11同士を光学的に接続することができ、且つ、フレネル反射損失を抑制しつつ低損失な接続を行うことができる。なお、ガラス板本体22B,22Cの裏面24B,24Cの傾斜角度は用いる光ファイバの種類により異なるが、一般的なシングルモード光ファイバを用いて、θ=82°とし、光ファイバ接続部品1B,1C間の空隙の距離、すなわち、スペーサ50の高さを20μmとした場合、光ファイバの挿入損失は0.5dB以下、反射損失は40dB以上(反射率0.0001以下)となる。
【0079】
(第三変形例)
図9に示す第二変形例では、複数穴ガラス板と複数穴樹脂フェルールとから構成された光ファイバ接続部品1B,1Cのうち一方の光ファイバ接続部品1Bのガラス板本体22Bにスペーサ50を設けた例を説明したが、この例に限られない。
図11は、第三変形例に係る光ファイバ接続部品を示す概念図である。
図11では、光ファイバ接続部品1Dと、当該光ファイバ接続部品1Dの接続相手である光コネクタ100とが図示されている。
【0080】
第二変形例の光ファイバ接続部品1B,1Cと同様に、第三変形例に係る光ファイバ接続部品1Dが備える複数穴ガラス板21D(ガラス板本体22D)の裏面24Dは、ガラスファイバ11の光軸に対して垂直ではない傾斜面である。光ファイバ接続部品1Dの接続相手としては、既存の樹脂フェルール102を用いた光コネクタ100が用いられる。具体的には、光コネクタ100は、例えばPPSから構成される樹脂フェルール102により光ファイバが固定されることで構成されている。樹脂フェルール102の端面からガラスファイバ11の先端が5μm~10μm程度突出している。樹脂フェルール102の端面104にはスペーサ106を有する。このように、光ファイバ接続部品1Dの接続相手である光コネクタ100の樹脂フェルール102の端面104にスペーサ106を設けることにより、複数穴ガラス板21Dと液晶ポリマーからなる複数穴樹脂フェルール31から構成された光ファイバ接続部品1Dには追加加工が不要となる。この構成によっても、光ファイバ接続部品1Dのガラスファイバ11の端面と光コネクタ100のガラスファイバの端面との間に空隙を与えてガラスファイバ同士を近接させることができるため、第二変形例と同様の効果を奏することができる。
【0081】
(第四変形例)
図12は、第四変形例に係る光ファイバ接続部品を示す概念図である。
図12では、光ファイバ接続部品1Eと、当該光ファイバ接続部品1Eの接続相手である光ファイバ接続部品1Fと、光ファイバ接続部品1E,1Fを接続状態で保持するアダプタ60と、が図示されている。
【0082】
第二変形例の光ファイバ接続部品1B,1Cと同様に、第四変形例に係る光ファイバ接続部品1E,1Fが備える複数穴ガラス板21E,21Fの裏面24E,24Fは、ガラスファイバ11の光軸に対して垂直ではない傾斜面である。光ファイバ接続部品1E,1Fを保持するアダプタ60は、光ファイバ接続部品1Eと光ファイバ接続部品1Fが両側から挿通される開口部61を有しており、開口部61の内部には、その中央部において内側に突出するようにスペーサ62を有する。このように、光ファイバ接続部品1E,1Fを保持するアダプタ60内にスペーサ62を設けることにより、光ファイバ接続部品1E,1Fには追加加工が不要となる。この構成によっても、光ファイバ接続部品1Eのガラスファイバ11の端面と接続相手の光ファイバ接続部品1Fのガラスファイバ11の端面との間に空隙を与えてガラスファイバ11同士を近接させることができるため、第二変形例と同様の効果を奏することができる。
【0083】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態はあくまでも一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解される。このように、本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。例えば、樹脂フェルールを構成する材料は、液晶ポリマーでなくても、請求の範囲に書かれた物性値を有していればよい。
【符号の説明】
【0084】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 光ファイバ接続部品
10,10a 光ファイバ
11 ガラスファイバ
12 個別被覆樹脂層
13 屈曲部
14 一括被覆樹脂層
20 ファイバ固定部品
21,21B,21C,21D,21E,21F 複数穴ガラス板(ガラス板の一例)
22,22B,22C,22D ガラス板本体
23,33 表面
24,24B,24C,24D,24E,24F,34 裏面
25 第一貫通孔
25a,38a ストレート部
25b,38b テーパ部
26,37 ガイド孔
31 複数穴樹脂フェルール(樹脂フェルール102の一例)
32 フェルール本体
35 (フェルール本体32の)正壁面
36 (フェルール本体32の)側壁面
38 第二貫通孔
39 ファイバ保持孔
40 突起部
42 空気層
45 ガイドピン
50,62,106 スペーサ
60 アダプタ
61 開口部
100 光コネクタ
102 樹脂フェルール
104 (樹脂フェルール102の)端面