IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許7559769色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置
<>
  • 特許-色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 図1
  • 特許-色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 図2
  • 特許-色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 図3
  • 特許-色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 図4
  • 特許-色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】色変換シートならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240925BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240925BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240925BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240925BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240925BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20240925BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240925BHJP
【FI】
G02B5/20
F21S2/00 481
F21V9/32
G02F1/13357
G09F9/30 349B
H10K59/38
F21Y115:10
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021557266
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033673
(87)【国際公開番号】W WO2022070877
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2020164821
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河原 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】神崎 達也
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039142(WO,A1)
【文献】特開2019-219512(JP,A)
【文献】特開2018-124413(JP,A)
【文献】特開2017-129743(JP,A)
【文献】特開2014-082191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
H10K 50/00-102/20
G02F 1/13357
G09F 9/30
F21V 9/32
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、
前記色変換シートが少なくとも色変換層(A)、色変換層(B)、樹脂層および基材を含み、
前記色変換層(A)はピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を含有し、
前記色変換層(B)はピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、
前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、
色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、樹脂層の屈折率をnとしたとき、nA1、A2およびnが以下の(1)または(2)の関係を満たす色変換シート:
(1) nA1>nかつnA2>n
(2) nA1<nかつnA2<n
【請求項2】
前記nA1、nA2およびnが前記(1)の関係を満たす請求項1に記載の色変換シート。
【請求項3】
前記nA1、nA2およびnが0.15≧nA1-n≧0.05かつ0.15≧nA2-n≧0.05の関係を満たす請求項1または2に記載の色変換シート。
【請求項4】
前記nA1、nA2およびnが0.15≧n-nA1≧0.05かつ0.15≧n-nA2≧0.05の関係を満たす請求項1に記載の色変換シート。
【請求項5】
前記色変換シートのヘイズ値が50%以上、75%以下である請求項1~4いずれかに記載の色変換シート。
【請求項6】
前記色変換シートが色変換層(A)、樹脂層、色変換層(B)の順に直接隣接している請求項1~5いずれかに記載の色変換シート。
【請求項7】
前記発光材料(a)および/または発光材料(b)が、有機発光材料である請求項1~6いずれかに記載の色変換シート。
【請求項8】
前記有機発光材料が一般式(1)で表される化合物を含有する、請求項7に記載の色変換シート:
【化1】
Xは、C-RまたはNである;R~Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
【請求項9】
入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、
前記色変換シートが少なくとも色変換層(A)、色変換層(B)、樹脂層および基材を含み、
前記色変換層(A)はピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を含有し、
前記色変換層(B)はピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、
前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、
前記色変換層(A)および前記色変換層(B)のいずれか、あるいは両方に散乱粒子を含有し、前記色変換層(A)のヘイズをHAと前記色変換層(B)のヘイズをHBとしたとき、
|H-H|≧20%である色変換シート。
【請求項10】
前記色変換層(A)および前記色変換層(B)のいずれか、あるいは両方に散乱粒子を含有する請求項1~8いずれかに記載の色変換シート。
【請求項11】
前記色変換層(A)における散乱粒子の含有量が前記色変換層(B)における散乱粒子の含有量よりも大きい請求項9または10に記載の色変換シート。
【請求項12】
前記色変換層(B)における散乱粒子の含有量が前記色変換層(A)における散乱粒子の含有量よりも大きい請求項9または10に記載の色変換シート。
【請求項13】
前記散乱粒子がチタニアを含む請求項9~12いずれかに記載の色変換シート。
【請求項14】
前記散乱粒子の平均粒径が100~500nmである請求項9~13いずれかに記載の色変換シート。
【請求項15】
前記散乱粒子が、アルミナ粒子、シリカ粒子およびシリコーン樹脂粒子から選ばれた粒子を含み、色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、色変換層(A)に含まれる散乱粒子の屈折率をnD1、色変換層(B)に含まれる散乱粒子の屈折率をnD2としたとき、nA1、nA2、nD1およびnD2が0.03≦|nA1-D1|≦0.3および/または0.03≦|nA2-D2|≦0.3を満たす請求項9~12いずれかに記載の色変換シート。
【請求項16】
前記樹脂層がシリコーン樹脂を含む請求項1~15いずれかに記載の色変換シート。
【請求項17】
入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、
前記色変換シートが少なくとも色変換層、樹脂層および基材をこの順に含み、
前記色変換層が、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)およびピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、かつ、
前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、
色変換層の屈折率をnA、樹脂層の屈折率をnB、基材の屈折率をnとしたとき、nA>nBかつnB<nである色変換シート。
【請求項18】
光源および請求項1~17のいずれかに記載の色変換シートを含む、光源ユニット。
【請求項19】
前記光源が400nm以上500nm以下の範囲に極大発光を有する発光ダイオードである、請求項18に記載の光源ユニット。
【請求項20】
前記色変換シート以外の光学シートをさらに含む請求項18または19に記載の光源ユニット。
【請求項21】
前記色変換シートより上に含まれる光学シートが2枚以下である請求項20に記載の光源ユニット。
【請求項22】
請求項18~21のいずれかに記載の光源ユニットを備えるディスプレイ。
【請求項23】
請求項18~21のいずれかに記載の光源ユニットを備える照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換シート、ならびにそれを含む光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明などへ応用する検討が盛んである。色変換とは、発光体からの発光をより長波長な光へと変換することであり、たとえば青色光を緑色光や赤色光へと変換することを表す。
【0003】
この色変換機能を有する組成物をシート化し、青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色の光を取り出すことができ、ひいては白色光を得ることが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有するシート(以下、「色変換シート」という)を組み合わせた白色光源を光源ユニットとして用い、液晶駆動部分およびカラーフィルターと組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、白色光源を、そのままLED照明などとして応用することもできる。
【0004】
色変換方式を利用する液晶ディスプレイの課題として、バックライト装置の発光領域において、光源から発せられた色味にばらつきがあることが挙げられる。これを解決する手段として、色変換シートのディスプレイの周縁部に位置する部分において単位面積当たりの色変換材料の含有量を多くする技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、有機発光材料の劣化を防ぎ、耐久性を向上させるため、光安定化剤を添加する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-195583号
【文献】特開2011-241160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、色変換材料の含有量を多くするため、蛍光体の凝集により輝度が低下し、十分な耐久性を保持する技術が不十分であった。また特許文献2においては十分な面内均一性が確保できず、面内均一性と耐久性の両立が不十分であった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ディスプレイや照明装置等に用いられる色変換シートにおいて、高い面内均一性および耐久性を持つ色変換シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る色変換シートは、入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、前記色変換シートが少なくとも色変換層(A)、色変換層(B)、樹脂層および基材を含み、前記色変換層(A)はピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を含有し、前記色変換層(B)はピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、樹脂層の屈折率をnとしたとき、nA1、A2およびnが以下の(1)または(2)の関係を満たす色変換シートである:
(1) nA1>nかつnA2>n
(2) nA1<nかつnA2<n
【0010】
また本発明の別の態様は、入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、前記色変換シートが少なくとも色変換層(A)、色変換層(B)、樹脂層および基材を含み、
前記色変換層(A)はピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を含有し、前記色変換層(B)はピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、前記色変換層(A)および前記色変換層(B)のいずれか、あるいは両方に散乱粒子を含有し、前記色変換層(A)のヘイズをHAと前記色変換層(B)のヘイズをHBとしたとき、|H-H|≧20%である色変換シートである。
【0011】
また本発明の別の態様は、入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、前記色変換シートが少なくとも色変換層、樹脂層および基材をこの順に含み、
前記色変換層が、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)およびピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、かつ、前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、
色変換層の屈折率をnA、樹脂層の屈折率をnB、基材の屈折率をnとしたとき、nA>nBかつnB<nである色変換シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る色変換シートは、高い面内均一性と耐久性を有するという効果を奏する。本発明に係る光源ユニット、ディスプレイおよび照明装置は、このような色変換シートを用いるため、高い面内均一性および耐久性を有することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
図2】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
図3】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
図4】本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図。
図5】本発明の光源ユニットの一例を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0015】
本発明の色変換シートは、光源等からの入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、前記色変換シートが少なくとも色変換層(A)、色変換層(B)、樹脂層および基材を含有したものである。色変換層(A)はピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を含有し、色変換層(B)はピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有する層である。
【0016】
発光材料(例えば上記の発光材料(a)および発光材料(b)等)の発光のピーク波長は、その溶液の蛍光スペクトル測定により確認することができる。この蛍光スペクトル測定に用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、トルエンやジクロロメタン、テトラヒドロフラン等の溶媒を好適に用いることができる。発光材料の溶解性に問題がない限り、この溶媒としてトルエンを用いることがより好ましい。
【0017】
以後、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光は、「緑色の発光」という。ピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光は、「赤色の発光」という。
【0018】
発光材料を発光させるために、発光材料に照射される光を励起光と呼ぶ。一般に、励起光は、そのエネルギーが大きいほど、材料の分解を引き起こしやすい。波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光は、比較的エネルギーが小さく、色変換組成物中の発光材料の分解を引き起こさないので、色純度の良好な発光が得られる。色変換シートに入射される、光源等からの入射光としては、励起光が用いられる。
【0019】
波長400nm以上500nm以下の範囲の励起光(以下、「青色光」という)の一部は、異なる波長の光に変換されることなく色変換シートを透過するため、それ自体を青色の発光として利用することができる。また、本発明の色変換シートは、緑色の発光を示す発光材料(a)と赤色の発光を示す発光材料(b)とを含む。したがって、本発明の色変換シートに発光ピークが鋭い形状の青色LED光源を組み合わせて白色光源とした場合、青、緑、赤の各色において鋭い形状の発光スペクトルを示し、色純度の良い白色光を得ることができる。その結果、特に当該白色光源を用いたディスプレイは、色彩が一層鮮やかであり、かつ、より大きな色域を効率的に作ることができる。また、照明装置においては、現在主流となっている青色LEDと黄色蛍光体とを組み合わせた白色LEDに比べ、特に緑色領域および赤色領域の発光特性が改善されるため、演色性が向上した好ましい白色光源を得ることができる。
【0020】
ディスプレイの色域を拡大し、色再現性を向上させるためには、青、緑、赤の各色の発光スペクトルの重なりが小さいことが好ましい。
【0021】
例えば、波長400nm以上500nm以下の範囲の青色光を励起光として用いる場合は、ピーク波長が500nm以上の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を用いて青色光を緑色光に変換することにより、励起光と緑色光との発光スペクトルの重なりが小さくなり、色再現性が向上する。その効果をより大きくする上で、発光材料(a)のピーク波長の下限値は、より好ましくは510nm以上であり、さらに好ましくは515nm以上であり、特に好ましくは520nm以上である。
【0022】
また、緑色光と赤色光との発光スペクトルの重なりを小さくするためには、ピーク波長が580nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を利用することが好ましい。その効果をより大きくする上で、発光材料(a)のピーク波長の上限値は、より好ましくは550nm以下であり、さらに好ましくは540nm以下であり、特に好ましくは535nm以下である。
【0023】
さらに、緑色の発光にピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)を利用し、かつ、赤色の発光にピーク波長が580nm以上の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を利用することにより、緑色光と赤色光との発光スペクトルの重なりが小さくなり、色再現性が向上する。その効果をより大きくする上で、発光材料(b)のピーク波長の下限値は、より好ましくは610nm以上であり、さらに好ましくは620nm以上であり、特に好ましくは630nm以上である。
【0024】
発光材料(b)のピーク波長の上限は、可視域の上界付近である750nm以下であればよいが、700nm以下である場合、視感度が大きくなるため、より好ましい。その効果をより大きくする上で、発光材料(b)のピーク波長の上限値は、さらに好ましくは680nm以下であり、特に好ましくは660nm以下である。
【0025】
すなわち、波長400nm以上500nm以下の範囲の青色光を励起光として用いる場合、発光材料(a)のピーク波長は、500nm以上580nm未満の領域に観測されることが好ましく、510nm以上550nm以下であることがより好ましく、515nm以上540nm以下であることがさらに好ましく、520nm以上535nm以下であることが特に好ましい。また、発光材料(b)のピーク波長は、580nm以上750nm以下の領域に観測されることが好ましく、610nm以上700nm以下であることがより好ましく、620nm以上680nm以下であることがさらに好ましく、630nm以上660nm以下であることが特に好ましい。
【0026】
発光スペクトルの重なりを小さくし、色純度および色再現性を向上させるためには、青、緑、赤の各色の発光スペクトルの半値幅が小さいことが好ましい。特に、緑色光および赤色光の発光スペクトルの半値幅が小さいことは、色純度や色再現性の向上に有効である。
【0027】
本発明の色変換シートは、上述したように、発光材料(a)を含有する色変換層(A)と発光材料(b)を含有する色変換層(B)との、少なくとも2層の色変換層を有する。発光材料(a)および発光材料(b)は、異なる層に含有されることで材料間の相互作用が抑制され、発光材料(a)および発光材料(b)を同一層中に分散させた場合よりも高い色純度の発光を示すことができるため好ましい。また、発光材料(a)および発光材料(b)が各層中でそれぞれ独立に発光するため、緑色および赤色の発光ピーク波長や発光強度の調整が容易となる。
【0028】
本発明の色変換シートの代表的な構造例として、例えば図1が挙げられる。図1は、本発明の色変換シートの一例を示す模式断面図である。図1に示す色変換シート5は、基材層1を備え、この基材層1の上に色変換層(B)2、樹脂層3、色変換層(A)4をこの順に含有する。また、図2に本発明の色変換シートの別の一例を示す。図2に示す色変換シートにおいては、色変換層(A)4の上に、さらに基材層1が配され、色変換層(B)2、樹脂層3、色変換層(A)4が基材層1で挟まれた構造を有してもよい。
【0029】
なお、上記構造例は例示であって、本実施の形態に係る色変換シートの具体的な構成は、これに限らず、以下の説明から導かれる事項に適宜変更を加えた構成も本発明の範囲に含まれる。
【0030】
<色変換シートのヘイズ値>
本発明において、色変換シートはヘイズ値が20%以上90%以下である。前述の範囲にあることにより、色変換層中の光の散乱が増加するため、発光材料の光変換効率が向上し、色変換シートの面内均一性と耐久性を両立させることができる。ヘイズ値は50%以上、75%以下であることがより好ましい。ヘイズ値は、ASTM D 1003(2013)に準拠し、測定することができる。
【0031】
本発明の色変換シートのヘイズ値を上記の範囲内にする方法としては、特に制限はないが、色変換層中に散乱粒子を含有させる方法や、色変換層とは別に光散乱層を設ける方法、色変換シートに構成される基材の表面粗さを増加させる方法が挙げられる。その中でも、色変換層中に散乱粒子を含有させる方法がより好ましい。
【0032】
色変換層(A)および前記色変換層(B)のいずれか、あるいは両方に散乱粒子を含有させる場合の本発明の色変換シートの実施形態として、前記色変換層(A)のヘイズをHAと前記色変換層(B)のヘイズをHBとしたとき、|H-H|≧20%であることが好ましい。前記色変換層(A)および色変換層(B)のヘイズ差の絶対値は、得られるディスプレイの色域および輝度に大きな影響を与える。HおよびHの差が前述した範囲であることにより、後述する高色域および高輝度な色変換シートを得ることができる。
【0033】
<散乱粒子>
ヘイズを制御する散乱粒子としては、有機物および/または無機物の粒子が挙げられる。
【0034】
具体的には、ガラス、チタニア、シリカ、アルミナ、シリコーン樹脂、ジルコニア、セリア、窒化アルミ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、アクリル樹脂などで構成される粒子が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上併用されても良い。入手しやすいという観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などから選ばれる粒子が好ましい。色変換層中のバインダー樹脂への分散性の観点から、チタニア粒子がより好ましい。
【0035】
また輝度向上の観点からは、散乱粒子がアルミナ粒子、シリカ粒子およびシリコーン樹脂粒子から選ばれた粒子を含むことが好ましい。色変換層(A)に含まれる散乱粒子の屈折率をnD1、色変換層(B)に含まれる散乱粒子の屈折率をnD2としたとき、nA1、nA2、nD1およびnD2が0.03≦|nA1-nD1|≦0.3および/または0.03≦|nA2-nD2|≦0.3を満たすことが好ましい。nA1およびnD1の差および/またはnA2およびnD2の差が前述の範囲であることにより、高ヘイズと高透過率の両立が可能となる。なお、色変換層(A)および色変換層(B)の両方に散乱粒子を含む場合は、0.03≦|nA1-nD1|≦0.3および0.03≦|nA2-nD2|≦0.3を満たすことが好ましい。
【0036】
散乱粒子の平均粒径は、ヘイズ値が前述の範囲内であれば特に限定はないが、100nm~5000nmが好ましく、さらには100nm~500nmであることが好ましい。平均粒径がこの範囲の粒散乱子を使用することによってバインダー樹脂への分散性が良好となり、発光材料の光散乱効率が向上する。
【0037】
また本発明において、前記色変換層(A)および色変換層(B)のいずれか、あるいは両方が散乱粒子を含有することが好ましい。散乱粒子は色変換層(A)および色変換層(B)のいずれかに偏った状態で含有することが好ましい。色変換層(A)が散乱粒子を含有することで、(A)層の発光効率が向上し、ピーク波長が短波長化することにより、より大きな色域の色変換シートが得られる。また、色変換層(B)が散乱粒子を含有することで、(B)層の色変換効率が向上し、自己吸収が抑制されることでピーク波長が短波長化する。色変換層(B)のピーク波長が短波長化すると、より視感度ピークに近づけることが可能となり、より高輝度な色変換シートを得ることができる。従って、高色域の観点からは、色変換層(A)における散乱粒子の含有量が色変換層(B)における散乱粒子の含有量よりも大きいことが好ましく、色変換層(A)のみが散乱粒子を含有することが最も好ましい。一方、高輝度の観点からは、色変換層(B)における散乱粒子の含有量が色変換層(A)における散乱粒子の含有量よりも大きいことが好ましく、色変換層(B)のみが散乱粒子を含有することが最も好ましい。
【0038】
色変換層中に含有する発光材料として、後述するピロメテン誘導体や一般式(6)、(7)で表されるストークスシフトが小さい化合物を使用した場合、自己吸収が強くなるため散乱粒子の偏りによる高輝度および高色域に効果が顕著に現れる。
【0039】
<樹脂層>
本発明の色変換シートは、樹脂層を有する。樹脂層は色変換層(A)および色変換層(B)の間に存在することが好ましい。色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、樹脂層の屈折率をnとしたとき、nA1、A2およびnが以下の(1)または(2)の関係を満たす:
(1) nA1>nかつnA2>n
(2) nA1<nかつnA2<n
【0040】
前記(1)の関係を満たす樹脂層を低屈折層と呼び、前記(2)の関係を満たす樹脂層を高屈折層と呼ぶ。樹脂層が色変換層とは異なる屈折率を持つことにより、各色変換層と樹脂層との界面で光が反射するため色変換効率を向上させることができる。また樹脂層が色変換層よりも低屈折である場合、樹脂層が高屈折層である場合よりもさらに多くの光を反射することが可能となるので外への光漏れを抑制することができるためより好ましい。
【0041】
<低屈折層>
上記のように本発明の色変換シートの実施形態の一つは、樹脂層として低屈折層を有する色変換シートである。低屈折層は色変換層(A)および色変換層(B)の間に存在することが好ましい。色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、低屈折層の屈折率をnとしたとき、nA1>nかつnA2>nである必要がある。低屈折層を有することにより、各色変換層と低屈折層との界面で光が反射するため、各層外への光漏れを抑制することができるので、より色変換効率が向上することが可能となり、良好な耐久性を得ることができる。なお、基材の屈折率をnとしたとき、n<nであることが好ましい。また安定した色変換効率を得るためには、色変換層と低屈折層の屈折率の差は0.15≧nA1-n≧0.05かつ0.15≧nA2-n≧0.05の関係を満たすことがより好ましい。
【0042】
低屈折層の材料としては、屈折率がnA1>nかつnA2>nを満たす樹脂であれば特に限定はない。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ポリケイ皮酸ビニル、環ゴム等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料;エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。中でも屈折率の小さい樹脂であるシリコーン樹脂やフッ素樹脂が好ましく、色変換シートの耐久性を向上させる観点からシリコーン樹脂であることがより好ましい。樹脂層に用いられる樹脂がシリコーン樹脂であることにより、発光材料(a)および発光材料(b)の樹脂層への拡散が防止され、長期間使用する際にも色度変化の小さい色変換シートを得ることができる。シリコーン樹脂の一例としては、信越化学工業株式会社製のKR-114B等が挙げられるがこの限りでない。
【0043】
また、低屈折層は、色変換層(A)、低屈折層、色変換層(B)の順に直接隣接していることが好ましい。各層が直接隣接していることによって、色変換層(A)および色変換層(B)それぞれが色変換効率を大幅に向上させることができる。
【0044】
<高屈折層>
上記のように本発明の色変換シートの実施形態の一つは、樹脂層として高屈折層を有する色変換シートである。高屈折層は色変換層(A)および色変換層(B)の間に存在することが好ましい。色変換層(A)の屈折率をnA1、色変換層(B)の屈折率をnA2、高屈折層の屈折率をnとしたとき、nA1<nかつnA2<nである必要がある。高屈折層を有することにより、各色変換層と高屈折層との界面で光が反射するため、低屈折層を有する場合と同様に各層外への光漏れを抑制することができるので、より色変換効率が向上することが可能となり、良好な耐久性を得ることができる。また安定した色変換効率を得るためには、色変換層と高屈折層の屈折率の差は0.15≧n-nA1≧0.05かつ0.15≧n-nA2≧0.05の関係を満たすことがより好ましい。
【0045】
高屈折層の材料としては、屈折率がnA1<nかつnA2<nを満たす樹脂であれば特に限定はなく、低屈折層と同様のものを使用することができる。中でも耐熱性や耐久性の観点から、エステル樹脂が好適に使用される。エステル樹脂の一例としては、東洋紡株式会社製の“Vylon”(登録商標)270が挙げられる。
【0046】
また、高屈折層は色変換層(A)、高屈折層、色変換層(B)の順に直接隣接していることが好ましい。各層が直接隣接していることによって、色変換層(A)および色変換層(B)それぞれが色変換効率を大幅に向上させることができる。
【0047】
<発光材料>
本発明の色変換シートは、発光材料を含む。本発明における発光材料とは、励起光が照射されたときに、その光とは異なる波長の光を発する材料のことを言う。色変換層(A)および色変換層(B)は、それぞれ発光材料を1種類含んでも良いし、2種類以上含んでもよい。
【0048】
本発明の色変換シート内に、色変換層(A)および色変換層(B)は、それぞれ複数層含まれてもよい。その場合、複数の色変換層(A)の各層における組成や形態は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。同様に、複数の色変換層(B)の各層における組成や形態は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0049】
高効率な色変換を達成するためには、色変換層に量子収率の高い発光特性を示す材料が含まれることが好ましい。発光材料としては、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット等の公知の発光材料が挙げられる。さらに、高い発光特性の観点から、色変換層(A)および色変換層(B)のうち少なくともどちらか一方に有機発光材料を含むことが好ましい。
【0050】
有機発光材料は光源の発光を効率よく吸収することができるため、色変換層に利用した際に高効率化が可能となる。有機発光材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデン等の縮合アリール環を有する化合物やその誘導体;
フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9-シラフルオレン、9,9’-スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピリジン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン等のヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体;
ボラン誘導体;
1,4-ジスチリルベンゼン、4,4’-ビス(2-(4-ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’-ビス(N-(スチルベン-4-イル)-N-フェニルアミノ)スチルベン等のスチルベン誘導体;
芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4-c]ピロール誘導体;
クマリン6、クマリン7、クマリン153などのクマリン誘導体;
イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体;
インドシアニングリーン等のシアニン系化合物;
フルオレセイン・エオシン・ローダミン等のキサンテン系化合物やチオキサンテン系化合物;
ポリフェニレン系化合物、ナフタルイミド誘導体、フタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体;
ナイルレッドやナイルブルー等のオキサジン系化合物;
ヘリセン系化合物;
N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(3-メチルフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,1’-ジアミン等の芳香族アミン誘導体;および
イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、およびレニウム(Re)等の有機金属錯体化合物;
等が好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
有機発光材料は、蛍光発光材料であっても、リン光発光材料であっても良いが、高い色純度を達成するためには、蛍光発光材料が好ましい。
【0052】
これらの中でも、熱的安定性および光安定性が高いことから、縮合アリール環を有する化合物やその誘導体を好適に用いることができる。
【0053】
また、溶解性や分子構造の多様性の観点からは、配位結合を有する化合物が好ましい。半値幅が小さく、高効率な発光が可能である点で、フッ化ホウ素錯体などのホウ素を含有する化合物が好ましい。
【0054】
中でも、高い蛍光量子収率を与え、耐久性が良好である点で、ピロメテン誘導体を好適に用いることができる。より好ましくは、一般式(1)で表される化合物である。
【0055】
【化1】
【0056】
XはC-RまたはNである。R~Rはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基、および隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環の中から選ばれる。
【0057】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。このことは、以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。また、以下の説明において、例えば、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて全ての炭素数が6~40となるアリール基である。炭素数を規定している他の置換基も、これと同様である。
【0058】
また、上記の全ての基において、置換される場合における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基およびホスフィンオキシド基から選ばれた基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとする具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0059】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、置換基が水素原子または重水素原子であることを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0060】
上記の全ての基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、ハロゲン、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0061】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の飽和脂環式炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、3以上20以下の範囲である。
【0062】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミド等の炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0063】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基等の二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0064】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基等の二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。
【0065】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基等の三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上20以下の範囲である。
【0066】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0067】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上20以下の範囲である。
【0068】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基等、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0069】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基における芳香族炭化水素基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、6以上40以下の範囲である。
【0070】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、ヘリセニル基等の芳香族炭化水素基を示す。中でも、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基およびトリフェニレニル基から選ばれた基が好ましい。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは6以上40以下、より好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0071】
~Rが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基およびアントラセニル基から選ばれた基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基およびナフチル基から選ばれた基がより好ましい。さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基およびターフェニル基から選ばれた基であり、フェニル基が特に好ましい。
【0072】
それぞれの置換基がさらにアリール基で置換される場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基およびアントラセニル基から選ばれた基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基およびナフチル基から選ばれた基がより好ましい。特に好ましくは、フェニル基である。
【0073】
ヘテロアリール基とは、例えば、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、ナフチリジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、カルボリニル基、インドロカルバゾリル基、ベンゾフロカルバゾリル基、ベンゾチエノカルバゾリル基、ジヒドロインデノカルバゾリル基、ベンゾキノリニル基、アクリジニル基、ジベンゾアクリジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェナントロリニル基等の、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示す。ただし、ナフチリジニル基とは、1,5-ナフチリジニル基、1,6-ナフチリジニル基、1,7-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基、2,6-ナフチリジニル基、2,7-ナフチリジニル基のいずれかを示す。ヘテロアリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上40以下、より好ましくは2以上30以下の範囲である。
【0074】
~Rが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基およびフェナントロリニル基から選ばれた基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基およびキノリニル基から選ばれた基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0075】
それぞれの置換基がさらにヘテロアリール基で置換される場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、キノリニル基、ピリミジル基、トリアジニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基およびフェナントロリニル基から選ばれた基が好ましく、ピリジル基、フラニル基、チエニル基およびキノリニル基から選ばれた基がより好ましい。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0076】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選ばれる原子を示す。また、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられ、これら置換基は、さらに置換されてもよい。
【0077】
アミノ基とは、置換もしくは無置換のアミノ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基等が挙げられる。アリール基、ヘテロアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基およびキノリニル基から選ばれた基が好ましい。これら置換基は、さらに置換されてもよい。炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、2以上50以下、より好ましくは6以上40以下、特に好ましくは6以上30以下の範囲である。
【0078】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基等のアルキルシリル基や、フェニルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等のアリールシリル基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。シリル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、1以上30以下の範囲である。
【0079】
シロキサニル基とは、例えば、トリメチルシロキサニル基等のエーテル結合を介したケイ素化合物基を示す。ケイ素上の置換基は、さらに置換されてもよい。また、ボリル基とは、置換もしくは無置換のボリル基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。中でも、アリール基およびアリールエーテル基から選ばれた基が好ましい。また、スルホ基とは、置換もしくは無置換のスルホ基である。置換する場合の置換基としては、例えば、アリール基、ヘテロアリール基、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリールエーテル基、アルコキシ基等が挙げられる。中でも、直鎖アルキル基またはアリール基が好ましい。
【0080】
また、ホスフィンオキシド基とは、-P(=O)R1011で表される基である。R1011は、R~Rと同様の群から選ばれる。
【0081】
隣接置換基との間に形成される縮合環および脂肪族環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の環状骨格を形成することをいう。このような縮合環および脂肪族環の構成元素としては、炭素以外にも、窒素、酸素、硫黄、リンおよびケイ素から選ばれる元素を含んでいてもよい。また、これらの縮合環および脂肪族環は、さらに別の環と縮合してもよい。
【0082】
一般式(1)で表される化合物は、高い発光量子収率を示し、かつ、発光スペクトルの半値幅が小さいため、効率的な色変換と高い色純度との双方を達成することができる。さらに、一般式(1)で表される化合物は、適切な置換基を適切な位置に導入することで、発光効率、色純度、熱的安定性、光安定性および分散性等の様々な特性や物性を調整することができる。例えば、R、R、RおよびRが全て水素である場合に比べ、R、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基や置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合の方が、より良い熱的安定性および光安定性を示す。
【0083】
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアルキル基である場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基といった炭素数1~6のアルキル基が好ましい。さらに、このアルキル基としては、熱的安定性に優れるという観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基から選ばれた基が好ましい。また、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させるという観点では、このアルキル基として、立体的にかさ高いtert-ブチル基がより好ましい。また、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、このアルキル基として、メチル基も好ましく用いられる。
【0084】
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のアリール基である場合、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基およびナフチル基から選ばれた基が好ましく、さらに好ましくは、フェニル基、ビフェニル基である。特に好ましくは、フェニル基である。
【0085】
、R、RおよびRの少なくとも1つが置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリニル基およびチエニル基から選ばれた基が好ましく、さらに好ましくは、ピリジル基またはキノリニル基である。特に好ましくは、ピリジル基である。
【0086】
、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、バインダー樹脂や溶媒への溶解性が良好なため、好ましい。この場合、アルキル基としては、合成の容易さ、原料入手の容易さという観点から、メチル基が好ましい。
【0087】
、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロアリール基である場合、より良い熱的安定性および光安定性を示すため、好ましい。この場合、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。
【0088】
複数の性質を向上させる置換基もあるが、全てにおいて十分な性能を示す置換基は限られている。特に、高発光効率と高色純度との両立が難しい。そのため、一般式(1)で表される化合物に対して複数種類の置換基を導入することで、発光特性や色純度等にバランスの取れた化合物を得ることが可能である。
【0089】
特に、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基の場合、例えば、R≠R、R≠R、R≠RまたはR≠R等のように、複数種類の置換基を導入することが好ましい。ここで「≠」は、異なる構造の基であることを示す。例えば、R≠Rは、RとRとが異なる構造の基であることを示す。上記のように複数種類の置換基を導入することにより、色純度に影響を与えるアリール基と発光効率に影響を与えるアリール基とを同時に導入することができるため、細やかな調節が可能となる。
【0090】
中でも、R≠RまたはR≠Rであることが、発光効率と色純度をバランスよく向上させるという観点から、好ましい。この場合、一般式(1)で表される化合物に対して、色純度に影響を与えるアリール基を両側のピロール環にそれぞれ1つ以上導入し、それ以外の位置に発光効率に影響を与えるアリール基を導入することができるため、これら両方の性質を最大限に向上させることができる。また、R≠RまたはR≠Rである場合、耐熱性と色純度との双方を向上させるという観点から、R=RおよびR=Rであることがより好ましい。
【0091】
色純度に影響を与えるアリール基としては、電子供与性基で置換されたアリール基が好ましい。電子供与性基とは、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団に、電子を供与する原子団である。電子供与性基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、負の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。
【0092】
電子供与性基の具体例としては、例えば、アルキル基(メチル基のσp:-0.17)やアルコキシ基(メトキシ基のσp:-0.27)、アミノ基(-NHのσp:-0.66)等が挙げられる。特に、炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基およびメトキシ基から選ばれた基がより好ましい。分散性の観点からは、tert-ブチル基またはメトキシ基が特に好ましく、これらを上記の電子供与性基とした場合、一般式(1)で表される化合物において、分子同士の凝集による消光を防ぐことができる。置換基の置換位置は、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには結合のねじれを抑える必要があるため、ピロメテン骨格との結合位置に対してメタ位またはパラ位に結合させることが好ましい。一方、主に発光効率に影響を与えるアリール基としては、tert-ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基等のかさ高い置換基を有するアリール基が好ましい。
【0093】
、R、RおよびRが、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアリール基である場合、R、R、RおよびRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。このとき、R、R、RおよびRは、それぞれ以下のAr-1~Ar-6から選ばれることがより好ましい。この場合、R、R、RおよびRの組み合わせは特に制限はない。
【0094】
【化2】
【0095】
およびRは、水素、アルキル基、カルボニル基、エステル基およびアリール基のいずれかであることが好ましい。中でも、熱的安定性の観点から、水素またはアルキル基が好ましく、発光スペクトルにおいて狭い半値幅を得やすいという観点から、水素がより好ましい。
【0096】
およびRは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールエーテル基、フッ素、含フッ素アルキル基、含フッ素ヘテロアリール基または含フッ素アリール基、含フッ素アルコキシ基、含フッ素アリールエーテル基およびシアノ基から選ばれた基が好ましく、励起光に対して安定でより高い蛍光量子収率が得られることから、フッ素、シアノ基または含フッ素アリール基であることがより好ましい。合成の容易さから、フッ素またはシアノ基であることがさらに好ましい。さらに、RもしくはRのいずれか一つはシアノ基であることが好ましい。シアノ基を導入することで耐久性が向上する。
【0097】
ここで、含フッ素アリール基とは、フッ素を含むアリール基であり、例えば、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基およびペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。含フッ素ヘテロアリール基とは、フッ素を含むヘテロアリール基であり、例えば、フルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基およびトリフルオロピリジル基等が挙げられる。含フッ素アルキル基とは、フッ素を含むアルキル基であり、例えば、トリフルオロメチル基やペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0098】
また、一般式(1)において、Xは、C-Rであることが、光安定性の観点から好ましい。XがC-Rであるとき、一般式(1)で表される化合物の耐久性、すなわち、この化合物の発光強度の経時的な低下には、置換基Rが大きく影響する。具体的には、Rが水素である場合、この部位の反応性が高いため、この部位と空気中の水分や酸素とが容易に反応してしまう。このことは、一般式(1)で表される化合物の分解を引き起こす。また、Rが例えばアルキル基のような分子鎖の運動の自由度が大きい置換基である場合は、確かに反応性は低下するが、色変換層中で化合物同士が経時的に凝集し、結果的に濃度消光による発光強度の低下を招く。したがって、Rは、剛直で、かつ運動の自由度が小さく凝集を引き起こしにくい基であることが好ましく、具体的には、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基のいずれかであることが好ましい。
【0099】
より高い蛍光量子収率を与え、より熱分解しづらい点、また光安定性の観点から、XがC-Rであり、Rが置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。アリール基としては、発光波長を損なわないという観点から、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基およびアントラセニル基から選ばれた基が好ましい。
【0100】
さらに、一般式(1)で表される化合物の光安定性を高めるには、Rとピロメテン骨格の炭素-炭素結合のねじれを適度に抑える必要がある。何故ならば、過度にねじれが大きいと、励起光に対する反応性が高まる等、光安定性が低下するからである。このような観点から、Rとしては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基が好ましく、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のターフェニル基であることがより好ましい。特に好ましくは、置換もしくは無置換のフェニル基である。
【0101】
また、Rは、適度にかさ高い置換基であることが好ましい。Rが、ある程度のかさ高さを有することで分子の凝集を防ぐことができ、その結果、一般式(1)で表される化合物の発光効率や耐久性がより向上する。
【0102】
このようなかさ高い置換基のさらに好ましい例としては、下記一般式(2)で表されるRの構造が挙げられる。
【0103】
【化3】
【0104】
一般式(2)において、rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、カルバモイル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、スルホ基、ホスフィンオキシド基からなる群より選ばれる。kは1~3の整数である。kが2以上である場合、rはそれぞれ同じでも異なっても良い。
【0105】
より高い発光量子収率を与えることができるという観点から、rは、置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましい。このアリール基の中でも、特に、フェニル基またはナフチル基が好ましい例として挙げられる。rがアリール基である場合、一般式(2)のkは、1もしくは2であることが好ましく、中でも、分子の凝集をより防ぐという観点から2であることがより好ましい。さらに、kが2以上である場合、rの少なくとも1つは、アルキル基で置換されていることが好ましい。この場合のアルキル基としては、熱的安定性の観点から、メチル基、エチル基およびtert-ブチル基から選ばれた基が特に好ましい例として挙げられる。
【0106】
また、蛍光波長や吸収波長を制御したり、溶媒との相溶性を高めたりするという観点から、rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはハロゲンであることが好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基およびメトキシ基から選ばれた基がより好ましい。分散性の観点からは、tert-ブチル基またはメトキシ基が特に好ましい。rがtert-ブチル基またはメトキシ基であることは、分子同士の凝集による消光を防ぐことについて、より有効である。
【0107】
また、一般式(1)で表される化合物の別の態様として、R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。特に、(1)R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であること、(2)Rが電子求引基であること、または(3)R~Rのうち少なくとも1つが電子求引基であり、かつ、Rが電子求引基であること、が好ましい。このように上記化合物のピロメテン骨格に電子求引基を導入することで、ピロメテン骨格の電子密度を大幅に下げることができる。これにより、上記化合物の酸素に対する安定性がより向上し、その結果、上記化合物の耐久性をより向上させることができる。
【0108】
電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。なお、フェニル基も、上記のような正の値をとる例もあるが、本発明において、電子求引基にフェニル基は含まれない。
【0109】
電子求引基の例として、例えば、-F(σp:+0.06)、-Cl(σp:+0.23)、-Br(σp:+0.23)、-I(σp:+0.18)、-CO12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、-CONH(σp:+0.38)、-COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、-CF(σp:+0.50)、-SO12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、-NO(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0110】
一般式(1)において、RおよびRの少なくとも1つが電子求引基であることが好ましい。一般式(1)のRおよびRはピロメテン骨格の電子密度に大きく影響を与える置換位置であり、RおよびRに電子求引基を導入することで、効率的にピロメテン骨格の電子密度を低減することができ、酸素に対する安定性がより向上するため、耐久性をより向上させることができるからである。
【0111】
さらに、一般式(1)において、RおよびRが電子求引基であることがより好ましい。一般式(1)で表される化合物の酸素に対する安定性がさらに向上し、耐久性を大幅に向上させることができるからである。
【0112】
電子求引基としては、フッ素原子を含む基であることが好ましい。フッ素原子を含む基であることで、ピロメテン骨格の電子密度をより低減することができ、一般式(1)で表される化合物の酸素に対する安定性が向上し、耐久性を向上させることができる。
【0113】
好ましい電子求引基としては、フッ素、含フッ素アリール基、含フッ素ヘテロアリール基、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル基、置換もしくは無置換のスルホンアミド基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、化学的に分解しにくいからである。
【0114】
より好ましい電子求引基としては、含フッ素アルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアミド基、置換もしくは無置換のスルホニル基、置換もしくは無置換のスルホン酸エステル基、置換もしくは無置換のスルホンアミド基またはシアノ基が挙げられる。何故なら、これらは、濃度消光を防ぎ、発光量子収率を向上させる効果につながるからである。特に好ましい電子求引基は、置換もしくは無置換のエステル基である。
【0115】
さらに好ましい電子求引基としては、含フッ素アシル基、含フッ素エステル基、含フッ素アミド基、含フッ素スルホニル基、含フッ素スルホン酸エステル基、含フッ素スルホンアミド基が挙げられる。これらの基は、効率的にピロメテンホウ素錯体骨格の電子密度を低減することができる。これにより、一般式(1)で表される化合物の酸素に対する安定性が向上し、この結果、耐久性をより向上させることができる。
【0116】
中でも、RおよびRの少なくとも一方が、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、色純度を落とすことなく、耐久性を向上させることができるため、好ましい。特に、RおよびRが共に、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であることが、耐久性の向上の観点から、特に好ましい。
【0117】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rにおいて、rは置換もしくは無置換のフェニル基であることが特に好ましい。
【0118】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rにおいて、rはtert-ブチル基またはメトキシ基であることがより好ましく、rがメトキシ基であることが特に好ましい。
【0119】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基であって、かつ、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rにおいて、rは置換もしくは無置換のフェニル基であることが特に好ましい。
【0120】
また、一般式(1)で表される化合物の好ましい例の別の1つとして、R、R、RおよびRが全て、それぞれ同じでも異なっていてもよく、上述のAr-1~Ar-6から選ばれ、かつ、RおよびRがそれぞれ同じでも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のエステル基であり、さらに、XがC-Rであり、Rが、一般式(2)で表される基である場合が挙げられる。この場合、Rにおいて、rがtert-ブチル基または、メトキシ基であることがより好ましく、rがメトキシ基であることが特に好ましい。
【0121】
一般式(1)で表される化合物の一例を以下に示すが、この化合物は、これらに限定されるものではない。
【0122】
【化4】
【0123】
【化5】
【0124】
【化6】
【0125】
【化7】
【0126】
【化8】
【0127】
【化9】
【0128】
【化10】
【0129】
【化11】
【0130】
【化12】
【0131】
【化13】
【0132】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特表平8-509471号公報や特開2000-208262号公報に記載の方法で合成することができる。すなわち、ピロメテン化合物と金属塩とを塩基共存下で反応させることにより、目的とするピロメテン系金属錯体が得られる。
【0133】
また、ピロメテン-フッ化ホウ素錯体の合成については、J.Org.Chem.,vol.64,No.21,pp.7813-7819(1999)、Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,vol.36,pp.1333-1335(1997)等に記載されている方法を参考にして、一般式(1)で表される化合物を合成することができる。例えば、下記一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物とをオキシ塩化リン存在下、1,2-ジクロロエタン中で加熱した後、下記一般式(5)で表される化合物をトリエチルアミン存在下、1,2-ジクロロエタン中で反応させ、これにより、一般式(1)で表される化合物を得る方法が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ここで、R~Rは、上記説明と同様である。Jは、ハロゲンを表す。
【0134】
【化14】
【0135】
さらに、アリール基やヘテロアリール基の導入の際は、ハロゲン化誘導体とボロン酸あるいはボロン酸エステル化誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-炭素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。同様に、アミノ基やカルバゾリル基の導入の際にも、例えば、パラジウム等の金属触媒下でのハロゲン化誘導体とアミンあるいはカルバゾール誘導体とのカップリング反応を用いて炭素-窒素結合を生成する方法が挙げられるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0136】
本発明の実施の形態に係る色変換層は、一般式(1)で表される化合物以外に、必要に応じてその他の化合物を適宜含有することができる。例えば、励起光から一般式(1)で表される化合物へのエネルギー移動効率をさらに高めるために、ルブレン等のアシストドーパントを含有してもよい。また、一般式(1)で表される化合物の発光色以外の発光色を加味したい場合は、所望の有機発光材料、例えば、クマリン系色素、ローダミン系色素等の有機発光材料を添加することができる。その他、これらの有機発光材料以外でも、無機蛍光体、蛍光顔料、蛍光染料、量子ドット、遅延蛍光を放出する化合物等の公知の発光材料を組み合わせて添加することも可能である。
【0137】
以下に、一般式(1)で表される化合物以外の有機発光材料の一例を以下に示すが、本発明は、特にこれらに限定されるものではない。
【0138】
【化15】
【0139】
無機蛍光体としては、例えば、SrAl:Eu、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:Ce,Tb、SrAl1225:Eu、MgGa:Eu、CaGa:Eu、SrGa:Eu、BaGa:Euなどの緑色蛍光体や;Sr(POCl:Eu、(SrCaBa)(POCl:Eu、(BaCa)(POCl:Eu、BCl:Eu,Mn、Mg(POCl:Eu,Mn、Ca(POCl:Eu,Mn、Sr(POCl:Eu,Mn、Ba(POCl:Eu,Mnなどの青色蛍光体や;例えば、YS:Eu、LaS:Eu、Y:Eu、GdS:Eu、KSiF:Mnなどの赤色蛍光体がある。その他にもY(Al,Ga)12:Ce,(Y,Gd)Al12:Ce,LuAl12:Ce,YAl12:CeなどのYAG系蛍光体、TbAl12:CeなどのTAG系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu系蛍光体やCaScSi12:Ce系蛍光体、(Sr,Ba,Mg)SiO:Euなどのシリケート系蛍光体、(Ca,Sr)Si:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSiAlN:Eu等のナイトライド系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Euなどのオキシナイトライド系蛍光体、さらには(Ba,Sr,Ca)Si:Eu系蛍光体、CaMgSi16Cl:Eu系蛍光体、SrAl:Eu,SrAl1425:Eu等の蛍光体が挙げられる。
【0140】
量子ドットは、優れた量子効率を有する蛍光体であり、ナノサイズ(例えば、直径2nm~10nm程度)の半導体結晶中に、電子・正孔や励起子を三次元空間全方位で閉じ込めることで、離散的エネルギー準位を有し、そのドットのサイズを変えることで発光光のピーク波長(発光色)等を自由に選択することができる。量子ドットに用いられる材料としては、2価の陽イオンになり得るZn、Cd、Pb等と、2価の陰イオンになり得るO、S、Se、Te等とを組み合わせた材料(例えば、セレン化カドミウム(CdSe)、硫化亜鉛(ZnS)等)、3価の陽イオンとなり得るGa、In等と3価の陰イオンとなり得るP、As、Sb等とを組み合わせた材料(例えば、リン化インジウム(InP)、ヒ化ガリウム(GaAs)等)、さらにはカルコパイライト型化合物(CuInSe等)等が挙げられる。量子ドット蛍光体の材料の好ましい一例として、CdSeが挙げられる。
【0141】
遅延蛍光を放出する化合物については、「最先端の有機EL」(安達千波矢、藤本弘編、シーエムシー出版発行)の87~103ページで解説されている。その文献の中で、発光材料の一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー準位を近接させることにより、通常は遷移確率が低い三重項励起状態から一重項励起状態への逆エネルギー移動が高効率で生じ、熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated delayed Fluorescence, TADF)が発現することおよび遅延蛍光の発生メカニズムが説明されている。遅延蛍光の発光は過渡PL(Photo Luminescence)測定により確認できる。
【0142】
本明細書では、熱活性化遅延蛍光を発現する化合物を含め、三重項励起状態から一重項励起状態へ高効率で遷移し蛍光を放出する化合物を、「遅延蛍光を放出する化合物」と表記する。
【0143】
通常、蛍光発光は発光材料が光励起された後に生成する一重項励起状態から放出される。系間交差により生じた発光材料の三重項励起状態は、室温環境下であれば、熱失活し蛍光は放出されない。一方、上述のように、遅延蛍光を放出する化合物は、三重項励起状態が生成しても、速やかに一重項励起状態に変換されたのち、蛍光を放出するので、通常の蛍光発光材料において発光に寄与することができなかった三重項励起状態も蛍光発光に寄与することができる。したがって、熱活性化遅延蛍光を発現する化合物を用いると高効率の発光が得られる。
【0144】
また、遅延蛍光を放出する化合物の三重項励起状態は速やかに一重項励起状態に変換されるため、一重項酸素を発生させにくいという特徴を有している。一重項酸素は、強い酸化力を持つため、一重項酸素が、発光材料の酸化による劣化を引き起こすと考えられる。一重項酸素は、発光材料の三重項励起状態と、基底状態の三重項酸素分子との間での、電子とエネルギーとの交換により発生するものと考えられる。先に述べたように、遅延蛍光を放出する化合物は、三重項励起状態が速やかに一重項励起状態に変換する、つまり三重項励起状態の寿命が短いという性質を有している。そのため、発光材料の三重項励起状態と基底状態の三重項酸素が直接衝突する確率が小さくなり、一重項酸素が発生しにくくなるのである。そして、この特徴により、熱活性化遅延蛍光を発現する化合物を用いると発光材料の劣化が抑制され、色度の経時的な変化が抑制されて発光材料の耐久性を向上させられることが見出されたのである。
【0145】
一重項励起状態のエネルギー準位と三重項励起状態のエネルギー準位を近接させる分子設計としては、同一分子内において、電子ドナー性骨格と電子アクセプター性骨格とを結合させることが有効である。そうすることで、分子内で、HOMO(Highest occupied molecular orbital)軌道とLUMO(Lowest unoccupied molecular orbital)軌道を分離させることができる。電子ドナー性骨格と電子アクセプター骨格は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この場合の連結基としては、芳香族炭化水素を含む骨格であることが好ましい。
【0146】
電子ドナー性骨格とは、例えば、アミン窒素原子を有する骨格が挙げられる。中でも、ジアリールアミンやトリアリールアミンを含む骨格、カルバゾールを含む骨格、ベンゾカルバゾールを含む骨格、インドロカルバゾールを含む骨格、フェノキサジンを含む骨格、およびフェノチアジンを含む骨格が好ましい。これらの中でも、カルバゾールを含む骨格、ベンゾカルバゾールを含む骨格、インドロカルバゾールを含む骨格、およびフェノキサジンを含む骨格がより好ましく、カルバゾールを含む骨格、およびフェノキサジンを含む骨格がさらに好ましい。
【0147】
一方、電子アクセプター性骨格は、通常、電子求引性を有する置換基を含む骨格が挙げられる。電子求引基とは、電子受容性基とも呼称し、有機電子論において、誘起効果や共鳴効果により、置換した原子団から、電子を引き付ける原子団である。電子求引基としては、ハメット則の置換基定数(σp(パラ))として、正の値をとるものが挙げられる。ハメット則の置換基定数(σp(パラ))は、化学便覧基礎編改訂5版(II-380頁)から引用することができる。
【0148】
なお、フェニル基も正の値をとる例もあるが、本願の電子求引基にフェニル基は含まれない。
【0149】
電子求引基の例として、例えば、-F(σp:+0.20)、-Cl(σp:+0.28)、-Br(σp:+0.30)、-I(σp:+0.30)、-CO12(σp:R12がエチル基の時+0.45)、-CONH(σp:+0.38)、-COR12(σp:R12がメチル基の時+0.49)、-CF(σp:+0.51)、-SO12(σp:R12がメチル基の時+0.69)、-NO(σp:+0.81)等が挙げられる。R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1~30のシクロアルキル基を表す。これら各基の具体例としては、上記と同様の例が挙げられる。
【0150】
中でも、炭素原子と窒素原子が二重結合で結合した部分構造を有するヘテロアリール基を含む骨格、フッ素化された置換基を含む骨格、シアノ基を含む骨格、カルボニル基を含む骨格、スルホキシドまたはジスルホキシドを含む骨格、およびホスフィンオキシド基を含む骨格等が好ましい。これらの中でも、炭素原子と窒素原子が二重結合で結合した部分構造を有するヘテロアリール基を含む骨格、フッ素化された置換基を含む骨格、およびシアノ基を含む骨格が、化合物の安定性の観点でさらに好ましい。
【0151】
炭素原子と窒素原子が二重結合で結合した部分構造を有するヘテロアリール基を含む骨格の中では、具体的には、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、またはフェナントロリンを含む骨格が好ましく、中でもピリミジン、トリアジン、キノキサリン、またはキナゾリンを含む骨格がより好ましく、トリアジンを含む骨格がさらに好ましい。
【0152】
フッ素化された置換基を含む骨格の中では、フッ化アリール基、またはフルオロアルキル基を含む骨格がより好ましい。フッ化アリール基を含む骨格としては、フッ素化されたベンゼン環が好ましく、具体的には、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼンまたはペンタフルオロベンゼンを含む骨格がより好ましい。フルオロアルキル基を含む骨格としては、トリフルオロメチル基で置換されたベンゼン環を含む骨格が好ましく、これらの中でもモノ(トリフルオロメチル)ベンゼンまたはビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを含む骨格であることがより好ましい。
【0153】
シアノ基を有する骨格の中では、シアノベンゼン、ジシアノベンゼン、トリシアノベンゼンを含む骨格がさらに好ましい。
【0154】
以上のような電子ドナー性骨格と電子アクセプター性骨格を結合させた化合物として一例を以下に示すが、特にこれらに限定されるものではない。なお、ここに示した化合物は過去の文献により遅延蛍光を放出することが知られている。
【0155】
【化16】
【0156】
また、遅延蛍光を放出する化合物として、上述した電子ドナー性骨格と電子アクセプター性骨格を結合させた化合物以外に、一般式(6)または(7)で表される化合物が好ましい。
【0157】
【化17】
【0158】
一般式(6)および(7)において、環Za、環Zbおよび環Zcは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリール環、または置換もしくは無置換の環形成炭素数5~30のヘテロアリール環である。無置換の環形成炭素数6~30のアリール環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、クリセン環、アントラセン、ピレン環といった芳香族炭化水素環が挙げられるが、これらの中でも溶解性を確保する観点でベンゼン環が好ましい。また環形成炭素数5~30のヘテロアリール環としてはピリジン環、キノリン環、フェナントロリン環といった芳香族ヘテロアリール環構造が挙げられるが、原料入手のしやすさや合成の難易度の観点ではピリジン環が好ましい。環Za、環Zbおよび環Zcはベンゼン環であることが好ましい。一般式(6)または(7)で表される化合物のπ共役系が効率よく拡張し、より効率的に三重項励起状態から一重項励起状態に逆項間交差が起きるため、耐久性をさらに向上することができるからである。
【0159】
上記および以下の説明において、例えば、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基とは、アリール基に置換した置換基に含まれる炭素数も含めて6~40であり、炭素数を規定している他の置換基もこれと同様である。
【0160】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子または重水素原子が置換したことを意味する。以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
【0161】
一般式(6)において、ZおよびZは、それぞれ独立に、酸素原子、NRa(置換基Raを有する窒素原子)または硫黄原子である。ZがNRaである場合、Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。ZがNRaである場合、Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。
【0162】
Eは、ホウ素原子、リン原子、SiRa(置換基Raを有するケイ素原子)またはP=Oである。
【0163】
一般式(7)において、EおよびEは、それぞれ独立に、BRa(置換基Raを有するホウ素原子)、PRa(置換基Raを有するリン原子)、SiRa(置換基Raを2個有するケイ素原子)、P(=O)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンオキシド)またはP(=S)Ra(置換基Raを2個有するホスフィンスルフィド)、S(=O)またはS(=O)である。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、Raは環Zaもしくは環Zbと結合して環を形成してもよい。EがBRa、PRa、SiRa、P(=O)RaまたはP(=S)Raである場合、Raは環Zaもしくは環Zcと結合して環を形成してもよい。
【0164】
Raは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、または置換もしくは無置換のアルキル基である。
【0165】
Raは、置換基も含めて炭素数6~40の基であることが好ましい。Raは、置換もしくは無置換のアリール基であることがより好ましい。置換もしくは無置換のアリール基としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のフルオレニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくはフェナントレニル基等が挙げられるが、置換もしくは無置換のフェニル基がより好ましい。
【0166】
およびZは酸素原子またはNRaであることが好ましい。一般式(6)で表される化合物のπ共役系が効率よく拡張し、より効率的に三重項励起状態から一重項励起状態に逆項間交差が起きるため、耐久性をさらに向上することができるからである。
【0167】
Eはホウ素原子であることが好ましく、EおよびEはBRaであることが好ましい。一般式(6)で表される化合物のπ共役系が効率よく拡張し、より効率的に三重項励起状態から一重項励起状態に逆項間交差が起きるため、耐久性をさらに向上することができるからである。
【0168】
上記の全ての基において、水素は重水素であってもよい。以下に説明する化合物またはその部分構造においても同様である。
【0169】
上記の全ての基において、置換される場合の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、水酸基、チオール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、ハロゲン、シアノ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、スルホンアミド基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、シロキサニル基、ボリル基、またはホスフィンオキシド基である。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
【0170】
一般式(6)または(7)で表される化合物は、例えば文献Adv.Mater.,2016,28,2777-2781 に記載されているように、電子ドナー性のアミン窒素原子と電子アクセプター性のホウ素原子を最適に配置することで、多重共鳴効果によりHOMO軌道とLUMO軌道を分離させることが可能な分子である。HOMO軌道とLUMO軌道を明瞭に分離し、一重項励起状態と三重項励起状態をより近接させ遅延蛍光を放出しやすくするという観点では、Eが電子アクセプター性の強いホウ素原子であり、かつZとZがどちらも電子ドナー性の強い基であるNRaであることが好ましい。
【0171】
また一般式(6)または(7)で表される化合物は、多重共鳴効果により、その発光スペクトルが、電子ドナー性骨格と電子アクセプター性骨格を結合させた化合物よりもシャープとなり、高色純度の発光が得られる。すなわち、一般式(6)または(7)で表される化合物はディスプレイの色域向上に有利であるため、好ましい。また、一般式(6)または(7)で表される化合物は、主にLUMO軌道が局在する一般式(6)または(7)中のE原子の周囲に環Za、環Zb、環Zcが存在することから、LUMO軌道をE原子から各環にわたって非局在化することができる。LUMO軌道を非局在化することで効率的に多重共鳴効果が働くため、より高色純度の発光が得られる。
【0172】
さらに、一般式(6)または(7)のRaが、環Za、環Zb、および環Zcの少なくとも一つの環と結合した構造がより好ましい。これは、Raが環Za、環Zb、および環Zcの少なくとも一つの環と結合することにより、一般式(6)中のEや一般式(7)中のEおよびEの立体保護効果がより高まり、蛍光量子収率の低下を抑える効果がより向上することが期待できるためである。
【0173】
以下に一般式(6)または(7)で表される化合物の一例を以下に示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0174】
【化18】
【0175】
<色変換層(A)および色変換層(B)におけるバインダー樹脂>
本発明の色変換シートにおいて、色変換層(A)および色変換層(B)は、発光材料に加えてバインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、成形加工性、透明性、耐熱性等に優れる材料が好適に用いられる。バインダー樹脂の例としては、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト材料、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンゲル等のオルガノポリシロキサン硬化物(架橋物)を含む)、ウレア樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、脂肪族エステル樹脂、芳香族エステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、樹脂芳香族ポリオレフィン樹脂等の公知のものが挙げられる。また、バインダー樹脂としては、これらの樹脂の混合物や共重合体を用いても構わない。例えば、メタクリル酸メチルと脂肪族ポリオレフィン樹脂との共重合体等が挙げられる。これらの樹脂を適宜設計することで、本発明の実施の形態に係る色変換シートに有用なバインダー樹脂が得られる。
【0176】
これらの樹脂の中でも、透明性および有機発光材料の分散性の観点から、バインダー樹脂は、アクリル樹脂、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル部位を含む共重合樹脂、ポリエステル樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、およびこれらの共重合体のいずれかであることが好ましい。
【0177】
<その他添加剤>
本発明に係る色変換シートは、バインダー樹脂、発光材料以外に、充填剤、酸化防止剤、加工および熱安定化剤、紫外線吸収剤等の耐光性安定化剤、塗布膜安定化のための分散剤やレベリング剤、可塑剤、エポキシ化合物などの架橋剤、アミン・酸無水物・イミダゾールなどの硬化剤、顔料、シート表面の改質剤としてシランカップリング剤等の接着補助剤等を添加することも可能である。
【0178】
充填剤としてはフュームドシリカ、ガラス粉末、石英粉末等の微粒子、酸化チタン、酸化ジルコニア、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、シリコーン微粒子を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの充填剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0179】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0180】
加工および熱安定化剤としては、トリブチルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリエチルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン等のリン系安定化剤を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの安定化剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0181】
耐光性安定化剤としては、例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α、α-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類を挙げることができるが特に限定されるものではない。また、これらの耐光性安定化剤は単独で使用してもよく、複数併用してもよい。
【0182】
本発明に係る色変換シートにおけるこれらの添加剤の含有量は、化合物のモル吸光係数、蛍光量子収率および励起波長における吸収強度、ならびに作製するシートの厚みや透過率にもよるが、通常はバインダー樹脂100質量部に対して、1.0×10-3質量部以上30質量部以下であり、1.0×10-2質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、1.0×10-1質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
【0183】
<溶媒>
本発明に係る色変換シートは溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、流動状態の樹脂の粘度を調整でき、発光物質の発光および耐久性に過度な影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、水、2-プロパノール、エタノール、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、テルピネオール、テキサノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン等が挙げられ、これらの溶媒を2種類以上混合して使用することも可能である。これらの溶媒の中で特にトルエン、酢酸エチル、は、一般式(1)で表される化合物の劣化に影響を与えず、乾燥後の残存溶媒が少ない点で好適に用いられる。
【0184】
<色変換シートの作製方法>
以下に、本発明の色変換シートの作製方法の一例を説明する。この色変換シートの作製方法では、まず、色変換層作製用の組成物を以下のように作製する。
【0185】
前述した発光材料、バインダー樹脂、溶媒等を所定量混合する。上記の成分を所定の組成になるよう混合した後、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで、色変換組成物が得られる。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。また、ある特定の成分を事前に混合することや、エージング等の処理をしても構わない。エバポレーターによって溶媒を除去して所望の固形分濃度にすることも可能である。
【0186】
本発明において色変換シートの代表的な構造例として、前述した図1が挙げられる。さらには、色変換層の酸素、水分や熱による劣化を防ぐために、図3に示すようにバリア層6をさらに設けても良い。
【0187】
色変換シートの厚みは特に制限はないが、全ての層の合計で1~5000μmであることが好ましい。厚みが1μm以上であることで十分な膜強度を担保することができ、膜の破断等の問題が発生しにくくなる。厚みが5000μm以下であることによりハンドリング性に優れたシートを得ることができる。厚みは、より好ましくは、10~1000μmであり、さらに好ましくは15~500μmであり、特に好ましくは30~300μmである。
【0188】
本発明における色変換シートに関する膜厚は、JIS K7130(1999)プラスチック-フィルムおよびシート-厚さ測定方法における機械的走査による厚さの測定方法A法に基づいて測定される膜厚(平均膜厚)のことをいう。
【0189】
<基材層>
基材層としては、特に制限無く公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を使用することができる。具体的には、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄などの金属板や箔、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド、シリコーン、ポリオレフィン、熱可塑性フッ素樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)、α-ポリオレフィン樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂およびこれらとエチレンの共重合樹脂からなるプラスチックのフィルム、前記プラスチックフィルムがラミネートされた紙、または前記プラスチックによりコーティングされた紙、前記金属がラミネートまたは蒸着された紙、前記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基材が金属板の場合、表面にクロム系やニッケル系などのメッキ処理やセラミック処理されていてもよい。
【0190】
これらの中でも、色変換シートの作製のし易さや色変換シートの成形のし易さからガラスや樹脂フィルムが好ましく用いられる。また、フィルム状の基材を取り扱う際に破断などの恐れがないように強度が高いフィルムが好ましい。それらの要求特性や経済性の面で樹脂フィルムが好ましく、これらの中でも、経済性、取り扱い性の面でPET、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリプロピレンからなる群より選ばれるプラスチックフィルムが好ましい。また、色変換シートを乾燥させる場合や色変換シートを押し出し機により200℃以上の高温で圧着成形する場合は、耐熱性の面でポリイミドフィルムが好ましい。シートの剥離のし易さから、基材層は、あらかじめ表面が離型処理されていてもよい。
【0191】
基材層の厚さは特に制限はないが、下限としては5μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、38μm以上がさらに好ましい。また、上限としては5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
【0192】
<色変換層>
次に、本発明の色変換シートに含まれる色変換層の製造方法の一例を説明する。上述した方法で作製した色変換組成物を基材上に塗布し、乾燥させる。塗布は、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター等により行うことができる。色変換層の膜厚均一性を得るためにはスリットダイコーターやディップコーターで塗布することが好ましい。
【0193】
色変換層の乾燥は熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。この場合、加熱条件は、通常、40~250℃で1分~5時間、好ましくは60℃~200℃で2分~4時間である。また、ステップキュア等の段階的に加熱硬化することも可能である。
【0194】
色変換層を作製した後、必要に応じて基材を変更することも可能である。この場合、簡易的な方法としてはホットプレートを用いて貼り替えを行なう方法や、真空ラミネーターやドライフィルムラミネーターを用いた方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
色変換層の厚みは特に制限はないが、1~1000μmであることが好ましく、10~1000μmがより好ましい。厚みが1μm以上であることで十分な膜強度を担保することができ、膜の破断等の問題が発生しにくくなる。厚みが5000μm以下であることによりハンドリング性に優れたシートを得ることができる。厚みは、より好ましくは、10~100μmであり、さらに好ましくは15~100μmであり、特に好ましくは30~100μmである。
【0196】
<バリア層>
バリア層は、色変換層に対してガスバリア性を付与する場合に適宜用いることができる。バリア層としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなどの無機酸化物や、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化窒化ケイ素などの無機窒化物、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜や金属窒化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニルのけん化物等のポリビニルアルコール系樹脂などの各種樹脂からなる膜を挙げることができる。また、水分に対してバリア機能を有する膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂、酢酸ビニルのけん化物等のポリビニルアルコール系樹脂などの各種樹脂からなる膜を挙げることができる。
【0197】
バリア層は、色変換層の両面に設けてもよいし、片面だけに設けてもよい。
【0198】
また、色変換シートに要求される機能に応じて、光取り出し機能、反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、電磁波シールド機能、赤外線カット機能、紫外線カット機能、偏光機能、調色機能等の機能を有した補助層をさらに設けてもよい。
【0199】
<励起光>
励起光の光源の種類は、発光材料が吸収可能な波長領域に発光を示すものであればいずれも用いることができる。例えば、熱陰極管や冷陰極管、無機ELなどの蛍光性光源、有機エレクトロルミネッセンス素子光源、LED光源、白熱光源などいずれの光源でも原理的には利用可能であるが、中でもLEDが好適な光源である。ディスプレイや照明装置では、青色光の色純度を高められる点で、波長400~500nmの範囲の励起光を持つ青色LEDがさらに好適な光源である。励起光の波長範囲がこれより長波長側にあると青色光が欠如するために白色光が形成できなくなり、また励起光の波長範囲がこれより短波長側にあると、発光材料あるいは樹脂等の有機化合物が光劣化しやすいので好ましくない。
【0200】
励起光は1種類の発光ピークを持つものでもよく、2種類以上の発光ピークを持つものでもよいが、色純度を高めるためには1種類の発光ピークを持つものが好ましい。また、発光ピークの種類の異なる複数の励起光源を任意に組み合わせて使用することも可能である。
【0201】
本発明の別の実施形態に係る色変換シートは、入射光を、その入射光とは異なる波長の光に変換する色変換シートであって、前記色変換シートが少なくとも色変換層、樹脂層および基材をこの順に含み、前記色変換層が、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)およびピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)を含有し、かつ、前記色変換シートのヘイズ値が20%以上、90%以下であり、色変換層の屈折率をnA、樹脂層の屈折率をnB、基材の屈折率をnとしたとき、nA>nBかつnB<nである色変換シートである。nA>nBかつnB<nである樹脂層は低屈折層と呼ぶこともできる。
【0202】
この実施形態の色変換シートの構成の例を図4に示す。色変換シート5は、基材層1を備え、この基材層1の上に色変換層7および樹脂層3が積層される。樹脂層3の上に、さらに基材層1が配され、色変換層7および樹脂層3が基材層1で挟まれた構造を有してもよい。樹脂層3は色変換層7から見て光源側とは反対の位置に配置するのが好ましい。さらには色変換層の屈折率をn、屈折率をnB、基材の屈折率をnとしたとき、nA>nBかつnB<nである必要がある。この位置に樹脂層を有することにより光源側から出た光が色変換層と樹脂層の界面で反射するため、各層外への光漏れを抑制することができるので、より色変換効率を向上させることが可能となり、良好な耐久性を得ることができる。
【0203】
この実施形態における色変換層7は、ピーク波長が500nm以上580nm未満の領域に観測される発光を呈する発光材料(a)およびピーク波長が580nm以上750nm以下の領域に観測される発光を呈する発光材料(b)の両方を含有する。色変換層7は、発光材料に加えてバインダー樹脂を含むことが好ましい。また、色変換層7は、ヘイズ値を制御するために、散乱粒子を含有しても良い。
【0204】
なお、色変換シートのヘイズ値、散乱粒子、樹脂層、発光材料、バインダー樹脂、基材層、バリア層および製造方法については、前述の実施形態と同じである。
【0205】
<光源ユニット>
本発明の光源ユニットは、少なくとも光源および色変換シートを含む。本発明における光源ユニットにおいては、光源、色変換層(B)、樹脂層、色変換層(A)、の順になるように配置することが好ましい。光源ユニットには、光源および色変換シート以外に、他の光学シートを含んでもよい。光学シートとしては、プリズムシート、偏光反射性フィルム、拡散シートなどが挙げられる。代表的な構成の例としては、図5で示すように、基板8、反射層9、光源10を積層させ、拡散板11とプリズムシート12との間に本発明の色変換シート5を配置し、さらにプリズムシート12の光源とは反対側の面に偏光反射性フィルム13を配置する構成がある。薄膜化および生産性、光耐久性の観点から、本発明の色変換シートより上に含まれる光学シートは2枚以下であることが好ましい。ここで、「色変換シートより上」とは、色変換シートに対して、光源とは反対側を意味する。光学シートが2枚以下であることにより光の反射を抑制することができるので、発光材料の励起回数を低減することができ、耐久性の低下を防ぐことが可能となる。図5の光源はいわゆる直下型の構成であるが、光源の配置は特に限定されない。光源ユニットに色変換シートを含む場合は、光源と色変換シートの配置方法については、前述した順序の構成以外は特に限定されず、光源と色変換シートを密着させた構成を取っても良いし、光源と色変換シートを離したリモートフォスファー形式を取っても良い。また、色純度を高める目的で、さらにカラーフィルターを含む構成を取っても良い。
【0206】
前述の通り、400~500nmの範囲の励起光は比較的小さい励起エネルギーであり、発光材料の分解を防止できるので、光源は400~500nmの範囲に極大発光を有する発光ダイオードであることが好ましい。
【0207】
本発明における光源ユニットは、ディスプレイ、照明装置、インテリア、標識、看板、などの用途に使用できる。特にディスプレイや照明装置に好適に用いられる。
【実施例
【0208】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0209】
<ヘイズおよび全光線透過率の測定>
実施例および比較例で作成した色変換シート、色変換層(A)、色変換層(B)のヘイズおよび全光線透過率はNDH7000(日本電色工業株式会社製)を用いて、ASTM D 1003(2013)に準拠し、測定した。測定回数はそれぞれ1回ずつとした。
【0210】
<屈折率の測定>
各層の屈折率(nA1、nA2、、nC、D1、nD2)は、PETフィルム上に各層作製用の組成物を個別に塗布して形成した樹脂膜の屈折率をそれぞれ測定することにより得た。“ルミラー”U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)上に各層作製用の組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、平均膜厚が2μmになるように塗布し、100℃で20分加熱、乾燥して測定用の樹脂膜を形成した。形成した樹脂膜の波長589.3nmの光に対する屈折率を反射分光計 FE-3000(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
【0211】
<色変換特性の測定>
青色LED(USHIO EPITEX社製;型番SMBB450H-1100、発光ピーク波長:450nm)を搭載した発光装置の上に、光源、色変換層(B)、樹脂層、色変換層(A)、の順になるように、評価する各色変換シートを設置した。発光装置に100mAの電流を流して青色LEDを点灯させ、分光放射輝度計(CS-1000、コニカミノルタ社製)を用いて、発光スペクトル、ピーク波長における発光強度および色度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離は3cmとした。
【0212】
<面内均一性の評価>
BenQ社製液晶モニター(SW2700PT)を分解し、内蔵されていた色変換シートの代わりに後述の実施例および比較例で作製した色変換シートを挿入した後、元通り組み立てた。この時のバックライトユニットの構成は「反射フィルム/導光板/拡散シート/色変換シート/プリズムシート/偏光反射フィルム」である。分光放射輝度計(CS-1000、コニカミノルタ社製)を用いて色座標u´、v´を9点測定し、面内ばらつきΔu´v´を下記の式で算出した。
Δu´=u´(max)-u´(min.)
Δv´=v´(max)-v´(min.)
Δu´v´={(Δu´)+(Δv´)1/2
Δu´v´が0.02以下であれば良好となり、0.015以下であれば極めて良好である。
【0213】
<光耐久性のテスト>
青色LED(USHIO EPITEX社製;型番SMBB450H-1100、発光ピーク波長:450nm)を搭載した発光装置の上に、光源、色変換層(B)、樹脂層、色変換層(A)、の順になるように、評価する各色変換シートを設置した。発光装置に100mAの電流を流して青色LEDを点灯させ、分光放射輝度計(CS-1000、コニカミノルタ社製)を用いて、色変換された発光波長におけるピーク強度を測定した。なお、各色変換シートと青色LED素子との距離を3cmとした。その後、50℃、80%RHの環境下で青色LED素子からの光を連続照射し、蛍光体の発光強度が初期値から10%低下するまでの時間を観測することで、色変換シートの耐久性を評価した。蛍光体の発光強度が初期値から10%低下するまでの時間が200時間以上であれば良好であり、400時間以上であれば極めて良好である。
【0214】
<発光材料>
下記実施例および比較例に置いて、化合物G-1、G-3およびR-1は以下に示す化合物である。
【0215】
【化19】
【0216】
【化20】
【0217】
化合物G-1(発光ピーク波長:515nm)、G-3(発光ピーク波長:527nm)は公知の方法により合成した。
G-2:SIGMA-ALDRICH製の量子ドット(製品番号776793)(発光ピーク波長:560nm)を用いた。
化合物R-1(発光ピーク波長:629.5nm)は公知の方法により合成した。
散乱粒子S-1、S-2、S-3、S-4は以下に示す材料である。
S-1:JR-301(テイカ株式会社製チタニア粒子,平均粒径300nm)
S-2:AA-07(住友化学株式会社製アルミナ粒子,平均粒径830nm)
S-3:SO-E6(株式会社アドマテックス製シリカ粒子,平均粒径2000nm)
S-4:KMP-706(信越化学工業株式会社製シリコーン樹脂粒子,平均粒径2000nm)
(実施例1)
樹脂として共栄社化学株式会社製アクリル樹脂織コックスKC-7000を100重量部、発光材料としてG-1を0.4重量部、散乱粒子としてS-1を0.3重量部、溶媒としてトルエンを300重量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(クラボウ(株)製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡して色変換層(A)作成用の樹脂組成物を得た。
【0218】
同様に樹脂としてシリコーン樹脂(信越化学工業株式会社製KR-114B)を用いて樹脂100重量部に対して、溶媒としてヘプタンを200重量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(クラボウ(株)製)を用い、300rpmで20分間撹拌・脱泡して樹脂層作成用の樹脂組成物を得た。
【0219】
同様に色変換層(A)作成用の樹脂液と同様の樹脂を100重量部、発光材料として化合物R-1を0.08重量部、散乱粒子としてS-1を0.3重量部、溶媒としてトルエンを200質量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(クラボウ(株)製)を用い、300rpmで20分間撹拌・脱泡して色変換層(B)作成用の樹脂組成物を得た。
次に、スリットダイコーターを用いて色変換層(A)作成用樹脂組成物を、“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)の基材上に塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して平均膜厚18μmの色変換層(A)を形成した。
【0220】
同様にスリットダイコーターを用いて色変換層(A)上に樹脂層作成用樹脂組成物を塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して平均膜厚10μmの樹脂層を形成した。
【0221】
同様にスリットダイコーターを用いて色変換層(B)作成用樹脂組成物を“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)基材上に塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して平均膜厚18μmの色変換層(B)を形成した。
【0222】
次に、上記2つのユニットを、樹脂層と色変換層(B)が直接接するように加温ラミネートすることで、「基材/色変換層(A)/樹脂層/色変換層(B)/基材」という構成の色変換シートを作製した。
【0223】
作製した色変換シートを用いて前述の方法にて各層の屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0224】
(実施例2~8、17、18、比較例1~3)
組成を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作にて色変換シートを作製し、評価した。実施例17においては、樹脂層の樹脂を東洋紡株式会社製の“Vylon”(登録商標)270のポリエステルに変更した。また比較例3においては、樹脂層の樹脂を共栄社化学株式会社製アクリル樹脂織コックスKC-7000に変更した。結果を表1、2に示す。
【0225】
実施例1と比較例1の対比から、ヘイズ値が20%よりも低い比較例1と比べ、ヘイズ値が20%以上である実施例1は、大幅に面内均一性が良好となった。
【0226】
また、実施例1~5の対比から、ヘイズ値が大きいほど面内均一性が良好となることが分かった。ただし、比較例2に示すように、ヘイズ値が90%を超えると、面内均一性は良好であるものの、光耐久性が大幅に低下することが分かった。実施例3、4、8は、面内均一性と耐久性の両方が特に良好であった。
【0227】
実施例7と実施例4の対比から、色変換層(A)の発光材料としては、G-1の方がG-2よりも光耐久性が良好であることが分かった。
【0228】
実施例18と実施例4の対比から、色変換層(A)の発光材料として、G-1とG-3が同等の光耐久性であることが分かった。
【0229】
実施例17と実施例4の対比から、樹脂層の屈折率nが、色変換層(A)の屈折率nA1および色変換層(B)の屈折率nA2よりも大きい場合、屈折率nが、色変換層(A)の屈折率nA1および色変換層(B)の屈折率nA2よりも小さい場合よりも光耐久性が低下することが分かった。
【0230】
実施例17と比較例3の対比から、樹脂層の屈折率nが、色変換層(A)の屈折率nA1および色変換層(B)の屈折率nA2と同じ場合、樹脂層の屈折率nが、色変換層(A)の屈折率nA1および色変換層(B)の屈折率nA2よりも大きい場合よりも光耐久性が低下することが分かった。
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
<色域面積比の算出>
BenQ社製液晶モニター(SW2700PT)を分解し、内蔵されていた色変換シートの代わりに後述の実施例で作製した色変換シートを挿入した後、元通り組み立てた。この時のバックライトユニットの構成は「反射フィルム/導光板/拡散シート/色変換シート/プリズムシート/偏光反射フィルム」である。得られたモニターで青、緑、赤の単色を表示したときの(x、y)色空間におけるそれぞれの色座標は分光放射輝度計(CS-1000、コニカミノルタ社製)を用いて測定した。得られた3点の色座標から色域の面積を算出し、DCI-P3規格の色域面積に対する面積比を算出した。面積比が100%以上であれば良好であり、105%以上であれば極めて良好である。
【0234】
<相対輝度>
実施例3の色変換後の白色光の輝度を100として、後述の実施例の輝度を比較した。相対輝度(%)は、実施例3を基準とする相対的な輝度である。
【0235】
(実施例9)
色変換層(A)の散乱粒子1.3重量部、色変換層(B)に散乱粒子を添加しなかった以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが527nm、赤の発光ピークが637nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ105%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、97%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0236】
(実施例10)
色変換層(A)の散乱粒子2重量部、色変換層(B)に散乱粒子を添加しなかった以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが525nm、赤の発光ピークが639nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ108%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、93%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定したと。結果を表3に示す。
【0237】
(実施例11)
色変換層(A)の散乱粒子を添加せず、色変換層(B)の散乱粒子を1.3重量部にした以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが532nm、赤の発光ピークが634nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ98%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、108%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0238】
(実施例12)
色変換層(A)の散乱粒子を添加せず、色変換層(B)の散乱粒子を2重量部にした以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが534nm、赤の発光ピークが632nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ95%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、110%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定したと。結果を表3に示す。
【0239】
実施例9、10と実施例11、12との比較から、色変換層(A)のみが散乱粒子を含有する場合、色変換層(B)のみが散乱粒子を含有する場合と比較して、色域面積が向上することが分かった。
【0240】
また、実施例11、12と実施例3、9、10との比較から、色変換層(B)のみが散乱粒子を含有する場合、色変換層(A)および色変換層(B)の両方が散乱粒子を含有する場合や色変換層(A)のみが散乱粒子を含有する場合と比較して、輝度が向上することが分かった。
【0241】
(比較例7)
色変換層(A)の散乱粒子8重量部、色変換層(B)に散乱粒子を添加しなかった以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが523nm、赤の発光ピークが641nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ108%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、85%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0242】
(比較例8)
色変換層(A)の散乱粒子を添加せず、色変換層(B)の散乱粒子を8重量部にした以外は実施例3と同様の操作にて色変換シートを作製した。作製した色変換シートを用いて前述の方法で色特性を測定したところ、緑の発光ピークが536nm、赤の発光ピークが630nmとなった。前述の方法で色域面積比を算出したところ94%であった。また前述の方法で相対輝度を算出したところ、100%となった。前述の方法でヘイズ値および各層の屈折率を測定した。結果を表3に示す。
【0243】
実施例9、10と比較例7との対比および実施例11、12と比較例8との対比から、粒子の含有量が多すぎ、ヘイズが90%を超えると輝度が大幅に低下することが分かった。
【0244】
【表3】
【0245】
(実施例13)
樹脂として共栄社化学株式会社製アクリル樹脂織コックスKC-7000を100重量部、発光材料(a)としてG-1を0.4重量部、発光材料(b)としてR-1を0.01重量部、散乱粒子としてS-1を0.6重量部、溶媒としてトルエンを300重量部混合した後、遊星式撹拌・脱泡装置“マゼルスター”(登録商標)KK-400(クラボウ(株)製)を用い、1000rpmで20分間撹拌・脱泡して色変換層作成用の樹脂組成物を得た。
【0246】
実施例1と同様にして樹脂層作成用の樹脂液組成物を得た。
【0247】
次に、スリットダイコーターを用いて色変換層作成用樹脂組成物を、“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)の基材上に塗布し、120℃で20分加熱、乾燥して平均膜厚18μmの色変換層を形成した。
【0248】
実施例1と同様にして色変換層上に平均膜厚10μmの樹脂層を形成した。
【0249】
次に、“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製、厚さ50μm)を樹脂層の上に加温ラミネートすることで、「基材/色変換層/樹脂層/基材」という構成の色変換シートを作製した。
【0250】
作製した色変換シートを用いて前述の方法にて各層の屈折率を測定した。結果を表4に示す。
【0251】
(実施例14~16、比較例4~6)
組成を表4に示すように変更した以外は、実施例13と同様の操作にて色変換シートを作製し、評価した。比較例6においては、樹脂層の樹脂を東洋紡株式会社製の“Vylon”(登録商標)270のポリエステルに変更した。結果を表4に示す。
【0252】
実施例13と比較例4の対比から、ヘイズ値が20%よりも低い比較例4と比べ、ヘイズ値が20%以上である実施例13は、大幅に面内均一性が良好となった。
【0253】
また、実施例13~16の対比から、ヘイズ値が大きいほど面内均一性が良好となることが分かった。ただし、比較例5に示すように、ヘイズ値が90%を超えると、面内均一性は良好であるものの、光耐久性が大幅に低下することが分かった。実施例14、15は、面内均一性と耐久性の両方が特に良好であった。
【0254】
比較例6と実施例15の対比から、樹脂層の屈折率nが、色変換層の屈折率nおよび基材層の屈折率nと同じあるいは大きい場合、光耐久性が大幅に低下することが分かった。
【0255】
【表4】
【0256】
(実施例19~21)
組成を表5に示すように変更した以外は、実施例11と同様の操作にて色変換シートを作製し、評価した。実施例19、20、21の散乱粒子をそれぞれS-2、S-3、S-4に変更した。結果を表5に示す。
【0257】
実施例11と実施例19~21の対比から、色変換層の屈折率nA2と散乱粒子の屈折率nD2の差の絶対値が前述する範囲内であると、全光線透過率が向上し、より高輝度な色変換シートを得られることが分かった。
【0258】
【表5】
【符号の説明】
【0259】
1 基材層
2 色変換層(B)
3 樹脂層
4 色変換層(A)
5 色変換シート
6 バリア層
7 色変換層
8 基板
9 反射層
10 光源
11 拡散板
12 プリズムシート
13 偏光反射性フィルム
14 光源ユニット
図1
図2
図3
図4
図5